JP2018125496A - 有機薄膜太陽電池用基板、積層構造体およびその製造方法、ならびにフレキシブル・エレクトロニクス素子の製造方法 - Google Patents

有機薄膜太陽電池用基板、積層構造体およびその製造方法、ならびにフレキシブル・エレクトロニクス素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】フレキシブル性を有し、機械的強度や耐熱性も高い、有機薄膜太陽電池用基板を提供する。
【解決手段】下記(1)〜(6)を全て満たす、有機薄膜太陽電池用基板とする。
(1)厚さ5μmにおける波長400±5nmの最大透過率が70%以上である
(2)厚さ5μmにおけるL表色系のb値が5以下である
(3)JIS P8115に準拠して測定される、厚さ10μmにおけるMIT耐折性試験での耐折回数が、1万回以上である
(4)ガラス転移温度が200℃以上である
(5)厚さ10μm以下である
(6)少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が5nm以下である
【選択図】なし

Description

本発明は、有機薄膜太陽電池用基板、積層構造体およびその製造方法、ならびにフレキシブル・エレクトロニクス素子に関する。
近年、フレキシブル性を有する電子デバイス(以下、「フレキシブル・エレクトロニクス素子」とも称する)が注目されている。フレキシブル・エレクトロニクス素子の中でも、軽量化かつ低コスト化を期待できることから、フレキシブル有機電子デバイスが注目されており、特に有機薄膜太陽電池への期待が高まっている。
これまで、薄膜太陽電池用の基板として、ガラス基板が主に使用されてきた。しかしながら、ガラス基板は割れやすく、取り扱いに十分な注意が必要であるとともに、フレキシブル性が低いとの欠点がある。そこで、可撓性を有する樹脂製の基板を使用した有機薄膜太陽電池が注目を集めている。
例えば非特許文献1には、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルムを基板とした太陽電池が記載されている。また、非特文献2には、パリレンをCVD法で形成した膜上に、素子を形成すること等が記載されている。
Nature communications,2012,3:770 Science Advances 2016;Vol.2:e1501856
しかしながら、非特許文献1に記載のPETフィルムは、表面の平滑性が低い。そのため、PETフィルム上に透明電極層等を形成すると、素子が短絡しやすい、との課題があった。また、非特許文献2に記載のパリレンからなる膜は、表面平滑性だけでなく、機械的強度や耐熱性が低い、との課題もあった。
また、フレキシブル性を有する基板上に、エレクトロニクス素子を構成する部材(以下、「エレクトロニクス素子部」とも称する)を作製しようとすると、基板が撓んだり、歪んだりすることがあり、所望の位置に精度よくエレクトロニクス素子部を形成することが難しい。そこで、剛性を有する基材上にフレキシブル性を有する基板を固定し、エレクトロニクス素子部を形成することが考えられる。しかしながらこの方法では、エレクトロニクス素子部の形成後、エレクトロニクス素子から基材を剥離することが難しく、エレクトロニクス素子部の破損が生じやすい等の課題があった。一方で、基材を剥離しやすくすると、エレクトロニクス素子部の形成時に、フレキシブル性を有する基板が基材から容易に剥離してしまう、との課題が生じやすかった。
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明は、フレキシブル性を有し、機械的強度や耐熱性も高い、有機薄膜太陽電池用基板を提供する。また、フレキシブル性を有する基板と、剛性を有する基板とを備え、エレクトロニクス素子部の形成後には、剛性を有する基材を容易に剥離することが可能な積層構造体およびその製造方法、ならびにこれを用いたフレキシブル・エレクトロニクス素子の製造方法を提供する。
すなわち、本発明の第1は、以下の有機薄膜太陽電池用基板に関する。
[1]下記(1)〜(6)を全て満たす、有機薄膜太陽電池用基板。
(1)厚さ5μmにおける波長400±5nmの最大透過率が70%以上である
(2)厚さ5μmにおけるL表色系のb値が5以下である
(3)JIS P8115に準拠して測定される、厚さ10μmにおけるMIT耐折性試験での耐折回数が、1万回以上である
(4)ガラス転移温度が200℃以上である
(5)厚さ10μm以下である
(6)少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が5nm以下である
[2]前記基板が、下記一般式(1)で表される繰り返し構成単位または下記一般式(2)で表される繰り返し構成単位を有するポリイミドを含む、[1]に記載の有機薄膜太陽電池用基板。
Figure 2018125496
(上記一般式(1)において、Rは脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜15の2価の基、または炭素数5〜12の2価の直鎖状脂肪族基を表し、Yは、芳香環を含む炭素数6〜27の4価の基を表す)
Figure 2018125496
(上記一般式(2)において、Rは芳香環を含む炭素数6〜27の2価の基を表し、Yは、脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜12の4価の基を表す)
[3]前記一般式(1)で表される構成単位のRが、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であり、
前記一般式(1)で表される構成単位のYが、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であり、前記一般式(2)で表される構成単位のRが、
Figure 2018125496
(X〜Xは、それぞれ独立に、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる単結合または2価の基を表す)からなる群から選ばれる少なくとも一種の2価の基であり、前記一般式(2)で表される構成単位のYが、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる少なくとも一種の4価の基である、[2]に記載の有機薄膜太陽電池用基板。
本発明の第2は、以下の積層構造体およびその製造方法、ならびにこれを用いたフレキシブル・エレクトロニクス素子の製造方法に関する。
[4]基材と、フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板とが、フッ素系樹脂層を介して積層されており、前記フッ素系樹脂層の表面の水接触角が13°以上85°以下である、積層構造体。
[5]前記フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板が、下記一般式(3)で表される繰り返し構成単位または下記一般式(4)で表される繰り返し構成単位を有するポリイミドを含む、[4]に記載の積層構造体。
Figure 2018125496
(上記一般式(3)において、Rは脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜15の2価の基、または炭素数5〜12の2価の直鎖状脂肪族基を表し、Yは、芳香環を含む炭素数6〜27の4価の基を表す)
Figure 2018125496
(上記一般式(4)において、Rは芳香環を含む炭素数6〜27の2価の基を表し、Yは、脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜12の4価の基を表す)
