JP2017119890A - 過共晶Al−Si系アルミニウム合金、及びそれからなる鋳造部材、並びに前記アルミニウム合金の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】 微細な初晶Si粒子を有し、高い強度と延性を有する過共晶Al-Si系アルミニウム合金、及びそれからなる鋳造部材、並びに前記アルミニウム合金を製造するのに好適な製造方法を提供する。【解決手段】 質量基準で、0.1〜0.6%のMg、0.0001〜0.0200%のP、0.0100〜0.0400%のNa、残部がAl、Si及び不可避的不純物からなり、100gあたりの含有水素量が水素ガス基準で0.05〜1.0cm3であることを特徴とする過共晶Al−Si系アルミニウム合金。【選択図】 図1

Description

本発明は、過共晶Al−Si系アルミニウム合金、及びそれからなる鋳造部材、並びに前記アルミニウム合金の製造方法に関するものである。
軽量化、複雑形状の加工容易性、製造コスト低減等の点で有利なアルミニウム合金の鋳造部材は各種の部品に広く使用されている。特に自動車等では、ケースやカバー類の材料としてAl−Si−Cu−Mg系のJIS AC4B、ADC12等が、また足回り部品やロードホイールの材料としてAl−Si−Mg系のJIS AC4CH、ADC3等が使用されているが、省エネルギーおよび燃費改善が要求されており、それらを構成するアルミニウム合金鋳造部材にも一層の軽量化および高品質化が望まれている。
近年は、熱処理の適正化やCAEを活用した構造解析により、必要な強度を確保しつつ減肉や薄肉化することによって上記軽量化の要求に応じてきたが、以下に述べるように材料がもつ特性が原因で、さらなる軽量化要求に対応できる余地が少なくなってきている。
ケース、カバー類に多用されている上記Al−Si−Cu−Mg系アルミニウム合金は、強度は十分あるものの、原子量が大きく耐食性を阻害する元素でもあるCuを含むため、過度に薄肉化すると腐食により気密性が損なわれやすくなるおそれがある。また、上記Al−Si−Cu−Mg系アルミニウム合金は破断伸びが2.0%以下と延性が小さいので、変形能を要求される部材には適用し難く、適用範囲が限られている。
足回り部品やロードホイール等に適用されている上記Al−Si−Mg系アルミニウム合金は、Al−Si−Cu−Mg系アルミニウム合金よりも延性が大きいため、変形能も大きい。そしてCuを実質的に含まないため耐食性が良好である。強度の指標である0.2%耐力も車両等に適用できる100MPa以上あり、さらに熱処理によってさらに大きくすることが可能であるので、鋳造部材の軽量化のための薄肉設計が可能である。ところが、上記のアルミニウム合金は亜共晶組成でありヤング率が76GPa以下のため、強度および延性を確保できても、薄肉にすると鋳造部材として必要な剛性を確保することができなくなってしまう。従って、さらなる薄肉設計での軽量化は困難になりつつある。
ヤング率の高いアルミニウム合金として過共晶Al-Si系合金が注目されているが、初晶Si粒子が粗大に晶出しやすく延性は著しく低い。過共晶Al−Si系合金の初晶Siを微細化する先行技術として、例えば特許文献1に、過共晶Al-Si合金溶湯中のP含有量を1massppm以上、50massppm以下に調整するとともに、金属Na又は金属Naを含む金属Na合金部材を前記過共晶Al-Si合金溶湯に添加する添加ステップを備えることを特徴とする過共晶Al−Si合金の製造方法と、アルミニウムマトリクス中に分散している初晶Si粒子の平均粒径が100μ未満であり、丸みを帯びた外郭形状に形成されている過共晶Al−Si合金が開示されている。
特開2012−62501号公報
本発明者らは特許文献1に記載のようなMg、PおよびNaを含む過共晶Al-Si系アルミニウム合金について、その組成、ミクロ組織および機械的性質との関係を検討したところ、Naの添加を適切に行わないとアルミニウム合金に含有する水素が増大してしまい、その結果、気泡(ガス欠陥)が多数生じて、機械的性質、特に延性を確保しにくくなってしまうことがわかった。
本発明は、微細な初晶Si粒子を有し、高い強度と延性を有する過共晶Al-Si系アルミニウム合金、及びそれからなる鋳造部材、並びに前記アルミニウム合金を製造するのに好適な製造方法を提供することを目的としている。
本発明の一形態は、質量基準で、0.1〜0.6%のMg、0.0001〜0.0200%のP、0.0100〜0.0400%のNa、残部がAl、Si及び不可避的不純物からなり、100gあたりの含有水素量が水素ガス基準で0.05〜1.0cmである過共晶Al−Si系アルミニウム合金である。
本発明の過共晶Al-Si系アルミニウム合金において、さらに質量基準で0.05〜0.3%のTiを含有するのが好ましい。
また、本発明の過共晶Al-Si系アルミニウム合金においては、切断面に観察される最大の初晶Si粒子の最大幅が1〜90μmであるのが好ましい。
加えて、切断面に観察される共晶Si粒子同士の平均距離が0μmを超え5μm以下であることが好ましい。
さらに加えて、切断面に観察される円相当径で20μm以上の気泡の数が1個/mm以下であることが好ましい。
また、本発明の過共晶Al-Si系アルミニウム合金においては、破断伸びが5%以上、シャルピー衝撃値が15J/cm以上であることが好ましい。
