JP2018135586A - スパッタリング装置及び薄膜形成方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】、ターゲットと基板を、両者間の距離が不均一な態様で配置するスパッタリング装置において、効果的に異常放電を抑制することができる技術の提供。
【解決手段】放電ガスが導入され圧力が調節可能なチャンバ16内にスパッタリングターゲット10と成膜対象である基板1とを、平行でない態様で配置し、この状態で、ターゲット10と基板1及び基板ホルダ2とが近接して異常放電の可能性が相対的に高い空間の領域14に、放電ガスより電離閾値の高い抑制ガスを導入しながら基板2に成膜するスパッタリング装置。好ましくは、放電ガスとして、Arを用い、異常放電抑制ガスとしてHe又はNeを用いる、薄膜形成方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、スパッタリングによる薄膜形成装置(即ち、スパッタリング装置)、薄膜形成方法に関する。
スパッタリングによる薄膜形成技術は、半導体集積回路向け基板や、光学素子における各種薄膜形成等の種々の成膜用途に活用されている。一般的な構成は、基板と、これと対向したターゲットとの間に、グロー放電による弱電離低温プラズマを生じさせ、こうして生成されるイオンでターゲットをスパッタし、叩き出されたスパッタ粒子を前記基板上に堆積させ薄膜を形成するというものである。
このスパッタリングによる薄膜形成技術においては、薄膜形成中の異常放電の問題が従来から知られている。異常放電とは、種々の要因により、ターゲットや基板、及びそれらの近傍の装置構成部材が帯電し、この帯電した電荷が、断続的なアーク放電により解放される現象である。アーク放電はグロー放電に比べてエネルギーが高く、放電箇所の部材を抉る等してマクロなパーティクルの発生原因となる。パーティクルは最終的に膜に取り込まれ膜質や膜の良品率を低下させるため、異常放電の抑制は装置設計上の重要な課題である。
この異常放電は、反応性スパッタリングや誘電体ターゲットの高周波スパッタリング等により絶縁性の薄膜を成膜する際に、特に顕在化する課題である。一般にスパッタリングによる成膜過程においては、成膜対象の基板のみならず、スパッタ粒子散乱による廻り込み等により、ターゲットや基板近傍の様々な部材への着膜が生じる。これが絶縁性の膜であれば、プラズマに晒される着膜部分は、プラズマからの荷電粒子流入により帯電しうるからである。また、一般のメタルスパッタリングにおいても、ターゲット内部や表面の不純物において、同様に局所的な帯電が生じることが知られている。
また、この異常放電は、装置構成に起因して生じる場合も知られている。特に、所望の膜構造や膜厚分布を得るため、一般には基板平面とターゲット平面とを平行とするところを、基板をターゲットに対し傾けて配置する構成とした場合、基板とターゲットが近接する領域において局所的に異常放電が生じ易くなる場合がある。
上述したような異常放電への対策は、従来から様々な試みがなされている。例えば、非特許文献1に記載されているようなRFスパッタリングや、類似のACスパッタリング、パルスDCスパッタリング等を用いる手法が挙げられる。これらの手法では、ターゲット上の局所的な帯電部に対し電子と正イオンが交互に入射することになるため、帯電の除去を行うことができ、結果として異常放電を低減させることが可能となる。
別の例としては、パッシェン則に従い、チャンバ内のpd積(圧力と電極間距離の積)を制御して放電開始電圧を上げることで異常放電を抑制する手法が挙げられる。特許文献1に記載の手法はこの考え方に則ったもので、成膜室内の圧力の空間分布を補償するように、複数のプロセスガス導入口からのガス流量を変化させるというものである。
さらに別の例としては、反応性ガスを基板近傍に局在化させる手法が挙げられる(特許文献2参照)。反応性ガスの局在化により、同局在領域では酸化膜が、他の領域では金属膜が、それぞれ成膜されることから、金属膜が着膜する部分においては帯電そのものが抑制され、結果として異常放電が低減するというものである。