[6]前記一般式(3)で表される構成単位のRが、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であり、前記一般式(3)で表される構成単位のYが、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であり、前記一般式(4)で表される構成単位のRが、
Figure 2018125496
(X〜Xは、それぞれ独立に、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる単結合または2価の基を表す)からなる群から選ばれる少なくとも一種の2価の基であり、前記一般式(4)で表される構成単位のYが、
Figure 2018125496
からなる群から選ばれる少なくとも一種の4価の基である、[5]に記載の積層構造体。
[7]上記[4]〜[6]のいずれかに記載の積層構造体の製造方法であって、基材上に、フッ素系樹脂層を形成する工程と、フッ素系樹脂層上に、フレキシブル・エレクトロニクス素子用の基板を形成する工程と、を含み、前記フッ素系樹脂層の表面の水接触角が13°以上85°以下である、積層構造体の製造方法。
[8]上記[4]〜[6]のいずれかに記載の積層構造体のフレキシブル・エレクトロニクス素子用基板上にエレクトロニクス素子部を形成する工程と、前記エレクトロニクス素子部の形成後、フレキシブル・エレクトロニクス素子用の基板から、フッ素系樹脂層および基材を剥離する工程と、を有する、フレキシブル・エレクトロニクス素子の製造方法。
本発明によれば、フレキシブル性を有し、機械的強度や耐熱性も高い、有機薄膜太陽電池用基板とすることができる。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
1.有機薄膜太陽電池用基板
本発明の有機薄膜太陽電池用基板(以下、単に「太陽電池用基板」とも称する)は、有機薄膜太陽電池の基板として用いられるものである。前述のように、従来、薄膜太陽電池の基板には、ガラス基板が主に使用されてきた。しかしながら、ガラス基板は割れやすく、取り扱いに十分な注意が必要であるとともに、フレキシブル性が低いとの欠点があった。一方で、樹脂からなる基板は、フレキシブル性を有するものの、機械的強度や耐熱性が不十分であることが多かった。また基板の表面粗さによっては、素子の短絡が生じるとの欠点があった。
これに対し、本発明の太陽電池用基板は、耐熱性が高く、適度な機械的強度および柔軟性を兼ね備える。また、光の透過性が高いため、有機薄膜太陽電池の受光面側の基板に使用することが可能である。さらに、表面粗さ(Ra)が十分に小さいことから、当該基板上に太陽電池の各種部材を形成したとしても、短絡を生じさせることが少ない。また、フレキシブル性(耐屈曲性)を有することから、種々の有機薄膜太陽電池に適用することが可能である。なお、本発明の太陽電池用基板は、有機薄膜太陽電池用の基板だけでなく、有機エレクトロルミネッセンス素子用の基板にも適用することが可能である。以下、本発明の太陽電池用基板について詳しく説明する。
1−1.物性
本発明の太陽電池用基板は、(1)厚さ5μmにおける波長400±5nmの最大透過率が70%以上であり、好ましくは74%以上であり、さらに好ましくは78%以上であり、さらに好ましくは80%以上であり、特に好ましくは85%以上である。最大透過率が当該範囲であると、太陽電池用基板を有機薄膜太陽電池の受光面側の基板に用いた時に、十分な光電変換効率を実現することができる。なお、本発明の太陽電池用基板を構成する材料として、ポリイミドが好ましく用いられるが、ポリイミドは、一般的に短波長側の光を吸収しやすい傾向がある。これに対し、波長400nm±5nmの最大透過率を70%以上とすることで、短波長側の光の透過率が高くなり、受光面側の基板としての有用性が非常に高くなる。
上記最大透過率は、太陽電池用基板を構成する樹脂の種類や構造によって調整することが可能である。太陽電池用基板がポリイミドを含む場合、その繰返し単位中に、脂環族を含めることで、上記最大透過率を格段に向上させることができる。また、ポリイミド製造時の条件を調整することでも、最大透過率を高めることができる。例えば、イナート雰囲気(例えば、窒素気流下)にして酸素濃度を下げることで、酸化による着色を抑制し、上記最大透過率を高めること等が可能である。
なお、波長400nm±5nmの光線透過率は、分光光度計によって測定され、本明細書では、波長400nm±5nmの範囲内で測定される最大の透過率を、上記最大透過率とする。また、本明細書で特定する最大透過率は、太陽電池用基板の厚さを5μmとしたときの値である。例えば、厚さ5μmの太陽電池用基板について、上記最大透過率を測定してもよいが、異なる厚さの太陽電池用基板の最大透過率を測定し、当該測定値をランベルト・ベールの法則に従って換算してもよい。
また、本発明の太陽電池用基板は、(2)厚さ5μmにおけるL表色系のb値が5以下であり、好ましくは4以下であり、さらに好ましくは3以下である。b値が当該範囲であると、太陽電池用基板が無色となり、可視光の透過性が良好となる。つまり、太陽電池用基板を有機薄膜太陽電池の受光面側の基板として用いた時の光電変換効率が高まりやすくなる。当該b値は、太陽電池用基板を構成する樹脂の種類等によって、調整することが可能である。例えば、太陽電池用基板がポリイミドを含む場合、その繰返し単位中に脂環式構造を多く含めることで、b値を低くすることができる。また、ポリイミド製造時の条件の調整によっても、b値を低くすることができる。例えば、イナート雰囲気(例えば、窒素気流下)にして酸素濃度を下げることで、酸化による着色を抑制し、b値を低くすること等が可能である。
表色系のb値は、スガ試験機製Color Cute i型を用いて測定することができる。具体的には、上記試験機を白色標準板によって校正した後、透過モード、測光方式8°diにて、太陽電池用基板のb値を測定することで、特定される。なお、本明細書で特定するb値は、太陽電池用基板の厚さを5μmとしたときの値であり、厚さ5μmの太陽電池用基板について、b値を測定してもよい。一方で、異なる厚さの太陽電池用基板のb値を測定し、これを常法に従って換算してもよい。
また、本発明の太陽電池用基板は、(3)JIS P8115に準拠して測定される、厚さ10μmにおけるMIT耐折性試験での耐折回数が、1万回以上であり、好ましくは2万回以上であり、より好ましくは3万回以上でありさらに好ましくは5万回以上である。MIT耐折性試験の耐折回数が1万回以上であると、太陽電池用基板を有機薄膜太陽電池に用いた際に、屈曲させて使用すること等が可能である。また、MIT耐折性試験の結果が1万回以上であれば、当該太陽電池用基板は十分な強度を有するといえる。また、耐折回数が3万回以上であれば1日に30回折り曲げても3年間、耐久性を確保することができる。耐折性は、例えば太陽電池用基板を構成する樹脂の種類や構造によって調整することが可能である。太陽電池用基板がポリイミドを含む場合、その繰返し単位中に、比較的柔軟な構造を有する構造単位(例えば脂環族ジアミン由来の構造単位や脂肪族ジアミン由来の構造単位等)を含めることで、耐折性を高めることができる。
MIT耐折性試験は、MIT耐折度試験機(例えば、安田精機製作所製、307型等)によって、試験片の一端を固定したうえで、他端を把持して試験片を往復折り曲げし、試験片が破断するまでの折り曲げ回数を測定することで特定することができる。
本発明の太陽電池用基板は、(4)ガラス転移温度が200℃以上であり、好ましくは230℃〜370℃であり、さらに好ましくは260℃〜370℃であり、特に好ましくは280℃〜370℃である。太陽電池用基板のガラス転移温度が200℃以上であると、有機薄膜太陽電池の作製の際に、当該基板に変形等が生じ難くなる。また、有機薄膜太陽電池の作製の際、アニール処理等が行われることもあるが、ガラス転移温度が200℃以上であれば、このような処理にも十分に耐えることが可能である。特に、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明電極は、アニール温度を上げると導電性が向上するため、太陽電池用基板のガラス転移温度は高いほうが好ましい。太陽電池用基板のガラス転移温度は、太陽電池用基板を構成する樹脂の種類や構造によって調整することが可能である。太陽電池用基板がポリイミドを含む場合、ポリイミド中に含まれるイミド基の当量、ポリイミドを構成するジアミン成分またはテトラカルボン酸二無水物成分の構造等によってガラス転移温度を調整することができる。上記ガラス転移温度は、熱機械分析装置(TMA)にて測定される。
