<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態における情報提供システム10の構成図である。情報提供システム10は、端末装置70の利用者Uに情報を提供するためのコンピュータシステムであり、図1に例示される通り、配信装置20と情報提供装置30とを具備する。端末装置70は、例えば携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報端末であり、提供情報を出力する。第1実施形態では、例えばショッピングモール等の商業施設にいる利用者Uを想定する。第1実施形態の提供情報は、例えば商業施設に関する情報(例えば営業時間または販売商品の案内)である。第1実施形態の情報提供システム10は、例えばBGMとして利用される楽曲を演奏した音(以下「演奏音」という)を利用者Uに対して放音するとともに、提供情報を示す情報(以下「指示情報」という)を音響通信により端末装置70に送信する。第1実施形態の指示情報は、提供情報を識別する識別情報を表す。
配信装置20は、利用者Uに対して放音される演奏音を表す第1信号Z1と指示情報を表す第2信号Z2とを情報提供装置30に送信するコンピュータシステムであり、例えば利用者Uに対して放音する演奏音を商業施設に送信する事業者の施設に設置される。配信装置20は、有線または無線の通信網60(例えば衛星通信)を介して情報提供装置30に第1信号Z1と第2信号Z2とを送信する。第1信号Z1と第2信号Z2とは、第1周波数帯域の信号である。通信網60による通信では、通信プロトコルまたは通信時の圧縮処理の影響から、伝送可能な信号の周波数帯域(以下「通信可能帯域」という)が制限される。例えば、第1信号Z1が表す音のサンプリング周波数が低い場合、または、サンプリング周波数が高くても圧縮処理の事情により高域がカットされる場合がある。また、通信プロトコル上の制限により例えば17kHz以上の周波数帯域の音響成分がカットされる場合もある。
第1周波数帯域は、通信網60において通信可能帯域内の周波数帯域である。したがって、第1信号Z1および第2信号Z2は配信装置20から情報提供装置30に対して適切に送信される。第1実施形態の第1周波数帯域は、例えば、利用者Uが通常の環境で聴取する音の周波数帯域(例えば可聴域内の約16kHz以下)の範囲に包含される。
配信装置20は、図1に例示される通り、記憶部22と操作部24と信号生成部26と配信部28とを具備する。記憶部22は、例えば半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体であり、信号生成部26が利用する各種のデータを記憶する。第1実施形態の記憶部22は、相異なる複数の演奏音の各々を表す音データ(例えばMP3データ)と、相異なる複数の提供情報(例えば営業時間を案内する提供情報および販売商品の案内をする提供情報)の各々に対応する識別情報とを記憶する。操作部24は、配信装置20の管理者からの指示を受付ける入力装置である。例えば配信装置20の管理者は、操作部24に対する操作により、記憶部22に記憶された複数の音データのうち任意の音データと、複数の識別情報のうち任意の識別情報とを選択することが可能である。
信号生成部26は、演奏音(つまり音データ)を表す第1周波数帯域の第1信号Z1と、識別情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2とを生成する。第1実施形態の信号生成部26は、管理者が操作部24に対する操作で指示した音データを表す第1周波数帯域の第1信号Z1と、管理者が操作部24に対する操作で指示した識別情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2とを生成する。第2信号Z2の生成には、例えば所定の周波数の正弦波等の搬送波を識別情報により変調する周波数変調、または、拡散符号を利用した識別情報の拡散変調等の変調処理が任意に採用され得る。第1信号Z1は、第2信号Z2の生成と同様の変調処理により生成される。なお、信号生成部26が生成した第1信号Z1と第2信号Z2とをデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略した。
