JP2018137334A - Pzt系強誘電体薄膜及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】結晶性が良好な配向制御層上に(100)面に優先的に結晶配向が制御された結晶性が良好な膜厚調整層を有し、圧電特性が高いPZT系強誘電体薄膜を提供する。【解決手段】結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極上に、配向制御層と膜厚調整層とがこの順に積層されたPZT系強誘電体薄膜である。配向制御層が、下部電極に接する第1配向制御層とこの第1配向制御層上に形成された第2配向制御層を有する。第1配向制御層は、PbとTiを含有するペロブスカイト構造の化合物層であって、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、かつ層厚が20nm以下である。第2配向制御層は、層厚が60nm〜150nmのPZT系化合物層である。【選択図】図1

Description

本発明は、ゾルゲル液を用いたCSD(chemical solution deposition)法により(100)面に優先的に結晶配向が制御された、圧電特性の高いPZT系強誘電体薄膜及びその製造方法に関する。本明細書で、PZTとは、ジルコン酸鉛(PbZrO3)とチタン酸鉛(PbTiO3)の固溶体であって、一般式[Pb(ZraTi1-a)O3]で表される化合物をいう(但し、0<a<1である。)。
従来、この種のゾルゲル液を用いたCSD法による強誘電体薄膜の製造方法として、本出願人は、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極上に、PZT系強誘電体薄膜形成用組成物を塗布し、加熱して結晶化させることによりPZT系強誘電体薄膜を製造する方法において、結晶化後の層厚が35nm〜150nmの配向制御層を設けて、(100)面に優先的に結晶配向を制御する方法を提案した(例えば、特許文献1参照。)。またこの製造方法において、本出願人は、配向制御層を形成する前に、下部電極上に結晶粒径制御層を形成し、結晶粒径制御層の上に配向制御層を形成することを提案し、更に配向制御層をPZT系強誘電体薄膜形成用組成物の一部により形成した後に、PZT系強誘電体薄膜形成用組成物の残部を配向制御層上に塗布、仮焼、焼成して配向制御層の結晶配向と同じ結晶配向を有する層厚が5000nm未満の膜厚調整層を形成することを提案した。
この製造方法によれば、配向制御層の結晶化後の層厚を35nm〜150nmの範囲内にすることで、(100)面に優先的に結晶配向が制御されたPZT系強誘電体薄膜をシード層やバッファ層を設けることなく、簡便に得ることができる。また結晶粒径制御層の上に配向制御層を形成することで、配向制御層の結晶の異常粒成長を抑制することができ、結果として、微細な結晶組織で(100)面に優先的に結晶配向した配向制御層を得ることができる。
特開2012−256850号公報(請求項1〜請求項4、段落[0026]〜段落[0028]、段落[0057]、図1、図2)
しかし、上記特許文献1に示される方法では、(100)面に優先的に結晶配向した配向制御層が得られるものの、その結晶性は十分でなく、この配向制御層の上にPZTからなる膜厚調整層を積層したときに膜厚調整層の結晶性も十分でなく、結果としてPZT系強誘電体薄膜としての特性を十分に引き出すことができず、更なる改良が求められていた。また上記特許文献1に示される方法では、仮焼温度を、結晶粒径制御層を導入しない場合には、150℃〜200℃又は285℃〜315℃の範囲内にしなければならず、また結晶粒径制御層を導入する場合には、175℃〜315℃の範囲内にしなければならず、仮焼条件の制約を緩和する必要があった。
なお、本明細書では、特許文献1に示された結晶粒径制御層を「第1配向制御層」といい、配向制御層を「第2配向制御層」といい、第1及び第2配向制御層を合わせて「配向制御層」という。
本発明の目的は、結晶性が良好な配向制御層上に(100)面に優先的に結晶配向が制御された結晶性が良好な膜厚調整層を有し、圧電特性が高いPZT系強誘電体薄膜及びその製造方法を提供することにある。本発明の別の目的は、配向制御層を形成するときの仮焼を従来と比較してより広い温度範囲にすることができるPZT強誘電体薄膜の製造方法を提供することにある。
本発明の第1の観点は、図1に示すように、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極11を有する基板10の下部電極11上に、配向制御層12と膜厚調整層13とがこの順に積層されたPZT系強誘電体薄膜20において、配向制御層12が、下部電極11に接する第1配向制御層12aとこの第1配向制御層12a上に形成された第2配向制御層12bを有し、第1配向制御層12aは、PbとTiを含有するペロブスカイト構造の化合物層であって、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、層厚が20nm以下であり、第2配向制御層12bは、層厚が60nm〜150nmのPZT系化合物層であることを特徴とする。
本発明の第2の観点は、第1の観点に基づく発明であって、配向制御層12と膜厚調整層13の各層厚を合計した膜厚が400nm以上5000nm未満であるPZT系強誘電体薄膜である。
