近年、体内に発生する活性酸素を還元するものとして健康用水素水が脚光を浴びている。また、脳梗塞後の症状が水素ガスの吸引で軽減したという報告もなされているように水素医療という新たな領域も開かれようとしている。水の電気分解では、教育実験用にH管と言われるものが良く知られているが、これはあくまで電解の実験用で水素を得る実用に使えるものではない。そこで「特許文献4」の様に電解膜と言われる分離膜を利用した本格的な電解式水素水生成器も製品化されている。そして、この電解膜に高価な個体高分子膜を用いないで、ポリエステルの布地などを簡易隔膜として用いているのが「特許文献1」や「特許文献3」などの例である。ここではこれらのシートや膜を総称して分離膜と呼ぶことにする。
これらの分離膜を用いないで、水を電気分解して発生する水素と酸素及びオゾンを分離しないままに一緒に吸引したり、これを水に溶かした水素水を作り飲んだりする極く簡単な方式のものもある。しかし、酸素やオゾンと分離しても、吸引効率が高く、コンパクトで安価な機器は製品化されていない。電解液を工夫してオゾンを発生させないということも出来るが、その場合にも、後述するように、電気分解して出来る酸素は、酸化力のレベルは色々ある活性酸素である可能性が有ることを本発明者は見出しているが、この活性酸素を一緒に吸引させてしう機器も多いという現状がある。「特許文献2」は工業的に燃料電池などで使用する水素ガスに含まれる、水滴や電解質成分を除去する技術の一つである。また、気体水素は水素爆発の危険性があり、この危険性を除去して家庭で安心に扱える上記のような製品は見られないという現状もある。
また、水素水では、必要とする水素の量を摂取するには大量の水素水を飲まなくてはならないので、今後の水素医療は気体水素を吸引する領域の方が増えると予想される。その気体水素を吸引するチューブとして用いられているのが、従来からある酸素吸入カニューラという、先端を鼻孔に入れてチューブで水素発生容器までを接続するものである。これに関して、本発明者は水素吸引用に改良した鼻孔カニューラとして「特許文献5」に示す意匠登録を行っている。本発明の課題と密接に関連するので先行技術の一つとして明記するが、これらの鼻孔カニューラは鼻孔を密閉して用いるものではないので、人の呼吸期間のうち呼気の間には発生する水素が有効に吸引されることなく廃棄されるので、吸引効率はとても悪くそのままでは50%程度になってしまうという問題が解る。
本発明が解決しようとする課題は、コンパクトで家庭への普及を実現しやすい安価な水素吸引器を人々に提供する事である。この課題を具体的に列記すると、いずれも密接不可分であるが、その第一は、電解で発生する水素を無駄なく吸引出来ることである。第二は電解でオゾンを発生させない事であり、発生しても分離して水素のみを吸引出来ることである。第三は、特殊な電解液を使用しなくて済み、更に防水滴及び防爆機能を有する事である。
本発明の第一の小課題を実現する為の手段として、容器の外側の上部に水素排出口と外気開放口を設け、容器内には満杯未満の電解液を入れ容器の内側の上部には空間を作る。そして、仕切り壁が容器内を水素排出口側と外気開放口側に分割し、陰電極6を仕切り壁より水素排出口側の電解液3内に設置する。又は、陰電極を前記仕切り壁と同様に配置して、陽電極を陰電極より水素排出口側の電解液の内部に配置する方法も可能である。こうして水素排出口の鼻孔カニューラ挿入口に鼻孔カニューラを取り付けて水素を吸引するのであるが、その諸条件とその効果について説明する。従来装置においては、水素吸引に医療機関などで多量に使用されている酸素吸入用の鼻孔カニューラを転用することが多い。酸素はボンベから減圧されて連続的に供給され、したがって人の呼気の期間の酸素は吸引されずに無駄になるのだが、ボンベの酸素は安価なのでこの不都合は無視されてきた。そこで、本発明では、人の呼吸に同調して無駄を無くす水素吸引器を考案した。まず、電解水素を得るには、電解液の内部に電極を配置して、少なくとも陰電極から発生する水素気泡を電解液表面で水素気体に変換して鼻孔カニューラに送ることで良い。電解では酸素と共にオゾンも陽電極で発生する場合があるが、ここではオゾンは発生させないという前提で説明する。電解で容器を密閉した場合には、発生する水素と酸素により容器内部の圧力は相当なものとなり容器を破壊するほどである。一方、密閉容器に鼻孔カニューラを接続して発生する水素と酸素を吸引しようすると、人の吸気の期間は問題ないものの、呼気の期間に鼻孔カニューラの鼻孔口に呼気の風圧があっても、容器内から発生する水素と酸素の両気体の圧力が圧倒的に優るので、鼻孔カニューラからは外気に酸素はともかく水素が無駄に放散される。従って本発明ではこの呼気の期間の鼻孔カニューラの先端の風圧を容器内に吸収して、少なくともチューブ内の水素を外に放散させないようにする。呼気の期間には、容器の上部の気体の収容部の内圧は電解液の液面を下に押すので、この時に電解液がいずれかに移動してこの内圧の高まりを吸収すればよいことになる。従って、容器上部を少なくとも水素気体が集まる空間と、外気に開放された空間に分割して、電解液の方は分割されることなく容器内を一つになって流通することを可能とする仕切り壁を設けると、呼気の期間は水素の集まる空間の液面は下がり、逆に外気開放側の液面は上がって、前記の風圧を充分に吸収して、液面の上下動は呼吸と同調するようになる。