加えて、0.2%耐力が100MPa以上であることが好ましい。
本発明の他の一形態は、本発明の過共晶Al−Si系アルミニウム合金からなる鋳造部材である。
そして、本発明のさらに他の一形態は、質量基準で、0.1〜0.6%のMg、0.0001〜0.0200%のP、0.0100〜0.0400%のNa、残部がAl、Si及び不可避的不純物からなる溶湯を、600℃から580℃の間の冷却速度を15℃/s以上で冷却し凝固させ、100gあたりの含有水素量が水素ガス基準で0.05〜1.0cmとする過共晶Al-Si系アルミニウム合金の製造方法である。
本発明によれば、微細な初晶Si粒子を有し、高い強度と延性を有する過共晶のAl-Si系アルミニウム合金及びそれからなる鋳造部材、並びに前記アルミニウム合金の好適な製造方法が提供される。
実施例1の過共晶Al-Si系アルミニウム合金のミクロ組織である。 過共晶Al-Si系アルミニウム合金の初晶Si粒子と共晶Si粒子を示すミクロ組織の一例である。 図2における初晶Si粒子の最大幅の測定方法を説明する部分拡大図である。 図2における共晶Si粒子同士の距離の測定方法を説明する部分拡大図である。 比較例1の過共晶Al-Si系アルミニウム合金のミクロ組織である。 本発明の実施形態に係るアルミニウム合金の鋳造に用いた第1の種類の鋳型の概略図である。 第1の種類の鋳型に鋳造された鋳造部材の形状と各種試験片を採取した位置を示す概略図である。 本発明を実施形態に係るアルミニウム合金の鋳造に用いた第2の種類の鋳型の概略図である。 第2の種類の鋳型に鋳造された鋳造部材の形状と各種試験片を採取した位置を示す概略図である。 本発明の実施の形態に係る引張試験片の概略形状である。 冷却速度の定義を説明する図である。
以下に、本発明を実施するための形態を、図表を参照しつつ詳細に説明する。
(Mg)
MgはSiとMgSiを形成し、引張強さと0.2%耐力を向上させる働きがある。この効果を得るには、Mgは質量基準で0.1%以上含有することが好ましい。しかし、Mgは0.6%を超えて含有するとMgSiが過剰となり、破断伸びが低下する。また、MgSiは強固な電子化合物であり、それ自体が高いヤング率を有するため、アルミニウム合金のヤング率の向上にも寄与する。Mgの含有量は質量基準で0.1〜0.6%とする。なお、好ましくは0.2〜0.4%であり、より好ましくは0.25〜0.35%である。以下、他の合金成分の成分値も質量基準とする。
(P)
Pは過共晶Al−Si系アルミニウム合金における初晶Si粒子を微細化する効果がある。初晶Si粒子を微細化させるために必要な含有量は0.0001%(1ppm)であり、これに満たない場合は初晶Si粒子の微細化は困難である。また、0.0200%(200ppm)を超えると初晶Si粒子が粗大化するようになる。従ってPの含有量は0.0001%(1ppm)〜0.0200%(200ppm)である。好ましくは0.0020%(20ppm)〜0.0100%(100ppm)である。より好ましくは0.0020%(20ppm)〜0.0050%(50ppm)である。
(Na)
Naはアルミニウム合金中のSiの拡散を抑制するため、Pの効果によって微細に晶出した初晶Si粒子の成長を抑制する効果がある。このため、適当な量のNaをPと共にアルミニウム合金中に含有させることが好ましい。ただし、Na含有量が0.0400%(400ppm)を超えると、P含有による初晶Siの微細化効果が低下するようになるので好ましくない。また、Naはアルミニウム合金の共晶Si粒子を微細化する効果もある。共晶Si粒子を微細化するために必要なNa含有量は0.0100%(100ppm)であり、これに満たない場合は共晶Si粒子が微細化しないために十分な機械的性質、特に延性を得ることが困難になる。このため、Naの含有量は0.0100%(100ppm)〜0.0400%(400ppm)とする。好ましくは0.0150%(150ppm)〜0.0350%(350ppm)であり、より好ましくは0.0180%(180ppm)〜0.0350%(350ppm)である。
Naのアルミニウム合金への添加方法はNaのハロゲン化物を含有するフラックスをアルミニウム合金溶湯(以下、溶湯ともいう。)の表面に撒いて撹拌する方法だけでなく、アルミニウムまたはアルミニウム合金で金属ナトリウムを密封した形態のNa添加剤を、溶湯に浸漬して添加する方法などがある。なお、Naは雰囲気中の水分(HO)から酸素(O)を奪うことによって酸化減耗するため、溶湯に添加してからの経過時間が過大になると、共晶Si粒子の微細化効果を得にくくなる。加えて、雰囲気中の水分がNaに還元されて生じる水素ガス(H)が溶湯に多量に溶解して、これが鋳造後に多数の気泡として出現するようになりアルミニウム合金の機械的性質を損ねる原因となる。Naは添加するときの溶湯の温度が高いほど効率よく溶湯に溶け込む傾向がある。しかし一方で、溶湯が高温であるほど上述した酸化減耗が急速に進行し、水素ガスの溶湯への溶け込みも助長されてしまう。このため、Naを溶湯に添加する溶湯温度と添加方法、およびその時期を適切にすることが望ましい。特にNaの添加後に後述する脱ガス処理を行うと、Naの酸化減耗が助長されるだけでなく脱ガス効率も低下しやすくなるので好ましくない。また、鋳造にあたっては、Naの溶湯へ溶け込みが十分に達した時期のできるだけ早期に行うことが好ましい。
(Si)
