JP2018124232A - 熱貫流特性測定方法および断熱性能評価方法 - Google Patents

熱貫流特性測定方法および断熱性能評価方法 Download PDF

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Abstract

【課題】実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる熱貫流特性測定方法および断熱性能評価方法を提供する。【解決手段】光照射がない場合の熱貫流特性測定方法において、内部温度が平衡温度Tcとなるまで内部電球3を略一定の消費電力で駆動させる昇温工程を実施し、内部電球3の消費電力AvWを、平衡温度Tcと雰囲気温度Tsとの差で除すことにより、熱貫流率Ucを算出することができる。このとき、熱貫流率Ucに基づいて透光性部材の放射率εを算出することにより、任意の温度条件における熱貫流率を算出するための一般式を取得することができ、温度条件に応じた透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。【選択図】図1

Description

本発明は、透光性部材の熱貫流特性を測定する熱貫流特性測定方法および透光性部材の断熱性能を評価する断熱性能評価方法に関する。
一般に、室内と室外とを区画する板ガラス等の透光性部材は、可視光を充分に透過させるとともに、冷暖房使用時の省エネルギー化のために断熱性能が高い(即ち熱貫流率が低く熱貫流量が小さい)ことが好ましい。以下では熱貫流率と熱貫流量とをまとめて「熱貫流特性」と呼ぶ。このような透光性部材として、高熱遮蔽性の積層膜が設けられた窓ガラスが提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された窓ガラスは、JIS R3106/3107(1998)に準拠して測定される熱貫流率が所定範囲の値となるように構成されている。以下では、この測定方法を「JIS測定方法」と呼ぶ。
特開2016−079052号公報
しかしながら、JIS測定方法では、ガラスによって区画される2つの空間の温度差として1Kを基準としており、温度差がさらに大きい場合においては、測定値と実際の断熱性能とが乖離してしまう可能性があった。また、ガラス等の透光性部材は、温度差が同じであっても温度の絶対値が異なると実際の断熱性能が変化したり、日射の吸収により温度上昇して断熱性能が変化したりする場合もある。そこで、実際の使用状況を考慮し、透光性部材の断熱性能をより適切に評価する(例えば省エネ性能等を算出する際に温度条件や日射条件等を反映させる)ことができる測定方法が望まれていた。
本発明の目的は、実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる熱貫流特性測定方法および断熱性能評価方法を提供することにある。
本発明の熱貫流特性測定方法は、透光性部材の熱貫流特性を測定する熱貫流特性測定方法であって、少なくとも一面が前記透光性部材によって構成された測定箱の内部に、熱源と、前記測定箱の内部温度を測定する内部測温手段と、を配置するとともに、前記測定箱の外部に、雰囲気温度を測定する雰囲気測温手段と、を配置し、前記内部測温手段により測定した前記内部温度が平衡温度となるように前記熱源を略一定の消費電力で駆動させる昇温工程を実施し、前記熱源の消費電力に基づいて前記透光性部材の熱貫流特性を算出することを特徴とする。
以上のような本発明によれば、内部温度が平衡温度となるように熱源を駆動させ、熱源の消費電力に基づいて透光性部材の熱貫流特性を算出することで、温度条件に応じた熱貫流特性を算出することができる。即ち、温度条件を適宜に設定することにより、透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。尚、「透光性部材」とは、板ガラスのように一部材のみで構成されているものに限定されず、板ガラスにシート部材が貼付されたものや、壁紙等のシート状の部材のみで構成されたものも含む。板ガラスにシート部材が貼付されている場合には板ガラスとシート部材とが透光性部材を構成する。
このとき、表面積の50%以上が透光性部材によって構成された測定箱を用いることが好ましい。このような測定箱を用いることで、測定の再現性を向上させることができる。一方、透光性部材が表面積を占める割合が低すぎると、透光性部材以外の板材(例えば断熱材)の蓄熱による影響が大きくなってしまう。即ち、熱源駆動前における内部温度が同じ場合でも、透光性部材以外の板材の蓄熱状態が異なると、熱源を駆動した際の内部温度に差が生じてしまうことがある。
