JP2018131552A - ビスフェノールaを基本骨格とする樹脂の製造方法 - Google Patents

ビスフェノールaを基本骨格とする樹脂の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の性能への影響を抑制した上で、ビスフェノールAの含有量を十分に低減することができる、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法を提供する。【解決手段】ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、前記樹脂およびビスフェノールAの良溶媒と前記樹脂の貧溶媒とを混合した混合溶媒と、前記樹脂と、を混合して、樹脂に含まれる残留ビスフェノールAを混合溶媒中に抽出分離する抽出分離工程を含む、方法である。【選択図】なし

Description

本発明は、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法に関する。
血液透析等で用いられる透析器は、例えば、中空糸等の半透膜が筒状等の樹脂ケースに1万本程度装填された機器である。半透膜の素材としては、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂等が用いられ、樹脂ケースの素材としては、ポリカーボネート樹脂等が用いられる。
ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂等は、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂である。例えば、ポリアリレート樹脂は、ビスフェノールAとフタル酸とを界面重合等によりポリマ化したものである。これらの樹脂には、原材料のビスフェノールAが未反応で残留することがあり、残留するビスフェノールAの量を低減することが求められている。
ポリアリレート樹脂としては、例えば、特許文献1には、2価の芳香族カルボン酸ハライドとビフェニル構造およびビスフェノール構造を含んでなる2価フェノールとを界面重縮合反応させ、生成した特定の構造のポリアリレートにおいて、2価フェノールの酸化キノン体の含有量が10ppm以下であるポリアリレートが記載されている。そして特許文献1には、そのポリアリレートの製造方法として、残留する触媒や着色物質が少なく、透明性に優れた純度の高いポリアリレートを得るために、粒子状のポリアリレートをポリアリレートに対して200〜500質量%の有機溶剤で洗浄した後、撹拌を停止する前に、有機溶剤に対して3〜10質量%の水を添加することが記載され、洗浄するための有機溶剤がアセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトンであることが記載されている。
特開2008−239692号公報
しかし、特許文献1の方法では、製造途中で生じる2価フェノールの酸化キノン体の含有量を低減することを対象としており、ビスフェノールAの含有量を十分に低減することができないことが本発明者らの検討により明らかとなった。また、特許文献1の方法では、有機溶剤としてアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルブチルケトンで洗浄した後、撹拌を停止する前に、有機溶剤に対して3〜10質量%の水を添加しており、この方法では、有機溶剤であるアセトン、メチルエチルケトンまたはメチルブチルケトンで洗浄する段階で、ポリアリレート樹脂の樹脂本来の性能に影響を与える可能性がある。
本発明の目的は、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の性能への影響を抑制した上で、ビスフェノールAの含有量を十分に低減することができる、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法を提供することにある。
本発明は、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、前記樹脂およびビスフェノールAの良溶媒と前記樹脂の貧溶媒とを混合した混合溶媒と、前記樹脂と、を混合して、前記樹脂に含まれる残留ビスフェノールAを前記混合溶媒中に抽出分離する抽出分離工程を含む、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法である。
前記ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法において、前記良溶媒がN−メチルピロリドンであり、前記貧溶媒が水であることが好ましい。