Siはそのアルミニウム合金中の含有量の増加に伴って、アルミニウム合金のヤング率を高める元素である。また、Alに対しての共晶元素であるため、鋳造性を良好にする元素である。特に共晶組成である12.6%を超える、すなわち過共晶になると、共晶Siだけでなく初晶Siも晶出しやすくなる。これらの晶出Siは高いヤング率をもつだけでなく、アルミニウム合金の母相(α相)よりも低密度であるため、アルミニウム合金全体の質量に対するヤング率の比、すなわち比剛性の向上にも寄与する。このため、剛性を確保しつつ鋳造部材の軽量化を一層図ることができる。Si含有量は、過共晶となる12.6%以上であるとヤング率を76GPa以上に確保できるので好ましい。好ましくは12.8%以上、より好ましくは12.8〜16%、さらにより好ましくは12.8〜14%である。
(Ti)
Tiは結晶粒を微細化させてアルミニウム合金の強度および延性を向上させるのみならず、アルミニウム合金溶湯が凝固収縮する際に発生する応力に抗して鋳造割れを防止する作用を有する。必須ではないが、これらの作用を効果的に発揮させるためには、Tiを質量基準で0.05%以上含有させるのが好ましい。高純度Al地金に不可避的不純物として含まれるTiは0.05%未満であるので、高純度Al地金を原料に用いる場合、上記の効果を得るためにはTiを付加的に含有させる必要がある。ただし、Tiの含有量が0.3%を超えるとAl−Ti系の金属間化合物が晶出し、アルミニウム合金の延性はかえって低下するので、Tiを付加的に含有させる場合は0.05〜0.3%とし、より好ましくは0.1〜0.3%とする。また例えば、Ti源として、展伸材の6000系合金、AC4CH合金等のアルミニウム合金スクラップ材、低純度Al地金等を使用とした場合、通常不可避的不純物として0.05%以上のTiが混入してくるので、それに応じて付加的に含有させるTi量を調節するのが好ましい。
(不可避的不純物)
リサイクルの観点から、6000系合金やその他のアルミニウム合金のスクラップ材、低純度Al地金等を溶解原料として多量に使用する場合があり、上述した以外の元素が不可避的不純物として混入する可能性がある。これらの不純物元素については、例えば検出限界以下に低減することは多大なコストアップの要因となるので、本発明の目的を阻害しない含有範囲であれば許容されるものとする。基本的にはJIS規格等に沿った各不純物の許容含有量とすればよく、本発明においては、0.10%以下のCu、0.10%以下のZn、0.17%以下のFe、0.10%以下のMn、0.05%以下のNi、0.05%以下のCr、0.05%以下のPbおよび0.05%以下のSnとするのが好ましい。特にCuは耐食性を低下させ、FeはAl−Fe−Si系の金属間化合物またはMnと共にAl−Fe−Mn−Si系の金属間化合物を形成して延性の低下をきたすので、上記の値を超えたCuおよびFeを含有させるのは好ましくない。
(含有水素量)
大気中、ガス炉等に由来する燃焼ガス、溶解炉、保持炉を構成する耐火物、およびその他の雰囲気中の水分がAlと反応して水素ガスが生成され、これがアルミニウム合金溶湯中に溶け込むため、アルミニウム合金は水素を含有する。さらに前述したように、Naを溶湯に添加してからの経過時間が過大になると、溶湯への水素の溶け込みが助長される。水素を多量に含んだアルミニウム合金溶湯は、凝固する際に固溶しきれない水素が気体として放出されるが、その一部が鋳造部材中に留って気泡として残留するため、機械的性質、特に破断伸びや衝撃値の低下をもたらす。また、溶体化熱処理を施した場合、過飽和に溶解している水素が粗大な気泡となって鋳造部材中に再び現れることもある。このような有害な気泡を抑制するために必要な含有水素量は、水素ガス基準でアルミニウム合金100gあたり0.05〜1.0cm(以下、単位をcm/100gAlと表記することがある。)である。すなわち、1.0cm/100gAlを超えると気泡により機械的性質、特に破断伸びや衝撃値が低下するので好ましくない。また、後述する実用的な脱ガス処理方法では0.05cm/100gAl未満にすることは困難であって生産上好ましくない。好ましい含有水素量は0.05〜0.5cm/100gAlであり、より好ましくは0.05〜0.3cm/100gAlである。なお、凝固したアルミニウム合金の含有水素量は、真空溶融抽出法など公知の方法で測定することができる。
含有水素量を低減する方法のひとつは、溶湯の段階で十分に脱ガス処理(脱水素処理)を行うことである。すなわち、アルゴンガスを溶湯に吹き込む方法や、ハロゲン化合物を含むフラックスを溶湯に添加して撹拌するなどの公知の方法を用いることができる。脱ガス処理の時期は、前述したようにNa添加の前に実施することが望ましい。また、脱ガス処理後の水素ガスの再溶解を避けるために、前述したように、Na添加後の鋳造は可能な限り早期に行うことが好ましい。
(最大の初晶Si粒子とその最大幅)
過共晶Al-Si系アルミニウム合金において、初晶Si粒子が粗大であると機械的性質、特に延性が阻害されるので好ましくない。引張応力や衝撃力に対しては、少数であっても、初晶Si粒子が粗大であるほど脆弱になる。初晶Si粒子の大きさは、切断面に観察される最大の初晶Si粒子の最大幅が1〜90μmであることが好ましい。
