<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における通信システム10の構成図である。図1に例示される通り、第1実施形態の通信システム10は、情報配信システム20と情報送信装置30と複数の端末装置40とを具備する。複数の端末装置40の各々は、例えば携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報端末である。なお、例えば、鉄道事業者の施設内に設置される電光掲示板、または商業施設に設置される電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内用の表示端末を端末装置40として利用することも可能である。端末装置40および情報送信装置30の各々は、移動体通信網またはインターネット等を含む通信網12を介して情報配信システム20と通信する。
情報配信システム20は、非常情報Eを配信するコンピュータシステムである。非常情報Eは、非常の事象(例えば自然災害または犯罪等の有事)に関する情報である。例えば、災害情報および防犯情報が非常情報Eの典型例である。
災害情報は、例えば以下に例示される通り、自然災害に関する情報である。
・地震情報:地震が観測または予測された地域および時刻と震度とを通知する情報。
・津波情報:津波が観測または予測された地域および時刻とを通知する情報。
・豪雨情報:豪雨が観測または予測された地域および時刻を通知する情報。
・土砂災害情報:土砂災害が観測または予測された地域および時刻を通知する情報。
・洪水情報:洪水が観測または予測された地域および時刻を通知する情報。
・火山情報:火山の噴火が観測または予測された地域および時刻を通知する情報。
・避難情報:災害発生時に避難すべき場所を通知する情報。
・熱中症情報:熱中症が発生する可能性が高い地域を通知する情報。
また、以下に例示する防犯情報も非常情報Eに含まれる。
・犯罪情報:犯罪が発生した地域および時刻と犯罪の内容とを通知する情報。
・不審者情報:不審者が目撃された地域および時刻と不審者の特徴とを通知する情報。
第1実施形態の情報配信システム20は、配信先情報Aを記憶する。配信先情報Aは、非常情報Eの配信先を指定する情報である。具体的には、非常情報Eの配信先(例えば端末装置40)を表すアドレス情報が、複数の配信先の各々について配信先情報Aに事前に登録される。災害等の非常の事象が発生すると、情報配信システム20は、その事象に関する非常情報Eを生成し、配信先情報Aで指定された配信先に送信する。すなわち、非常情報Eがプッシュ配信される。情報配信システム20が送信した非常情報Eは、通信網12を経由して配信先の端末装置40に到達する。端末装置40は、情報配信システム20から受信した非常情報Eを表示する。
以上に説明した通り、情報配信システム20が配信した非常情報Eは通信網12により伝送される。したがって、通信網12を利用した通信を実行できない状態にある端末装置40は、配信先情報Aに配信先として登録されていても非常情報Eを受信することはできない。例えば、通信網12からの電波が充分な強度で到達しない場所(例えば屋内)にある端末装置40は、非常情報Eを受信することができない。以上の事情を考慮して、図1の情報送信装置30は、情報配信システム20から通信網12を介して受信した非常情報Eに対応する配信情報Dを、通信網12を利用しない通信により周囲の端末装置40に送信する。
図2は、情報送信装置30の構成図である。図2に例示される通り、第1実施形態の情報送信装置30は、制御装置31と記憶装置32と通信装置33と放音装置34とを具備するコンピュータシステムであり、端末装置40を携帯した利用者が来訪する各種の施設に設置される。情報送信装置30が設置される施設としては、例えば、電車またはバス等の交通施設、旅館またはホテル等の宿泊施設、百貨店またはショッピングモール等の商業施設、博物館または美術館等の展示施設、史跡または名所等の観光施設、および、競技場または体育館等の運動施設が例示され得る。例えばタブレット端末またはパーソナルコンピュータ等の情報端末が情報送信装置30として利用され得る。なお、例えば、鉄道事業者の施設内に設置される電光掲示板、または商業施設に設置される電子看板(例えばデジタルサイネージ)等の案内用の表示端末を、情報送信装置30として利用することも可能である。また、情報送信装置30は、単体の装置で実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置(すなわちシステム)でも実現され得る。
図2の通信装置33は、通信網12を介して他装置と通信する。例えば、通信網12との間で有線または無線により通信する通信機器が通信装置33として利用される。第1実施形態では、情報配信システム20の配信先情報Aに情報送信装置30が登録される。したがって、災害等の非常の事象の発生時には、情報送信装置30を配信先として非常情報Eが送信される。第1実施形態の通信装置33は、情報配信システム20から送信された非常情報Eを通信網12を介して受信する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の通信装置33は、受信部の例示である。
制御装置31は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理回路で構成され、情報送信装置30の各要素を統括的に制御する。放音装置34は、制御装置31から供給される音響信号Y1に応じた音を再生する。なお、制御装置31が生成した音響信号Y1をデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略した。記憶装置32は、制御装置31が実行するプログラムと制御装置31が使用する各種のデータとを記憶する。例えば半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体が記憶装置32として採用され得る。
