JP2018135314A - 抗体を含むタンパク質フィルム及びその製造方法 - Google Patents

抗体を含むタンパク質フィルム及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】抗体の配向を制御することで高い抗原結合能を実現し、かつ外因性の環境に対して抗体の安定性が高められることの両方が達成される、新規タンパク質フィルム及びその製造方法を提供すること。【解決手段】抗原結合部位が露出するように配向が制御された形態で抗体を含み、該抗体の一部がフィルムの構成成分によって取り囲まれているタンパク質フィルム。【選択図】図1

Description

本発明は、配向が制御された形態で抗体を含むタンパク質フィルム、及びその製造方法に関する。
抗体は、抗体医薬品としての利用に限らず、その抗原に対する非常に高い特異性により、診断などを含む各種分析分野においても幅広く利用されている。また、抗体を利用することにより、特定の有用物質を分離することもできる。各種分析や分離に抗体を利用する場合には、抗体は、不溶性基板又は担体に固定化された形状、すなわち、固定化抗体の形状で用いられることが一般的である。
抗体を固定化する技術としては、例えば、抗体分子をいわゆる物理吸着により固定化する方法や、不溶性担体基材の表面に官能基を導入し、該官能基を利用して、抗体と基板との間に共有結合を形成することで固定化する方法などが挙げられる。しかしながら、このような方法で抗体の固定化を行った場合には、担体の表面上での抗体分子の配向を整えることは原理的に不可能であり、抗体分子の抗原結合に必須な部位が隠れた形で固定化される分子も一定の割合で存在し、本来抗体が有している抗原結合能が大幅に低下する。固定化された抗体が効率よく抗原と結合するためには、抗体の配向を考慮に入れ、抗体分子内の抗原結合部位を外側に露出させる形で抗体を基板上に固定化し、抗原との良好な接触を促すことが重要である。
抗体の配向を制御しながら、基板上に抗体を固定化するための様々な方法が報告されている。広く利用されている方法としては、抗体の糖鎖を利用して固定化する方法、抗体のフラグメント(Fabフラグメント)を作製し、フラグメントの有するチオール基を利用して固定化する方法、プロテインAやプロテインGなどの抗体結合タンパク質を用いて、これらのタンパク質と抗体のFcドメインとの特異的な結合を介して固定化する方法などがある(非特許文献1、非特許文献2)。これらの方法によって抗体の配向を適切に制御することで抗体の抗原結合能が向上することが多数報告されており、配向を制御することの重要性を示している(非特許文献1、非特許文献2)。
しかしながら、これら従来の方法では、抗体の配向は制御されているが、タンパク質の変性が引き起こされるような過酷な条件に対して安定性が高いとは言い難い。例えば、プロテインAやプロテインGなどの抗体結合タンパク質に結合させた抗体を酸に暴露した場合、酸により抗体や抗体結合タンパク質がダメージを受けることが報告されており、その利用においては大きな制限を受ける(非特許文献3、非特許文献4)。
Rao V., et al., Mikrochim. Acta 128, 127-143, 1998 Jung Y., et al., Analyst, 133, 697-701, 2008 Polzius R., et al., Biosens. Bioelectron, 11, 503-514, 1996 Wang H., et al., Analytical Biochemistury, 324, 219-226, 2004
上述の通り、従来法により配向が制御された形で固定化された抗体は、過酷な外因性の環境に対して不安定であるとの問題がある。従って、本発明は、抗体の配向を制御することで抗体の抗原結合能を高めつつ、かつ種々の外因性の環境に対して抗体の安定性が高められることの両方が達成される、新規タンパク質フィルム及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者は、上述の従来の方法では、抗体分子は基板表面上に乗るような形で付いており、その分子の大部分が露出しているため、外因の環境に対して不安定であると考えた。そこで、従来法のように配向が制御された抗体を土台となる材料の表面上に乗せるような形で結合させるのでは無く、配向制御された抗体を土台となる材料(本発明では、タンパク質で構成されているフィルム)の構成成分で取り囲む形、すなわち、抗体分子の一部が土台となる材料に埋まり込むような形、で土台材料に組み込むことを考えた。周囲を取り囲まれた状態の抗体は、過酷な条件下においてもその高次構造の変化が起こり難く、安定性が大きく向上するのではないかとの着想を得た。かかる着想を基に鋭意研究を重ねた結果、本発明者が新たに見出した製造方法により製造した、配向が制御された形態で抗体を含むタンパク質フィルムが、優れた抗原結合能を有しつつ、さらに過酷な外因性の環境に対して安定であることを見出し、本発明を完成させるに至った。
即ち、本発明は以下の通りである。
[1] 抗原結合部位が露出するように配向が制御された形態で抗体を含み、該抗体の一部がフィルムの構成成分によって取り囲まれているタンパク質フィルム。
[2] 抗原結合部位が露出するように配向が制御された形態で抗体を含むタンパク質フィルムであって、加熱条件下、酸性条件下、アルカリ性条件下、変性剤存在下、又は乾燥条件下で該抗体の活性を維持するフィルム。
[3] 異なる抗原に対する抗原結合能を有する2種以上の抗体を含む、[1]又は[2]に記載のフィルム。
[4] 前記タンパク質フィルムの母材のタンパク質が、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、グロブリン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、カゼイン、ケラチン、シルク、ゼイン、フィブリン及び大豆タンパク質からなる群より選択される1種以上のタンパク質である、[1]〜[3]のいずれかに記載のフィルム。
[5] さらにフィルムの母材のタンパク質以外のタンパク質を含む、[1]〜[4]のいずれかに記載のフィルム。
[6] 前記母材のタンパク質以外のタンパク質が酵素、輸送タンパク質、抗体及びサイトカインからなる群より選択される1種以上のタンパク質である、[5]に記載のフィルム。
[7] 前記酵素がスーパーオキシドジスムターゼである、[6]に記載のフィルム。
[8] 以下の工程を含む、抗原結合部位が露出するように配向が制御された形態で抗体を含むタンパク質フィルムの製造方法。
(1)基板素材の表面に抗原が担持された基板を用意する工程、
(2)(1)の担持された抗原に抗体を結合させる工程、
(3)(2)の結合された抗体に、フィルムの母材のタンパク質を含む溶液を接触させる工程、
(4)(3)の母材のタンパク質を凝固させ、抗原結合部位が露出した形態で抗体を含む固体状態のタンパク質フィルムを形成させる工程、及び
(5)(4)の工程により得られたフィルムを基板から剥離し、回収する工程
[9] 前記基板が、基板素材の表面に疎水性領域を有し、該領域に抗原が担持された基板である、[8]に記載の方法。
[10] 前記基板素材の表面に自己組織化単分子膜を有する[8]又は[9]に記載の方法。
[11] 前記自己組織化単分子膜が、抗原が結合したアルカンチオール及び/又はジスルフィドと、抗原が結合していないアルカンチオール及び/又はジスルフィドとを含む溶液を基板に接触させることにより形成される、[10]に記載の方法。
[12] 前記基板素材が金を含む基板素材である、[8]〜[11]のいずれかに記載の方法。
[13] 前記抗原がビオチンを含む、[8]〜[12]のいずれかに記載の方法。
[14] 前記フィルムの母材のタンパク質が、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、グロブリン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、カゼイン、ケラチン、シルク、ゼイン、フィブリン及び大豆タンパク質からなる群より選択される1種以上のタンパク質である、[8]〜[13]のいずれかに記載の方法。
[15] 前記工程(3)の溶液がさらに架橋剤及び/又は安定剤を含む、[8]〜[14]のいずれかに記載の方法。
[16] 前記工程(3)の溶液がさらにフィルムの母材のタンパク質以外のタンパク質を含む、[8]〜[15]のいずれかに記載の方法。
[17] 前記フィルムの母材のタンパク質以外のタンパク質が酵素、輸送タンパク質、抗体及びサイトカインからなる群より選択される1種以上のタンパク質である、[16]に記載の方法。
[18] 前記酵素がスーパーオキシドジスムターゼである、[17]に記載の方法。
[19] 前記工程(5)の剥離が、有機溶媒への暴露又は加熱処理により行われる、[8]〜[18]のいずれかに記載の方法。
[20] [8]〜[19]のいずれかに記載の方法により得られる、タンパク質フィルム。
本発明によれば、従来法で作製した配向制御された形で基板上に固定化された抗体と比較しても遜色のない優れた抗原結合能を有しつつ、さらに、環境変化に対してより高い安定性を示す抗体を含むタンパク質フィルムが提供され得る。また、前記タンパク質フィルムの製造方法が提供され、該製造方法により、抗体を極めて効率よく利用することができる。