この際、本発明の熱貫流特性測定方法では、前記昇温工程における前記熱源の消費電力と、前記平衡温度と、前記雰囲気温度と、に基づいて前記透光性部材の熱貫流特性を算出することが好ましい。このような方法によれば、熱源の消費電力を、平衡温度と雰囲気温度との差で除すことにより、熱貫流率を算出することができる。尚、熱源の消費電力として、昇温工程における積算消費電力を昇温工程の継続時間で除した平均消費電力を用いてもよいし、昇温工程終了時において内部温度が安定している際の瞬間的な消費電力を用いてもよい。また、熱源の駆動電源の電圧変動が大きい場合には平均消費電力を用いることが好ましく、電圧変動が小さい場合には瞬間的な消費電力を用いてもよい。
また、本発明の熱貫流特性測定方法では、前記昇温工程の後、前記熱源の駆動を停止して前記内部温度を低下させる降温工程を実施し、前記降温工程および前記昇温工程において前記内部温度が所定の温度間で上昇及び低下するための所要時間と、前記内部温度が前記所定の温度間で上昇するための前記熱源の消費電力と、に基づいて前記透光性部材の熱貫流特性を算出してもよい。このような方法によれば、任意の温度域における熱貫流率を算出することができる。即ち、内部温度が所定の温度間で上昇するための消費電力は、内部温度がこの温度間で上昇及び低下するための所要時間だけこの温度差を維持するために必要な消費電力であり、消費電力を所要時間で除すことにより、熱貫流率を算出することができる。このとき、温度上昇及び温度低下を一サイクルのみ実施して熱貫流率を算出してもよいし、複数サイクル実施して熱貫流率を算出してもよい。一サイクルのみの実施で熱貫流率を算出すれば、容易に且つ短時間で熱貫流率を取得することができ、複数サイクルの実施で熱貫流率を算出すれば、より信頼性の高い熱貫流率を取得することができる。
また、本発明の熱貫流特性測定方法では、前記昇温工程における前記熱源の消費電力に基づいて前記透光性部材の放射率を求めることが好ましい。このような方法によれば、分光測定器を用いる必要がなく、容易に放射率を求めることができる。また、放射率を求めれば、内部温度(室内温度)および雰囲気温度(室外温度)を変数とする熱貫流特性の一般式によって、任意の温度条件における熱貫流特性を算出することができる。
また、本発明の熱貫流特性測定方法では、前記透光性部材に対して光を照射するとともに、該透光性部材の表面温度を測定することにより、前記雰囲気温度からの該透光性部材の表面温度上昇を算出し、前記熱貫流特性を前記表面温度上昇によって補正することが好ましい。透光性部材の表面温度が上昇すると、透光性部材の両側で温度差がある場合でも、熱貫流が起こりにくくなる(特に、表面温度が高温側の空間の温度よりも高くなると熱貫流率が理論上0になる)。従って、光源が光を放射することによる表面温度上昇を算出し、熱貫流特性を補正することで、日射条件に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
また、本発明の熱貫流特性測定方法では、前記透光性部材の外側表面近傍の風速を測定し、風速ごとに前記表面温度上昇を算出することが好ましい。このような方法によれば、風速の影響も考慮し、実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
一方、本発明の断熱性能評価方法は、透光性部材の断熱性能を評価する断熱性能評価方法であって、少なくとも一面が前記透光性部材によって構成された測定箱の内部に、熱源と、前記測定箱の内部温度を測定する内部測温手段と、を配置するとともに、前記測定箱の外部に、雰囲気温度を測定する雰囲気測温手段と、を配置し、前記内部測温手段により測定した前記内部温度が平衡温度となるように前記熱源を略一定の消費電力で駆動させる昇温工程を実施し、前記平衡温度に基づいて透光性部材の断熱性能を評価することを特徴とする。
このような本発明によれば、平衡温度が高いほど透光性部材の断熱性能が高いと判断することができる。即ち、異なる透光性部材に対して同一の条件で昇温工程を実施した際、平衡温度が高い方の透光性部材が、より断熱性能が高いと判断することができる。また、熱源の消費電力を適宜に設定することにより、平衡温度を所望の範囲内に収めることができ、実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
以上のような本発明の熱貫流特性測定方法および断熱性能評価方法によれば、内部温度が平衡温度となるような昇温工程を実施して消費電力基づいて透光性部材の熱貫流特性を算出したり、熱源の消費電力を適宜に設定したりすることで、実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