第1実施形態の情報送信装置30は、非常情報Eに対応する文字列(以下「通知文字列」という)を発音した音声(以下「通知音声」という)を放音装置34から放音する。通知文字列は、例えば非常情報Eと同様の内容を表す文字列である。図3は、第1実施形態における通知文字列Xの説明図である。図3に例示される通り、通知文字列Xは、定型句Xaと1個以上の挿入句Xbとを含んで構成される。定型句Xaは、複数種の通知文字列Xにわたり共通に使用される定型的な文字列であり、1個以上の挿入区間B(B1,B2,…)を含む。挿入句Xbは、定型句Xaの挿入区間Bに挿入され得る文字列(例えば単語や句)である。図3では、地震の発生を通知する「[ ][ ]に[ ]の地震が発生しました。[ ]。」という定型句Xaが例示されている。挿入区間B1および挿入区間B2には、地震が発生した時刻を示す挿入句Xbが挿入される。挿入区間B3には地震の震度を示す挿入句Xbが挿入され、挿入区間B4には、地震に起因した津波の予測を示す挿入句Xbが挿入される。以上の説明から理解される通り、通知文字列Xは、非常情報Eと同様の内容を、事前に用意された定型句Xaと挿入句Xbとで表現した文字列である。
第1実施形態の記憶装置32は、図2に例示される通り、参照テーブルTを記憶する。参照テーブルTは、非常情報Eに対応する通知文字列Xを特定するためのデータテーブルである。第1実施形態の参照テーブルTは、定型句テーブルTaと挿入句テーブルTbとを含んで構成される。定型句テーブルTaは、相異なる複数の定型句Xa(Xa1,Xa2,…)の各々について識別情報Da(Da1,Da2,…)と音声データVa(Va1,Va2,…)とが登録されたデータテーブルである。識別情報Daは、1個の定型句Xaを識別するための符号列である。任意の1個の定型句Xaに対応する音声データVaは、その定型句Xaを発音したときの音声を表すデータである。
挿入句テーブルTbは、相異なる複数の挿入句Xb(Xb1,Xb2,…)の各々について識別情報Db(Db1,Db2,…)と音声データVb(Vb1,Vb2,…)とが登録されたデータテーブルである。識別情報Dbは、1個の挿入句Xbを識別するための符号列である。1個の挿入句Xbに対応する音声データVbは、その挿入句Xbを発音したときの音声を表すデータである。
以上に例示した参照テーブルTは、通信網12を介して配信装置(図示略)から配信されて記憶装置32に記憶される。なお、配信装置から情報送信装置30に参照テーブルTが配信される時期は任意である。例えば、所定の周期で参照テーブルTを定期的に更新することが可能である。また、記憶装置32に記憶されたプログラムの起動毎に、参照テーブルTを更新することも可能である。
図2の制御装置31は、記憶装置32に記憶されたプログラムを実行することで、通信装置33が情報配信システム20から受信した非常情報Eに対応する音響信号Y1を生成するための複数の機能(情報解析部51および信号処理部52)を実現する。なお、制御装置31の一部の機能を専用の電子回路で実現した構成、または、制御装置31の機能を複数の装置に分散した構成も採用され得る。
情報解析部51は、非常情報Eに対応する配信情報Dを生成する。第1実施形態の情報解析部51は、非常情報Eに対応する通知文字列Xを示す配信情報Dを生成する。通知文字列Xの配信情報Dは、通知文字列Xを識別するための識別情報である。第1実施形態の配信情報Dは、通知文字列Xを構成する定型句Xaの識別情報Daと挿入句Xbの識別情報Dbとを含んで構成される。
図4は、情報解析部51が配信情報Dを特定するための処理(以下「解析処理」という)Sa1を例示するフローチャートである。通信装置33が非常情報Eを受信するたびに図4の解析処理Sa1が実行される。
解析処理Sa1を開始すると、情報解析部51は、定型句テーブルTaに登録された複数の定型句Xaのうち非常情報Eに関連する1個の定型句Xaを特定する(Sa11)。具体的には、非常情報Eに含まれる情報(例えば災害に関する語句)を多く含む定型句Xaが、定型句テーブルTaの複数の定型句Xaから特定される。例えば、非常情報Eが震度の情報を含む場合、図3に例示された「[ ][ ]に[ ]の地震が発生しました。[ ]。」という定型句Xaが特定される。
定型句Xaを特定すると、情報解析部51は、当該定型句Xaの各挿入区間Bに挿入されるべき挿入句Xbを特定する(Sa12)。具体的には、情報解析部51は、定型句Xaの複数の挿入区間Bの各々について、挿入句テーブルTbに登録された複数の挿入句Xbのうち、非常情報Eに含まれる情報に関連する挿入句Xbを特定する。例えば、図3の定型句Xaを想定すると、挿入区間B1および挿入区間B2については、非常情報Eで指定された地震の発生時刻を示す挿入句Xbが特定される。また、挿入区間B3については、非常情報Eで指定された震度を示す挿入句Xbが特定され、挿入区間B4については、非常情報Eで指定された津波予測を示す挿入句Xbが特定される。
以上の手順により非常情報Eに対応する定型句Xaおよび挿入句Xbを特定すると、情報解析部51は、その定型句Xaの識別情報Daと各挿入句Xbの識別情報Dbとを含む配信情報Dを生成する(Sa13)。具体的には、定型句Xaの識別情報Daと各挿入句Xbに対応する識別情報Dbとを順番に配列した符号列が、通知文字列Xの配信情報Dとして生成される。解析処理Sa1の具体例は以上の通りである。