図1は、本発明の配向制御された抗体を含むタンパク質フィルムの製造方法の概略図を示す。 図2は、基板素材の表面上に自己組織化単分子膜(SAM)形成させるために用いたアルカンチオールを示す。上図は、ビオチン化アルカンチオール、下図は、末端にメチル基を有するアルカンチオールを示す。 図3は、各抗体サンプルの抗原結合能の結果を示す。サンプルとしては、本発明の配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム、配向制御されていない抗体を含むタンパク質フィルム(コントロール)、従来法により配向を制御した形で基板上に固定化した抗体(コントロール)の三種類を用いた。グラフは、配向制御されていない抗体を含むフィルムの抗体の抗原結合能を1としたときの相対的な抗原結合能を示す。実験は各5回行い、エラーバーは標準誤差を示す。 図4は、エタノールを用いてフィルムを基板上から剥離した後、エタノール中及び基板上に残存した抗体(すなわち、フィルムに移行しなかった抗体)の有無を検証した結果を示す。 図5は、変性処理を施す前後におけるフィルム上の抗体の残存活性を示す。実験は各6回行い、エラーバーは標準誤差を示す。 図6は、本発明により製造したマイクロオーダーサイズのフィルムを用いて、細胞を捕捉できることを示す。スケールバー:50μm 図7は、本発明により製造したマイクロオーダーサイズのフィルムが、細胞を捕捉し、さらにフィルム内に含有される酵素(SOD)により、捕捉した細胞が分泌した活性酸素を除去できることを示す。 図8aは、種々の温度での加熱処理により、フィルムを基板上から剥離した後の抗体の抗原結合能の結果を示す。グラフは、120℃の加熱処理により剥離したフィルムサンプルの抗原結合能を1としたときの相対的な抗原結合能を示す。図8bは、種々の温度での加熱処理により、フィルムを基板上から剥離した後、基板上に残存している抗体量の結果を示す。実験は各4回行い、エラーバーは標準誤差を示す。 図9は、各抗体サンプルの抗原結合能の結果を示す。サンプルとしては、本発明の配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム、従来法によりランダムな配向で基板上に固定化した抗体(コントロール)、プロテインGを用いた従来法により配向を制御した形で基板上に固定化した抗体(コントロール)の三種類を用いた。グラフは、ランダムな配向で固定化した抗体の抗原結合能を1としたときの相対的な抗原結合能を示す。実験は各5回行い、エラーバーは標準誤差を示す。 図10は、本発明の配向制御された抗体を含むタンパク質フィルムと従来法によりランダムな配向で基板上に固定化した抗体(コントロール)を乾燥状態で長期に保存した後の抗原結合能の残存率の結果を示す。実験は各5回行い、エラーバーは標準誤差を示す。
1.本発明のタンパク質フィルム
本発明は、抗原結合部位が外側に露出するように配向が制御された形態で抗体を含み、該抗体の一部がフィルムの構成成分によって取り囲まれている、すなわち、該抗体の一部がフィルム内部に埋まり込むような形になっている、タンパク質フィルムを提供する。また、別の実施態様において、本発明は、抗原結合部位が外側に露出するように配向が制御された形態で抗体を含むタンパク質フィルムであって、加熱条件下、酸性条件下、アルカリ性条件下、変性剤存在下又は乾燥条件下で該抗体の活性を維持するフィルムを提供する。さらに別の実施態様において、本発明は、抗原結合部位が外側に露出するように配向が制御された形態で抗体を含み、該抗体の一部がフィルムの構成成分によって取り囲まれているタンパク質フィルムであって、加熱条件下、酸性条件下、アルカリ性条件下、変性剤存在下又は乾燥条件下で該抗体の活性を維持するフィルムを提供する。以下では、これらのタンパク質フィルムをまとめて、「本発明のフィルム」と略記する場合がある。
本発明のタンパク質フィルムの大きさや形状等は特に制限されず、その使用目的などにより適宜設定することができるが、例えば、面積が1〜100 cm2、厚さが5 nm 〜500 μm、形状が円柱形状又は直方形状のものなどが挙げられる。また、面積が300 〜 70000μm2、厚さ5 nm 〜 1 μmの微小フィルム(マイクロフィルム)であってもよい。
本発明に用いる抗体は、抗原に対する結合能を有する限り特に制限されず、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、さらには、抗体をフィルムに担持することが可能である限り、抗原結合部位を有する抗体断片であってもよい。かかる抗体断片としては、例えば、Fab、F(ab')2などが挙げられる。
抗体としては、市販品を利用してもよいし、または自体公知の方法により作製したものを利用してもよい。例えば、ポリクローナル抗体を作製する方法としては、免疫動物(例:マウス、ラット、ウサギ、ヤギ等)に対して目的抗原を免疫し、該動物から血液(血漿、血清)を回収し、精製することにより抗体を作製する方法などが挙げられる。モノクローナル抗体を作製する方法としては、例えば、前記同様の免疫動物に対して目的抗原を免疫し、該動物から抗体を産生しているB細胞を回収し、該B細胞とミエローマ細胞を人工的に融合させることでモノクローナル抗体を産生する産生する細胞を作製する方法などが挙げられる。抗体断片は、例えば、抗体を酵素(例:パパイン、ペプシン)で処理し抗体断片を生成させるか、あるいは、これら抗体断片をコードする核酸を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させることにより得ることができる。
本発明に用いる抗原としては、基板に担持することができれば特に制限されず、目的とする抗体の種類によって適宜選択することができる。かかる抗原としては、例えば、ビオチン、ペプチド、タンパク質、糖、核酸などの生体由来物質、及び、金属、高分子、セラミックスなど多様な候補が挙げられる。
また、本発明のフィルムには、同じ抗原に対する結合能を有する抗体のみを含んでいてもよく、あるいは異なる抗原に対する抗原結合能を有する2種以上の抗体を含んでいてもよい。このように2種以上の抗体を含む本発明のフィルムは、複数の抗原を認識することができるため、例えば抗体アレイなどに適用することができる。
本発明において、タンパク質フィルムの母材のタンパク質(以下「母材タンパク質」と略記する。)とは、フィルムの形態形成に寄与する、骨格となるタンパク質を意味し、母材タンパク質には、タンパク質のペプチド断片も包含される。タンパク質は、アミノ酸同士がペプチド結合でつながった構造を有する天然の高分子化合物である。タンパク質を構成しているアミノ酸の種類や数、及びその結合の順序によって異なる種類のタンパク質ができるが、基本的な骨格は全て共通である。よってどのようなタンパク質を母材に用いた場合においても、フィルムを形成させることができる。いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明のフィルムの抗体が、通常の抗体が変性するような処理条件下においても高い残存活性を維持するメカニズムとして以下のことが考えられる。抗体を含めてタンパク質は特定の高次構造を持っており、タンパク質がその機能(抗体における抗原結合能など)を発揮するためには、構造を維持していることが重要である。仮に、変性条件下などにおいて、構造が破壊された場合には、同時にその機能を損なうことになり得る。本発明のフィルムにおいては、抗体の一部がフィルムの成分(母材タンパク質やその他の成分)に取り囲まれている、すなわち、フィルム内部に埋まり込むような形になっていると考えられる。このような形にすることで、変性条件下において引き起こされる抗体の高次構造変化が防がれ、変性処理後においても抗体が本来有している抗原結合能を維持することができると推察される。従って、母材タンパク質としては、フィルムを形成し、抗体の一部を取り囲むようなものであれば特に限定されず、単純タンパク質及び複合タンパク質のいずれであってもよく、また、球状タンパク質及び繊維状タンパク質のいずれであってもよい。さらに、動物性タンパク質(例:肉、魚、卵又は牛乳に含まれるタンパク質等)や植物性タンパク質(例:大豆などの豆類や、米、小麦などの穀物に含まれるタンパク質等)のように、複数の種類のタンパク質が含まれているものも本発明に用いることができる。前記球状タンパク質としては、例えば、アルブミン(例:血清アルブミン、乳アルブミン、卵白アルブミンなど)、グロブリン、フィブリノーゲン、カゼイン、プロラミン、ゼインなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、繊維状タンパク質としては、コラーゲン、ゼラチン、ケラチン、エラスチン、F-アクチン、ミオシン、フィブリン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、シルク、フィブロインなどが挙げられるが、これらに限定されない。比較的安価で多くの量を入手できる点からは、例えば、汎用的に用いられているタンパク質などが好ましく、具体的には、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、グロブリン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、カゼイン、ケラチン、シルク、ゼイン、フィブリン、大豆タンパク質などが挙げられるが、これらに限定されない。薬などの分子との吸着性の観点などからは、アルブミンが好ましい。また、これらのタンパク質は、化学処理、例えば、架橋剤による架橋などを施されていてもよい。母材タンパク質は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
母材タンパク質のフィルムに対する含有量(2種類以上用いる場合はその合計量)は、フィルムの形態を維持できる限り特に制限されないが、50重量%以上が好ましく、60重量%以上がより好ましく、70重量%以上がさらに好ましく、90重量%以上がさらにより好ましい。また、100重量%以下(例:100重量%以下、99重量%以下、98重量%以下、97重量%以下、96重量%以下、95重量%以下)が好ましい。これらの含有量は、下述する母材タンパク質以外のタンパク質等の存在や含有量により、適宜調節することができる。
