JP2018127708A - 鋳造用アルミニウム合金、アルミニウム合金鋳物製品およびアルミニウム合金鋳物製品の製造方法 - Google Patents

鋳造用アルミニウム合金、アルミニウム合金鋳物製品およびアルミニウム合金鋳物製品の製造方法 Download PDF

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【課題】熱処理をしない鋳放しのままで使用できる鋳造用アルミニウム合金、アルミニウム合金鋳物製品およびその製造方法の提供。【解決手段】質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなる鋳造用アルミニウム合金およびその製造方法。更にSi:0.15質量%以下、Fe:0.25質量%以下含有することが好ましい、鋳造用アルミニウム合金。好ましくは、Al−Mg系晶出物及びAl−Mn系晶出物からなる晶出物の平均粒径が30μm以下で面積率が5%以下であり、耐力が150MPa以上で伸びが20%以上であるアルミニウム鋳造鋳物製品。【選択図】なし

Description

本発明は鋳造用アルミニウム合金、アルミニウム合金鋳物製品およびアルミニウム合金鋳物製品の製造方法に関するものである。
鋳造用アルミニウム合金の中で、例えばJISに定められているAC4CHやADC12等の鋳造性が良好なAl−Si系合金が多く用いられるが、脆い共晶Siが晶出するため、特に延性が低い。そのため、一部のAl−Si系合金では、熱処理により共晶Siを微細粒状化して延性を向上させている。しかし、熱処理により消費エネルギーが増加しコストが上昇する他、薄肉製品では熱歪が発生したり、製品中に巻き込んだガス等によるフクレが生じるという問題も抱えている。
一方、例えばJISに定められているAC7AやADC5のようなAl−Mg系合金は、熱処理を行わなくとも優れた延性を備えているが、強度は十分でない。また鋳造性が悪いといった欠点がある。ここで鋳造性が悪いとは、液相線温度が高く、比熱および凝固潜熱が小さいため凝固時間が短く、溶湯の流動性に劣るということ、そしてAl−Si系合金に比べ凝固収縮量が多い、つまり引け巣が発生しやすく、鋳物表面に凝固割れが発生しやすいことである。
現在のJISでは定められていないが、過去にはMgを10質量%程度含有するAC7Bが制定されていた。この合金はβ相(AlMg)を固溶させるために溶体化熱処理を施すことで、Mgを4質量%程度を含むAC7Aよりも優れた強度および延性を得ることができた。しかしながら、この合金は溶体化熱処理後の自然時効の進行による経年変化のため、延性が急激に低下する。さらに、応力腐食割れが発生しやすいという問題を抱えていた。このような経緯もあり、AC7Bはほとんど生産されず1992年改正のJISから削除された。
ところで、地球環境保全の観点からあらゆる産業に対して省資源、省エネルギー化が求められ、例えば自動車産業では低燃費化、リサイクルへの対応等、多くの課題を抱えている。その中でも、特に地球温暖化に直結する排気ガスの削減は大きな課題であり、低燃費化つまり燃費向上を実現する技術開発に注力している。燃費向上を実現する大きな要素の一つとして、軽量化が挙げられる。従来主に使用されてきた鉄系材料を、より軽量な材料としてアルミニウム合金、マグネシウム合金、炭素材料等へ転換するための研究が活発に行われている。中でもアルミニウム合金は、軽量性のみならず、強度や加工性、耐食性、熱伝導性ならびにリサイクル性の観点から優れており、自動車の軽量化を促進する材料として期待されている。
自動車材料としてのアルミニウム合金は、既にエンジン、ホイールならびに熱交換器等に広く使用されているが、高い強度に加えて衝撃吸収性が求められる車体構造部材への適用は、AA規格のA365合金等の一部のダイカスト用アルミニウム合金に限られている。非特許文献1を参考にすると、耐力150MPa以上、伸び20%以上が目標特性となるが、前述したAC7AやAC7Bのような実用合金では目標特性を達成できておらず、さらに実用に供する鋳物用アルミニウム合金は良好な鋳造性が求められる。すなわち、加圧を必要としない鋳造方法であっても、熱処理をしない鋳放しのままで目標特性を実現できる鋳物用アルミニウム合金はない。