また、本発明の太陽電池用基板は、(5)厚さ10μm以下であり、好ましくは0.5μm〜5μmであり、さらに好ましくは1μm〜3μmである。太陽電池用基板の厚さが当該範囲であると、太陽電池用基板を用いて作製される有機薄膜太陽電池の厚みを薄くすることができる。ただし、厚みが過度に薄いと、太陽電池用基板の機械的強度が低下しやすい。
また、本発明の太陽電池用基板は、(6)少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が5nm以下であり、好ましくは2nm以下であり、さらに好ましく1nm以下である。なお、本発明の太陽電池用基板は、一方の面のみ、表面粗さ(Ra)が5nm以下であってもよく、両面の表面粗さ(Ra)が5nm以下であってもよい。なお、一方の面のみ、表面粗さ(Ra)が5nm以下である場合、表面粗さが5nm以下である側に、有機薄膜太陽電池の各部材が形成される。
太陽電池用基板の表面粗さ(Ra)が5nm以下であると、当該基板上に薄膜太陽電池の各部材を積層した際、短絡等が生じ難くなる。なお、太陽電池用基板の表面粗さは、太陽電池用基板を構成する材料の種類や、その作製方法によって調整することが可能である。太陽電池用基板がポリイミドを含む場合、例えば当該基板の形成方法(塗布法により、自由表面を形成すること等)によって、表面粗さを小さくすることが可能である。また、太陽電池用基板を構成する樹脂の種類によっては、化学機械研磨等の精密研磨を行うことで、上記表面粗さを実現してもよい。また太陽電池用基板がポリイミドを含む場合、基板形成(イミド化)時の昇温速度、ポリアミド酸ワニスの粘度および濃度の調整等によっても、表面粗さを小さくすることができる。上記表面粗さ(Ra)は、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定することができる。さらに接触型の表面粗さ計で測定することも可能である。
1−2.組成
本発明の有機薄膜太陽電池を構成する材料は、上記物性を有し、かつ有機系の材料であれば特に制限されないが、以下の一般式(1)および/または一般式(2)で表される繰返し単位を有するポリイミドが含まれることが好ましい。ポリイミドには、一般式(1)で表される繰返し単位および一般式(2)で表される繰返し単位のうち、いずれか一方のみが含まれていてもよく、両方が含まれていてもよい。また、当該ポリイミドには、一般式(1)で表される繰返し単位および/または一般式(2)で表される繰返し単位以外の繰返し単位が含まれていてもよいが、ポリイミドを構成する繰返し単位の総量に対して、一般式(1)で表される繰返し単位および一般式(2)で表される繰返し単位の総量が50モル%以上であることが好ましく、80モル%以上であることがより好ましく、90モル%以上であることがさらに好ましく、95モル%以上であることが特に好ましい。これらの総量が50モル%以上であると、上述の物性を有する太陽電池用基板が得られやすく、物性が均一になりやすく、特にガラス転移温度を高くすることができる。
Figure 2018125496
上記一般式(1)において、Rは脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜15の2価の基、または炭素数5〜12の2価の直鎖状脂肪族基を表す。Rの具体例には、以下に示す2価の基が含まれる。
Figure 2018125496
これらの中でも、Rは、
Figure 2018125496
であることが特に好ましい。
一方、上記一般式(1)において、Yは、芳香環を含む炭素数6〜27の4価の基を表す。Yの具体例には、以下に示す4価の基が含まれる。
Figure 2018125496
これらの中でも、Yは、
Figure 2018125496
であることが特に好ましい。
Figure 2018125496
また、上記一般式(2)において、Rは芳香環を含む炭素数6〜27の2価の基を表す。Rの具体例には、以下に示す2価の基が含まれる。
Figure 2018125496
上記式中のX〜Xは、それぞれ独立に以下の2価の基を表す。一つの繰返し単位にXまたはXが複数含まれる場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
Figure 2018125496
一方、上記一般式(2)におけるYは、脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜12の4価の基を表す。Yの例には、以下に示す4価の基が含まれる。
Figure 2018125496
1−3.有機薄膜太陽電池について
本発明の太陽電池用基板は、上述のように、有機薄膜太陽電池の基板として用いることができる。以下に、有機薄膜太陽電池の構成の一例を示すが、有機薄膜太陽電池の構成は当該構造に限定されない。有機薄膜太陽電池は、受光面側基板/第1の電極/電子輸送層/光電変換層/正孔輸送層/第2の電極/裏面側基板がこの順に積層された構造とすることができる。
受光面側基板および裏面側基板には、上述の太陽電池用基板を用いることができ、いずれか一方にのみ使用してもよく、両方に使用してもよい。本発明の太陽電池用基板は、上述のように、光透過性が高い。したがって、受光面側の基板として、非常に有用である。
また、第1の電極は、負極であり、光電変換層と電気的に接続される。第1の電極は、有機薄膜太陽電池の受光面側に位置することから、例えば酸化インジウムスズ(ITO)、酸化アルミニウム亜鉛(AZO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)等の透明導電性の金属化合物等から構成される。
また、電子輸送層は、第1の電極と光電変換層との間に設けられ、光電変換層から第1の電極に電子を移動させやすくする機能を担う層である。なお、電子輸送層は、光電変換層から第1の電極に正孔を移動させにくくする機能を担っていてもよい。電子輸送層は、電子移動度が高い材料で形成されていればよく、公知の有機半導体分子や、ZnO等の無機化合物を含む層とすることができる。
また、光電変換層は、電子供与性を有する公知のp型有機半導体と、電子受容性を有し、p型有機半導体とバルクヘテロ接合を形成する公知のn型有機半導体とがナノレベルで混合された層等とすることができる。p型有機半導体としては、例えば特開2016−17117号公報に記載の高分子化合物が挙げられる。一方、n型有機半導体としては、フラーレン、フラーレン誘導体、カーボンナノチューブ、化学修飾を施したカーボンナノチューブなどの炭素材料や、縮合環芳香族化合物、5〜7員のヘテロ環化合物、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等が挙げられる。光電変換層には目的に応じてペロブスカイト型化合物を使うことも有効である。また目的に応じて、光電変換層に電流もしくは電界発光材料を使って、発光デバイスとすることも可能である。
また、正孔輸送層は、第2の電極と光電変換層との間に設けられ、光電変換層から第2の電極に正孔を移動させやすくする機能を担う層である。正孔輸送層は、光電変換層から第1の電極に電子を移動させにくくする機能を担っていてもよい。正孔輸送層は、例えば公知の導電性高分子や、MoO、WO等の無機化合物、有機半導体分子等を含む層とすることができる。