本発明の実施形態に係る熱貫流特性測定方法における光照射がない場合の熱貫流特性測定方法に用いる測定装置を示す斜視図である。 前記熱貫流特性測定方法を実施した際の積算消費電力を示すグラフである。 前記熱貫流特性測定方法を実施した際の各温度変化を示すグラフである。 前記熱貫流特性測定方法の測定結果に基づく熱貫流特性の算出方法を模式的に示すグラフである。 前記算出方法によって算出される各温度域における熱貫流量の具体例を示すグラフである。 前記熱貫流特性測定方法において透光性部材の表面温度上昇の測定に用いる測定装置を示す斜視図である。 光照射した場合の前記透光性部材の表面温度の変化の一例を示すグラフである。 光照射した場合の前記透光性部材の表面温度の変化の他の例を示すグラフである。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。本発明の実施形態に係る熱貫流特性測定方法は、光照射がない場合の透光性部材の熱貫流特性を測定する方法と、光照射による透光性部材の表面温度上昇を測定する方法と、を含み、光照射がない場合の熱貫流特性を光照射による表面温度上昇で補正するものである。
<光照射がない場合の熱貫流特性>
光照射がない場合の熱貫流特性は、図1に示すような第1の測定装置1Aを用いて測定される。測定装置1Aは、測定箱2Aと、熱源としての内部電球3と、内部測温手段4と、を備え、雰囲気温度が略一定に保たれ且つ対流等の環境変化の少ない場所(例えば恒温恒湿室)に設置される。また、測定箱2A外部の雰囲気温度は、図示しない雰囲気測温手段によって測定される。内部電球3と、内部測温手段4と、雰囲気測温手段と、が外部のコンピュータ100に接続される。尚、本実施形態では、各手段の制御や測定値に基づく計算等が1台のコンピュータ100によって実施されるものとするが、制御用のコンピュータと計算用のコンピュータとが独立に用いられてもよいし、制御用のコンピュータに替えて測定値(測定温度等)に応じて単にオンオフを制御する制御装置を用いてもよいし、各手段の駆動開始および停止や計算等を手動で行ってもよい。
測定箱2Aは、六面全てが板状の透光性部材によって構成され、立方体状となっている。本実施形態では、測定箱2Aの一辺が408mmであり、測定箱2Aの表面積が1m2となっている。これにより、後述する熱貫流率の計算が容易となるとともに、計算過程が少なくなり、計算により得られる熱貫流特性の誤差を小さくすることができる。尚、測定箱は立方体状でなくてもよいし、上記とは異なる大きさを有していてもよく、内部電球3及び内部測温手段4の形状や大きさに応じた適宜な形状及び大きさを有していればよい。
また、測定箱は、少なくとも一面が透光性部材によって構成されていればよいが、表面積の50%以上が透光性部材によって構成されていることが好ましい。透光性部材以外によって面を構成する場合、この面には、熱伝導率および熱伝達率が充分に低い部材(断熱部材)を用い、測定箱内部から外部に放熱されにくいようにする。また、測定箱を密閉する際に温度変化が生じないようにすることが好ましい。
測定箱の表面積のうち透光性部材が占める割合が高いほど、断熱部材を減らすことができる。これにより、測定箱の蓄熱による影響を少なくし、測定値における透光性部材(測定対象)の寄与率を向上させることができる。これにより、透光性部材同士の性能差をより明確することができ、且つ、測定の再現性を向上させることができる。一方、断熱部材が多くなってしまうと、断熱部材が蓄熱しやすく、内部電球3駆動前における測定箱の内部温度が同じ場合でも、測定箱の断熱部材の蓄熱状態が異なると、内部電球3を駆動した際の内部温度に差が生じてしまうことがある。
測定箱2Aには、配線通過用の孔21が形成されている。内部電球3や内部測温手段4に接続された配線が孔21を通過し、測定箱2Aの外部に引き出されるようになっている。孔21は充分に小さく形成され、測定箱内部から外部に放熱されにくいようになっている。尚、図示の例では円状の孔21が側面に形成されているものとしたが、孔は三角形状や四角形状等の他の形状であってもよいし、底面に形成されていてもよい。また、測定箱2Aは、例えば底面の四隅が支持されることにより、底面から支持部材に熱伝達しにくくなっている。
