JP2018134613A - 塗膜の形成方法および塗膜と塗装物 - Google Patents
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また、基材に高級感を付与させる塗装方法としては、多層の塗膜を形成することで色に深みと光沢を持たせたピアノ塗装や、光輝材を含有する塗膜にクリアー塗膜を形成し、金属的な光輝感や光沢感を持たせたメタリック塗装などが行われている。
また、塗装工程が4コート2ベーク方式を採用しているため、各塗装工程による外観不良率の増加を招きやすく、また、製造時間の増加によるコストアップなどの問題点があった。
(1)本発明に係る塗膜の形成方法は、第1の光輝性顔料を含有する第1の光輝塗膜と、第2の光輝性顔料を含有する第2の光輝塗膜と、クリアー塗膜とを、順次積層形成する塗膜の形成方法において、前記第1の光輝性顔料の平均粒径に対して、前記第2の光輝性顔料の平均粒径を相対的に大きくすることを特徴とする。
(2)本発明に係る塗膜の形成方法において、前記第1の光輝塗膜に光拡散剤を含有させることができる。
(3)本発明に係る塗膜の形成方法において、非透光性の基材の表面に前記第1の光輝塗膜と前記第2の光輝塗膜と前記クリアー塗膜を順次積層形成することができる。
(5)本発明の塗膜において、非透光性の基材の表面に、前記第1の光輝塗膜と第2の光輝塗膜と前記クリアー塗膜が塗布された構成を採用できる。
(6)本発明の塗膜において、前記(4)または(5)に記載の第1の光輝塗膜に光拡散剤を含有させた構成を採用できる。
(8)本発明の塗装物において、前記第1の光輝塗膜に光拡散剤を含有させた構成を採用できる。
本発明による奥行きや深みがある立体感は、下層に配置された第1の光輝性顔料の平均粒径に対して、上層に配置された第2の光輝性顔料の平均粒径を相対的に大きくすることで、顔料どうしの間の相対的な大きさの差により距離感が生まれ、また、光輝性顔料の重なりにより下層の光輝性顔料の一部を上層の光輝性顔料が覆うことにより上下位置を知覚することで、発現する。
本発明の実施形態における塗膜Aは、図1に示す第1の光輝塗膜4と該第1の光輝塗膜4上に順次形成された第2の光輝塗膜5とクリアー塗膜6で構成される。第1の光輝塗膜4には第1の光輝性顔料2及び光拡散剤7が含まれ、第2の光輝塗膜5には第2の光輝性顔料3が含まれている。
本発明の実施形態における塗装物Bは、非透光性の基材1と該基材1の表面に順次積層形成された第1の光輝塗膜4と第2の光輝塗膜5とクリアー塗膜6から構成されている。
また、前記基材1の表面は、金属メッキや金属蒸着によって形成されていてもよく、非透光性の塗膜によって形成されていてもよい。このため、例えば、内部側をガラスやセラミックス、透明樹脂等の透光性材料で構成し、表面のみに非透光性の皮膜や塗膜を形成した基材1を用いても良い。
これら基材1の表面は、塗膜との密着性を確保するために、あらかじめ研磨材等で表面を粗面化してもよく、プライマー層を設けてもよい。
光拡散剤7の添加によって第1の光輝塗膜4中での第1の光輝性顔料2の配向が一定とならず、配向がランダムとなるため、光拡散剤7によってあらゆる方向に反射光が帰るようになり、視角度によらず光輝性を示すことができるようになる。これによって上層の第2の光輝性顔料3との相対的な大きさの差異を鮮明に視認することができ、より立体感を醸し出すことができるようになる。
光拡散剤7の粒径は、第1の光輝塗膜4の乾燥膜厚よりも小さいものが選定され、好ましくは平均粒径1〜10μmのものを使用する。これは、粒径の大きいものを使用すると第一の塗膜表面の平滑性が低下し、最終的に得られる塗膜の光沢及び平滑性が損なわれ、高級感を感じにくくなるためである。逆に1μm未満のものを使用すると、光輝性顔料の配向が変化しにくくまた散乱効率の低下によって、結果として光輝感が得られにくくなる。添加量は、塗膜固形分中に0.05〜11質量%含有させる。0.05質量%未満では、光の散乱が弱く第1の光輝性顔料2と第2の光輝性顔料3の光輝感の差を生じにくく、11質量%を超えると塗膜表面の平滑性が低下し、光沢及び平滑性を備えた高級感のある塗膜が得られない。