配信部28は、信号生成部26が生成した第1信号Z1と第2信号Z2とを異なるチャンネルで通信網60を介して情報提供装置30に送信する。チャンネルは、特定の通信方式のもとで相互に並列に成立し得る物理的または論理的なデータ伝送路である。例えば左右2チャンネルのステレオを想定すると、Lチャンネルによる第1信号Z1の送信と、Rチャンネルによる第2信号Z2の送信とが並行して実行される。なお、第1信号Z1と第2信号Z2に対する各チャンネルの割り当ては任意である。
情報提供装置30は、図1に例示される通り、受信部32と制御部34と放音部36(送信部の例示)とを具備するコンピュータシステムであり、端末装置70を携帯した利用者Uが来訪する商業施設に設置される。第1実施形態の情報提供装置30は、第1信号Z1が表す演奏音の放音と、第2信号Z2が表す識別情報の送信とを並行して行う。識別情報の送信には、空気振動としての音響(音波)を伝送媒体とする音響通信が利用される。なお、情報提供装置30は、単体の装置で実現されるほか、相互に別体で構成された複数の装置(すなわちシステム)でも実現され得る。
受信部32は、配信装置20から送信された第1信号Z1と第2信号Z2とを通信網60を介して受信するための受信機である。第1実施形態の受信部32は、Lチャンネルの第1信号Z1を混合処理部45に供給し、Rチャンネルの第2信号Z2を抽出部41に供給する。
制御部34は、例えばCPU(Central Processing Unit)等の演算処理回路で構成され、情報提供装置30の各要素を統括的に制御する。具体的には、制御部34は、記憶部(図示略)に記憶されたプログラムを実行することで、受信部32が受信した第1信号Z1と第2信号Z2とを処理するための複数の機能(抽出部41,信号処理部43および混合処理部45)を実現する。なお、制御部34の一部の機能を専用の電子回路で実現した構成、または、制御部34の機能を複数の装置に分散した構成も採用され得る。
抽出部41は、受信部32が受信した第2信号Z2から識別情報を抽出する。例えば、第2信号Z2のうち識別情報の音響成分を含む第1周波数帯域を強調するフィルタ処理と、識別情報に対する変調処理に対応した復調処理とを周期的に反復して実行することで識別情報が抽出される。
信号処理部43は、抽出部41が抽出した識別情報を表す第3信号Z3を生成する。具体的には、信号処理部43は、第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域の音響成分として識別情報を表す第3信号Z3を生成する。第1周波数帯域と第2周波数帯域とは相互に重複しない。第2周波数帯域は、通信網60での通信可能帯域外の周波数帯域である。したがって、通信網60による通信では、第2周波数帯域の第3信号Z3の全体を適切に送信できない。第1実施形態の第2周波数帯域は、情報提供装置30の放音部36による再生と端末装置70による収音とが可能な周波数帯域であり、かつ、利用者Uが通常の環境で聴取する音の周波数帯域を上回る範囲(例えば18kHz以上かつ20kHz以下)に包含される。第3信号Z3の生成には、例えば所定の周波数の正弦波等の搬送波を識別情報により変調する周波数変調、または、拡散符号を利用した識別情報の拡散変調等の変調処理が任意に採用され得る。
混合処理部45は、受信部32が受信した第1信号Z1と信号処理部43が生成した第3信号Z3とを混合して放音部36に供給する。具体的には、混合処理部45は、第1周波数帯域の第1信号Z1と第2周波数帯域の第3信号Z3とを混合(例えば加算)することで生成した第4信号Z4を放音部36に供給する。なお、混合生成部が生成した第4信号Z4をデジタルからアナログに変換するD/A変換器の図示は便宜的に省略した。
放音部36(例えばスピーカ)は、制御部34から供給される第4信号Z4が表す音響成分を放音する。すなわち、第1信号Z1が表す演奏音の音響成分と第3信号Z3が表す識別情報の音響成分とか放音部36から放音される。第1周波数帯域(いわゆる可聴帯域)に含まれる演奏音の音響成分は、利用者Uによる聴取が可能である一方で、第2周波数帯域(いわゆる非可聴帯域)に含まれる識別情報の音響成分は、利用者Uには聴取されにくい。つまり、利用者Uに聴取させたい音(演奏音)の放音に並行して、識別情報の送信が可能である。以上の説明から理解される通り、情報提供装置30の放音部36は、第3信号Z3が表す識別情報を送信する送信部として機能する。
