以下、図面を参照して本発明に係る無線伝送方法及び無線伝送システムの実施形態について説明する。
図1は、各実施形態に係る無線伝送システム100の基本原理を示す。図1において、無線伝送システム100は、MIMOを使用して多ストリームの伝送を行うシステムであり、複数のアンテナ素子111Tが球面上(アンテナ配置面220T)の離散点に配置された送信機201側のアンテナアレー202と、複数のアンテナ素子111Rが球面上(アンテナ配置面220R)の離散点に配置された受信機211側のアンテナアレー212とを有する。ここで、アンテナ配置面220T及びアンテナ配置面220Rは、複数のアンテナ素子111T及び複数のアンテナ素子111Rが配置されているアンテナアレー面に相当する。なお、アンテナアレー面は、曲面又は平面であり、送信機201側及び受信機211側が同じ形状でなくてもよい。例えば、送信機201側のアンテナアレー面が曲面で、受信機211側のアンテナアレー面が平面であってもよいし、逆に送信機201側のアンテナアレー面が平面で、受信機211側のアンテナアレー面が曲面であってもよい。もちろん、送信機201側と受信機211側とが同じ形状のアンテナアレー面であってもよい。
本実施形態に係る無線伝送システム100は、見通し通信など伝搬路応答の変動が少ない通信環境において、送信機201側のアンテナアレー202と対向する受信機211側のアンテナアレー212との間に位置ずれが生じた場合でも通信路容量の劣化を従来技術よりも低減することができ、固定の重み付け行列を用いた多ストリーム伝送を行うことが可能となる。
図1の例では、K(Kは2以上の整数)ストリームの信号を送受信する場合に受信機211側のアンテナ素子111Rを選択する方法を示しており、先ず、送信機201側のアンテナアレー202と受信機211側のアンテナアレー212とがz軸方向の対向する面(アンテナアレー202及びアンテナアレー212の球面に接する面)に最も近い位置のアンテナ素子111R(#0)を決定する。次に、アンテナ素子111R(#0)から所定の距離(図1の例では半径Lの円周151上)に配置されているN個(NはK以上の整数)のアンテナ素子111R((#1)〜(#N))を選択する。ここで、図1はN=Kの場合を示すが、選択するアンテナ素子111Rの数NをN>Kとして、N個のアンテナ素子111Rで得られた信号を受信及び合成し、K個のストリームを得るようにしてもよい。この場合、複数のアンテナ素子111Rの素子数が増え、アレー指向性利得が向上することにより、受信利得が向上する。同様に、送信機201側においても受信機211側と同様にM個(MはK以上の整数)のアンテナ素子111Tが選択される。K個のストリームのそれぞれをM個のアンテナ素子111Tに分配し、送信するようにしてもよい。この場合、複数のアンテナ素子111Tの素子数が増え、アレー指向性利得が向上することにより、送信利得が向上する。
なお、図1では、半径Lの円周151上に配置されたアンテナ素子111Rを選択する場合(円形アレーと称す)について説明するが、直線状又は方形状にアンテナ素子111Rを選択してもよい(直線アレー又は方形アレーと称す)。
図1において、アンテナアレー202とアンテナアレー212との間の伝送距離(D0)及び伝送方向(仰角(θ),方位角(φ))を位置情報とする。また、半径Lは、例えば位置情報に基づいて計算される(計算例については後述する)。そして、図1の例では、半径Lの円周上に配置されているアンテナ素子111R(#1)からアンテナ素子111R(#4)までの4個のアンテナ素子111Rが選択され、K=4個のストリーム伝送が行われる。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システム100は、位置情報に応じて選択されたK個のアンテナ素子111RによりK個のストリーム伝送(以降、Kストリーム伝送と称する)を行うことができ、位置ずれが生じた場合でも最適なアンテナ素子111Rが選択されるので、通信路容量の劣化を従来技術よりも低減することができる。そして、本実施形態に係る無線伝送システム100では、固定の重み付け行列を用いた信号処理演算を実行してKストリーム伝送を行うことができる。なお、伝送方向に応じたKストリーム伝送や固定の重み付け行列を用いたKストリーム伝送における演算回路は、例えば、デジタル信号処理回路や90°移相器やスイッチなどを組み合わせたアナログ給電回路により構成可能である。また、図1において、複数のアンテナ素子111Rは、球面上だけではなく、位置ずれの生じる方向に応じて、円筒面や円周上に配置してもよい。なお、図1では、受信機211側のアンテナアレー212について説明したが、送信機201側のアンテナアレー202についても同様である。
ここで、本明細書の説明において、アンテナ素子111R及びアンテナ素子111Tに共通する説明を行う場合は、末尾のR又はTを省略してアンテナ素子111と表記する。また、アンテナアレー202及びアンテナアレー212の複数のアンテナ素子111のうち特定のアンテナ素子111の説明を行う場合は(#1)〜(#M(又は#N))の符号を付けてアンテナ素子111(#M(又は#N)),アンテナ素子111T(#M(又は#N))及びアンテナ素子111R(#M(又は#N))のように表記する。
このように、本実施形態に係る無線伝送システム100では、アンテナ素子111を球面上に配置することにより、送受信機間で位置ずれが生じるような任意の位置において、送信機201と受信機211とが対向する面に近い球面上のアンテナ素子111同士(送信側のアンテナ素子111Tと受信側のアンテナ素子111R)が常に向かい合った状態にあると見なすことができる。これにより、本実施形態に係る無線伝送システム100では、アンテナ素子111間(送信側のアンテナ素子111T間又は受信側のアンテナ素子111R間)の経路差による伝搬路行列成分の位相変化が低減される。つまり、位置ずれによって生じる固定の重み付け行列と伝搬路行列成分とのずれが低減され、通信路容量の劣化が抑えられる。
従来、固定の重み付け行列を用いる場合、送受信機間の位置ずれにより通信路容量の劣化が生じるという問題があったが、本実施形態に係る無線伝送システム100では、球面上(又は円筒面や円周上)に複数のアンテナ素子111を配置し、その中から使用するアンテナ素子111を選択することにより、位置ずれが生じる場合でも伝送方向に応じた最適なアンテナ素子111を常に選択できるため、通信路容量の劣化の低減が可能となる。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システム100では、送受信機のアンテナアレーが任意の位置にあった場合でも、固定の重み付け行列を用いた多ストリーム伝送の実現が可能となる。
(第1の実施形態)
図2は、第1の実施形態に係る無線伝送システム100(1)の構成例を示す。図2において、送信機201(1)は、アンテナアレー202、アンテナ選択/重み付け処理部203及び推定部204を有する。また、受信機211(1)は、アンテナアレー212、アンテナ選択/重み付け処理部213及び推定部214を有する。ここで、図2に示した送信機201(1)及び受信機211(1)の各部の動作については、次の図3の中で説明する。
図3は、第1の実施形態に係る無線伝送システム100(1)の処理例を示す。なお、ステップS101からステップS106までの処理は送信機201(1)側で実行され、ステップS111からステップS116までの処理は受信機211(1)側で実行される。
先ず、送信機201(1)側で実行される処理について説明する。
ステップS101において、推定部204は、伝搬路情報又は位置情報(伝送距離(D0)又は伝送方向(θ、φ))を測定する。なお、伝搬路情報は、周知のトレーニング信号を送受信することにより、伝搬路の伝達関数を測定することができる。また、見通し環境で通信を行う送信機201(1)と受信機211(1)との位置情報の測定は、三次元カメラや複数のカメラを用いて撮影する画像や動画などの情報を利用する方法や、ビームスキャンにより位置を測定する方法などの周知技術により可能である。
ステップS102において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、ステップS101の測定結果に基づいて、球面上の複数のアンテナ素子111Tのうち伝送方向に最も近いアンテナ素子111T(#0)を決定する。ここで、アンテナ選択/重み付け処理部203は、アンテナ選択部と重み付け処理部とに分けてもよい。
ステップS103において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、位置情報に応じたアンテナ素子111T(#0)を中心とする半径Lを計算する。なお、半径Lの計算方法については後述する。
ステップS104において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、アンテナ素子111T(#0)から半径Lの円周上にあるM個のアンテナ素子111T(#1)〜(#M)を選択する。
ステップS105において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、M個のアンテナ素子111Tのそれぞれの位置に基づいて伝搬路行列及び重み付け行列を計算する。例えば、伝搬路行列は、例えば基準とするアンテナ素子111T(#0)に対する各アンテナ素子111Tの位相差に基づいて生成される。なお、重み付け行列の計算方法については後述する。
ステップS106において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、ステップS104で選択したM個のアンテナ素子111Tから送信する信号にステップS105で計算した重み付け行列を適用してKストリームの信号を送信する。
このようにして、送信機201(1)は、受信機211(1)との間に位置ずれが生じた場合でも、位置ずれに応じたM個のアンテナ素子111Tを選択し直すことができるので、位置ずれによる通信路容量の低下を抑えることができる。
次に、受信機211(1)側で実行される処理について説明する。
ステップS111において、推定部214は、伝搬路情報又は位置情報(伝送距離(D0)又は伝送方向(θ、φ))を測定する。なお、測定方法は、送信機201(1)のステップS101と同様である。
ステップS112において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、ステップS111の測定結果に基づいて、球面上の複数のアンテナ素子111Rのうち伝送方向に最も近いアンテナ素子111R(#0)を決定する。ここで、送信機201(1)と同様に、アンテナ選択/重み付け処理部203は、アンテナ選択部と重み付け処理部とに分けてもよい。
ステップS113において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、位置情報に応じたアンテナ素子111R(#0)を中心とする半径Lを計算する。なお、半径Lの計算方法については後述する。
ステップS114において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、アンテナ素子111R(#0)から半径Lの円周上にあるN個のアンテナ素子111R(#1)〜(#N)を選択する。
ステップS115において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、N個のアンテナ素子111Rのそれぞれの位置に基づいて伝搬路行列及び重み付け行列を計算する。例えば、伝搬路行列は、基準とするアンテナ素子111R(#0)に対する各アンテナ素子111Rの位相差に基づいて生成される。なお、重み付け行列の計算方法については後述する。
ステップS116において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、ステップS115で計算した重み付け行列の共役転置行列をN個のアンテナ素子111Rで受信する信号に適用してKストリームの信号を生成する(復調とも称する)。
このようにして、受信機211(1)は、送信機201(1)との間に位置ずれが生じた場合でも、位置ずれに応じたN個のアンテナ素子111Rを選択し直すことができるので、位置ずれによる通信路容量の低下を抑えることができる。
ここで、重み付け行列の一例として、伝搬路行列HがH=USVHのように特異値分解されるとき、特異値分解されたユニタリ行列を用いて、送信側の重み付け行列VKはVK=V、受信側の重み付け行列UKはUK=UHとなる。或いは、アレー指向性形成行列WM×K、WN×K及びユニタリ行列を用いて、受信側の重み付け行列UK=WN×K HUH、送信側の重み付け行列VK=WM×KVとしてもよい。アレー指向性形成行列WM×K、WN×KはそれぞれM行K列、N行K列の行列であり、例として離散フーリエ変換行列がある。或いは、N=M=Kの場合に逆行列を用いて、受信側の重み付け行列UK=(HHH)−1HH、送信側の重み付け行列VK=IK、又は、受信側の重み付け行列UK=IK、送信側の重み付け行列VK=HH(HHH)−1として計算できる(ここで、各記号はベクトル表記を示す)。なお、IKはK行K列の単位行列を示し、信号処理としては何も行わないことを示す。また、Sは対角成分として伝搬路行列の固有値を持つ対角行列を示す。ここで、(HHH)−1HH及びHH(HHH)−1は、計算処理上で発散しにくくするためであり、単純に伝搬路行列Hの逆行列H−1としてもよい。或いは、N>K又はM>Kの場合にアレー指向性形成行列WM×K、WN×K及び逆行列を用いて、受信側の重み付け行列UK=WN×K H(HHH)−1HH、送信側の重み付け行列VK=WM×K、又は、受信側の重み付け行列UK=WN×K H、送信側の重み付け行列VK=HH(HHH)−1WM×Kとして計算できる。
なお、アンテナ素子111の配置は、球面上だけではなく、位置ずれの生じる方向に応じて、円筒面や円周上に配置してもよい。また、アンテナ素子111の実装体積に応じて球面、円筒面、円周等の一部分にアンテナ素子111を配置してもよい。
(第2の実施形態)
第2の実施形態では、位置情報(伝送距離(D0),伝送方向(θ、φ))の測定や重み付け行列の計算を送信側又は受信側のいずれかで行い、測定された位置情報や計算された重み付け行列の情報(各行列成分)は、位置情報の測定や重み付け行列の計算を行わなかった側に送信して使用する。