さらに、第2の電極は陽極であり、光電変換層と電気的に接続される。第2の電極の材料は導電性を有していれば特に限定されず、例えば、Au、Pt、Ag、Cu、Al、Mg、Li、Kなどの金属、あるいはカーボン電極などを用いることができる。
1−4.太陽電池用基板の製造方法
本発明の太陽電池用基板の製造方法の製造方法は、太陽電池用基板が上述の物性を満たす限りにおいて特に制限されない。例えば、上述のポリイミドを含む太陽電池用基板を作製する方法としては、特定の構造を有するジアミンと、特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物とを、溶媒中で重合反応させてアミド酸含有ワニスとし、当該アミド酸含有ワニスを、基材上に塗布する。そして、当該基材上でアミド酸をイミド化(イミド閉環)させた後、ポリイミド基板(太陽電池用基板)を、基材から剥離することで得られる。
ただし、基材上に直接ポリアミド酸ワニスを塗布し、ポリアミド酸をイミド化させると、得られるポリイミド基板を、基材から剥離することが難しいことがある。そこで、太陽電池用基板は、「積層構造体の製造方法」で説明する方法で作製することが好ましい。なお、ポリイミド作製に用いるジアミン、テトラカルボン酸二無水物、および溶媒や、各種製造条件については、「積層構造体の製造方法」で詳しく説明する。
2.積層構造体
本発明の積層構造体は、基材と、フッ素系樹脂層と、フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板(以下、「素子用基板」とも称する)とが、積層された構造を有する。
一般的に、フレキシブル性を有する素子用基板上にエレクトロニクス素子部を形成すると、素子用基板が撓んだり歪んだりすることがあり、エレクトロニクス素子部の位置がずれたり、得られるフレキシブル・エレクトロニクス素子に歪み等が生じることがある。そこで、素子用基板を基材に固定し、素子用基板を基材で支持した状態で、エレクトロニクス素子部を形成することが考えられる。しかしながら、当該手法では、エレクトロニクス素子部の形成後、素子用基板から基材を剥離することが難しく、得られる素子が破損しやすい等の課題があった。
これに対し、本発明の積層構造体では、基材と、素子用基板とが、フッ素系樹脂層を介して積層されている。したがって、積層構造体の素子用基板上にエレクトロニクス素子部を作製した後、素子用基板とフッ素系樹脂層との界面で、容易に剥離することが可能となる。
以下、本発明の積層構造体の各構成について説明する。
2−1.基材
基材は、素子用基板を十分に支持可能な剛性を有し、かつその表面に後述のフッ素系樹脂層を均一に形成可能な基板であれば特に制限されない。基材の形状は、作製するエレクトロニクス素子の形状に合わせて適宜選択され、例えば平板状の基板であってもよく、屈曲した構造を有する基板等であってもよい。
また、基材の材料は特に制限されず、アルカリ金属酸化物(NaO、KO)を含有するアルカリガラス基板であってもよく、無アルカリガラス基板であってもよい。また、基材として、Siウェハや剛性の高いポリマーフィルム等を用いてもよい。
またさらに、基材の厚みは、通常50〜3000μmであることが好ましく、より好ましくは100〜1000μmであり、さらに好ましくは100〜700μmである。基材の厚みが当該範囲であると、積層構造体上にエレクトロニクス素子部を形成する際の取扱性が良好となる。また、積層構造体の強度が高くなりやすい。なお、厚さが100μm以下の無機ガラス板は強度が多少低い場合があるが、基材として、このような無機ガラス板を用いる場合、破損防止のために、表面のクラックを埋める硬化性樹脂コーティングで処理することで、好適に使用することができる。
また、基材の表面のうち、フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板が積層される面の表面粗さ(Ra)は十分に小さいことが好ましく、10nm以下であることが好ましく、5nm以下であることがより好ましい。表面粗さは、原子間力顕微鏡(AFM)によって測定することができる。また、表面粗さ(Ra)は、接触式の表面粗さ計によって測定することもできる。表面粗さが大きくなると、基材が割れやすくなったり、フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板が剥離し難くなったり、後方散乱が大きくなる場合がある。
2−2.フッ素系樹脂層
フッ素系樹脂層は、基材とフレキシブル・エレクトロニクス素子用基板との間に形成される層であり、分子構造中にフッ素を含む樹脂を含む層である。フッ素系樹脂層の表面の水接触角が13°以上85°以下であり、水接触角は、好ましくは23°以上80°以下であり、さらに好ましくは23°以上70°以下である。後述するように、素子用基板は、通常、フッ素系樹脂層上に、樹脂前駆体を含むワニス等を塗布して形成される。このとき、フッ素系樹脂層表面の水接触角が高すぎると、ワニスを弾いてしまい、均一に素子用基板を形成することができない。これに対し、フッ素系樹脂層表面の水接触角が85°以下であれば、素子用基板をムラなく均一に形成することができる。一方、フッ素系樹脂層表面の水接触角が高くなると、エレクトロニクス素子部の形成後、素子用基板を剥離する際に、素子用基板とフッ素系樹脂層との界面での剥離が生じ難くなるが、フッ素系樹脂層表面の水接触角を13°以上とすることで、良好な剥離性が得られやすい。フッ素系樹脂層表面の水接触角は、フッ素系樹脂層の種類や、表面処理等によって、調整することが可能である。
ここで、フッ素系樹脂層表面の水接触角とは、フッ素系樹脂層を露出させたときの水接触角であり、例えば積層構造体から、素子用基板を剥離することで、測定することができる。また、フッ素系樹脂層表面の水接触角は、液滴法により測定することができる。
フッ素系樹脂層は、例えば、公知のフッ素系樹脂(例えばハイドロフルオロエーテル)を基材上に塗布し、乾燥させること等により形成することが可能である。フッ素樹脂の市販品の例には、ノベック 2702、1700、1720、7000、7100、7200、7300、71IPE(いずれもスリーエム社製);テフロン(登録商標)AF1600、AF2400(いずれも三井・デュポン フロロケミカル社製)等が含まれる。これらは1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。
また、フッ素系樹脂層は、フッ素系樹脂を含む層の形成後、例えば酸素プラズマ処理等が行われたものであってもよい。酸素プラズマ処理を行うことで、水接触角を所望の範囲に調整することができる。
フッ素系樹脂層の厚さは、0.01〜10μmであることが好ましく、0.1〜3μmであることがより好ましい。フッ素系樹脂層の厚さが0.01μm以上であると、素子基板の剥離性が十分に高まりやすい。
2−3.フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板
素子用基板は、フレキシブル・エレクトロニクス素子を形成するための基板であればよく、その種類は特に制限されない。フレキシブル・エレクトロニクス素子の例には、例えば、有機薄膜太陽電池等の太陽電池、LED素子、有機エレクトロルミネッセンス素子、及びトランジスタ等が含まれる。
ここで、素子用基板は、耐熱性やフレキシブル性、透明性等の観点から、前述の有機薄膜太陽電池用基板で説明した基板と同様の物性を有し、かつ上述のポリイミドを含む基板であることが好ましい。
2−4.積層構造体の製造方法
上述の積層構造体は、基材上にフッ素系樹脂層を形成する工程と、当該フッ素系樹脂層上に素子用基板を形成する工程と、を行うことで、製造することができる。
・フッ素系樹脂層形成工程
まず、前述の基材を準備し、当該基材上にフッ素系樹脂層形成用組成物塗布する。フッ素系樹脂層形成用組成物は、前述のフッ素系樹脂もしくはその前駆体と、溶媒とを含む組成物等とすることができる。