図2は、情報提供装置30の制御部34が実行する処理のフローチャートである。第1信号Z1および第2信号Z2の受信を契機として、図2の処理が実行される。抽出部41は、提供情報を識別する識別情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2から識別情報を抽出する(S1)。信号処理部43は、抽出部41が抽出した識別情報を表し、第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域の第3信号Z3を生成する(S2)。混合処理部45は、受信部32が受信した第1信号Z1と、信号処理部43が生成した第3信号Z3とを混合して第4信号Z4を生成する(S3)。信号処理部43は、生成した第4信号Z4を放音部36に供給する(S4)。
図3は、端末装置70の構成図である。端末装置70は、図3に例示される通り、収音部71と記憶部73と制御部75と提示部77とを具備する。収音部71は、周囲の音を収音する音響機器(マイクロホン)である。具体的には、収音部71は、情報提供装置30の放音部36による再生音を収音して音響信号Z5を生成する。音響信号Z5は、識別情報の音響成分を含有し得る。なお、収音部71が生成した音響信号Z5をアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。制御部75は、例えばCPU等の演算処理回路で構成され、端末装置70の各要素を統括的に制御する。提示部77は、制御部75による制御のもとで提供情報を出力する。例えば提供情報を表示する表示機器(例えば液晶パネル)が提示部77として採用され得る。
記憶部73は、制御部75が実行するプログラムと制御部75が使用する各種のデータ(提供テーブル)とを記憶する。例えば半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の記録媒体が記憶部73として採用され得る。具体的には、提供テーブルは、複数の識別情報の各々について提供情報が登録されたデータテーブルである。提供情報は、例えば文字列または画像で表現されたコンテンツである。
制御部75は、記憶部73に記憶されたプログラムを実行することで、収音部71が生成した音響信号Z5から提供情報を出力するための複数の機能(情報抽出部52および提示制御部54)を実現する。なお、制御部75の一部の機能を専用の電子回路で実現した構成、または、制御部75の機能を複数の装置に分散した構成も採用され得る。
情報抽出部52は、収音部71が生成した音響信号Z5から識別情報を抽出する。例えば、音響信号Z5のうち識別情報の音響成分を含む第2周波数帯域を強調するフィルタ処理と、識別情報に対する変調処理に対応した復調処理とを周期的に反復して実行することにより識別情報が抽出される。
提示制御部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報に対応する提供情報を提示部77に出力させる。具体的には、提示制御部54は、識別情報が示す提供情報を提供テーブルから特定し、特定した提供情報を提示部77に出力させる。例えば、営業時間を案内する提供情報が表す文字列「営業時間は9時〜21時です。」を提示部77に表示させる。利用者Uは、演奏音の聴取に並行して、端末装置70から出力される提供情報を取得することが可能である。以上の説明から理解される通り、提供情報を識別する識別情報は、空気振動としての音波を伝送媒体とする音響通信で端末装置70に送信される。