図4は、第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)aの構成例を示す。無線伝送システム100(2)aでは、位置情報や重み付け行列の情報は送信機201(2)aから受信機211(2)aへ送信される。図4において、送信機201(2)aは、アンテナアレー202、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)a及び推定部204を有する。受信機211(2)aは、アンテナアレー212及びアンテナ選択/重み付け処理部213(2)aを有する。ここで、第1の実施形態と異なる点は、受信機211(2)aに推定部214が無いこと、送信機201(2)aのアンテナ選択/重み付け処理部203(2)aが送信機201(2)aで用いる重み付け行列の計算だけでなく受信機211(2)aで用いる重み付け行列の計算も行うことである。さらに、送信機201(2)aの推定部204が測定した位置情報と受信機211(2)aで用いる重み付け行列の情報とを受信機211(2)aへ送信すること、受信機211(2)aのアンテナ選択/重み付け処理部213(2)aが送信機201(2)aから受け取る位置情報及び重み付け行列の情報に基づいてアンテナアレー212のアンテナ素子111Rの選択を行って受信することが第1の実施形態と異なる。なお、第1の実施形態の図2と同符号のブロックは、図2と同一又は同様に動作する。ここで、以降の説明において、符号末尾に(2)aが付加されたブロックは、符号の番号(203,213等)が同一の第1の実施形態のブロックと基本的な動作は同じであるが、本実施形態特有の動作も行う(他のブロック及び他の実施形態においても同様)。
なお、上記の説明では、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)aが受信機211(2)a側で用いる重み付け行列も計算し、計算した重み付け行列の情報を受信機211(2)aへ送信する例を示したが、受信機211(2)a側で用いる重み付け行列の計算を送信機201(2)a側で行わずに、位置情報のみを受信機211(2)aへ送信するようにしてもよい。この場合、受信機211(2)aのアンテナ選択/重み付け処理部213(2)aは、送信機201(2)aから受け取る位置情報に基づいて重み付け行列を計算して受信に使用する。
図5は、第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)bの構成例を示す。無線伝送システム100(2)bでは、位置情報や重み付け行列の情報は受信機211(2)bから送信機201(2)bへ送信される。図5において、送信機201(2)bは、アンテナアレー202及びアンテナ選択/重み付け処理部203(2)bを有する。受信機211(2)bは、アンテナアレー212、アンテナ選択/重み付け処理部213(2)b及び推定部214を有する。ここで、第1の実施形態と異なる点は、送信機201(2)bに推定部204が無いこと、受信機211(2)bのアンテナ選択/重み付け処理部213(2)bが受信機211(2)bで用いる重み付け行列の計算だけでなく送信機201(2)bで用いる重み付け行列の計算も行うことである。さらに、受信機211(2)bの推定部214が測定した位置情報と送信機201(2)bで用いる重み付け行列の情報とを送信機201(2)bへ送信すること、送信機201(2)bのアンテナ選択/重み付け処理部203(2)bが受信機211(2)bから受け取る位置情報及び重み付け行列の情報に基づいてアンテナアレー202のアンテナ素子111Tの選択を行って送信することである。なお、第1の実施形態の図2と同符号のブロックは、図2と同一又は同様に動作する。
また、上記の説明では、アンテナ選択/重み付け処理部213(2)aが送信機201(2)a側で用いる重み付け行列も計算して送信機201(2)aへ重み付け行列の情報を送信する例を示したが、送信機201(2)a側で用いる重み付け行列の計算を受信機211(2)a側で行わずに、位置情報のみを送信機201(2)aへ送信するようにしてもよい。この場合、送信機201(2)aのアンテナ選択/重み付け処理部203(2)aは、受信機211(2)aから受け取る位置情報に基づいて重み付け行列を計算して送信に使用する。
図6は、第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)aの処理例を示す。なお、ステップS101からステップS104までの処理と、ステップS106の処理及びステップS116の処理は、図3で説明した第1の実施形態に係る無線伝送システム100の場合と同様に実行されるので、重複する説明は省略する。
ステップS200において、送信機201(2)aのアンテナ選択/重み付け処理部203(2)aは、図3に示したステップS105と同様の処理を実行して、送信機201(2)a側で用いる重み付け行列を計算すると共に、受信機211(2)a側で用いる重み付け行列も計算する。なお、以降で説明するように、受信機211(2)a側で用いる重み付け行列を計算しない形態もある。
ステップS201において、送信機201(2)aは、受信機211(2)a側でN個のアンテナ素子111Rの選択及び重み付け行列の決定に必要な情報を送信する。
ここで、送信機201(2)aが受信機211(2)aに、位置情報と重み付け行列の情報とを送信する形態と、位置情報のみを送信する形態との2つの形態が考えられる。1つ目の形態では、ステップS200で受信機211(2)a側で用いる重み付け行列も計算する場合であり、この場合、ステップS201では、ステップS200で計算した受信機211(2)a側で用いる重み付け行列の情報と位置情報とを受信機211(2)aへ送信する。なお、送信機201(2)a側で共役転置行列を計算して受信機211(2)a側に送信してもよい。2つ目の形態では、送信機201(2)aは、受信機211(2)aに位置情報のみを送信する。
なお、位置情報や重み付け行列の情報の送信は、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)aが行ってもよいし、送信機201(2)a全体の動作を制御する制御部(不図示)が行ってもよい。また、これらの情報は、アンテナアレー202から制御用のチャネルを用いて送受信してもよいし、送信機201(2)aと受信機211(2)aとの間に別の通信チャネルを設けて送受信するようにしてもよい。
一方、受信機211(2)aは、次のように処理を行う。
ステップS211において、受信機211(2)aは、送信機201(2)aから受け取った位置情報に基づいてアンテナアレー212のアンテナ素子111Rを選択し、送信機201(2)aから受け取った重み付け行列の情報に基づいて計算した共役転置行列(或いは、送信機201(2)aから受け取った共役転置行列)を選択したN個のアンテナ素子111Rが受信する信号に適用してKストリームの信号を生成する。或いは、受信機211(2)aは、送信機201(2)aから受け取った位置情報に基づいてアンテナアレー212のアンテナ素子111Rを選択し、さらに位置情報に基づいて重み付け行列及び共役転置行列を計算して、選択したN個のアンテナ素子111Rから受信する信号に適用してKストリームの信号を生成する。
このようにして、第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)bの受信機211(2)bは、位置推定処理を行うことなく、或いは重み付け行列の計算も行うことなく、送信機201(2)aから受け取る位置情報や重み付け行列の情報を用いて送信機201(2)aから送信されるKストリームの信号を受信することができる。
図7は、第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)bの処理例を示す。なお、ステップS111からステップS114までの処理と、ステップS106の処理及びステップS116の処理は、図3で説明した第1の実施形態に係る無線伝送システム100の場合と同様に実行されるので、重複する説明は省略する。
ステップS310において、受信機211(2)bのアンテナ選択/重み付け処理部213(2)bは、図3に示したステップS105と同様の処理を実行して、受信機211(2)b側で用いる重み付け行列を計算すると共に、送信機201(2)b側で用いる重み付け行列も計算する。なお、以降で説明するように、送信機201(2)b側で用いる重み付け行列を計算しない形態もある。
ステップS311において、受信機211(2)bは、送信機201(2)b側でM個のアンテナ素子111Tの選択及び重み付け行列の決定に必要な情報を送信する。
ここで、図6の場合と同様に、受信機211(2)aが送信機201(2)aに、位置情報と重み付け行列の情報とを送信する形態と、位置情報のみを送信する形態との2つの形態が考えられる。1つ目の形態では、ステップS310で送信機201(2)b側で用いる重み付け行列も計算する場合であり、この場合、ステップS311では、ステップS310で計算した送信機201(2)b側で用いる重み付け行列の情報と位置情報とを送信機201(2)bへ送信する。2つ目の形態では、受信機211(2)bは、送信機201(2)bに位置情報のみを送信する。
なお、図6の場合と同様に、位置情報や重み付け行列の情報の送信は、アンテナ選択/重み付け処理部213(2)bが行ってもよいし、受信機211(2)b全体の動作を制御する制御部(不図示)が行ってもよい。また、これらの情報は、アンテナアレー212から制御用のチャネルを用いて送受信してもよいし、受信機211(2)bと送信機201(2)bとの間に別の通信チャネルを設けて送受信するようにしてもよい。
一方、送信機201(2)bは、次のように処理を行う。
ステップS301において、送信機201(2)bは、受信機211(2)bから受け取った位置情報に基づいてアンテナアレー202のアンテナ素子111Tを選択し、受信機211(2)bから受け取った重み付け行列の情報に基づいて重み付け行列を決定し、Kストリームの信号に適用して選択されたM個のアンテナ素子111Tから送信する。
このようにして、第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)bの送信機201(2)bは、位置推定処理を行うことなく、或いは重み付け行列の計算も行うことなく、受信機211(2)bから受け取る位置情報や重み付け行列の情報を用いて受信機211(2)bにKストリームの信号を送信することができる。
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態(K=4の場合)の計算例を示す。なお、図8では、ストリーム数Kと受信機211側のアンテナ素子111Rの数Nとが共に4(K=N=4)とする。また、送信機201側についても同様とする(K=M=4)。第3の実施形態では、図1に示した無線伝送システム100において、K=N=M=4の場合(ストリーム数Kと受信機211側(又は送信機201側)で選択されるアンテナ素子111R(又はアンテナ素子111T)の数N(又はM)とが4の場合(N(又はM)はK以上の整数))の伝搬路行列及び重み付け行列の計算例と、アンテナ素子111を選択するための半径Lの計算例を示す。なお、本実施形態で説明する計算例は、先に説明した各実施形態に適用することができる。ここで、図8(a)は、図1に対応する図であり、送信機201側のアンテナアレー202と、受信機211側のアンテナアレー212のうち半径Lの円周151上の選択された4つのアンテナ素子111R(#1-#4)と、対向面(送信機201のアンテナ素子111T(#0))に最も近いアンテナ素子111R(#0)(基準点に相当)とが示されている。
また、図8(b)は、図8(a)の送信機201側のアンテナアレー202が配置されているアンテナ配置面220T(中心Raとする球面)と受信機211側のアンテナアレー212が配置されているアンテナ配置面220R(中心Rbとする球面)とについて、中心Raと中心Rbとを結ぶ線を含み各アンテナ配置面に垂直な面で切ったときの断面図を示している。図8(b)において、送信機201側の選択されたアンテナ素子を含む面221T(紙面に対して垂直方向)にはアンテナ素子111T(#1)及びアンテナ素子111T(#3)、受信機211側の選択されたアンテナ素子を含む面221R(紙面に対して垂直方向)にはアンテナ素子111R(#1)及びアンテナ素子111R(#3)がそれぞれ含まれている。なお、図8では、断面図にアンテナ素子111T(#1)、アンテナ素子111T(#3)、アンテナ素子111R(#1)及びアンテナ素子111R(#3)が含まれるように切断した様子を示している。特に、本実施形態では、選択されるアンテナ素子数Nが偶数(4個)なので、断面図の送信機201側及び受信機211側にそれぞれ2つのアンテナ素子が含まれているが、例えば奇数個のアンテナ素子111が半径Lの円周上で選択される場合、断面図には2つのアンテナ素子111が含まれることはない。
また、選択されたアンテナ素子を含む面221T及び選択されたアンテナ素子を含む面221Rは、アンテナ配置面220Tの中心Raと受信機211側のアンテナアレー212のアンテナ配置面220Rの中心Rbとを結ぶ直線に垂直な面(図8(b)では紙面に対して垂直な面)となる。
ここで、図8(b)において、送信機201側のアンテナ素子111T(#1)と受信機211側のアンテナ素子111R(#1)との間の伝送距離はD0、アンテナ素子111T(#1)とアンテナ素子111R(#3)との間の伝送距離はD0+(1/2+m)λ0(mは整数)である。また、図8(a)では、図1で説明した無線伝送システム100のアンテナアレー212のアンテナ素子111R(#0)を中心とする半径Lの円周151上にある正方形に配置された4個のアンテナ素子111R(#1),アンテナ素子111R(#2),アンテナ素子111R(#3)及びアンテナ素子111R(#4)が選択されている。同様に、アンテナアレー202のアンテナ素子111T(#0)を中心とする半径Lの円周上にある正方形に配置された4個のアンテナ素子111T(#1),アンテナ素子111T(#2),アンテナ素子111T(#3)及びアンテナ素子111T(#4)が選択されている。
K=4の場合、正方形に配置されたアンテナ素子111T(#1)〜アンテナ素子111T(#4)と正方形に配置されたアンテナ素子111R(#1)〜アンテナ素子111R(#4)の伝搬路行列Hは、アンテナ素子111T(#1)〜アンテナ素子111T(#4)及びアンテナ素子111R(#1)〜アンテナ素子111R(#4)の配置の対称性により、式(1)に示すような巡回行列に比例した行列となる。なお、式(1)において、非対角成分は大きさが1の複素数である。