この両方の液面の上下差が水素の集まる空間の内圧になるが、この内圧が電解で発生する気体を排出する圧力と、鼻孔カニューラの鼻孔での呼気の風圧とバランスする。従って、この間に、水素の集まる空間側の液面が下がる電解液の容積が、この間に容器内で発生する気体の量より多ければ、鼻孔カニューラのチューブ内の水素は放散されることなく押し戻されていることになり、次の吸気の期間に吸引される水素は発生する全ての水素を吸引する事になるので、吸引効率は100%となる。但し、電解液を容器に満杯にせずに出来る容器内の両空間の最低限必要とする容積と、入れる電解液の量の下限などは、人の呼気量や鼻孔の広さと鼻孔カニューラの形状と固定様態、及び電解で発生する気体の量と分離方法等により決まるもので、一概に表記出来ないが、例えば一辺が60mmの立方体の容器を中間で仕切ったような製品の場合の電解液の液面の上下動は数mm程度である。
本発明の第一の小課題を実現する為の手段として、上記の仕切り壁と両電極の構成を変えた方法もある。陽電極は一般に高価なことに比して陰電極は安価であるので、形状を大きくしたり変形させたりすることが可能であるという特徴を生かして、陰電極に上記の仕切り壁の機能を持たせる。陰電極が容器を同様に分割し、陽電極は水素排出側の電解液に配置することが上記と異なる方法で、陰電極は陽電極の側からのみ発生する事になる。従って、この場合は上記とは異なり、水素排出口からは陽電極から発生する酸素も一緒に吸引することになる。
本発明の第二の小課題としてのオゾンを発生させないか減量する方法として、電解液をアルカリ性にする事を本発明者は発見したので説明する。本発明者は「特許文献6」において、電気分解において陽電極に酸素と共にオゾンが生成される場合の根拠を独自のナノ膜電解理論として開示している。そこでは、従来の電気化学においては触媒作用として説明されてきた、オゾンが発生する為の過電圧という現象が、ほぼ全ての金属や炭素の表面に作られている絶縁酸化被膜であるナノ膜によるトンネル電圧であることを解明している。そして、逆にこの簡単に測定できるこのトンネル電圧からナノ膜の厚さを測定する方法を「特許文献7」において提唱した。このナノ膜の厚さに比例して従来の電気化学が言うところの過電圧、即ち本発明者の言う第2のトンネル電圧が増大することが解った。白金コートの陽電極でオゾンが発生する事は公知であるが、実際にオゾンを多く発生する電極であるDLCという導電性ダイヤモンドコーティングなどを調べるとこのナノ膜の厚さが大きい。このこともオゾン発生にはこのトンネル電圧が寄与していることの証左にもなっている。
次に、電気分解で発生する酸素は、オゾンが含まれていなくても多かれ少なかれ活性酸素である可能性が有り、水素吸引でこれらを一緒に吸引すると有害の場合が有ることを説明する。本発明者は「特許文献6」において、水分子H2O内の電子が、電解液によって作られる強い電界により飛び出すこの現象を第1のトンネル現象として説明している。そして、電子が上記に説明した陽電極のナノ膜を飛び越える第2のトンネル現象と合わせて、つまり第1のトンネル電圧と第2のトンネル電圧の合計のトンネル電圧によるエネルギーが、作用と反作用の原理により、陽電極で発生する酸素に与えられる事を本発明者は推論した。第2のトンネル電圧は1.23Vと言う水H2Oの理論電気分解電圧である。白金の第2のトンネル電圧は本発明者の測定では1.27Vであり、白金電極でオゾンが発生する事は実験的に公知である。導電性ダイヤモンドや鉛や酸化錫などもこの第2のトンネル電圧が高くオゾンが発生する。
電気化学では陰電極側で水分子H2Oが電気分解するという解説もあるが、本発明者は陽電極の界面で水分子H2OやOH−などが電気分解すること見出していてこれを次に説明する。水の中に電解質によるイオンが存在すると、例えば陽電極の界面にはナノサイズの近距離にそのマイナスイオンの電気二重層が形成されることは電気化学で近年に発見され、電気二重層コンデンサが実用にされている。この電極界面を拡大して解説すると、この層となったマイナスイオンは陽電極との間に大きな電界をつくる。例えば電解質を希硫酸とすると、SO4 2−イオンが陽電極の直近に並ぶのであるが、SO4 2−から電子が飛び出す電圧は1.23Vより大きく、イオンの大きさもH2Oより大きい。するとこれより小さい水分子H2Oは分極していることもあって、SO4 2−イオンよりも直近に整列している数は多い事になる。従ってSO4 2−イオンの二重層が作り出す大きな電界によりH2O内の電子が陽電極に吸引される電位が1.23V以上になると、この電子は第1のトンネル現象として飛び出して、水はH+とOH−に分解する。そして、OH−はさらにH+と酸素原子Oになる。この時に、酸素原子Oは先のトンネル電圧による反作用のエネルギーを得て、酸素分子O2になったりオゾンO3になったりする。この現象が、水に電解質を加えて初めて水の電気分解が可能となり、陽電極の種類によっては、オゾンが生成するメカニズムで、従来の電気化学では触媒効果としてしか明らかにしえなかったことである。 電解液を酸性にして、陽電極をグラファイトにすると陽電極からは酸素などの一切の気泡が発生しないことが有る。グラファイトの酸化被膜は白金よりも厚いという実験結果も得ているので、この現象も、陽電極で発生する酸素のほとんどがオゾンなどの活性酸素となり、グラファイトの成分である炭素と全て反応して気泡にはならないという推論が成立する。このようにグラファイトを用いれば、オゾンを含まないで水素を含む気体を吸引することも出来るが、グラファイトはオゾンと反応して酸化された炭素粒を分離する。従って電極は痩せて行き寿命が短く、容器の底にはこの酸化された炭素粒が沈殿する。このような欠点があるので、本発明での請求項にはこのグラファイトの手段は加えないことにする。