また、本発明のフィルムには、上記母材タンパク質以外のタンパク質(以下「他のタンパク質」と略記することがある。)をさらに含んでいてもよい。かかる他のタンパク質としては、フィルムの内部においてその活性の全てが失活しないタンパク質であればいかなるタンパク質であってもよく、タンパク質のペプチド断片であってもよい。前記タンパク質としては、例えば酵素、輸送タンパク質、抗体、サイトカインなどが挙げられる。前記酵素としては、例えば、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)、カタラーゼ、グルコースオキシダーゼ、アミノアシラーゼ、アルコールデヒドロゲナーゼ、カルボキシペプチダーゼA、キモトリプシン、グルタミン酸デヒドロゲナーゼ、スブチリシン、チロシナーゼ、トリプシン、パパイン、ペルオキシダーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、リゾチーム、リボヌクレアーゼ、アミラーゼ、アルドラーゼ、リパーゼなどが挙げられるが、これらに限定されない。輸送タンパク質としては、例えば、ヘモグロビン、α-グロブリン、β-グロブリン、リポタンパク質、トランスフェリン、セルロプラスミンなどが挙げられるが、これらに限定されない。抗体としては、例えば、細胞が分泌する有害物を捕捉し得る抗体が挙げられるが、これに限定されない。サイトカインとしては、例えば、インターロイキン、インターフェロン、エリスロポエチン、上皮成長因子、線維芽細胞成長因子、血小板由来成長因子、肝細胞成長因子、トランスフォーミング成長因子、腫瘍壊死因子、神経成長因子などが挙げられるが、これらに限定されない。他のタンパク質は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
前記母材タンパク質や他のタンパク質は、市販品を利用してもよいし、または自体公知の方法により作製したものを利用してもよい。タンパク質を作製する方法としては、例えば、生体試料からタンパク質を単離、精製する方法や、該タンパク質をコードする核酸を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させる方法などが挙げられる。例えば、ヒト由来のSODをコードする核酸は、NCBI/GenBankデータベースに登録されているDNA配列(accession No. M36693)をもとに、CDSの上流及び下流に対して適当なプライマーを設計し、ヒト由来mRNAからRT-PCR法によりクローニングできる。
他のタンパク質のフィルムに対する含有量(2種以上用いる場合はその合計量)は、フィルム中でその機能を発揮できる限り特に制限されないが、例えば2500U / mg の酵素活性を有するSODを用いる場合には、0.001〜2重量%が好ましく、0.005〜0.5重量%がより好ましく、0.01〜0.05重量%がさらに好ましい。SOD以外のタンパク質を用いる場合にも、その目的等に応じて含有量を適宜設定することができる。
また、本発明のフィルムには、上記以外の成分を含んでいてもよく、このような成分としては、フィルムを形成する際に必要となる成分等が含まれる。かかる成分としては、例えば、架橋剤や安定剤などが挙げられる。本発明において、フィルムの構成成分には、上述した母材タンパク質、その他のタンパク質及びこれら以外の成分が包含される。
本発明に用いる架橋剤は、架橋反応後に母材タンパク質に親水性が付与される限り特に制限されないが、特に複数のエポキシ基を有する架橋剤が好ましい。かかる架橋剤としては、ポリエポキシ化合物からなる架橋剤が挙げられ、例えば、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテルなどを用いることができる。中でも、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(n=1〜8)、すなわちエチレングリコール繰り返し単位(n)が1〜8であるポリエチレングリコールジグリシジルエーテルなどが好ましい。nが増大するほど疎水的になるため、良好なしなやかさを保持したフィルム作製の観点からは、nが8以下であることが好ましい。また、架橋剤のスペーサの箇所に親水性のユニットが含まれている化合物なども好ましい。例えば、Bis-dPEG3-NHS ester(Quanta biodesign社)などが挙げられる。架橋剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
また、フィルムを作製する際に、フィルムを構成しているタンパク質の大きな高次構造変化を防ぐため、本発明のフィルムには安定剤が含まれていることが好ましい。本発明において、安定剤とは、乾燥工程を含むフィルム作製の過程において引き起こされるタンパク質の高次構造変化を、防止するような物質を意味する。かかる安定剤としては、フィルム形成過程におけるタンパク質の構造変化を防止するようなものであれば特に制限されないが、通常親水性に優れているものが好ましい。このような安定剤としては、例えば、高分子化合物などが挙げられ、グリセロール(グリセリン)、糖類(例:トレハロース、スクロース、マルトース、デキストラン等)、高分子化合物(例:ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール等)、ヘパリンなどが挙げられる。安定剤は、1種類のみを用いてもよいし、2種類以上を用いてもよい。
本発明のフィルムは、過酷な外因性の環境を模倣する、加熱条件下、酸性条件下、アルカリ性条件下、変性剤存在下又は乾燥条件下(これらの条件下で処理を行うことを、「変性処理」と略記する場合がある)で該抗体の活性(抗原結合能)を維持し得る。このような安定性の観点で、本発明のフィルムは優れた効果を有する。本発明において、加熱条件下とは、例えば37℃以上(例:40℃、50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、またはそれ以上)の条件下に、1分以上(例:5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分又はそれ以上)タンパク質フィルムを曝露することを意味する。本発明において、酸性条件下とは、pHが6以下(例:6、5、4、3、2、1)の条件下に、1分以上(例:5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分又はそれ以上)タンパク質フィルムを曝露することを意味する。本発明において、アルカリ性条件下とは、pHが8以上(例:8、9、10、11、12、13)の条件下に、1分以上(例:5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分又はそれ以上)タンパク質フィルムを曝露することを意味する。本発明において、変性剤存在下とは、1M以上(1M、2M、3M、4M、5M、6M、7M又はそれ以上)のタンパク質変性剤(例:グアニジン塩酸、尿素、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)等)の存在下に、1分以上(例:5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分又はそれ以上)タンパク質フィルムを曝露することを意味する。タンパク質は通常、溶液中に溶けた状態で存在し、その生理機能を発揮する。本発明において、乾燥条件下とは、タンパク質フィルムを溶液に浸漬することなく、空気中に1日以上(例:4日、7日、10日、15日、20日、25日、30日又はそれ以上)置くことを意味する。
本発明において、抗体の活性を維持するとは、上記変性処理前後での本発明のフィルムの抗体の残存活性が50%以上(例:50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、100%)であることを意味する。ここで100%とは、上記条件下への暴露前後において、抗体の活性が実質的に変化しないことを意味する。なお、かかる残存活性は、変性処理前後の抗体の抗原結合能により評価することができ、次の式により計算される。
前記抗原結合能は、酵素を結合させた抗原や蛍光物質で標識した抗原を利用する方法により測定や算定することができる。具体的には、抗原としてビオチンを用い、抗ビオチン抗体を含むタンパク質フィルムの抗原結合能を評価する場合には、本発明のフィルムを2%ウシ血清アルブミンリン酸緩衝液(PBS; pH=7.4)で1時間ブロッキング処理を行った後、120μg/ ml ビオチン - 西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合体溶液(Acris Antibodies GmbH、ドイツ)に室温にて1時間浸漬する。その後、2%トリトンX-100(和光)/ PBSで5分間3回洗浄、さらに、最後にPBSで1回洗浄した後、Amplex(登録商標) UltraRed Reagent(Invitrogen)を用いてフィルムに結合したビオチン-HRP複合体の量を測定することにより、算定することができる。他の抗原及びそれに対する抗体を含むタンパク質フィルムの場合も、同様の方法により抗原結合能を測定し、算定することができる。