前記ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法において、前記抽出分離における前記混合溶媒の液温は、50℃以上であり、前記混合溶媒中の前記N−メチルピロリドンの含有量は、80容量%以上90容量%未満であることが好ましい。
前記ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法において、前記抽出分離工程により得られた精製樹脂を前記良溶媒に7.5重量%溶解させた溶解液中のビスフェノールAの含有量が1ppm以下であることが好ましい。
前記ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法において、前記抽出分離工程の前の樹脂の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)に対する、前記抽出分離工程の後の精製樹脂の分散度の比は、0.8〜1.0の範囲であることが好ましい。
前記ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法において、前記ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂は、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、またはポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
本発明により、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の性能への影響を抑制した上で、ビスフェノールAの含有量を十分に低減することができる。
実施例1における、50℃、24時間条件で抽出したときの抽出に用いた混合溶媒のNMP濃度(容量%)に対する、抽出後のろ液中およびドープ中のビスフェノールA(BPA)濃度(ppm)を示すグラフである。 実施例2における、60℃、24時間条件で抽出したときの抽出に用いた混合溶媒のNMP濃度(容量%)に対する、抽出後のろ液中およびドープ中のビスフェノールA(BPA)濃度(ppm)を示すグラフである。 比較例1における、室温(20℃)、96時間条件で抽出したときの抽出に用いた混合溶媒のアセトン濃度(容量%)に対する、抽出後のろ液中およびドープ中のビスフェノールA(BPA)濃度(ppm)を示すグラフである。 実施例7における、各有機溶剤を用い、30℃、72時間条件で抽出したときのドープ中のビスフェノールA(BPA)濃度(ppm)を示すグラフである。
本発明の実施の形態について以下説明する。本実施形態は本発明を実施する一例であって、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
本発明の実施形態に係るビスフェノールA(BPA)を基本骨格とする樹脂(以下、単に「ビスフェノールA系樹脂」と呼ぶ場合がある。)の製造方法は、ビスフェノールA系樹脂およびビスフェノールAの良溶媒とビスフェノールA系樹脂の貧溶媒とを混合した混合溶媒と、ビスフェノールA系樹脂と、を混合して、ビスフェノールA系樹脂に含まれる残留ビスフェノールAを混合溶媒中に抽出分離する抽出分離工程を含む。
この方法は、精製対象樹脂であるポリアリレート樹脂(PAR)等のビスフェノールA系樹脂から除去対象物質であるビスフェノールAを抽出除去する方法であり、ビスフェノールA系樹脂中に残留するビスフェノールAを効率よく除去することが可能となる。精製対象樹脂と除去対象物質に対する良溶媒と、精製対象樹脂に対する貧溶媒と、を混合して、精製対象樹脂と除去対象物質に対する溶解度がコントロールされた混合溶媒を抽出に用いる。抽出のときに混合溶媒の温度を上げることで抽出能力を上げ、効率化を図ることができる。精製対象樹脂に対する溶解度がコントロールされた混合溶媒を抽出に用いることで、精製対象樹脂であるビスフェノールA系樹脂をほとんど溶解せずに、ビスフェノールA系樹脂の本来の性質をほとんど損なうことなく、残留モノマ(ビスフェノールA)を選択的に除去することができる。
本実施形態に係るビスフェノールA系樹脂の製造方法で得られる精製ビスフェノールA系樹脂を用いることにより、ビスフェノールA系樹脂を原材料とする中間製品や最終製品から溶出するビスフェノールAの量を低減することができる。例えば、ポリアリレート樹脂やポリスルホン樹脂を原材料とする中空糸等の半透膜等から溶出するビスフェノールAの量を低減することができ、ポリカーボネート樹脂を原材料とする透析器の樹脂ケース等から溶出するビスフェノールAの量を低減することができる。
ビスフェノールA(下記参照)を基本骨格とする樹脂(ビスフェノールA系樹脂)としては、モノマとして少なくともビスフェノールAと他のモノマとを用いた共重合体である。