特開2006−22386号公報 特開平06−212413号公報
プラズマ/プロセスの原理(第二版) M.A.Liberman/A.J.Lichtenberg著 掘勝監修 佐藤久明訳 丸善株式会社
しかしながら、非特許文献1に記載のRFスパッタリングやAC、パルスDCスパッタリング等を用いた手法では、通常のDCスパッタリングに比べ、相対的に高価な電源や整合回路が必要となり装置構成も複雑になり易い。加えて、ターゲットや電極部分以外に形成された絶縁膜に対しては効果がない、基板へのダメージが大きい、等の種々の事態が生じる可能性もある。
また、特許文献1に記載のプロセスガスの流量を変化させる手法では、チャンバ内のプラズマ密度や反応性ガス分布を変化させてしまい易いこととなるため、膜質や膜厚分布、成膜レート等を変化させてしまうことになり易い。
さらに、特許文献2に記載の反応性ガスを局在させる手法では、背景技術の項で説明したように基板をターゲットに対し傾けて配置する構成とした場合、次の様なことになり易い。即ち、ターゲット近傍の反応性ガス分布の変化が大きくなり、かつ基板‐ターゲット間距離も一様ではなくなるため、局所的に異常放電が生じ易くなる部位ができ易い。
上記課題に鑑み、本発明の一側面によるスパッタリング装置は、放電ガスが導入され圧力が調節可能なチャンバ内に配置されるスパッタリングターゲットと、前記チャンバ内の基板ホルダにより支持される成膜対象である基板とが、前記ターゲットと前記基板とが平行でなく配置されるスパッタリング装置である。そして、前記ターゲットと前記基板及び前記基板ホルダとが近接して異常放電の可能性が相対的に高い空間の領域に、前記放電ガスより電離閾値の高い抑制ガスを導入する抑制ガス導入機構が設けられている。
また上記課題に鑑み、本発明の他の側面による薄膜形成方法は、放電ガスが導入され圧力が調節可能なチャンバ内にスパッタリングターゲットと成膜対象である基板とを、前記ターゲットと前記基板との間の距離が不均一な態様で配置し、前記ターゲットと前記基板とが近接して異常放電の可能性が相対的に高い空間の領域に、前記放電ガスより電離閾値の高い抑制ガスを導入しながら前記基板に成膜する。
本発明によれば、基板とターゲットとを、平行でない態様で配置するスパッタリング装置ないし薄膜形成方法において、上記の如き抑制ガスを導入することで異常放電を抑制することができる。
本発明の一実施形態に係る反応性スパッタリング装置の概略構成図。 パッシェン曲線の模式図。 電離エネルギーの原子番号依存性を示す図。 圧力分布の異常放電抑制ガスの導入割合依存性を示す図。 圧力分布の基板‐ターゲット間距離依存性を示す図。
本発明によるスパッタリング装置や薄膜形成方法では、放電ガスが導入されるチャンバ内にスパッタリングターゲットと成膜対象である基板とを、両者間の距離が不均一な態様(例えば、両者の面が平行でなく互いに斜めに対向した配置)で配置する。そして、ターゲット(それの支持部分を加えてもよい)と基板(それを支持する基板ホルダを加えてもよい)とが近接して異常放電の可能性が他の部分に比べて相対的に高い空間の領域に、放電ガスより電離閾値の高い抑制ガスを導入しながら基板に成膜する。抑制ガス導入機構は、後述する実施形態の様に、スパッタリングターゲットと基板及び基板ホルダとが最近接(例えば、20cm以下程度に近接)する空間の領域にのみ、抑制ガスを導入するように構成されてもよい。また、抑制ガス導入機構は、ターゲットと基板及び基板ホルダとが近接する空間の領域が、基板ホルダが移動するなどして変化するとき、前記変化した空間の領域に抑制ガスを導入するように構成することができる。この際、抑制ガス導入機構自体が移動してもよいし、抑制ガス導入機構が複数の抑制ガス導入管を有していて、前記空間の領域の様態に応じて適宜に抑制ガス導入管を開閉したりしてもよい。一方、例えば、後述する実施形態の様に基板ホルダが基板を自転させるように構成される場合は、基板の空間占有位置自体は変化しないので、抑制ガス導入機構は、基板が自転しても同じ領域に抑制ガスを導入するように構成される。