また、クリアー塗膜6の厚さとしては、乾燥膜厚として5〜50μm程度が好ましい。クリアー塗膜6の厚さが5μm以下では、平滑性が乏しい表面となる問題がある。逆に、クリアー塗膜6の厚さが50μmを超えると、形状物への塗装する場合、塗装直後に液ダレを起こしやすく外観上の問題を発生しやすくなる。
前記熱硬化性樹脂を用いた塗料組成物は、例えば架橋性官能基として水酸基を含有するアクリル系、ウレタン系等の重合体と、イソシアネート基を含有する架橋剤とで構成され、必要に応じて硬化触媒を含有させてもよい。また、必要に応じて有機溶剤または水に溶解または分散させて用いることができ、消泡剤、レベリング剤、タレ止め剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、光の透過性を失わない程度の顔料や染料等を配合することもできる。
光輝性顔料2、3には、平均粒径10〜150μmのものを用い、厚さは0.1〜5μmのものを用いる。
(基材の作製)
各実施例において、基材を形成する成形材料にはSMC(シートモールディングコンパウンド)を用いた。SMCは、スチレンに溶解させて不飽和ポリエステル樹脂サンドーマ9415(DICマテリアル株式会社製、商品名)85質量部(スチレン60質量部%含有)及びスチレンに溶解したポリスチレン15質量部(スチレン60質量部%含有)の混合物100質量部に対し、有機化酸化物パーキュアHI(日油株式会社製、商品名)1.0質量部、重合禁止剤パラベンゾキノン0.77質量部、離型剤のステアリン酸亜鉛2.5質量部、濃グレー色トナー3.0質量部、及び増粘剤の酸化マグネシウム2.0質量部、充填材として炭酸カルシウム150質量部を配合して不飽和ポリエステル樹脂組成物を得た。こうして配合、混練して得られた不飽和ポリエステル樹脂組成物を、ガラス繊維に含浸させ、SMCを作製した。
各塗膜を形成するための塗料としては、2液硬化型の有機溶剤系クリアー塗料である公進ケミカル株式会社製ハルスハイコートHHT9を用い、主剤は水酸基含有アクリル樹脂、架橋剤はイソシアネート系化合物で構成され、希釈溶剤として酢酸ブチルを使用した。
塗料の調合は、主剤100質量部に対し、架橋剤15質量部、酢酸ブチル30質量部の割合で混合、攪拌してクリアー塗膜形成用塗料を作製した。
上記クリアー塗膜形成用塗料に、第2の光輝性顔料として日本板硝子製のガラスフレークに銀コーティングを施したメタシャイン2080PS(平均粒径80μm、基材厚み1μm)またはメタシャイン5150PS(平均粒径150μm、基材厚み5μm)、第1の光輝性顔料としてメタシャイン1030PS(平均粒径30μm、基材厚み1μm)をそれぞれ所定の配合量を混合、攪拌して光輝性塗料を作製した。
また、第1の光輝塗膜に含有される光拡散剤としては、積水化成品工業製の架橋ポリメタクリル酸メチルの真球状微粒子MBX−5(平均粒径5μm)、MBX−30(平均粒径30μm)を用いた。
前記クリアー塗膜形成用塗料に第1の光輝性顔料として前記メタシャイン1030PSを0.015質量部添加(樹脂塗膜固形分中に0.04質量%)、光拡散剤として前記MBX−5を1質量部添加(樹脂塗膜固形分中に2.5質量%)して作製した第1の光輝性塗料を、基材表面に硬化塗膜として20〜30μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置し、第1の光輝塗膜4を得た。次に、前記クリアー塗膜形成用塗料に第2の光輝性顔料として前記メタシャイン2080PSを0.015質量部添加(樹脂塗膜固形分中に0.04質量%)して作製した第2の光輝性塗料を、前記第1の光輝塗膜4の表面に硬化塗膜として20〜30μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置し、第2の光輝塗膜5を得た。
さらに、クリアー塗膜形成用クリアー塗料を前記第2の光輝塗膜5の表面に硬化塗膜として30〜40μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置後、熱風式乾燥にて100℃60分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化させて3コート1ベーク方式で塗装物を得た。
