JP2018126029A - 回転電機のステータ - Google Patents

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Abstract

【課題】回転電機のステータにおいて、絶縁性と剛性とを確保しながら、ステータコア内壁面との間にワニスが回りやすい絶縁紙を用いることである。【解決手段】回転電機のステータ10は、円環状のバックヨーク14、バックヨーク14から内周側に突き出す複数のティース16、及び、隣接するティース16間の空間である複数のスロット18を含むステータコア12を備える。また、ステータコア12のティース16に巻回されるステータ巻線20を備える。さらに、スロット18の内壁面とステータ巻線20との間に配置され、ステータコア12の軸方向の一方側の端面11側から他方側の端面13側に斜行する溝がスロット18の内壁面に対向する面にのみ設けられた絶縁紙30を備える。そして、ステータコア12、絶縁紙30、及びステータ巻線20の間に含浸されたワニス40を備える。【選択図】図1

Description

本開示は、回転電機のステータに係り、特に、ステータコアのスロット内に絶縁紙、ステータ巻線、及び、ワニスを含む回転電機のステータに関する。
回転電機のステータにおいて、ステータコアとステータ巻線との間の電気的絶縁性の確保のために、ステータコアのスロットには、ステータコアとステータ巻線との間に絶縁紙が配置される。そして、ステータ巻線の固定のために、ステータ巻線と絶縁紙とを含むスロットにワニスが含浸される。
特許文献1には、複数の小穴または斜め方向に多数の長孔状の開口部を設けた絶縁紙をステータコアのスロットに装着してステータ巻線を巻回する技術が開示されている。絶縁紙にはスロットの開口縁部を覆う折返しが形成され、小穴や長孔状の開口部は、スロットの開口縁部にかからないように、それよりも内側のスロット内壁面に対向する部分にのみ形成される。
特許文献2には、複数の小孔が開けられた絶縁紙を用い、ステータのコイルエンド部からワニスを滴下してスロット内の絶縁紙とステータ巻線との間にワニスを充填し、複数の小孔を介して絶縁紙とステータコアとの隙間にもワニスを供給することが開示されている。
特許文献3では、ワニスと平坦表面の絶縁紙との間の接着に関する引張強度が、ワニスとステータ巻線との間の接着に関する引張強度の半分に過ぎないことを指摘している。ここでは、2本のステータ巻線を1枚の絶縁紙が囲むように配置され、スロットにおいてステータ巻線と絶縁紙以外の領域にはワニスが充填されている構造について、絶縁紙の表裏両面においてワニスに対する接着面積を増加させるため表裏両面に凹凸を設けている。
特開2000−012067号公報 特開2007−166731号公報 特開2013−009493号公報
ステータのスロット内壁面に沿って1つの絶縁紙を配置し、その絶縁紙を介してステータ巻線が巻回される構造において、ステータ巻線にワニスを滴下すると、どうしてもステータ内壁面と絶縁紙との間にワニスが回りにくい。そこで絶縁紙に貫通孔を開けると、ワニスはステータコアの内壁面に回りやすくなるが、貫通孔のためにステータコアとステータ巻線との間の絶縁性が低下する恐れがあり、また、絶縁紙の剛性が低くなりスロットへの組付性が低下する。そこで、ステータコアとステータ巻線との間の電気的絶縁性を確保し、組付性に影響する剛性も確保して、スロットの内壁面との間にワニスが回りやすい絶縁紙を用いた回転電機のステータが要望される。
本開示に係る回転電機のステータは、円環状のバックヨーク、バックヨークから内周側に突き出す複数のティース、及び、隣接するティース間の空間である複数のスロットを含むステータコアと、ステータコアのティースに巻回されるステータ巻線と、スロットの内壁面とステータ巻線との間に配置され、ステータコアの軸方向の一方側の端面側から他方側の端面側に斜行する溝がスロットの内壁面に対向する面にのみ設けられた絶縁紙と、ステータコア、絶縁紙、及びステータ巻線の間に含浸されたワニスと、を備える。
上記構成の回転電機のステータによれば、絶縁紙において、スロットの内壁面に対向する面にのみ溝を設ける。これによって、ステータコアとステータ巻線との間の電気的絶縁性を確保し、組付性に影響する剛性も確保でき、スロットの内壁面との間にワニスが回りやすくなる。