第1信号Z1が表す案内音声と第3信号Z3が表す識別情報の音響成分との混合音が放音部36から放音されることを考慮すると、第1信号Z1と第3信号Z3とを加算した信号を配信装置20から共通の伝送路(すなわち通信網60)を介して情報提供装置30に送信する構成も想定され得る。しかし、前述の通り、配信装置20と情報提供装置30との間の通信経路では第2周波数帯域での通信が制限されるから、実際には、第1信号Z1および第3信号Z3を通信網60により伝送することはできない。第1実施形態では、配信装置20から送信され識別情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2から抽出した識別情報を含む第2周波数帯域の第3信号Z3が情報提供装置30から端末装置70に送信される。したがって、配信装置20と情報提供装置30との間の通信経路において第2周波数帯域を利用した通信が制限される場合でも、情報提供装置30からは、第2周波数帯域の第3信号Z3を利用して提供情報を利用者Uに提供することができる。
ところで、情報提供装置30への第1信号Z1と第2信号Z2との送信において、例えば第1信号Z1と第2信号Z2とを混合して共通のチャンネルで送信する構成も考えられ得る。しかし、以上の構成では、第3信号Z3の生成において第1信号Z1と第2信号Z2との分離処理が必要になる。それに対して、第1信号Z1と第2信号Z2とが異なるチャンネルで送信される第1実施形態の構成によれば、第1信号Z1と第2信号Z2との分離処理が不要である。したがって、第3信号Z3を生成する処理が簡素化される。
<第2実施形態>
本発明の第2実施形態を説明する。なお、以下に例示する各構成において作用または機能が第1実施形態と同様である要素については、第1実施形態の説明で使用した符号を流用して各々の詳細な説明を適宜に省略する。
第1実施形態の情報提供システム10は、予め用意された音データが表す演奏音の放音に並行して、商業施設に関する提供情報を利用者Uに提供した。それに対して、第2実施形態の情報提供システム10は、配信装置20の管理者が発音する案内音声の放音に並行して、案内音声に関する提供情報を提供する。第2実施形態の提供情報は、案内音声の発話内容を表す。なお、第2実施形態では、電車またはバス等の交通機関の利用者Uに提供情報を提供する場合を想定する。
図4は、第2実施形態に係る情報提供システム10の構成図である。第2実施形態の情報提供システム10は、第1実施形態と同様に、配信装置20と情報提供装置30とを具備する。第2実施形態の情報提供装置30は、第1実施形態と同様の構成である。第2実施形態の配信装置20は、管理者が発話する案内音声を表す第1信号Z1と、当該案内音声に応じた提供情報を識別する識別情報を表す第2信号Z2とを情報提供装置30に送信する。配信装置20は、記憶部22と信号生成部26と配信部28とに加えて、収音部29を具備する。
収音部29は、周囲の音響を収音する音響機器(マイクロホン)である。配信装置20の管理者(例えば車掌)は、案内音声の発音時に参照するアナウンスブック等に事前に収録された複数の文字列の何れかを、例えば交通機関の運行状況等に応じて選択的に案内音声として発音する。すなわち、案内音声は、基本的には、管理者が内容を任意に決定できるものではなく、事前に用意された既知の内容である。第2実施形態の案内音声は、提供情報の文字列を発音した内容である。例えば電車の遅延を案内する提供情報「ただ今、電車の遅延が発生しています。」が管理者により案内音声として発音される。収音部29は、管理者が発音した案内音声を収音して、当該案内音声の時間波形を表す第1信号Z1を生成する。第1信号Z1は、第1周波数帯域の信号であり、提供情報の内容を発音した案内音声を表す。なお、収音部29が生成した第1信号Z1をアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。なお、以上の説明では、管理者が発声した肉声を表す第1信号Z1を収音部29が生成する構成を例示したが、特定の文字列(例えばアナウンスブックに収録された文字列)に対して公知の音声合成処理を適用することで、当該文字列を発音した音声を表す第1信号Z1を生成することも可能である。
第2実施形態の記憶部22は、信号生成部26が利用する各種のデータ(例えば提供テーブル)を記憶する。第2実施形態の提供テーブルは、複数の識別情報の各々について提供情報が登録されたデータテーブルである。例えば、電車の遅延を案内する提供情報「ただ今、電車の遅延が発生しています。」と、電車の終着駅を案内する提供情報「この電車は、東京行きです。」との各々に識別情報が対応付けられて記憶される。なお、配信装置20に記憶される提供テーブルは、端末装置70の記憶部73に同様に記憶される。
