JP2018141255A - ポリエチレン繊維、繊維製品、およびポリエチレン繊維の製造方法 - Google Patents

ポリエチレン繊維、繊維製品、およびポリエチレン繊維の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】組紐の強度利用率が高くなるポリエチレン繊維を提供する。【解決手段】本発明に係るポリエチレン繊維は、4本打ち構成の組紐にした場合、当該組紐のリード(a)、当該組紐の直径(b)、当該組紐の引張強度(c)、当該組紐を構成するマルチフィラメントの引張強度(d)とすると、(c/d)×100で定義される強度利用率eの値は、3.5≦a/b≦10.0の範囲にて、e≧7.2(a/b)+7.6を満たす。【選択図】なし

Description

本発明は、引張強度、破断伸度などの機械的特性に優れたポリエチレン繊維等に関する。
高強力ポリエチレン繊維に関しては、超高分子量のポリエチレンを原料とし、いわゆる「ゲル紡糸法」により高強度・高弾性率繊維が得られることが知られており、産業上広く利用されている(例えば、特許文献1、特許文献2)。このような高強度で高弾性率の繊維であるスーパー繊維は、重量物の牽引、船舶などの係留索用途、漁業の網用途、スポーツ用品のネット、防獣用のネットなど、その高強度が特徴として生かせる用途に展開されている。
しかしながら、スーパー繊維は強度、弾性率は著しく高いものの、伸度が低いものが一般的である為、用途によっては取り扱い性に不都合を生じる場合がある。このような高強度・高弾性率、低伸度の繊維からロープを製造する際、繊維の引き揃えの状態がロープ全体の物性に与える影響は非常に大きく、ロープ製造工程での工程通過性に問題が生じ、生産性が低下する場合がある。
その一方で上記各種製品においては、更なる高強力化に対する要求が強くなっている。例えば、ロープの強度を上げるには、原糸として高強度繊維を用いることが一般的であり、原糸の強度を10%高くすれば、この原糸を用いたロープの強度も10%高くなることが期待されるが、実際はロープの強度は5%程度しか高くならない。ここで、原糸の強度がロープの強度にどの程度有効に働いているのかは、以下の強度利用率を用いて評価することができる。
強度利用率(%)=(ロープの強度/原糸の強度)×100
従来のロープではこの強度利用率が50%程度であり、原糸の強度がロープの強度に有効に働いておらず、ロープ全体での強度利用率を高くすることが困難であった(特許文献3)。そこで、ロープの強度利用率を高くする手段として、2種以上の繊維トウが混合された撚糸からなり、該2種の繊維トウA、Bは伸度の比がAの伸度/Bの伸度=1.25〜10であり、糸長の比がBの糸長/Aの糸長=1.015〜1.150とすることが提案されている(特許文献4)。また、別の強度利用率を向上させる手段として、合成繊維の縦糸と緯糸により構成された筒状織物と、該筒状織物内に引き揃えられた複数の合成繊維の芯材と、から成るストランドを複数本撚り合わせて、又は組み合わせて構成されるロープが提案されている(特許文献5)。
特公昭60−47922号公報 特公昭64−8732号公報 特開平9−95877号公報 特開2010−121239号公報 特開2014−111851号公報
しかしながら、繊維トウを撚糸にした場合、両者の伸度差が大きく、強度自体が低い繊維を用いる必要がある。そのため、ロープの強度利用率は高くなるが、ロープの強力が低くなるという問題点がある。また、ストランドからなるロープの場合、この技術は旧来のロープ構成から大きく変化したものであり、複雑な加工工程の追加が必要となることが予想され、生産性の低下が予想される。
そこで、本発明は、上記課題に鑑みなされ、その目的は、特に、ロープにした場合の組紐の強度利用率が高くなる高強力ポリエチレン繊維を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決する為、鋭意研究を重ねた結果、以下の特徴を有するマルチフィラメントを用いることで組紐時の強度利用率が向上することを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の通りである。