実施の形態に係る回転電機のステータを示す図である。 図1における絶縁紙を抜き出して展開した図である。 図3(a)は、図2の一部拡大図であり、(b)は、図3(a)におけるB−B線に沿った断面図である。
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき、詳細に説明する。以下では、回転電機として、車両搭載用を述べるが、これは説明のための例示であって、車両搭載以外の用途であっても構わない。以下で述べる形状、寸法、ティース及びスロットの数、ステータ巻線の巻数、材質等は、説明のための例示であって、回転電機のステータの仕様に合わせ、適宜変更が可能である。以下では、全ての図面において同様の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1は、回転電機のステータ10の構成を示す図である。以下では、特に断らない限り、回転電機のステータ10を、ステータ10と呼ぶ。ステータ10が用いられる回転電機は、車両に搭載される回転電機である。回転電機は、車両が力行するときは電動機として機能し、車両が制動時にあるときは発電機として機能するモータ・ジェネレータで、三相同期型の回転電機である。回転電機は、図1に示すステータ10と、ステータ10の内周側に所定の間隔を隔てて配置されるロータ(図示せず)とで構成される。
図1に、軸方向と径方向と周方向とを示す。軸方向は、ステータ10の環状中心穴の中心軸CLに沿った方向である。軸方向の両方向を区別するときは、一方側と他方側と呼ぶ。図1では、紙面の上方へ向かう方向を一方側とし、下方へ向かう方向を他方側とした。径方向は、軸方向に垂直な面内で中心軸CLを通る放射状の方向であり、中心軸CL側に向かう方向が内周側であり、反対側が外周側である。周方向は、中心軸CLを中心として円周方向に沿った方向である。
ステータ10は、ステータコア12と、ステータ巻線20とを含む。ステータコア12は、ロータが配置される環状中心穴を有する磁性体部品で、円環状のバックヨーク14とバックヨーク14から内周側に突き出す複数のティース16とを含む。隣接するティース16の間の空間はスロット18である。図1では、ティース16の数とスロット18の数は同数で、3の倍数である48個であるが、その一部を図示した。
かかるステータコア12は、バックヨーク14とティース16とを含み、スロット18が形成されるように所定の形状に成形された円環状の磁性体薄板を所定枚数で軸方向に積み重ねた積層体である。磁性体薄板の両面には電気的な絶縁処理が施される。磁性体薄板の材質としては、珪素鋼板の一種である電磁鋼板を用いることができる。磁性体薄板の積層体に代えて、磁性粉末を一体化成形したものをステータコア12としてもよい。軸方向に沿った一方側の端面11と他方側の端面13との間の寸法は、ステータコア12の軸方向の高さHである。
ステータ巻線20は、三相の分布巻コイルで、1つの相巻線が複数のスロット18に跨ってティース16に巻回されて形成される。図1において、スロット18に付したU1,U2,V1,V2,W1,W2は、そのスロット18に挿入される三相巻線の相を示す。各相巻線は、それぞれ2周ずつ分布巻されるので、その各周を区別して、U相巻線の場合はU1,U2とし、V相巻線の場合はV1,V2とし、W相巻線の場合はW1,W2とする。この構成の三相巻線においては、同じ相巻線は、6スロット間隔を離して異なるスロット18の間に跨って巻回される。図1では、異なるスロット18の間を接続する部分の図示を省略し、スロット18内に配置される部分をステータ巻線20として示す。
ステータ巻線20は、径方向に沿って同じ相の導体線が複数の巻数で巻回される。図1の例では、巻数=8である。これは説明のための例示であり、8巻以外の巻数であってもよい。ステータ巻線20は、断面が矩形形状の平角線を導体素線とし、導体素線の周囲に絶縁皮膜を被覆した絶縁皮膜付き導体線である。平角線の矩形形状は、短辺の長さをa、長辺の長さをbとし、スロット18内では、長辺を周方向に沿うようにして、径方向に沿って短辺側を並べる。平角線は、短辺側を曲げるエッジワイズ曲げによって異なるスロット18の間を跨ぎ、所定のステータ巻線20が形成される。かかる絶縁皮膜付き導体線の導体素線としては、銅線、銅錫合金線、銀メッキ銅錫合金線等が用いられる。絶縁皮膜としては、ポリアミドイミドのエナメル皮膜が用いられる。