ビスフェノールA骨格
ビスフェノールA系樹脂としては、例えば、以下のポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
ポリアリレート樹脂(PAR)は、例えば、ビスフェノールAとフタル酸とを界面重合等によりポリマ化したものである。
ポリアリレート樹脂(PAR)
ポリスルホン樹脂(PS)は、例えば、ビスフェノールAとジフェニルスルホンとを重合等によりポリマ化したものである。
ポリスルホン樹脂(PS)
ポリカーボネート樹脂(PC)は、例えば、ビスフェノールAとホスゲンまたはジフェニルカーボネートとを重合等によりポリマ化したものである。
ポリカーボネート樹脂(PC)
「良溶媒」とは、抽出分離の温度において精製対象樹脂であるビスフェノールA系樹脂および除去対象物質であるビスフェノールAに対する溶解度が高い溶媒のことをいい、具体的には、ビスフェノールA系樹脂を15重量%添加したときに全てのビスフェノールA系樹脂が溶解し、かつビスフェノールAが十分に溶解する(例えば、120ppm以上)溶媒のことをいう。また、抽出分離の操作におけるハンドリング性等の点から、揮発性が低い溶媒が好ましい。ポリアリレート樹脂およびビスフェノールAの良溶媒としては、例えば、N−メチルピロリドン(NMP)等が挙げられる。ポリスルホン樹脂およびビスフェノールAの良溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAC)等が挙げられる。ポリカーボネート樹脂およびビスフェノールAの良溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
良溶媒としては、得られる精製ビスフェノールA系樹脂の用途で用いられる溶媒と同じ種類のものを用いれば、精製ビスフェノールA系樹脂にその良溶媒が残留したとしても、その用途における悪影響を低減することができる。例えば、精製ポリアリレート樹脂からドープ(紡糸原液)を調製し、ドープから紡糸して中空糸膜を製造する場合、そのドープ調製に用いられるN−メチルピロリドンをビスフェノールA系樹脂の良溶媒として用いることにより、精製ポリアリレート樹脂にN−メチルピロリドンが残留したとしても、得られた中空糸膜における悪影響を低減することができる。
「貧溶媒」とは、抽出分離の温度において精製対象樹脂であるビスフェノールA系樹脂に対する溶解度が低い溶媒であり、ビスフェノールA系樹脂に対して、全く影響を与えないあるいはほとんど影響を与えない溶媒のことをいう。ビスフェノールA系樹脂の貧溶媒としては、例えば、水、エタノール等が挙げられ、不燃性である等の点から、水が好ましい。N−メチルピロリドンのように有機溶剤が引火点を有していても、貧溶媒として水を混合してN−メチルピロリドンの濃度を85容量%以下とすることで、引火点がなくなるという利点がある。
用いる良溶媒または貧溶媒の再生蒸留塔等の再生設備を用いれば、使用量に応じたエネルギーコストは増えるが、溶媒の廃棄量が増えて、環境負荷が上がるといったデメリットはほとんどない。
本実施形態に係るビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法の具体的な方法は例えば、以下の通りである。
ビスフェノールA系樹脂およびビスフェノールAの良溶媒と、ビスフェノールA系樹脂の貧溶媒と、の所定の混合比率の混合溶媒中で、所定の温度で所定の時間、例えばフレーク状の所定量のビスフェノールA系樹脂を撹拌子等の撹拌装置等を用いて、所定の撹拌強度で混合撹拌して抽出を行う。抽出した後、ろ過等の固液分離操作によりビスフェノールA系樹脂とろ液とに分離する。ビスフェノールA系樹脂は、水洗等により洗浄し、乾燥装置等を用いて所定の温度で所定の時間乾燥すればよい。
精製対象樹脂であるビスフェノールA系樹脂に対する混合溶媒の量は、ビスフェノールA系樹脂が浸る程度であって、ビスフェノールAを抽出可能な量であればよく、また、撹拌により抽出する場合には撹拌可能な量であればよく、特に制限はない。
抽出分離における混合溶媒の液温は、精製対象樹脂であるビスフェノールA系樹脂が溶解せず、除去対象物質であるビスフェノールAが十分に溶解するような温度を選択すればよく、特に制限はない。また、混合溶媒における良溶媒の割合は、精製対象樹脂であるビスフェノールA系樹脂が溶解せず、除去対象物質であるビスフェノールAが十分に溶解するような比率を選択すればよく、特に制限はない。ビスフェノールA系樹脂がポリアリレート樹脂であり、良溶媒がN−メチルピロリドンであり、貧溶媒が水である場合、抽出分離における混合溶媒の液温は、例えば、50℃以上80℃以下であり、好ましくは60℃以上80℃以下である。混合溶媒中のN−メチルピロリドンの含有量は、例えば、80容量%以上90容量%未満であり、好ましくは80容量%以上85容量%以下である。