フッ素系樹脂層形成用組成物の塗布方法は特に制限されず、例えばスピンコート法、バーコート法、ディップコート法、スリットコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等とすることができる。
フッ素系樹脂層形成用組成物の塗布後、当該組成物中の溶媒を除去し、乾燥させる。乾燥方法は、フッ素系樹脂層形成用組成物中に含まれる成分に応じて適宜選択され、例えば加熱乾燥を行ってもよく、室温乾燥を行ってもよい。
さらに、フッ素系樹脂層形成用組成物の乾燥後、必要に応じて、表面に酸素プラズマ処理等を行ってもよい。酸素プラズマの処理条件は、フッ素系樹脂層の表面の水接触角が13°以上85°以下となるように、適宜選択する。
・素子用基板の形成工程
続いて、上記フッ素系樹脂層上に、素子用基板を形成する。素子用基板の形成方法は、樹脂の種類に応じて適宜選択されるが、ポリイミドを主に含む素子用基板を作製する方法としては、特定の構造を有するジアミンと、特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物とを、溶媒中で重合反応させてアミド酸含有ワニスとする。そして、当該アミド酸含有ワニスを、フッ素系樹脂層上に塗布した後、アミド酸をイミド化(イミド閉環)させる。これにより、基材、フッ素系樹脂層、および素子用基板が積層された積層構造体が得られる。
(ポリアミド酸ワニスの調製)
まず、所定の構造を有するジアミンと、特定の構造を有するテトラカルボン酸二無水物とを、溶媒中で重合反応させてアミド酸含有ワニスとする。
ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物は、調製するポリイミドの構造に合わせて適宜選択される。例えば、上記一般式(1)で表される繰返し構造を有するポリイミドを含む素子用基板を作製する場合、脂環式炭化水素構造を有するジアミンまたは直鎖脂肪族ジアミンと、芳香環を含むテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、ポリアミド酸を調製する。ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ一種のみ用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環式炭化水素構造を有するジアミンの例には、シクロブタンジアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス(アミノメチル)シクロヘキサン〕、ジアミノビシクロヘプタン、ジアミノメチルビシクロヘプタン(ノルボルナンジアミンなどのノルボルナンジアミン類を含む)、ジアミノオキシビシクロヘプタン、ジアミノメチルオキシビシクロヘプタン(オキサノルボルナンジアミンを含む)、イソホロンジアミン、ジアミノトリシクロデカン、ジアミノメチルトリシクロデカン、ビス(アミノシクロへキシル)メタン、ビス(アミノシクロヘキシル)イソプロピリデン等が含まれる。
直鎖状脂肪族ジアミンの例には、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、1,7−ジアミノヘプタン、1,8−ジアミノオクタン、1,9−ジアミノノナン、1,10−ジアミノデカン、1,11−ジアミノウンデカン、1,12−ジアミノドデカン等が含まれる。
また、芳香環を含むテトラカルボン酸二無水物の例には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物、1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、2,2−ビス[(3,4−ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ビフェニル二無水物、ナフタレン2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン1,2,5,6−テトラカルボン酸二無水物、4,4’−(9−フルオレニリデン)ビス無水フタル酸等が含まれる。
一方、上記一般式(2)で表される繰返し構造を有するポリイミドを含む素子用基板を作製する場合、芳香環を含むジアミンと、脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸二無水物とを反応させて、ポリアミド酸を調製する。ジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ一種のみ用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
芳香環を含むジアミンの例には、ベンゼン環を1つ有するジアミンである、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、p−キシリレンジアミン、m−キシリレンジアミン;ベンゼン環を2つ有するジアミンである、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノベンゾフェノン、4,4’−ジアミノベンゾフェノン、3,3’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,2−ジ(4−アミノフェニル)プロパン、1,5−ジアミノナフタレン、;ベンゼン環を3つ有するジアミンである、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(3−アミノベンゾイル)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノベンゾイル)ベンゼン、2,6−ビス(3−アミノフェノキシ)ピリジン;ベンゼン環を4つ有するジアミンである、4,4’−ビス(3−アミノフェノキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン;等が含まれる。
一方、脂環式炭化水素構造を含むテトラカルボン酸二無水物の例には、シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2.]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクタン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2,3,5−トリカルボン酸−6−酢酸二無水物,1−メチル−3−エチルシクロヘキサ−1−エン−3−(1,2),5,6−テトラカルボン酸二無水物、デカヒドロ−1,4,5,8−ジメタノナフタレン−2,3,6,7−テトラカルボン酸二無水物、4−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラン−3−イル)−テトラリン−1,2−ジカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物等が含まれる。
ポリアミド酸ワニスは、例えば、上記ジアミンと、テトラカルボン酸二無水物とを、非プロトン性極性溶媒または水溶性アルコール系溶媒中で重合することにより得られる。非プロトン性極性溶媒の例には、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ヘキサメチルフォスフォラアミド等;エーテル系化合物である、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、2-(メトキシメトキシ)エトキシエタノール、2-イソプロポキシエタノール、2-ブトキシエタノール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、テトラエチレングリコール、1-メトキシ-2-プロパノール、1-エトキシ-2-プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテルなどが含まれる。水溶性アルコール系溶媒の例には、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、tert-ブチルアルコール、エチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、ジアセトンアルコール等が含まれる。