第2実施形態の信号生成部26は、案内音声の発音内容に応じた提供情報を示す識別情報を特定する。信号生成部26は、第1に、収音部29が生成した第1信号Z1に対する音声認識で、案内音声の発話内容を表す文字列を解析する。第1信号Z1の音声認識には、例えばHMM(Hidden Markov Model)等の音響モデルと言語的な制約を示す言語モデルとを利用した認識技術等の公知の技術が任意に採用され得る。信号生成部26は、第2に、解析した文字列に類似する(理想的には一致する)文字列の提供情報に対応する識別情報を提供テーブルから特定する。信号生成部26は、第3に、第1実施形態と同様の方法で、特定した識別情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2を生成する。収音部29により生成された第1信号Z1と、信号生成部26により生成された第2信号Z2とは配信部28に供給される。
第2実施形態の配信部28は、収音部29が生成した第1信号Z1と信号生成部26が生成した第2信号Z2とを、第1実施形態と同様に、異なるチャンネルで通信網60を介して情報提供装置30に送信する。
第2実施形態の情報提供装置30は、第1実施形態と同様に、受信部32と制御部34と放音部36(送信部の例示)とを具備する。受信部32は、第1実施形態と同様に、案内音声を表す第1周波数帯域の第1信号Z1と識別情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2とを配信装置20から受信する。制御部34は、第1実施形態と同様に、第2信号Z2から識別情報を表す第2周波帯域の第3信号Z3を生成し、第1信号Z1と第3信号Z3とを混合した第4信号Z4を放音部36に供給する。放音部36は、第1信号Z1が表す案内音声の音響成分と第3信号Z3が表す識別情報の音響成分とを放音する。
第2実施形態の端末装置70は、第1実施形態と同様に、情報提供装置30の放音部36による再生音の収音により、識別情報の音響成分を含有する音響信号Z5を収音部71が生成し、情報抽出部52および提示制御部54が、識別情報に対応する提供情報「ただ今、電車の遅延が発生しています。」の文字列を表示する。利用者Uは、提供情報を表す案内音声の聴取に並行して、端末装置70により表示される提供情報を視覚的に取得することが可能である。
第2実施形態においても第1実施形態と同様の効果が実現される。また、第2実施形態では、配信装置20が案内音声に対する音声認識により識別情報が選択されるので、管理者による識別情報を選択する指示が不要になる。
<変形例>
以上に例示した各形態は多様に変形され得る。前述の各形態に適用され得る具体的な変形の態様を以下に例示する。以下の例示から任意に選択された2以上の態様は、相互に矛盾しない範囲で適宜に併合され得る。
(1)前述の各形態では、提供情報を識別する識別情報を指示情報として例示したが、提供情報を示す文字列自体を指示情報とする構成も可能である。提供情報を示す文字列を指示情報とする構成では、端末装置70に提供テーブルを保持する必要はない。ただし、提供情報を識別する識別情報を指示情報とする構成では、配信装置20から情報提供装置30に送信する第2信号Z2のデータ量を削減することが可能である。
(2)前述の各形態では、第1信号Z1と第3信号Z3とを混合した第4信号Z4を表す音響が放音部36から放音されたが、第1信号Z1を表す音響と第3信号Z3を表す音響とを別個の放音部で放音することも可能である。つまり、第1信号Z1と第3信号Z3とを混合する混合処理部45は、必須ではない。