図2の信号処理部52は、情報解析部51が特定した配信情報Dに対応する音響信号Y1を生成する。図2に例示される通り、第1実施形態の信号処理部52は、音声合成部521と変調処理部522と信号混合部523とを含んで構成される。
音声合成部521は、配信情報Dが示す通知文字列Xを発音した通知音声を表す音声信号Vを生成する。音声信号Vの生成には、定型句テーブルTaに登録された音声データVaと挿入句テーブルTbに登録された音声データVbとが使用される。具体的には、音声合成部521は、情報解析部51が特定した定型句Xaの音声データVaと、情報解析部51が特定した各挿入句Xbの音声データVbとの組合せにより音声信号Vを生成する。例えば、音声合成部521は、定型句Xaの音声データVaが表す音声のうち、各挿入区間Bに対応する部分に、当該挿入区間Bについて情報解析部51が特定した挿入句Xbの音声データVbが表す音声を接続することで、通知音声の音声信号Vを生成する。なお、任意の文字列に対応する音声を合成する公知の音声合成処理を通知文字列Xに適用することで音声信号Vを生成することも可能である。したがって、音声データVaおよび音声データVbは省略され得る。
図2の変調処理部522は、情報解析部51が生成した配信情報Dを示す音響成分を表す変調信号Mを生成する。具体的には、変調処理部522は、例えば所定の周波数の正弦波等の搬送波を配信情報Dにより変調する周波数変調、または、拡散符号を利用した配信情報Dの拡散変調等の変調処理により変調信号Mを生成する。配信情報Dは、所定の周波数帯域F1の音響成分として変調信号Mに含まれる。具体的には、配信情報Dの音響成分の周波数帯域F1は、放音装置34による再生と端末装置40による収音とが可能な周波数帯域であり、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に包含される。
図2の信号混合部523は、音声合成部521が生成した音声信号Vと変調処理部522が生成した変調信号Mとを混合(例えば加算)することで音響信号Y1を生成する。信号混合部523が生成した音響信号Y1が放音装置34に供給される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の信号処理部52は、非常情報Eに対応する通知音声の音響成分(音声信号V)と配信情報Dを表す音響成分(変調信号M)とを含む音響信号Y1を生成して放音装置34に供給する。放音装置34は、音響信号Y1が表す音を放音する。すなわち、音声信号Vが表す通知音声と変調信号Mが表す配信情報Dの音響成分とが放音装置34から再生される。
以上の説明から理解される通り、第1実施形態の放音装置34は、非常情報Eに対応した通知音声を再生する音響機器として機能するほか、空気振動としての音波を伝送媒体とする音響通信で配信情報Dを周囲に送信する送信部としても機能する。すなわち、通信装置33による非常情報Eの受信毎に、当該非常情報Eに対応する通知音声(通知文字列X)の再生と、当該非常情報Eに対応する配信情報Dの送信とが実行される。第1実施形態では、通知音声を再生する放音装置34が配信情報Dの送信に流用されるから、放音装置34とは別個の通信機器で配信情報Dを周囲に送信する構成と比較して、情報送信装置30の構成が簡素化されるという利点がある。各端末装置40の利用者は、放音装置34から再生される通知音声を聴取することで、非常情報Eの内容(例えば地震の発生)を把握することが可能である。
図5は、第1実施形態の情報送信装置30が実行する処理を例示するフローチャートである。通信装置33が通信網12を介して非常情報Eを受信するたびに図5の処理が実行される。図5の処理を開始すると、情報解析部51は、図4に例示した解析処理Sa1により、非常情報Eに対応する配信情報Dを生成する。
音声合成部521は、非常情報Eに対応した通知音声を表す音声信号Vを生成する(Sa2)。具体的には、音声合成部521は、前述の例示の通り、定型句テーブルTaに登録された音声データVaと挿入句テーブルTbに登録された音声データVbとの組合せにより音声信号Vを生成する。他方、変調処理部522は、情報解析部51が生成した配信情報Dを音響成分として含む変調信号Mを生成する(Sa3)。なお、音声信号Vの生成(Sa2)と変調信号Mの生成(Sa3)との先後は反転され得る。信号混合部523は、音声合成部521が生成した音声信号Vと変調処理部522が生成した変調信号Mとから音響信号Y1を生成して放音装置34に供給する(Sa4)。
図6は、端末装置40の機能に着目した構成図である。図6に例示される通り、第1実施形態の端末装置40は、制御装置41と記憶装置42と通信装置43と収音装置44と表示装置45と放音装置46とを具備する。
通信装置43は、通信網12を介して他装置と通信する。第1実施形態では、前述の通り、情報配信システム20の配信先情報Aに各端末装置40が登録される。災害等の非常の事象の発生時には、端末装置40を配信先として非常情報Eが送信される。通信装置43は、情報配信システム20から送信された非常情報Eを通信網12を介して受信する。ただし、前述の通り、通信網12からの電波が充分な強度で到達しない場所(例えば屋内)にある端末装置40については、通信網12を介した通信を実行できない状況となり得る。
収音装置44は、周囲の音を収音する音響機器(マイクロホン)である。具体的には、収音装置44は、情報送信装置30の放音装置34による再生音を収音して音響信号Zを生成する。音響信号Zは、配信情報Dの音響成分を含有し得る。以上の説明から理解される通り、第1実施形態の収音装置44は、端末装置40の相互間の音声通話または動画撮影時の音声収録に利用されるほか、空気振動としての音波を伝送媒体とする音響通信で配信情報Dを受信する受信部としても機能する。情報送信装置30が周囲に配信情報Dを送信する音響通信に通信網12は不要である。すなわち、情報配信システム20から通信網12を介して非常情報Eを受信できない状況でも、端末装置40は、通信網12を利用しない音響通信により情報送信装置30から配信情報Dを受信できる。なお、収音装置44が生成した音響信号Zをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。