内部電球3は、例えば定格消費電力が100Wのシリカ電球である。尚、電球の実際の消費電力には定格消費電力から多少の誤差が生じる場合があるため、実際の消費電力を予め測定しておくことが好ましい。また、内部電球3と電源との間に定電圧装置を設置し、電源の電圧変動の影響を受けにくくすることが好ましい。また、内部電球3は、瞬間消費電力の変動が±2%以内であることが好ましく、その上端面から280mm離れた位置における最高日射量が173W/(m2K)であることが好ましい。内部電球3は、駆動する際に発熱だけでなく発光するため、光による影響を低減するために、黒色の布等の光吸収部材によって覆われて使用されることが好ましい。
尚、熱源は、内部電球3以外のもの(例えばヒータ等)であってもよい。熱源は、消費電力および発熱量が安定しており、消費電力および発熱量を正確に確認でき、測定箱2Aに収容できる程度に小型であり、消費電力が充分に小さいものであればよい。
内部測温手段4は、例えば0〜40℃の範囲を精度良く(例えば精度±0.5K以内)測定できるような適宜な方式の温度計であって、その測定部(先端)が測定箱2Aの各面から充分に離れた位置に配置されている。本実施形態では、内部測温手段4の測定部は、測定箱2Aの底面の角部から水平方向に40mmずつ離れ、且つ、鉛直方向に200mm離れた位置に配置されている。内部測温手段4の測定部の最適な位置は熱源の特性(熱源の種類や放射角度、形状等)や電源の電圧によって変動し得るため、予備的な試験によって最適位置を確認することが好ましい。即ち、放射率が既知の透光性部材を用い、後述するように測定値に基づいて算出される放射率が、既知の値と一致するように最適位置(特に測定高さ)を決定すればよい。
雰囲気測温手段は、内部測温手段4と同様な温度計であって、測定箱2Aから充分に離れた位置に配置されている。
コンピュータ100は、所定のプログラムに従って内部電球3を制御するとともに、内部電球3の消費電力と、内部測温手段4が測定した測定箱2Aの内部温度と、雰囲気測温手段が測定した雰囲気温度と、を取得する。コンピュータ100は、取得した値に基づいて、後述するように透光性部材の熱貫流特性を算出する。
ここで、光照射がない場合の熱貫流特性測定方法について説明する。尚、以下では熱貫流特性として熱貫流率を算出するが、熱貫流特性として熱貫流量を算出してもよい。
まずコンピュータ100によって、内部温度が平衡温度Tcとなるように内部電球3を略一定の消費電力で駆動させる(昇温工程)。内部温度が平衡温度とTcとなったか否かは、内部測温手段4による測定値の時間変化に基づいて判断すればよい。また、昇温工程の継続時間を充分に長くすることによって内部温度が平衡温度Tcとなるようにしてもよい。この昇温工程において、内部電球3の積算消費電力IWと、平衡温度Tcと、雰囲気温度Tsと、をコンピュータ100に取得させる。尚、昇温工程開始時において内部温度と雰囲気温度との差が小さい(例えば0.2K以内)ことが好ましいが、開始時の温度差によって平衡温度を補正してもよい。
昇温工程の後、コンピュータ100によって内部電球3の駆動を停止し、内部温度が雰囲気温度Tsに等しくなるまで放置する(降温工程)。この降温工程において、内部温度の時間変化をコンピュータ100によって取得する。
コンピュータ100は、昇温工程における内部電球3の積算消費電力IWを、昇温工程の継続時間によって除すことで、平均消費電力AvW(W)を算出する。ここで、測定箱2Aにおける透光性部材の表面積をS(m2)とすると、透光性部材の熱貫流率Uc(W/m2K)は次の式(1)によって表される(Ts、Tcは絶対温度とする。以下同様)。
Figure 2018124232
コンピュータ100は、式(1)によって熱貫流率Ucを求める。尚、消費電力が安定している場合には、式(1)において、平均消費電力に替えて、昇温工程において内部温度が平衡温度Tcとなっている場合の瞬間的な消費電力をAvWとして代入してもよい。また、透光性部材の放射率をεとし、ステファンボルツマン定数(既知の値)をσ(=5.67×10-824)とし、時間をt(s)とすると、ステファンボルツマンの法則により、消費電力Q(Ws)は次の式(2)によって表される。
Figure 2018124232
コンピュータ100は、式(2)によって透光性部材の放射率εを求める。透光性部材の両側の温度をそれぞれT1(K)、T2(K)とした場合の熱貫流量Uq(W/m2)は、次の式(3)によって表される。また、熱貫流率U(W/m2K)は、式(4)によって表される。
Figure 2018124232
Figure 2018124232
この式(3)に適宜な温度T1、T2を代入することで、各温度条件における熱貫流量Uqを求め、式(4)のように熱貫流量Uqを温度差で除すことで熱貫流率Uを求めることができる。即ち、任意の温度条件における熱貫流量および熱貫流率を算出するための一般式を取得することができる。