ここで、a3=exp(jπ)=-1のとき、式(2)に示すように、伝搬路行列Hとその共役転置行列HHとの積により対角化される。
図8において、アンテナ素子111R(#1)から円周方向に2つ隣のアンテナ素子111R(#3)との経路差を波長λ0の(1/2+m)倍(mは正の整数)とすることで、伝搬路応答の位相差がπとなり、伝搬路行列成分a3=exp(jπ)=-1となる。
従って、上述の経路差を持たせるための半径Lは、例えば図8の点線で示した直角三角形において、三平方の定理により、式(3)及び式(4)のように求めることができる。
式(4)において、K=4の場合、半径Lは式(5)で求めることができる。
このようにして求められた半径Lの円周上に位置するアンテナ素子111Rが選択される。図8の例では、アンテナ素子111R(#1)からアンテナ素子111R(#4)が選択される。ここで、図8の場合、アンテナ素子111R(#1)とアンテナ素子111R(#3)との間の距離は2Lとなる。なお、送信機201側についても同様である。
ここで、重み付け行列は、例えば送信機201側の重み付け行列V4を伝搬路行列Hの共役転置行列とし、受信機211側の重み付け行列U4を単位行列(重み付け演算無し)とする。或いは、逆にして、送信機201側の重み付け行列V4を単位行列(重み付け演算無し)とし、受信機211側の重み付け行列U4を伝搬路行列Hの共役転置行列とする。このようにして、送信機201側及び受信機211側の重み付け行列を求めることにより、K=4の場合の伝搬路の直交化を図ることが可能となる。
なお、重み付け行列V4及びU4に用いる行列のその他の組み合わせとして、離散フーリエ変換行列及びその共役転置行列の組み合わせ、ゼロフォーシング行列又はMMSE(Minimum Mean Square Error)行列と単位行列の組み合わせ等が用いられてもよい。
また、K≧5の場合には、アンテナ素子111は円形アレー配置となり、正方形の場合と同様に伝搬路行列Hは、アンテナ素子111の配置の対称性より式(6)及び式(7)に示すような巡回行列に比例した行列となる。
(K=2n−1(奇数)の場合)
(K=2n(偶数)の場合)
ここで、nは3以上の整数である。
なお、K≧5の場合には、例えば、半径Lに任意の値を用いてアンテナ素子111を選択し、選択したアンテナ素子111における伝搬路行列Hを求め、第1の実施形態で説明した重み付け行列の計算方法(特異値分解のユニタリ行列や逆行列等)で送信側の重み付け行列VK及び受信側の重み付け行列UKを求めることにより、伝搬路直交化が可能である。
(第4の実施形態)
図9は、第4の実施形態(K=3の場合)の計算例を示す。なお、図9では、ストリーム数Kと受信機211側のアンテナ素子111Rの数Nとが共に3(K=N=3)とする。また、送信機201側についても同様とする(K=M=3)。第4の実施形態では、図1に示した無線伝送システム100において、K=N(又はM)=3の場合の伝搬路行列及び重み付け行列の計算例と、アンテナ素子111を選択するための半径Lの計算例とを示す。なお、本実施形態で説明する計算例は、先に説明した第1の実施形態及び第2の実施形態に適用することができる。ここで、図9において、送信機201側のアンテナ素子111T(#0)と受信機211側のアンテナ素子111R(#1)との間の伝送距離はD0、アンテナ素子111T(#0)とアンテナ素子111R(#2)との間の伝送距離はD0+(±1/3+m)λ0(mは整数)である。また、図9では、図1で説明した無線伝送システム100のアンテナアレー212のアンテナ素子111R(#0)を中心とする半径Lの円周151上にある正三角形に配置されたアンテナ素子111R(#1),アンテナ素子111R(#2)及びアンテナ素子111R(#3)が選択されている。同様に、アンテナアレー202のアンテナ素子111T(#0)を中心とする半径Lの円周上にある正方形に配置された3個のアンテナ素子111T(#1),アンテナ素子111T(#2)及びアンテナ素子111T(#3)が選択されている。
K=3の場合、正三角形に配置されたアンテナ素子111T(#1)〜アンテナ素子111T(#3)と正三角形に配置されたアンテナ素子111R(#1)〜アンテナ素子111R(#3)の間の伝搬路行列Hは、アンテナ素子111T(#1)〜アンテナ素子111T(#3)及びアンテナ素子111R(#1)〜アンテナ素子111R(#3)の配置の対称性により、式(8)に示すような巡回行列となる。
ここで、a=exp(±j(2π/3))=-(1/2)±j(√3)/2)のとき、式(9)に示すように伝搬路行列Hとその共役転置行列HHとの積により対角化される。つまり、経路差が波長λ0の{±(1/3)+m}倍(mは整数)となる間隔で半径Lの円周上に配置されたアンテナ素子111Rを選択することにより、式(9)を満たすことができる。
ここで、Re(a)は複素数aの実部を表す。
従って、上述の経路差を持たせるための半径Lは、例えば図9の点線で示した直角三角形において、三平方の定理により、式(10)及び式(11)のように求めることができる。
このようにして求められた半径Lの円周上に位置するアンテナ素子111Rが選択される。図8の例では、アンテナ素子111R(#1)からアンテナ素子111R(#3)が選択される。なお、送信機201側についても同様である。
ここで、重み付け行列は、例えば送信機201側の重み付け行列V3を伝搬路行列Hの共役転置行列とし、受信機211側の重み付け行列U3を単位行列(重み付け演算無し)とする。或いは、逆にして、送信機201側の重み付け行列V3を単位行列(重み付け演算無し)とし、受信機211側の重み付け行列U3を伝搬路行列Hの共役転置行列とする。このようにして、送信機201側及び受信機211側の重み付け行列を求めることにより、K=3の場合の伝搬路の直交化を図ることが可能となる。
なお、重み付け行列V3及びU3に用いる行列のその他の組み合わせとして、離散フーリエ変換行列及びその共役転置行列の組み合わせ、ゼロフォーシング行列又はMMSE行列と単位行列の組み合わせ等が用いられてもよい。
(第5の実施形態)
第5の実施形態では、図1に示した無線伝送システム100において、K=2の場合の伝搬路行列及び重み付け行列の計算例と、アンテナ素子111を選択するための円の半径Lの計算例とについて説明する。なお、本実施形態で説明する計算例は、先の実施形態において説明した図2の無線伝送システム100(1)、図4の無線伝送システム100(2)a及び図5の無線伝送システム100(2)bのいずれの構成にも適用可能である。
図10は、第5の実施形態(K=2の場合)の計算例を示す。なお、図10では、ストリーム数Kと受信機211側のアンテナ素子111Rの数Nとが共に2(K=N=2)とする。また、送信機201側についても同様とする(K=M=2)。ここで、図10(a)は、図1に対応する図であり、図1に示した送信機201側のアンテナアレー202と、受信機211側のアンテナアレー212のうち半径Lの円周151上の選択された2つのアンテナ素子111R(#1,#2)とが示されている。なお、アンテナ素子111R(#0)は、対向面(送信機201のアンテナ素子111T(#0))に最も近いアンテナ素子111R(基準点に相当)である。
また、図10(b)は、図8(b)と同様に、図10(a)の送信機201側のアンテナアレー202が配置されている面(ここでは球面)と受信機211側のアンテナアレー212が配置されている面(ここでは球面)とについて、アンテナ配置面に垂直な面で切ったときの断面図を示している。図10(b)において、送信機201側の選択されたアンテナ素子を含む面221Tにはアンテナ素子111T(#1)及びアンテナ素子111T(#2)、受信機211側の選択されたアンテナ素子を含む面221Rにはアンテナ素子111R(#1)及びアンテナ素子111R(#2)がそれぞれ選択されている。なお、選択されたアンテナ素子を含む面221T及び選択されたアンテナ素子を含む面221Rについては、図8(b)の場合と同様である。
ここで、図10(b)において、送信機201側のアンテナ素子111T(#1)と受信機211側のアンテナ素子111R(#1)との間の伝送距離はD0、アンテナ素子111T(#1)とアンテナ素子111R(#2)との間の伝送距離はD0+(±1/4+m)λ0(mは整数)である。
なお、本実施形態に係る無線伝送システムは、図3、図6又は図7で説明した無線伝送システム100(1)、無線伝送システム100(2)a又は無線伝送システム100(2)bと同様に構成される。
K=2の場合、送信機(201(1)、201(2)a及び201(2)b)、又は、受信機(211(1)、211(2)a及び211(2)b)において計算されるアンテナアレー間の伝搬路行列は、式(12)に示すような巡回行列に比例した行列となる。なお、式(12)の行列は、非対角成分の大きさが1の複素数である。
ここで、a2=exp(±j(π/2))=±jのとき、式(13)に示すように伝搬路行列Hとその共役転置行列HHとの積により対角化される。
また、2つのアンテナ素子までの経路差を送受信する電波の波長λ0の(±1/4+m)(mは整数)とすることで、伝搬路応答の位相差が±π/2となり、伝搬路行列成分はa2=exp(±j(π/2))=±jとなる。
従って、上述の経路差を持たせるための半径Lは、例えば図10(b)の点線で示した直角三角形において、三平方の定理により、式(14)のように求めることができる。
このようにして、式(14)で求められた半径Lの円に基づいて使用すべきアンテナ素子が選択される。
ここで、重み付け行列は、図8および図9などの実施形態と同様に、例えば送信機201側の重み付け行列V2を伝搬路行列Hの共役転置行列とし、受信機211側の重み付け行列U2を単位行列(重み付け演算無し)とする。或いは、逆にして、送信機201側の重み付け行列V3を単位行列(重み付け演算無し)とし、受信機211側の重み付け行列U3を伝搬路行列Hの共役転置行列とする。このようにして、送信機201側及び受信機211側の重み付け行列を求めることにより、K=2の場合の伝搬路の直交化を図ることが可能となる。
なお、重み付け行列V2及びU2に用いる行列のその他の組み合わせとして、離散フーリエ変換行列及びその共役転置行列の組み合わせ、ゼロフォーシング行列又はMMSE行列と単位行列の組み合わせ等が用いられてもよい。
(第6の実施形態)
図11は、第6の実施形態のアンテナ素子の配置例を示す。第6の実施形態では、複数のアンテナ素子111が球面上に配置された第1の実施形態又は第2の実施形態と異なり、複数のアンテナ素子111が平面上に配置されている。図11に示す平面アンテナアレー250では、複数のアンテナ素子111が平面上に配置されている。ここで、平面アンテナアレー250上のアンテナ素子111の位置は、図1等で説明した球面上に配置されるアンテナ素子111の位置を第2の面(図11の例ではxz平面)上に正射影した位置である。図11(a)は、y軸方向からxz平面上にある平面アンテナアレー250を見た様子を示し、図11(b)は、球面上のアンテナ素子111の位置から平面アンテナアレー250上の位置へ正射影する例を示す。
例えば、図11(b)において、球の半径をr0、球面上のアンテナ素子111の位置を仰角θa及び方位角φaとすると、球面上のアンテナ素子111の位置に対応する平面アンテナアレー250上のアンテナ素子111の位置(x,z)は、式(15)及び式(16)により求められる。
x=r0sin(θa)cos(φa) …(15)
z=r0cos(θa) …(16)
つまり、球面上のアンテナ素子111の位置は、平面アンテナアレー250上に正射影されるので、先の実施形態で選択した球面上のアンテナ素子111の位置が正射影された位置の平面アンテナアレー250上のアンテナ素子111を選択することにより、先の実施形態と同様の効果が得られる。
このように、第6の実施形態に係る平面アンテナアレー250を利用することにより、球面上にアンテナ素子111を配置する場合に比べて製造が容易になるという効果が得られる。
(固定の重み付け行列の使用)
ここでは、第1の実施形態から第6の実施形態において、基準点で求めた固定の重み付け行列を使用する例について説明する。なお、無線伝送システムの構成は、他の実施形態で説明したシステムと同様である。例えば、第1の実施形態の場合、無線伝送システム100(1)は、アンテナアレー202、アンテナ選択/重み付け処理部203及び推定部204を有する送信機201(1)と、アンテナアレー212、アンテナ選択/重み付け処理部213及び推定部214有する受信機211(1)とを備える。
そして、例えば、送信機201(1)側のアンテナ選択/重み付け処理部203及び受信機211(1)側のアンテナ選択/重み付け処理部213は、位置ずれが生じる範囲の中央位置を基準点として重み付け行列の計算を行った固定の重み付け行列を用い、伝送方向に応じたM個又はN個のアンテナ素子111の選択を行って、Kストリームの信号を送受信する。なお、基準点の求め方として、例えば、送信機201(1)に対して受信機211(1)が位置ずれした時の受信機211(1)の位置を確率分布により平均化した位置を基準点とする方法がある。
このように、基準点で求めた固定の重み付け行列を使用することにより、送信機201側及び受信機211側での処理量が大幅に削減される。
(第7の実施形態)
第7の実施形態では、送受信機の複数の位置情報(伝送距離及び伝送方向)を想定して、各位置情報に応じたそれぞれの重み付け行列を予め計算する。そして、予め計算された重み付け行列は、例えば伝送方向や番号などの識別子に関連付けて通信開始前に送受信機にそれぞれ記憶しておく。
例えば、位置ずれの可能性がある範囲内の複数の位置情報のそれぞれの位置情報に対する重み付け行列(送信側と受信側とで異なる場合はそれぞれの重み付け行列)を計算して、計算された重み付け行列に番号を付与する。そして、番号と位置情報と重み付け行列とを対応付けた学習情報を作成する。なお、学習情報の作成は、送信機又は受信機のいずれか一方で行ってもよいし、送受信機とは別の計算機により学習情報を作成してもよい。そして、作成された学習情報は、送信機側と受信機側との間で通信開始前に共有され、それぞれのメモリなどに記憶される。なお、学習情報の共有の方法は、例えば制御チャネルなどで送受信してもよいし、別の回線で送受信してもよいし、オフラインで送受信機に記憶するようにしてもよい。
例えば、本実施形態に係る無線伝送システムを第2の実施形態の図6のフローチャートに適用する場合、通信開始前に送信機201(2)a(又は外部の計算機など)により複数の位置情報のそれぞれに対応する重み付け行列を計算して番号などの識別子を付与し、識別子と位置情報と重み付け行列とを対応付けた学習情報を作成する。そして、送信機201(2)a及び受信機211(2)aのメモリなどに学習情報を記憶しておく。