制御装置41は、例えばCPU等の演算処理回路で構成され、端末装置40の各要素を統括的に制御する。表示装置45は、例えば液晶表示パネルで構成され、制御装置41による制御のもとで各種の画像を表示する。例えば、通信装置43が受信した非常情報Eが表示装置45に表示される。放音装置46は、制御装置41から供給される音響信号Y2に応じた音を再生する。なお、制御装置41が生成した音響信号Y2をデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略した。記憶装置42は、制御装置41が実行するプログラムと制御装置41が使用する各種のデータとを記憶する。例えば半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体が記憶装置42として採用され得る。
第1実施形態の記憶装置42は、図6に例示される通り、参照テーブルUを記憶する。参照テーブルUは、配信情報Dに対応する関連情報Rを特定するためのデータテーブルである。第1実施形態の参照テーブルUは、定型句テーブルUaと挿入句テーブルUbとを含んで構成される。定型句テーブルUaは、配信情報Dに含まれ得る複数の識別情報Da(Da1,Da2,…)の各々について定型句Xa(Xa1,Xa2,…)が登録されたデータテーブルである。また、挿入句テーブルTbは、配信情報Dに含まれ得る複数の識別情報Db(Db1,Db2,…)の各々について挿入句Xb(Xb1,Xb2,…)が登録されたデータテーブルである。
以上に例示した参照テーブルUは、通信網12を介して配信装置(図示略)から配信されて記憶装置42に記憶される。なお、配信装置から端末装置40に参照テーブルUが配信される時期は任意である。例えば、所定の周期で参照テーブルUを定期的に更新することが可能である。また、記憶装置42に記憶されたプログラムの起動毎に、参照テーブルUを更新することも可能である。
制御装置41は、記憶装置42に記憶されたプログラムを実行することで、情報送信装置30が送信した配信情報Dに関する処理を実行するための複数の機能(情報抽出部61,提示制御部62および送信制御部63)を実現する。なお、制御装置41の一部の機能を専用の電子回路で実現した構成、または、制御装置41の機能を複数の装置に分散した構成も採用され得る。
情報抽出部61は、収音装置44が生成した音響信号Zから配信情報Dを抽出する。具体的には、情報抽出部61は、音響信号Zから配信情報Dを抽出するための処理(以下「情報抽出処理」という)を実行する。情報抽出処理は、例えば、音響信号Zのうち配信情報Dの音響成分を含む周波数帯域F1を強調するフィルタ処理と、配信情報Dに対する変調処理に対応した復調処理とを包含する。情報抽出処理は、例えば周期的に反復される。第1実施形態の配信情報Dは、前述の通り、定型句Xaの識別情報Daと各挿入句Xbの識別情報Dbとを含む。
図6の提示制御部62は、表示装置45による情報の表示を制御する。例えば、提示制御部62は、通信装置43が情報配信システム20から受信した非常情報Eを表示装置45に表示させる。また、第1実施形態の提示制御部62は、情報抽出部61が抽出した配信情報Dに対応する関連情報Rを表示装置45に表示させる。具体的には、提示制御部62は、配信情報Dに含まれる識別情報Daが示す定型句Xaを定型句テーブルUaから特定し、配信情報Dに含まれる各識別情報Dbが示す挿入句Xbを挿入句テーブルUbから特定する。そして、提示制御部62は、定型句テーブルUaから特定した定型句Xaの各挿入区間Bに、挿入句テーブルUbから特定した各挿入句Xbを挿入することで、通知文字列Xを生成して表示装置45に表示させる。例えば、図3の例示のように、「6時12分に震度5の地震が発生しました。津波の心配はありません。」という通知文字列Xが関連情報Rとして表示装置45に表示される。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、端末装置40が情報配信システム20から通信網12を介して非常情報Eを受信できない状況でも、情報送信装置30から音響通信で受信した配信情報Dを利用して、当該非常情報Eに対応する関連情報Rを利用者に提示することが可能である。
図6の送信制御部63は、情報送信装置30から受信した配信情報Dを音響通信により周囲に送信する。第1実施形態の送信制御部63は、情報抽出部61が抽出した配信情報Dを音響成分として含む音響信号Y2を生成して放音装置46に供給する。すなわち、放音装置46は、例えば音楽等の再生音声または通話音声等の音を再生する音響機器として機能するほか、空気振動としての音波を伝送媒体とする音響通信で配信情報Dを周囲に送信する送信部としても機能する。以上の説明から理解される通り、第1実施形態では、情報送信装置30から送信された配信情報Dが端末装置40により広範囲に拡散される。
具体的には、送信制御部63は、例えば所定の周波数の正弦波等の搬送波を配信情報Dにより変調する周波数変調、または、拡散符号を利用した配信情報Dの拡散変調等の変調処理により音響信号Y2を生成する。配信情報Dは、所定の周波数帯域F2の音響成分として音響信号Y2に含まれる。配信情報Dの音響成分の周波数帯域F2は、前述の変調信号Mにおける配信情報Dの音響成分の周波数帯域F1とは相違する。具体的には、周波数帯域F1と周波数帯域F2とは相互に重複しない。音響信号Y2における配信情報Dの周波数帯域F2は、放音装置46による放音と端末装置40による収音とが可能な周波数帯域であり、かつ、利用者が通常の環境で聴取する音の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に包含される。