本発明の第3の観点は、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極上に、Pb化合物とTi化合物とLa化合物及び/又はNb化合物とを含む第1配向制御層形成用組成物を塗布し、仮焼して第1配向制御層前駆体を形成し、前記第1配向制御層前駆体の上にPb化合物とZr化合物とTi化合物とを含む第2配向制御層形成用組成物を塗布し、仮焼して第2配向制御層前駆体を形成し、続いて、前記第1配向制御層前駆体及び前記第2配向制御層前駆体を一括焼成して、PbとTiのペロブスカイト構造を有し、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、層厚が20nm以下である第1配向制御層と、層厚が60nm〜150nmのPZT化合物層である第2配向制御層とを形成し、前記第1配向制御層と第2配向制御層とを含む配向制御層の上にPb化合物とZr化合物とTi化合物とを含む膜厚調整層形成用組成物を塗布し、仮焼した後、焼成して膜厚調整層を形成するPZT系強誘電体薄膜の製造方法である。
本発明の第4の観点は、第3の観点に基づく発明であって、前記第1配向制御層を形成するための仮焼温度及び前記前記第2配向制御層を形成するための仮焼温度がそれぞれ175℃〜325℃の範囲内にあるPZT系強誘電体薄膜の製造方法である。
本発明の第1の観点のPZT系強誘電体薄膜では、下部電極11に接する第1配向制御層12aが、PbとTiを含有するペロブスカイト構造の化合物層であって、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、かつその層厚が20nm以下であるため、これらを含有しない下地層と比較して、その結晶性が良好となる。そして第1配向制御層12a上にPZT系化合物層であって層厚が60nm〜150nmである第2配向制御層12bを形成することにより、この第2配向制御層12b上に形成される膜厚調整層の結晶配向を(100)面に優先的に結晶配向に制御し、かつその結晶性が良好となる。
本発明の第2の観点のPZT系強誘電体薄膜では、配向制御層12と膜厚調整層13の各層厚を合計した膜厚が400nm以上5000nm未満であることによって、CSD法による圧電特性の高いPZT系強誘電体薄膜が得られる。
本発明の第3の観点のPZT系強誘電体薄膜の製造方法では、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モルの割合でドープされたPLT及び/又はPNbTで表される化合物層である第1配向制御層の前駆体とPZT系化合物層である第2配向制御層の前駆体とを一括焼成して、層厚が20nm以下である第1配向制御層と層厚が60nm〜150nmである第2配向制御層とを形成することにより、結晶性が良好な下地層を形成することができ、この第2配向制御層の上にPZT化合物からなる膜厚調整層を形成することにより、結晶性が良好なPZT系強誘電体薄膜が得られる。
本発明の第4の観点のPZT系強誘電体薄膜の製造方法では、第1配向制御層形成用組成物にLa及び/又はNbをドープすることにより、これらをドープしない下地層と比較して、ペロブスカイトの初期核の生成が起こりやすくなり、第1及び第2配向制御層を形成するときの仮焼を従来と比較してより広い温度範囲にすることができる。
本発明の実施形態の製造方法を説明するための断面図である。 Pt下部電極近傍でのドーピング元素の存在を確認するためのTEM−EDS評価結果を示す図である。図2(a)は強誘電体薄膜薄片の断面のTEM像を示し、図2(b)はドーピング元素であるLaのマッピング結果を示す。 Pt下部電極上の構成元素の線分析図である。
次に本発明を実施するための形態を図面に基づいて説明する。
本発明は、図1に示すように、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極11を有する基板10の下部電極11上に、配向制御層12と、(100)面に優先的に結晶配向が制御された膜厚調整層13とがこの順に積層されたPZT系強誘電体薄膜20である。
本発明の特徴ある構成は、配向制御層12が、下部電極11に接する第1配向制御層12aとこの第1配向制御層12a上に形成された第2配向制御層12bを有することにある。第1配向制御層12aは、PbとTiを含有するペロブスカイト構造の化合物層であって、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、かつ層厚が20nm以下であり、PLT及び/又はPNbTで表される化合物層である。第2配向制御層12bは、層厚が60nm〜150nmのPZT系化合物層である。
下部電極11上に積層された第1及び第2配向制御層からなる配向制御層12と膜厚調整層13の各層厚を合計したPZT系強誘電体薄膜20の膜厚は400nm以上5000nm未満であることが好ましく、1000nm〜2000nmであることが更に好ましい。前記合計した膜厚を上記範囲内としたのは、400nm未満では、圧電特性の高いPZT系強誘電体薄膜が得難く、5000nm以上ではCSD法ではプロセス時間が長くなることと、配向制御層13の優先配向面に倣う傾向が小さくなり、結果として、(100)面の配向度が小さくなり易いためである。
また本発明のPZT系強誘電体薄膜の製造方法は、結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極を有する基板の前記下部電極上に、Pb化合物とTi化合物とLa化合物及び/又はNb化合物とを含む第1配向制御層形成用組成物を塗布し、仮焼して第1配向制御層前駆体を形成し、前記第1配向制御層前駆体の上にPb化合物とZr化合物とTi化合物とを含む第2配向制御層形成用組成物を塗布し、仮焼して第2配向制御層前駆体を形成し、続いて、前記第1配向制御層前駆体及び前記第2配向制御層前駆体を一括焼成して、PbとTiのペロブスカイト構造を有し、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、層厚が20nm以下である第1配向制御層と、層厚が60nm〜150nmのPZT系化合物層である第2配向制御層とを形成し、前記第1配向制御層と第2配向制御層とを含む配向制御層の上にPb化合物とZr化合物とTi化合物とを含む膜厚調整層形成用組成物を塗布し、仮焼した後、焼成して膜厚調整層を形成する方法である。