(3)前述の各形態では、第1周波数帯域の第2信号Z2から抽出した指示情報を表す第2周波数帯域の第3信号Z3を生成したが、第3信号Z3の生成において第2信号Z2から識別情報を抽出する処理(つまり抽出部41)は必須ではない。例えば、第1周波数帯域の第2信号Z2に対する周波数変換をすることで、指示情報を表す第2周波数帯域の第3信号Z3を生成することも可能である。以上の構成によれば、第2信号Z2からの識別情報を抽出する処理が不要なので、第3信号Z3を生成する処理が簡素化される。ただし、第2信号Z2から抽出した指示情報を表す第3信号Z3を生成する前述の各形態によれば、第2信号Z2からデジタルの識別情報を復号化したうえで再び符号化される。第2信号Z2に含まれるノイズは復号化の段階で解消される。したがって、第1周波数帯域の第2信号Z2に対する周波数変換(すなわちアナログ信号の周波数変換)により第2周波数帯域の第3信号Z3を生成する構成と比較して、第3信号Z3のノイズを低減することが可能である。以上の説明から理解される通り、信号処理部43は、指示情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2から、指示情報を表す第2周波数帯域の第3信号Z3を生成する要素として包括的に表現され得る。
(4)第2実施形態では、案内音声の内容を表す文字列と提供情報の文字列とが一致していたが、案内音声の内容を示す文字列と、提供情報を表す文字列とは一致している必要はない。例えば文字列「ただ今、電車の遅延が発生しています。」を発話した案内音声を放音し、提供情報の文字列「遅延の発生」を端末装置70に表示させるとも可能である。また、案内音声の内容を表す文字列を他言語に翻訳した翻訳文を端末装置70に表示させることも可能である。
(5)前述の各形態では、音波を伝送媒体とする音響通信で情報提供装置30から端末装置70に指示情報を送信したが、情報提供装置30から指示情報を送信するための通信方式は音響通信に限定されない。例えば、電波または赤外線等の電磁波を伝送媒体とした無線通信で情報提供装置30から端末装置70に指示情報を送信することも可能である。例えば、前述の各形態における放音部36が無線通信用の通信機器に置換される。具体的には、Bluetooth(登録商標)またはWiFi(登録商標)等の無線通信が指示情報の送信に好適である。以上の説明か理解される通り、放音部36および無線通信用の通信機器等を含めて、端末装置70に指示情報を送信する「送信部」の概念に包含される。なお、無線通信用の通信機器を送信部とする構成では、第1信号Z1が表す音は放音部36から放音され、第3信号Z3が表す指示情報は通信機器から送信される。つまり、混合処理部45は不要になる。
(6)第2実施形態では、案内音声の放音に並行して情報提供装置30から端末装置70に指示情報を送信したが、端末装置70への指示情報の送信は必須ではない。例えば、指示情報の送信に代えてまたは指示情報の送信に並行して、指示情報が示す提供情報を他言語に翻訳した翻訳文を案内音声として放音することも可能である。例えば、翻訳文に対する公知の音声合成処理により案内音声を合成して放音する構成、または、翻訳文について事前に用意(例えば収録または合成)された案内音声を放音する構成が想定される。
(7)前述の各形態では、第1信号Z1は演奏音(第1実施形態)または案内音声(第2実施形態)を表したが、第1信号Z1が表す音は以上の例示に限定されない。例えば環境音を表す第1信号Z1も採用され得る。以上の説明から理解される通り、第1信号Z1は、利用者Uに対して放音される音を表す信号として包括的に表現される。
(8)前述の各形態では、第1信号Z1が表す音は第1周波数帯域の音響成分として放音されたが、例えば第1信号Z1が表す音を第2周波数帯域の音響成分として放音することも可能である。以上の構成では、第2信号Z2と同様に、抽出部41と信号処理部43での処理を第1信号Z1に対しても行う。
(9)前述の各形態では、第1周波数帯域はいわゆる可聴帯域として、第2周波数帯域はいわゆる非可聴帯域としたが、第1周波数帯域と第2周波数帯域は以上の例示に限定されない。また、前述の各形態では、第1周波数帯域と第2周波数帯域とが相互に重複しない場合を例示したが、第2周波数帯域が第1周波数帯域の一部を含んでいてもよい。例えば、第1周波数帯域を16kHz以下の帯域とし、第2周波数帯域を15kHz以上の帯域とした構成も想定される。
(10)前述の各形態では、提供情報を表示装置(提示部77)に表示したが、提供情報を端末装置70の利用者に提示する方法は以上の例示に限定されない。例えば、スピーカやイヤホン等の放音機器を提示部77として利用して、提供情報が表す音声を再生することで提供情報を利用者に提示することも可能である。提供情報が表す音声の生成には、例えば公知の音声合成技術が利用され得る。