本発明の一実施態様において、本発明のフィルムは、70℃のPBS中に10分間浸した後の残存活性が通常50%以上、好ましくは60%以上、より好ましくは70%以上、さらに好ましくは80%以上であり、pHを2に調整した50mMグリシン緩衝液中に室温で30分間浸した後の残存活性が通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、もっとも好ましくは100%であり、pHを12に調整したリン酸二水素ナトリウム緩衝液中に室温で30分間浸した後の残存活性が通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、もっとも好ましくは100%であり、6Mグアニジン塩酸の緩衝液中に室温で30分間浸した後の残存活性が通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、もっとも好ましくは100%であり、及び/又は空気中(温度40℃)に1ヶ月静置した後の残存活性が通常70%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上、もっとも好ましくは100%である。
本発明のフィルムは、抗体アレイ、バイオセンサー、細胞分離基材、マイクロデバイスなど抗体の抗原結合能を利用したバイオデバイスへ適用することができる。これらの具体的な使用形態は多岐に渡るが、例えば、特定の細胞内で過剰に発現しているタンパク質の網羅的なスクリーニングを行う、特性の物質を検出することで病気の診断を行う、雑多な細胞集団から治療に有用な細胞のみを分離する、有機溶媒、強酸、強アルカリなど通常抗体が変性するような溶液中に含まれている有用物質を単離する、生体内において任意の場所に集積させて薬剤を特定の場所のみに作用させることなどが可能となる。
タンパク質を原料として作製する本発明のフィルムにおいては、フィルムに含有させるタンパク質の組み合わせをうまく選択することでフィルムに含まれる複数のタンパク質(抗体、母材タンパク質及び他のタンパク質)が協調的な作用を発揮し得る。従って、例えば、抗体の抗原結合能により、該抗原を有している特定の細胞や組織に特異的にフィルム内の他のタンパク質を作用させたり、あるいは母材タンパク質に薬剤を吸着又は結合させることにより、特定の細胞や組織にのみ該薬剤を作用させることが可能である。また、実施例(図6、7)で示す通り、フィルム表面に組み込まれた抗体により細胞を捕捉した後、フィルム内のSODの作用により、捕捉された細胞から分泌されたスーパーオキシドアニオン(活性酸素)を除去することができる。この作用を用いて、具体的には、本発明のフィルムを含有する医薬組成物を生体内に投与し、該フィルムが活性酸素を分泌する好中球やマクロファージを捕捉し、フィルム内のSODにより細胞から分泌された活性酸素を除去することにより、炎症性疾患などの治療に用いることができる。
本発明のフィルムを上記のように医療材料として用いる場合には、母材タンパク質として、生体由来のタンパク質であって、細胞に対する毒性が低いものを用いることが好ましい。例えば、アルブミンは、従来から細胞培養液中にも添加されることの多い物質であり、細胞に対する毒性などの心配も無く、また、近年、ヒト患者に投与可能な医薬品レベルの非常に高品質なヒト血清アルブミンもリコンビナント技術を利用して開発されており、アルブミンを母材タンパク質として用いることは安全面においても非常に有用である。
2.本発明のフィルムの製造方法
さらに、本発明は、以下の工程を含む、本発明のフィルムの製造方法(以下「本発明の製法」と略記する。)を提供する(図1に、本発明の製法の概略図を示す)。
(1)基板素材の表面に抗原が担持された基板を用意する工程、
(2)(1)の担持された抗原に抗体を結合させる工程、
(3)(2)の結合された抗体に、母材タンパク質を含む溶液(以下「タンパク質溶液」と略記する場合がある。)を接触させる工程、
(4)(3)の母材タンパク質を凝固させ、抗原結合部位が露出した形態で抗体を含む固体状態のタンパク質フィルムを形成させる工程、及び
(5)(4)の工程により得られたフィルムを基板から剥離し、回収する工程
本発明の製法により、上述の本発明のフィルムを製造することができる。また、図4に示す通り、本発明の製法により、検出できる範囲で、基板上の抗原に結合させた抗体の全てをフィルムに移し得るため、抗体を極めて効率よく利用することができる点においても、本発明の製法は優れた効果を有する。
いかなる理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明の製法により、抗体の抗原結合部位が外側に露出するように配向を制御された抗体が、フィルムの構成成分に取り囲まれた形でフィルム表面に組み込まれた本発明の抗体を含むタンパク質フィルムが得られるメカニズムとしては以下のことが考えられる。抗原を固定化した基板に抗体を結合させることで抗体の配向が制御され、そこにフィルムの元となるタンパク質溶液を加えることで、抗体分子内の抗原との結合に関与していない部分がフィルムの元となる溶液の構成成分で取り囲まれる。この状態にて固形のフィルムを作製することで、抗体の抗原結合部位が外側に露出し、かつ、抗体分子の多くの部分がフィルムの構成成分によって取り囲まれたフィルムが作製される。従って、上記工程(1)で用意する基板は、表面に抗原が担持されていれば特に限定されず本発明に用いることができる。このような基板としては、フィルムを形成後、基板からフィルムを剥離することを考慮すると、フィルムとの相互作用が少ない表面特性を有する基板が好ましい。フィルムとの相互作用が少ない表面としては中性で、かつ、化学的に不活性な疎水性表面が第一の候補として挙げられる。従って、本発明の一実施態様において、基板素材の表面に疎水性領域を有し、該領域に抗原が担持された基板を用いることが好ましい。抗原を担持しつつ、フィルムの元となる溶液が接する部分の大部分(バックグラウンド)が疎水性である表面を作製するためには、疎水性の官能基を末端に持つアルカンチオールと抗原を末端に持つアルカンチオールを利用して混合自己組織化単分子膜(SAM)を金属基板上に形成する方法などを用いることができる。また、その他にも疎水性の合成高分子表面の一部に抗原を結合させた基板などを利用してもよい。また、タンパク質が強く吸着しないことで知られているポリエチレングリコール(PEG)鎖や親水基をバックグラウンドとして有する基板なども好ましく、これら親水基やPEG鎖を末端に持つアルカンチオールと抗原を末端に持つアルカンチオールを利用して混合SAMを金属基板上に形成する方法により作製することができる。
前記SAMは、例えば、抗原が結合したアルカンチオール及び/又はジスルフィド(以下「抗原結合アルカンチオール等」と略記する。)と、抗原が結合していないアルカンチオール及び/又はジスルフィド(以下「抗原非結合アルカンチオール等」と略記する。)とを含む溶液を基板素材に接触させることにより形成させることができる。かかるアルカンチオール及び/又はジスルフィドの炭素数は、用いる抗原の種類、質量や大きさなどにより適宜設計できる。例えば低分子(ビオチンの分子量は244 g/mol)の抗原の場合、炭素数は10〜30が好ましく、10〜20がより好ましく、10〜12がさらに好ましい。
抗原非結合アルカンチオール等としては、基板に疎水性領域を形成することができれば特に制限されないが、例えば、その末端に疎水基を結合したものなどが挙げられる。このような疎水基としては、アルキル基(例えば、炭素数が1〜5のアルキル基)、アリール基などが挙げられるが、好ましくはメチル基である。これらの疎水基は、用いる抗原の大きさなどにより、適宜設計することができる。
前記溶液中の抗原結合アルカンチオール等と、抗原非結合アルカンチオール等の割合(モル比)(抗原結合アルカンチオール等:抗原非結合アルカンチオール等)としては、抗原の種類、質量や大きさ等により変動するが、1:4〜1:20が好ましく、1:7〜1:15がより好ましく、1:8〜1:10がさらに好ましい。
抗原としてビオチンを用いる場合には、例えば、図2aに示した構造を有するビオチン化アルカンチオールと、1-ドデカンチオールとの混合物をモル比1:9(ビオチン化アルカンチオール:1-ドデカンチオール)で含むエタノール溶液に、基板素材を浸すことで、ビオチンとメチル基が表面に露出された混合SAMを形成することができるが、この方法に限定されない。また、ペプチドやタンパク質などを抗原として用いる場合には、例えば、末端にカルボキシル基、アミノ基、チオール基など反応性を有する官能基を持ったアルカンチオールと1-ドデカンチオールなどの末端に疎水基を持ったアルカンチオールを使って混合SAMを作製後、カルボキシル基、アミノ基、チオール基などの官能基を利用してペプチドやタンパク質を基板上に結合させることで抗原を固定化した基板を調製し、フィルムを作製することが可能である。タンパク質などをより精密に基板上に固定化するためには、タンパク質分子の一部からチオール基を1つだけ外側に出し、このチオール基と基板上のチオール基の間でジスルフィド結合を形成させる方法などを用いることが好ましい(Anal Chem 2007, Vol.79, 2680-2687)。
本発明に用いる基板素材としては、平滑な表面をもつよう成型され得る固体材料であればいずれでもよく、例えば、ガラス、石英、プラスチックなどが挙げられるがそれらに限定されない。また、その形状は、平板上に限定されることなく、細胞培養用に広く普及しているシャーレやプレートのようなものであってもよい。また、SAMを形成するための基板素材としては、特に限定されないが、金属を含む素材(例:金属で被覆された素材)であることが好ましい。かかる金属としては、金、銀、パラジウム、銅、白金などが挙げられるが、これらに限定されない。
本発明の製法に用いる抗原、抗体、母材タンパク質は、1の本発明のタンパク質フィルムについて記載したものと同様のものを用いることができる。
前記工程(2)の抗原への抗体の結合は、例えば、該抗体を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)を抗原が担持された基板表面に塗布し、インキュベートすることなどにより行うことができるが、これに限定されない。