一方、電解液を、電解質の種類によって値は異なるものの、特定の値以上のアルカリ性にすると、陽電極からオゾンが発生しない事を本発明者は見出して、電極でオゾンが出来ると赤褐色になって反応するヨー化カリウム試薬を水酸化ナトリュームを添加した電解液に入れてそれを確認した。希硫酸を入れて同様に確認すると電極表面で試薬が着色してオゾンの発生する様子はよく見て取れる。この理論的解明は以下のようになる。アルカリ電解液のマイナスイオンはOH−で、これは水分子H2Oより小さく、その理論分解電圧は0.8Vである。従って、陽電極の最直近にはOH−の電気二重層が綺麗に形成され、その電位が0.8Vになると第1のトンネル現象によりOH−内の電子が飛び出してH+と酸素原子Oとなり酸素原子Oは直ちに酸素分子O2となる。第1のトンネル電圧が水分子の理論分解電圧である1.23Vより0.43Vも低い0.8Vであることにより、ナノ膜電解理論からして出来上がる酸素の酸化エネルギーはオゾンより低いのでオゾンは生成されない。しかし、重要な事はオゾンにはならないものの、空気中にある酸素よりも酸化力の強い活性酸素が、例え電解液をアルカリ性にしたとしても陽電極から発生している可能性がある事である。空気中の酸素では錆びないステンレスを陽電極にして、カセイソーダを電解質とした電解液をpH11.6以上のアルカリ性にして、且つ、ヨー化カリウム試薬を添加して電解すると、試薬は反応せずに、つまりはオゾンは生成しないものの、ステンレスは酸化して錆びてしまい溶液は茶色に染まっていくことを確認し、活性酸素が生成されている可能性を実証した。水素吸引は体内の悪玉と言われる活性酸素と反応し、これを除去することが水素医療に使われる科学的根拠である。「体内の錆びをとる」言われる所以であるが、しかし、頭痛の原因となるほどの酸化力の強い活性酸素であるオゾンは、水素吸引において有害と警告されつつあるものの、もしも空気中の酸素より酸化力の強い酸素であれば、それを水素と共に吸引してしまう弊害は取り除かなくてはならない。
次に、特殊な電解液を使用しないで済む家庭用の機器とする為の手段として、電解液は重曹と水道水で作る。そして精製水でなく水道水で実現することが出来る為に、陰電極として表面に白金やダイヤモンドなど何もコートしないチタン単体あるいはチタンの合金を用いる。多くの従来の機器が特殊な電解液を必要とした理由は、水道水にはカルシュームが溶けていて電気分解するとこれが陰電極に析出して電解を阻害し、いずれ電流が流れなくなることによる。この析出したカルシュームはクエン酸で溶かして洗浄するとか一旦逆電流を流して陰電極から剥がしてしまう技術は知られている。本発明者はカルシュームが析出しない陰電極の材料を見出すことに成功した。チタンは絶縁酸化被膜が厚く酸化されにくいので、一般に陽電極として、白金をコートして使う。例えこの白金コートにピンホールがあってもそこから電極が腐食しないようにする為である。このように、チタンは絶縁酸化被膜が厚いので表面には電流を流せないということが一般的な考えとなっている。しかし、これを陰電極に用いると様相は一変して、その酸化被膜の整流作用により電流は流れる。そして、この表面の、筆者が見出したナノ膜電解理論では、酸化被膜が厚い事が幸いして、第3のトンネル現象により陰電極界面から飛び出す電子のエネルギーが高い。その結果として、陰電極に用いたチタンの表面にはカノシュームは析出しない事を発見した。
さらに本発明の課題である、水素を安全で快適に吸引する為の本発明による次の手段を説明する。特に水素を扱う製品は水素爆発に特段に留意する必要が有る。その為の手段として、本発明では水素排出口と水素吸引用チューブ挿入部の間に隔室を設けてセラミックボールなどの個体の粒体を詰めた。水素は空気より約10倍も軽く、また水素は空気に対して4%から75%の濃度でなければ爆発しないことは知られている。したがって個体の粒体間の隙間を通って水素は排出されることにより、水素が延焼する上記の条件を整わなくすることが出来て実験でも水素爆発をしないことが確認出来た。また、物事の延焼には発熱の維持が必要であるので、個体は出来るだけ熱容量の大きなものがさらに効果的である。次に、隔室は設けないで、水素排出口に長さが1m以上の鼻孔カニューラのチューブを取り付けて、その先端に火気を近づけても、同様の理由で水素爆発に至らないことも確認した。隔室に加えて二重の防爆対策とする事が出来る。電解では電解損失により電解液の液温もそれなりに上昇する事と、マイクロバブル状の水素気泡が液面ではじける事により水蒸気が水素排出口から出ていく。もしも、上記の防爆用の前記隔室を設けないと、水蒸気はチューブで冷やされて大きな水滴となって鼻孔に達する様になり、鼻から水滴が漏れるという不快な現象が起きる。隔室があり、その壁面であったり、内部の個体の粒体の表面に水蒸気が触れると、水蒸気は冷やされて、チューブに到達する前に水滴となってこの隔室に溜まるか隔室の下に落下する。水素吸引は概略30分程度を1回の吸引の目安にするので、吸引する毎に一度チューブの先端から小さく息を吹いたり吸ったりすれば、もし前記隔室に水が溜まってもその都度下の容器に落とすことが出来る。