この状態で、送信機201(2)aは、ステップS101を実行して位置情報を測定すると、予め記憶されている学習情報から測定した位置情報に対応付けられた重み付け行列を読み出すことができる。これにより、送信機201(2)aは、ステップS200で重み付け行列を計算する必要がなくなる。また、送信機201(2)aは、ステップS201において、ステップS101で測定した位置情報及び重み付け行列に対応付けられた識別子を読み出して、識別子のみを受信機211(2)aに送信する。
一方、受信機211(2)aは、ステップS211において、送信機201(2)aから受け取る識別子に対応する位置情報と重み付け行列とをメモリに予め記憶されている学習情報の中から読み出す。そして、受信機211(2)aは、学習情報から読み出した位置情報に対応するN個のアンテナ素子111Rを選択し、同様に学習情報から読み出した重み付け行列を用いて送信機201(2)aが送信するKストリームの信号を受信することができる。
同様に、本実施形態に係る無線伝送システムを第2の実施形態の図7のフローチャートに適用する場合、通信開始前に受信機211(2)b(又は外部の計算機など)により複数の位置情報のそれぞれに対応する重み付け行列を計算して番号などの識別子を付与し、識別子と位置情報と重み付け行列とを対応付けた学習情報を作成する。そして、送信機201(2)b及び受信機211(2)bのメモリなどに学習情報を記憶しておく。
この状態で、受信機211(2)bは、ステップS111を実行して位置情報を測定すると、予め記憶されている学習情報から測定した位置情報に対応付けられた重み付け行列を読み出すことができる。これにより、受信機211(2)bは、ステップS310で重み付け行列を計算する必要がなくなる。また、受信機211(2)bは、ステップS311において、ステップS111で測定した位置情報及び重み付け行列に対応付けられた識別子を読み出して、識別子のみを受信機211(2)bに送信する。
一方、送信機201(2)bは、ステップS301において、受信機211(2)bから受け取る識別子に対応する位置情報と重み付け行列とをメモリに予め記憶されている学習情報の中から読み出す。そして、送信機201(2)bは、学習情報から読み出した位置情報に対応するM個のアンテナ素子111Tを選択し、同様に学習情報から読み出した重み付け行列を用いて受信機211(2)bにKストリームの信号を送信することができる。
ここで、上記の説明では、送信機201(2)と受信機211(2)との間で学習情報を共有して、位置情報や重み付け行列に対応付けられた識別子を送受信するようにしたが、例えば、第1の実施形態の図3のフローチャートに適用する場合、識別子を送受信する必要はない。例えば、図3のフローチャートにおいて、通信開始前に送信機201(1)及び受信機211(1)(又は外部の計算機など)により複数の位置情報のそれぞれに対応する重み付け行列を計算して、位置情報と重み付け行列とを対応付けた学習情報を作成する。そして、送信機201(1)及び受信機211(1)のメモリにそれぞれ学習情報を記憶しておく。
この状態で、送信機201(1)は、ステップS101を実行して位置情報を測定すると、予め記憶されている学習情報から測定した位置情報に対応付けられた重み付け行列を読み出すことができる。また、受信機211(1)は、ステップS111を実行して位置情報を測定すると、予め記憶されている学習情報から測定した位置情報に対応付けられた重み付け行列を読み出すことができる。そして、送信機201(1)は、ステップS105で重み付け行列を計算する必要がなくなる。また、受信機211(1)は、ステップS111を実行して位置情報を測定すると、予め記憶されている学習情報から測定した位置情報に対応付けられた重み付け行列を読み出すことができる。そして、受信機211(1)は、ステップS115で重み付け行列を計算する必要がなくなる。
このように、本実施形態に係る無線伝送システムは、通信開始前に位置ずれの可能性がある範囲内の複数の位置情報のそれぞれの位置情報に対する重み付け行列を計算して、計算された重み付け行列と位置情報と識別子とを対応付けた学習情報を予め記憶しておくことにより、通信中の処理量を削減することができる。
(シミュレーション結果)
図12は、位置ずれと通信路容量とのシミュレーション結果を示す。なお、図12に示すシミュレーション結果は、第1の実施形態から第7の実施形態までにおいて説明した無線伝送システム100に対応する。本シミュレーションでは、アンテナ素子111を半径が22λ0(λ0は搬送波の自由空間波長)の球面上に、仰角φ=0度から180度まで、方位角θ=60度から120度までの範囲に、φ方向に0.5度間隔、θ方向に60度間隔で球面上に配置したアンテナアレーを用いる。そして、シミュレーションでは、位置ずれに応じた4素子を選択する場合(K=4)の通信路容量の特性を求めた。具体的には、図1で説明した無線伝送システム100の座標系において、受信機211側のアンテナアレー212の中心位置を(x,y,z)=(0,1000λ0,0)の固定とし、送信機201側のアンテナアレー202の中心位置を(x,y,z)=(0,0,0)から(100λ0,0,0)まで変化させた。
図12において、横軸は位置ずれλ0、縦軸は単位周波数当たりの通信路容量(bits/s/Hz)を示す。図12では、位置に応じた重み付け行列を用いる場合(理想)、アンテナ素子を球面上に配置して基準点(x=4.5λ0,y=1000λ0)とする固定の重み付け行列を用いる場合(第7の実施形態に相当)、アンテナ素子を平面上かつ等間隔に配置して基準点(x=4.5λ0,y=1000λ0)とする固定の重み付け行列を用いる場合(従来)、シングルアンテナ同士で通信する場合の比較例を示す。図12において、横軸は位置ずれλ0、縦軸は単位周波数当たりの通信路容量(bits/s/Hz)を示し、ここで、図12において、一点鎖線:理想(Ideal)、実線(太線):第7の実施形態に相当、破線(太線):従来、点線(細線):シングルアンテナ(SISO:Single Input Single Output)をそれぞれ示す。なお、実線(細線):実線(太線)の平均通信容量、破線(細線):破線(太線)の平均通信容量をそれぞれ示す。
図12のシミュレーション結果から、本実施形態に係る無線伝送システム100は、従来の方法に比べて理想に近い通信路容量が得られることが分かる。
図13は、通信路容量の劣化量の一例を示す。なお、図13に示す劣化量は、図12に示した従来技術及び本実施形態の理想の通信路容量に対する劣化量である。図13において、横軸は位置ずれλ0、縦軸は単位周波数当たりの通信路容量(bits/s/Hz)をそれぞれ示し、実線は理想の通信路容量から第7の実施形態の手法での通信路容量を減算した値、破線は理想の通信路容量から従来手法での通信路容量を減算した値をそれぞれ示している。
図12及び図13の結果より、球面上にアンテナ素子111を配置することで、位置ずれが生じた場合においても通信路容量の劣化が低減され、通信路容量の平均値が改善できることが分かる。
このように、本実施形態に係る無線伝送システム100は、任意の送受信機位置において固定の重み付け行列を用いた場合の位置ずれによる通信路容量の劣化を低減でき、固定の重み付け行列を用いた多ストリームの伝送が可能となる。また、基準点における固定の重み付け行列や、伝送方向の情報のみで重み付け行列の計算及びアンテナ素子111の選択が可能であるため、伝搬路推定や特性の良いアンテナ素子111の探索を行うことなく容易に多ストリームの無線伝送を行うことができる。
(第8の実施形態)
図8で説明した第3の実施形態、図9で説明した第4の実施形態及び図10で説明した第5の実施形態では、半径Lの円周上に配置されたアンテナ素子111を選択する円形アレーについて説明した。第8の実施形態では、直線状又は方形状に配置されたアンテナ素子111を選択する直線アレー又は方形アレーについて説明する。
図14は、第8の実施形態の直線アレー・方形アレーの一例を示す。図14では、図1に示した無線伝送システム100において、球面上に配置された複数のアンテナ素子111から直線状又は方形状にアンテナ素子111を選択する。なお、以降の説明において、選択されるアンテナ素子111を選択素子と称する。ここで、本実施形態は、送信機201側のアンテナアレー202又は受信機211側のアンテナアレー212のいずれにも同様に適用可能である。
図14(a)は、選択素子の数が偶数の場合の一例を示す。また、図14(b)は、選択素子の数が奇数の場合の一例を示す。なお、図14(a)と図14(b)は、第1の方向(p方向)又は第2の方向(q方向)の直線アレーの様子を示しているが、方形アレーの場合は、当該直線アレーに直交する方向(紙面に垂直な方向)にも同様に直線状に選択素子が配置される。つまり、球形のアンテナ配置面220上に配置された複数のアンテナ素子111のうち選択素子を伝送方向から見たときの形状により直線アレー又は方形アレーが形成される。例えば、図14(c)は選択素子を伝送方向から見たときの形状が直線の場合の一例を示す。図14(c)では、p方向の直線にP個の選択素子が配置された直線アレーと、q方向の直線にQ個の選択素子が配置された直線アレーとが示されている。なお、直線アレーの場合は、p方向又はq方向に限らず斜め方向の直線上に選択素子を配置されていてもよい。一方、図14(d)は選択素子を伝送方向から見たときの形状が方形の場合の一例を示す。図14(d)では、p方向の直線にP個の選択素子が配置され、p方向に直交するq方向の直線にQ個の選択素子が配置された方形アレーが示されており、この場合、(P×Q)個の選択素子は、伝送方向から見て方形状となる。ここで、P又はQは2以上の整数とし、p方向に配置されている複数のアンテナ素子111のうち選択されたアンテナ素子111の数がP個、p方向に直交するq方向に配置されている複数のアンテナ素子111のうち選択されたアンテナ素子111の数がQ個である。
直線アレー又は方形アレーの選択素子の数(P又はQ)が偶数の場合を示す図14(a)において、アンテナ配置面220の中心Rから伝送方向の直線上にあるアンテナ素子111a0を基準点(基準アンテナ素子)として、基準点に最も近く基準点に対称的な位置にあるアンテナ素子111a2及びアンテナ素子111a3を選択素子とする。このとき、中心Rからアンテナ素子111a2又はアンテナ素子111a3を結ぶ直線と中心Rからアンテナ素子111a0を結ぶ直線(基準線)との為す角度をΔθ1(又はΔφ1)とする。ここで、基準点のアンテナ素子111a0と中心Rを結ぶ基準線と伝送方向は同じである。同様に、次の選択素子をアンテナ素子111a1及びアンテナ素子111a4とし、中心Rからアンテナ素子111a1又はアンテナ素子111a4を結ぶ直線と伝送方向との為す角度をΔθ2(又はΔφ2)とする。
直線アレー又は方形アレーの選択素子の数(P又はQ)が奇数の場合を示す図14(b)において、アンテナ配置面220の中心Rから伝送方向の直線上にあるアンテナ素子111b2(基準アンテナ素子)を基準点の選択素子とし、さらに、その両側の対称的な位置にあるアンテナ素子111b1及びアンテナ素子111b3を選択素子とする。このとき、中心Rからアンテナ素子111b1又はアンテナ素子111b3を結ぶ直線と中心Rからアンテナ素子111b2を結ぶ直線(基準線)との為す角度をΔθ2(又はΔφ2)とする。なお、基準点のアンテナ素子111b2と中心Rを結ぶ基準線と伝送方向とは同じなので、アンテナ素子111b2と中心Rを結ぶ直線と伝送方向との為す角度Δθ1(又はΔφ1)は0度である。
ここで、各アンテナ素子111と中心Rを結ぶ直線と伝送方向との為す角度を一般化してp方向にΔθp(又はΔφq(q方向))と表記する。なお、Δθp(又はΔφq)の表記において、方形アレーの場合は、直交するp方向とq方向にそれぞれΔθpとΔφqの2つの角度を用いるが、直線アレーの場合は、1方向なのでp方向のΔθp又はq方向のΔφqのいずれか1つの角度でよい。このように、Δθp(又はΔφq)は、送受信機のアンテナ配置面220の球の中心と選択素子とを結ぶ方向と伝送方向との為す角度を示す。そして、伝送方向に最も近いアンテナ素子からの角度を基準にして、アンテナ素子111の選択が行われる。図14(a)の例では、伝送方向に対してΔθ1(又はΔφ1)の角度を為すアンテナ素子111a2又はアンテナ素子111a3と、伝送方向に対してΔθ2(又はΔφ2)の角度を為すアンテナ素子111a1又はアンテナ素子111a4とが選択される。このとき、アンテナ素子111a1とアンテナ素子111a2との伝送方向から見た距離、アンテナ素子111a2とアンテナ素子111a3との伝送方向から見た距離、アンテナ素子111a3とアンテナ素子111a4との伝送方向から見た距離は、同じ距離(v(又はw))であり、伝送方向から見たときに見かけ上、等間隔アレー配置となるので、各アンテナ素子111間の距離を一定以上に保ちながら多ストリーム伝送が可能となる。ここで、直線アレーの場合は、図14(c)に示すように、Δθpのp方向がv、又は、Δφqのq方向がwとなり、方形アレーの場合は、図14(d)に示すように、Δθpのp方向がv、Δφqのq方向がwとなる。
ここで、例えば、Δθp、Δφq の角度を為す規定方向を互いに直交する垂直な方向であるとする。なお、アンテナ配置面220が球形の場合、Δθp、Δφqの規定方向の球面は半径rとなるが、例えばアンテナ配置面220が楕円形の場合、Δθp、Δφqの規定方向は長軸方向又は短軸方向に対応する。
アンテナ配置面220が球形のときの角度Δθp(またはΔφq)は、式(17)で表すことができる。
その他の例として、角度(Δθp、Δφq)が一定の値になるようにしてもよい。この場合、アンテナ配置面220上の複数のアンテナ素子111のうち一定の角度間隔の位置に最も近いアンテナ素子111を選択素子とすることで各選択素子間の距離を一定以上に保ちながら多ストリーム伝送が可能となる。各選択素子間の距離を一定以上に保つことにより、隣接する選択素子の影響を抑えることができる。
或いは、角度(Δθp、Δφq)がランダムの値になるように設定してもよい。この場合、アンテナ配置面220上の複数のアンテナ素子111のうちランダムな角度間隔の位置に最も近いアンテナ素子111を選択素子とすることで、送信機201及び受信機211におけるアンテナ素子111間の伝搬路応答の値が適度にばらつくので、伝搬路行列の階数を1よりも大きくすることができ、複数ストリームの信号の伝送が可能となる。