ここで、上記のような光照射がない場合の熱貫流特性測定方法の具体例について説明する。板ガラス(素ガラス)を透光性部材とした場合(条件1)と、板ガラスに断熱フィルムを貼付したものを透光性部材とした場合(条件2)と、について、昇温工程の継続時間を4時間として第1測定方法を実施した場合の積算消費電力のグラフを図2に示し、温度変化のグラフを図3に示し、各測定値を以下の表1に示す。図2では、条件1のグラフ(実線で図示)と条件2のグラフ(破線で図示)とが重なっている。尚、断熱フィルムは、透光性を有する基材層と、基材層に積層される光吸収層と、を備えたシート部材である。
Figure 2018124232
表1における温度差Tc−Tsは、昇温工程開始時における内部温度と雰囲気温度との差に基づく補正後のものである。また、表1には、この測定結果により算出される平均の熱貫流率Ucも示す。条件2における放射率εは、0.901となる。尚、透光性部材の放射率εが充分に高い場合には、測定条件によっては測定値が1以上となってしまう場合があるが、この場合には放射率εを1に充分に近い値と仮定してその後の計算を行えばよい。
この放射率εを式(3)に代入することにより、室温T2および外気温T1に対応した(即ち各温度域における)熱貫流量Uqを求め、さらに式(4)により熱貫流率Uを求めることができる。条件2における代表的な室温T2および外気温T1と、対応する熱貫流率Uと、を表2に示す。
Figure 2018124232
また、光照射がない場合の熱貫流特性は、上記式(1)〜(4)を用いた解析以外にも、以下に説明するような解析によって算出することができる。図4に示すように、温度がK+αとK−αとの間で(即ち温度差2αの間で)往復する場合、温度上昇時における消費電力c(Ws)は、温度上昇の所要時間a(s)と温度低下の所要時間b(s)との合計所要時間a+bだけ温度差2αを維持するために必要な消費電力である。従って、熱貫流率U(W/m2K)は次の式(5)によって表される。
Figure 2018124232
次に、この解析方法の具体例について説明する。まず、求めたい熱貫流率の温度をKとするとともに、解析対象温度K+αの上限を昇温工程における平衡温度Tcとし、解析対象温度K−αの下限を雰囲気温度Tsとして、この範囲で温度差の半分であるαを適宜に選択する。昇温工程において温度がK−αからK+αまで上昇する間の消費電力をcとし、この所要時間をaとし、上記の降温工程において温度がK+αからK−αまで低下する所要時間をbとすれば、式(5)によって熱貫流率Uを算出することができる。温度差の半分αを適宜に変更して計算すれば、昇温工程および降温工程をそれぞれ1回実施した結果から、各温度域における熱貫流率U(及び熱貫流量)を算出することができる。例として、雰囲気温度Tsからの平均温度Kの温度上昇が1〜17K(1K刻み)となるようにαを設定してそれぞれ計算した際の熱貫流量を図5に示す。
尚、上記の例ではそれぞれ1回の昇温工程及び降温工程の測定結果に基づいて熱貫流率Uを算出したが、温度をK+αとK−αとの間で複数サイクル上昇及び低下させ、この測定結果に基づいて熱貫流率Uを算出してもよい。また、温度K+αを平衡温度以外の値に設定してもよい。即ち、内部温度が人為的に設定した温度K+αとまで熱源を駆動させ、温度K+αとなったら熱源を停止して温度K−αとなるまで放置し、このときの消費電力及び所要時間に基づいて熱貫流率Uを算出してもよい。
<光照射による透光性部材の表面温度上昇>
透光性部材に対して光を照射した際の雰囲気温度からの透光性部材の表面温度上昇は、図6に示すような第2の測定装置1Bを用いて測定される。測定装置1Bは、測定台20と、表面測温手段5と、光源としての電球6と、図示しない風速計と、を備え、雰囲気温度が略一定に保たれ且つ対流等の環境変化の少ない場所(例えば恒温恒湿室)に設置される。また、雰囲気温度が図示しない雰囲気測温手段によって測定される。
測定台20は、測定対象である透光性部材10が載置されるものである。透光性部材10は板状に形成され、その下面が測定台20の上面から離れるように、四隅が脚部によって支持される。透光性部材10は雰囲気中に露出し、光照射されない状態では両面が雰囲気温度に略等しくなる。