本発明のポリエチレン繊維は、4本打ち構成の組紐にした場合、当該組紐のリードをa、当該組紐の直径をb、当該組紐の引張強度をc、当該組紐を構成するマルチフィラメントの引張強度をdとすると、(c/d)×100で定義される強度利用率eの値は、3.5≦a/b≦10.0の範囲にて、e≧7.2(a/b)+7.6を満たすことを特徴とする。
また、本発明のポリエチレン繊維は、前記組紐に用いる各マルチフィラメントの応力−歪曲線において、歪2.0%での応力値は、変動係数において5.0%以内であるのが好ましい。
また、本発明のポリエチレン繊維では、前記組紐に用いる各マルチフィラメントは、引張強度が15cN/dtex以上、破断伸度が5.0%以上、初期弾性率が800cN/dtex以下であり、単糸の繊度が0.5dtex以上10dtex以下であり、フィラメント本数が10〜10000本であるのが好ましい。
本発明の繊維製品は、上記いずれか1のずれか1つに記載のポリエチレン繊維を用いた繊維製品である。
また、本発明の繊維製品は、組紐、釣糸、ロープ、またはネットである。
本発明のポリエチレン繊維の製造方法は、極限粘度[η]が5〜40であり、その繰り返し単位が90モル%以上エチレンからなるポリエチレンを、濃度0.5〜40質量%となるよう有機溶媒に溶解してポリエチレン溶液にする溶解工程と、前記ポリエチレン溶液を紡糸してポリエチレン繊維状物を得る繊維状物取得工程と、前記ポリエチレン繊維状物を乾燥する乾燥工程と延伸する延伸工程とを含み、前記乾燥工程における前記ポリエチレン繊維状物の通過時間は0.2分以上30分以下であり、前記乾燥工程および前記延伸工程での合計延伸倍率は2.0倍〜60倍であり、前記乾燥工程後かつ前記延伸工程前の繊維に含まれる残留溶媒率は15%以下である、ことを特徴とする。
本発明のポリエチレン繊維を使用することにより、繊維の強度を確保しつつ、ロープを構成する原糸の物性ばらつきを減らすことができる。よって、本発明のポリエチレン繊維は、上述の従来技術での問題が解決でき、従来の超高分子量ポリエチレン繊維を使用した組紐と比較して高い強度利用率を得ることができる。
実施例1の組紐に用いた4本のマルチフィラメントの歪−応力曲を示す図である。 「組紐のリード/組紐の直径」に対する、組紐の強度利用率eをプロットしたグラフを示す図である。
(ポリエチレン繊維)
本発明のポリエチレン繊維の実施の一形態について説明する。
本実施形態のポリエチレン繊維は、当該ポリエチレン繊維から成るマルチフィラメントを用いて4本打ち構成の組紐にした場合、当該組紐のリードをa、当該組紐の直径をb、当該組紐の引張強度をc、および前記マルチフィラメントの引張強度をdとすると、(c/d)×100で定義される強度利用率eの値は、3.5≦a/b≦10.0の範囲にて、e≧7.2(a/b)+7.6を満たす。強度利用率eの式については、後段の実施例にて説明する。
本実施形態のポリエチレン繊維は、上記のように、3.5≦a/b≦10.0の範囲にて、強度利用率e≧7.2(a/b)+7.6を満たす。例えば、a/bが5.0の場合、強度利用率は、43.6%以上であり、より好ましくは50%以上であり、更に好ましくは53%以上である。a/bが5.0における強度利用率が53%を超えると、組紐を用いて製造されるロープ(最終ロープ)での強力が高くなる。また、強度利用率が43%よりも低いと最終ロープの強力が低くなってしまうため好ましくない。
また、本実施形態のポリエチレン繊維は、例えばa/bが10.0の場合、強度利用率が79.6%以上であり、より好ましくは80%以上であり、更に好ましくは81%以上である。a/bが10.0の場合の強度利用率が81%を超えると最終ロープでの強力が高くなる。また、強度利用率が80%よりも低いと最終ロープの強力が低くなってしまうため好ましくない。
ここで、本実施形態では、前記組紐に用いる各マルチフィラメントの応力−歪曲線において、歪2.0%での応力値は、変動係数が5.0%以内であるのが好ましい。応力値の変動係数は、標準偏差/平均値×100、にて算出される。この応力値の変動係数が5.0%よりも大きくなると、複数のマルチフィラメントを引き揃えてロープに加工する際、各マルチフィラメントの引き揃えが悪くなり、弛むマルチフィラメントの単糸が発生する場合がある。その場合、最終ロープでの強度利用率が低くなってしまう。