(実施形態)
以下、本発明を実施するための一実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本実施形態に係る反応性スパッタリング装置の概略構成を示す図である。図1に示すように、放電ガスが導入され圧力が調節可能な真空チャンバ16内には、基板1を支持して回転する基板ホルダ2、異常放電抑制ガスの導入管6、放電ガス導入口7、反応性ガス導入口8、排気口9が設けられている。また、金属ターゲット10が、その支持部に配置され、磁気回路11、DC電源12、アノード13が設けられている。さらに、真空チャンバ16に対して、基板ホルダ2を回転させる回転モーター3、基板ホルダの回転モーター3を回転軸方向に前後に平行移動させる機構4、基板ホルダ3の昇降に同期するガス管保持ステー5、異常放電抑制ガスの導入口15が配置されている。図1において、14は、基板(及び基板ホルダ)‐ターゲット近接領域、17は、軸AB(希薄気体シミュレーションによる圧力計算を行う軸:後述)である。ここで、18に示したように、基板1中心からターゲット10の表面に下ろした垂線の長さをもって、基板‐ターゲット間距離dを定義する。本実施形態では、放電ガスより電離閾値の高いガスを導入する機構が、基板回転機構とは独立したガス導入管であり、基板回転に関わらずその開口位置が基板ホルダの端部でかつスパッタリングターゲットと近接する領域に常時保持される。
図1に示した反応性スパッタリング装置による絶縁膜の成膜は以下のように行われる。排気ポンプ9で排気される真空チャンバ16に、放電ガス供給口7よりアルゴン等の放電ガスを供給し、併せて、反応性ガス供給口8から酸素等の反応性ガスを供給する。こうした状態で、磁気回路11、DC電源12、アノード13によりDCマグネトロン放電を生じさせる。これにより、金属ターゲット10がスパッタリングされ、叩き出された金属粒子が反応性ガスと反応する。反応性ガスと反応した金属粒子は、酸化膜(絶縁膜)として基板1上に堆積される。
この際、本実施例においては、チャンバ圧力は概ね1Pa以上の値に保たれるよう、排気速度が調節される。図2に模式的に示したパッシェン曲線上で言えば、21で示した領域(pd積の上昇により放電開始電圧も上昇する領域)を使用することに相当する。
上述の成膜方法においては、基板1上への成膜だけではなく、アノード13や基板ホルダ2等の周辺部材にも酸化膜(絶縁膜)が形成されてしまう。これらの部位がプラズマに晒されることで、帯電を生じ、異常放電が発生することがある。図1のような装置構成下では、基板1平面とターゲット10平面が平行でないため、両平面間の距離に分布(変化)が生じ、異常放電は、基板‐ターゲット近接領域14において特に頻発する。これは、図2に模式的に示したパッシェン曲線上で言えば、22で示したように、pd積のd(距離)が小さくなることで放電開始電圧が下がり、異常放電が発生しやすくなることと対応する。
本実施形態の異常放電抑制方法は、装置構成上で異常放電が特異的に生じ易い領域、すなわち、基板‐ターゲット近接領域14においてのみ、異常放電抑制ガスの導入管6を通じて異常放電抑制ガスを局所的に導入し、近接領域14近傍の圧力を上昇させる。このことで、パッシェン則に従い、放電開始電圧を上昇させ、異常放電を抑制するというものである。これは、図2に模式的に示したパッシェン曲線で言えば、23で示したように、pd積のp(圧力)を大きくして放電開始電圧を上げることで、異常放電を発生しにくくすることと対応する。ここでは、基板‐ターゲット近接領域14すなわち両者間の最近接領域のみに異常放電抑制ガスを局所的に導入するが、前述した様に、近接して異常放電の可能性が他の部分に比べて相対的に高い空間の領域(複数であってもよい)に導入する構成としてもよい。