最後に、陽電極にオゾンが発生しても、吸引する水素からは分離し、更に、発生した水素の約半分もの水素を無駄にする従来機器の欠点を改善する方法も考案したので次にこれを説明する。前記陽電極から発生する気泡は全て外気開放口に集めるように前記仕切り壁と前記両電極の関係を以下の様にする。また、両電極から発生して上昇する気泡の一部は電解液内に滞留して循環するので、これも分離する必要がある。前記仕切り壁は略垂直で、下端が略水平な板条であり、前記両電極の形状は好ましくは細長い棒状ないしはパイプ状であり、前記陰電極は前記仕切り壁の下端に好ましくは接近して、前記水素排出側の該下端より下側に、該下端に並行して略水平に配置し、前記陽電極は好ましくは前記陰電極と同一水平面上に、前記仕切り壁の下端に好ましくは接近して、該陰電極と並行して設置する。両電極から発生する気泡を膜などを使わずに分離する構造であるにも関わらず、両電極はいずれも前記仕切り壁の下端に近接させるので、結果的に両電極の電極間距離は極めて狭く、また、両電極の対向面積はとても広く出来る。ここが教育用のH管とは全く異なり、従って、電解効率も飛躍的に高くなる。この事が可能となる根拠を以下に概略説明する。棒状で水平である両電極から発生する気泡群は、両電極の頂部に集まり、水流と共に一直線に上昇して垂直の二つの薄い壁を形成することが解った。そして、この二つの気泡の壁の間に仕切り壁の下端があって上端は容器上部に密着させる。電解液の液面に到達した気泡と水流はそこで前記仕切り壁によりそれぞれ反対側に回流していき、一部の気泡は再び電解液の内部に水流と共に還流していく。この時、電極は棒状であるので、断面の表面側が略円形であり、断面の回りに発生する気泡は断面の頂点に集められて電極に沿う一直線状の壁となって上昇する。そして、この上昇する気泡が電極回りの気泡を集めて頂点に集中する水流を作っている。また、液面上部から還流して来る気泡は、再びこの水流にのって上昇するので、両電極から発生する気泡は、電解液そのものを膜などで分離せずとも、水流の経路を工夫する事に寄って分離する事が出来た。このことは、教育用のH管では出来ない、水流には連続性が有るというこの自然科学の法則を利用して、電極間距離を気泡の大きさの倍程度まで極端に狭く出来る水流分離と言う事が出来る新しい手段である。一列に整列して上昇する気泡の壁が出来るので、前記仕切り壁は、その下端は変動する電解液の液面より常に下にあって、少なくとも液面に到達した水流を一方向に決める程度にまで液面の下に有れば充分であるが、容器を傾斜すると、気泡の壁と仕切り壁の位置関係が崩れるので、仕切り壁の下端は、両電極の断面の頂部のところまでを下限として、充分に液面より下にすることが好ましい。
本発明によれば、発生する水素を無駄なく吸引出来て、電解では有害なオゾンを発生させないか、オゾンが発生してもそれを電解膜を用いずに簡単に分離して水素のみを吸引出来て、また、特殊な電解液を使用しなくて水道水と重曹での使用が可能で、且つ、防水滴・防爆機能を有し、コンパクトで家庭への普及を実現しやすい安価な水素吸引器を人々に提供する事が出来る。
本発明を実施するための基本形態は以下のようになり図1を用いて説明する。
容器2の外側の上部に水素排出口20と外気開放口19を設け、容器2内には満杯未満の電解液3を入れ容器2の内側の上部には空間を作る。そして、仕切り壁13が容器2内を水素排出口20側と外気開放口19側に分割し、陰電極6を仕切り壁13より水素排出口20側の電解液3内に設置する。仕切り壁13には水素排出口20側と外気開放口19側と外気開放口19側の、それぞれの側の電解液3を流通する開口部25を設ける。ここで、両電極に電圧を印加すると陰電極6からは水素気泡9が、陽電極5からは酸素気泡7が発生し垂直に上昇し、また電解液3内を還流する。この全ての水素気泡を外気開放口19側に混入させないことが必要で、陰電極6の全ての垂直面が仕切り壁13より水素排出口20側にあるように設置し、仕切り壁13の開口部25を気泡が流れない位置と大きさにする。従って、開口部25は、好ましくは、垂直位置で陰電極6の位置よりも下側に設けるか、開口面積を小さくしたりメッシュを貼ったりする必要が有る。こうして、陰電極6から発生する水素気泡9は電解液3の液面で気体水素となり全て水素排出口20側に集められる。陽電極5は水素排出口20側の電解液3内に設置すれば、陽電極5から発生する酸素も水素と一緒に水素排出口20側に集められる。陽電極5を外気開放口19側に設置すれば、酸素は水素と分離して外気開放口19側から放出される。