これらの溶剤は1種単独で、もしくは2種以上を混合して用いることができる。これらの中でも、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドンもしくはこれらの組み合わせが好ましい。
ポリアミド酸ワニスの調製手順に特に制限はない。例えば、撹拌機及び窒素導入管を備えた容器を用意する。窒素置換した容器内に前述の溶媒を投入し、固形分濃度が30重量%程度となるようにジアミンを加えて攪拌し、溶解させる。この溶液に、ジアミン化合物に対して、モル比率が1程度となるようにテトラカルボン酸二無水物を加え、温度を調整して1〜50時間程度攪拌する。これにより、ポリアミド酸が溶媒に分散されたポリアミド酸ワニスを得ることができる。
(ポリアミド酸ワニスの塗布およびイミド化)
上述のポリアミド酸ワニスを、前述のフッ素系樹脂層上に塗布し、加熱し、ポリアミド酸をイミド化させる。ここで、ポリアミド酸ワニスの塗布方法は特に制限されず、例えば例えばスピンコート法、バーコート法、ディップコート法、スリットコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、ダイコート法等とすることができる。
ポリアミド酸のイミド化は、通常の加熱乾燥炉で行うことができる。乾燥炉の雰囲気としては、空気、イナートガス(窒素、アルゴン)等が利用できるが、酸素濃度が5%以下の不活性ガス雰囲気とすることが好ましい。環境雰囲気中の酸素濃度を低くすることで、得られる素子用基板(ポリイミド基板)の透明性を高めることができる。また、得られる素子用基板(ポリイミド基板)の耐折性や引張強度も高まりやすい。不活性ガスの環境雰囲気における酸素濃度は、0.1%以下がより好ましい。
一方、イミド化時の平均昇温速度は、50〜300℃の範囲で、例えば0.25〜50℃/分ことができ、好ましくは1〜10℃/分、より好ましくは2〜5℃/分である。昇温速度は、一定としてもよく、2段階以上に変えてもよい。2段階以上に変える場合は、各昇温速度を0.25〜50℃/分とすることが好ましい。得られる素子用基板(ポリイミド基板)の透明性が高くなり、さらに、引張強度や耐折性も高くなる。さらに、昇温は、連続的でも段階的(逐次的)でもよいが、連続的とすることが、得られる素子用基板(ポリイミド基板)の外観不良やイミド化反応に伴う白化を抑制できる点から好ましい。なお、塗膜は必ずしも300℃まで加熱する必要はない。昇温終了温度が300℃未満である場合、150℃からその昇温終了温度までの範囲における平均昇温速度を0.25〜50℃/分とすることが好ましい。
昇温終了(到達最高)温度は、通常、高めの温度、具体的にはポリイミドのガラス転移温度Tgより10℃以上高い温度とすることが好ましい。昇温終了(到達最高)温度を当該温度とすることで、塗膜に含まれる残存溶剤を除去しやすくなる。また、得られる素子用基板(ポリイミド基板)の耐折性が高くなる。昇温終了(到達最高)温度は、例えば200〜300℃が好ましく、より好ましくは250〜290℃であり、さらに好ましくは270〜290℃である。昇温終了後の加熱時間は、例えば1秒〜10時間程度とすることができる。
2−5.積層構造体を用いたフレキシブル・エレクトロニクス素子の製造方法
上述の積層構造体を用いてフレキシブル・エレクトロニクス素子を製造する場合、まず、積層構造体の素子用基板上にエレクトロニクス素子部を形成する工程を行い、その後、フレキシブル・エレクトロニクス素子用の基板から、フッ素系樹脂層および基材を剥離する工程を行う。
本発明の方法によれば、剛性を有する基材によって支持しながら、エレクトロニクス素子部を形成することが可能である。したがって、エレクトロニクス素子部の形成時に、素子用基板が撓んだりすること等がなく、所望の位置に精度よくエレクトロニクス素子部を形成することが可能である。
一方で、エレクトロニクス素子部を形成した後は、素子用基板から基材およびフッ素系樹脂層を容易に剥離することが可能である。したがって、エレクトロニクス素子部を破損させること等なく、剥離を行うことが可能であり、フレキシブル性を有するエレクトロニクス素子が容易に得られる。
以下において、実施例を参照して本発明を説明する。実施例によって、本発明の範囲は限定して解釈されない。
1.積層構造体の作製
[実施例1、2、および比較例1〜3]
・フッ素系樹脂層の形成
フッ素系コーティング剤1(3M社製、NOVEC 1700)およびフッ素系コーティング剤2(3M社製、NOVEC7100)を表1に示す質量比で混合したフッ素系樹脂層形成用組成物を、無機ガラス板からなる基材(アルカリガラス、0.7mm厚)上に200μl滴下し、スピンコートした。スピンコートの条件は、2000rpm、60秒間とした。その後、当該積層体を室温で3分静置し、無機ガラス板上に厚さ100nmのフッ素系樹脂層を形成した。得られたフッ素系樹脂層の表面に、酸素プラズマ処理を行った。プラズマ処理は、SAMCO社製PC300にて、酸素ガス流量5sccm、電力50Wで30秒間行った。得られたフッ素系樹脂層の表面の水接触角を液滴法により測定した。水接触角は、5箇所について測定を行い、これらの平均値とした。結果を表1に示す。
・ポリイミド基板(フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板)の作製
温度計、攪拌機、窒素導入管、滴下ロートを備えた300mLの5つ口セパラブルフラスコに、1,4−ジアミノシクロヘキサン(CHDA)5.71g(0.05モル)、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン(14BAC)7.11g(0.05モル)、およびN,N‐ジメチルアセトアミド(DMAc)229.7gを加えて撹拌した。
ここに、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エーテル二無水物(ODPA)30.9g(0.1モル)を装入し、反応容器を120℃に保持したオイルバス中に5分間浴し、速やかに再溶解していく様子を確認した。オイルバスを外してから、さらに18時間室温で攪拌し、ポリアミド酸を含むポリアミド酸ワニスを得た。当該ポリアミド酸ワニスを、上述のフッ素系樹脂層の上に200μl/cmとなるように滴下し、スピンコートした。スピンコートの条件は、5000rpm、60秒間とした。その後、当該積層体をイナートオーブンにて、昇温速度2℃/分で270℃まで昇温させ、270°で2時間焼成した。これにより、無機ガラス板上に厚さ1μmのポリイミド基板を形成した。
[比較例4]
無機ガラス板上にポリアミド酸ワニスを塗布した以外は、実施例1と同様にポリイミド基板を作製した。
・評価
得られた積層構造体について、ポリイミド基板の成膜性、およびポリイミド基板の剥離性を以下のように評価した。
(ポリイミド基板の成膜性)
得られた積層構造体のポリイミド基板の表面について、一部凝集による厚膜領域、または液の弾きによる成膜ができていない(極端に厚さが薄い)領域(不均一な領域)の有無を目視により確認した。そして、成膜性を以下の基準で評価した。
〇:全体に対して不均一な領域の面積がおおむね10%未満であった
×:全体に対して不均一な領域の面積が10%以上であった
(ポリイミド基板の剥離性)
得られた積層構造体から、ポリイミド基板を剥離した。具体的には、ポリイミド基板の無機ガラス板の外周側の4辺に、メスにて切込みを入れた。そして、当該4辺にテープを接着させ、「ロ」の字型の構造のポリイミド基板を得た。剥離は、テープを手またはピンセットで保持しながら行った。このときのポリイミド基板の剥離性を以下の基準で評価した。
