以下に添付図面を参照して、音波発信装置、音波発信プログラム、および音波発信方法実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本実施形態に係る情報システムSの全体構成の一例を示す図である。情報システムSは、図1に示すように、複数のビーコン4a~4cと、サーバ装置1と、ゲートウェイ装置3とを備える。なお、情報システムSは、防災システムともいう。
複数のビーコン4a~4c(以下、個々のビーコン4a~4cを特に区別しない場合は、単にビーコン4という)は、所定の識別信号を音波として発信する。ビーコン4が出力する音波は、人間にとって非可聴な高周波音波であるものとする。ビーコン4は、本実施形態における音波発信装置の一例である。なお、情報システムSにビーコン4の数は、図1に示す例に限定されるものではない。
所定の識別信号は、報知情報または警報情報(以下、単に「報知情報」という場合には、「警報情報」を含むものとする)を伝達可能な信号である。報知情報は、例えば、火災、災害、震災、またはその他の緊急事態等の発生を示す情報である。報知情報は、具体的な報知内容(火災、災害、震災、またはその他の緊急事態等)を識別可能な情報であっても良いが、単に何らかの火災、災害、震災、またはその他の緊急事態等が発生したことを示す情報であっても良い。また、報知情報は、避難経路、または避難方向等を示すものでも良い。また、識別信号は、ビーコン4を特定可能な識別情報、またはビーコン4の位置を示す位置情報を含むものであっても良い。
また、ビーコン4には、マイクロフォンが搭載されており、外部の音を検出可能である。例えば、ビーコン4は、報知器6から出力された報知音または警報音を検出する。
また、ビーコン4は、ゲートウェイ装置3と無線通信または有線通信によって接続される。無線通信および有線通信の手法は特に限定されるものではないが、例えば、無線通信の場合は、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)、920MHz無線等を採用可能である。また、例えば、有線通信の場合は、USB(Universal Serial Bus)やEthernet(登録商標)等を採用可能である。
また、ビーコン4は、他のビーコン4と無線通信によって接続される。
ゲートウェイ装置3は、サーバ装置1とインターネット等のネットワーク2を介して接続される。ゲートウェイ装置3およびゲートウェイ装置3は、例えば、LTE(Long Term Evolution)等の通信回線によってネットワーク2に接続する。
サーバ装置1は、情報システムS全体を管理する。また、サーバ装置1は、ゲートウェイ装置3と無線通信または有線通信によって接続される。また、サーバ装置1は、LTE等の通信回線によって情報端末5と接続しても良い。
報知器6は、火災、災害、震災、またはその他の緊急事態等が発生した場合に、所定の報知音または所定の警報音(以下、単に「報知音」という場合には、「警報音」を含むものとする)を出力する装置である。報知器6が出力する所定の報知音は、人間の可聴域の音であるものとする。報知器6は、報知内容(火災、災害、震災、またはその他の緊急事態等)に応じて異なる警報音を出力しても良いし、報知内容に関わらず、同一の報知音を出力するものとしても良い。また、報知器6は、異常を検出するセンサを備え、異常を検出した場合に、所定の報知音を出力するものとしても良い。報知器6は、警報器ともいう。
情報端末5は、例えば、スマートフォンやタブレットPC等である。情報端末5にはマイクロフォンが搭載されており、ビーコン4から出力された所定の識別信号を、当該マイクロフォンによって受信可能である。情報端末5は、ビーコン4から出力された所定の識別信号から、報知情報またはビーコン4の位置を示す位置情報等を取得する。また、情報端末5は、サーバ装置1とLTE等の通信回線によって接続することにより、報知情報を取得しても良い。また、情報端末5は、サーバ装置1と通信することによって情報端末5の現在位置を示す位置情報等を取得しても良い。
情報端末5は、例えば、ビーコン4から受信した所定の識別信号に含まれる報知情報に基づいて、発生した災害等の内容、または避難経路等に関する報知情報をディスプレイに表示することにより、ユーザ(誘導対象者)に、報知情報を把握させる。なお、情報端末5における報知情報の活用の手法はこれに限定されるものではない。