表面測温手段5は、例えば測定台20に設けられた放射温度計であって、透光性部材の下面側(即ち電球6と反対側)に配置されて表面温度を測定する。尚、表面測温手段は、電球6と同じ側に配置されて透光性部材20の表面温度を測定するものであってもよいし、透光性部材20の両面側に表面測温手段を配置してもよい。尚、表面測温手段を電球6と同じ側に配置する際には、電球6と透光性部材20とを結ぶ光軸上に位置しないように(電球6の光を遮らないように)配置することが好ましい。また、表面測温手段は、熱電対等の接触式の温度計であってもよい。
電球6は、例えば内部電球3と同様のものや類似した物(レフ球等)であって、照度を調節可能に構成されるとともに、透光性部材20の上面側に配置される。電球6は、放射する光エネルギーが安定し、且つ、透光性部材20全体になるべく均等に光を照射可能なものであることが好ましい。尚、日射を疑似するために充分な光量が得られる場合には、光源としてLEDを用いてもよい。また、電球6の周囲には、指向性を高めるために、上下方向に延びる筒状のカバー7が設けられている。尚、電球6の点灯及び消灯は、外部のコンピュータ等によって制御されてもよいし、手動で切り替えられてもよい。
風速計は、透光性部材20の表面近傍に配置され、透光性部材20の表面近傍の風速を測定する一般的な風速計である。
以上のような測定装置1Bを用いて、次のように表面温度上昇を測定すればよい。まず、電球6を所定の照度で駆動させ、表面測温手段5によって表面温度を測定する。表面温度が安定するまでこの工程を継続する。このとき、風速計の測定値を記録しておく。表面温度が安定したら、この表面温度から雰囲気温度を減じることで、透光性部材の表面温度上昇ΔTが算出される。このような測定を、電球6の照度(即ち放射する光エネルギー)を変更して繰り返し実施することにより、放射される光エネルギーごとに表面温度上昇ΔTを算出する。尚、ファン等を用いることで風速条件を変更してこのような測定を実施し、風速ごとに光エネルギーと表面温度上昇ΔTとの関係を取得してもよい。
ここで、表面温度上昇測定の具体例について説明する。上記の条件2と同様の透光性部材を用い、雰囲気温度が12.6℃であり風速が1m/sである条件において、放射する光エネルギーが0.2MJとなるように電球6を駆動させ、これを1時間継続した場合の温度変化を図7に示す。上記の例では、表面温度上昇ΔTが0.7Kとなる。また、光エネルギーを0.2〜3MJとした場合の各表面温度上昇ΔTの値を表3に示す。
Figure 2018124232
<熱貫流特性の補正>
次に、上記のように測定した光照射がない場合の熱貫流特性を、上記のように測定した表面温度上昇によって補正する方法について説明する。
上記の式(3)に任意の内部温度及び雰囲気温度を代入すれば熱貫流率が得られるが、雰囲気温度を表面温度上昇ΔTによって補正することにより、日射の影響を考慮した熱貫流率を算出することができる。
この補正方法の具体例を以下に説明する。上記の式(3)において、内部温度(室温に対応)を20℃として雰囲気温度(外気温に対応)を0〜19℃とした場合、表4の「補正前」に示すような熱貫流量が得られ、雰囲気温度が高くなる(温度差が小さくなる)にしたがって熱貫流量が小さくなる。このとき、表面温度上昇ΔTが大きいほど熱貫流しにくくなることから、表面温度上昇ΔTによって内部温度と雰囲気温度との温度差を補正すればよい。即ち、温度差から表面温度上昇ΔTを減じた値に対応する補正前の熱貫流量を、補正後の熱貫流量とすればよい。
Figure 2018124232
具体的には以下のように補正すればよい。光エネルギーが0.5MJの場合の表面温度上昇ΔTは3.3Kであり、これを四捨五入して3Kとする。光エネルギー0.5MJの条件における温度差10Kの熱貫流量を、補正前における温度差7K(雰囲気温度13℃)の熱貫流量(34.73W/m2)とすればよい。即ち、表4において、補正前の各温度差における熱貫流量を上側に3段階ずらしたものが、光エネルギー0.5MJの条件における熱貫流量となる。他の光エネルギーの条件の熱貫流量も同様に求めればよい。また、求めた熱貫流量を温度差で除すことで、表5のように熱貫流率が求められる。
Figure 2018124232
尚、温度差から光照射による表面温度上昇ΔTを減じた値が負になる場合、雰囲気温度に表面温度上昇ΔTを加えた値が内部温度以上となる。このとき、測定箱内側から外側に向かって透光性部材を貫流する熱は理論上0となり、熱貫流量および熱貫流率は0となる(即ち、理論上完全断熱状態となる)。また、透光性部材の表面温度が内部温度よりも高い場合、透光性部材から測定箱の内側に放熱され、熱貫流量及び熱貫流率がマイナスとなる可能性があるが、この場合、熱貫流率及び熱貫流量が0であるものとして取り扱う。また、表5の総平均には、光エネルギー0.5MJの値は含まれない。