熱処理をしない鋳放しのままで使用できる高強度・高靱性アルミニウム合金の提案がなされている(特許文献1)。特許文献1に提案されたアルミニウム合金は、重量%でMn:0.5〜2.5%、Mg:2.5〜7%と、少なくともTi:0.15〜0.5%、Zr:0.15〜0.5%、B:0.01〜0.1%のうちの一種、および少なくともSb:0.01〜0.5%、Bi:0.01〜0.5%のうち一種を含み、残部が実質的にアルミニウムとなるように原材料を溶解し、前記原料の溶湯を0.5℃/秒以上の冷却速度で凝固させることを特徴とする高強度・高靱性アルミニウム合金部材の製造方法、およびこれに用いる鋳造用アルミニウム合金である。この合金は、引張強さが30kgf/mm以上、0.2%耐力が15kgf/mm以上、伸びが20%以上となる高強度で高靱性のアルミニウム合金部材を得ることができるとしている。
しかしながら、特許文献1に提案された高強度・高靱性アルミニウム合金部材の製造方法、およびこれに用いる鋳造用アルミニウム合金では、重量%でMg:4.4〜4.7%の範囲における実施例しか示していない。Mg含有量が5%を超えるとAl−Mg系の粗大な晶出物が晶出するようになり、伸びを著しく低下させることが知られているが、特許文献1にはその解決方法が示されていない。また、該引張特性を得るためには、実質的に冷却速度を5℃/秒以上とする必要があり、5℃/秒未満の冷却速度で凝固させた場合、伸びが20%を下回ることが実施例により示されている。
鋳造の冷却速度は、鋳造温度、鋳型材質・温度あるいは鋳物製品の肉厚等により変化するが、一般的には砂型鋳造では0.05〜1℃/秒、重力金型鋳造は1〜5℃/秒、加圧鋳造で1〜10℃/秒、およびダイカスト鋳造では100℃/秒以上になるとされている。特許文献1では、高圧鋳造法と称する加圧鋳造の一種によりアルミニウム合金部材を得ている。一般に、加圧鋳造やダイカスト鋳造は冷却速度が速く微細な凝固組織が得られるので、強度や伸びに優れた鋳物の製造が可能である。しかし、溶湯に高い圧力を作用させ金型に充填するため、金型の精度が厳しく金型費等の設備費が高くなる、空気や酸化物等の介在物を製品中に巻き込み易く、強度や伸びが低下する、等の欠点がある。
渡邉修一郎、「アルミニウム新材料による新たな用途」、素形材、一般社団法人素形材センター、平成21年12月、第50巻、第9号、p.23−29
特開平6−330202号公報
上記の実情を鑑みると、熱処理をしない鋳放しのままで耐力150MPa以上、伸び20%以上を発現するアルミニウム合金、アルミニウム合金鋳物製品および安価な方法で製造できるアルミニウム合金鋳物製品の製造方法の開発が求められている。
本発明者は上述の課題を解決すべく、鋳造用Al−Mg系合金の組成を様々変化させ、処理をしない鋳放しのままで高い伸びを維持しつつ、高い耐力を得る方法に重点を置き研究した。その結果、Mg、Mn、Ti、BおよびZr量を最適化することで、熱処理を行わない鋳放しのままで高い伸びおよび高い耐力を得ることができる鋳造用アルミニウム合金、アルミニウム合金製品およびアルミニウム合金鋳物製品の製造方法を実現するに至った。
本発明の鋳造用アルミニウム合金は、質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなることを特徴とする鋳造用アルミニウム合金である。
また、Al−Mg系晶出物およびAl−Mn系晶出物から成る晶出物の平均サイズが30μm以下であり、面積率が5%以下であることを特徴とする、質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなる鋳造用アルミニウム合金から製造したアルミニウム合金鋳物製品である。
さらに、耐力150MPa以上および伸び20%以上であることを特徴とする、Al−Mg系晶出物の平均サイズが30μm以下であり、この晶出物の面積率が5%以下である質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなる鋳造用アルミニウム合金から製造したアルミニウム合金鋳物製品である。