また、前記各マルチフィラメントは、引張強度が15cN/dtex以上であることが好ましく、より好ましくは18cN/dtex以上であり、更に好ましくは21cN/dtex以上である。引張強度が15cN/dtexよりも低いと最終ロープの強力が低くなってしまうため好ましくない。また引張強度の上限は特に限定されないが、引張強度が60cN/dtexを超えるポリエチレン繊維を得ることは、技術的、工業生産的に困難である。
また、前記各マルチフィラメントの破断伸度は5.0%以上であることが好ましく、より好ましくは6.0%以上であり、更に好ましくは7.0%以上である。破断伸度が5.0%より低いと複数のマルチフィラメントを引き揃えてロープに加工する際、各マルチフィラメントの引き揃えが悪くなり、単糸が切れるなどのトラブルにより生産性が低下し、得られるロープの強力も低くなってしまう。また破断伸度が7.0%以上で、引張強度が上述の範囲内となるポリエチレン繊維を得ることは、技術的、工業的に困難である。
また、前記各マルチフィラメントの初期弾性率は、800cN/dtex以下であることが好ましく、より好ましくは750cN/dtex以下であり、更に好ましくは700cN/dtex以下である。初期弾性率が800cN/dtexより高いとロープに加工する際、各マルチフィラメントの引き揃えが悪くなり、単糸が切れるなどのトラブルにより生産性が低下し、得られるロープの強力も低くなってしまうため好ましくない。また、単糸の繊度が0.5dtex以上、10dtex以下であり、フィラメント本数が10〜10000本とすることが好ましい。
(製造方法)
次に、本実施形態のポリエチレン繊維の製造方法については説明する。本実施形態のポリエチレン繊維を得るために、ゲル紡糸法を用いることが好ましい。具体的には、本実施形態のポリエチレン繊維の製造方法は、ポリエチレンを溶媒に溶解してポリエチレン溶液とする溶解工程と、前記ポリエチレン溶液を上記ポリエチレンの融点以上の温度でノズルから吐出し、吐出した糸条を冷媒で冷却する紡糸工程と、吐出された未延伸糸から溶媒を除去する乾燥工程と、延伸する延伸工程と、延伸された延伸糸を巻き取る工程と、を含む。それぞれの工程について詳細に説明する。
<溶解工程>
本実施形態のポリエチレン繊維の製造に当たっては、その原料となる高分子量のポリエチレンとして超高分子量ポリエチレンを使用する。このようなポリエチレンの極限粘度[η]は5以上であることが好ましく、より好ましくは8以上、さらに好ましくは10以上である。極限粘度が低すぎると所望とする強度15cN/dtex以上を超えるような高強度繊維が得られないことがある。一方、ポリエチレンの極限粘度[η]は40以下が好ましく、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下である。極限粘度が高すぎると加工性が低下して繊維化が困難になることがある。
原料ポリエチレンは、繰り返し単位の90モル%以上がエチレンである。エチレンの繰り返し単位は92モル%以上であるのが好ましく、94モル%以上であるのがより好まく、最も好ましいのはエチレンの単独重合体である。なお、ポリエチレン繊維の物性に好ましくない影響を与えない範囲であれば、原料ポリエチレンはエチレン以外の成分を含んでいてもよい。例えば、エチレンと少量の他のモノマー、具体的には、α−オレフィン、アクリル酸及びその誘導体、メタクリル酸及びその誘導体、ビニルシラン及びその誘導体等の他のモノマーとエチレンとの共重合体を原料ポリエチレンとして使用することができる。
本実施形態での製造方法として、以下では、溶剤に高分子量のポリエチレンを溶解してポリエチレン溶液を作製する方法について説明する。
ポリエチレンの溶媒としてはデカリン、テトラリン等の揮発性の有機溶媒やパラフィン等の非揮発性の溶媒であることが好ましい。上記ポリエチレン溶液におけるポリエチレンの濃度は0.5質量%以上、40質量%以下が好ましく、より好ましくは2.0質量%以上、30質量%以下、さらに好ましくは3.0質量%以上、20質量%以下である。ポリエチレンの濃度が0.5質量%以下の場合、生産効率が非常に悪いため好ましくない。一方、ポリエチレンの濃度が30質量%を超えると、分子量が非常に大きいことに起因し、ゲル紡糸法では後述するノズルから吐出することが困難になり好ましくない。