ここで最大の初晶Si粒子の最大幅の定義を図面を参照しつつ説明する。図2は過共晶Al-Si系アルミニウム合金の初晶Si粒子と共晶Si粒子を示すミクロ組織の一例である。図2の視野を第1の視野とよぶことにすると、図3は第1の視野における一の初晶Si粒子1の近傍の領域X1を拡大した図である。図3において初晶Si粒子1の輪郭上の最も離間した2点間の長さW1を、初晶Si粒子1の最大幅W1と定義する。そして、第1の視野に観察される他の初晶Si粒子(例えば、図2における初晶Si粒子11)についても同様に最大幅を測定して比較して、第1の視野における最も大きな最大幅をもつものが初晶Si粒子1であるとき、第1の視野における最大の初晶Si粒子の最大幅はW1であると定義する。以下、他の任意の第2の視野、第3の視野、・・・、第Nの視野についても同様に測定し、各視野における最大の初晶Si粒子の最大幅がW2、W3、・・・、WNであった場合、W1、W2、W3、・・・、WNのうち最も大きい値を有する初晶Si粒子を最大の初晶Si粒子と定義し、その最大幅を最大の初晶Si粒子の最大幅Wpと定義する。観察する倍率にもよるが、視野数Nは多い方がWpの値はより確からしくなるので好ましい。視野数Nは3以上が好ましく、より好ましくは5以上である。
(共晶Si粒子同士の平均距離)
Al−Si系アルミニウム合金の機械的性質は共晶Si粒子の大きさと分布によっても大きく左右される。共晶Si粒子が微細かつ密に分散しているほど強度および延性、靭性が大きくなるので好ましい。ここで、共晶Si粒子とは粒子状の形態のみをいうのではなく、円形状、楕円形状、板状、棒状、樹枝状、その他の形態も含む。
共晶Si粒子が微細かつ密に分散している状態は、例えば共晶Si粒子同士の平均距離で表すことができる。ここで、共晶Si粒子同士の距離とは、切断面に観察される一の共晶Si粒子の輪郭と、該共晶Si粒子の近傍にある他の共晶Si粒子の輪郭との間の距離である。次に、切断面に観察される共晶Si粒子同士の平均距離の測定方法を、図面を参照しつつ説明する。図4は図2に示す領域X2を拡大したものであり、共晶Si粒子同士の距離の測定方法を説明する図である。まず、予め長さを定めた任意の線分3を複数の共晶Siを横切るように引く。図4の例では組織写真上で50μmに相当する長さの線分3としている。この線分3と、線分3が横切る3つの共晶Si粒子21、22、23の輪郭との交点をs1、s2、・・・、s6とするとき、s2とs3との距離d1を共晶Si粒子21と22との距離とし、s4とs5との距離d2を共晶Si粒子22と23との距離として測定する。以下、このようにして線分3を複数引いて共晶Si粒子同士の距離を測定し、これらの平均値を共晶Si粒子同士の平均距離と定義する。なお、線分3の長さは共晶Si粒子を3個以上横切る長さとすることが好ましく、より好ましくは5個以上とする。また線分3は3本以上引いて測定することが好ましく、また線分の方向も観察面上において縦、横、斜めの任意の方向で引くことが好ましい。さらに、1視野だけでなく複数の視野において測定し、それらの平均値を採用することがより確からしい値を得ることができて好ましい。測定する際の倍率は、観察される共晶Si粒子の大きさや分布に応じて任意に設定してよい。また、光学顕微鏡では解像度が不足する場合は、SEM(走査型電子顕微鏡)など、より高倍率の顕微鏡で観察すれば、より正確な値を得ることができる。
共晶Si粒子同士の平均距離は、5μmを超えると破断伸びが低下するので好ましくない。従って共晶Si粒子同士の平均距離は0μmを超え5μm以下とする。ここで、共晶Si粒子同士の平均距離が0μm、すなわち切断面に観察される共晶Si粒子の全てが周囲の共晶Si粒子と互いに隣接し合う形態は、金属学的にあり得ないので除外される。
なお、この測定方法によれば、共晶Si粒子の平均粒径も定義することができる。すなわち図4において、s1とs2との距離を共晶Si粒子21の粒径、s3とs4との距離を共晶Si粒子22の粒径、s5とs6との距離を共晶Si粒子23の粒径、と定義しこれらの平均値を共晶Si粒子の平均粒径として算出できる。もちろん、上述した共晶Si同士の平均距離の算出方法と同様に、線分3を複数、好ましくは任意の方向で引いて測定し、またこれを複数の視野で行った平均値を採用すれば、より確からしい値が得ることができる。
(気泡の数)
切断面に観察される円相当径で20μm以上気泡の数が1個/mmを超えると、機械的性質、特に破断伸びと衝撃値が低下するので好ましくない。従って、切断面に観察される円相当径で20μm以上の気泡の数が1個/mm以下であることが好ましい。なお、円相当径で20μm以上の気泡が観察されない場合の気泡の数は0個/mmとして測定される。図5は円相当径で20μm以上の気泡4が観察された視野の一例を示すミクロ組織写真である。
気泡の数の測定方法は、切断面の1視野に観察される円相当径20μm以上の気泡の数を測定する方法とし、この方法で任意の5視野について測定した値の平均値とする。気泡の大きさは画像解析装置等を用いて計測できる。なお、鋳造部材の空洞欠陥の種類には気泡の他に引け巣もある。ただし、引け巣の内面にはデンドライトの凹凸が観察されるのに対して、気泡の内面にはデンドライトの凹凸は観察されないので、これらは容易に識別し、区別できる。
(破断伸び)