なお、情報システムSの構成は図1に示す例に限定されるものではなく、複数のビーコン4のみを含むものであっても良い。また、ビーコン4は、ゲートウェイ装置3を介さずに、サーバ装置1と無線通信または有線通信によって接続されても良い。また、サーバ装置1がネットワーク2を介さずに、無線通信または有線通信によってゲートウェイ装置3と直接的に接続する構成を採用しても良い。また、情報システムSは、サーバ装置1を備えず、ゲートウェイ装置3がビーコン4を管理する機能を有しても良い。また、情報システムSは、情報端末5または報知器6を含むものとしても良い。
図2は、本実施形態に係るビーコン4のハードウェア構成の一例を示す図である。図2に示すように、ビーコン4は、通信インタフェース(I/F)41と、プロセッサ42と、メモリ43と、マイクロフォン44と、スピーカ45と、操作部46とを備える。
通信インタフェース(I/F)41は、ゲートウェイ装置3、サーバ装置1、または他のビーコン4と無線通信または有線通信で接続するためのインタフェースである。
プロセッサ42は、CPUまたは集積回路(IC)等であり、プログラムを実行してビーコン4全体を統括的に制御する。メモリ43は、例えば、ROM、RAM、またはフラッシュメモリ等の記憶装置であり、プロセッサ42によって実行されるプログラムや、合処理に用いられる各種の情報を記憶する。
マイクロフォン44は、ビーコン4の周囲の音を収集し、収集した音をプロセッサ42に送出する。
スピーカ45は、所定の識別信号を音波として発信(出力)する。スピーカ45は、本実施形態における音波出力部の一例である。また、ビーコン4は、スピーカ45の代わりに、ブザー等を音波出力部として備えても良い。なお、ビーコン4は、スピーカ45またはブザー等を複数備えても良い。
操作部46は、ユーザ(管理者等)の操作を受け付けるボタン等である。操作部46は、受け付けた操作を、プロセッサ42に送出する。
次に、ビーコン4の機能について説明する。
図3は、本実施形態に係るビーコン4の機能的構成の一例を示す図である。図3に示すように、ビーコン4は、通信部401と、識別信号生成部402と、音検出部403と、音波出力制御部404と、受付部405と、記憶部450とを備える。
記憶部450は、例えばメモリ43によって実現される。また、本実施の形態のビーコン4で実行されるプログラムは、上述した各部(通信部、識別信号生成部、音検出部、音波出力制御部、受付部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはプロセッサ42がメモリ43等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、通信部、識別信号生成部、音検出部、音波出力制御部、受付部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
記憶部450は、報知音情報451と、設定情報452と、音波情報453とを備える。報知音情報451、設定情報452、音波情報453は、サーバ装置1から送信されて記憶部450に記憶されるものとしても良いし、予め記憶部450に登録されているものとしても良い。
報知音情報451は、所定の報知音や警報音に関する情報である。例えば、報知音情報451は、所定の報知音の周波数、振幅(音量)、報知時間等を含む。また、所定の報知音が複数種類ある場合には、例えば、報知音情報451には、報知音の種類を特定可能な識別情報と、周波数、振幅(音量)、報知時間等を対応付けられる。
設定情報452は、音波出力の発信または停止(オン・オフ)、出力される音波の音量、音波の出力開始時間、音波の出力停止時間、周波数の変更値などの情報が対応付けられた情報である。また、周波数の変更値は、報知対象である移動体について、想定している速度ごとに異なる値が登録されても良い。また、報知対象である移動体が一種類の場合、例えば歩行者のみが対象として想定される場合には、周波数の変更値は、歩行者として想定される速度のみが登録されていても良い。周波数の変更値の詳細については後述する。
音波情報453は、識別信号の出力に使用される音波の周波数帯、周波数、識別ID等の情報が対応付けられた情報である。識別IDは、識別信号の種類を特定可能な情報である。例えば、識別IDは、報知内容(火災、災害、震災、またはその他の緊急事態等)ごとに異なるものでも良いし、緊急度等に応じて異なるものでも良い。