端末装置40の収音装置44は、前述の通り、情報送信装置30の放音装置34による再生音を収音するほか、他の端末装置40の放音装置46による再生音を収音可能である。情報送信装置30の放音装置34による再生音を収音装置44が収音した場合、情報抽出部61は、当該情報送信装置30が音響通信で送信した配信情報Dを音響信号Zから抽出する。他方、他の端末装置40の放音装置46による再生音を収音装置44が収音した場合、情報抽出部61は、当該端末装置40が音響通信で送信した配信情報Dを音響信号Zから抽出する。すなわち、第1実施形態の端末装置40は、相異なる複数の経路(情報送信装置30からの経路と他の端末装置40からの経路)の音響通信により配信情報Dを取得可能である。
図7は、第1実施形態の端末装置40が実行する処理を例示するフローチャートである。記憶装置42に記憶されたプログラムの起動を契機として、例えば所定の周期で図7の処理が反復される。
端末装置40の情報抽出部61は、収音装置44が生成した音響信号Zに対する情報抽出処理を実行し(Sb1)、配信情報Dを抽出できたか否かを判定する(Sb2)。配信情報Dが抽出されない場合(Sb2:NO)には図7の処理は終了する。配信情報Dが抽出された場合(Sb2:YES)、提示制御部62は、当該配信情報Dに対応する関連情報Rを生成して表示装置45に表示させる(Sb3)。
また、送信制御部63は、情報抽出部61が抽出した配信情報Dが、情報送信装置30から送信されたものであるか否かを判定する(Sb4)。具体的には、音響信号Zのうち周波数帯域F1から配信情報Dが抽出された場合には、情報送信装置30が送信した配信情報Dが抽出されたと判定し(Sb4:YES)、配信情報Dが周波数帯域F2から抽出された場合には、他の端末装置40が送信した配信情報Dが抽出されたと判定する(Sb4:NO)。
情報送信装置30から配信情報Dを受信した場合(Sb4:YES)、送信制御部63は、当該配信情報Dを音響通信により周囲に送信する(Sb5)。他方、他の端末装置40から配信情報Dを受信した場合(Sb4:NO)、送信制御部63は、当該配信情報Dの送信を実行しない。
図8は、以上に例示した構成および動作を前提とした通信システム10の動作例(情報提示方法の一例)である。図8に例示される通り、情報送信装置30は、情報通信システム10から通信網12を介して受信した非常情報Eに対応する配信情報Dを音響通信により周囲に送信する。図8では、複数の端末装置40のうちの1個の端末装置40-1(第1端末装置40の例示)が、情報送信装置30から送信された配信情報Dを受信した場合が想定されている。端末装置40-1は、配信情報Dに対応する関連情報Rを表示装置45に表示させる(Sb3)。端末装置40-1が受信した配信情報Dの送信元は情報送信装置30であるから(Sb4:YES)、端末装置40-1は、当該配信情報Dを音響通信により周囲に送信する(Sb5)。
図8では、端末装置40-1から送信された配信情報Dが複数の端末装置40-2(第2端末装置40の例示)に到達した場合が想定されている。端末装置40-2は、端末装置40-1から受信した配信情報Dに対応する関連情報Rを表示装置45に表示させる(Sb3)。ここで、複数の端末装置40-2の各々と情報送信装置30との間には、音波を妨害する障害物が存在し、情報送信装置30から送信された配信情報Dは各端末装置40-2には到達しない。すなわち、端末装置40-2が受信した配信情報Dの送信元は端末装置40-1である(Sb4:NO)。したがって、端末装置40-2による配信情報Dの送信は実行されない。
以上に説明した通り、第1実施形態では、情報送信装置30が、通信網12を介して受信した非常情報Eに対応する配信情報Dを音響通信により送信し、端末装置40が、情報送信装置30から受信した配信情報Dに対応する関連情報Rを表示させる。したがって、端末装置40が情報配信システム20から通信網12を介して非常情報Eを受信できない状況でも、情報送信装置30から送信された配信情報Dを利用して端末装置40が関連情報Rを表示することが可能である。
また、第1実施形態では、情報送信装置30から配信情報Dを受信した端末装置40-1が、当該配信情報Dを周囲の端末装置40-2に送信する。したがって、端末装置40-2が、情報配信システム20から送信された非常情報Eと情報送信装置30から送信された配信情報Dとの何れも受信できない状況でも、端末装置40-1から送信された配信情報Dを利用して端末装置40-1が関連情報Rを表示することが可能である。
第1実施形態では、情報送信装置30が配信情報Dの送信に利用する周波数帯域F1と、端末装置40が配信情報Dの送信に利用する周波数帯域F2とが相違する。したがって、情報送信装置30が送信する配信情報Dと端末装置40が送信する配信情報Dとの干渉を抑制することが可能である。
また、第1実施形態では、端末装置40が、情報送信装置30から配信情報Dを受信した場合には当該配信情報Dを音響通信により周囲に送信し、他の端末装置40から配信情報Dを受信した場合には配信情報Dの送信を実行しない。したがって、過度に多数の端末装置40から配信情報Dが送信される可能性を低減することが可能である。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各構成において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