次に、図14で説明した直線アレー又は方形アレーにおいて、アンテナ素子111を選択してKストリームの信号の伝送を行う処理について、図2で説明した第1の実施形態に係る無線伝送システム100(1)に対応する場合、図4で説明した第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)aに対応する場合、図5で説明した第2の実施形態に係る無線伝送システム100(2)bに対応する場合、の3つの場合についてそれぞれ説明する。
[無線伝送システム100(1)に対応する場合]
図15は、第8の実施形態に係る無線伝送システム100(1)の処理例を示す。図15に示す処理は、図3で説明した円形アレーの処理に対応する直線アレー又は方形アレーの処理である。なお、図15において、図3と同符号の処理は図3の場合と同様の処理が行われるので重複する説明は省略し、図3の処理と異なる部分について説明する。ここで、図15で説明する処理を行う無線伝送システムは、図2で説明した無線伝送システム100(1)と同様に構成される。
先ず、送信機201(1)側で実行される処理について説明する。
ステップS101及びステップS102の処理は、図3と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部203は、伝搬路情報又は位置情報に基づいて、球面上の複数のアンテナ素子111Tのうち伝送方向に最も近いアンテナ素子111T(#0)を決定する。
ステップS103aにおいて、アンテナ選択/重み付け処理部203は、伝搬路情報又は位置情報に応じて、アンテナ素子111T(#0)の伝送方向に対する角度(Δθp、Δφq)を計算する。なお、角度(Δθp、Δφq)の計算方法は、式(18)などで説明した通りである。
ステップS104aにおいて、アンテナ選択/重み付け処理部203は、アンテナ素子111T(#0)の伝送方向に対する角度(Δθp、Δφq)に応じた位置にあるM個のアンテナ素子111T(#1)〜(#M)を選択する。
ステップS105及びステップS106の処理は、図3と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部203は、M個のアンテナ素子111Tのそれぞれの位置に基づいて伝搬路行列及び重み付け行列を計算し、ステップS104aで選択したM個のアンテナ素子111Tから送信する信号にステップS105で計算した重み付け行列を適用してKストリームの信号を送信する。
このようにして、送信機201(1)は、受信機211(1)との間に位置ずれが生じた場合でも、位置ずれに応じたM個のアンテナ素子111Tを選択し直すことができるので、位置ずれによる通信路容量の低下を抑えることができる。
次に、受信機211(1)側で実行される処理について説明する。
ステップS111及びステップS112の処理は、図3と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部213は、伝搬路情報又は位置情報に基づいて、球面上の複数のアンテナ素子111Rのうち伝送方向に最も近いアンテナ素子111R(#0)を決定する。
ステップS113aにおいて、アンテナ選択/重み付け処理部213は、伝搬路情報又は位置情報に応じて、アンテナ素子111R(#0)の伝送方向に対する角度(Δθp、Δφq)を計算する。なお、角度(Δθp、Δφq)の計算方法は、式(18)などで説明した通りである。
ステップS114aにおいて、アンテナ選択/重み付け処理部213は、アンテナ素子111R(#0)の伝送方向に対する角度(Δθp、Δφq)に応じた位置にあるN個のアンテナ素子111T(#1)〜(#N)を選択する。
ステップS115及びステップS116の処理は、図3と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部213は、重み付け行列の共役転置行列をN個のアンテナ素子111Rで受信する信号に適用してKストリームの信号を生成する。
このようにして、受信機211(1)は、送信機201(1)との間に位置ずれが生じた場合でも、位置ずれに応じたN個のアンテナ素子111Rを選択し直すことができるので、位置ずれによる通信路容量の低下を抑えることができる。
[無線伝送システム100(2)aに対応する場合]
図16は、第8の実施形態に係る無線伝送システム100(2)aの処理例を示す。図16に示す処理は、図6で説明した円形アレーの処理に対応する直線アレー又は方形アレーの処理である。なお、図16において、図6と同符号の処理は図6の場合と同様に行われるので重複する説明は省略し、図6の処理と異なる部分について説明する。ここで、図16で説明する処理を行う無線伝送システムは、図4で説明した無線伝送システム100(2)aと同様に構成される。
先ず、送信機201(2)a側で実行される処理について説明する。
ステップS101及びステップS102の処理は、図6と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)aは、伝搬路情報又は位置情報に基づいて、球面上の複数のアンテナ素子111Tのうち伝送方向に最も近いアンテナ素子111T(#0)を決定する。
ステップS103a及びステップS103bの処理は、図15と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)aは、伝搬路情報又は位置情報に応じて、アンテナ素子111R(#0)の伝送方向に対する角度(Δθp、Δφq)を計算し、角度(Δθp、Δφq)に応じた位置にあるM個のアンテナ素子111T(#1)〜(#M)を選択する。
ステップS200及びステップS201の処理は、図6と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)aは、送信機201(2)a側で用いる重み付け行列を計算すると共に、受信機211(2)a側で用いる重み付け行列も計算し、受信機211(2)a側でN個のアンテナ素子111Rの選択及び重み付け行列の決定に必要な情報を送信する。
ステップS106の処理は、図6と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)aは、ステップS104aで選択したM個のアンテナ素子111Tから送信する信号にステップS200で計算した重み付け行列を適用してKストリームの信号を送信する。
このようにして、送信機201(2)aは、受信機211(2)aとの間に位置ずれが生じた場合でも、位置ずれに応じたM個のアンテナ素子111Tを選択し直すことができるので、位置ずれによる通信路容量の低下を抑えることができる。
次に、受信機211(2)a側で実行される処理について説明する。
ステップS211及びステップS212の処理は、図6と同様に行われ、受信機211(2)aは、送信機201(2)aから受け取った位置情報に基づいてアンテナアレー212のアンテナ素子111Rを選択し、送信機201(2)aから受け取った重み付け行列の情報に基づいて計算した共役転置行列(或いは、送信機201(2)aから受け取った共役転置行列)を選択したN個のアンテナ素子111Rが受信する信号に適用してKストリームの信号を生成する。或いは、受信機211(2)aは、送信機201(2)aから受け取った位置情報に基づいてアンテナアレー212のアンテナ素子111Rを選択し、さらに位置情報に基づいて重み付け行列及び共役転置行列を計算して、選択したN個のアンテナ素子111Rから受信する信号に適用してKストリームの信号を生成する。
このようにして、受信機211(2)bは、伝搬路情報や位置情報の測定や推定を行うことなく、或いは重み付け行列の計算も行うことなく、送信機201(2)aから受け取る位置情報や重み付け行列の情報を用いてKストリームの信号を受信することができる。
[無線伝送システム100(2)bに対応する場合]
図17は、第8の実施形態に係る無線伝送システム100(2)bの処理例を示す。図17に示す処理は、図7で説明した円形アレーの処理に対応する直線アレー又は方形アレーの処理である。なお、図17において、図7と同符号の処理は図7の場合と同様に行われるので重複する説明は省略し、図7の処理と異なる部分について説明する。ここで、図17で説明する処理を行う無線伝送システムは、図5で説明した無線伝送システム100(2)bと同様に構成される。
先ず、送信機201(2)b側で実行される処理について説明する。
ステップS301の処理は、図7と同様に行われ、送信機201(2)bは、受信機211(2)bから受け取った位置情報に基づいてアンテナアレー202のM個のアンテナ素子111Tを選択し、受信機211(2)bから受け取った重み付け行列の情報に基づいて重み付け行列を決定し、Kストリームの信号に適用して選択されたM個のアンテナ素子111Tから送信する。
このようにして、送信機201(2)bは、位置推定処理を行うことなく、或いは重み付け行列の計算も行うことなく、受信機211(2)bから受け取る位置情報や重み付け行列の情報を用いてKストリームの信号を送信することができる。
次に、受信機211(2)b側で実行される処理について説明する。
ステップS111及びステップS112の処理は、図3と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部213(2)bは、伝搬路情報又は位置情報に基づいて、球面上の複数のアンテナ素子111Rのうち伝送方向に最も近いアンテナ素子111R(#0)を決定する。
ステップS113a及びステップS114aの処理は、図15と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部213(2)bは、伝搬路情報又は位置情報に応じて、アンテナ素子111R(#0)の伝送方向に対する角度(Δθp、Δφq)を計算し、角度(Δθp、Δφq)に応じた位置にあるN個のアンテナ素子111T(#1)〜(#N)を選択する。
ステップS310及びステップS311の処理は、図7と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部213(2)bは、受信機211(2)b側で用いる重み付け行列を計算すると共に、送信機201(2)b側で用いる重み付け行列も計算し、送信機201(2)b側でM個のアンテナ素子111Tの選択及び重み付け行列の決定に必要な情報を送信する。
ステップS116の処理は、図7と同様に行われ、アンテナ選択/重み付け処理部203(2)bは、ステップS310で計算した重み付け行列の共役転置行列をステップS114aで選択したN個のアンテナ素子111Rで受信する信号に適用してKストリームの信号を生成する。
このようにして、受信機211(2)bは、送信機201(2)bとの間に位置ずれが生じた場合でも、位置ずれに応じたN個のアンテナ素子111Rを選択し直すことができるので、位置ずれによる通信路容量の低下を抑えることができる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態では、選択されるアンテナ素子の組み合わせを示す識別子i(i=1,…,I(Iは整数))のI通りの組み合わせについて伝搬路行列の相関行列(伝搬路相関行列と称する)を計算し、伝搬路相関行列が所定の条件を満たす場合のアンテナ素子を選択する。本実施形態では、所定の条件として、伝搬路相関行列が最大となるアンテナ素子を選択する場合、伝搬路相関行列が予め設定された閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合、伝搬路相関行列が最大又は閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合、の3つの場合について説明する。ここで、第9の実施形態に係る無線伝送システムは、図2で説明した無線伝送システム100(1)と同様に構成される。また、送信機201側のアンテナアレー202に対する伝搬路相関行列をT、その行列式をdet(T)と表記し、同様に、受信機211側のアンテナアレー212に対する伝搬路相関行列をR、その行列式をdet(R)と表記する。また、アンテナ素子の組み合わせを示す識別子iにおける伝搬路相関行列をTi(受信機211側はRi)と表記する。
[伝搬路相関行列が最大となるアンテナ素子を選択する場合]
図18は、第9の実施形態において、行列式が最大となるアンテナ素子を探索する処理の一例を示す。ここで、以下の説明では、受信機211のアンテナアレー212について説明するが、送信機201のアンテナアレー202についても同様に処理される。
ステップS401において、推定部214(送信側の場合は推定部204(以下同様))は、位置情報(伝送距離(D0)又は伝送方向(θ、φ))を測定又は推定する。なお、位置情報の測定方法又は推定方法は、ステップS101(又はステップS111)と同様である。
ステップS402において、アンテナ選択/重み付け処理部213(送信側の場合はアンテナ選択/重み付け処理部203(以下同様))は、ステップS401の結果に基づいて、全アンテナ素子111の中から組み合わせを示す識別子iが(i=1)の場合のN個(送信側の場合はM個)のアンテナ素子111を選択した場合の伝搬路相関行列R1(送信側の場合はT1(以下同様))を計算する。
ステップS403において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、伝搬路相関行列が最大の行列式detRmaxを組み合わせを示す識別子iが(i=1)の行列式det(R1)(又はdetTmax=det(T1))とする。
ステップS404において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、識別子iを1つ増加する(インクリメント)。
ステップS405において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、全アンテナ素子の中からN個(又はM個)のアンテナ素子を選択した場合の伝搬路相関行列Ri(送信側の場合はTi)を計算する。
ステップS406において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、行列式det(Ri)が最大の行列式detRmaxより大きいか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS407の処理に進み、Noの場合はステップS408の処理に進む。