水素排出口20には鼻孔カニューラ挿入部18を設置し、そこに鼻孔カニューラを挿入して人は水素を吸引する。人が水素を吸引する際の呼気の期間には、呼気の空気圧により鼻孔カニューラのチューブ内の水素には逆流圧が生じる。従って水素室14の内圧が高まり、仕切り壁13の開口部25が有る為に、矢印22と矢印23のように電解液3の液面が上下して前記の内圧を吸収する。電解液3を満杯未満としたのは外気開放口19側の液面の上昇により外気開放口19より電解液3が溢れることが無い様にする為である。水素室14と外気解放室は仕切り壁13により分割されたて出来た空間であり、該空間は人の呼吸気圧により前記電解液の液面が上下しても空間を維持し続ける容積である程度に満杯未満の電解液3を入れる必要が有る。どの程度の容積を満杯未満にするかは人の呼吸圧や量と容器2などのサイズと水素発生量によるもので、外気開放口19側に概略6ccの空間が出来る程度で良い。こうして電解液3の液面は人の呼吸に同調して上下に変動しつつ鼻孔カニューラのチューブ内の水素を少し逆流させることが可能となり、呼気の期間に鼻孔カニューラから水素が無駄に外気に放散しないようになる。人の呼吸で呼気の期間は約半分なので吸引効率は約50%から約100%へと大幅に改善されることになる。
水素排出口20と外気開放口19は必ずしも容器3の上面にある必要は無くそれぞれ水素室14と解放室15に接続されて電解液3の液面より常に上部に有れば良い。仕切り壁13も平板の必要は無くパイプ状でも良く、また、その下端は容器2の底まで密着していても、気泡が安易に通過しない箇所と大きさの開口部で、例えばメッシュを介して電解液3を流通させれば良く、こうすれば陰電極6の配置位置は仕切り壁の下端に関係なく配置しても良い。陽電極5から発生する酸素などの気体を水素と分離しない場合は、陽電極5は仕切り壁13と一体になっても良く、陽電極5が仕切り壁13の機能を同時に担っても良い。また、水素室14と解放室15は電解液3の液面に直接接することなくチューブ等で接続されていても良い。さらに両電極は必ずしも電解液3の中には全部が無くて、例えば容器2の側壁の一部を成していても良い。電解液3が人の呼吸に同調して液面が変動する上記の原理が生かされるものであれば、それを実現する形態は様々に変形が可能であり、ここで説明した形態に限定されるものではない。本発明による容器は透明にすることが好ましく、両電極から発生する気泡と共に呼吸の度に上下する液面の変動が見て取れるようになっている。
本発明による手段によれば、陰電極5を電解液3の内部に設置する上記の基本形態に加えて、もう一つの基本的形態が出来るので図2を用いて説明する。仕切り壁13の機能を電極に持たせてしまう方法である。陽電極5を仕切り壁として用いることは上記の基本形態でも述べているが、陽電極は白金をコートするので一般的に価格が高くなってしまい水素吸引器としては不向きである。しかし、陰電極の材料は安価であるので、ここでは陰電極6に仕切り壁13の機能を持たせる。容器2の外側の上部に水素排出口20と外気開放口19を設け、容器2内には満杯未満の電解液3を入れ容器2の内側の上部には空間を作る。そして、陰電極6が容器2内を水素排出口20側と外気開放口19側に分割し、陽電極5は水素排出口20側に配置する。陰電極6には水素排出口20側と外気開放口19側と外気開放口19側の両側の電解液3を流通する開口部25を設ける。ここで、両電極に電圧を印加すると陰電極6の陽電極5側からは水素気泡9が、陽電極5からは酸素気泡7が発生し垂直に上昇し、また電解液3内を還流する。この全ての水素気泡を外気開放口19側に混入させないことが必要で、従って、開口部25は、好ましくは、垂直位置で陽電極5の位置よりも下側に設けるか、開口面積を小さくしたりメッシュを貼ったりする必要が有る。こうして、陰電極6から発生する水素気泡9は電解液3の液面で気体水素となり全て水素排出口20側に集められる。水素排出口20には鼻孔カニューラ挿入部18を設置し、そこに鼻孔カニューラを挿入して人は水素を吸引する。その時の容器2の内側上部の空間の容積と容器2に入れる電解液3の量との必要な関係は、上記した最初の基本形態と全く同様である。
上記した最初の基本形態において、図3に示すように、陽電極5と陰電極6を配置すると、両電極間の距離を極力狭くし対向面積は大きく出来て、従って水素発生効率を高くした上で、陽電極6から発生する酸素などの気体を分離して、陰電極6で発生する水素のみを、少しも無駄にしないで吸引出来るようになる。仕切り壁13は略垂直で、下端が略水平な板条であり、前記両電極の形状は好ましくは細長い棒状ないしはパイプ状であり、前記両電極の断面の頂部は前記仕切り壁の下端より下にして、両電極を該下端に並行で、且つ好ましくは前記下端に接近して、陽電極5は水平の位置で仕切り壁13の下方に延長した面より前記外気開放口側に配置し、故に、前記陽電極から発生して上昇する酸素やオゾンなどの気泡は、前記電解液3の液面で気体となって全て外気開放口から外気に放散させる。こうすると、両電極間の距離を略数mmまで接近しても、酸素やオゾンを水素から分離する事が出来るので、前記の教育実験用H管では実現出来ない電解効率も達成する事が出来るようになる。