抽出分離の時間は、除去対象物質であるビスフェノールAが十分に溶解するような温度を選択すればよく、特に制限はない。抽出分離の時間は、例えば、60分〜24時間である。
抽出分離は、除去対象物質であるビスフェノールAが十分に溶解するような抽出分離方法を選択すればよく、特に制限はない。抽出分離方法としては、例えば、撹拌、浸漬、超音波照射等が挙げられ、操作が簡易である等の点から、撹拌が好ましい。撹拌方法としては、撹拌子を用いる撹拌、撹拌羽根を用いる撹拌等が挙げられる。撹拌強度は、除去対象物質であるビスフェノールAが十分に溶解するような撹拌強度を選択すればよく、特に制限はない。
精製対象樹脂であるビスフェノールA系樹脂の形状は、除去対象物質であるビスフェノールAが十分に溶解するような形状を選択すればよく、特に制限はない。ビスフェノールA系樹脂の形状としては、できるだけ表面積が大きくなる形状が好ましく、例えば、粒状、フレーク(薄片)状、パウダー(粉末)状等が挙げられ、表面積を大きくするという観点から、パウダー状、粒状が好ましい。抽出を効率化するため、抽出前に粉砕等の前処理を行ってもよい。
抽出後の固液分離、洗浄、乾燥等は公知の方法により行えばよい。
本実施形態に係る樹脂の製造方法において、抽出分離工程により得られた精製ビスフェノールA系樹脂を良溶媒に7.5重量%溶解させた溶解液中のビスフェノールAの含有量が2ppm以下であることが好ましく、1ppm以下であることがより好ましい。
抽出分離工程により抽出操作を施した精製ビスフェノールA系樹脂において、外観性状、SEM観察(平膜)、凝固価、分子量分布等の樹脂本来の性状が、抽出操作を施していない未抽出ビスフェノールA系樹脂に比べてほとんど変わらないことにより、性質が損なわれていないと推定される。特に分子量分布は高分子の性質に大きく関与する部分である。そこで、分子量分布の指標として、抽出分離工程の前の樹脂の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)に対する、抽出分離工程の後の精製樹脂の分散度の比は、0.8〜1.0の範囲であることが好ましく、0.9〜1.0の範囲であることがより好ましい。
凝固価は、良溶媒(例えばNMP)200gにビスフェノールA系樹脂1gを溶解した溶液を50℃に保ち、この溶液を撹拌しながら貧溶媒(例えば水)を溶液中に少量ずつ添加し、この溶液中に樹脂が析出し始める時点(目視により溶液が白濁した時点)における凝固液の添加量(mL)で定義される。
例えば、所定量の乾燥した精製ビスフェノールA系樹脂をN−メチルピロリドン等のドープ溶媒中で溶解して、ドープ(紡糸原液)とすることができる。ドープから紡糸して得られる中空糸膜等の最終製品からのビスフェノールA溶出量が1ppb未満であることが好ましい。ドープ中に残留するビスフェノールA濃度を、1ppm以下程度を目標とすれば、最終製品からのビスフェノールA溶出量を1ppb未満とすることができる。これによりビスフェノールA溶出量が低減された医療機器等を提供することができる。
以下、実施例および比較例を挙げ、本発明をより具体的に詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
<実施例1>
良溶媒としてN−メチルピロリドン(NMP)と貧溶媒として水との混合溶媒200mL中で、50℃で24時間、粒状(大きさ:平均粒径2μm)のポリアリレート樹脂(PAR)15.5gを撹拌子(大きさ30mm×10mm)を用いて、150rpmで混合撹拌して抽出を行った。混合溶媒中のNMPの比率を、77.5容量%、80容量%、82.5容量%、85容量%、90容量%として、それぞれについて抽出実験を行った。抽出した後、ろ過によりポリアリレート樹脂とろ液とに分離した。ポリアリレート樹脂は、水洗(200mL×5回)し、乾燥装置中130℃で24時間乾燥した。混合溶媒中のNMPの比率が90容量%の場合はポリアリレート樹脂が一部溶解したので、以降の実験は、それ以外のNMP比率で抽出したポリアリレート樹脂について行った。乾燥したポリアリレート樹脂7.5gを100%NMP85mL中で完全溶解して、ドープ(原液)とした。ポリアリレート樹脂中の残留ビスフェノールAが除去されていれば、ビスフェノールAは上記ろ液中に多く存在し、そうでなければドープ中に多く存在する結果となる。ろ液およびドープ中のビスフェノールAの含有量を、高速液体クロマトグラフィ(島津製作所製、Prominence)を用い、カラム温度:40℃、検出器:UV210nm、サンプル注入量:10μL、移動相:アセトニトリル/0.05%トリフルオロ酢酸(TFA)、流量:0.5mL/minの条件で測定した。