ステップS407において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、最大の行列式detRmaxを行列式det(Ri)に更新する処理を行う。このとき、アンテナ選択/重み付け処理部213は、行列式det(Ri)の組み合わせを示す識別子iに対応するM個(又はN個)のアンテナ素子111の位置情報や識別子を行列式detRmaxに対応付けて保持しておく。
ステップS408において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、識別子iが全組み合せ数I以上であるか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS409の処理に進み、Noの場合はステップS404の処理に戻って同様の処理を繰り返す。このようにして、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が最大となるN個(又はM個)のアンテナ素子の組み合わせを探索する。
ステップS409において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が最大となる行列式detRmaxに対応したM個(又はN個)のアンテナ素子を選択する。ここで、アンテナ選択/重み付け処理部213は、ステップS407で行列式detRmaxに対応付けて保持しておいたN個(又はM個)のアンテナ素子111の位置情報や組み合わせを示す識別子により、選択すべきアンテナ素子111を知ることができる。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システム100(1)は、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が最大値detRmaxとなるN個(又はM個)のアンテナ素子の組み合わせを探索して、最適なアンテナ素子を選択することができる。
ここで、本実施形態に係る無線伝送システム100(1)は、送信機201側において、全アンテナ素子111の中からM個のアンテナ素子111を選択し、受信機211側において、全アンテナ素子111の中からN個のアンテナ素子を選択したと仮定して、送受信機間の伝送距離又は伝送方向の情報から伝搬路行列Hおよびその伝搬路相関行列R=HHH(又はT=HHH)を計算する。そして、無線伝送システム100(1)は、伝搬路相関行列R(又はT)の行列式が最大となるアンテナ素子111の組み合わせを求め、行列式が最大となるときのM個(又はN個)のアンテナ素子111を送信機201側及び受信機211側で選択してKストリームの信号の送受信を行う。
なお、見通し環境下の通信では、受信SNR(Signal to Noise Ratio)が大きく、このとき通信路容量Cは、式(18)で表すことができる。ここで、Psはストリーム当りの送信電力、Pnは雑音電力、Iは単位行列である。
式(18)において、対数(log2)は単調増加関数なので、通信路容量Cの増加はすなわち伝搬路行列の伝搬路相関行列の行列式det(HHH)の増加と等価である。そのため、伝搬路相関行列の行列式を大きくするアンテナ素子111を選択することにより、伝搬路相関行列の行列式が相対的に小さいアンテナ素子111を選択する場合に比べて、高い通信路容量を実現することができる。
[伝搬路相関行列が閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合]
図19は、第9の実施形態において、行列式が閾値以上となるアンテナ素子を探索する処理の一例を示す。ここで、以下の説明では、受信機211のアンテナアレー212について説明するが、送信機201のアンテナアレー202についても同様に処理される。
ステップS501において、推定部214(送信側の場合は推定部204(以下同様))は、図18で説明したステップS401と同様の処理を行い、位置情報を測定又は推定する。
ステップS502において、アンテナ選択/重み付け処理部213(送信側の場合はアンテナ選択/重み付け処理部203(以下同様))は、ステップS501の結果に基づいて、全アンテナ素子111の中から組み合わせ(i=1)の場合のN個(送信側の場合はM個)のアンテナ素子111を選択した場合の伝搬路相関行列R1(送信側の場合はT1)を計算する。そして、閾値detRthを設定する。ここで、閾値detRthの初期値は、例えば、比較的簡単に伝搬路行列の推定が可能な1ストリームの場合における伝搬路相関行列を予め求めておき、これを閾値detRthとして設定する。
ステップS503において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、伝搬路相関行列の行列式detRを組み合わせを示す識別子iが(i=1)の行列式det(R1)(送信側の場合はdet(T1))に初期化する。
ステップS504において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、識別子iを1つ増加する。
ステップS505において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、全アンテナ素子の中からN個(又はM個)のアンテナ素子を選択した場合の伝搬路相関行列Ri(送信側の場合はTi)を計算する。
ステップS506において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、行列式det(Ri)が予め設定された閾値detRth以上であるか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS507の処理に進み、Noの場合はステップS508の処理に進む。
ステップS507において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、行列式detRを行列式det(Ri)に更新する処理を行う。
ステップS508において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、識別子iが全組み合せ数I以上であるか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS509の処理に進み、Noの場合はステップS504の処理に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS509において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、上述の処理で伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が閾値detRth以上となるN個(又はM個)のアンテナ素子の組み合わせが見つからなかったので、閾値detRthを変更する(例えば、閾値detRthを小さくする)。そして、ステップS504の処理に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS510において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が閾値detRth以上となる行列式detRに対応したN個(又はM個)のアンテナ素子を選択する。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システムは、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が閾値detRth以上となるN個(又はM個)のアンテナ素子の組み合わせを探索して、最適なアンテナ素子を選択することができる。
[伝搬路相関行列が閾値以上又は最大値となるアンテナ素子を選択する場合]
図20は、第9の実施形態において、行列式が最大又は閾値以上となるアンテナ素子を探索する処理の一例を示す。ここで、以下の説明では、受信機211のアンテナアレー212について説明するが、送信機201のアンテナアレー202についても同様に処理される。
ステップS601において、推定部214(送信側の場合は推定部204(以下同様))は、図18で説明したステップS401と同様の処理を行う。
ステップS602において、アンテナ選択/重み付け処理部213(送信側の場合はアンテナ選択/重み付け処理部203(以下同様))は、図19で説明したステップS502と同様の処理を行う。
ステップS603において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、伝搬路相関行列の行列式detR及び最大の行列式detRmaxの両方を組み合わせ(i=1)の行列式det(R1)(送信側の場合はdet(T1))に初期化する。
ステップS604において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、識別子iを1つ増加する。
ステップS605において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、全アンテナ素子の中からN個(又はM個)のアンテナ素子を選択した場合の伝搬路相関行列Ri(送信側の場合はTi)を計算する。
ステップS606において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、行列式det(Ri)が最大の行列式detRth以上であるか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS607の処理に進み、Noの場合はステップS608の処理に進む。
ステップS607において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、行列式detRを行列式det(Ri)に更新する処理を行う。
ステップS608において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、図18で説明したステップS406と同様に、行列式det(Ri)が最大の行列式detRmaxより大きいか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS609の処理に進み、Noの場合はステップS610の処理に進む。
ステップS609において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、図18で説明したステップS407と同様に、最大の行列式detRmaxを行列式det(Ri)に更新する処理を行う。そして、ステップS610の処理に進む。このとき、アンテナ選択/重み付け処理部213は、行列式det(Ri)の組み合わせを示す識別子iに対応するN個(又はM個)のアンテナ素子111の位置情報や識別子を行列式detRmaxに対応付けて保持しておく。
ステップS610において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、識別子iが全組み合せ数I以上であるか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS611の処理に進み、Noの場合はステップS604の処理に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS611において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が最大となる行列式detRmaxに対応したN個(又はM個)のアンテナ素子を選択する。ここで、アンテナ選択/重み付け処理部213は、ステップS609で行列式detRmaxに対応付けて保持しておいたN個(又はM個)のアンテナ素子111の位置情報や組み合わせを示す識別子により、選択すべきアンテナ素子111を知ることができる。
ステップS612において、アンテナ選択/重み付け処理部213は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が閾値detRth以上となる行列式detRに対応したN個(又はM個)のアンテナ素子を選択する。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システムは、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が閾値detRth以上となるN個(又はM個)のアンテナ素子の組み合わせ、又は、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が最大となるN個(又はM個)のアンテナ素子の組み合わせを探索して、伝搬路相関行列の行列式を計算してN個(又はM個)のアンテナ素子を選択することができる。ここで、図19の例では、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が閾値detRth以上となる行列式detRが見つからなかった場合に、閾値detRthを設定し直す必要があるが、図20の例では、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が閾値detRth以上となる行列式detRが見つからなかった場合でも、伝搬路相関行列の行列式det(Ri)が最大となる行列式detRmaxに対応したM個(又はN個)のアンテナ素子を選択することができる。
(第9の実施形態の変形例)
第9の実施形態の変形例について説明する。例えば図18に示した第9の実施形態の処理では、ステップS401において、推定部204(又は推定部214)が位置情報を測定又は推定したが、本変形例では、送信機201と受信機211との間の伝搬路行列を測定する。つまり、第9の実施形態では、位置情報から伝搬路行列及び伝搬路相関行列を計算してM個又はN個のアンテナ素子111を選択する処理を行ったが、本変形例では、伝搬路行列を測定して伝搬路相関行列を計算し、M個又はN個のアンテナ素子111を選択する処理を行う。
図21は、第9の実施形態の別の処理例を示す。ここでは、図18と異なる処理について説明する。なお、第9の実施形態の変形例に係る無線伝送システムは、図2で説明した無線伝送システム100(1)と同様に構成される。
ステップS401aにおいて、推定部204(又は推定部214)は、送信機201と受信機211との間の伝搬路行列を測定する。なお、伝搬路行列は、例えば、トレーニング信号など既知の信号を用いる周知技術により測定可能である。