このように、下地電極11上に塗布する第1配向制御層形成用組成物のPb化合物及びTi化合物に加えて、La及び/又はNbをドープすることにより、結晶化温度が下がり、第1及び第2配向制御層の結晶性が良好となる。この結晶化温度が下がる理由は、現時点では十分に解明されていないが、La及び/又はNbをドープしない場合と比べて、ペロブスカイトの初期核の生成が起こりやすくなり、結晶化に必要な熱エネルギーが減少するためと考えられる。この結果、第1及び第2配向制御層形成用組成物を塗布した後の仮焼温度を広範囲に決めることができる。また第1配向制御層を設けることによって、核の発生密度が高められるので、第2配向制御層の結晶の異常粒成長を抑制することができ、結果として、微細な結晶組織で(100)面に優先的に結晶配向した次に述べる第2配向制御層を得ることができる。LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル、好ましくは8モル〜12モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有する。また第1配向制御層の層厚は20nm以下、好ましくは4nm〜8nmである。La又はNbのドープ量がいずれかが6モル未満の場合及び層厚が1nm未満の場合には、La又はNbのドーピング効果が低くなり、第1及び第2配向制御層の結晶化温度が低下しない。ドープ量が20モルを超えるか、又は層厚が20nmを超える場合には、(100)面に配向させることができない不具合がある。
また第2配向制御層は層厚が60nm〜150nmになるように第2配向制御層形成用組成物を塗布される。結晶化後の第2配向制御層の層厚を60nm〜150nmの範囲内にすることで、(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜が形成される。これは、表面エネルギーが最小になるように自己配向することによるものと推察される。60nm未満では、第2配向制御層が(110)配向などの他の配向となるため好ましくなく、150nmを超えると同様に他の配向となるため好ましくないからである。好ましい層厚は45nm〜90nmである。この好ましい範囲の理由は、45nm未満では仮焼条件の最適な温度幅が狭く安定して(100)配向を得るのが困難であるからであり、90nmを超えると同様に仮焼の最適温度が狭くなるためであるからである。
PZT系強誘電体薄膜を製造する基板10としては、シリコン基板やサファイア基板などの耐熱性基板が用いられる。また、この基板10上に形成する結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極11としては、PtやIr、Ruなどの導電性を有し、強誘電体薄膜と反応しない材料が用いられる。
第1配向制御層形成用組成物は、Pb、La及びTiの各金属元素、又はPb、Nb及びTiの各金属元素、或いはPb、La、Nb及びTiの各金属元素が所望の金属原子比を与えるような割合となるように、有機溶媒中に溶解している有機金属化合物溶液からなる。La及びNbの割合、即ちドープ量は、それぞれがTi100モルに対して6モル〜20モルの範囲内にある。La又はNbのドープ量がいずれかが6モル未満では、ドーピング効果に乏しく、結晶化温度が低下しない。また20モルを超えると、液の保存安定性が下がり沈殿が生じる。LaとNbの共ドープの場合にも、それぞれがTi100モルに対して6モル以上ドープされる必要がある。これは、LaとNbの各ドーパントの置換する結晶サイトが異なることに起因する。Ti100モルに対するLaとNbの好ましいドープ量は8モル〜12モルである。
第2配向制御層形成用組成物及び膜厚調整層形成用組成物は、それぞれがPb、Zr及びTiの各金属元素が所望の金属原子比を与えるような割合となるように、有機溶媒中に溶解している有機金属化合物溶液からなる。
第1及び第2配向制御層形成用組成物及び膜厚調整層形成用組成物の原料は、上述した各金属元素に、有機基がその酸素又は窒素原子を介して結合している化合物が好適である。例えば、金属アルコキシド、金属ジオール錯体、金属トリオール錯体、金属カルボン酸塩、金属β−ジケトネート錯体、金属β−ジケトエステル錯体、金属β−イミノケト錯体、及び金属アミノ錯体からなる群より選ばれた1種又は2種以上が例示される。特に好適な化合物は、金属アルコキシド、その部分加水分解物、有機酸塩である。このうち、Pb化合物としては、酢酸鉛:Pb(OAc)2、鉛ジイソプロポキシド:Pb(OiPr)2などが挙げられる。La化合物としては、酢酸ランタン:La(OAc)3、ランタントリイソプロポキシド:La(OiPr)3などが挙げられる。Nb化合物としては、ニオブペンタエトキシド、ニオブ2−エチルヘキサンなどが挙げられる。Ti化合物としては、チタンテトラエトキシド:Ti(OEt)4、チタンテトライソプロポキシド:Ti(OiPr)4、チタンテトラn−ブトキシド:Ti(OiBu)4、チタンテトライソブトキシド:Ti(OiBu)4、チタンテトラt−ブトキシド:Ti(OtBu)4、チタンジメトキシジイソプロポキシド:Ti(OMe)2(OiPr)2などのアルコキシドが挙げられる。Zr化合物としては、上記Ti化合物と同様なアルコキシド類が挙げられる。金属アルコキシドはそのまま使用しても良いが、分解を促進させるためにその部分加水分解物を使用しても良い。
第1及び第2配向制御層形成用組成物及び膜厚調整層形成用組成物を調製するには、これらの原料を、焼成後の所望の強誘電体薄膜組成に相当する比率で適当な溶媒に溶解して、塗布に適した濃度に調製する。