引張試験における破断伸び(以下、伸びともいう。)は5%以上であることが好ましい。伸びが5%以上であれば、例えば自動車用部品として必要な延性が確保される。好ましくは7%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは12%以上である。伸びを高める方法として、溶体化処理を施すT4熱処理、時効処理のみを施すT5熱処理、溶体化処理と時効処理とを組み合わせるT6熱処理、またはT6熱処理において過時効処理を施すT7熱処理など、各種熱処理を実施することができる。ただし、破断伸びは強度、例えば後述する0.2%耐力と背反する性質があるので、破断伸びを25%超とすると0.2%耐力が不足するので好ましくない。従って破断伸びは25%以下、好ましくは20%以下である。
(シャルピー衝撃値)
衝撃値は、無ノッチの試験片におけるシャルピー衝撃試験で15J/cm以上であることが好ましい。この値に満たない場合は例えば自動車用足回り部品には採用され難い。また、自動車用ロードホイールに適用するためには20J/cm以上が好ましく、より好ましくは25J/cm以上である。シャルピー衝撃値(以下、衝撃値ともいう。)を高める方法として、溶体化処理を施すT4熱処理、時効処理のみを施すT5熱処理、溶体化処理と時効処理とを組み合わせるT6熱処理、または溶体化処理と過時効処理とを組み合わせるT7熱処理などを実施してもよい。
(0.2%耐力)
強度の指標として、引張試験における0.2%耐力(以下、耐力ともいう。)は100MPa以上であることが好ましい。100MPaに満たない場合は、特に自動車用の鋳造部材として必要な強度を確保しにくいため好ましくない。特に自動車用足回り部品に採用されるためには、耐力は120MPa以上であることが好ましく、自動車用ロードホイールに採用されるためには160MPa以上がより好ましく、さらにより好ましくは180MPa以上である。耐力を高める方法として、溶体化処理を施すT4熱処理、時効処理のみを施すT5熱処理、溶体化処理と時効処理とを組み合わせるT6熱処理、またはT6熱処理において過時効処理を施すT7熱処理など、各種熱処理を実施することができる。ただし、0.2%耐力は前述したように破断伸びと背反する性質があるので、0.2%耐力を300MPa超とすると破断伸びが不足するので好ましくない。従って0.2%耐力は300MPa以下、好ましくは280MPa以下である。
(鋳造部材)
本発明の鋳造部材は、重力鋳造法、低圧鋳造法、高圧鋳造法、ダイカスト鋳造法等の公知の鋳造法により製造したものであり、特に今後さらなる薄肉軽量化が要求される車両等の構成部品に好適である。例えば自動車や自動二輪車のロードホイール、シャシ部材、パワートレイン部材(スペースフレーム、ステアリングホイールの芯金、シートフレーム、サスペンションメンバー、エンジンブロック、シリンダヘッドカバー、チェーンケース、ミッションケース、オイルパン、プーリ、シフトレバー、インスツルメントパネル、吸気用サージタンク、ペダルブラケット等)等に使用するのに適している。
(冷却速度)
鋳造にあたっては溶湯の冷却速度を大きくすることが好ましい。冷却速度が大きいほど、初晶Si粒子は小さく、また共晶Si粒子も緻密になるので、強度および延性をより高めることができる。特に初晶Siが晶出し始める温度から共晶温度までの温度範囲の冷却速度を大きくすることが好ましく、例えば600℃から580℃までの冷却速度を15℃/s以上とすることが好ましい。冷却速度を大きくする手段としては、鋳造部材の形状を薄肉にする、鋳型を冷却する、鋳型と溶湯との密着度を高めて鋳型への抜熱を促進する等の方法を適用することができる。
[実施例]
次に、本発明の実施例を図および表を参照しつつさらに詳細に説明する。なお、本発明はこれらに限定されるものではない。
(溶解)
後述する各実施例の溶解工程は共通の方法とした。すなわち、原料として工業用の純Al、純Si、純Mgおよび必要に応じて含有させる金属元素を含むAl母合金を黒鉛製るつぼに装入し、るつぼの外側から電気ヒータで加熱する方式の電気炉を用いて大気中で溶解して溶湯を得た。溶解温度は表2におけるP添加の溶湯温度に示す値とした。また、溶解量は各実施例とも35〜40kgの範囲とした。
(Pの添加)
添加するPの形態として粉末状の赤リンを用いた。溶湯1kgあたり0.75gの赤リンをアルミニウム箔に包んだ状態で、フォスフォライザを用いて溶湯中に浸漬することにより添加した。P添加時の溶湯温度は表2に示す値とした。
(脱ガス処理)
Pを添加して0.5h後に、フラックス(商品名N408H、日本金属化学(株)製)処理を行って溶湯の清浄度を高める操作を行い、次いでArガスを溶湯中に吹き込むバブリング操作で脱ガス処理を行った。溶湯中の水素量は、プロトン導電性セラミックスセンサーによる方法(TYK社製、NOTORP KYHS−A2型)で計測し、0.15cm/100gAl以下となるまで脱ガス処理を行った。脱ガス処理に要する時間も含めて、P添加からNa添加までの溶湯保持時間は表2のP添加の保持時間に示す値とした。
(Naの添加)
脱ガス処理の後にNaを添加した。Naはアルミニウム缶に封入された金属Na(商品名ナバック、フォセコ社製、以下缶入りNaともいう。)を用いた。添加量は缶入りNa(1個あたりのNa量が25g)をアルミニウム箔で包み、これを2個、フォスフォライザを用いて溶湯中に浸漬することにより添加した。Na添加時の溶湯温度およびNa添加後から注湯までの保持時間は表2に示す条件とした。鋳造直前における各実施例の溶湯の合金成分は表1に示す値であった。なお、合金成分の分析には固体発光分光分析装置(ThermoScientific社製)を使用した。