通信部401は、他のビーコン4から、他のビーコン4が所定の報知音を検出したことを示す通知を受信する。通信部401は、他のビーコン4が所定の報知音を検出したことを示す通知を受信した場合に、当該通知を受信したことを、識別信号生成部402および音波出力制御部404に送出する。
また、通信部401は、音検出部403が所定の報知音を検出した場合に、所定の報知音を検出したことを他のビーコン4に通知する。
図4は、本実施形態に係る他のビーコン4への通知について説明する図である。図4に示すように、報知器6が出力した所定の報知音を、ビーコン4aが検出した場合、ビーコン4aは、他のビーコン4bに、所定の報知音を検出したことを通知する。このような通知により、ビーコン4b自体は報知器6が出力した所定の報知音を検出していない場合であっても、災害等の発生により所定の報知音が出力されていることを、ビーコン4aからの通知から判別可能となる。
なお、ビーコン4同士が直接的に通知を送受信せずに、ゲートウェイ装置3を介して通信するものとしても良い。
図3に戻り、識別信号生成部402は、所定の識別信号を生成する。識別信号生成部402は、例えば、音検出部403により所定の報知音が検出された場合、または通信部401により他のビーコン4から所定の報知音を検出したことを示す通知が受信された場合、識別信号の内容を変更しても良い。例えば、識別信号生成部402は、報知内容(火災、災害、震災、またはその他の緊急事態等)に応じて異なる識別信号を生成しても良い。識別信号生成部402は、生成した識別信号を、音波出力制御部404に送出する。
音検出部403は、予め記憶された、または自ら学習して記憶した所定の報知音と、マイクロフォン44によって収集された外部からの音とに基づき、所定の報知音を検出する。本実施形態においては、音検出部403は、マイクロフォン44によって収集された外部からの音を、記憶部450に記憶された報知音情報451と照合し、外部からの音が報知音情報451に登録された所定の報知音であるか否かを判定する。音検出部403は、外部からの音が報知音情報451に登録された所定の報知音であると判定した場合に、所定の報知音を検出したことを、識別信号生成部402および音波出力制御部404に送出する。
音波出力制御部404は、スピーカ45を制御し、識別信号生成部402によって生成された識別信号を、音波としてスピーカ45から出力させる。通常時においては、音波出力制御部404は、音波情報453に予め定義された周波数の音波で、識別信号をスピーカ45から出力させる。
また、音波出力制御部404は、音検出部403により所定の報知音が検出された場合に、識別信号で用いられる周波数を、移動体の所定の速度に応じた周波数に変更する。
移動体は、例えば人であり、情報端末5を保持しているものとする。また、人が乗り物に乗っていることを想定する場合は、当該乗り物を移動体とし、その速度を所定の速度として設定しても良い。
音波出力制御部404は、例えば、周波数を0.95~1.05の範囲の係数で乗算(音の再生周波数を95~105%の範囲で設定)することによって周波数を変更し、変更後の周波数の音波で、所定の識別信号をスピーカ45に出力させる。周波数の変更に用いられる係数は、設定情報452に登録された周波数の変更値である。音波出力制御部404が周波数の設定を変更することで、ビーコン4に近づいて来る方向または遠ざかる方向に早く移動しても識別信号を取得可能となる。また、音波出力制御部404が周波数の設定を変更することで、移動体(人等)がビーコン4に近づいて来る方向と、遠ざかる方向のいずれかに移動する場合に、移動体と共に移動する情報端末5が識別信号を取得しやすくなるように制御することができる。
また、音波出力制御部404は、音検出部403により所定の報知音が検出された場合に、識別信号の出力音量の設定を、予め定められた大きさ以上の音量に変更する。具体的には、音波出力制御部404は、音検出部403により所定の報知音が検出された場合に、設定情報452に登録された音波の音量を変更して大きくする。音波出力制御部404が識別信号の出力音量の設定を予め定められた大きさ以上の音量に変更することにより、スピーカ45から出力される識別信号の音波の音量が予め定められた大きさ以上となる。