この調製は、典型的には、以下のような液合成フローによって、前駆体溶液となる組成物を得ることができる。例えば、PLTの第1配向制御層を形成する場合には、反応容器に、Ti源(例えばTiイソプロポキシド)と、安定化剤(例えばアセチルアセトン)を入れて、窒素雰囲気中で還流する。その次に還流後の化合物にPb源(例えば酢酸鉛三水和物)とLa源(例えば酢酸ランタン)を添加するとともに、溶媒(例えばプロピレングリコール)を添加し、窒素雰囲気中で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後、この溶液に更に溶媒(例えばプロピレングリコール)を添加して濃度を調節し、更に、この溶液に溶媒(n−ブタノール)を添加する。これにより、第1配向制御層形成用組成物を得る。
またPNbTの第1配向制御層を形成する場合には、反応容器に、Ti源(例えばTiイソプロポキシド)と、Nb源(例えばニオブペンタエトキシド)と、安定化剤(例えばアセチルアセトン)を入れて、窒素雰囲気中で還流する。その次に還流後の化合物にPb源(例えば酢酸鉛三水和物)とを添加するとともに、溶媒(例えばプロピレングリコール)を添加し、窒素雰囲気中で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後、この溶液に更に溶媒(例えばプロピレングリコール)を添加して濃度を調節し、更に、この溶液に溶媒(n−ブタノール)を添加する。これにより、第1配向制御層形成用組成物を得る。
PZTの第2配向制御層又は膜厚調整層を形成する場合には、反応容器に、Zr源(例えばZrテトラn−ブトキシド)と、Ti源(例えばTiイソプロポキシド)と、安定化剤(例えばアセチルアセトン)を入れて、窒素雰囲気中で還流する。その次に還流後の化合物にPb源(例えば酢酸鉛三水和物)とを添加するとともに、溶媒(例えばプロピレングリコール)を添加し、窒素雰囲気中で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後、この溶液に更にプロイソグリコールを添加して濃度を調節し、更に、この溶液にn−ブタノールを添加する。この結果、当該強誘電体薄膜形成用組成物を得る。
ここで用いる組成物の溶媒は、使用する原料に応じて適宜決定されるが、一般的には、カルボン酸、アルコール(例えば、多価アルコールであるプロピレングリコール)、エステル、ケトン類(例えば、アセトン、メチルエチルケトン)、エーテル類(例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル)、シクロアルカン類(例えば、シクロヘキサン、シクロヘキサノール)、芳香族系(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン)、その他テトラヒドロフランなど、或いはこれらの2種以上の混合溶媒を用いることができる。
カルボン酸としては、具体的には、n−酪酸、α−メチル酪酸、i−吉草酸、2−エチル酪酸、2,2−ジメチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、2,3−ジメチル酪酸,3−メチルペンタン酸、4−メチルペンタン酸、2−エチルペンタン酸、3−エチルペンタン酸、2,2−ジメチルペンタン酸、3,3−ジメチルペンタン酸、2,3−ジメチルペンタン酸、2−エチルヘキサン酸、3−エチルヘキサン酸を用いるのが好ましい。
また、エステルとしては、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸tert−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸n−アミル、酢酸sec−アミル、酢酸tert−アミル、酢酸イソアミルを用いるのが好ましく、アルコールとしては、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、イソ−ブチルアルコール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、2−メチル−2−ペンタノール、2−メトキシエタノールを用いるのが好適である。
なお、上記組成物の有機金属化合物溶液中の有機金属化合物の合計濃度は、金属酸化物換算量で0.1〜20質量%程度とすることが好ましい。
この有機金属化合物溶液中には、必要に応じて安定化剤として、β−ジケトン類(例えば、アセチルアセトン、ヘプタフルオロブタノイルピバロイルメタン、ジピバロイルメタン、トリフルオロアセチルアセトン、ベンゾイルアセトン等)、β−ケトン酸類(例えば、アセト酢酸、プロピオニル酢酸、ベンゾイル酢酸等)、β−ケトエステル類(例えば、上記ケトン酸のメチル、プロピル、ブチル等の低級アルキルエステル類)、オキシ酸類(例えば、乳酸、グリコール酸、α−オキシ酪酸、サリチル酸等)、上記オキシ酸の低級アルキルエステル類、オキシケトン類(例えば、ジアセトンアルコール、アセトイン等)、ジオール、トリオール、高級カルボン酸、アルカノールアミン類(例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエタノールアミン)、多価アミン等を、(安定化剤分子数)/(金属原子数)で0.2〜3程度添加しても良い。
上記組成物はβ−ジケトン類及び多価アルコール類を含んでいることが好適である。このうち、β−ジケトン類としてはアセチルアセトンが、多価アルコール類としてはプロピレングリコールが特に好ましい。