そして、ステップS402では、図18と同様に、アンテナ選択/重み付け処理部203(アンテナ選択/重み付け処理部213)は、ステップS401aの結果に基づいて、全アンテナ素子111の中から組み合わせ(i=1)の場合のM個(又はN個)のアンテナ素子111を選択した場合の伝搬路相関行列R1(又はT1)を計算する。
以降、ステップS409までの処理は、図18の処理と同じなので、重複する説明は省略する。
ここで、図21は、図18で説明した伝搬路相関行列が最大となるアンテナ素子を選択する場合の処理例に対応するが、図21のステップS401aの処理を図19のステップS501の処理又は図20のステップS601の処理にそれぞれ置き換えることによって、伝搬路相関行列が予め設定された閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合、及び、伝搬路相関行列が最大又は閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合、についても同様に適用可能である。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システム100(1)は、送信機201側において全アンテナ素子111の中からM個のアンテナ素子111を選択し、受信機211側において全アンテナ素子111の中からN個のアンテナ素子111を選択した場合の伝搬路行列Hを測定して、伝搬路相関行列R=HHH(又はT=HHH)を計算する。
なお、第9の実施形態と同様に、見通し環境下の通信では、受信SNRが大きく、通信路容量Cは、先に説明した式(18)で表すことができる。そして、式(18)において、対数(log2)は単調増加関数なので、通信路容量Cの増加は、伝搬路相関行列の行列式det(HHH)の増加と等価である。そのため、伝搬路相関行列の行列式を大きくするアンテナ素子111を選択することにより、伝搬路相関行列の行列式が相対的に小さいアンテナ素子111を選択する場合に比べて、高い通信路容量を実現することができる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態について説明する。第9の実施形態では、伝搬路相関行列により、アンテナ配置面220上の全アンテナ素子111を探索する処理を行ったが、本実施形態では、予め設定されたアンテナ探索領域内において、基準となるアンテナ素子111から順番にアンテナ素子111を選択していく。例えば、伝送方向に最も近いアンテナ素子111や、アンテナ放射効率が最も良いアンテナ素子111など、基準となるアンテナ素子111を最初(1番目)のアンテナ素子として選択し、所定の条件(例えば等間隔や等角度など)に基づいて周辺のアンテナ素子111を順番に選択していく。そして、順番に選択されるアンテナ素子111のうち、最初に選択されたアンテナ素子111が1ストリーム目、2番目に選択されたアンテナ素子111が2ストリーム目、、、、K番目に選択されたアンテナ素子111がKストリーム目となるように順番にストリームを割り当てることにより、Kストリーム用の複数のアンテナ素子111が一度決定されると、ストリーム数がK未満のストリームに対応する場合に選択すべきアンテナ素子111も同時に決定されるという利点がある。これにより、ストリーム数がK未満のストリームに変更される場合のアンテナ素子111の選択処理が不要となる。例えば、送信機201と受信機211との間で送受信するデータ量などに応じてストリーム数を変化させる場合でも、アンテナ素子111の探索のやり直しを行わずに済ませることができる。
次に、第10の実施形態において、第9の実施形態で説明した図18、図19及び図20と同様に、伝搬路相関行列が最大となるアンテナ素子を選択する場合、伝搬路相関行列が予め設定された閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合、伝搬路相関行列が最大又は閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合、の3つの場合の処理について説明する。
[伝搬路相関行列が最大となるアンテナ素子を選択する場合]
図22は、第10の実施形態において、行列式が最大となるアンテナ素子を探索する処理の一例を示す。なお、本実施形態では、予め設定されたアンテナ探索領域内において、アンテナ素子111を順番に選択する方法で、伝搬路相関行列が最大となるアンテナ素子を選択する。ここで、以下の説明では、受信機211のアンテナアレー212について説明するが、送信機201のアンテナアレー202についても同様に処理される。
ステップS701は、図18で説明したステップS401と同様の処理であり、推定部204(送信側の場合は推定部214(以下同様))は、位置情報を測定又は推定する。
ステップS702において、アンテナ選択/重み付け処理部203(送信側の場合はアンテナ選択/重み付け処理部213(以下同様))は、基準アンテナ素子を決定し、i=1の最初(1番目)のアンテナ素子111(#1)とする。例えば、アンテナ選択/重み付け処理部203は、伝送方向に最も近いアンテナ素子111や、アンテナ放射効率が最も良いアンテナ素子111などを基準アンテナ素子に決定し、アンテナ素子111(#1)とする。
ステップS703において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、伝搬路相関行列が最大の行列式detRmaxを最初のアンテナ素子111(#1)の行列式det(R1)(又はdetTmax=det(T1))とする。
ステップS704において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、予め設定されたアンテナ探索領域内からアンテナ素子111(#(i+1))を選択し、(i+1)個のアンテナ素子111を用いた場合の伝搬路相関行列R(i+1)(又はT(i+1))を計算する。
ステップS705において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、図18で説明したステップS406と同様に、行列式det(R(i+1))が最大の行列式detRmaxより大きいか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS706の処理に進み、Noの場合はステップS707の処理に進む。
ステップS706において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、行列式detRmaxを行列式det(R(i+1))に更新する処理を行う。
ステップS707において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、選択するアンテナ素子111の数を示すカウンタiが選択素子数の上限をIとして(I-1)よりも大きいか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS708の処理に進み、Noの場合はステップS704の処理に戻って同様の処理を繰り返す。このようにして、伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が最大となるM個(又はN個)のアンテナ素子の組み合わせを探索する。
ステップS708において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が最大となる行列式detRmaxに対応したK個(K≦I)のアンテナ素子を選択する。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システムは、予め設定されたアンテナ探索領域内において、アンテナ素子111を順番に選択する方法で、伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が最大となるK個のアンテナ素子を選択することができる。
[伝搬路相関行列が閾値以上となるアンテナ素子を選択する場合]
図23は、第10の実施形態において、行列式が閾値以上となるアンテナ素子を探索する処理の一例を示す。なお、本実施形態では、予め設定されたアンテナ探索領域内において、アンテナ素子111を順番に選択する方法で、伝搬路相関行列が予め決められた閾値以上となるアンテナ素子を選択する。ここで、以下の説明では、受信機211のアンテナアレー212について説明するが、送信機201のアンテナアレー202についても同様に処理される。
ステップS801において、図19で説明したステップS501と同様の処理であり、推定部204(送信側の場合は推定部214(以下同様))は、位置情報を測定又は推定する。
ステップS802において、アンテナ選択/重み付け処理部203(送信側の場合はアンテナ選択/重み付け処理部213(以下同様))は、図22で説明したステップS702と同様に、基準アンテナ素子を決定し、i=1の最初(1番目)のアンテナ素子111(#1)とする。そして、閾値detRthを設定する。ここで、閾値detRthの初期値は、例えば、比較的簡単に伝搬路行列の推定が可能な1ストリームの場合における伝搬路相関行列を予め求めておき、これを閾値detRthとして設定する。
ステップS803において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、伝搬路相関行列の行列式detRを最初のアンテナ素子111(#1)の行列式det(R1)(又はdetTmax=det(T1))とする。
ステップS804において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、図22で説明したステップS704と同様に、予め設定されたアンテナ探索領域内からアンテナ素子111(#(i+1))を選択し、(i+1)個のアンテナ素子111を用いた場合の伝搬路相関行列R(i+1)(又はT(i+1))を計算する。
ステップS805において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、図19で説明したステップS506と同様に、行列式det(R(i+1))が予め設定された閾値detRth以上であるか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS806の処理に進み、Noの場合はステップS807の処理に進む。
ステップS806において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、行列式detRを行列式det(R(i+1))に更新する処理を行う。
ステップS807において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、アンテナ素子111の数を示すカウンタiが選択素子数の上限をIとして(I-1)よりも大きいか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS808の処理に進み、Noの場合はステップS804の処理に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS808において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、上述の処理で伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が閾値detRth以上となるアンテナ素子の組み合わせが見つからなかったので、閾値detRthを変更する(例えば、閾値detRthを小さくする)。そして、ステップS804の処理に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS809において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が閾値detRth以上となる行列式detRに対応したK個(K≦I)のアンテナ素子を選択する。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システムは、予め設定されたアンテナ探索領域内において、アンテナ素子111を順番に選択する方法で、伝搬路相関行列の行列式を計算してアンテナ素子を選択することができる。
[伝搬路相関行列が閾値以上又は最大値となるアンテナ素子を選択する場合]
図24は、第10の実施形態において、行列式が最大又は閾値以上となるアンテナ素子を探索する処理の一例を示す。なお、本実施形態では、予め設定されたアンテナ探索領域内において、アンテナ素子111を順番に選択する方法で、伝搬路相関行列が予め決められた閾値以上又は最大値となるアンテナ素子を選択する。ここで、以下の説明では、受信機211のアンテナアレー212について説明するが、送信機201のアンテナアレー202についても同様に処理される。
ステップS901において、図22で説明したステップS701又は図23で説明したステップS801と同様の処理であり、推定部204(送信側の場合は推定部214(以下同様))は、位置情報を測定又は推定する。
ステップS902において、アンテナ選択/重み付け処理部203(送信側の場合はアンテナ選択/重み付け処理部213(以下同様))は、図22で説明したステップS702又は図23で説明したステップS802と同様に、基準アンテナ素子を決定し、i=1の最初(1番目)のアンテナ素子111(#1)とする。そして、閾値detRthを設定する。ここで、閾値detRthの初期値は、例えば、比較的簡単に伝搬路行列の推定が可能な1ストリームの場合における伝搬路相関行列を予め求めておき、これを閾値detRthとして設定する。
ステップS903において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、伝搬路相関行列の行列式detRと伝搬路相関行列が最大の行列式detRmaxとを最初のアンテナ素子111(#1)の行列式det(R1)(又はdetTmax=det(T1))とする。
ステップS904において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、図22で説明したステップS704又は図23で説明したステップS804と同様に、予め設定されたアンテナ探索領域内からアンテナ素子111(#(i+1))を選択し、(i+1)個のアンテナ素子111を用いた場合の伝搬路相関行列R(i+1)(又はT(i+1))を計算する。