図1に、50℃、24時間条件で抽出したときの抽出に用いた混合溶媒のNMP濃度(容量%)に対する、抽出後のろ液中およびドープ中のビスフェノールA(BPA)濃度(ppm)を示す。77.5容量%NMPの場合、ビスフェノールAの除去が不十分であり、ドープ中に7.6ppmのビスフェノールAが残留していた。一方、85容量%NMPであれば、ビスフェノールA濃度は1.4ppmであり、1ppmの目標値まで低減することができた。ビスフェノールAのマスバランスは概ね一致していた。ろ液中にビスフェノールAが多く存在すれば、ドープ中のビスフェノールA存在量は低くなった。なお、ブランクとして未抽出ポリアリレート樹脂におけるドープ中のビスフェノールAの量を確認したところ、20〜30ppmであった。
抽出前後のポリアリレート樹脂の数平均分子量Mn、重量平均分子量Mw、Z平均分子量Mz、ピークトップ分子量Mp、および分散度(Mw/Mn)を測定した結果を表1に示す。なお、各分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)装置(GPC装置:オートサンプラ AS−8010(東ソー社製)、ポンプ PU−980(JASCO社製)、カラムオーブン CO−965(JASCO社製)、検出器 RI−71(shodex社製)を使用。解析ソフト:Empower(Water社)を使用。)を用い、カラム温度:40℃、溶離液:クロロホルム、サンプル注入量:100μL、分析時間:30分、標準試料:STANDARD ポリスチレンSM105(shodex社製)の条件で測定した。
表1の結果より、抽出分離前のポリアリレート樹脂の分散度(Mw/Mn)に対する、抽出分離後の精製ポリアリレート樹脂の分散度の比は、0.89,0.97であった。これらの結果より、抽出分離によってポリアリレート樹脂の性能への影響が抑制されていることがわかる。
<実施例2>
抽出のときの溶媒温度を60℃とし、混合溶媒中のNMPの比率を、80容量%、82.5容量%、85容量%とした以外は、実施例1と同様にして抽出実験を行った。
図2に、60℃、24時間条件で抽出したときの抽出に用いた混合溶媒のNMP濃度(容量%)に対する、抽出後のろ液中およびドープ中のビスフェノールA(BPA)濃度(ppm)を示す。
50℃の場合と比べて、低いNMP濃度でもビスフェノールA抽出効率が増大しており、80容量%NMPでも目標値近くまでビスフェノールAを低減できていた。
<実施例3,4>
抽出のときの溶媒温度を70℃(実施例3),80℃(実施例4)とし、混合溶媒中のNMPの比率を、80容量%、82.5容量%、85容量%とした以外は、実施例1と同様にして抽出実験を行った。結果を、実施例1,2の結果と合わせて表2に示す。
溶媒温度70℃,80℃では、溶媒温度60℃に比べて、低いNMP濃度でもビスフェノールA抽出効率が増大しており、80容量%NMPでも目標値までビスフェノールAを低減できていた。
<実施例5および比較例1>
抽出のときの抽出時間を24時間とし、溶媒温度を60℃とし、混合溶媒中のNMPの比率を80容量%として、実施例2と同様にして抽出実験を行った(実施例5)。溶媒としてNMPの代わりにアセトンを用い、抽出のときの抽出時間を96時間とし、溶媒温度を室温(20℃)とし、混合溶媒中のアセトンの比率を80容量%とした以外は、実施例2と同様にして抽出実験を行った(比較例1)。
図3に、室温(20℃)、96時間条件で抽出したときの抽出に用いた混合溶媒のアセトン濃度(容量%)に対する、抽出後のろ液中およびドープ中のビスフェノールA(BPA)濃度(ppm)を示す。
NMPの代わりにアセトンを用いた場合、ビスフェノールAの除去が不十分であり、ドープ中に4ppmのビスフェノールAが残留していた。一方、実施例5では、ドープ中のビスフェノールAの残留量はわずかに1.4ppmであった。
<実施例6>
ドープから紡糸して製造する中空糸膜を概ね再現した平膜を用いて、以下の確認実験を行った。中空糸膜からのビスフェノールAの溶出を想定して、ビスフェノールA抽出済の精製ポリアリレート樹脂のドープを用いて作製した平膜からのビスフェノールA溶出量を確認した。
ブランクとして未抽出ポリアリレート樹脂7.5g、または上記実施例2(混合溶媒中のNMPの比率:80容量%)で得られた精製ポリアリレート樹脂7.5gを100%NMP 85mL中で完全溶解して、ドープ(原液)とした。平板にドープを滴下し、ガラス棒で広げることで平膜を作製後、概ね均等の大きさになるよう切断し、6.4g(乾燥後総重量)秤量した。秤量した平膜を、37℃、17.2容量%エタノール水溶液2L中で撹拌しながら抽出を行った。撹拌を始めてから、4時間後、24時間後にエタノール水溶液を採取し、ガスクロマトグラフィ質量分析装置(島津製作所製、GC−2010型)を用い、溶媒抽出−TMS誘導体化−GC/MS法で、ビスフェノールAの定量を行った。なお、37℃、17.2容量%エタノール水溶液は、ヒト血液と同等の抽出力を持っていると考えられている。結果を表3に示す。