すなわち、棒状ないしはパイプ状のである両電極の断面の頂点部位に集まる気泡は、それぞれの電極の断面を狭く周回する水流を作ると共に、両電極の水平の二列に対応して、両電極の上側を狭く整列して二列の垂直の壁を成して上昇する。この壁は仕切り壁13と同様に両電極側を回遊し還流する両気泡群を分離する機能を有する。両電極の真上の液面で、上昇してくる気泡と水流の流れの向きをそれぞれ相手側の電極側に向けないように、故に、水平の位置ではこの二列の壁の中間に位置し、垂直の位置では容器の上から液面の下まで、仕切り壁13が有れば、水流を作って電解液3の内部を回流し還流するマイクロバブル状の気泡も含めて両電極で発生する気体はそれぞれの側に分離され、酸素と水素は外気開放口19側へ、水素は水素排出口20側へ明確に分離される。両電極から一列で上昇する気泡の壁は垂直に上昇するので、容器を傾けると、この壁が到達する液面の位置は仕切り壁の位置とは外れてしまう場合がある。この事を避ける為に仕切り壁13の下端の垂直位置は、好ましくは該下端の下側にある両電極の断面の頂部近くまで垂直に下方に延ばすことが好ましい。こうすれば容器が傾斜しても仕切り壁13が上昇する両方の気泡群を混合させることは無い。仕切り壁13の下端が水平の位置で両電極の頂部より下にあると、両電極間を流通するイオンの流れを仕切り壁13が阻害して電解効率は低下することになる。
上記した全ての形態において、電解液3を電解質の種類によって値は異なるものの、特定の値以上のアルカリ性にすると、陽電極からオゾンが発生せずに、水素排出口20からオゾンの混入しない水素を吸引出来るようになる。電解液が酸性であったり、pHの低いアルカリの場合には水分子H2Oが電気分解される。そしてその際に陽電極5が鉛で酸化錫であったり、その表面に白金や導電性ダイヤモンドがコートしてあるとオゾンが発生する。これらの電極材料の酸化被膜の厚さで決まる第2のトンネル電圧はほぼ等しいので、以下の結果はほぼ同じになることは類推できる。電解液がアルカリ性であると、アルカリ強度に応じてOH−イオンが多くなり、pHがある値以上になると陽電極5の界面にあるほとんどの水分子H2Oを押しのけてほぼOH−イオンからなる電気二重層が形成される。そして、OH−イオンの第1のトンネル電圧は低いので、結果として第1と第2のトンネル電圧の合計が低くなってオゾンは発生しなくなる。本発明の課題は家庭でも安全に使える水素吸引器を提供する事であるので、アルカリの電解質として炭酸ナトリュームを用いる事とする。そして、陽電極に白金をコートしたチタンを用いて、前記電解液を炭酸ナトリュームのpH10.5以上の溶液とする。この値は実施例2によるデータに基づくものである。しかし、この場合もオゾンほどの酸化力は無いものの程度の差こそあれ活性酸素が発生していることも否定できない。
さらに上記した全ての形態において、陰電極5には、白金やダイヤモンド等の導電性耐酸化膜を特別にコートしないチタン、ないしはチタンの合金を用いると、電解液3を水道水で生成しても陰電極表面にカルシュームなどが析出して電解の効率を落としたり電解不能にしたりすることを簡単に回避出来るようになる。これはチタンの厚い酸化ナノ膜によるもので、陰電極にチタンを用いるとこの酸化被膜は半導体となり、通過する電子には少し大きな第3のトンネル現象によるエネルギーが与えられる事によりカルシュームが析出しないものと推論する。このことは電解液をオゾンが発生しないアルカリ性にしても同じ効果が得られることは確認した。チタンと同様に、厚い酸化被膜を有するものにはタングステンがあり、これにも同様の効果が有ることは類推できるが実証はしていない。
さらに上記した全ての形態において、図2に示すように、水素排出口20と鼻孔カニューラ挿入部18の間に、隔室16を設けると防水滴・防水素爆発の機能を有する事が出来る。該隔室16の内部には個体17を入れる事が好ましく、個体17は隔室16の内部を塞ぐことがなく、且つ水に溶けなく簡単には燃焼しない、プラスチック、或は金属、或はセラミック、或は炭素材、或は石材から成り、好ましくは多数の粒体形状とする。炭素材としては活性炭が好ましく、活性炭であればオゾンを吸収することも出来る。陰電極6で発生する水素気泡は電解液3の液面ではじけて気体となり水素排出口20から隔室16に入る。そして、電解液3は電解継続時間と共に温度が上昇して水蒸気が出来易くなるので、この水蒸気も隔室16内に入る。この水蒸気は隔室16の壁や、中に入れられた個体17の表面に触れて冷やされて水滴となり、これが隔室16の底部に溜まり、自然に落下するか、水素吸引動作の開始時に人が水素吸引用の鼻孔カニューラを通じて息を吹くことにより容器内に落とされる。従ってこの個体17は水蒸気の接触面積を出来るだけ大きくして温度を下げるものであり、水滴に溶けることが無く無害な物であれば良い。また、鼻孔カニューラ挿入部18に火気が接近した時、ここから排出される水素は空気中の酸素と反応して燃えることになるが、水素は空気に対して4%以上で75%以下の濃度にならないと燃えない性格が有り、空気より10倍軽い水素は隔室16内では空気とは分離し、容器2内で分断されている。また、個体17に細かく接触していて燃焼温度も即座に冷やされるので、火気により容器2内の水素が水素爆発に至ることは無い。こうして隔室16は防滴と防爆の両機能を有する。もし、隔室16内に入れる粒体形状の個体17が水素排出口20から下の容器2に内部に落下する形状であれば、隔室16下部の水素排出口20にはステンレスなどのメッシュを敷くことになる。一方、前記外気開放口19側からも水蒸気が排出されるので、こちら側に同様な隔室を設けても水滴防止が出来る。また、このことは電解液をオゾンが発生しないアルカリ性にしても、また、陰電極6をチタン単体にしても、同じ効果が得られることは確認した。