本発明の第1配向制御層及び第2配向制御層は、(111)軸方向に配向した下部電極の上に、第1配向制御層形成用組成物をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法等の塗布法を用いて塗布し、ホットプレートなどを用いて乾燥・仮焼を行って第1配向制御層前駆体を形成し、次いでこの仮焼した第1配向制御層前駆体の上に第2配向制御層形成用組成物を同様に塗布し、乾燥・仮焼を行って第2配向制御層前駆体を形成した後、第1及び第2配向制御層前駆体を一括で焼成することにより得られる。各層の所望の層厚に応じて、塗布から乾燥・仮焼までの操作が1回以上繰返される。第1配向制御層を設けることによって、核の発生密度が高められるので、第2配向制御層の結晶の異常粒成長を抑制することができ、結果として、微細な結晶組織で(100)面に優先的に結晶配向した第2配向制御層を得ることができる。
本発明の膜厚調整層は、焼成された第2配向制御層の上に、膜厚調整層形成用組成物を第2配向制御層と同様の方法で塗布し、ホットプレートなどを用いて乾燥・仮焼を行って膜厚調整層前駆体を形成し、膜厚調整層の層厚に応じて、塗布から乾燥・仮焼までの操作が1回以上繰返された後、一括で焼成することにより得られる。
第1及び第2配向制御層形成用組成物、又は膜厚調整層形成用組成物の乾燥・仮焼は、溶媒を除去するとともに有機金属化合物を熱分解又は加水分解して複合酸化物に転化させるために行うことから、空気中、酸化雰囲気中、又は含水蒸気雰囲気中で行う。空気中での加熱でも、加水分解に必要な水分は空気中の湿気により十分に確保される。この加熱は、溶媒の除去のための低温加熱と、有機金属化合物の分解のための高温加熱の2段階で実施しても良い。
本焼成は、乾燥・仮焼で得られた薄膜を結晶化温度以上の温度で焼成して結晶化させるための工程であり、これにより強誘電体薄膜が得られる。この結晶化工程の焼成雰囲気はO2、N2、Ar、N2O又はH2等或いはこれらの混合ガス等が好適である。
本発明の特徴ある点は、第1配向制御層形成用組成物にLa及び/又はNbをドープすることにより、第1及び第2配向制御層形成用組成物の各仮焼温度の範囲を広くとることができることにある。この仮焼温度は、それぞれ175℃〜325℃、好ましくは200〜300℃の範囲内にある。La及び/又はNbをドープすることにより、結晶化温度を下げて、初期核が生成され易くなる。仮焼時間は2〜5分間程度行われる。下限値の温度未満では、初期核が生成されにくく、また上限値の温度を超えると不完全な結晶化が進行しランダム配向となる不具合を生じる。
第1及び第2配向制御層の一括焼成及び膜厚調整層の焼成は、450〜800℃で1〜60分間程度行われる。焼成は、急速加熱処理(RTA処理)で行ってもよい。RTA処理で本焼成する場合、その昇温速度を10〜100℃/秒とすることが好ましい。
また、第1及び第2配向制御層を形成した後に、第1及び第2配向制御層を下地層として、下地層の上に更に下地層の結晶配向と同じ結晶配向を有する膜厚調整層を形成する。下地層の上に膜厚調整層を形成することで、第2配向制御層の優先配向面に倣って、第2配向制御層と同じ傾向の結晶配向面が形成されるため、この膜厚調整層によって、(100)面に優先的に結晶配向が制御された強誘電体薄膜の膜厚をその用途に合わせて任意に調整することが可能となる。
膜厚調整層は、下地電極上の第1及び第2配向制御層の層厚と膜厚調整層の層厚の合計が最終的に求められるPZT系強誘電体薄膜の膜厚になるように、その膜厚は調整される。配向制御層13と同種のPb含有ペロブスカイト型強誘電体薄膜である。膜厚調整層14の層厚は5000nm未満が好ましい。膜厚調整層14の層厚を上記範囲内としたのは、5000nm以上ではCSD法ではプロセス時間が長くなることと、配向制御層13の優先配向面に倣う傾向が小さくなり、結果として、(100)面の配向度が小さくなるためである。
膜厚調整層は、上述した第1及び第2配向制御層を形成するのと同様に、第2配向制御層の上に、膜厚調整層形成用組成物をスピンコート、ディップコート、LSMCD(Liquid Source Misted Chemical Deposition)法等の塗布法を用いて塗布し、ホットプレートなどを用いて大気雰囲気中、150〜550℃、1〜10分間乾燥・仮焼を行い、塗布から乾燥・仮焼までの工程を繰り返して、所望の範囲内の膜厚のゲル膜を形成してから、酸素雰囲気中、450〜800℃、1〜60分間本焼成することにより得られる。このようにして製造された本発明のPZT系強誘電体薄膜は、(100)面に優先的に結晶配向が制御されたものとなり、大きな圧電定数d33(pm/V)をもつ。
次に本発明の実施例を比較例とともに詳しく説明する。
<第1配向制御層形成用組成物の調製>
第1配向制御層形成用組成物の液合成フローは、典型的には以下のプロセスに従った。
まず、反応容器に酢酸ランタン1.5水和物(La源)及び/又はニオブペンタエトキシド(Nb源)と、チタニウムテトライソプロポキシド(Ti源)と、アセチルアセトン(安定化剤)とを入れて、窒素雰囲気中で還流した。次いでこの化合物に酢酸鉛3水和物(Pb源)とを添加するとともに、プロピレングリコール(溶媒)を添加し、窒素雰囲気中で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後に、この溶液に更にプロピレングリコールを添加して濃度を調節し、更にこの溶液にn−ブタノール(溶媒)を添加することで、以下の表1〜表6に示す、所望の濃度に調整された、各金属原子比を有する第1配向制御層形成用組成物を調製した。なお、比較例2、11、12及び14では、La源及びNb源を用いなかった。
<第2配向制御層形成用組成物及び膜厚調整層形成用組成物の調製>
これらの組成物の各液合成フローは、典型的には以下のプロセスに従った。