絶縁紙30は、ステータコア12とステータ巻線20との間を電気的に絶縁する絶縁体である。絶縁紙30は、幅がステータコア12の軸方向の高さHと同じかやや長めの1枚の絶縁シートをスロット18の内壁面に沿って曲げて形成される。1枚の絶縁シートの長手方向の両端面は、スロット18の内周側において互いに少し開口を開けて合わされる。かかる絶縁紙30を形成する絶縁シートとしては、プラスチックシートが用いられる。プラスチックシートの材質としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、耐熱アミラド紙等を用いることができる。
ワニス40は、ステータコア12、絶縁紙30、及びステータ巻線20の間に含浸された絶縁樹脂である。ワニス40は、常温では粘性の小さい液状で、ステータ巻線20の隣接する導体線の間の隙間、ステータ巻線20の外周面と絶縁紙30との間の隙間、絶縁紙30とスロット18の内壁面との間の隙間にそれぞれ浸透し、その後固化する。これによって、スロット18の内壁面、絶縁紙30、ステータ巻線20との間をそれぞれ固定する。かかるワニス40としては、エポキシ樹脂系、耐熱アルキド樹脂系、不飽和ポリエステル樹脂系等の樹脂が用いられる。
ワニス40をスロット18の内壁面、絶縁紙30、ステータ巻線20との間に含浸させる方法としては、絶縁紙30を介してステータコア12にステータ巻線20が巻回された状態で、コイルエンド側からワニス40を滴下する。コイルエンドとは、ステータ巻線20がステータコア12の異なるスロット18に跨って巻回されるときに、ステータコア12の軸方向の一方側の端面11及び他方側の端面13からそれぞれ突出た部分である(図1では図示を省略した)。
絶縁紙30には、スロット18の内壁面に対向する面42に、斜行する溝50が設けられる。この溝50は、ワニス40がスロット18の内壁面と絶縁紙30との間に含浸しやすいように設けられる。絶縁紙30に設けられる溝50の詳細について、図2、図3を用いて説明する。
図2は、1つのスロット18に配置される1つの絶縁紙30を抜き出して展開した状態を示す図である。図2(a)は、図1の斜視図で示されるステータコア12の一方側の端面11側から見た絶縁紙30を示す図である。二点鎖線でステータ巻線20を示す。(b)は、(a)の状態の絶縁紙30について、スロット18の内壁面に対向する面42を紙面の手前側として視認できるように展開した図である。(a)と(b)の間の展開関係を二点鎖線で示す。(b)において、絶縁紙30の紙面の向こう側の面は、ステータ巻線20に向い合う面である。
図2(b)に示される展開した絶縁紙30において、幅方向は、ステータ10の軸方向に沿った方向で、長手方向は展開された方向で、幅方向に垂直な方向である。絶縁紙30がスロット18に配置された状態では、絶縁紙30の幅方向の一方側の辺31はステータコア12の一方側の端面11に対応し、絶縁紙30の幅方向の他方側の辺33は、ステータコア12の他方側の端面13に、それぞれ対応する。
溝50は、絶縁紙30において、幅方向の一方側の辺31と、他方側の辺33との間で斜行し、少なくともいずれかの辺で開口する凹溝である。換言すれば、絶縁紙30の幅方向の長さをステータコア12の高さHと同じとして、絶縁紙30がスロット18に配置されたとき、溝50は、ステータコア12の軸方向の一方側の端面11側と他方側の端面13側との間で斜行する凹溝である。溝50は、絶縁紙30のステータコア12のスロット18の内壁面に対向する面42にのみ設けられ、面42の反対側の面であるステータ巻線20に向い合う面には設けられない。これにより、絶縁紙30の両面に溝50を設ける場合に比較し、絶縁紙30の剛性が上がり、絶縁紙30をステータコア12のスロット18に配置し、ステータ巻線20を巻回する作業性や組立性等が向上する。
図3は、溝50の斜行状態の詳細を示す図である。図3(a)は、図2(b)において、長さ(6a)として示す部分の拡大図である。図3(b)は、図3(a)のB−B線に沿った断面図である。B−B線は、絶縁紙30の幅方向の長さHの中間点を通り、絶縁紙30の幅方向に平行な線である。
図3を用いて、溝50の斜行角度θ、絶縁紙30の厚さt0に対する溝深さt1、絶縁紙30の長手方向に沿った溝50のピッチc、溝幅dの設定について説明する。これらは、絶縁紙30の剛性、溝50に対するワニス40の含浸性を考慮して設定される。