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。即ち、光照射がない場合の熱貫流特性測定方法において、内部温度が平衡温度Tcとなるように内部電球3を略一定の消費電力で駆動させる昇温工程を実施し、内部電球3の消費電力AvWを、平衡温度Tcと雰囲気温度Tsとの差で除すことにより、熱貫流率Ucを算出することができる。このとき、熱貫流率Ucに基づいて透光性部材の放射率εを算出することにより、任意の温度条件における熱貫流率を算出するための一般式を取得することができ、温度条件に応じた透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
また、内部温度が温度K−αとK+αとの間で上昇するための消費電力cを、内部温度がこの温度間で上昇及び低下するための所要時間a+bで除すことにより、熱貫流率Uを算出することができる。K及びαを適宜設定することにより、各温度域における熱貫流率を算出し、温度条件に応じた透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
また、昇温工程における内部電球3の消費電力に基づいて透光性部材の放射率εを求めることで、分光測定器を用いる必要がなく、容易に放射率を求めることができる。
また、風速計によって透光性部材の表面近傍の風速を測定すれば、風速の影響も考慮し、実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
また、光照射がない場合の熱貫流特性を透光性部材の表面温度上昇ΔTによって補正することで、日射の影響を考慮した熱貫流特性とすることができ、実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、透光性部材20を雰囲気中に露出させた状態で表面温度上昇ΔTを測定するものとしたが、測定箱の一面を構成する透光性部材に光を照射して表面温度上昇を測定してもよい。即ち、透光性部材の両面の温度が異なる状態で光を照射した場合の表面温度上昇を評価してもよい。
即ち、図1のような測定箱2Aの一面(好ましくは上面又は側面)において透光性部材が露出するように他面に断熱性部材を設けるとともに、この内部に内部電球3と内部測温手段4と表面測温手段5とを収容し、露出した透光性部材に対向するように外部に電球6を設けた測定装置を用いて測定すればよい。尚、内部電球3に替えてヒータ等の光を照射しないものを熱源として用いてもよい。また、測定装置1Bと同様に風速計を設けてもよい。
このような測定装置を用いた測定について説明する。まず、電球6を所定の照度で駆動させるとともに、内部温度が目標温度となるように内部電球(熱源)3の消費電力を調節しつつ(フィードバック制御により)駆動させる。この工程において、内部温度と雰囲気温度と表面温度とをコンピュータ100に取得させる。また、内部温度および表面温度が安定するまでこの工程を継続する。コンピュータ100は、表面温度から雰囲気温度を減じ、透光性部材の表面温度上昇ΔTを算出する。
このような測定を、電球6の照度(即ち放射する光エネルギー)を変更して(光照射なしの場合も含む)繰り返し実施することにより、放射される光エネルギーごとに表面温度上昇ΔTを算出する。また、目標温度を変更して測定を実施し、目標温度ごと(測定箱2Bの内外の温度差ごと)に光エネルギーと表面温度上昇ΔTとの関係を取得してもよい。また、ファン等を用いることで風速条件を変更して測定を実施し、風速ごとに光エネルギーと表面温度上昇ΔTとの関係を取得してもよい。
このような測定の具体例について説明する。50mm×50mmかつ厚さ5mmの板ガラスを透光性部材とし、雰囲気温度が12℃であり風速が1m/sである条件において、放射する光エネルギーが0.2MJとなるように電球6を駆動させるとともに、目標温度を22℃として内部電球(熱源)3を駆動させ、これを1時間継続した場合の温度変化を図8に示す。このとき、フィードバック制御を行っているため内部温度および表面温度が多少変動しているが、これらの温度が所定の範囲内に安定してから適宜な範囲(例えば1000秒)における平均値を測定温度とすればよい。上記の例では、表面温度上昇ΔTが7.2Kとなる。
このように表面温度上昇ΔTを測定すれば、実際の使用状況に近い状態における断熱性能を評価することができる。即ち、光照射がない場合の表面温度上昇を測定することにより、内部温度(室温)と雰囲気温度(外気温)との温度差によって生じる表面温度上昇を評価することができる。これにより、内外の温度差も考慮し、光照射による表面温度上昇ΔTによって熱貫流特性を補正することができる。