前記工程(3)の溶液の溶媒としては、いかなる溶媒であってもよい。ただし、タンパク質を溶解させることを考えると、水溶性の溶媒(例えば中性の緩衝液)が好ましい。
前記工程(3)の溶液の体積は、目的のフィルムの大きさによって適宜調節できる。母材タンパク質の溶液中の濃度は、フィルムを形成できる限り特に制限されないが、15 μM〜4.5 mMが好ましく、45 μM〜2.3 mMがより好ましく、75 μM〜750 μMがさらに好ましく、150 μM〜450 μMがさらにより好ましい。これらの濃度は、下述する母材タンパク質以外のタンパク質等の存在の有無や濃度等により、適宜調節することができる。また、架橋剤を用いる場合には、母材タンパク質を、あらかじめ架橋剤により架橋タンパク質としてもよいし、又は母材タンパク質を含む溶液に架橋剤を混合してもよい。従って、一実施態様において、前記工程(3)の溶液中の母材タンパク質は、架橋タンパク質である。抗体への母材タンパク質を含む溶液の接触は、例えば、基板表面に溶液を塗布することなどにより行うことができるが、この方法に限定されない。また、母材タンパク質として難溶性のタンパク質を用いる場合には、あらかじめ可溶化することが好ましい。タンパク質の可溶化は、自体公知の方法により行うことができるが、例えば酵素により分解して可溶化する方法や、界面活性剤(トリトン-X100などのトリトン系界面活性剤、Tween20などの非イオン性界面活性剤、N-ラウロイルサルコシンナトリウム、SDSなどの陰イオン性界面活性剤)などを用いて可溶化する方法などが挙げられるが、これらに限定されない。
微小フィルムを作製する場合には、例えば、前記工程(3)を行う際に、基板上にシリコン(例:PDMS)製の微小な枠を載せ、枠の中に微量の溶液を滴下することや、インクジェットプリント技術を用いて、微小な液滴を滴下することなどにより作製できるが、これらの方法に限定されない。
また、前記母材タンパク質を含む溶液には、上記母材タンパク質以外のタンパク質をさらに含んでいてもよく、このような母材タンパク質以外のタンパク質としては、1の本発明のタンパク質フィルムについて記載したものと同様のものを用いることができる。
他のタンパク質の溶液に対する濃度は、フィルム中でその機能を発揮できる限り特に制限されないが、例えば2500U / mg の酵素活性を有するSODを用いる場合には、0.3 μM〜600 μMが好ましく、1.5 μM〜150 μMがより好ましく、3 μM〜15 μMがさらに好ましい。SOD以外のタンパク質を用いる場合にも、その目的等に応じて濃度を適宜設定することができる。
また、前記タンパク質溶液には、上記以外の成分(例えば、架橋剤や安定剤)を含んでいてもよく、このような成分としては、1の本発明のタンパク質フィルムについて記載したものと同様のものを用いることができる。
本発明において、前記工程(4)の凝固(固化)とは、フィルムの元となるタンパク質溶液の溶媒が蒸発や沸騰により大部分が無くなり(好ましくは実質的に全ての溶媒が無くなる)、固体の物質が形成されることを意味する。凝固させる方法は、母材タンパク質が固体になる限り特に制限されないが、例えば上記溶液が塗布された基板を乾燥させ、溶液を蒸発させることなどにより行うことができる。
前記工程(5)のフィルムを基板から剥離する工程は、フィルムが破損することなく剥離できる限り特に制限はないが、例えば、フィルムが付着した基板を、各種溶液に曝露する(浸す)ことや、加熱処理を行うことにより、フィルムを基板から剥離させることができる。かかる各種溶液としては、フィルムを基板から剥離させることができる限り特に制限されないが、有機溶媒(例:メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール等のアルコール、アセトン、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン、ベンゼン、トルエン、ナルタレン等の芳香族炭化水素、クロロホルム、プロパン、ヘキサン等の置換していてもよいアルカン、DMSO等)、酸性溶液(例:酸性物質として、硫酸、硝酸、塩酸等の鉱酸を含有する溶液、ギ酸、酢酸、乳酸、グリコール酸、アミノ酸等の有機酸を含有する溶液等)、アルカリ性溶液(例:アルカリ性物質として、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物や、アンモニア、エタノールアミン、プロパノールアミン等のアミン類を含有する水溶液等)及び上記の界面活性剤などが挙げられる。本発明のフィルムの母材タンパク質がアルブミンの場合には、エタノール又はジメチルスルホキシド(DMSO)が好ましく、他のタンパク質としてSODを用いる場合には、その活性の維持の観点から、エタノールが好ましい。
また、加熱処理は、例えば50℃以上(例:50℃、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃又はそれ以上)で、1分以上(例:5分、10分、20分、30分、40分、50分、60分又はそれ以上)フィルムを処理することなどにより行うことができる。加熱温度の上限は、抗体が失活しない限り特に制限されないが、150℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。下述の実施例で示す通り、一実施態様において、加熱温度が80℃〜120℃の範囲において、温度に比例して抗体の抗原結合能が向上することが示されたため、加熱温度は80℃〜120℃であることが好ましく、120℃が特に好ましい。当業者であれば、本発明のフィルムの母材タンパク質の種類や、その他タンパク質の成分の性質などに応じて、本発明のフィルムの剥離に適した溶液や加熱処理の条件を適宜選択することができる。また、フィルムの回収としては、フィルムを破損せずに回収できる限り特に制限されないが、フィルムが破損しやすい場合においても、フィルムの片面に支持膜を予め備え付けておくなどの工夫をすることで、ピンセット等を用いて簡便に回収することができる。
上述の2種以上の抗体を含む本発明のフィルムは、例えば、以下のように作製することができる。アレイ状のパターンを有するSAM基板(末端に疎水基を有するアルカンチオールをバックグラウンドとして、反応性の官能基を末端に持つアルカンチオールのスポットが配列している基板)を作製し(Journal of Bioscience and Bioengineering, Vol. 100, pp. 292-296, 2005)、各スポットに様々な異なる抗原を固定化する。この基板に多種の抗体の混合液を添加することで、各スポットには、固定化されている抗原に対応する形で異なる抗体が結合する。このようにして作製した複数種の抗体が結合した基板上にフィルムの元となる母材タンパク溶液を加えて、フィルムを作製することで2種以上の抗体を含むフィルムを作製することができる。このようにして作製した複数種の抗体を含むフィルムは、例えば、酸やアルカリ溶液中に含まれている有用物質の分離や特定の細胞のみに発現しているタンパク質の網羅的解析などに利用できる。
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、これらは単なる例示であって本発明の範囲を何ら限定するものではない。
[方法]
1.架橋アルブミン−SOD溶液の調製
タンパク質の架橋は、我々の以前の研究(Journal of Biomedical Materials Research Part A, Vol. 86, pp.228-234, 2008)において最適化した条件にて行った。まず、450μMのウシ血清アルブミン(シグマ, USA)と4.5μMのウシ赤血球由来Cu, Zn - SOD(EC1.15.1.1, 2500U / mg; 和光、日本)の濃度を有するタンパク質の混合溶液をリン酸緩衝液(PBS、pH=7.4)を用いて調製し、そこに215 mMエチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE、和光)を加えて25℃で24時間撹拌することで架橋反応を行った。その後、反応液を透析チューブ(分子量カットオフ= 12kDa、日本医科科学、日本)に移し、Milli-Q水を外液にして3日間透析を行うことで、未反応のEGDEを除去し、架橋アルブミン−SOD溶液を得た。
2.抗体を含むタンパク質フィルムの作製とその抗原結合能の評価(エタノールにより基板からタンパク質フィルムを剥離)