また、音波出力制御部404は、音検出部403により所定の報知音が検出された場合だけではなく、通信部401により他のビーコン4から所定の報知音を検出したことを示す通知を受信された場合にも、音検出部403により所定の報知音が検出された場合と同様に、識別信号で用いられる周波数および識別信号の出力音量の設定を変更する。
本実施形態においては、音波出力制御部404によって識別信号で用いられる周波数および識別信号の出力音量の設定が変更された状態を、「報知モード」という。また、「報知モード」以外、すなわち、設定情報452または音波情報453に予め登録された周波数および音量のまま、識別信号を出力する状態を、「通常モード」という。
受付部405は、操作部46から入力されたユーザの操作を受け付ける。なお、ビーコン4は通信インタフェース41を介して、外部装置(例えばサーバ装置1)から、設定の変更等のユーザの操作を受け付けても良い。
次に、図5を用いて、周波数の変更について説明する。図5は、本実施形態に係る周波数の変更について説明する図である。図5の(a)は、通常モードにおける識別信号の音量及び周波数を示す。ここで、図5においては、通常モードにおける識別信号を、識別信号ID1といい、識別信号ID1を出力する音波を、音波ID1という。
通常モードにおいて、情報端末5が音波ID1を取得可能な範囲は、図5の(a)に示すとおりであり、ビーコン4に近づく方向と遠ざかる方向のどちらに情報端末5が移動する場合でも同様に音波ID1が取得可能であるとする。
また、図5(b)~図5(d)は音波出力制御部404によってビーコン4が報知モードへと移行した際の、識別信号の設定変更について示す。ここで、図5においては、報知モードにおける識別信号を、識別信号ID2といい、識別信号ID2を出力する音波を、音波ID2という。
音波はドップラー効果により移動速度によって周波数が変化し、音源に近づく方向に移動すると周波数が高くなり、音源から遠ざかる方向に移動すると周波数が低くなる。このため、情報端末5の移動による周波数の変化によって識別信号が取得しにくくなる場合がある。
図5(b)に示す例では、音波出力制御部404が音波の周波数を低く設定して出力している。この場合、情報端末5がビーコン4に近づく方向に移動すると取得する周波数は高くなるので、元々の周波数に近くなり、識別信号を取得しやすくなる。この周波数変更により、近づく方向で取得できる移動速度範囲は、通常時よりも広い範囲となる。
また、図5(c)に示す例では、音波の周波数を高く設定して出力している。この場合、情報端末5がビーコン4に遠ざかる方向に移動すると取得する周波数は低くなるので、元々の周波数に近くなり、識別信号を取得しやすくなる。このような周波数変更により、遠ざかる方向で取得できる移動速度範囲は、通常時よりも広い範囲となる。
また、図5(d)に示す例では、音波の周波数を低く設定したものと高く設定したものを組合せている。なお、図5(d)に示す例では、ビーコン4は、スピーカ45を2つ備えるものとする。このとき、周波数の低い方の音波では近づく方向(図5(d)のAの向き)、周波数を高い方の音波では遠ざかる方向(図5(d)のBの向き)で識別信号を取得しやすくなるため、情報端末5を保持している人がビーコン4付近を一方向に通過する際に識別信号が取得しやすくなる。
音波出力制御部404は、情報端末5を持った人や物に対して注意喚起又は誘導したい方向に合わせて周波数の変更を行うものとする。注意喚起又は誘導したい方向は、予め記憶部450に設定されても良いし、発生した災害等の種類、または災害等の発生場所等に応じて異なるものとしても良い。例えば、音波出力制御部404が、注意喚起又は誘導したい方向に合わせて(例えば、近づくのが危険な方向や避難経路方向に合わせて)周波数の変更を行うことで、情報端末5を保持している人が適切な方向に移動している場合に識別信号を取得しやすくなるように制御することができる。
なお、通常モードにおいても、ビーコン4に近づく方向と遠ざかる方向で、どちらかの方向で取得しやすいように設定していても良い。また、通常モードまたは報知モードにおいて、ビーコン4に近づく方向と遠ざかる方向とで異なる識別信号を出力しても良い。
次に、図6を用いて、音量の変更について説明する。図6は、本実施形態に係る音量の変更について説明する図である。図6(a)は、通常モードにおける音量で出力された識別信号を、情報端末5が取得(受信)可能な音波ID取得範囲900aの一例を示す。