また、前記実施形態では、測定装置1A、1Bを単に測定に用いるものとしたが、デモンストレーション用に用いてもよい。即ち、測定箱によって部屋を模擬し、透光性部材によって窓ガラスを模擬し、内部電球によって暖房を模擬し、外部の電球によって日射を模擬し、透光性部材の断熱性能を消費者に分かりやすく表示することができる。例えば、断熱性能の低い透光性部材を用いた測定箱と、断熱性能の高い透光性部材を用いた測定箱と、を用意し、外部の電球を同様に駆動させ、内部電球によって内部温度を雰囲気温度よりも高い温度に保とうとすれば、断熱性能の高い透光性部材を用いた測定箱の方が、内部電球の点灯時間が短くなる。従って、透光性部材の断熱性能を直感的に分かりやすく表示することができる。
また、前記実施形態では、熱貫流特性を算出することで、温度条件に応じた透光性部材の断熱性能を評価するものとしたが、熱貫流特性を算出せずに断熱性能を評価してもよい。即ち、異なる透光性部材に対して同一の条件で前記実施形態のような昇温工程を実施した際、平衡温度が高い方の透光性部材が、より断熱性能が高いと判断することができる。このとき、熱源の消費電力を適宜に設定することにより、平衡温度を所望の範囲内に収めることができ、実際の使用状況に応じて透光性部材の断熱性能を適切に評価することができる。
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施形態に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施形態に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
2A、2B 測定箱
3 内部電球(熱源)
4 内部測温手段
5 表面測温手段
6 電球(光源)

Claims (7)

  1. 透光性部材の熱貫流特性を測定する熱貫流特性測定方法であって、
    少なくとも一面が前記透光性部材によって構成された測定箱の内部に、熱源と、前記測定箱の内部温度を測定する内部測温手段と、を配置するとともに、前記測定箱の外部に、雰囲気温度を測定する雰囲気測温手段と、を配置し、
    前記内部測温手段により測定した前記内部温度が平衡温度となるように前記熱源を略一定の消費電力で駆動させる昇温工程を実施し、
    前記熱源の消費電力に基づいて前記透光性部材の熱貫流特性を算出することを特徴とする熱貫流特性測定方法。
  2. 前記昇温工程における前記熱源の消費電力と、前記平衡温度と、前記雰囲気温度と、に基づいて前記透光性部材の熱貫流特性を算出することを特徴とする請求項1に記載の熱貫流特性測定方法。
  3. 前記昇温工程の後、前記熱源の駆動を停止して前記内部温度を低下させる降温工程を実施し、
    前記降温工程および前記昇温工程において前記内部温度が所定の温度間で上昇及び低下するための所要時間と、前記内部温度が前記所定の温度間で上昇するための前記熱源の消費電力と、に基づいて前記透光性部材の熱貫流特性を算出することを特徴とする請求項1に記載の熱貫流特性測定方法。
  4. 前記昇温工程における前記熱源の消費電力に基づいて前記透光性部材の放射率を求めることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱貫流特性測定方法。
  5. 前記透光性部材に対して光を照射するとともに、該透光性部材の表面温度を測定することにより、前記雰囲気温度からの該透光性部材の表面温度上昇を算出し、
    前記熱貫流特性を前記表面温度上昇によって補正することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱貫流特性測定方法。
  6. 前記透光性部材の表面近傍の風速を測定し、風速ごとに前記表面温度上昇を算出することを特徴とする請求項5に記載の熱貫流特性測定方法。
  7. 透光性部材の断熱性能を評価する断熱性能評価方法であって、
    少なくとも一面が前記透光性部材によって構成された測定箱の内部に、熱源と、前記測定箱の内部温度を測定する内部測温手段と、を配置するとともに、前記測定箱の外部に、雰囲気温度を測定する雰囲気測温手段と、を配置し、
    前記内部測温手段により測定した前記内部温度が平衡温度となるように前記熱源を略一定の消費電力で駆動させる昇温工程を実施し、
    前記平衡温度に基づいて透光性部材の断熱性能を評価することを特徴とする断熱性能評価方法。
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