まず、反応容器にジルコニウムテトラn−ブトキシド(Zr源)と、Tiイソプロポキシド(Ti源)と、アセチルアセトン(安定化剤)とを入れて、窒素雰囲気中で還流した。次いでこの化合物に酢酸鉛3水和物(Pb源)とを添加するとともに、プロピレングリコール(溶媒)を添加し、窒素雰囲気下で還流し、減圧蒸留して副生成物を除去した後に、この溶液に更にプロピレングリコールを添加して濃度を調節し、更に、希釈アルコールを添加することで、以下の表1〜表6に示す所望の濃度に調整された、各金属原子比を有する第2配向制御層形成用組成物及び膜厚調整形成用組成物をそれぞれ調製した。
実施例1〜7及び比較例1〜7は、配向制御層のみを形成した例であって、第1配向制御層形成用組成物中のLa及び/又はNbのドーピング量を変えたときの影響を確認するために実施された。この内容を以下の表1に示す。なお、表中、第1及び第2配向制御層形成用組成物は、「第1及び第2配向制御層用組成物」と略記している(以下、同じ。)。
<実施例1>
基板として、表面にスパッタリング法にて(111)配向した100nmの膜厚でPt下部電極膜を形成した直径4インチのシリコン基板を用意した。この基板のPt下部電極膜上に、1質量%の第1配向制御層形成用組成物(三菱マテリアル社製、PLT E1液)を500μL滴下後、2500rpmで15秒間スピンコートを行うことにより、塗布した。ここで第1配向制御層形成用組成物は、組成物中のPb、La、Tiの金属の原子比がPb/La/Ti=109/6/100であった。第1配向制御層形成用組成物を塗布した後、300℃のホットプレートで5分間仮焼し、第1配向制御層前駆体を形成した。この塗布と仮焼の操作は1回行った。
次いで、この第1配向制御層前駆体の上に、12質量%の第2配向制御層形成用組成物(三菱マテリアル社製、PZT E1液)を500μL滴下後、2500rpmで15秒間スピンコートを行うことにより、塗布した。ここで第2配向制御層形成用組成物は、組成物中のPb、Zr、Tiの金属の原子比がPb/Zr/Ti=115/52/48であった。第2配向制御層形成用組成物を塗布した後、300℃のホットプレートで5分間仮焼し、第2配向制御層前駆体を形成した。この塗布と仮焼の操作は1回行った。
Pt下部電極膜上に第1及び第2配向制御層前駆体が形成された基板を、赤外線高速昇温炉(以下、RTAという。)で昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間保持することにより、焼成を行って結晶化させ、第1及び第2配向制御層からなる配向制御層で構成されたPZT系強誘電体薄膜を得た。
<実施例2〜7、比較例1〜7>
第1配向制御層形成用組成物中の金属組成比を表1に示すにように実施例1と異なる金属組成比にした以外、実施例1と同様にして、実施例2〜7、比較例2〜7のPZT系強誘電体薄膜を得た。比較例1は第1配向制御層を形成しないPZT系強誘電体薄膜の例である。また比較例2は第1配向制御層形成用組成物中にLaもNbも含まない例である。
<実施例8〜10、比較例8>
実施例8〜10及び比較例8は、第1配向制御層の層厚を変化させたときの影響を確認するための例である。ここでは、実施例1の第1配向制御層形成用組成物の組成物濃度及び金属組成比を表2に示すように変更した以外、実施例1と同様にして、実施例8〜10及び比較例8のPZT系強誘電体薄膜を得た。
<実施例11、比較例9、10>
実施例11及び比較例9、10は、第1配向制御層形成用組成物中にLaとNbが共ドープしたときの影響を確認するための例である。ここでは、実施例1の第1配向制御層形成用組成物の金属組成比を表3に示すように変更した以外、実施例1と同様にして、実施例11及び比較例9、10のPZT系強誘電体薄膜を得た。
<実施例12〜13、比較例11、12>
実施例12〜13及び比較例11、12は、第1配向制御層形成用組成物を塗布した後の仮焼温度を変化させたときの影響を確認するための例である。比較例11、12は第1配向制御層形成用組成物中にLaもNbも含まないPZT系強誘電体薄膜の例である。ここでは、実施例1の第1配向制御層形成用組成物の金属組成比と仮焼温度を表4に示すように変更した以外、実施例1と同様にして、実施例12〜13及び比較例11、12のPZT系強誘電体薄膜を得た。
<実施例14〜17、比較例13〜18>
実施例14〜17及び比較例13〜18は、第2配向制御層の層厚を変化させたときの影響を確認するための例である。比較例13は第1配向制御層を形成しないPZT系強誘電体薄膜の例である。また比較例14は第1配向制御層形成用組成物中にLaもNbも含まないPZT系強誘電体薄膜の例である。ここでは、実施例1の第1配向制御層形成用組成物の金属組成比、実施例1の第2配向制御層形成用組成物の組成物濃度及び実施例1のスピンコート条件を表5に示すように変更した。これ以外は、実施例1と同様にして、実施例14〜17及び比較例13〜18のPZT系強誘電体薄膜を得た。
<実施例18〜22、比較例19、20>
実施例18〜22及び比較例20は、第1及び第2配向制御層からなる配向制御層に加えて、膜厚調整層を形成した例である。比較例19は第1配向制御層を形成せずに第2配向制御層上に膜厚調整層を形成した例である。また比較例20は第1配向制御層形成用組成物中にLaもNbも含まない例である。
<実施例18>
実施例2で作製した第1及び第2配向制御層の上に、15質量%の膜厚調整層形成用組成物(三菱マテリアル社製、PZT E1液)を500μL滴下後、2500rpmで15秒間スピンコートを行うことにより、塗布した。ここで膜厚調整層形成用組成物は、組成物中のPb、Zr、Tiの金属の原子比がPb/Zr/Ti=110/52/48であった。膜厚調整層形成用組成物を塗布した後、300℃のホットプレートで5分間仮焼した。この塗布と仮焼の操作を4回繰り返した後、得られた基板をRTAで昇温速度10℃/秒で酸素雰囲気中700℃、1分間保持することにより焼成を行って結晶化させ、膜厚調整層を形成した。膜厚調整層形成用組成物による塗布、仮焼、焼成の操作を合計6回繰返して、実施例18のPZT系強誘電体薄膜を得た。