また、図6(b)は、報知モードにおける音量で出力された識別信号を、情報端末5が取得(受信)可能な音波ID取得範囲900bの一例を示す。図6(a)および図6(b)に示すように、識別信号の出力音量が大きくなることで、通常モード時よりも広い範囲で、情報端末5が識別信号を取得可能となる。
図7は、本実施形態に係るビーコン4から出力される識別信号の音量と周波数の一例を示す模式図である。図7では、線間隔が狭いほど高い周波数、線全体の幅が広いほど大きい音量を示す。図7に示す例では、周波数はB<A<Cの順で高くなり、音量はa<bである。つまり、図7に示すように、報知モードにおける音量bは、通常モードにおける音量aよりも大きい。また、図7に示す例では、通常モードにおいては周波数はAであり、報知モードにおいては、ビーコン4の一方(図7の右側)に向けて出力される音波の周波数はC、もう一方(図7の左側)に向けて出力される音波の周波数はBとする。
音量または周波数の設定は図7に示す例に限定されるものではなく、例えば、報知モードでは、周波数B=Cとなるよう設定しても良いし、音量b=aとなるように設定しても良い。
図8は、本実施形態に係るビーコン4が施設等に設置された場合における通常モードから報知モードへの変化の一例を示す図である。図8においては、施設等の通路の天井に、ビーコン4a~4cおよび報知器6a~6cが設置されているものとする。
図8(a)は、通常モードの状態を示す。図8(a)においては、いずれの報知器6も報知音を出力していないものとする。
ここで、図8(b)および図8(c)は、報知モードの状態を示す。図8(b)および図8(c)においては、報知器6cが、所定の報知音を出力している。例えば、ビーコン4cが、報知器6cから出力された報知音を検出した場合、図8(b)に示すように、ビーコン4cは、他のビーコン4a,4bに報知音を検出したことを通知する。また、ビーコン4cは、図8(c)に示すように、ゲートウェイ装置3を介して他のビーコン4a,4bに報知音を検出したことを通知しても良い。
また、図9は、本実施形態に係る報知モードにおける誘導の一例を示す図である。図9に示す例では、ビーコン4a~4cの各々の音波出力制御部404は、報知音を検出したビーコン4c付近の場所が危険だと認識して、誘導対象者がその方向へ近づくのを防止する目的で、誘導対象者が保持している情報端末5がビーコン4cに近づく場合に識別信号を取得しやすくなるよう周波数及び音量の設定を変更している。
また、図10は、本実施形態に係る報知モードにおける誘導の他の一例を示す図である。図10に示す例では、図9で示した例に加えて、報知音を検出したビーコン4cから少し離れた場所に設置されたビーコン4d,4eでは、ビーコン4cに近づく方向ではなく離れる方向で識別信号を取得しやすくなるように、周波数及び音量の設定を変更している。このため、図10に示す例では、誘導対象者を安全な場所へと誘導するようにしている。この場合、ビーコン4a~4cと、ビーコン4d,4eとでは、識別信号の内容が異なるものであっても良い。
また、図11は、本実施形態に係る他のビーコン4への通知範囲の一例を示す図である。図11に示すように、ビーコン4の通信部401は、音検出部403が所定の報知音を検出した場合に、所定の報知音を検出したことを他のビーコン4に通知する。本実施形態においては、通信部401は、予め定められた通信範囲800に含まれる他のビーコン4を通知の対象とする。図11に示す例では、ビーコン4aが報知器6から出力された所定の報知音を検出した場合、ビーコン4aは、所定の報知音を検出したことを、所定の通信範囲800に含まれるビーコン4b,4cに通知する。また、ビーコン4x,4yは所定の通信範囲800の外であるため、ビーコン4aは、ビーコン4x,4yには通知をしない。
予め定められた通信範囲800は、例えば、記憶部450の設定情報452に記憶される。また、この通信範囲800は、操作部46から入力された操作、またはサーバ装置1から送信された指示等によって設定されても良い。
次に、以上のように構成されたビーコン4で実行される処理の流れについて説明する。図12は、本実施形態に係るビーコン4で実行される処理の流れの一例を示すフローチャートである。このフローチャートの処理の実行時においては、ビーコン4は通常モードであるものとする。