配向が制御された抗体を含むタンパク質フィルムの作製手順を図1に示す。抗原(ビオチン)が固定化された基板は、アルカンチオールの自己組織化単分子膜(SAM)を用いて作製した。具体的には、ガラスにクロム(10nm)と金(40nm)がコーティングされた金基板(直径13mm; 東邦化研、日本)をピランハ溶液[硫酸と30%過酸化水素水の3:1(vol /vol)の混合液]を用いて洗浄した後、ビオチン化アルカンチオール(0.1mM、ProChimia、ポーランド)と1-ドデカンチオール(0.9mM、和光)を含むエタノール溶液に浸漬し(図2)、24時間置くことで、金基板上にビオチン化アルカンチオールと1-ドデカンチオールの混合SAMを形成し、ビオチン固定化基板を得た。基板をエタノールと水で洗浄後、20μg/ ml ウサギ抗ビオチン抗体(Bethyl Laboratories, Inc、テキサス、アメリカ)/PBSを加え、1時間インキュベートすることで基板上の抗原に抗体を結合させた。基板に結合していない抗体をPBSとMilli-Q水を用いて洗浄して除いた後、この配向制御された形で抗体が結合している基板上に、30mMトレハロース(和光)を含む架橋アルブミン-SOD溶液を加え、さらに、このタンパク溶液の上に、酸素プラズマ処理 [プラズマクリーナーPDC 210(ヤマト科学、日本)を使用、150 cc O2、75W、10秒の条件] を施したポリカーボネート膜(ipPOREトラックエッチング膜、直径13 mm、厚さ16μm、ポア径10μm、気孔率30%以下、it4ip社製、ベルギー)をのせた。この基板を恒温恒湿器(37℃、50%)(SH-222、エスペック、日本)中にて一晩置くことで架橋アルブミン―SOD溶液を凝固させ、“配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム”を作製した。作製したフィルムは、エタノールに1分間浸すことで、基板から剥離した。本ステップにおいて、剥離に用いたエタノールやフィルムを剥離した後の基板は、下述する3.フィルム剥離後のSAM基板上及びエタノール中の残存抗体の検出の実験に用いる。比較サンプルとして、“配向制御されていない抗体を含むタンパク質フィルム”も作製した。基本的な作製手順は、上記と同じであるが、ビオチンを有する混合SAM基板の代わりに1-ドデカンチオールのみで構成されたビオチンが無いSAM基板を用いた。ビオチンが無いSAM基板上には、抗体はその配向が制御されることなくランダムな形で吸着し、そのランダムな配向を有する基板上の抗体がそのままフィルムに移行するので、“配向制御されていない抗体を含むタンパク質フィルム”が作製されることになる。
抗体の抗原結合能の評価は以下の手順により行った。作製した配向制御された抗体、または、配向制御されていない抗体を含むタンパク質フィルムをピンセットを使ってマルチウェルプレート(1.9cm2/well)に移し、PBSで洗浄した。2%ウシ血清アルブミン/PBSで1時間ブロッキングした後、120μg/ mlビオチン - 西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)複合体(Acris Antibodies GmbH、ドイツ)/PBSに室温にて1時間浸漬した。その後、2%トリトンX-100(和光)/ PBSで洗浄し(5分間、3回)、さらに、最後にPBSで1回洗浄した後、Amplex(登録商標) UltraRedReagent(Invitrogen)を用いてフィルムに結合したビオチン-HRP複合体の量を測定することで抗体の抗原結合能を評価した。なお、溶液中に浸かっているタンパク質フィルムは、ピンセットなどでつまむと破れるので、操作性を良くするために、ここでは、タンパク質フィルムの片面にポリカーボネート膜を支持膜として貼り付けている。
3.フィルム剥離後のSAM基板上及びエタノール中の残存抗体の検出
エタノールを使用してSAM基板からフィルムを剥離した後、SAM基板上及び剥離に使用したエタノール中に抗体が残存していないかどうかを調べた。これらに残存している抗体が検出されなければ、SAM基板上の抗体は全てフィルムに移行しているものだと考えられる。フィルムを剥離後、2種類のSAM基板「ビオチンが有るSAM基板(ビオチン化アルカンチオールと1-ドデカンチオールの混合SAM)、及び、ビオチンが無いSAM基板(1-ドデカンチオールのSAM)」上にウサギ抗ビオチン抗体が残存しているかどうかを調べるために、フィルム剥離後のSAM基板を2%ウシ血清アルブミン/PBSで1時間ブロッキングした後、HRPで標識された抗ウサギ抗体(Jackson、USA)(2% BAS溶液で1:500に希釈)溶液に室温にて2時間浸漬した(この抗体は基板上の抗ビオチン抗体に結合する)。2%トリトンX-100/ PBS(5分間、3回)とPBSで洗浄後、SAM基板上の抗ビオチン抗体の存在をHRPとAmplex(登録商標) UltraRed Reagentの反応によって生じる蛍光シグナルに基づいて評価した。SAM基板に抗ビオチン抗体を付着させた直後のサンプル(図1 ステップ2)についてもはじめの段階で存在していた抗体の量を把握するために上記と同様の評価を行った。
フィルムの剥離に用いたエタノール中に溶解又は沈殿している抗体が存在しているかどうかを調べるために、フィルム剥離に用いたエタノールをマイクロチューブに入れ、15000×gで15分間遠心し、溶解している抗体と沈殿している抗体を分離した(溶解している抗体は上清に残り、沈殿している抗体は底に沈む)。上清サンプルを遠心フィルター(Ultrafree-MC、分子量カットオフ:50kDa、Merck Millipore、USA)に移し、2000×gで10分間遠心することで濃縮操作を行った。この濃縮溶液を使って、タンパク質定量キット(クマシーブリリアントブルーがタンパク質に吸着する性質を利用してタンパク質を定量するキット、同仁化学研究所、日本)によりエタノール中に溶解している抗体の存在を調べた。エタノール中に沈殿した抗体(上記の遠心操作後、チューブの底に沈んでいると考えられる)の存在は、ドデシル硫酸ナトリウム - ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)により調べた。方法としては、SDSサンプルバッファー(33 mMTris-HCl (pH=6.8)、13%グリセロール、1% SDS、2.5% 2メルカプトエタノール及び0.005% ブロモフェノールブルー;Bio-rad、アメリカ)を遠心後上清を除いたマイクロチューブに加え、熱湯中で5分間熱した。このサンプルをアクリルアミドゲル(4-15%)の各ウェルに添加し、200V(定電圧)にて電気泳動を行った。泳動後、dodecaTM銀染色キット(Bio-rad)を用いてゲルの銀染色を行い、タンパク質のバンドを可視化した。コントロールサンプルとして天然の抗ビオチン抗体を実験に用いた。
4.プロテインGを用いた抗体の配向固定
上記2において記述した直径13mmの金基板をピランハ溶液にて洗浄後、1mM 11-メルカプトウンデカン酸(シグマ、USA)/ エタノール溶液に24時間浸し、金基板上に末端にカルボキシル基を有するSAMを形成した。エタノールと水で基板を洗浄後、基板を50 mg/ml N-hydroxysuccinimide(NHS; ナカライ、日本)と 50 mg/ml N-(3-Dimethylaminopropyl)-N’-ethylcarbodiimide hydrochloride(EDC; シグマ)の混合水溶液に室温にて20分間浸漬することでSAMのカルボキシル基を活性化した。この基板を水で3回洗浄した後、50μg/mlプロテインG(シグマ)/ PBS溶液を加え1時間インキュベートすることで、プロテインGを共有結合にて基板上に固定化した。このプロテインG固定化基板をPBSで3回洗浄した後、10 mM グリシン / PBSに10分間浸漬し、プロテインGとの反応に関与しなかった未反応の活性化カルボキシル基を失活させた。その後、20 μg/mlの抗ビオチン抗体/PBSを基板上に添加して、1時間インキュベートすることで、抗体を固定化プロテインGに結合させた。このプロテインGを利用して配向を制御した形で固定化した抗体の抗原結合能を上記2において記述したビオチン - HRP複合体とAmplex(登録商標) UltraRed Reagentを用いた方法により評価した。
5.各種変性処理に対する抗体の安定性評価
各種変性処理に対する抗体の安定性を評価するために、2において記述した方法により、“配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム”を作製した。また、比較サンプルとしてアルブミン-SODフィルムの表面上に共有結合で抗体を結合させたフィルムを作製した。方法としては、パラフィルム上に上記の酸素プラズマで処理したポリカーボネート膜を置き、膜上に架橋アルブミン-SOD溶液を加え、恒温恒湿器にて、一晩乾燥させることでアルブミン-SODフィルムがコーティングされたポリカーボネート膜を作製した。このアルブミン-SODフィルムをパラフィルムから剥離し、アルブミン及びSODのカルボキシル基を上記4と同様の方法にて、NHSとEDCを用いて活性化した後、20μg/mlの抗ビオチン抗体/PBS中にて1時間インキュベートすることで抗体をフィルム表面上に共有結合で固定化した。PBSで3回洗浄した後、10mMグリシン溶液に10分間浸漬、さらに再度PBSで洗浄することで、“抗体結合タンパク質フィルム”を得た。
これら配向制御された抗体を含むタンパク質フィルムと抗体結合タンパク質フィルムにおける抗体の各種変性処理に対する安定性を評価するため、フィルムを50mMグリシン緩衝液(pH = 2)、50mMリン酸水素二ナトリウム緩衝液(pH = 12)及び6Mグアニジン塩酸塩溶液に室温にて30分間浸漬した。また、加熱処理として、フィルムを70℃のPBS中に10分間浸漬した。さらに、乾燥状態で両フィルムを37℃のインキュベーター中にて7日間保存した。その後、変性処理を施した後における抗体の抗原結合能を上記2において記述したビオチン - HRP複合体とAmplex(登録商標) UltraRed Reagentを用いる方法により評価した。
6.マイクロタンパク質フィルムの作製
上記2と同様の方法にてビオチン化アルカンチオールと1-ドデカンチオールから成る混合SAMを金基板上に形成した後、抗ビオチン抗体を基板上に結合させた。この基板上にインクジェット技術(IJHB-1000、マイクロジェット、日本)を利用して、30mMトレハロースを含む架橋アルブミン-SOD溶液の微小な液滴を滴下した後、恒温恒湿器(37℃、50%)にて一晩置くことでマイクロタンパク質フィルムを作製した。作製したマイクロタンパク質フィルムは、エタノールに浸漬することで、基板から剥離した。
7.細胞及び細胞培養