この際、異常放電抑制ガスとして、放電ガス導入口7から導入される放電ガスよりも電離閾値の高いガスを導入管6から導入する。このことで、周囲へ拡散する異常放電抑制ガスが電離することによるプラズマへの影響、及びこれに付随して生ずる膜厚分布や膜質の変化といった悪影響を低減することが可能となる。故に、異常放電抑制ガスのガス種の選定は、図3に示した電離エネルギーの原子番号依存性を示すデータに従い行えばよい。例えば、放電ガスとしてアルゴンを用いるのであれば、異常放電抑制ガスとしてはヘリウムもしくはネオンを用いればよい。
本実施形態では、スパッタリングターゲット(これのホルダを加えてもよい)と成膜対象である基板及び基板ホルダとが、基板平面とターゲット平面とが平行でなくて互いに斜めに対向した配置を有する際の異常放電を問題とする。即ち、異常放電が特異的に生じ易い個所であるスパッタリングターゲットと基板及び基板ホルダとが近接する空間に、放電ガスよりも電離閾値の高いガスを異常放電抑制ガスとして導入する。こうして、当該近接空間の圧力を上昇させ、パッシェン則に従い放電開始電圧を上昇させる。これにより、異常放電を抑制することが可能となる。同時に、異常放電抑制ガスの電離閾値は高いので、当該近接空間から拡散する異常放電抑制ガスがプラズマの分布、スパッタ粒子放出分布、膜厚分布等の変動要因となることを防ぐことが可能となる。また、電源や装置構成等への制約の少ない異常放電抑制技術を提供することができる。
次に、より具体的な実施例を説明する。
(第一の実施例)
本発明の第一の実施例を以下に示す。図1に示した装置構成において、放電ガス供給口7よりの放電ガスとしてArを、反応性ガス供給口8よりの反応性ガスとしてOを、また異常放電抑制用のガス導入管6よりの異常放電抑制ガスとしてNeを、それぞれ導入する。また図1のターゲット10の材質としてはSiを用いる。排気口9からの排気速度を調節し、チャンバ16内の圧力を1Paから数Paの間に保つ。この状態でDCマグネトロン放電を発生させ、SiをArプラズマでスパッタリングし、図1の基板1上にSiO膜を成膜する。
この際、背景技術の説明箇所、及び、実施形態の説明箇所で説明したように、図1の基板1にだけでなく、例えば基板ホルダ2やアノード13、また図1のターゲット10(これを支持する部分を含むこともある)上にも、SiO膜が着膜する。これらの部分に着膜したSiO膜が、プラズマからの荷電粒子を引き込むことにより帯電し、特に図1の基板‐ターゲット近接領域14において、異常放電を頻発させることとなる。
この異常放電を抑制するため、図1の異常放電抑制ガス導入管6より、異常放電抑制ガスを、基板‐ターゲット近接領域14の近傍へ導入する。この際、異常放電抑制ガスの導入量を適切に制御することが重要である。導入量が小さすぎれば、圧力上昇は小さく、結果として異常放電抑制効果も小さくなってしまう。反面、導入量が大きすぎれば、導入した異常放電抑制ガスは、基板‐ターゲット近接領域14の近傍から拡散し、周囲の広範な領域の圧力を上昇させてしまう。本発明の考え方に従い、異常放電抑制ガスのガス種を適切に選択することで、拡散した異常放電抑制ガスが電離することによるプラズマへの直接的な影響とそれに伴う膜質・膜厚分布への影響は、低減可能である。しかし、上記影響よりも、程度としては軽微ではあるものの、チャンバ16内の気流や分圧の変化とそれに伴う膜質・膜厚分布変化は、避けられない。故に、異常放電抑制ガスの適切な導入量を定めることが肝要となる。
上述した異常放電抑制ガスの適切な導入量を明らかにするため、希薄気体シミュレーションによる検討を行った。その結果を図4に示す。図4は、図1の軸AB17に沿った圧力分布の異常放電抑制ガスの導入割合依存性(基板‐ターゲット間距離を固定した場合)を示す図である。異常放電抑制ガスの導入量は、放電ガス導入量に対する割合で規定し、以下、異常放電抑制ガスの導入割合と称する。図4に示した結果は、異常放電抑制ガスの導入割合が0%、10%、20%、30%の場合の計算結果である。また基板‐ターゲット間距離dは180mmとした。