まず、識別信号生成部402は、所定の識別信号を生成する(S1)。通常モードにおいては、識別信号が伝達する報知情報は、例えば、ビーコン4を特定可能な識別情報、またはビーコン4の位置を示す位置情報、または現在災害等が発生していないことを示す情報等でも良い。識別信号生成部402は、生成した識別信号を、音波出力制御部404に送出する。
次に、音波出力制御部404は、スピーカ45を制御し、識別信号生成部402によって生成された識別信号を、音波としてスピーカ45から出力(発信)させる(S2)。通常モードにおいては、音波出力制御部404は、音波情報453に予め定義された周波数の音波で、識別信号をスピーカ45から出力させる。
次に、通信部401は、他のビーコン4から、他のビーコン4が所定の報知音を検出したことを示す通知を受信したか否かを判定する(S3)。通信部401は、他のビーコン4から、他のビーコン4が所定の報知音を検出したことを示す通知を受信したと判定した場合には(S3“Yes”)、S6の処理に進む。また、通信部401は、他のビーコン4から、他のビーコン4が所定の報知音を検出したことを示す通知を受信していないと判定した場合に(S3“No”)、S4の処理に進む。
次に、音検出部403は、マイクロフォン44によって収集された外部からの音を、記憶部450に記憶された報知音情報451と照合し、所定の報知音を検出したか否かを判定する(S4)。音検出部403は、所定の報知音を検出していないと判定した場合(S4“No”)、S1の処理に戻る。また、音検出部403は、所定の報知音を検出したと判定した場合(S4“Yes”)、S5の処理に進む。
次に、通信部401は、他のビーコン4に報知音の検出を通知する(S5)。
そして、音波出力制御部404は、ビーコン4のモードを、報知モードに移行する(S6)。報知モードにおいては、音波出力制御部404は、まず、識別信号の周波数の設定を、誘導対象者(移動体の一例)の速度に応じた周波数に変更する(S7)。また、音波出力制御部404は、識別信号の音量の設定を変更する(S8)。周波数及び音量は、ビーコン4の設置場所、誘導方向、または災害等の発生内容等に応じて異なるものとしても良い。
そして、識別信号生成部402は、所定の識別信号を生成する(S9)。報知モードにおいては、識別信号生成部402は、通常モードとは異なる報知情報を伝達する識別信号を生成するものとしても良い。識別信号生成部402は、生成した識別信号を、音波出力制御部404に送出する。
そして、音波出力制御部404は、スピーカ45を制御し、識別信号生成部402によって生成された識別信号を、音波としてスピーカ45から出力(発信)させる(S10)。この際、音波出力制御部404は、変更後の周波数または音量で、識別信号を出力させるものとする。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
このように、本実施形態のビーコン4は、予め記憶された、または自ら学習して記憶した所定の報知音と、外部からの音とに基づき、所定の報知音を検出し、所定の報知音を検出した場合に、所定の識別信号で用いられる周波数を、移動体の所定の速度に応じた周波数に変更する。このため、本実施形態のビーコン4によれば、正確な情報の伝達および適切な方向へ誘導対象者を誘導可能な音波発信装置を提供することができる。
また、本実施形態のビーコン4は、周波数を0.95~1.05の範囲の係数で乗算することによって周波数を変更し、変更後の周波数の音波で、所定の識別信号をスピーカ45から出力する。このため、本実施形態のビーコン4によれば、情報端末5を保持している誘導対象者に対して注意喚起または誘導を効果的に行うことができる。
また、本実施形態のビーコン4は、他のビーコン4から、他のビーコン4が所定の報知音を検出したことを示す通知を受信した場合に、識別信号で用いられる周波数を、移動体の所定の速度に応じた周波数に変更する。このため、本実施形態のビーコン4によれば、所定の報知音を直接的に検出することができなかった場合にも、他のビーコン4からの通知に基づいて、正確な情報の伝達および適切な方向へ誘導対象者を誘導可能な音波発信装置を提供することができる。
また、本実施形態のビーコン4は、所定の報知音を検出した場合に、所定の報知音を検出したことを他のビーコン4に通知する。このため、本実施形態のビーコン4によれば、周辺の他のビーコン4を報知モードに移行させることができ、誘導対象者に対して効率的な誘導を実施することができる。