端末装置40は、通信網12を介して情報配信システム20と通信可能な状態では、情報配信システム20から配信(プッシュ配信)された非常情報Eを受信する。また、端末装置40は、通信網12を介した通信の可否に関わらず、情報送信装置30または他の端末装置40から音響通信により配信情報Dを受信する。第2実施形態の端末装置40(提示制御部62)は、図9に例示される通り、情報配信システム20から受信した非常情報Eと、情報送信装置30または他の端末装置40から受信した配信情報Dに対応する関連情報Rとの双方を、表示装置45に表示させる。
図9の領域G1は、非常情報Eが表示される領域であり、領域G2は、関連情報Rが表示される領域である。領域G1には、地震等の非常の事象に関する複数の項目(発生時刻,震度,津波予測)の各々について、非常情報Eが示す情報が表示される。他方、領域G2には、関連情報Rが示す通知文字列Xが表示される。以上の説明から理解される通り、領域G1には、非常の事象に関する簡略な情報が表示され、領域G2には、同様の事象に関する詳細な情報が表示される。
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、情報配信システム20から受信した非常情報Eと、情報送信装置30または他の端末装置40から受信した配信情報Dに対応する関連情報Rとの双方が、表示装置45に表示される。したがって、非常情報Eおよび関連情報Rという複数の形式で、非常の事象に関する情報を利用者が確認できるという利点がある。
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)前述の各形態では、配信情報Dが情報送信装置30から送信されたものであるか否かを、配信情報Dが抽出された周波数帯域(F1/F2)に応じて判定したが、配信情報Dの送信元(情報送信装置30または端末装置40)を判別するための方法は以上の例示に限定されない。例えば、配信情報Dの送信元を示す補助情報(例えばフラグ)を配信情報Dに付加して、情報送信装置30または端末装置40から送信することも可能である。配信情報Dを受信した端末装置40の送信制御部63は、配信情報Dに付加された補助情報を参照することで、当該配信情報Dの送信元(情報送信装置30または他の端末装置40)を判定する(Sb4)。
(2)前述の各形態では、端末装置40が、情報送信装置30から配信情報Dを受信した場合に当該配信情報Dを周囲に送信し、他の端末装置40から配信情報Dを受信した場合には配信情報Dを送信しない構成を例示した。端末装置40が配信情報Dを送信(すなわち拡散)するか否かを切替える条件は、以上の例示に限定されない。具体的には、非常情報Eまたは関連情報Rの種別に応じて、端末装置40による配信情報Dの送信の有無を切替えることも可能である。
例えば、情報送信装置30は、非常情報Eが示す事象の種別を示す情報(以下「参照情報」という)を配信情報Dに付加して周囲に送信する。配信情報Dを受信した端末装置40の送信制御部63は、配信情報Dに付加された参照情報を参照することで、当該配信情報Dを周囲に送信するか否かを決定する。例えば、地震または津波等の自然災害に関する緊急性の高い事象を参照情報が示す場合、送信制御部63は、情報送信装置30から受信した配信情報Dを音響通信により周囲に送信する。他方、緊急性が低い事象(例えば不審者情報)を参照情報が示す場合、送信制御部63は配信情報Dの送信を実行しない。非常情報Eまたは関連情報Rの優先度を参照情報により指定することも可能である。送信制御部63は、参照情報が示す優先度が所定の閾値を上回る場合には配信情報Dを周囲に送信し、優先度が閾値を下回る場合には配信情報Dの送信を実行しない。以上の構成によれば、緊急性の高い情報を多数の端末装置40に提供することが可能である。すなわち、非常情報Eの緊急性に応じて、配信情報Dが送信される範囲が変更される。
(3)前述の各形態では、情報送信装置30または他の端末装置40から送信された配信情報Dを端末装置40が受信するか否か(具体的には情報抽出処理を実行するか否か)を切替えることも可能である。具体的には、通信網12を介した通信の可否に応じて配信情報Dの受信の有無を切り替えることが想定される。例えば、端末装置40が通信網12を介した通信を実行できない状態では、前述の各形態と同様に、情報抽出部61が情報抽出処理を実行する。他方、端末装置40が通信網12を介して通信可能な状態(すなわち、端末装置40が情報配信システム20から非常情報Eを受信可能な状態)では、情報抽出部61は情報抽出処理を実行しない。すなわち、配信情報Dの受信が省略される。
また、端末装置40において指定された言語(以下「使用言語」という)に応じて配信情報Dの受信の有無を切り替えることも可能である。非常情報Eが示す文字列の言語と端末装置40の使用言語とが一致しない場合には、非常情報Eが示す文字列を端末装置40に表示しただけでは、端末装置40の利用者が当該文字列を理解できない可能性がある。そこで、非常情報Eが示す文字列の言語と端末装置40の使用言語とが一致しない場合に、端末装置40が配信情報Dを受信する(例えば情報抽出部61が情報抽出処理を実行する)構成が好適である。端末装置40の記憶装置42には、使用言語の文字列(定型句Xa,挿入句Xb)が登録された参照テーブルU(定型句テーブルUaおよび挿入句テーブルUb)が記憶される。提示制御部62は、参照テーブルUを参照することで、配信情報Dに対応する関連情報R(すなわち使用言語の文字列)を生成して表示装置45に表示させる。他方、非常情報Eが示す文字列の言語と端末装置40の使用言語とが一致する場合(すなわち非常情報Eの文字列の言語を端末装置40の利用者が理解できる場合)、端末装置40は配信情報Dを受信しない。