HL60ヒト前骨髄球性白血病細胞株(RCB0041、理研細胞バンク、日本)の培養は、RPMI1640培地に10%ウシ胎仔血清(FBS)、100U / mLペニシリン、及び100mg / mLストレプトマイシンを添加した培養液を用いて行った。HL60細胞は、様々な種類の細胞に分化する能力を有しており、DMSOは、HL60細胞の好中球様細胞(Collins SJ., Blood, 70(5):1233-44, 1987、Collins SJ. et al., Proc Natl Acad Sci USA, 75(5): 2458-2462, 1978)への分化を誘導するために広く使用されている。本実験においては、HL60細胞を2.5×105細胞/mlの細胞密度で培養皿に播種し、1.25%DMSO(シグマ)を添加した培地中にて5日間培養することで好中球様細胞へと分化させた。また、ビオチン化抗体を利用して細胞表面へのビオチンの導入を行った。方法としては、好中球様細胞(6×107細胞/ ml)とビオチン標識抗CD43抗体(2μg/ml)「ヤギ抗CD43抗体(R&D Systems、USA)とビオチン標識キット(同仁化学研究所、日本)を用いて作製」を無血清RPMI 1640培養液中にて混合し、30分間インキュベートを行うことで細胞表面上にビオチン標識抗CD43抗体を結合させ、好中球様細胞の細胞表面にビオチンを導入した(以下「ビオチン化好中球様細胞」と略記する)。
8.マイクロタンパク質フィルムによる細胞の捕捉と捕捉した細胞から分泌された活性酸素の除去
6の項で作製したマイクロタンパク質フィルムをマイクロチューブに入れ、10,000×gで5分間遠心した後、2% BSA/PBSにてフィルムを懸濁した。30分間インキュベーションすることでフィルムをBSAでブロッキングした後、遠心によりマイクロフィルムを沈殿させ、無血清RPMI 1640培養液に懸濁した。このマイクロフィルムとビオチン化好中球様細胞を微小なチャンバーに加え1時間インキュベートした。なお、細胞とフィルムがよく接触するように、10分毎にチャンバーの上下を反転させた。細胞とフィルムの混合液を40μmの孔を有するセルストレイナーに移して、フィルムに補足されなかった細胞を除いた(細胞は10μm程度で小さいため孔をすり抜ける。一方、マイクロフィルムは100μm程度の大きさがあるので孔をすり抜けない)。セルストレイナー上に残っているフィルムをハンクス平衡塩溶液(HBSS; Invitrogen)で懸濁して、細胞培養皿に移し、フィルムを位相差顕微鏡(IX70、オリンパス)を用いて観察した。コントロールとして、抗体を組み込んでいないマイクロフィルムも作製し、同様の手順で細胞の捕捉実験を行った。
好中球様細胞が分泌するスーパーオキシドアニオンは、化学発光法を利用して測定した。細胞を捕捉しているマイクロフィルムを、位相差顕微鏡下でピペットを用いて回収し(合計20枚分のフィルム)、発光測定用のマイクロチューブに入れた。この際、フィルムに補足されている細胞の数も同時に数えた。また、比較対象として、フィルムに補足された細胞と同数の好中球様細胞(フィルムに補足されていないフリーの状態の細胞)を発光測定用のマイクロチューブに入れたサンプルも準備した。これらのサンプルと化学発光試薬(Diogenes)を含んだ試験溶液(Diogenes enhanced superoxide detection kit; National Diagnostics、USA)を混合した後、刺激物質であるPhorbol Myristate Acetate(PMA、終濃度200ng / ml; 和光)を添加して好中球様細胞のスーパーオキシドアニオンの分泌を促した。分泌されたスーパーオキシドアニオンに起因する化学発光はルミネッセンスリーダー(AB-2270ルミネッセンスオクタ; アトー、日本)を用いて測定した。発光強度としては、測定した10分間の発光量の積分値を使用し、フィルムに捕捉された細胞サンプルにおけるスーパーオキシドアニオンの減少量は、次の方程式を用いて計算した。
ここで、Na又はNcはそれぞれ、フリーの状態の好中球様細胞、又はフィルムに捕捉された好中球様細胞における発光強度である。
9.架橋アルブミン溶液の調製
上記1と同じ方法で、SODを加えずにアルブミンのみを架橋することで架橋アルブミン溶液を調製した。
10.抗体を含むタンパク質フィルムの作製とその抗原結合能の評価(加熱により基板からタンパク質フィルムを剥離)
上記2に記載した方法にて、抗ビオチン抗体が結合した基板(図1、ステップ2)を作製した後、基板上に30mMトレハロースを含む架橋アルブミン溶液を加え、さらに、このタンパク溶液の上に、ポリカーボネート膜をのせた。この基板を恒温恒湿器(37℃、50%)中にて一晩置くことで架橋アルブミン溶液を凝固させ、“配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム”を作製した。その後、基板を種々の温度(80、100、120、または、140℃)に設定したヒーター(HOTPLATE HHP-140D, アズワン)の上にのせ、20分間置いた後、ピンセットを使って基板からフィルムを剥離した。回収したフィルムの抗体の抗原結合能は、上記2において記述したビオチン - HRP複合体とAmplex(登録商標) UltraRed Reagentを用いた方法により評価した。
11.フィルム剥離後のSAM基板上の残存抗体の検出
加熱によりSAM基板からフィルムを剥離した場合、抗体はフィルムに移行しているか、または、SAM基板上に残っているかのどちらかである。フィルムに移行せずにSAM基板上に残存している抗体量を、上記3と同じ方法にて評価し、次の式により抗体の残存量を計算した。
12.基板上への抗体の固定(ランダム固定)
コントロールとして、抗体の配向を制御せずにSAM基板上に抗体を共有結合で固定化したサンプルを作製した。作製手順の大半は、上記4と同じであり、末端にカルボキシル基を有するSAM基板を作製後、NHSとEDCを用いて、SAMのカルボキシル基を活性化し、20μg/mlの抗ビオチン抗体/PBSを加えて基板上に抗体を共有結合にて固定化した。このランダムな配向で基板上に固定化されている抗体の抗原結合能を上記2に記述した手順と同じ方法で評価した。
13.抗体サンプルの乾燥状態での長期保存
上記10の方法で作製した、配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム、と上記12の方法で作製した、ランダムな配向で基板上に固定化された抗体サンプルを、乾燥状態(即ち、溶液に浸漬していない状態)で40℃のインキュベーター中にて1ヶ月間保存した。乾燥保存開始から、1日、7日、または、1ヵ月後の抗体の抗原結合能を上記2と同じ手順によって評価し、保存開始日の抗原結合能のデータを用いて一定期間保存した後における抗原結合能の残存率を算出した。
[結果]
1.抗体を含むタンパク質フィルムの抗原結合能の評価
本発明である配向制御された抗体を含むタンパク質フィルムの抗原結合能の評価を行った(図3)。比較サンプルとして、配向制御されていない抗体を含むタンパク質フィルムとプロテインGを使って配向を制御しながら固定化した抗体も評価に用いた。配向制御された抗体を含むフィルムは、配向制御されていない抗体を含むフィルムと比較して、3.4倍高い抗原結合能力を有していた。また、その抗原結合能は、プロテインGを用いて固定化した抗体よりも優れていることも分かった。
2.基板上に結合していた抗体のフィルムへの移行についての検証
本方法においては、SAM基板上に抗体を付着させ、この抗体を含んだフィルムを作製後、フィルムを基板から剥離している(図1)。基板からフィルムを剥離する際、抗体の行方として次の4通りの可能性がある(図4a)。(1)フィルムに移る、(2)SAM基板上に残る、(3)エタノール中に溶解した状態で存在する、(4)エタノール中に沈殿した状態で存在する。図4bに示すように、基板上に抗体を付着させたはじめの段階(図1 ステップ2)では、抗体の存在が確認できたが、フィルムを剥離した後には、抗体は検出されず、フィルム剥離後に基板上に残存している抗体は無いと考えられる。また、フィルムの剥離に用いたエタノールを濃縮して、その中に抗体が含まれているかどうかをタンパク質定量法により調べたがタンパク質は検出されなかった。このことより、エタノール中に溶解した状態で残存している抗体は無いと考えられる。さらに、エタノール中に沈殿した状態で残存している抗体の有無をSDS-PAGEにより調べた(図4c)。通常、還元条件下で抗体のSDS-PAGE を行うと、50〜60 kDa にH 鎖、25〜30 kDa にL 鎖に由来するバンドが検出される(本実験においてもコントロールとして用いた天然の抗体サンプルにおいてこれらのバンドが検出されている)。しかし、フィルムの剥離に用いたエタノールサンプルにおいては、抗体に由来するこれらのバンドは見られず、エタノール中に沈殿した状態で残存している抗体は無いと考えられる。以上の結果より、はじめにSAM基板上に付着していた抗体は全てフィルムに移行していると考えられる。
3.各種変性処理に対する抗体の安定性評価
本発明である配向制御された抗体を含むタンパク質フィルムは、図1に示した手順により、抗体分子の多くの部分をフィルムの構成成分によって取り囲まれる(抗体がフィルムの内部に埋まり込むような形になる)ように工夫して作製しており、この周囲に存在する分子が抗体の大きな構造変化が防ぐことで、安定性が大きく向上するものと期待される。この点を明確にするために、アルブミン-SODフィルムの表面に抗体を共有結合で固定化したコントロールサンプルを調製した。この場合、抗体は、フィルムの構成成分に取り囲まれることなく、フィルム表面に乗るような形で付いている。図5に示すように、配向制御された抗体を含むフィルム中の抗体は、フィルム表面に単に結合している抗体と比較して、乾燥保存、熱及び酸、アルカリ又は変性剤での処理を含む様々なタンパク質変性処理に対して、より安定であることが分かった。