〇:「ロ」の字型の基板のうち、90%以上にポリイミド膜が形成されていた
△:「ロ」の字型の基板のうち、50%以上90%未満にポリイミド膜が形成されていた
×:破れや無機ガラス板への残りなどにより、ポリイミド膜の形成面積が「ロ」の字型の基板の50%未満であった
Figure 2018125496
上記表1に示されるように、表面の水接触角が13°以上85°以下であるフッ素系樹脂層上にポリイミド基板を作製した場合には、ポリイミド基板の成膜性およびポリイミド基板の剥離性が良好であった(実施例1および2)。一方で、フッ素系樹脂層の水接触角が85°を超えると、ポリイミド基板の成膜性が低下し(比較例1)、フッ素系樹脂層の水接触角が13°未満になると、ポリイミド基板の剥離性が低下した(比較例2〜4)。
[実施例3〜5、および比較例5〜6]
・フッ素系樹脂層の形成
フッ素系コーティング剤3(3M社製、NOVEC 2702)およびフッ素系コーティング剤4(3M社製、NOVEC7200)を表2に示す質量比で混合したフッ素系樹脂層形成用組成物を用いた以外は、実施例1と同様に、ガラス基板、フッ素系樹脂層、およびポリイミド基板(フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板)が積層された積層構造体を作製した。当該積層構造体について、実施例1等と同様にポリイミド基板の成膜性、およびポリイミド基板の剥離性を評価した結果を表2に示す。併せて、上述の比較例4(フッ素系樹脂層を含まない)積層構造体の評価結果も表2に示す。
Figure 2018125496
上記表2に示されるように、表面の水接触角が13°以上85°以下であるフッ素系樹脂層上にポリイミド基板を作製した場合には、ポリイミド基板の成膜性およびポリイミド基板の剥離性が良好であり、実用状問題ない範囲であった(実施例3〜5)。一方で、水接触角が13°未満になると、ポリイミド基板の剥離性が低下した(比較例4〜6)。
2.有機薄膜太陽電池の作製
[実施例6]
・積層構造体の作製
無機ガラス板からなる基材(アルカリガラス、0.7mm厚)を準備した。そして無機ガラス板にSAMCO社製PC300にて、酸素ガス流量5sccm、電力300Wで10分間、酸素プラズマ処理を行った。その後、フッ素系コーティング剤1(3M社製、NOVEC 1700)およびフッ素系コーティング剤2(3M社製、NOVEC7100)を1:6の質量比で混合したフッ素系樹脂層形成用組成物を、無機ガラス板上に200μl滴下し、スピンコートした。スピンコートの条件は、2000rpm、60秒間とした。その後、当該積層体を室温で3分静置し、無機ガラス板上に厚さ100nmのフッ素系樹脂層を形成した。得られたフッ素系樹脂層の表面に、SAMCO社製PC300にて、酸素ガス流量5sccm、電力50Wで30秒間酸素プラズマ処理を行った。得られたフッ素系樹脂層の表面の水接触角は、29.0°であった。なお、水接触角は、液適法により5箇所について測定を行った結果の平均値とした。続いて、実施例1と同様に、当該フッ素系樹脂層上にポリイミド基板(厚さ1.3μm)を作製した。当該ポリイミド基板の物性を、表3に示す。
・有機薄膜太陽電池の作製
上述の積層構造体のポリイミド基板上に、酸化インジウムスズ(ITO)層をスパッタ法で成膜した。ITO層(第1の電極)の厚さは100nmとした。得られたITO層に、SAMCO社製PC300にて、酸素ガス流量5sccm、電力300Wで1分間酸素プラズマ処理を行った。
続いて、2−メトキシエタノール5mlに酢酸亜鉛二水和物549mg、およびエタノールアミン160μlを溶解させた溶液を、ITO層上に滴下し、スピンコートした。スピンコートの条件は、5000rpmm、30秒間とした。その後、当該積層体を70℃に加熱した後、180℃まで昇温させて30分間保持し、室温まで冷却させて、ZnO層(電子輸送層)を得た。
次に、o−ジクロロベンゼン中に、下記式(7)で表される構造を有するPNTz4Tと、下記式(8)で表される構造を有するPC71BMとを1:2の質量比で溶解させた溶液を準備した。そして、ZnO層上に加熱スピンコートした。スピンコートの条件は、100℃、600rpm、20秒間とした。これにより、厚さ250〜300nmの光電変換層を得た。
Figure 2018125496
続いて、上記光電変換層上に酸化MoO層(正孔輸送層)およびAg層(第2の電極)を真空蒸着法で成膜した。成膜時の圧力は、いずれも1×10−3Pa未満とした。さらに酸化モリブデンの成膜レートは、0.1Å/s以下、銀の成膜レートは1Å/s以下とした。また、MoO層の厚みは7.5nm、Ag層の厚みは100nmとした。その後、当該積層体から、無機ガラス板およびフッ素系樹脂層を剥離し、有機薄膜太陽電池を得た。
[比較例7]
CHDA、14BAC、ODPAの代わりに、4,4’−オキシジアニリン(ODA)20.0g(0.100モル)および無水ピロメリット酸(PMDA)21.8g(0.100モル)を使用し、DMAcの使用量を177.7gに変更した他は、実施例1と同様の方法でポリアミド酸を含むポリアミド酸ワニスを得た。そして、実施例6と同様の方法により、有機薄膜太陽電池を作製した。
[比較例8]
積層構造体の代わりに、無機ガラス板(アルカリガラス、厚み0.7mm)を使用した以外は、実施例6と同様に有機薄膜太陽電池を作製した。
[評価]
実施例6で作製したポリイミド基板、比較例7で使用したポリイミド基板、および比較例8で使用した無機ガラス板の物性を評価した。結果を表3に示す。
(厚さ5μmにおける波長400nm±5nmの最大透過率の測定)
実施例6、比較例7で用いた各ポリアミド酸ワニスを用い、スピンコートの条件だけを変えて、厚みが5μmとなるポリイミド基板を作製した。
得られたポリイミド基板、ならびに比較例8で使用した無機ガラス板の波長400nm±5nmの光線透過率を、島津製作所社製 分光光度計(MultiSpec−1500)で測定した。そして、厚み5μmにおける波長400nm±5nmにおける最大透過率を算出した。
(厚さ5μmにおけるL表色系におけるb*値)
実施例6、比較例7で用いた各ポリアミド酸ワニスを用い、スピンコートの条件だけを変えて、厚みが5μmとなるポリイミド基板を作製した。
得られたポリイミド基板、ならびに比較例8で使用した無機ガラス板のL表色系におけるb値を、スガ試験機製Color Cute i型を用いて、透過モード、測光方式8°diにて白色標準板による校正を行った後、測定した。比較例8で使用した無機ガラス板については、測定値を、基板の厚みが5μmである場合のb値に換算した。
(MIT耐折性)
実施例6、比較例7で用いた各ポリアミド酸ワニスを用い、スピンコートの条件だけを変えて、厚みが10μmとなるポリイミド基板を作製した。
得られたポリイミド基板を、長さ約120mm×幅15mmの形状にカットし、試験片とした。この試験片を、安田精機製作所製 MIT型耐折試験機(307型)にセットして、曲率半径0.38mm、荷重0.5Kg、折り曲げ確度270度(左右135度)、折り曲げ速度175回/分の条件で破断するまでの回数を測定した。なお、比較例8で使用したガラス基板については、耐折性を測定することができなかった。
耐折性は、MIT耐折度試験機(安田精機製作所製、307型)を用い、上記試験片について、試験片の一端を固定したうえで、他端を把持して試験片を往復折り曲げし、試験片が破断するまでの折り曲げ回数を測定した。測定条件は以下の通りとした。
なお、試験時には、試験片の一方側への折り曲げを1回と数えた。試験は3回行い、3回の試験結果の算術平均値について有効数値2ケタで四捨五入した値を耐折性の測定結果とした。また、耐折性の測定結果の上限値は、100万回とした。
(測定条件)
曲げ半径:R=0.38mm
荷重:0.5kgf
折り曲げ角度:270°(左右135°)
折り曲げ速度:175回/分
試験回数:n=3
(ガラス転移温度(Tg)の測定)
実施例6、比較例7で用いた各ポリアミド酸ワニスを用い、スピンコートの条件だけを変えて、厚みが5μmとなるポリイミド基板を作製した。