<紡糸工程(繊維状物取得工程)>
上述したポリエチレン溶液を、押出機等を用いて融点よりも10℃以上、好ましくは20℃以上、更に好ましくは30℃以上で均一溶解後に押出しし、定量供給装置を用いて紡糸ノズル(紡糸口金)に供給する。その後、0.2〜3.5mm、好ましくは0.5〜2.5mmの直径を有するノズルオリフィスより0.1g/min以上の吐出量で吐出する。
次に吐出したゲル糸状を冷却媒体で冷却しながら800m/min以下の速度で引き取ることが好ましく、200m/min以下であることがより好ましい。冷却方法としては空気や窒素等の不活性ガスによる乾式クエンチ法でもよいし、混和性の液体、もしくは水等の不混和性の液体を用いた冷却法でもよい。紡糸ノズルから吐出したゲル糸状を急激、かつ均一に冷却することが好ましいため、水を用いた冷却法が好ましい。冷却媒体として液体を用いる場合、液面変動を1mm以下にすることが重要である。液面変動が1mmを越えると、モノフィラメントの長手方向、及びモノフィラメント間における冷却までの時間変動が顕著になり、モノフィラメントの構造不均一が長手方向、及びモノフィラメント間で顕著になることがある。また、液体の温度は−10〜60℃であることが好ましい。
本実施形態の製造方法において、ゲル糸状が冷却媒体を通過する時間は0.1秒以上、30秒以下が好ましく、より好ましくは0.2秒以上、15秒以下、更に好ましくは0.3秒以上、10秒以下である。また、冷却にかかる時間は30秒以下が好ましく、より好ましくは10秒以下、更に好ましくは5秒以下である。この冷却媒体を通過する時間及び冷却にかかる時間がこれらの範囲を外れるとマルチフィラメントの強度が大幅に低下、あるいは伸度が低下してしまい好ましくない。この原因は以下のように考えられる。冷却媒体を通過する時間及び冷却にかかる時間が短いと、単糸の断面中心部近傍の冷却が単糸の外表面近傍の冷却に追いつけず、単糸全体の結晶構造が不均一となり所望の繊維物性が得られない。また冷却媒体を通過する時間及び冷却にかかる時間が長いと、冷却するために必要な時間が長くなるため、紡糸された未延伸糸において構造変化が生じ、結果として単糸全体の結晶構造が不均一となり所望の繊維物性が得られない。なお、冷却にかかる時間とは、冷却媒体を通過する間の時間でゲル糸状の温度が冷却媒体と同温度になる時間という意味で用いている。
<乾燥・延伸工程>
紡糸工程で引き取った未延伸糸を連続的に又は一旦巻き取った後、乾燥・延伸工程を行う。乾燥工程では溶媒を除去することが目的であり、溶媒の除去手段としては揮発性溶媒の場合には熱媒体雰囲気中で行ってもよいし、加熱ローラーを用いて行ってもよい。媒体としては空気、窒素等の不活性ガス、水蒸気、液体媒体等が挙げられる。不揮発性溶媒を用いた場合は、抽出剤等を用いて抽出する方法が挙げられる。抽出剤としては、クロロホルム、ベンゼン、ヘキサン、ヘプタン、ノナン、デカン、エタノール、高級アルコール等を用いることができる。
乾燥工程後かつ延伸工程前のマルチフィラメントに含まれる残留溶媒率は15%以下が好ましく、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下である。マルチフィラメントに含まれる残留溶媒率がこの範囲を外れるとマルチフィラメント間の繊維物性のばらつきが大きくなることはもとより、マルチフィラメント内の単糸間の繊維物性のばらつきが大きくなり、ロープの強度利用率低下につながる。本発明の重要な工程の1つは乾燥工程での未延伸糸の通過に要する時間は0.2分以上30分以下が好ましく、より好ましくは0.5分以上15分以下、さらに好ましくは1.0分以上10分以下である。通過時間が短いと所望の残留溶媒率の範囲から外れることがある。また、通過時間が長すぎると分子鎖が乾燥中に緩和してしまうため、単糸の強度が低下してしまい組紐にしたときの強度が低くなり好ましくない。また装置のサイズが大きくなり、加工費が高くなりコスト増加につながる。乾燥工程では未延伸糸を延伸しながら実施してもよい。
その後の延伸工程では加熱した状態で数倍に延伸する。延伸は1回のみでも複数回に分けて行ってもよいが、1回以上3回以下であることが好ましい。延伸工程は、熱媒体雰囲気中で行ってもよいし、加熱ローラーを用いて行ってもよい。媒体としては、空気、窒素等の不活性ガス、水蒸気、液体媒体等が挙げられる。