図4の41は異常放電抑制ガスの導入割合が0%の場合の圧力分布、42は同割合が10%の場合の圧力分布、43は同割合が20%の場合の圧力分布、44は同割合が30%の場合の圧力分布を示す。また図4の45は、チャンバ内の平均的な圧力を、図4の46は基板‐ターゲット近接領域14における最大圧力を、それぞれ示す。
図4の結果から、異常放電抑制ガスの導入により、チャンバ内平均圧力45、基板‐ターゲット近接領域14における最大圧力46、のいずれも上昇することが判る。ここで、異常放電抑制ガスが未導入の場合即ち図4の圧力分布41を基準とした、チャンバ内平均圧力、及び基板‐ターゲット近接領域における最大圧力、のそれぞれの上昇率をΔp、Δpと定義する。下記の表1に、異常放電抑制ガスの導入割合に対するΔp、Δpの値をまとめた。表1より、異常放電抑制ガスの導入割合の上昇にともない、Δp、Δpとも大きくなることが判る。異常放電の抑制という観点からは、Δpの値は大きい方が望ましい。一方、成膜プロセスにおいては、所望の膜質や膜厚分布を得るために、チャンバ内平均圧力のプロセス仕様からのずれ、すなわち、Δpは小さい方が望ましい。故に、異常放電抑制ガスの導入割合の適切な範囲が存在する。
Figure 2018135586
上述したような、異常放電抑制ガスの導入割合に対するΔp、Δpの値の変化は、特に装置構成に強く依存すると考えられる。この点を明らかにするため、異常放電抑制ガスの導入割合を固定(30%)とし、基板‐ターゲット間距離dを変化させた際のΔp、Δpの値をシミュレーションにより求めた。結果を図5に示す。図5は、図1の軸AB17に沿った圧力分布の基板‐ターゲット間距離依存性(異常放電抑制ガスの導入割合を固定した場合)を示す図である。異常放電抑制ガスの導入量を0%と30%とし、基板‐ターゲット間距離dを180mm、120mmとした。図5の51は、異常放電抑制ガス導入量を0%、基板‐ターゲット間距離dを180mmとした場合の圧力分布である。図5の52は、異常放電抑制ガス導入量を0%、基板‐ターゲット間距離dを120mmとした場合の圧力分布である。図5の53は、異常放電抑制ガス導入量を0%、基板‐ターゲット間距離dを180mmとした場合の圧力分布である。図5の54は、異常放電抑制ガス導入量を30%、基板‐ターゲット間距離dを120mmとした場合の圧力分布である。表2に、異常放電抑制ガス導入量を30%とした場合の、基板‐ターゲット間距離dに対するΔp、Δpの値をまとめた。
Figure 2018135586
表2から判るように、基板‐ターゲット間距離dが増えるにつれ、Δpに対するΔpの比率は大きくなっていくことが判る。
前述した様に、異常放電の抑制という観点からは、Δpの値は大きい方が望ましい。一方、成膜プロセスにおいては、所望の膜質や膜厚分布を得るために、チャンバ内平均圧力のプロセス仕様からのずれ、すなわち、Δpは小さい方が望ましい。異常放電ガス導入割合や装置構成の変化によりΔpやΔpが制御可能であることを、上述のようなシミュレーションにより確認することができた。これにより、場合に応じて、所望の異常放電抑制効果を得ることが可能となる。例えば、他のファクター(例えば、膜質をより重視すること)をも勘案して、dが180mmの場合、異常放電ガス導入割合を25%とする、といったような設定が考えられる。
本発明は、以上で説明した実施形態及び実施例に限定されるものではなく、多くの変形ないし変更が本発明の技術的思想内で、当該分野において通常の知識を有する者により可能である。金属ターゲットとして上記実施例ではSiを用いたが、Nb、Y、Sn、In、Zn、Ti、Th、V、Ta、Mo、W、Cu、Cr、Mn、Fe、Ni、Co、Sm、Pr、Biなどを用いることもできる。カーボン系などを用いることもできる。また、反応性ガスとして本実施例ではOガスを用いたが、N、O、COなどを用いることもできる。また、放電ガスとして上記実施例ではArガスを用いたが、Ne、Kr、Xe、Rnなどを用いることもできる。そして選択した放電ガスに対応し、異常放電抑制ガスを、図3などのデータを参考にして選択すればよい。さらには、高周波スパッタリングの場合には誘電体ターゲットを用いることもでき、PZT、La、HfO、Y等を用いることもできる。