また、情報提供装置30に表示部を設置し、放音部36による案内音声の放音に並行して、提供情報またはその翻訳文を情報提供装置30の表示部に表示することも可能である。このような情報提供装置30としては、例えば、商業施設に設置される電子看板(例えばデジタルサイネージ)または鉄道事業者の施設内に設置される電光掲示板等の案内掲示板が好適に利用される。
(11)前述の各形態では、端末装置70の記憶部73に記憶された提供テーブルから、識別情報に対応する提供情報を検索して利用者に提示したが、識別情報に対応する提供情報を取得するための方法は以上の例示に限定されない。例えば、端末装置70が通信可能な管理サーバ装置(例えばウェブサーバ)に提供テーブルを保持した構成も採用され得る。端末装置70の提示制御部54は、情報抽出部52が抽出した識別情報を指定した情報要求を管理サーバ装置に送信する。管理サーバ装置は、情報要求で指定された識別情報に対応する提供情報を提供テーブルから検索し、当該提供情報を要求元の端末装置70に送信する。提示制御部54は、管理サーバ装置から受信した提供情報を提示部77に表示させる。以上の構成によれば、端末装置70に提供テーブルを保持する必要がないという利点がある。
(12)前述の各形態では、左右2チャンネルで第1信号Z1と第2信号Z2とを送信したが、通信に使用されるチャンネル数は以上の例示に限定されない。例えば、案内音声を表す第1信号Z1を左右2チャンネルで送信するとともに、相異なる識別情報を表す2系統の第2信号Z2を、第1信号Z1のチャンネルとは別個の2チャンネルで送信することも可能である。相異なるチャンネルを利用して複数の識別情報を送信する構成によれば、各識別情報を情報提供装置30において分離したうえで、相異なる範囲(サービスエリア)に複数の識別情報を並列に送信することが可能である。
(13)前述の各形態では、携帯電話機またはスマートフォン等の可搬型の情報端末を端末装置70として例示したが、例えば商業施設に設置される電子看板(例えばデジタルサイネージ)または鉄道事業者の施設内に設置される電光掲示板等の案内掲示板も端末装置70として好適に利用される。また、電子看板または電光掲示板等の案内掲示板を情報提供装置30として利用することも可能である。
(14)前述の各形態では、ショッピングモール等の商業施設(第1実施形態)およびバスや電車等の交通機関(第2実施形態)で情報提供システム10を利用したが、情報提供システム10を利用する場所は以上の例示に限定されない。例えば、旅館またはホテル等の宿泊施設、博物館または美術館等の展示施設、史跡または名所等の観光施設、および、競技場または体育館等の運動施設で情報提供システム10を利用することも可能である。
(15)前述の各形態に係る情報提供装置30は、前述の各形態の例示の通り、制御部34とプログラムとの協働で実現される。前述の各形態に係るプログラムは、利用者Uに対して放音される音を表す第1周波数帯域の第1信号Z1とは異なるチャンネルで配信装置20から送信され、端末装置70が出力する提供情報を示す指示情報を表す第1周波数帯域の第2信号Z2から、指示情報を表し、第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域の第3信号Z3を生成する信号処理部43としてコンピュータを機能させる。以上に例示したプログラムは、コンピュータが読取可能な記録媒体に格納された形態で提供されてコンピュータにインストールされ得る。記録媒体は、例えば非一過性(non-transitory)の記録媒体であり、CD-ROM等の光学式記録媒体(光ディスク)が好例であるが、半導体記録媒体または磁気記録媒体等の公知の任意の形式の記録媒体を包含し得る。なお、非一過性の記録媒体とは、一過性の伝搬信号(transitory, propagating signal)を除く任意の記録媒体を含み、揮発性の記録媒体を除外するものではない。また、通信網60を介した配信の形態でプログラムをコンピュータに提供することも可能である。
(16)以上に例示した形態から、例えば以下の構成が把握される。
<態様1>