上述の乾燥工程と延伸工程とは別に行ってもよい。該未延伸糸の延伸倍率は、延伸工程が1段の場合でも多段の場合でも合計の延伸倍率は1.5〜60倍であることが好ましい。より好ましくは3.0倍以上、50倍以下である。延伸倍率が1.5倍より低いと得られるマルチフィラメントの引張強度が前述の値より低くなってしまう。また、延伸倍率60倍を超える場合はとは技術的、工業生産的に困難である。また、ポリエチレンの融点以下の高温で延伸を行うことが好ましい。
複数回延伸する場合、後段に進むほど、延伸時の温度を高くすることが好ましく、延伸の最終段の延伸温度は、80℃以上、170℃以下が好ましく、より好ましくは90℃以上、160℃以下である。該未延伸糸の延伸時間、すなわちマルチフィラメントの変形に要する時間は0.5分以上、20分以下であることが好ましく、より好ましくは15分以下、さらに好ましくは10分以下である。マルチフィラメントの変形時間が20分を越えると、分子鎖が延伸中に緩和してしまうため、単糸の強度が低下してしまい製紐して組紐にしたときの引張強度が低くなり好ましくない。
<巻き取り工程>
延伸された糸を好ましくは延伸終了から10分以内で巻き取ることが好ましい。また、延伸された糸を好ましくは0.001cN/dtex以上、5cN/dtex以下の張力で巻き取ることが好ましい。上記範囲内で巻き取ることで、マルチフィラメント中の断面方向における残留歪みを維持した状態で巻き取ることが可能となる。巻き取り時の張力が0.001cN/dtex未満の場合、残留歪みが小さくなり、断面方向の応力分布が不安定となってしまうため、結果としてマルチフィラメントを構成する各単糸において内層と外層との間で残留歪みの差が発現してしまう。また巻き取り張力を5cN/dtexよりも大きくするとマルチフィラメントを構成する単糸が切れやすくなるため好ましくない。
<その他>
繊維に他の機能を付与するために、上記工程中に酸化防止剤、還元防止剤等の添加剤、pH調整剤、表面張力低下剤、増粘剤、保湿剤、濃染化剤、防腐剤、帯電防止剤、顔料、鉱物繊維、他の有機繊維、金属繊維、金属イオン封鎖剤等を添加してもよい。
本実施形態のポリエチレン繊維は、特に、ロープに用いられる繊維に適用でき、例えば、船舶用(係留索、タグライン等)ロープ、水産ロープ、農業用各種ロープ、登山ロープ、土木、電設、建設工事用の各種ロープ等の繊維製品に利用できる。よって、これら繊維製品も本発明の範囲に含まれる。
以下に実施例を例示し、本発明に係るポリエチレン繊維を具体的に説明する。しかし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
まず初めに、後段で説明する実施例および比較例で作製したマルチフィラメントおよび組紐についての物性測定および性能評価に用いる手法を説明する。
下記の測定および試験法で物性を測定し、性能を評価する。実施例および比較例では、マルチフィラメントを4本打ちにした組紐を用いて、組紐の物性を測定し、性能を評価する。なお組紐は公知の組紐機(製紐機)を用いて編み上げられる。製紐方法としては特に限定されないが、平打ち、丸打ち、角打ち等が挙げられる。
(1)極限粘度
ウベローデ型毛細粘度管を用い、135℃のデカリン中で種々の希薄溶液の比粘度を測定し、その粘度を濃度に対してプロットし、最小二乗近似で得られる直線の原点への外挿点から、極限粘度を決定する。サンプルに対して1質量%の酸化防止剤(エーピーアイコーポレーション社製、「ヨシノックス(登録商標)BHT」を添加し、135℃で4時間攪拌溶解して測定溶液を調整する。
(2)マルチフィラメントの繊度
位置の異なる5箇所でサンプルを各々10mにカットし、その重量を測定しその平均値を用いて繊度(dtex)を求める。
(3)マルチフィラメントの強度・伸度・弾性率
マルチフィラメントの強度、伸度、弾性率を、JIS L1013 8.5.1に準拠して測定する。オリエンテック社製「テンシロン」を用いて、試料長200mm(チャック間長さ)、伸長速度100%/分、雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で歪―応力曲線を求め、得られた曲線の破断点での応力から強度(cN/dtex)を算出し、曲線の原点付近の最大勾配を与える接線から弾性率(cN/dtex)を算出する。なお、測定回数は10回とし、その平均値で表す。