1・・基板
2・・基板ホルダ
6・・抑制ガス導入機構(導入管)
10・・スパッタリングターゲット(金属ターゲット)
14・・空間の領域
15・・抑制ガス導入機構(導入口)
16・・チャンバ(真空チャンバ)

Claims (12)

  1. 放電ガスが導入され圧力が調節可能なチャンバ内に配置されるスパッタリングターゲットと、前記チャンバ内の基板ホルダにより支持される成膜対象である基板とが、前記ターゲットと前記基板とが平行でなく配置されるスパッタリング装置であって、
    前記ターゲットと前記基板及び前記基板ホルダとが近接して異常放電の可能性が相対的に高い空間の領域に、前記放電ガスより電離閾値の高い抑制ガスを導入する抑制ガス導入機構が設けられていることを特徴とするスパッタリング装置。
  2. 前記抑制ガス導入機構は、前記ターゲットと前記基板及び前記基板ホルダとが最も近接する場所の領域にのみ、前記抑制ガスを導入することを特徴とする請求項1に記載のスパッタリング装置。
  3. 前記基板ホルダが、前記基板を自転させる基板回転機構と、前記基板回転機構の回転軸方向に前記基板を平行移動させる機構と、を有し、
    前記抑制ガス導入機構が、前記基板回転機構とは独立したガス導入管を有し、
    前記基板の自転に関わらず前記ガス導入管の開口位置が前記空間の領域に保持されることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリング装置。
  4. 前記抑制ガス導入機構は、前記ターゲットと前記基板及び前記基板ホルダとが近接する空間の領域が変化するとき、前記変化した空間の領域に前記抑制ガスを導入するように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のスパッタリング装置。
  5. 前記基板の平面と前記ターゲットの平面とが対向した配置をとることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のスパッタリング装置。
  6. 前記空間の領域では、前記ターゲットと前記基板及び前記基板ホルダとが20cm以下に近接していることを特徴とする請求項1から5の何れか1項に記載のスパッタリング装置。
  7. 基板に成膜する薄膜形成方法であって、
    放電ガスが導入され圧力が調節可能なチャンバ内にスパッタリングターゲットと成膜対象である基板とを、前記ターゲットと前記基板との間の距離が不均一な態様で配置し、前記ターゲットと前記基板とが近接して異常放電の可能性が相対的に高い空間の領域に、前記放電ガスより電離閾値の高い抑制ガスを導入しながら前記基板に成膜することを特徴とする薄膜形成方法。
  8. 前記基板の平面と前記ターゲットの平面とを対向した配置とすることを特徴とする請求項7に記載の薄膜形成方法。
  9. 前記ターゲットは金属ターゲットであることを特徴とする請求項7または8に記載の薄膜形成方法。
  10. 反応性スパッタリングにより前記基板に成膜することを特徴とする請求項7から9の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
  11. 前記ターゲットは誘電体ターゲットであり、高周波スパッタリングにより前記基板に成膜することを特徴とする請求項7または8に記載の薄膜形成方法。
  12. 前記放電ガスとしてアルゴンを用い、前記異常放電抑制ガスとしてヘリウムもしくはネオンを用いることを特徴とする請求項7から11の何れか1項に記載の薄膜形成方法。
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