図1は本発明の実施例1の断面概念説明図であり、この図を用いて実施例1を説明する。容器2は縦60mm、横60mm、 高さ45mm の透明の箱で、厚さ1.5mmのポリスチロールで出来ている。容器上部の左側で左側面より12mm離れて直径8mmの外気開放口19があり、ここから水道水に電解質として重曹9gを溶かした電解液3を容器上部から約14mm下の位置まで入れる。電解液3はこれで概略100ccとなる。容器上部の右側で右側側面より15mm離れて直径4mmの水素排出口20があり、ここに外径6mmの鼻孔カニューラ挿入口となるパイプが取り付けられている。陽電極5はチタン基材に白金をコートした直径2mmで長さ72mmの丸棒で、容器2の下から12mmで容器2の右側の壁から23mmの位置に、容器2の手前の側面の穴から反対の側面まで容器2内に水平に挿入して後に、この側面の穴は陽電極5の側面と密閉接着してある。陰電極6は陽電極のチタン基材と同じものを何もコートせずにそのままのチタン単体として、陽電極5と同一水平面上に陽電極5とは容器2の右側の壁方向に約8mm離して並行に同様に設置してある。そしてこの両電極は図示していない外部の直流電源にそれぞれ接続される。仕切り壁13は厚さ1.5mmの透明のアクリル板で、並行して配置された両電極に同様に並行して、水平位置では容器2の右側の壁から36mmの中央寄りに、垂直位置では上は容器2の上部に密着し、下端は容器2の底面から6mmまで、分割し垂直に仕切っている。
両電極に9Vを印加すると略1Aの電流が流れ、陽電極5から酸素気泡7が、陰電極6から水素気泡9がそれぞれ一直線に上昇し、電解液3の液面で一部は気体となり残りの一部は電解液3の内部に還流していく。しかし、両電極の直近には降りて来た気泡を再び上昇させる水流が発生していて、それぞれに電解液3の内部を還流する気泡は仕切り壁13の下を超して外気開放口19に向かう事は無かった。こうして、両電極から発生する全ての気体は水素を主体としたものでそれを一括して水素排出口20から鼻孔カニューラ挿入口18に行き、人に吸引される。この時、鼻孔カニューラ挿入口18を3分間閉じると、水素室14の液面は約15mm低下した。電解で発生する水素と酸素の比率は2:1であるので、3分間で21ccの水素が吸引出来る事になる。さて、鼻孔カニューラを実際に装着して呼吸をしてみると、呼気の期間には水素室14の液面は矢印22の示すように約2mm低下し、外気開放口19側の液面は約3mm上昇して呼吸と同調していることが確認出来た。呼気の期間に水素室14の液面が下がるということは、鼻孔カニューラの細いチューブ内の気体が4cc程確実に押し戻されているとを示していて、この間に発生している水素を含むすべての気体が外気に放散していないことになる。こうして、水素に着目すると全てが吸引されるので吸引効率は100%になっていることを確認した。また、30分電解を20回以上実施して、その間に水道水で作った電解液3を3回交換しているにも関わらず、陰電極6の表面を拡大して観測してもいささかのカルシュームの析出の形跡は無かった。
図2は本発明の実施例2の断面概念説明図であり、この図を用いて実施例2を説明する。容器2と水素排出口18と外気開放口19と電解液3については実施例1の場合と同様である。異なるのは仕切り壁13が無く、陰電極6が実施例1の仕切り壁13と同様の形状で同様の配置とする事である。ここでは陰電極として厚さ1mmのチタンの板を用いた。そして、陽電極5は実施例1と水平位置だけ容器2の右側の壁から30mmの位置とし、陰電極5は同様に36mmの中央寄りに配置する。さらに陰電極6には下から6mmの位置の中央に直径5mmの穴を開けて開放口25とした。この両電極に電圧9Vを課電すると、陽電極5からは酸素が、陰電極6の陽電極寄りの面からは水素が発生し、いずれも水素排出口20側に集まり、吸引される。人が呼吸をする期間の呼気の間には水素室14の内圧が高まるものの開放口25から外気開放口側に電解液3が移動して、鼻孔カニューラから押し戻された水素と酸素と、この間に発生する酸素と水素を水素室14内に蓄積する事が出来た。こうして、本実施例2において、水素を無駄にせずに吸引効率を約2倍に出来る事を確認した。