また、質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部が実質的にアルミニウムから成り、初晶α−Alの2次デンドライトアームスペーシング(DASII)が55μm以下であることを特徴とするアルミニウム合金鋳物製品である。
そして、質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部が実質的にアルミニウムから成る溶湯を金型鋳造で製造することを特徴とするアルミニウム合金鋳物製品の製造方法である。
質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部が実質的にアルミニウムから成る溶湯を重力金型鋳造で製造することを特徴とするアルミニウム合金鋳物製品の製造方法である。
本発明の鋳造用アルミニウム合金を使用することで、熱処理をしない鋳放しのままで耐力150MPa以上、伸び20%以上となるアルミニウム合金鋳物製品を得ることができる。本発明のアルミニウム合金鋳物製品は金型鋳造、特に重力金型鋳造のような比較的設備費が安い製造方法により製造できる。
本発明アルミニウム合金鋳物のミクロ組織を示す図(実施例1) 比較例アルミニウム合金鋳物のミクロ組織を示す図(比較例12)
本発明の鋳造用アルミニウム合金、アルミニウム合金鋳物製品およびアルミニウム合金鋳物製品の製造方法の限定理由を説明する。なお、特に断りの無い限り、各合金元素の含有量は質量%で示す。
本発明の鋳造用アルミニウム合金におけるマグネシウム(Mg)の含有量は5.0〜8.0%である。Mgはアルミニウム中に固溶することで強度および耐力を向上させる。Mg含有量5.0%未満では十分な耐力が得られず、8.0%を超えるとAl−Mg系晶出物が多く晶出するようになり伸びが著しく低下する。この組成範囲では、実用合金のAC7Aより優れAC7Bと同等の流動性を有し、AC7AおよびAC7Bよりも鋳造割れが生じにくい。また、応力腐食割れを防止する観点からも、Mg含有量の上限を8.0%とするのが好ましい。Mg含有量5.0〜8.0%の範囲においては、Al−Mg系晶出物の平均サイズは30μm以下、面積率は5%以下となり、高い伸びを発現する。なお、より高い強度を必要とする場合は、Mg含有量7.0〜8.0%がさらに好ましく、この組成範囲では特に優れた鋳造性を発現する。
Mgの酸化減耗ならびに鋳型との反応を防止するために、ベリリウム(Be)を20〜100ppm添加してよい。
マンガン(Mn)の含有量は0.5〜2.0%である。Mnはアルミニウム中に固溶することで強度および耐力を向上させる。Mn含有量0.5%未満では十分な耐力が得られず、2.0%を超えるとAl−Mn系晶出物のサイズおよび面積率が増加し、伸びを著しく低下させる。
チタン(Ti)の含有量は0.05〜0.25%である。TiとAlの化合物であるAlTiは初晶α−Alの凝固核となり、初晶α−Al結晶粒を微細化することで強度、耐力および伸びを向上させる。Ti含有量が0.05%未満では上述の効果が得られず、0.25%を超えると晶出物が増加し伸びを低下させる。
ホウ素(B)の含有量は0.05〜0.15%である。BはTiと同様に、初晶α−Al結晶粒を微細化する。Bの含有量が0.05%未満では上述の効果が得られず、0.15%を超えると粗大な晶出物が増加し伸びを低下させる。
ジルコニウム(Zr)の含有量は0.05〜0.25%である。Zrは、TiおよびBと同様の効果を有する。Zrの含有量が0.05%未満では上述の効果が得られず、0.25%を超えると粗大な晶出物が増加し伸びを低下させる。
DASIIが大きい、つまり冷却速度が遅いと伸びが大きく低下することが知られている。本発明のアルミニウム合金鋳物製品は上述の合金組成から成り、DASIIは55μm以下である。DASIIが55μm以下では伸びは高く、55μmを超えると伸びは低下する。