また、本実施形態のビーコン4の所定の報知音を検出した場合の通知対象は、予め定められた通信範囲800に含まれる他のビーコン4である。このため、本実施形態のビーコン4によれば、例えば、所定の階またはフロア、部屋など、設定した任意の範囲の他のビーコン4にのみ通知を行うため、誘導対象者に対して適切な誘導を実施することができる。
また、本実施形態のビーコン4は、所定の報知音が検出された場合に、所定の識別信号の出力音量の設定を、予め定められた大きさ以上の音量に変更する。このため、本実施形態のビーコン4によれば、周波数の変更だけではなく、音量の増大による所定の識別信号の受信可能な範囲の拡大によって、情報端末5を保持している誘導対象者に対してより効果的に情報の伝達または誘導をすることができる。
なお、本実施形態においては、ビーコン4は、所定の報知音を検出した場合に、他のビーコン4に所定の報知音を検出したことを通知する機能、および他のビーコン4から所定の報知音を検出したことの通知を受ける機能を有するものとしたが、当該機能は必須ではない。
なお、本実施形態においては、所定の報知音が検出された場合、または他のビーコン4から、他のビーコン4が所定の報知音を検出したことを示す通知を受信した場合に、識別信号で用いられる周波数および識別信号の出力音量の設定が変更されるものとしたが、周波数と出力音量のいずれか一方のみが変更されても良い。
なお、ビーコン4は、報知器6から出力された報知音以外の音を、所定の報知音として検出しても良い。例えば、報知音は、警報等に限定されるものではなく、何らかの機器の操作音や、機器の動作終了等を通知する音、機器が異常を検出したことを知らせる音でも良い。
なお、本実施形態においては、プロセッサ42によって実現される機能部である通信部401を、特許請求の範囲における通信部の一例として記載したが、通信インタフェース41を通信部の一例としても良い。
(第2の実施の形態)
上述の第1の実施形態では、ビーコン4は、予め定められた報知音を検出していた。この第2の実施形態では、任意の音を、報知音として登録することができる。
図13は、本実施形態に係るビーコン4の機能的構成の一例を示す図である。本実施形態のビーコン4は、第1の実施形態の機能に加えて、登録部406を備える。
登録部406は、マイクロフォン44によって取得された音を、記憶部450の報知音情報451に登録(追加)する。例えば、法律などで定められている設備の非常放送音以外の音を、所定の報知音として登録する場合に、登録部406は、登録対象の音の周波数や音量の時間変化の特徴を抽出することで報知音の登録を行う。登録部406がこのような登録処理を実行するモードを、「報知音登録モード」という。
図14は、本実施形態に係る登録される報知音の一例を示す図である。図14(a)に示す報知音の例では、2種類の周波数の音がそれぞれ交互に一定時間繰り返し鳴り、鳴っている間の音量が一定の割合で増加・減少するという特徴がある。また、図14(b)に示す報知音の例では、周波数が時間と共に増加していき、鳴っている間の音量は一定であるという特徴や、鳴っている時間と無音時間が一定の割合で3回繰り返されるという特徴がある。登録部406は、登録対象の音における各周波数の値や音量、時間などの特徴に関する情報を記憶部450の報知音情報451に登録する。
また、登録部406は、上述した手法に限らず、公知の学習手法を用いて、報知音を学習するものとしても良い。
また、本実施形態の音検出部403は、第1の実施形態の機能を備えた上で、登録部406によって登録された登録音と、外部からの音とに基づき、登録音を検出する。音検出部403は、登録部406によって登録された報知音を検出した場合にも、予め登録された報知音を検出した場合と同様に、所定の報知音を検出したことを、識別信号生成部402および音波出力制御部404に送出する。
次に、本実施形態に係る報知音の登録処理の流れを説明する。図15は、本実施形態に係る報知音の登録処理の流れの一例を示すフローチャートである。
まず、受付部405は、操作部46から入力されたユーザ(管理者等)による報知音登録モードへの変更操作を受け付ける(S21)。受付部405は、変更操作を受け付けたことを、登録部406に送出する。また、この場合、ユーザは、登録対象音を、ビーコン4の周囲で出力(再生)する。登録対象音は、ビーコン4のマイクロフォン44によって取得(収集)される。