ブランクと比して、精製ポリアリレート樹脂では、約20分の1までビスフェノールA溶出量が低下していた。また、平膜の外表面のSEM観察(2000倍)を行ったところ、ブランクに比べて大きな変化はなく、抽出分離工程による樹脂の性能への影響が抑制されていると推測される。
<実施例7>
NMP以外の有機溶剤を用いてポリアリレート樹脂からビスフェノールAの抽出効果の高い有機溶剤を検討した。
有機溶剤として、エタノール、アセトン、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルアセトアミド(DMAC)を用いた。各有機溶剤(100%濃度)200mLにポリアリレート樹脂15.5gを加え、40rpm、30℃で72時間振とう混合し、ビスフェノールAを抽出除去した。72時間経過後、ろ過によりポリアリレート樹脂とろ液とに分離した。ポリアリレート樹脂は、水洗(200mL×2分振とう×5回)し、24時間、エアー乾燥した。
乾燥した抽出済ポリアリレート樹脂7.5gを100%NMP、85mL中で完全溶解して、ドープ(原液)とした。実施例1と同様にしてHPLC分析を実施して、ドープ中に存在するビスフェノールAを定量した。結果を図4に示す。
DMACはポリアリレート樹脂が完全に溶解したので評価を行わなかったが、貧溶媒を混合すればNMPと同様の結果になると考えられる。アセトニトリル、DMSOについても同様である。アセトンは、揮発性が高く、ハンドリング面で適さないと考えられる。エタノールはビスフェノールAに対して貧溶媒と考えられるので、良溶媒としての有機溶剤として適さないと考えられる。

Claims (6)

  1. ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、
    前記樹脂およびビスフェノールAの良溶媒と前記樹脂の貧溶媒とを混合した混合溶媒と、前記樹脂と、を混合して、前記樹脂に含まれる残留ビスフェノールAを前記混合溶媒中に抽出分離する抽出分離工程を含むことを特徴とする、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法。
  2. 請求項1に記載のビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、
    前記良溶媒がN−メチルピロリドンであり、前記貧溶媒が水であることを特徴とする、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法。
  3. 請求項2に記載のビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、
    前記抽出分離における前記混合溶媒の液温は、50℃以上であり、前記混合溶媒中の前記N−メチルピロリドンの含有量は、80容量%以上90容量%未満であることを特徴とする、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項に記載のビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、
    前記抽出分離工程により得られた精製樹脂を前記良溶媒に7.5重量%溶解させた溶解液中のビスフェノールAの含有量が1ppm以下であることを特徴とする、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載のビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、
    前記抽出分離工程の前の樹脂の分散度(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)に対する、前記抽出分離工程の後の精製樹脂の分散度の比は、0.8〜1.0の範囲であることを特徴とする、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか1項に記載のビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法であって、
    前記ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂は、ポリアリレート樹脂、ポリスルホン樹脂、またはポリカーボネート樹脂であることを特徴とする、ビスフェノールAを基本骨格とする樹脂の製造方法。
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