<実施例19〜22、比較例19、20>
実施例14〜17、比較例13,14でそれぞれ作製した第2配向制御層の上に、実施例18と同じ組成物濃度と金属組成比と仮焼条件にして膜厚調整層を形成した。膜厚調整層の膜厚を変更するために、膜厚調整層形成用組成物のスピンコート条件、塗布と仮焼の操作回数、及び膜厚調整層形成用組成物による塗布、仮焼、焼成の操作回数を表6に示すように変更した。例えば、表6の実施例19における「4×12回」は、膜厚調整層形成用組成物の塗布と仮焼の操作回数が4回であって、膜厚調整層形成用組成物による塗布、仮焼、焼成の操作回数が12回であることを意味する。上記以外は、実施例18と同様にして、実施例19〜22及び比較例19、20のPZT系強誘電体薄膜を得た。
<比較試験及び評価>
実施例1〜22及び比較例1〜20で得られた強誘電体薄膜について、以下の手法により、次の項目を評価した。その結果を表7及び表8にそれぞれ示す。
(i) 各層の組成:蛍光X線分析装置(リガク社製 型式名:Primus III+)を用いた蛍光X線分析により、第1配向制御層と第2配向制御層と膜厚調整層の各層の組成を分析した。なお、表7及び表8には、この分析した層組成から算出した、Ti100モルに対するLa又はNbのモルの含有割合(モル%)を示す。
(ii) 各層の層厚の測定と全体の膜厚の算出:各層の層厚は、強誘電体薄膜を分光エリプソメーター(J.A.Woollam社製:M-2000)により測定して、「第1配向制御層と第2配向制御層の合算の層厚」、「第2配向制御層の層厚」及び「膜厚調整層の層厚」をそれぞれ求めた。また「第1配向制御層の層厚」は、「第1配向制御層と第2配向制御層の合算の層厚」から「第2配向制御層の層厚」を減することにより算出した。表7及び表8では、各層の層厚とともに、各層の層厚を合計したPt電極上の全体の膜厚も示している。
(iii) I(100):強誘電体薄膜をX線回折装置(パナリティカル社製、型式名:Empyrean)により測定し、得られたX線回折チャートにおけるPZT系強誘電体薄膜のペロブスカイトの(100)面の回折線のピーク強度をI(100)として求めた。なお、正方晶のPZTにおいては(100)面と(001)面のピークを区別することが難しいためこれらの区別は行わず(100)として表記した。
(iv)(100)面における配向度:上記(iii)で用いたXRD装置を用いた集中法により得られた回折結果から、(100)面における配向度を以下の式により求めた。
(100)面配向度(%)=[I(100)/[I(100)+I(110)+I(111)]]×100
(v) 圧電定数d33(pm/V):実施例18〜22、比較例19、20で得られたPZT系強誘電体薄膜にスパッタリング法により円形のPt上部電極(膜厚150nm、直径3mm)を形成し、aix ACCT社Double Beam Laser Interferometerにより±25Vの電圧を印加したときの圧電定数d33を測定した。
(vi) ドーピング元素の確認:Pt下部電極近傍でのドーピング元素の存在を確認するために、実施例5の強誘電体薄膜を集束イオンビーム(FIB:Focused Ion Beam)装置にて厚さ30nmの薄片状に加工し、走査透過電子顕微鏡(STEM:Scanning Transmission Electron Microscope)に備えられたEDS装置(EDS:Energy Dispersive X-ray Spectrometry)にてTEM−EDS評価を行った。図2及び図3に得られた電極界面活性剤近傍のTEM−EDS分析結果を示す。図2(a)は強誘電体薄膜薄片の断面のTEM像を示し、図2(b)はドーピング元素であるLaのマッピング結果を示す。また図3はPt下部電極上の構成元素の線分析を示す。図2及び図3から明らかなように、Pt下部電極から5nm未満の範囲でドーピング元素のLaが存在し、成膜により大きく拡散しないことが確認できた。
表7及び表8から明らかなように、第1配向制御層を形成しない比較例1及びLaもNbも第1配向制御層形成用組成物に含まない比較例2では、XRDのピーク強度が「1.7〜1.8×104」と低く、また(100)配向性も「95〜97」と低かった。また第1配向制御層形成用組成物中のLa又はNbの含有量が6モル%未満の比較例3〜6では、XRDのピーク強度が「1.7〜2.1×104」と低く、また(100)配向性も「93〜96」と低かった。更に第1配向制御層形成用組成物中のLaの含有量が20モル%を超えた比較例7では、液の保存安定性が下がり、常温で1か月保存したところ沈殿が発生した。これに対して、第1配向制御層形成用組成物中のLa又はNbの含有量が6〜20モル%である実施例1〜7では、XRDのピーク強度が「2.6〜4.9×104」と高くなり、また(100)配向性が「99」と向上し、結晶性が向上することが確認できた。
第1配向制御層の層厚が20nmを超えた比較例8では、XRDのピーク強度が「1.4×104」と低く、また(100)配向性も「97」と低かった。これに対して第1配向制御層の層厚が9〜20nmの範囲にある実施例8〜10では、XRDのピーク強度が「2.7〜3.9×104」と高く、また(100)配向性も「99」と高かった。
第1配向制御層形成用組成物にLa、Nbを共ドープした場合、少なくともLa、Nbのいずれか元素がTi100モルに対して6モル未満の割合で含有した比較例9、10では、XRDのピーク強度が「1.8〜1.9×104」と低く、また(100)配向性も「95〜97」と低かった。これに対してLaとNbをそれぞれ6モル含有する実施例11では、XRDのピーク強度が「3.8×104」と高く、また(100)配向性も「99」と高かった。このことから、La、Nbを共ドープした場合、少なくともLa、Nbのいずれか元素がTi100モルに対して6モル以上含有しなければ(100)配向性、結晶性とも劣ることが確認できた。