ステップS905において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、図19で説明したステップS506又は図20で説明したステップS606と同様に、行列式det(R(i+1))が予め設定された閾値detRth以上であるか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS906の処理に進み、Noの場合はステップS907の処理に進む。
ステップS906において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、行列式detRを行列式det(R(i+1))に更新する処理を行う。
ステップS907において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、図20で説明したステップS606と同様に、行列式det(R(i+1))が最大の行列式detRmaxより大きいか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS908の処理に進み、Noの場合はステップS909の処理に進む。
ステップS908において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、図20で説明したステップS609と同様に、最大の行列式detRmaxを行列式det(R(i+1))に更新する処理を行う。
ステップS909において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、全アンテナ素子111の数を示すカウンタiが選択素子数の上限をIとして (I-1)よりも大きいか否かを判別する。判別結果がYesの場合はステップS910の処理に進み、Noの場合はステップS904の処理に戻って同様の処理を繰り返す。
ステップS910において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が最大となる行列式detRmaxに対応したK個(K≦I)のアンテナ素子を選択する。
ステップS911において、アンテナ選択/重み付け処理部203は、上述の処理で探索された伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が閾値detRth以上となる行列式detRに対応したK個(K≦I)のアンテナ素子を選択する。
このようにして、本実施形態に係る無線伝送システムは、予め設定されたアンテナ探索領域内において、アンテナ素子111を順番に選択する方法で、伝搬路相関行列の行列式を計算してアンテナ素子を選択することができる。ここで、図24の例では、図20の場合と同様に、伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が閾値detRth以上となる行列式detRが見つからなかった場合でも、伝搬路相関行列の行列式det(R(i+1))が最大となる行列式detRmaxに対応したM個(又はN個)のアンテナ素子を選択することができる。
ここで、アンテナ素子111の探索を行う領域(探索範囲)を限定する一例として、球形のアンテナ配置面220において、伝送方向に最も近いアンテナ素子111を中心に垂直方向がθaからθbまでの角度、及び、水平方向がφaからφbまでの角度を探索範囲に限定し、当該探索範囲内のアンテナ素子111を選択する方法が考えられる。このとき、限定した探索範囲内のアンテナ素子111の数をNlim(但し、Nlim<Nmax)又はMlim(但し、Mlim<Mmax)とする。なお、送信機201側及び受信機211側の全アンテナ素子111の数をMmax及びNmaxとする。球形のアンテナ配置面220上の全アンテナ素子111の数Mmax及びNmaxの中から送信機201側でM個のアンテナ素子111および受信機211側でN個のアンテナ素子111を選ぶ場合の最大探索数は、アンテナ素子111の組み合わせの計算より、式(19)で計算できる。ここで、Cは組み合わせの演算子を示す。
一方、限定した探索範囲内のアンテナ素子111の数Mlim及びNlimの中からM個のアンテナ素子111およびN個のアンテナ素子111を選ぶ場合の最大探索数は、アンテナ素子111の組み合わせの計算より、式(20)で計算できる。
このようにして、アンテナ素子111の探索量が送信機201側で1/(Mmax・(Mmax−1)・ … ・(Mlim+1))に、受信機211側で1/(Nmax・(Nmax−1)・ … ・(Nlim+1))に削減される。これにより、アンテナ素子111の探索量の削減と通信路容量の特性の改善とが可能になる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態では、アンテナ素子111の探索量を削減する方法として、対称性を利用する方法について説明する。
図25は、第11の実施形態に係るアンテナ素子の選択方法の一例を示す。図25において、例えばアンテナ配置面220上の予め決められた選択方向に順番にアンテナ素子111を選択していく場合、基準点又は基準のアンテナ素子111rを中心に点対称となる位置にあるアンテナ素子111も同時に選択する。図25の例では、アンテナ配置面220上の基準のアンテナ素子111rから選択方向に位置する最初のアンテナ素子111sが選択される。同時に、アンテナ素子111rを中心に選択されたアンテナ素子111sの点対称となる位置のアンテナ素子111c1、アンテナ素子111c2及びアンテナ素子111c3も選択される。
ここで、アンテナ配置面220の場合、全アンテナ素子111の数が球の表面積(球の半径をアンテナ素子111の間隔で割った値の2乗のオーダー)に比例する。これに対して、本実施形態に係る対称性を利用する方法では、例えばある断面上のアンテナ素子111から選択する場合、球の半径を素子間隔で割った値のオーダーのアンテナ素子111数が探索の対象となる。これにより、本実施形態の方法を適用せずに全アンテナ素子111を探索する方法に比べて、本実施形態の方法では、アンテナ素子111の探索量が大幅に削減され、処理時間や処理の負荷が低減できる。
(第12の実施形態)
第12の実施形態では、アンテナ素子111の探索量を削減する別の方法として、選択されるアンテナ素子111の組み合わせの候補を予め設定しておく方法について説明する。
例えば、X(Xは正の整数)種類のアンテナ素子間隔を有するM個の送信機201側のアンテナ素子111の組み合わせからなる円形アレー又は長方形アレー又は正方形アレーを予め選択候補として設定しておく。同様に、Y(Yは正の整数)種類のアンテナ素子間隔を有するN個の受信機211側のアンテナ素子111の組み合わせからなる円形アレー又は長方形アレー又は正方形アレーを予め選択候補として設定しておく。そして、伝搬路情報又は送受信機の位置情報に応じて伝搬路行列の行列式が最大となる、又は、行列式が閾値以上となるアンテナ素子111の組み合わせを予め設定された選択候補の中から選択し、Kストリームの信号の送受信を行う。これにより、アンテナ素子111の数に依存せず、予め決められた種類の数だけで探索を済ませることができるので、アンテナ素子111の探索量が削減され、処理時間や処理の負荷が低減できる。
(第13の実施形態)
第13の実施形態では、選択するアンテナ素子111の分解能を向上する方法について説明する。上述の各実施形態では、アンテナ配置面220が1つの球面である場合について説明したが、本実施形態では、例えば複数の球面を用いて、1つの球面の場合には選択可能なアンテナ素子111が無かった球の内部や外部などの方向(奥行き方向)においても選択可能なアンテナ素子111を設けることができる。
例えば、球面上に複数のアンテナ素子111が配置された球を複数用いる場合、複数の球が同一の中心を持ち半径が異なるようにすることで、基準となる球面の内部に半径が小さい別の球面があり、或いは基準となる球面の外部に半径が大きい別の球面が配置される。そして、各球面にアンテナ素子111を配置することにより、基準となる球面のアンテナ素子111以外に、基準となる球面の内部や外部の球面のアンテナ素子111が選択可能となる。これにより、伝送距離や伝送方向に応じて選択可能なアンテナ素子111の位置の自由度が高くなり、アンテナ素子111の分解能を向上することができる。
或いは、球面上に複数のアンテナ素子111が配置された同一半径の球を複数用いる場合、複数の球面を平行移動して配置することにより、選択可能なアンテナ素子111の位置の自由度が高くなり、伝送距離や伝送方向に応じてアンテナ素子111の分解能を向上することができる。
(第14の実施形態)
第14の実施形態では、選択すべきアンテナ素子111の最適な間隔又は位置にアンテナ素子111が存在しない場合に複数のアンテナ素子111を組み合わせる方法について説明する。
図26は、第14の実施形態に係るアンテナ素子の選択方法の一例を示す。図26では、送信機201側のアンテナアレー202に対向する受信機211側のアンテナアレー212において、電力可変分配・合成器301及び電力可変分配・合成器302を設けている。ここで、電力可変分配・合成器301及び電力可変分配・合成器302は、入力される2つの信号を所定の電力比率で1つの信号に合成する合成器、又は、入力される1つの信号を所定の電力比率で2つの信号に分配する分配器として動作する。なお、図26の例では、電力可変分配・合成器301及び電力可変分配・合成器302は、受信機211側に配置されているので、合成器として動作する。
図26において、アンテナアレー212は、K=2(N=4)の場合を示し、最適なアンテナ素子の位置を示す半径Lの円の円周151上にはアンテナ素子111Rが存在しない。そこで、本実施形態では、先ず、円周151に最も近いアンテナ素子111R(#11)及びアンテナ素子111R(#14)を選択し、さらに、アンテナ素子111R(#11)及びアンテナ素子111R(#14)のそれぞれに対して、円周151を挟んで隣接するアンテナ素子111R(#12)及びアンテナ素子111R(#13)を選択する。そして、アンテナ素子111R(#11)と円周151を挟んで隣接するアンテナ素子111R(#12)との出力を電力可変分配・合成器301で合成する。ここで、電力可変分配・合成器301は、アンテナ素子111R(#11)及びアンテナ素子111R(#12)と円周151とのそれぞれの距離に応じた合成比率でアンテナ素子111R(#11)の出力電力とアンテナ素子111R(#12)の出力電力とを合成したストリーム1の信号を出力する。同様に、アンテナ素子111R(#14)と円周151を挟んで隣接するアンテナ素子111R(#13)との出力を電力可変分配・合成器302で合成する。ここで、電力可変分配・合成器302は、アンテナ素子111R(#14)及びアンテナ素子111R(#13)と円周151とのそれぞれの距離に応じた合成比率でアンテナ素子111R(#14)の出力電力とアンテナ素子111R(#13)の出力電力とを合成したストリーム2の信号を出力する。
なお、送信機201側のアンテナアレー202に適用する場合は、図26の例とは逆に電力可変分配・合成器301及び電力可変分配・合成器302を送信機201側に設ける。ここで、図26の受信機211のアンテナ素子111R(#11)、アンテナ素子111R(#12)、アンテナ素子111R(#13)及びアンテナ素子111R(#14)を送信アンテナとした場合を送信側の例として説明する。この場合、電力可変分配・合成器301及び電力可変分配・合成器302は分配器として動作し、ストリーム1の信号は、電力可変分配・合成器301に入力されてアンテナ素子111R(#11)及びアンテナ素子111R(#12)と円周151との距離に応じて比例配分され、アンテナ素子111R(#11)及びアンテナ素子111R(#12)から送信される。同様に、ストリーム2の信号は、電力可変分配・合成器302に入力されてアンテナ素子111R(#14)及びアンテナ素子111R(#13)と円周151との距離に応じて比例配分され、アンテナ素子111R(#14)及びアンテナ素子111R(#13)から送信される。
このように、選択すべきアンテナ素子111の最適な間隔又は位置にアンテナ素子111が存在しない場合でも、最適なアンテナ素子の位置に最も近いアンテナ素子と隣接するアンテナ素子とに電力可変分配・合成器を接続して、最適なアンテナ素子の位置との位置のずれに応じて複数のアンテナ素子に同時に入出力する信号電力の分配比率や合成比率を変えることにより、送受信する信号の波源の位置を最適なアンテナ素子の位置に合わせることができ、通信路容量の特性を改善することができる。
(第15の実施形態)
第15の実施形態では、アンテナ配置面220の形状が送信機201側と受信機211側とで異なる場合について説明する。
上述の各実施形態では、送信機201側と受信機211側とのアンテナ配置面220が球面の場合を基本として説明したが、送信機201側と受信機211側とでアンテナ配置面220の形状が異なっていてもよい。例えば、送信機201側と受信機211側のいずれか片方が球面で、もう片方が平面であってもよい。これにより、送信機201側又は受信機211側において、装置の設置サイズや奥行きに制約がある場合でも各実施形態で説明したアンテナアレーが配置可能となり、最適なアンテナ素子111の選択やKストリームの信号の送受信を行うことができる。
ここで、上述の各実施形態において、送信機201のM個のアンテナ素子111T及び受信機211のN個のアンテナ素子111Rは、球面上、円筒面上、円周上、楕円の回転体面上、楕円筒面上又は楕円周上のいずれかに配置されたアンテナ素子111の中からそれぞれ選択されてもよい。この場合、アンテナ配置面220は、球面だけではなく、位置ずれの生じる方向に応じて、円筒面や円周上、楕円の回転体面、楕円筒面、又は、楕円周上などの曲面に対応する。
以上、各実施形態で説明してきたように、本願発明に係る無線伝送方法及び無線伝送システムは、送受信機の移動などにより送信機側のアンテナアレーと受信機側のアンテナアレーとの間で位置ずれが生じた場合であっても、伝送距離や伝送方向の情報をもとに送信機側のアンテナ素子及び受信機側のアンテナ素子をそれぞれ適切なアンテナ素子に選択し直すことにより、LOS−MIMO伝送における多重化利得を保持することができる。
また、本発明に係る無線伝送方法及び無線伝送システムは、見通し環境などの伝搬路変動が少ない環境において、位置ずれが生じた場合でも通信路容量の劣化を抑えながら伝送方向に応じた多ストリーム伝送を行うことができる。
さらに、予め算出しておいた固定の重み付け行列を適用することにより、高速な演算処理装置を用いることなく、通信路容量の劣化を抑えた多ストリーム伝送を実現することができる。