(鋳型)
以上の工程で得られた溶湯を鋳造する鋳型は、大別して2つの種類を使用した。図6は第1の種類の鋳型の概略図であり、図6(a)は正面、図6(b)は側面の概略図である。第1の種類の鋳型(以下、舟型ともいう。)は、上側の幅w1と下側の幅w2の寸法と、鋳鉄製または銅製の異なる鋳型材料を組み合わせた、さらに3種類の舟型を用いた。幅w1および幅w2の寸法と鋳型材料との組み合わせを示した舟型の仕様を表1に示す。舟型Aはw1=33mm、w2=23mmの鋳鉄製、舟型B1はw1=33mm、w2=23mmの純銅製、舟型B2はw1=28mm、w2=18mmの純銅製、舟型B3はw1=20mm、w2=10mmの純銅製とした。
図8は第2の種類の鋳型の概略図であり、図8(a)は正面、図8(b)は側面の概略図である。第2の種類の鋳型(以下、金型Cともいう。)は図8(b)中のPLで示される鉛直方向の縦見切りの鋳型である。材質は純銅とし、上記した舟型の仕様と併せて表1に示す。
(鋳造部材)
第1の種類の鋳型(舟型)および第2の種類の鋳型(金型C)に溶湯を重力鋳造して鋳造部材を作製した。図7は第1の種類の鋳型に鋳造された鋳造部材の形状と各種試験片を採取する位置を示す概略図であり、図7(a)は正面、図7(b)は側面の概略形状である。また、図9は第2の種類の鋳型に鋳造された鋳造部材と各種試験片を採取する位置を示す概略図であり、図9(a)は正面、図9(b)は側面の概略形状である。以下、舟型Aに鋳造された鋳造部材を部材Aとよぶ。また、舟型B1、B2、B3に鋳造された鋳造部材をそれぞれ部材B1、B2、B3とよび、これらを舟型材と総称する。また金型Cに鋳造された鋳造部材を部材Cとよぶ。以上の鋳造部材の名称を前述した鋳型の名称と併せて表1に示す。また、各実施例における注湯温度と注湯した鋳型を表2に示す。
(含有水素量の測定)
溶湯が凝固した後の含有水素量の測定は、真空溶融抽出法によるガス量測定装置((株)共立製)を用いて測定した。
(冷却速度の測定方法)
舟型、および金型Cへの溶湯の鋳造にあたっては熱電対を挿入して、凝固過程における溶湯の温度を測定した。各鋳造部材における熱電対の位置TCを図7および図9に示す。舟型材においては略中央部であって底面BLを基準として10mmの高さ位置、部材Cにおいてはφ13mmの略丸棒形状の部位Y2の略中央であって底面BLを基準として6.5mmの位置とした。また、図11は溶湯の冷却曲線から冷却速度を算出する方法を説明する図である。冷却速度は、測定された冷却曲線5において鋳込み後に溶湯が600℃に到達してから580℃まで低下するまで区間の冷却速度とした。すなわち600℃と580℃の温度差Δθ(=20℃)を、600℃到達から580℃到達までの経過時間Δt(s)で除したΔθ/Δt(℃/s)として求めた。各実施例の冷却速度の測定結果は表2に示す。
(熱処理)
舟型材および部材Cは、大気雰囲気中でT6熱処理を行った。T6熱処理の溶体化処理温度と時間、および時効処理温度と時間は表2に示す条件とした。
(機械的性質の評価方法)
図7および図9に示すこれらの鋳造部材から以下の所定の形状の試験片を採取し、機械的性質として、ヤング率、シャルピー衝撃値、引張試験による0.2%耐力と破断伸びを評価した。試験片の採取部位は網掛けで示す領域とした。すなわち舟型材からは図7における底面BLを基準として5mmから20mmまでの高さの部位Y1から採取し、部材Cでは図9におけるφ13mmの略丸棒形状の部位Y2から採取した。
ヤング率は幅10mm×長さ80mm×厚さ4mmの試験片とし、自由共振式弾性率測定装置(型式JE2−RT、日本テクノプラス製)を用いて測定した。シャルピー衝撃値は幅10mm×長さ55mm×厚さ3mmのノッチ無しの試験片を、シャルピー衝撃試験機(藤井精機製、50J)を用いて、室温において衝撃速度3.4m/sで行った。図10は引張試験片の概略形状である。図10(a)は上面図であり、全長を80mm、全幅を10mm、平行部の長さを32mm、平行部の幅を6.5mmとした。図10(b)は側面図であり、厚さは4mmとした。引張試験は万能試験機(インストロン社製、50kN)を用いて、標点距離25mmとし、室温において2mm/min.のクロスヘッドスピードで行った。
(ミクロ組織観察)
また、舟型材および部材Cのミクロ組織観察を行った。舟型材は図7において底部位置BLから10mmの位置の面、部材Cは図7において底部BLから5mmの位置の面が観察面となるように小片を採取して樹脂に埋め込み、SiC研磨紙にて粗研磨後、ダイヤモンドペーストを用いて鏡面研磨してミクロ組織観察用試料を調製した。観察は光学顕微鏡(倒立型金属顕微鏡、オリンパス製)を用い、必要に応じて走査型電子顕微鏡(型番SU70、日立ハイテクノロジーズ製)を用いて行った。また、円相当径などのミクロ組織の定量測定には、必要に応じて画像解析装置(商品名「A像くん」、旭化成エンジニアリング製)を使用して行った。最大の共晶Si粒子の最大幅、共晶Si粒子同士の平均距離、および気泡の数は任意の5視野で測定した。特に共晶Si粒子同士の平均距離の算出にあたっては十分に計測できる倍率(例えば1000倍)で観察し、図4で説明した線分3は、少なくとも3個以上の共晶Si粒子を横切る長さで縦、横、斜めに合計5本引いて計測した。