また、歪―応力曲線の伸度2.0%における応力を読み取り、組紐に用いたマルチフィラメント4本それぞれについて、歪−応力曲線の歪2.0%における応力値を読み取り、その応力値の変動係数(標準偏差/平均値×100)を算出する。
(4)乾燥工程後のマルチフィラメントに含まれる溶剤の含有率
乾燥工程を通過したマルチフィラメントを80℃の真空条件下に投入し、マルチフィラメントの重量が平衡になるまで揮発性溶剤を蒸発させ、マルチフィラメントの乾燥前重量とマルチフィラメントの乾燥後重量から揮発性溶剤の含有率を下記式より求める。
揮発性溶剤含有率(%)=[(乾燥前重量―乾燥後重量)/乾燥前重量]×100(%)
(5)組紐の繊度
位置の異なる5箇所でサンプルを各々1mにカットし、その重量を測定しその平均値を用いて繊度(dtex)を求める。
(6)組紐の直径
組紐に荷重(1/11.1g)を掛けた状態で外径測定器(例えばキーエンス社製の高速・高精度デジタル寸法測定器等)を用いて、組紐の山谷部を各5箇所測定し、その平均値を直径とする。
(7)組紐のリード
組紐に荷重(1/11.1g)を掛けた状態でストランドの1回の組程を読み取る。
(8)組紐の強度
オリエンテック社製「テンシロン」を用いて、チャックはスプリットドラム式を用いた。試料長50mm(チャック間長さ)、伸長速度400%/分、雰囲気温度20℃、相対湿度65%条件下で歪―応力曲線を求め、得られた曲線の破断点での応力から強度(cN/dtex)を算出する。なお、測定回数は5回とし、その平均値で表す。
(実施例)
極限粘度19.0dl/gの超高分子量ポリエチレンとデカヒドロナフタレンを重量比9:91で混合しスラリー状液体を形成させた。該物質を混合及び搬送部を備えた2軸スクリュー押出し機で溶解し、得られたポリエチレン溶液を紡糸口金から紡糸口金表面温度175℃で単孔吐出量1.3g/分で吐出した。紡糸口金に形成されたオリフィス数98個であり、オリフィス直径は0.8mmであった。吐出された糸状を引き取りつつ、20℃の水冷バスを0.8秒の時間通過させて糸状物を冷却し、その後、速度40m/分の速度で引き取り、98本の単糸からなる未延伸マルチフィラメントを得た。
次に該未延伸マルチフィラメントを110℃の熱風で1.0分の通過時間(乾燥される時間)で加熱乾燥し、2.0倍で延伸した。乾燥工程後の糸条に含有される残留溶媒率は17%であった。続いて140℃の熱風で約0.5分の通過時間で2.5倍に延伸した。合計延伸倍率を5.0倍とし、マルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを3本合糸し、得られた合糸マルチフィラメントを4本用いて製紐機にて角打ちで組紐を作製した。製紐条件を変更し、リード、直径が異なる組紐を4つ作製した(実施例1−1,1−2,1−3,1−4)。これらについて、製造条件及び得られたマルチフィラメントの物性、組紐の物性、評価結果を表1に示す。
また、実施例の組紐に用いた4本のマルチフィラメントの歪−応力曲線の伸度2.0%における応力を読み取ったものを図1に示す。なお、図1では、この4本のマルチフィラメントをそれぞれ原糸1,2,3,4と称している。
また、実施例について、組紐のリードをa、組紐の直径をb、組紐の引張強度をc、マルチフィラメントの引張強度をd、組紐の強度利用率をe=(c/d)×100、とした場合の、a/bに対するeの値をプロットしたものを、図2に示す。
(比較例)
極限粘度19.0dl/gの超高分子量ポリエチレンとデカヒドロナフタレンを重量比10:90で混合しスラリー状液体を形成させた。該物質を混合及び搬送部を備えた2軸スクリュー押出し機で溶解し、得られたポリエチレン溶液を紡糸口金から紡糸口金表面温度170℃で単孔吐出量1.4g/分で吐出した。紡糸口金に形成されたオリフィス数400個であり、オリフィス直径は0.7mmであった。紡出糸に100℃の窒素ガスを、紡糸口金の直下に設置したガス供給用のスリット状オリフィスから平均風速1.2m/秒で、できるだけ均等に吹き付けて、繊維表面のデカリンを積極的に蒸発させ、その直後、30℃に設定した空気流で実質的に冷却し乾燥を行なった。この乾燥工程での糸状物の通過時間(乾燥される時間)は0.02分であった。その後、速度75m/分の速度で引き取った。この際、糸条に含有される残留溶媒率は54%であった。