仮焼温度を300℃から250℃及び325℃に変化させた場合、第1配向制御層形成用組成物にLa、Nbをドーピングしない比較例11、12では、XRDのピーク強度が「0.7〜1.2×104」と低く、また(100)配向性も「48〜67」と低かった。これに対してLaを8モル含有する実施例12、13では、XRDのピーク強度が「3.8×104」と高く、また(100)配向性も「99」と高かった。このことから、第1配向制御層形成用組成物にLaをドーピングすることにより(100)配向を得るための仮焼温度範囲が拡大されたことが確認できた。
第2配向制御層の層厚を58nmから330nmに変化させた場合、第1配向制御層を形成しない比較例13及びLaもNbも第1配向制御層形成用組成物に含まない比較例14では、XRDのピーク強度が「0.2〜1.2×104」と低く、また(100)配向性も「14〜51」と低かった。また第1配向制御層形成用組成物にLaをドーピングしたものの第2配向制御層の層厚を58nmにした比較例17では、XRDのピーク強度が「1.5×104」と低く、また(100)配向性も「94」と低かった。また第1配向制御層形成用組成物にLaをドーピングしたものの第2配向制御層の層厚が150nmを超えた比較例15、16及び18では、XRDのピーク強度が「0.3〜0.7×104」と大幅に低く、また(100)配向性も「19〜32」と大幅に低かった。これに対して第1配向制御層形成用組成物にLaをドーピングし、かつ第2配向制御層の層厚が60nm〜150nmの範囲にある実施例14〜17では、XRDのピーク強度が「2.6〜4.6×104」と高く、また(100)配向性も「98〜99」と高かった。このことから、第2配向制御層の厚さが60nm〜150nmの下限値の60nmを下回ると、結晶性が劣化し、上限値の150nmを超えると、結晶性、(100)配向度とも大幅に劣化することが確認できた。
配向制御層上に膜厚調整層を形成した場合、第1配向制御層を形成しない比較例19及びLaもNbも第1配向制御層形成用組成物に含まない比較例20では、XRDのピーク強度が「45.0〜43.0×105」と低く、また(100)配向性も「87〜91」と低く、圧電定数も「147〜156pm/V」で低かった。これに対して第1配向制御層形成用組成物にLaをドーピングし、かつ第2配向制御層上に膜厚調整層を形成した実施例18〜22では、XRDのピーク強度が「12.0〜180×104」と高く、また(100)配向性も「96〜98」と高く、圧電定数も「114〜182pm/V」で高かった。このことから、結晶性が良好で(100)配向性が高い配向制御層上に膜厚調整層を形成したほうが圧電特性が良好な膜が得られることが確認できた。
本発明のPZT系強誘電体薄膜は、(100)面に優先配向されているため、大きなe31圧電定数をもち、圧電デバイス、インクジェットヘッド、オートフォーカス、焦電センサ、ジャイロセンサなどMEMSアプリケーションとして用いることができる。
10 基板
11 下部電極
12 配向制御層
12a 第1配向制御層
12b 第2配向制御層
13 膜厚調整層

Claims (4)

  1. 結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極上に配向制御層と膜厚調整層とがこの順に積層されたPZT系強誘電体薄膜において、
    前記配向制御層が、前記下部電極に接する第1配向制御層とこの第1配向制御層上に形成された第2配向制御層を有し、
    前記第1配向制御層は、PbとTiを含有するペロブスカイト構造の化合物層であって、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、かつ層厚が20nm以下であり、
    前記第2配向制御層は、層厚が60nm〜150nmのPZT系化合物層であることを特徴とするPZT系強誘電体薄膜。
  2. 前記配向制御層と前記膜厚調整層の各層厚を合計した膜厚が400nm以上5000nm未満である請求項1記載のPZT系強誘電体薄膜。
  3. 結晶面が(111)軸方向に配向した下部電極上に、Pb化合物とTi化合物とLa化合物及び/又はNb化合物とを含む第1配向制御層形成用組成物を塗布し、仮焼して第1配向制御層前駆体を形成し、
    前記第1配向制御層前駆体の上にPb化合物とZr化合物とTi化合物とを含む第2配向制御層形成用組成物を塗布し、仮焼して第2配向制御層前駆体を形成し、
    続いて、前記第1配向制御層前駆体及び前記第2配向制御層前駆体を一括焼成して、PbとTiのペロブスカイト構造を有し、La又はNbのいずれか一方又は双方を含み、LaとNbはTi100モルに対して、LaとNbの合計で6モル〜20モル含有し、LaとNbの少なくとも一方が6モル以上含有し、層厚が20nm以下である第1配向制御層と、層厚が60nm〜150nmのPZT系化合物層である第2配向制御層とを形成し、
    前記第1配向制御層と第2配向制御層とを含む配向制御層の上にPb化合物とZr化合物とTi化合物とを含む膜厚調整層形成用組成物を塗布し、仮焼した後、焼成して膜厚調整層を形成するPZT系強誘電体薄膜の製造方法。
  4. 前記第1配向制御層を形成するための仮焼温度及び前記前記第2配向制御層を形成するための仮焼温度がそれぞれ175℃〜325℃の範囲内にある請求項3記載のPZT系強誘電体薄膜の製造方法。
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