得られたポリイミド基板を、幅4mm、長さ20mmに裁断した。これを島津製作所社製 熱分析装置(TMA−50)で測定した。
(表面粗さ(Ra)の測定)
実施例6で使用したポリイミド基板および比較例8で使用した無機ガラス板の表面粗さ(Ra)は、AFM(SII社製NanoNavi IIs Nanocute)により測定した。
(規格化光電変換効率(PCE))
実施例6および比較例8で作製した薄膜太陽電池(活性領域 0.04cm)に、ソーラシュミレーターでAM1.5G条件の光を照射強度1000W/mで照射して、大気圧下、ケースレー社製2400 ソースメータで電流−電圧特性を測定した。得られた電流−電圧曲線から、規格化光電変換効率(PCE)を測定した。
Figure 2018125496
表3に示すように、厚さ5μmにおける波長400nm±5nmの最大透過率が70%以上であり、厚さ5μmにおけるL表色系におけるb値が5以下であり、かつガラス転移温度が200℃以上であり、さらに表面粗さ(Ra)が5nm以下であるポリイミド基板を用いて作製した有機薄膜太陽電池は、ガラス基板を用いた有機薄膜太陽電池(比較例8)と同等の規格化光電変換効率(PCE)を実現することができた(実施例6)。当該有機薄膜太陽電池用のポリイミド基板は、光の透過率が高いだけでなく、耐熱性を備え、さらに表面粗さが小さいことから、短絡等も生じ難かったと推察される。また、当該ポリイミド基板は、MIT耐折性が十分に高く、十分なフレキシブル性も有していた。
これに対し、最大透過率やb値が上記特定を満たさないポリイミド基板を用いて有機薄膜太陽電池を作製した場合には、光の透過率が低く、十分な光電変換効率を得ることができなかった(比較例7)。一方、ガラス基板を用いた有機薄膜太陽電池では、十分な光電変換効率を得ることは可能であったが、フレキシブル性が低かった(比較例8)。
本発明の有機薄膜太陽電池用基板は、光の透過性が高く、フレキシブル性を有し、さらに表面粗さが低い。したがって、各種有機薄膜太陽電池に適用することが可能である。また、本発明の積層構造体は、フレキシブル・エレクトロニクス素子用の基板を容易に剥離することができる。したがって、各種フレキシブル・エレクトロニクス素子の作製に用いることができる。

Claims (8)

  1. 下記(1)〜(6)を全て満たす、有機薄膜太陽電池用基板。
    (1)厚さ5μmにおける波長400±5nmの最大透過率が70%以上である
    (2)厚さ5μmにおけるL表色系のb値が5以下である
    (3)JIS P8115に準拠して測定される、厚さ10μmにおけるMIT耐折性試験での耐折回数が、1万回以上である
    (4)ガラス転移温度が200℃以上である
    (5)厚さ10μm以下である
    (6)少なくとも一方の面の表面粗さ(Ra)が5nm以下である
  2. 前記基板が、下記一般式(1)で表される繰り返し構成単位または下記一般式(2)で表される繰り返し構成単位を有するポリイミドを含む、
    請求項1に記載の有機薄膜太陽電池用基板。
    Figure 2018125496
    (上記一般式(1)において、Rは脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜15の2価の基、または炭素数5〜12の2価の直鎖状脂肪族基を表し、Yは、芳香環を含む炭素数6〜27の4価の基を表す)
    Figure 2018125496
    (上記一般式(2)において、Rは芳香環を含む炭素数6〜27の2価の基を表し、Yは、脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜12の4価の基を表す)
  3. 前記一般式(1)で表される構成単位のRが、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であり、
    前記一般式(1)で表される構成単位のYが、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であり、
    前記一般式(2)で表される構成単位のRが、
    Figure 2018125496
    (X〜Xは、それぞれ独立に、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる単結合または2価の基を表す)
    からなる群から選ばれる少なくとも一種の2価の基であり、
    前記一般式(2)で表される構成単位のYが、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる少なくとも一種の4価の基である、
    請求項2に記載の有機薄膜太陽電池用基板。
  4. 基材と、フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板とが、フッ素系樹脂層を介して積層されており、
    前記フッ素系樹脂層の表面の水接触角が13°以上85°以下である、
    積層構造体。
  5. 前記フレキシブル・エレクトロニクス素子用基板が、下記一般式(3)で表される繰り返し構成単位または下記一般式(4)で表される繰り返し構成単位を有するポリイミドを含む、
    請求項4に記載の積層構造体。
    Figure 2018125496
    (上記一般式(3)において、Rは脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜15の2価の基、または炭素数5〜12の2価の直鎖状脂肪族基を表し、Yは、芳香環を含む炭素数6〜27の4価の基を表す)
    Figure 2018125496
    (上記一般式(4)において、Rは芳香環を含む炭素数6〜27の2価の基を表し、Yは、脂環式炭化水素構造を含む炭素数4〜12の4価の基を表す)
  6. 前記一般式(3)で表される構成単位のRが、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる少なくとも1種の2価の基であり、
    前記一般式(3)で表される構成単位のYが、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる少なくとも1種の4価の基であり、
    前記一般式(4)で表される構成単位のRが、
    Figure 2018125496
    (X〜Xは、それぞれ独立に、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる単結合または2価の基を表す)
    からなる群から選ばれる少なくとも一種の2価の基であり、
    前記一般式(4)で表される構成単位のYが、
    Figure 2018125496
    からなる群から選ばれる少なくとも一種の4価の基である、
    請求項5に記載の積層構造体。
  7. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の積層構造体の製造方法であって、
    基材上に、フッ素系樹脂層を形成する工程と、
    フッ素系樹脂層上に、フレキシブル・エレクトロニクス素子用の基板を形成する工程と、
    を含み、
    前記フッ素系樹脂層の表面の水接触角が13°以上85°以下である、
    積層構造体の製造方法。
  8. 請求項4〜6のいずれか一項に記載の積層構造体のフレキシブル・エレクトロニクス素子用基板上にエレクトロニクス素子部を形成する工程と、
    前記エレクトロニクス素子部の形成後、フレキシブル・エレクトロニクス素子用の基板から、フッ素系樹脂層および基材を剥離する工程と、
    を有する、フレキシブル・エレクトロニクス素子の製造方法。
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