表2に本発明の実施例1〜10の合金成分の組成と含有水素量、ミクロ組織および製造条件および機械的性質を示す。
(実施例1)
実施例1はSi=12.9%、Mg=0.33%、Ti=0.13%、P=0.0036%(36ppm)、Na=0.0247%(247ppm)、Alおよび不可避的不純物からなり、含有水素量=0.17cm/100gAlであって、Pの添加条件は溶湯温度700℃、保持時間60min.、Naの添加条件は溶湯温度700℃、保持時間は30min.以下、注湯温度は670℃で舟型Aに冷却速度22℃/sで注湯された部材Aである。最大の初晶Si粒子の最大幅は60μm、共晶Si同士の平均距離は3.6μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、溶体化処理540℃×4.0h、時効処理180℃×0.3hのT6熱処理で、0.2%耐力は194MPa、破断伸びは12.4%、シャルピー衝撃値は36J/cmであった。図1は実施例1のミクロ組織写真である。
(実施例2)
実施例2は冷却速度が18℃/s、時効処理が150℃×0.5hであった以外は実施例1と同様の条件で製造した部材Aである。最大の初晶Si粒子の最大幅は48μm、共晶Si同士の平均距離は3.7μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、0.2%耐力は139MPa、破断伸びは12.0%、シャルピー衝撃値は23J/cmであった。
(実施例3)
実施例3は冷却速度が22℃/s、時効処理が150℃×0hであった以外は、実施例2と同様の条件で製造した部材Aである。ここで時効処理の時間が0hとは、時効温度到達直後に放冷したことを表す。実施例3の最大の初晶Si粒子の最大幅は62μm、共晶Si同士の平均距離は3.4μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、0.2%耐力は129MPa、破断伸びは15.0%、シャルピー衝撃値は20J/cmであった。
(実施例4)
実施例4は金型Cに鋳造され、冷却速度が45℃/s、時効処理時間が0.5hであった以外は実施例1と同様の条件で製造した部材Cである。最大の初晶Si粒子の最大幅は8μm、共晶Si同士の平均距離は0.3μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、0.2%耐力は246MPa、破断伸びは13.1%、シャルピー衝撃値は45J/cmであった。
(実施例5)
実施例5はSi=14.0%、Mg=0.32%、Ti=0.14%、P=0.0020%(20ppm)、Na=0.0320%(320ppm)、Alおよび不可避的不純物からなり、含有水素量=0.21cm/100gAlであって、冷却速度20℃/sで注湯された以外は実施例1と同様の条件で製造した部材Aである。最大の初晶Si粒子の最大幅は90μm、共晶Si同士の平均距離は2.9μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、0.2%耐力は198MPa、破断伸びは5.2%、シャルピー衝撃値は17J/cmであった。
(実施例6)
実施例6はSi=12.8%、Mg=0.31%、Ti=0.15%、P=0.0029%(29ppm)、Na=0.0274%(274ppm)、Alおよび不可避的不純物からなり、含有水素量=0.14cm/100gAlであって、冷却速度17℃/sで注湯され、時効処理180℃×0.5hとした以外は実施例1と同様の条件で製造した部材Aである。最大の初晶Si粒子の最大幅は77μm、共晶Si同士の平均距離は4.0μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、0.2%耐力は185MPa、破断伸びは6.9%、シャルピー衝撃値は24J/cmであった。
(実施例7)
実施例7は舟型B1に冷却速度が21℃/sで鋳造された以外は、実施例6と同様の条件で製造した部材B1である。最大の初晶Si粒子の最大幅は68μm、共晶Si同士の平均距離は3.6μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、0.2%耐力は208MPa、破断伸びは8.9%、シャルピー衝撃値は30J/cmであった。
(実施例8)
実施例8はMg=0.30%、Ti=0.14%、P=0.0027%(27ppm)、Na=0.0281%(281ppm)、含有水素量0.16cm/100gAl、舟型B2に冷却速度が30℃/sで鋳造され、時効処理165℃×0.8hとした以外は、実施例6と同様の条件で製造した部材B2である。最大の初晶Si粒子の最大幅は45μm、共晶Si同士の平均距離は2.2μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、0.2%耐力は185MPa、破断伸びは12.5%、シャルピー衝撃値は39J/cmであった。
(実施例9)
実施例9は舟型B3に冷却速度が35℃/sで鋳造され、時効処理180℃×0.3hとした以外は、実施例6と同様の条件で製造した部材B3である。最大の初晶Si粒子の最大幅は31μm、共晶Si同士の平均距離は1.5μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。0.2%耐力は202MPa、破断伸びは14.5%、シャルピー衝撃値は45J/cmであった。