登録部406は、マイクロフォン44によって取得された登録対象音の周波数の値、音量、時間等の特徴を抽出する。登録部406は、特徴の抽出が完了したと判断するまでは、抽出処理を継続する(S22“No”)。そして、登録部406は、特徴の抽出が完了したと判断した場合は、(S22“Yes”)、登録対象音を報知音として登録する(S23)。ここで、このフローチャートの処理は終了する。
このように、本実施形態のビーコン4は、取得された音を記憶部450に登録し、登録された登録音と、外部からの音とに基づき、登録音を検出する。このため、本実施形態のビーコン4によれば、法律などで定められている設備の非常放送音以外の音を、所定の報知音として利用することができる。
(変形例)
なお、上述の第1の実施形態および第2の実施形態においては、所定の報知音を検出の対象としていたが、音ではなく「音声」を検出の対象としても良い。
例えば、音検出部403は、予め記憶された、または自ら学習して記憶した所定の音声と、マイクロフォン44によって収集された外部からの音声とに基づき、所定の音声を検出しても良い。
また、音波出力制御部404は、音検出部403により所定の音声が検出された場合に、所定の識別信号で用いられる周波数を、移動体の所定の速度に応じた周波数に変更しても良い。また、音波出力制御部404は、音検出部403により所定の音声が検出された場合に、所定の識別信号の出力音量の設定を、予め定められた大きさ以上の音量に変更しても良い。
図16は、本変形例に係る所定の音声の音声波形と周波数の一例を示す図である。図16では、“かじです”と発音したときの音の振幅と周波数を示している。それぞれの音A~Dが、それぞれ言葉の“か”、“じ”、“で”、“す”に対応している。本変形例の音検出部403は、それぞれの言葉の区切りを検出し、各音の周波数解析などを行うことで言葉を認識する。こうした“かじです”などの言葉を記憶部450の報知音情報451に予め登録しておき、音検出部403が検出することで報知モードへと移行することが可能となる。
また、第2の実施形態において説明した報知音の登録の手法と同様に、任意の音声を登録しても良い。
このように、本変形例のビーコン4では、予め記憶された、または自ら学習して記憶した所定の音声と、マイクロフォン44によって収集された外部からの音声とに基づき、所定の音声を検出し、所定の音声を検出した場合に、所定の識別信号で用いられる周波数を、移動体の所定の速度に応じた周波数に変更する。このため、本変形例のビーコン4によれば、報知音だけではなく、音声によっても報知モードに移行することができる。
例えば、災害等の発生時に放送される館内放送の音声を予めビーコン4に登録することにより、ビーコン4は、当該館内放送を検出した場合に、報知モードに移行し、誘導対象者に対して正確な情報の伝達および適切な方向へ誘導対象者を誘導可能な音波発信装置を提供することができる。
なお、上述の各実施形態のビーコン4で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、上述の各実施形態のビーコン4で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上述の各実施形態のビーコン4で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。また、上述の各実施形態のビーコン4で実行されるプログラムを、ROM等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
上記で説明した実施形態の各機能は、一又は複数の処理回路によって実現することが可能である。ここで、本明細書における「処理回路」とは、電子回路により実装されるプロセッサのようにソフトウェアによって各機能を実行するようプログラミングされたプロセッサや、上記で説明した各機能を実行するよう設計されたASIC(Application Specific Integrated Circuit)、DSP(digital signal processor)、FPGA(field programmable gate array)や従来の回路モジュール等のデバイスを含むものとする。