前記実施例1の第1の光輝塗膜4を形成させるための光輝性塗料に光拡散剤として前記MBX−5を4.5質量部添加(樹脂塗膜固形分中に10.3質量%)して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
前記実施例1の第1の光輝塗膜4を形成させるための光輝性塗料に光拡散剤として前記MBX−5を0.025質量部添加(樹脂塗膜固形分中に0.06質量%)して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
前記実施例1の第2の光輝性顔料として前記メタシャイン5150PSを0.015質量部添加(樹脂塗膜固形分中に0.04質量%)して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
塗装を実施しないSMC成形品を評価板として使用した。
SMC成形品の基材表面に、前記クリアー塗膜形成用塗料に1番目の光輝性顔料としてメタシャイン2080PSを0.015質量部(樹脂塗膜固形分中に0.04質量%)と、2番目の光輝性顔料としてメタシャイン1030PSを0.015質量部(樹脂塗膜固形分中に0.04質量%)添加して作製した第1の光輝性塗料を、基材表面に硬化塗膜として20〜30μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置し、光輝塗膜を得た。
次に、クリアー塗膜形成用塗料を前記光輝塗膜の表面に硬化塗膜として30〜40μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置後、熱風式乾燥にて100℃60分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化させて2コート1ベーク方式で塗装物を得た。
前記実施例1の第1の光輝塗膜4を形成させるための光輝性塗料に光拡散剤を添加しないこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
比較例3の第1の光輝塗膜4を形成させるための光輝性顔料としてメタシャイン2080PS(平均粒径80μm、基材厚み1μm)を用い、第2の光輝塗膜5を形成させるための光輝性顔料としてメタシャイン1030PS(平均粒径30μm、基材厚み1μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
前記クリアー塗膜形成用塗料を、基材表面に硬化塗膜として20〜30μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置し、クリアー塗膜を得た。次に、前記クリアー塗膜形成用塗料に光輝性顔料として前記メタシャイン2080PS(平均粒径80μm、基材厚み1μm)を0.015質量部(樹脂塗膜固形分中に0.04質量%)と、前記メタシャイン1030PS(平均粒径30μm、基材厚み1μm)を0.015質量部(樹脂塗膜固形分中に0.04質量%)添加して作製した光輝性塗料を、前記クリアー塗膜の表面に硬化塗膜として20〜30μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置して第1の光輝塗膜を得た。
さらにクリアー塗膜形成用塗料を前記光輝塗膜の表面に硬化塗膜として30〜40μmとなるように塗装し、その後室温にて15分間放置後、熱風式乾燥にて100℃60分間加熱し、複層塗膜を同時に乾燥硬化させて3コート1ベーク方式で塗装物を得た。
前記実施例1の光拡散剤を第1の光輝塗膜ではなく第2の光輝塗膜5に添加して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
前記実施例1の第1の光輝塗膜4を形成させるための光輝性塗料に光拡散剤としてMBX−5を7質量部添加(樹脂塗膜固形分中に15質量%)して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
前記実施例1の第1の光輝塗膜4を形成させるための光輝性塗料に光拡散剤としてMBX−5を0.01質量部添加(樹脂塗膜固形分中に0.03質量%)して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