(実施例10)
実施例10は金型Cに冷却速度が39℃/sで鋳造された以外は、実施例8と同様の条件で製造した部材Cである。最大の初晶Si粒子の最大幅は20μm、共晶Si同士の平均距離は0.5μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また0.2%耐力は185MPa、破断伸びは16.4%、シャルピー衝撃値は52J/cmであった。
[比較例]
次に、比較例ついても表2に示す。特に記載のない製造条件等は実施例に同じである。
(比較例1)
比較例1はSi=13.2%、Mg=0.31%、Ti=0.14%、P=0.0129%(129ppm)、Na=0.0091%(91ppm)、Alおよび不可避的不純物からなり、含有水素量=1.20cm/100gAlであって、Pの添加条件は溶湯温度800℃、保持時間60min.、Naの添加条件は溶湯温度750℃、保持時間は120min.、注湯温度は700℃で舟型Aに冷却速度24℃/sで注湯された部材Aである。最大の初晶Si粒子の最大幅は65μm、共晶Si同士の平均距離は1.3μm、円相当径20μm以上の気泡の数は1.75個/mmであった。また、溶体化処理540℃×4.0h、時効処理180℃×0.5hのT6熱処理で、0.2%耐力は220MPa、破断伸びは3.0%、シャルピー衝撃値は10J/cmであった。図5は比較例1のミクロ組織写真である。
(比較例2)
比較例2はNaを添加しなかった例である。すなわちSi=12.8%、Mg=0.33%、Ti=0.14%、P=0.0090%(90ppm)、Naは0.0001%(1ppm)未満、Alおよび不可避的不純物からなり、含有水素量=0.10cm/100gAlであって、Pの添加条件は溶湯温度800℃、保持時間45min.、注湯温度は770℃で、舟型Aに冷却速度23℃/sで注湯された部材Aである。最大の初晶Si粒子の最大幅は40μm、共晶Si同士の平均距離は14.8μm、円相当径20μm以上の気泡の数は観察されない、すなわち0個/mmであった。また、溶体化処理540℃×4.0h、時効処理180℃×0.5hのT6熱処理で、0.2%耐力は227MPa、破断伸びは2.0%、シャルピー衝撃値は8J/cmであった。
表1
Figure 2017119890
表2
Figure 2017119890
注:(1)残部はAlおよび不可避的不純物である。
(2)Naの欄における「−」は不可避的不純物として0.0001%未満のNaを含む。
表2(つづき)
Figure 2017119890





表2(つづき)
Figure 2017119890
表2(つづき)
Figure 2017119890
注:(3)時効処理の時間の欄における値「0」は時効処理温度に到達した直後に放冷したことを表す。
1(11) 初晶Si粒子
2(21、22、23) 共晶Si粒子
3 線分
4 気泡
5 冷却曲線

Claims (9)

  1. 質量基準で、0.1〜0.6%のMg、0.0001〜0.0200%のP、0.0100〜0.0400%のNa、残部がAl、Si及び不可避的不純物からなり、100gあたりの含有水素量が水素ガス基準で0.05〜1.0cmであることを特徴とする過共晶Al−Si系アルミニウム合金。
  2. さらに質量基準で0.05〜0.3%のTiを含有する請求項1に記載の過共晶Al−Si系アルミニウム合金。
  3. 切断面に観察される最大の初晶Si粒子の最大幅が1〜90μmである請求項1又は請求項2に記載の過共晶Al−Si系アルミニウム合金。
  4. 切断面に観察される共晶Si粒子同士の平均距離が0μmを超え5μm以下である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の過共晶Al−Si系アルミニウム合金。
  5. 切断面に観察される円相当径で20μm以上の気泡の数が1個/mm以下である請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の過共晶Al−Si系アルミニウム合金。
  6. 破断伸びが5%以上、シャルピー衝撃値が15J/cm以上である請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の過共晶Al-Si系アルミニウム合金。
  7. 0.2%耐力が100MPa以上である請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の過共晶Al−Si系アルミニウム合金。
  8. 請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の過共晶Al-Si系アルミニウム合金からなる鋳造部材。
  9. 質量基準で、0.1〜0.6%のMg、0.0001〜0.0200%のP、0.0100〜0.0400%のNa、残部がAl、Si及び不可避的不純物からなる溶湯を、600℃から580℃の間の冷却速度を15℃/s以上で冷却し凝固させ、100gあたりの含有水素量が水素ガス基準で0.05〜1.0cmとする過共晶Al-Si系アルミニウム合金の製造方法。
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