実施例1で使用した容器2に、電解質としてカセイソーダを用いたアルカリ性の電解液3を入れ、さらにヨー化カリウム試薬を添加して電解するデータ取りを行った。カセイソーダを精製水に加えてpHの調整を行い、その都度それを容器2に入れて電解液3とした。水温は12℃であった。こうして電解により電解液3に赤茶色の着色が出なくなるアルカリ度のpHを以下の様に測定した。試薬が反応して赤茶色に着色すればオゾンが生成している証拠である。結果は、pH9.5、pH10、pH10.5、pH11、pH11.5までは着色した。次にpH11.6、pH11.8、pH12、pH12.2は発色しなかった。この実験テ゛ータから陽電極として白金をコートしたチタンを用いて、電解液は少なくともpH11.6以上のアルカリ性にすればオゾンは発生しないことが確認された。続いて、今度は電解液3には精製水とカセイソーダ以外にはなにも添加せ上記と同様に電解を実施した。そしてその際に、精製水にヨー化カリウム試薬を溶かした液を綿棒に浸み込ませて、水素排出口18に一部接触して置いたところ、電解液3のpH11.6以下ではわずかに着色し、それ以上では着色しなかった。上記のアルカリ性溶液中の試薬のpH依存性は無くオゾン発生状況の追試が出来た。しかし、カセイソーダは強アルカリ性であり、本発明の課題である、安全に家庭で使える機器にする為には使用は不適当である。そこで炭酸ナトリュームを使用する。精製水100ccに炭酸ナトリュームを3g入れるとpH11.2の電解液が出来た。これを上記と同様に実験したところオゾンは検出されなかった。次に、同じ電解液を薄めてはオゾンが検出されないことを繰り返し、最後に電解液としては薄すぎて電流値が小さく適当ではないpH10.5までオゾンが検出されないことを確認したので、本発明では、電解でオゾンを発生させない為に、陽電極には白金をコートしたチタンを用いて、電解液には炭酸ナトリュームのpH10.5以上の溶液を用いる事とする。なお、カセイソーダと炭酸ナトリュームでオゾンを発生させない最低のアルカリ度が異なるのは、分子構造と電離強度と電解質濃度が異なることに寄ることが想定される。このアルカリ性の電解液でオゾンを発生させない方法は、陽電極に鉛や酸化錫やダイヤモンドコートを用いても実現出来る事は前記のナノ膜電解理論から見込まれる事である。一方、精製水に希硫酸を添加して酸性にして、濃度を変えて電解し、同様に試薬付き綿棒で確認したところ、いずれもオゾンが生成されていることも確認出来た。
実施例1の陽電極を直径2mm長さ72mmのステンレスの丸棒に変え、実施例2と同様に電解液にカセイソーダを入れて、オゾンが生成しない濃度であるpH12.5のアルカリ性にし、さらにヨー化カリウム試薬を添加して電解を継続させたところ、電解液は薄茶色の錆び色となったものの、ヨー化カリウム試薬が反応する場合の濃い赤茶色の発色は認められなかった。このことは、ステンレスのナノ膜酸化被膜の厚さは白金とほぼ同じであるので、この条件で、オゾンは生成しないものの、ステンレスを錆させる何らかの活性酸素が発生していることが推論出来る結果である。電解液3をカセイソーダではpH11.6以上の、炭酸ナトリュームではpH10.5以上のアルカリ性にすれば、白金や鉛や酸化錫やダイヤモンドコートなどいずれの電極でもオゾンは発生しないものの、何らかの活性酸素が発生しているとすると、体内で悪玉と呼ばれている活性酸素を消去するという水素医療にとっては有害で有ることが推測される。この件については引き続き研究する予定である。
図2は本発明の実施例4の断面概念説明図であり、この図を用いて次に実施例4を説明する。 実施例1に対して、容器内部は、両電極を容器中央に移動し、仕切り壁13を水平の位置で両電極の中間に、垂直の位置で両電極の断面の頂点より上に5mm離して下端がくるように配置したこと以外はほぼ同じである。容器の外部には水素排出口20の上に容積が8ccの円形のキャップを被せて隔室16とし、その上部に実施例1と同様の鼻孔カニューラ挿入口18を設置した。隔室16の底には開口1mm x 1mmのステンレス製のメッシュが斜めに敷いてあり、この上に直径2mmから3mmのセラミックボールを多数個入れてある。鼻孔カニューラ挿入口18には、本発明者の考案した「特許文献5」の鼻孔挿入部を先端にし、内径2.5mmで長さ1mのチューブからなる鼻孔カニューラを挿入した。9Vの直流電圧を両電極に投入すると、電解液の温度は15℃の場合で電流は概略1Aが流れ、陽電極5からは酸素気泡が、陰電極6からは水素気泡が発生して電極断面の頂部にそれぞれ一列に集まり、両者は干渉して混じることなく水平一直線で二列の垂直の壁を作って上昇し、液面で一部ははじけて気体となり、他の一部は水流に乗ってそれぞれの電極を回るように電解液の内部に降りて還流するが、両者は混合する事がないことを確認出来た。鼻孔カニューラの先端を塞ぐと、1分間で水素室の水位は約6mm低下し、酸素室の水位は約6mm上昇した。約7ccの水素が得られたことが解る。
水素吸入カニューラを鼻孔に取り付けて呼吸すると、呼気の期間には水素室14の液面は約1.5mm程下がり、酸素室15の液面は約1.5mm程上昇することが確認出来た。呼気の期間は鼻孔カニューラ内の水素が無駄にならないように押し戻されていることになる。従来の水素吸引器では呼気の期間の約半分の水素が無駄になり、水素吸引効率は50%程度であるが、本発明によれば効率は約100%となる。また、タイマーによる30分間の吸引を3回繰り返しても、鼻孔カニューラ内には1滴の水滴も認められなかった。更に、鼻孔カニューラを取り付けることなく、鼻孔カニューラ挿入部18に赤熱したヒータを間近に近づけても水素爆発現象は起きなかった。もちろん二重の安全策となる鼻孔カニューラの先端にヒータで点火しても延焼したり爆発現象は起きないことを確認した。