本発明のアルミニウム合金鋳物製品の製造方法は、上述の合金組成から成る溶湯を金型鋳造、特に重力金型鋳造のような比較的設備費が安い製造方法により製造できる。
以上のように、本発明の鋳造用アルミニウム合金を使用することで、熱処理をしない鋳放しのままで耐力150MPa以上、伸び20%以上となるアルミニウム合金鋳物製品を得ることができる。本発明のアルミニウム合金鋳物は金型鋳造、特に重力金型鋳造のような比較的設備費が安い製造方法により製造できる。
次に、本発明の詳細を以下の実施例により説明する。なお、以下に示す実施例は本発明の態様についての理解を容易にするためのものであり、これらの実施例に制限されるものではない。
表1に検討した合金の組成を示す。なお、表1に示す元素以外の残部は、実質的にアルミニウムと不可避不純物から成る。例えば、全ての実施例試料のSi含有量は0.05〜0.15%、Fe含有量は0.05〜0.25%であり、いずれもAC7Aの規格値を満たしていることを確認した。その他の元素も同様に、AC7Aの規格値を満たしていることを確認した。表1に示したアルミニウム合金を溶製し、重力金型法で鋳造して供試材採取用鋳物を作製した。
合金の溶製および鋳造方法を以下に説明する。黒鉛製の坩堝に原材料として工業用純アルミニウム(純度99.7%以上)を装入し、大気雰囲気において電気炉を使用して溶解した。純アルミニウムが溶け落ちた後、所望の組成となるよう質量を調整したマンガン母合金(Al−75%Mn)、ジルコニウム母合金(Al−15%Zr)、チタン母合金(Al−10%Ti)、チタン−ホウ素母合金(Al−5%Ti−1%B)および金属マグネシウムを添加した。得られた溶湯中の水素ガスおよび介在物除去を目的としてアルゴンガスバブリングを行った後、溶湯を鎮静して溶湯表面の滓を取り除き、鋳造に供した。鋳造温度735℃、供試材採取用鋳型はJIS:H5202の図2に基づいた舟金型であり、型温度は常温とした。その後、自然空冷させ舟金型から取り出し供試材採取用鋳物を得た。
上記のように得られた供試材採取用鋳物から、JIS4号引張試験片を作製した。また、同鋳物からミクロ組織観察用試料を切出した。表2に実施例および比較例の引張試験結果およびミクロ組織観察結果を示す。観察視野に存在する晶出物の長径を手動で指定し、その長さを画像処理ソフトで測定して晶出物サイズとした。さらに、晶出物の外郭を手動で指定し、その内部面積を画像処理ソフトにて算出して晶出物面積とした。観察視野に存在する晶出物面積を合計し、その値を観察視野面積で除した値を面積率とした。DASIIは、「デンドライトアームスペーシング測定手順」(鋳造・凝固部会、軽金属学会、昭和63年1月、第38巻、第1号、p.54−60)に記載の交線法に基づき測定した。
実施例試料1〜8はいずれも耐力150MPa以上かつ伸び20%以上となっていた。
実施例試料1〜8の代表例として、図1に実施例試料1のアルミニウム合金鋳物のミクロ組織を示す。Al−Mg系晶出物のAlMgおよびAl−Mn系晶出物であるAlMnが認められた。晶出物の平均サイズは30μm以下、かつ面積率は5%以下であった。DASIIは55μm以下であった。
Mn含有量が少ない比較例試料9、10および15は耐力が150MPaに到達しなかった。Ti、BおよびZr含有量が少ない比較例試料11〜13は、初晶α−Al結晶粒を微細化できず、DASIIが56μm以上となり、耐力は150MPaに到達せず、伸びも20%を下回った。Mn含有量が多い試料14および16は伸びが20%に到達しなかった。図2に実施例試料16のアルミニウム合金鋳物のミクロ組織を示す。Al−Mg系晶出物のAlMgが粒界に沿って晶出していることが認められた。晶出物の平均サイズは30μmより大きく、かつ面積率が5%を越えた。このように、Mn、Ti、BおよびZrの少なくとも一つが本発明の組成範囲から外れていると、耐力または伸びの少なくともいずれか一方が目標特性を満たさない。