(4)前述の各形態では、音波を伝送媒体とする音響通信で情報送信装置30から端末装置40に配信情報Dを送信したが、情報送信装置30から配信情報Dを送信するための通信方式は音響通信に限定されない。例えば、電波または赤外線等の電磁波を伝送媒体とした無線通信で情報送信装置30から端末装置40に配信情報Dを送信することも可能である。例えば、前述の各形態における放音装置34が無線通信用の通信機器に置換される。具体的には、Bluetooth(登録商標)またはWiFi(登録商標)等の無線通信が配信情報Dの送信に好適である。
端末装置40が配信情報Dを周囲に送信するための通信方式についても同様であり、前述の各形態で例示した音響通信には限定されない。例えば、電磁波を伝送媒体とした無線通信で端末装置40が配信情報Dを周囲に送信することも可能である。すなわち、端末装置40の放音装置46は無線通信用の通信機器に置換され得る。また、情報送信装置30が配信情報Dを送信する通信方式と端末装置40が配信情報Dを送信する通信方式とを相違させることも可能である。
以上の例示から理解される通り、情報送信装置30または端末装置40により配信情報Dの送信には、移動体通信網等の通信網12が介在しない近距離無線通信が好適であり、音波を伝送媒体とする音響通信と電磁波を伝送媒体とする無線通信とは、近距離無線通信の例示である。なお、前述の各形態で例示した音響通信によれば、例えば遮音壁の設置により通信範囲を容易に制御できるという利点がある。
(5)前述の各形態では、通知文字列Xの識別情報を配信情報Dとして例示したが、通知文字列X自体を配信情報Dとして情報送信装置30または端末装置40から送信することも可能である。通知文字列Xを配信情報Dとして送信する構成では、端末装置40に参照テーブルUを保持する必要はない。また、前述の各形態では、非常情報Eの内容を表現した通知文字列Xを示す配信情報Dを例示したが、非常情報Eを配信情報Dとして情報送信装置30から送信することも可能である。すなわち、前述の各形態では、非常情報Eと配信情報Dとが相違する場合を例示したが、非常情報Eと配信情報Dとを一致させることも可能である。以上の例示から理解される通り、配信情報Dは、非常情報Eに対応する情報として包括的に表現される。
(6)情報抽出部61が抽出した配信情報Dを、各端末装置40が複数回にわたり反復的に送信することも可能である。ただし、多数の端末装置40の各々が配信情報Dの送信を一斉に反復すると、情報送信装置30と端末装置40との間および端末装置40同士の間で配信情報Dの干渉が発生し得る。したがって、各端末装置40が配信情報Dを送信する間隔を充分に確保した(各端末装置40による配信情報Dの送信の頻度を低減した)構成が好適である。
(7)配信情報Dの形式は任意であるが、定型句Xaの識別情報Daを上位側に配置するとともに挿入句Xbの識別情報Dbを下位側に配置したビット列が配信情報Dとして好適である。以上の構成では、配信情報Dの全体を抽出できない状況でも、上位側の識別情報Daさえ抽出できれば、端末装置40の利用者に報知すべき情報の概要(定型句Xa)は特定される。したがって、識別情報Daの受信により非常情報Eの概要(例えば地震の発生)を表示装置45に表示させることが可能である。他方、配信情報Dの全体を抽出できた場合には、挿入句Xbも含む詳細な情報が表示装置45に表示される。以上の例示から理解される通り、非常情報Eが示す情報の概要(例えば地震の発生)を示す部分と当該情報の詳細(例えば時刻および震度)を示す部分とを配信情報Dが含む構成が好適である。
(8)前述の各形態では、定型句Xaと1以上の挿入句Xbとを含む通知文字列Xを例示したが、挿入句Xbを含まない通知文字列Xを関連情報Rとして利用者に提示することも可能である。具体的には、情報送信装置30の記憶装置32が記憶する参照テーブルTには、相異なる複数の通知文字列X(例えば挿入句Xbを含まない定型句Xa)の各々について、識別情報と音声データとが登録される。情報解析部51は、非常情報Eに関連する通知文字列Xを特定し、当該通知文字列Xの識別情報を示す配信情報Dを生成する(Sa13)。また、信号処理部52は、通知文字列Xの識別情報Dに対応する音声データを利用して通知文字列Xの音声信号Vを生成する。したがって、前述の各形態と同様に、音声信号Vが表す通知音声と変調信号Mが表す配信情報Dの音響成分とが放音装置34から再生される。
他方、端末装置40の記憶装置42が記憶する参照テーブルUには、配信情報Dで指定され得る複数の識別情報の各々について通知文字列Xが登録される。提示制御部62は、情報抽出部61が抽出した配信情報Dが示す識別情報に対応した通知文字列Xを、関連情報Rとして参照テーブルUから特定したうえで表示装置45に表示させる。以上の例示から理解される通り、通知文字列Xが定型句Xaと挿入句Xbとを含む構成は省略され得る。なお、挿入句Xbを含む通知文字列Xと挿入句Xbを含まない通知文字列Xとを参照テーブルTおよび参照テーブルUの各々に登録することも可能である。
(9)前述の各形態では、関連情報Rを表示装置45に表示したが、関連情報Rを端末装置40の利用者に提示する方法は以上の例示に限定されない。例えば、関連情報Rが示す音声を放音装置46により再生することで関連情報Rを利用者に提示することも可能である。関連情報Rが示す音声の生成には、例えば公知の音声合成技術が利用され得る。
(10)前述の各形態では、日本語で表現された関連情報Rを例示したが、関連情報R(通知文字列X)の言語は任意である。例えば、情報送信装置30が保持する参照テーブルTから特定される通知文字列Xを他言語(以下「提示言語」という)で表現した文字列を関連情報Rとして利用者に提示することも可能である。提示言語は、例えば端末装置40において指定された言語である。