このように、本発明の抗体を含むタンパク質フィルムは、過酷な外因性の環境を模倣するような条件に対して、高い安定性を示していることが分かった。従来法により配向を制御して固定化した抗体、例えば、プロテインGなどを用いて固定化した抗体、においては、上記で記載したように酸処理により、ダメージを受けることが知られている。種々の過酷な条件下においても高い安定性を保持できる本フィルムは、従来法と比較して明確な優位性を持つものであり、幅広い分野での利用が期待できる。
4.抗体を含むマイクロタンパク質フィルムを用いた細胞の捕捉と活性酸素の除去
配向制御された抗体を含むマイクロタンパク質フィルムとビオチン化好中球様細胞を混合したところ、図6左図に示すように、マイクロフィルムはフィルム表面に組み込まれている抗体の働きにより、細胞を良好に捕捉した。直径約100μmのフィルムは、平均して22±6個の細胞を捕捉した。一方、抗体を組み込んでいないマイクロフィルムでは、細胞は捕捉されず、細胞の捕捉には抗体が必要であることが実証された(図6右図)。
次に、フィルム内のSODによって、捕捉された細胞から分泌されたスーパーオキシドアニオンをどの程度除去できるかを検証した。フリーの状態の好中球様細胞では、PMAの刺激に応答して、多くのスーパーオキシドアニオンが分泌され、強い化学発光が観察された(図7)。一方、細胞がフィルムで捕捉された場合においては、検出される化学発光の著しい減少が見られた。このことは、フィルム内のSODによって、細胞から分泌されたスーパーオキシドアニオンの多くが除去されていることを示す。このようにフィルムを構成する抗体とSODの連携プレーにより、高濃度では生体にとって有害となるスーパーオキシドアニオンを効率よく除去できることを実証した。
ここまでは、基板上からタンパク質フィルムを剥離するためにエタノールを用いたが、以下の実施例においては、フィルムの剥離のために加熱処理を用いた。
5.抗体を含むタンパク質フィルムの作製(加熱により基板からタンパク質フィルムを剥離)
作製した配向制御された抗体を含むタンパク質フィルムを、SAM基板上から回収する(図1、ステップ5)ために、加熱により、抗原―抗体反応を解離させ、基板からフィルムを剥離することを試みた。図8aに様々な温度による加熱処理によって剥離したフィルムの抗原結合能を検証した結果を示す。加熱処理の温度を上げるに従って抗原結合能が向上することが分かった。しかし、140℃まで温度を上げると抗体の抗原結合能は大きく低下した。図8bにフィルムを加熱により基板上から剥離した後、フィルムに移行せずに基板上に残存している抗体の割合を算出した結果を示す。温度の上昇とともに基板上に残存する抗体の割合が減少し、高温での加熱によって良好に抗原―抗体が解離し、基板上に抗体が残存することなく、フィルムに多くの抗体が移行することが分かった。このことより、図8aにおける温度上昇に伴う抗原結合能の増加は、より多くの抗体がフィルムに移行したためであると考えられる。140℃の加熱において、多くの抗体がフィルムに移行しているにも関わらず、抗原結合能が低いのは、高温によって、フィルム内の抗体が変性したためであると考えられる。本結果より、フィルムを基板から剥離するためには120℃が適していることが明らかになり、以降、この温度にてフィルムを作製した。
6.抗体を含むタンパク質フィルムの抗原結合能の評価
本発明である配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム(120℃加熱により剥離)と従来の一般的な方法で固定化された抗体の抗原結合能の比較を行った(図9)。従来法のサンプルとして、ランダムな配向で基板上に固定化した抗体とプロテインGを使って配向を制御しながら固定化した抗体を用いた。配向制御された抗体を含むフィルムの抗原結合能は、プロテインGを用いて固定化した抗体やランダムな配向で固定化した抗体よりも優れていることも分かった。
7.乾燥状態における抗体の長期保存安定性の検討
本発明である配向制御された抗体を含むタンパク質フィルム(120℃加熱により剥離)とランダムな配向で基板上に固定化した抗体を乾燥状態にて40℃で1ヵ月保存した(図10)。単純に基板上に共有結合で固体化した抗体(ランダム固定)では、保存開始後すぐに抗体が失活し、抗原結合能の著しい低下が見られた。一方、本発明である抗体を含むタンパク質フィルムにおいては、1ヵ月保存した後においても抗原結合能の低下が全く見られなかった。これは、タンパク質フィルムでは、抗体分子の多くの部分がフィルムの構成成分によって取り囲まれ、この周囲に存在する分子が抗体の大きな構造変化が防ぐために、乾燥状態であっても長期にわたって抗体が安定な状態で存在し得るためであると考えられる。本実施例では、保存期間として1ヵ月までしか検証していないが、1ヵ月時点で抗原結合能の低下が全く見られなかったため、1ヵ月を超える長期間に亘って抗体が失活することなく保存できると考えられる。
本発明のフィルムは、抗体の配向制御により、高い抗原結合能を実現し、かつ環境変化に対して、従来法で固定化された抗体よりも安定であり得るため、利用範囲が大幅に広がる。本発明のフィルムは、抗体アレイ、バイオセンサー、細胞分離基材、マイクロデバイスなどの抗原結合能を利用したバイオデバイスへの応用が可能である。

Claims (20)

  1. 抗原結合部位が露出するように配向が制御された形態で抗体を含み、該抗体の一部がフィルムの構成成分によって取り囲まれているタンパク質フィルム。
  2. 抗原結合部位が露出するように配向が制御された形態で抗体を含むタンパク質フィルムであって、加熱条件下、酸性条件下、アルカリ性条件下、変性剤存在下又は乾燥条件下で該抗体の活性を維持するフィルム。
  3. 異なる抗原に対する抗原結合能を有する2種以上の抗体を含む、請求項1又は2に記載のフィルム。
  4. 前記タンパク質フィルムの母材のタンパク質が、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、グロブリン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、カゼイン、ケラチン、シルク、ゼイン、フィブリン及び大豆タンパク質からなる群より選択される1種以上のタンパク質である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のフィルム。
  5. さらにフィルムの母材のタンパク質以外のタンパク質を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム。
  6. 前記母材のタンパク質以外のタンパク質が酵素、輸送タンパク質、抗体及びサイトカインからなる群より選択される1種以上のタンパク質である、請求項5に記載のフィルム。
  7. 前記酵素がスーパーオキシドジスムターゼである、請求項6に記載のフィルム。
  8. 以下の工程を含む、抗原結合部位が露出するように配向が制御された形態で抗体を含むタンパク質フィルムの製造方法。
    (1)基板素材の表面に抗原が担持された基板を用意する工程、
    (2)(1)の担持された抗原に抗体を結合させる工程、
    (3)(2)の結合された抗体に、フィルムの母材のタンパク質を含む溶液を接触させる工程、
    (4)(3)の母材のタンパク質を凝固させ、抗原結合部位が露出した形態で抗体を含む固体状態のタンパク質フィルムを形成させる工程、及び
    (5)(4)の工程により得られたフィルムを基板から剥離し、回収する工程
  9. 前記基板が、基板素材の表面に疎水性領域を有し、該領域に抗原が担持された基板である、請求項8に記載の方法。
  10. 前記基板素材の表面に自己組織化単分子膜を有する、請求項8又は9に記載の方法。
  11. 前記自己組織化単分子膜が、抗原が結合したアルカンチオール及び/又はジスルフィドと、抗原が結合していないアルカンチオール及び/又はジスルフィドとを含む溶液を基板に接触させることにより形成される、請求項10に記載の方法。
  12. 前記基板素材が金を含む基板素材である、請求項8〜11のいずれか1項に記載の方法。
  13. 前記抗原がビオチンを含む、請求項8〜12のいずれか1項に記載の方法。
  14. 前記フィルムの母材のタンパク質が、アルブミン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ビトロネクチン、グロブリン、コラーゲン、ゼラチン、エラスチン、カゼイン、ケラチン、シルク、ゼイン、フィブリン及び大豆タンパク質からなる群より選択される1種以上のタンパク質である、請求項8〜13のいずれか1項に記載の方法。
  15. 前記工程(3)の溶液がさらに架橋剤及び/又は安定剤を含む、請求項8〜14のいずれか1項に記載の方法。
  16. 前記工程(3)の溶液がさらにフィルムの母材のタンパク質以外のタンパク質を含む、請求項8〜15のいずれか1項に記載の方法。
  17. 前記フィルムの母材のタンパク質以外のタンパク質が酵素、輸送タンパク質、抗体及びサイトカインからなる群より選択される1種以上のタンパク質である、請求項16に記載の方法。
  18. 前記酵素がスーパーオキシドジスムターゼである、請求項17に記載の方法。
  19. 前記工程(5)の剥離が、有機溶媒への暴露又は加熱処理により行われる、請求項8〜18のいずれか1項に記載の方法。
  20. 請求項8〜19のいずれか1項に記載の方法により得られる、タンパク質フィルム。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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