前記実施例1の第1の光輝塗膜4を形成させるための光輝性塗料に光拡散剤としてMBX−30を4.5質量部添加(樹脂塗膜固形分中に10.3質量%)して作製したこと以外は、実施例1と同様の手順で塗装物を得た。
(鏡面光沢値の測定)
塗装物の表面を、ハンディ光沢計IG−331(堀場製作所製、商品名)を使用して、60度と20度鏡面光沢値を測定した。判定は、クリアー塗膜のみを付与した場合の光沢度値(60度:88、20度:81)に対し、同等のものを「○」、10%以上低下したものを「×」とした。
屋内にて蛍光灯より2m真下に評価板を載置し、塗膜を500mm上方の真上から斜め15度及び45度に傾いた位置より目視観察し立体感を以下に示す3段階で評価した。
判定は、15度の測定結果と45度の測定結果の合計点が6点を「○」、それ以外を「×」とした。
3:光輝感の高いものと光輝感の低いものが混在しかつ粒径の異なる光輝材を確認することができ、立体感を示す。
2:粒径の異なる光輝材を確認することが難しいもしくは光輝感の差が少ない。
1:光輝感の差異を感じにくいもしくは光輝感がない。
比較例1のように塗膜を有していないSMC成形品からなる基材では光沢度はあるものの立体感には乏しい結果となった。
比較例2のように基材表面から第1の光輝性顔料と第2の光輝性顔料を含む光輝性塗膜、クリアー塗膜の順に塗膜を形成させた仕様では、光沢度はあるものの、光輝性顔料が宙に浮いたような感覚が得られず立体感に乏しい。
また、比較例5のように基材表面からクリアー塗膜、平均粒径の異なる2種類の光輝性顔料を含む光輝性塗膜、クリアー塗膜の順に塗膜を形成させた仕様では、光輝性顔料が同一平面で光輝感を示すため立体感に乏しくなる。
また、比較例7のように光拡散剤の添加量を増加させた結果、表面の平滑性が低下し光沢度が低下した。逆に比較例8のように光拡散剤の添加量を減少させると、その添加効果がなくなり立体感に乏しくなった。
Claims (9)
- 第1の光輝性顔料を含有する第1の光輝塗膜と、第2の光輝性顔料を含有する第2の光輝塗膜と、クリアー塗膜とを、順次積層形成する塗膜の形成方法において、
前記第1の光輝性顔料の平均粒径に対して、前記第2の光輝性顔料の平均粒径を相対的に大きくするととともに、前記第1の光輝塗膜に光拡散剤を含有させることを特徴とする塗膜の形成方法。 - 非透光性の基材の表面に前記第1の光輝塗膜と前記第2の光輝塗膜と前記クリアー塗膜を順次積層形成することを特徴とする請求項1に記載の塗膜の形成方法。
- 前記光拡散剤を前記第1の光塗膜に0.05〜11質量%含有させることを特徴とする請求項1または請求項2記載の塗膜の形成方法。
- 第1の光輝性顔料を含有する第1の光輝塗膜と、この第1の光輝塗膜の上に形成されて第2の光輝性顔料を含有する第2の光輝塗膜と、この第2の光輝塗膜の上に形成されたクリアー塗膜とを具備し、前記第1の光輝性顔料の平均粒径に対して、前記第2の光輝性顔料の平均粒径が相対的に大きくされ、前記第1の光輝塗膜に光拡散剤が含有されたことを特徴とする塗膜。
- 非透光性の基材の表面に、前記第1の光輝塗膜と第2の光輝塗膜と前記クリアー塗膜が塗布されたことを特徴とする請求項4に記載の塗膜。
- 前記光拡散剤が前記第1の光塗膜に0.05〜11質量%含有されたことを特徴とする請求項4または請求項5に記載の塗膜。
- 非透光性の基材の表面に第1の光輝性顔料を含有する第1の光輝塗膜と、この第1の光輝塗膜の上に形成されて第2の光輝性顔料を含有する第2の光輝塗膜と、この第2の光輝塗膜の上に形成されたクリアー塗膜とを具備し、前記第1の光輝性顔料の平均粒径に対して、前記第2の光輝性顔料の平均粒径が相対的に大きくされ、前記第1の光輝塗膜に光拡散剤が含有されたことを特徴とする塗装物。
- 非透光性の基材の表面に、前記第1の光輝塗膜と第2の光輝塗膜と前記クリアー塗膜が塗布されたことを特徴とする請求項7に記載の塗装物。
- 前記光拡散剤が前記第1の光塗膜に0.05〜11質量%含有されたことを特徴とする請求項7または請求項8に記載の塗装物。
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