具体的には、端末装置40の記憶装置42は、提示言語の文字列(定型句Xa,挿入句Xb)が登録された参照テーブルU(定型句テーブルUaおよび挿入句テーブルUb)を記憶する。提示制御部62は、参照テーブルUを参照することで、配信情報Dに対応する関連情報R(すなわち提示言語の文字列)を生成して表示装置45に表示させる。なお、定型句Xaおよび挿入句Xbが複数の言語で表現された参照テーブルUを利用して、複数の言語のうち提示言語で表現された関連情報Rを表示することも可能である。また、特定の言語で表現された関連情報Rを機械翻訳技術により提示言語の文字列に変換したうえで表示装置45に表示させることも可能である。
(11)前述の各形態では、非常の事象に関する非常情報Eを情報配信システム20から配信したが、情報配信システム20から送信される情報は非常情報Eに限定されない。例えば、交通施設または観光施設等を案内するための情報を情報配信システム20から配信することも可能である。
(12)前述の各形態に係る情報送信装置30は、各形態での例示の通り、制御装置41とプログラムとの協働により実現される。好適な態様に係るプログラムは、コンピュータに、非常の事象に関する非常情報を情報配信システム20から通信網12を介して受信する処理と、前記非常情報に対応する配信情報を近距離無線通信により周囲に送信する処理とを実行させる。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。また、通信網を介した配信の形態でプログラムをコンピュータに提供することも可能である。
(12)以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
<態様1>
本発明の好適な態様(態様1)に係る情報提供方法は、情報送信装置と複数の端末装置とを利用した情報提供方法であって、前記情報送信装置が、非常の事象に関する非常情報を情報配信システムから通信網を介して受信し、前記非常情報に対応する配信情報を近距離無線通信により周囲に送信し、前記複数の端末装置のうちの第1端末装置が、前記情報送信装置から送信された配信情報を受信し、前記配信情報に対応する関連情報を利用者に提示する。以上の態様によれば、第1端末装置が情報配信システムから通信網を介して非常情報を受信できない状況でも、情報送信装置が近距離無線通信により送信した配信情報を第1端末装置が受信し、当該配信情報に対応した関連情報を利用者に提示することが可能である。
<態様2>
態様1の好適例(態様2)においては、前記第1端末装置が、前記配信情報を近距離無線通信により周囲に送信し、前記複数の端末装置のうちの第2端末装置が、前記第1端末装置から送信された配信情報を受信し、前記配信情報に対応した関連情報を利用者に提示する。以上の態様によれば、第2端末装置が、情報配信システムから通信網を介して非常情報を受信できず、かつ、情報送信装置から送信された配信情報も受信できない場合でも、第1端末装置が近距離無線通信により送信した配信情報を受信し、当該配信情報に対応した関連情報を利用者に提示することが可能である。
<態様3>
態様2の好適例(態様3)において、前記情報送信装置が前記配信情報の送信に利用する周波数帯域と、前記第1端末装置が前記配信情報の送信に利用する周波数帯域とは相違する。以上の態様では、情報送信装置が配信情報の送信に利用する周波数帯域と、第1端末装置が配信情報の送信に利用する周波数帯域とが相違する。したがって、情報送信装置が送信した配信情報と第1端末装置が送信した配信情報との干渉を抑制することが可能である。
<態様4>
態様2または態様3の好適例(態様4)において、前記複数の端末装置の各々は、前記情報送信装置から配信情報を受信した場合には、当該配信情報を近距離無線通信により周囲に送信し、他の端末装置から配信情報を受信した場合には、前記配信情報の送信を実行しない。以上の態様では、端末装置が、情報送信装置から配信情報を受信した場合には当該配信情報を近距離無線通信により周囲に送信し、他の端末装置から配信情報を受信した場合には配信情報の送信を実行しない。したがって、過度に多数の端末装置から配信情報が送信される可能性(ひいては各端末装置が送信する配信情報が干渉する可能性)を低減することが可能である。
<態様5>
態様1から態様4の何れかの好適例(態様5)において、前記情報送信装置は、前記非常情報に対応した通知音声の音響成分と前記配信情報を表す音響成分とを含む音響信号を放音装置に供給することで、音響通信により前記配信情報を送信する。以上の態様では、非常情報に対応した通知音声の音響成分と配信情報を表す音響成分とを含む音響信号が放音装置に供給される。すなわち、非常情報に対応した通知音声を放音する放音装置が、音響通信により配信情報を送信する送信機として利用される。したがって、配信装置を送信するための近距離無線通信に専用される送信機が原理的には不要であるという利点がある。
<態様6>
態様1から態様5の何れかの好適例(態様6)において、前記第1端末装置は、前記情報配信システムから前記通信網を介して受信した非常情報と、前記情報送信装置から受信した配信情報に対応する関連情報とを表示装置に表示させる。以上の態様では、情報配信システムから配信された非常情報と、情報送信装置から送信された配信情報に対応する関連情報とを利用者に提示することが可能である。
<態様7>
本発明の好適な態様(態様7)に係る情報送信装置は、非常の事象に関する非常情報を情報配信システムから通信網を介して受信する受信部と、前記非常情報に対応する配信情報を近距離無線通信により周囲に送信する送信部とを具備する。