次に、得られたマルチフィラメントを100℃の熱風で0.5分の通過時間で加熱し、4.0倍に延伸した。続いて149℃の熱風で2.0分の通過時間で加熱し、4.0倍に延伸した。合計延伸倍率を16.0倍とし、マルチフィラメントを得た。得られたマルチフィラメントを4本合糸し、得られた合糸マルチフィラメントを4本用いて製紐機にて角打ちで組紐を作製した。製紐条件を変更し、リード、直径が異なる組紐を4つ作製した(比較例1−1,1−2,1−3,1−4)。これらについて、マルチフィラメントの製造条件及び得られたマルチフィラメントの物性、組紐の物性、評価結果を表1に示す。また、比較例についても、a/bに対するeの値をプロットしたものを、図2に示す。
表1から分かるように、実施例と比較して比較例は、得られたマルチフィラメントの歪−応力曲線の歪2.0%における応力値の変動係数は8.6%と大きくなり、図2に示すように、組紐での強度利用率は低くなった。これは、実施例と比較して比較例は乾燥工程の通過時間が短いためと考えられる。
図2から、実施例では、3.5≦a/b≦10.0の範囲にて、e≧7.2(a/b)+7.6を満たしており、比較例では満たしていないことがわかる。
以上で説明した実施の形態および実施例は、すべての点で例示であって、制限的なものではない。本発明の技術的範囲は、特許請求の範囲によって画定され、また特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
本発明のポリエチレン繊維は、船舶用(係留索、タグライン等)、水産ロープ、農業用各種ロープ、登山ロープ、土木、電設、建設工事用の各種ロープ等、様々に利用でき、各種産業に大いに貢献できる。

Claims (6)

  1. ポリエチレン繊維であって、
    当該ポリエチレン繊維から成るマルチフィラメントを用いて4本打ち構成の組紐にした場合、当該組紐のリードをa、当該組紐の直径をb、当該組紐の引張強度をc、および前記マルチフィラメントの引張強度をdとすると、(c/d)×100で定義される強度利用率eの値は、3.5≦a/b≦10.0の範囲にて、下記式を満たすことを特徴とするポリエチレン繊維。
    e≧7.2(a/b)+7.6
  2. 前記組紐に用いる各マルチフィラメントの応力−歪曲線において、歪2.0%での応力値は、変動係数において5.0%以内である、ことを特徴とする請求項1に記載のポリエチレン繊維。
  3. 前記組紐に用いる各マルチフィラメントは、引張強度が15cN/dtex以上、破断伸度が5.0%以上、初期弾性率が800cN/dtex以下であり、単糸の繊度が0.5dtex以上10dtex以下であり、フィラメント本数が10〜10000本である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のポリエチレン繊維。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のポリエチレン繊維を用いた繊維製品。
  5. 組紐、釣糸、ロープ、またはネットである請求項4に記載の繊維製品。
  6. ポリエチレン繊維の製造方法において、
    極限粘度[η]が5〜40であり、その繰り返し単位が90モル%以上エチレンからなるポリエチレンを、濃度0.5〜40質量%となるよう有機溶媒に溶解してポリエチレン溶液にする溶解工程と、
    前記ポリエチレン溶液を紡糸してポリエチレン繊維状物を得る繊維状物取得工程と、
    前記ポリエチレン繊維状物を乾燥する乾燥工程と延伸する延伸工程とを含み、
    前記乾燥工程にて前記ポリエチレン繊維状物が乾燥される時間は0.2分以上30分以下であり、
    前記乾燥工程および前記延伸工程での合計延伸倍率は乾燥前に対して1.5倍〜60倍であり、
    前記乾燥工程後かつ前記延伸工程前の繊維に含まれる残留溶媒率は15%以下である、ことを特徴とするポリエチレン繊維の製造方法。
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