本発明の鋳造用アルミニウム合金の鋳造性を評価するために、流動性試験を実施した。流動性試験にはMIT式流動性試験機を使用した。試験条件は、減圧度0.0395MPa、メタルヘッド250mmとし、L字状のガラス管の一端から溶融アルミを吸引し、流動が停止した位置までの長さ(流動長)を測定した。溶湯温度は700℃、730℃および760℃の3水準とし、各水準n=3で試験を行い、平均値を算出した。表3に実施例8とJIS合金であるAC7Aならびに旧JIS合金であるAC7Bの流動性試験結果を示す。
実施例試料8はAC7Aよりも優れ、AC7Bと同程度の流動性を有していた。
また、鋳造性の評価として割れ試験を行った。割れ試験は、「金型鋳造法」(小林一典著、日刊工業新聞社、昭和43年8月27日、p.30−31)に記されたリング状鋳型を用いた。鋳型温度は常温、注湯温度は液相線温度+100℃とした。鋳造冷却後、割れ試験片表面に見える割れの長さを測定した。各水準n=4で試験を行った。表4に実施例1、3、8とJIS合金であるAC7Aならびに旧JIS合金であるAC7Bの割れ試験結果を示す。
割れ試験片採取用鋳型に溶湯を鋳込んだ直後では、AC7Aでは3試験片表面に長さ平均6mm程度の割れが注湯口近傍に認められた。また、割れ試験片を鋳型から取り外す際に、AC7Bは全ての試験片で注湯口近傍に割れが生じ、試験片が破断した。一方、実施例試料1、3および8の試験片全てで割れは生じなかった。なお、AC7Aは鋳込み直後で大半が割れたため、鋳型から取り外した後は評価していない。
流動性試験および割れ試験結果から、実施例試料はAC7Bと同程度の良好な流動性を有しており、かつ実用合金のAC7AおよびAC7Bよりも割れにくい合金であると認められた。
以上の結果により、熱処理を行わない鋳放しのままで高延性および高い耐力を得るMg、Mn、Ti、BおよびZr量を決定し、かつ鋳造性にも優れる鋳造用アルミニウム合金を得た。また、本発明の鋳造用アルミニウム合金を使用することで、熱処理をしない鋳放しのままで耐力150MPa以上、伸び20%以上となるアルミニウム合金鋳物製品を得ることができる。本発明のアルミニウム合金鋳物は金型鋳造、特に重力金型鋳造のような比較的設備費が安い製造方法により製造できる。








Claims (7)

  1. Mg:5.0〜8.0質量%、Mn:0.5〜2.0質量%と、少なくともTi:0.05〜0.25質量%、B:0.05〜0.15質量%、Zr:0.05〜0.25質量%のうちの一種を含有し、残部がアルミニウムと不可避不純物からなることを特徴とする鋳造用アルミニウム合金。
  2. Si:0.15質量%以下、Fe:0.25質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋳造用アルミニウム合金。
  3. 質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部が実質的にアルミニウムから成り、Al−Mg系晶出物およびAl−Mn系晶出物から成る晶出物の平均サイズが30μm以下であり、面積率が5%以下であることを特徴とするアルミニウム合金鋳物製品。
  4. 耐力150MPa以上および伸び20%以上であることを特徴とする請求項3に記載のアルミニウム合金鋳物製品。
  5. 質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部が実質的にアルミニウムから成り、2次デンドライトアームスペーシング(DASII)が55μm以下であることを特徴とするアルミニウム合金鋳物製品。
  6. 質量%でMg:5.0〜8.0%、Mn:0.5〜2.0%と、少なくともTi:0.05〜0.25%、B:0.05〜0.15%、Zr:0.05〜0.25%のうちの一種を含有し、残部が実質的にアルミニウムから成る溶湯を金型鋳造で製造することを特徴とするアルミニウム合金鋳物製品の製造方法。
  7. 重力金型鋳造法で製造することを特徴とする請求項6に記載のアルミニウム合金鋳物製品の製造方法。




























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