溝深さt1は、浅すぎるとワニス40が絶縁紙30の一方側の辺31側と他方側の辺33側との間における浸透が不十分になり、深すぎると、絶縁紙30の剛性が低下する。そのバランスで(t1/t0)を設定する。一例を挙げると、t0=0.1mm程度として、(t1/t0)を約0.3から0.5の範囲で設定する。
溝50の斜行角度θは、B−B線に対する溝50の傾斜角度である。斜行角度θは、1本の溝50に含浸されたワニス40が絶縁紙30を介して接するステータ巻線20の数Nによって設定される。図3(a)を参照すると、tan-1θ=(H/a)のときは、1≦N≦2で、tan-1θ=(H/2a)のときは、2≦N≦3で、tan-1θ=(H/3a)のときは、3≦N≦4となることが分かる。1本の溝50が絶縁紙30を介して複数のステータ巻線20に接することが好ましいので、N≧2とすることがよい。図2、図3ではN=2の例を示す。
溝50のピッチcは、ステータ巻線20の1巻当りの溝50の数Mを定める。図3(a)を参照すると、c=aのときは、1≦M≦2で、c=2aのときは、0.5≦M≦1で、c=0.5aのときは、2≦M≦4となることが分かる。1巻当り少なくとも1つの溝50が対応することが好ましいので、c≦aとすることがよい。図2、図3ではc=aの場合を示す。
溝幅dは、溝深さt1と同様に、狭すぎるとワニス40が一方側の辺31側と他方側の辺33側との間における浸透が不十分になり、広すぎると、絶縁紙30の剛性が低下する。そのバランスで(d/c)を設定する。一例を挙げると、(d/c)<(1/2)とする。図2、図3では、(d/c)=(1/3)の例を示す。
上記の数値等は、設定指針の説明のための例示であって、絶縁紙30の材質、厚さt0、ステータコア12の高さH、ワニス40の粘度等によって適宜変更が可能である。
上記では、ステータ巻線20を分布巻としたが、これは説明のための例示であって、集中巻であってもよい。集中巻において、平角線のエッジワイズ巻を行うときは、集中巻における平角線の短辺の長さaを、図3のaと同様に考えることができる。上記では、導体線を平角線としたが、場合によっては楕円断面や円形断面の導体線を用いてもよい。楕円断面の導体線の場合は、短径の長さを図3のaと同様に考えることができる。円形断面の導体線の場合は、円形の直径を図3のaと同様に考えることができる。
本実施の形態に係る回転電機のステータ10は、円環状のバックヨーク14、バックヨーク14から内周側に突き出す複数のティース16、及び、隣接するティース16間の空間である複数のスロット18を含むステータコア12を備える。また、ステータコア12のティース16に巻回されるステータ巻線20を備える。さらに、スロット18の内壁面とステータ巻線20との間に配置され、ステータコア12の軸方向の一方側の端面11側から他方側の端面13側に斜行する溝50がスロット18の内壁面に対向する面42にのみ設けられた絶縁紙30を備える。そして、ステータコア12、絶縁紙30、及びステータ巻線20の間に含浸されたワニス40を備える。
上記構成の転電機のステータ10によれば、絶縁紙30のステータコア12のスロット18の内壁面に対向する面42にのみに溝50を設けるので、ステータコア12とステータ巻線20との絶縁性を確保できる。さらに、組付性に影響する剛性も確保でき、スロット18の内壁面との間にワニス40が回りやすくなる。
10 (回転電機の)ステータ、11 一方側の端面、12 ステータコア、13 他方側の端面、14 バックヨーク、16 ティース、18 スロット、20 ステータ巻線、30 絶縁紙、31 一方側の辺、33 他方側の辺、40 ワニス、42 (スロットの内壁面に対向する)面、50 溝。

Claims (1)

  1. 円環状のバックヨーク、前記バックヨークから内周側に突き出す複数のティース、及び、隣接する前記ティース間の空間である複数のスロットを含むステータコアと、
    前記ステータコアの前記ティースに巻回されるステータ巻線と、
    前記スロットの内壁面と前記ステータ巻線との間に配置され、前記ステータコアの軸方向の一方側の端面側から他方側の端面側に斜行する溝が前記スロットの内壁面に対向する面にのみ設けられた絶縁紙と、
    前記ステータコア、前記絶縁紙、及び前記ステータ巻線の間に含浸されたワニスと、
    を備える、回転電機のステータ。
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