本発明の好適な態様(態様1)に係る情報提供装置は、利用者に対して放音される音を表す第1周波数帯域の第1信号とは異なるチャンネルで配信装置から送信され、端末装置が出力する提供情報を示す指示情報を表す前記第1周波数帯域の第2信号から、前記指示情報を表し、前記第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域の第3信号を生成する信号処理部を具備する。以上の構成では、利用者に対して放音される音を表し第1周波数帯域の第1信号と、第1信号とは相異なるチャンネルに対応し、端末装置が出力する提供情報を示す指示情報を表す第1周波数帯域の第2信号とが共通の配信装置から配信され、指示情報を含み第1周波数帯域とは相異なる第2周波数帯域の第3信号が第2信号から生成される。したがって、配信装置と情報提供装置との間の通信経路において第2周波数帯域を利用した通信が制限される場合でも、情報提供装置からは、第2周波数帯域の第3信号を利用して提供情報を利用者に提供することができる。ここで、第1信号と第2信号とを共通のチャンネルで送信すると、第1信号と第2信号との分離処理が必要になる。それに対して、第1信号と第2信号とが異なるチャンネルで送信される前述の構成によれば、第1信号と第2信号との分離処理が不要になる。ひいては、第3信号を生成する処理が簡素化される。
<態様2>
態様1の好適例(態様2)に係る情報提供装置は、前記第2信号から前記指示情報を抽出する抽出部を具備し、前記信号処理部は、前記抽出した指示情報を表す前記第3信号を生成する。以上の構成では、第2信号から抽出した指示情報を表す第3信号が生成される。したがって、例えば第1周波数帯域の第2信号に対する周波数変換により第2周波数帯域の第3信号を生成する構成と比較して、第3信号のノイズを低減することが可能である。
<態様3>
態様1または態様2の好適例(態様3)に係る情報提供装置は、前記指示情報は、前記提供情報を識別する識別情報を表す。以上の構成では、指示情報は、提供情報を識別する識別情報を表す。したがって、例えば指示情報が提供情報を示す文字列を表す構成と比較して、第2信号のデータ量を削減することができる。
<態様4>
態様1から態様3の何れかの好適例(態様4)に係る情報提供装置は、前記第3信号が表す前記指示情報を前記端末装置に送信する。以上の構成では、第3信号が表す指示情報が端末装置に送信される。
<態様5>
態様4の好適例(態様5)に係る情報提供装置は、前記第1信号と前記第3信号とを混合して前記送信部に供給する混合処理部を具備する。以上の構成では、第1信号と第3信号とが混合されて送信部に供給される。したがって、第1信号が表す音と第3信号が表す指示情報との送信に共通の放音部を利用することができる。
<態様6>
本発明の好適な態様(態様6)に係る情報提供システムは、配信装置と情報提供装置とを具備する情報提供システムであって、前記配信装置は、利用者に対して放音される音を表す第1周波数帯域の第1信号と、端末装置が出力する提供情報を示す指示情報を表す前記第1周波数帯域の第2信号とを異なるチャンネルで送信し、前記情報提供装置は、前記第1信号と前記第2信号とを受信する受信部と、前記指示情報を表し、前記第1周波数帯域とは異なる第2周波数帯域の第3信号を前記第2信号から生成する信号処理部と、前記第3信号が表す前記指示情報を前記端末装置に送信する送信部とを具備する。以上の構成では、利用者に対して放音される音を表し第1周波数帯域の第1信号と、第1信号とは相異なるチャンネルに対応し、端末装置が出力する提供情報を示す指示情報を表す第1周波数帯域の第2信号とが共通の配信装置から配信され、指示情報を含み第1周波数帯域とは相異なる第2周波数帯域の第3信号が第2信号から生成される。したがって、配信装置と情報提供装置との間の通信経路において第2周波数帯域を利用した通信が制限される場合でも、情報提供装置からは、第2周波数帯域の第3信号を利用して提供情報を利用者に提供することができる。ここで、第1信号と第2信号とを共通のチャンネルで送信すると、第1信号と第2信号との分離処理が必要になる。それに対して、第1信号と第2信号とが異なるチャンネルで送信される前述の構成によれば、第1信号と第2信号との分離処理が不要になる。ひいては、第3信号を生成する処理が簡素化される。