本発明は、そのいくつかの実施形態において、新しいクラスのアミノグリコシドに関連し、より具体的には、しかし、限定ではなく、遺伝性障害の処置に対する改善された効力を有する新規なアミノグリコシドに関連する。
特に、本発明は、そのいくつかの実施形態において、アミノグリコシド類の新規なクラスに関し、それは、例えば、遺伝子疾患の治療において有益に使用されうる。具体的には、本発明は、パロモマイシン由来の化合物の新規なクラスに関し、それらは高い中途終止−コドン突然変異のリードスルー活性を示し、一方で哺乳動物細胞において低毒性を発揮する。したがって、本発明はこれらの化合物を含む医薬組成物および嚢胞性線維症(CF)などの遺伝子疾患の治療におけるそれらの使用に関する。本発明は、さらにこれらの化合物を製造する方法に関する。
本発明の原理および操作は、図面および付随する説明を参照してより良く理解されることができる。
本発明の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部、または、実施例によって例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は他の実施形態が可能であり、あるいは、様々な方法で実施、または、実行される。また、本明細書中において用いられる表現法および用語法は説明のためであって、限定として見なされるべきでないことを理解しなければならない。
上記で検討したように、パロマミンの構造に対するいくつかの構造上の操作は、哺乳動物細胞における低毒性を発揮しながらも、改善された中途終止コドン突然変異読み過ごし活性を発揮することが示されている合成アミノグリコシドをもたらしている。これらの構造上の操作に従うことにより、臨床用アミノグリコシドであるパロモマイシンのプソイド三糖誘導体としての例示的な化合物NB30およびNB54の開発に至っている。NB30において明らかにされる構造上の概念により、著しく低下した細胞毒性が、ゲンタマイシンおよびパロモマイシンとの比較で示され、また、PCDH15遺伝子のナンセンス突然変異(1型アッシャー症候群(USH1)の根本的原因)の用量依存的抑制が促進されたが、その抑制効力はゲンタマイシンおよびパロモマイシンの抑制効力と比較して顕著に低かった。NB54は、第二世代概念の構造として開発されたものであり、著しく低下した細胞毒性、蝸牛毒性および急性毒性を示したが、ゲンタマイシンおよびパロモマイシンの読み過ごし効率よりも実質的に大きい読み過ごし効率を有する。
そのようなアミノグリコシドの構造活性相関関係をさらに解明している間、それらの治療効果を遺伝性障害との関連でさらに改善する試みにおいて、本発明者らは数多くのさらなる修飾をパロマミン構造の様々な位置で調べており、そして、驚くべきことに、リボサミン環(環III)における5”側鎖の水素をメチル基により置換することによって、得られたアミノグリコシドは、著しく低下した細胞毒性を示し、一方で、同時に、ゲンタマイシンの読み過ごし活性と比較したときでさえ、病因となるナンセンス突然変異の実質的により高い読み過ごし活性を示すことを見出している。したがって、本発明者らは、遺伝的突然変異から生じる疾患と闘うことができる実現性のある薬物候補物を構成するファルマコフォアにおける別の重要な位置を特定している。
何らかの特定の理論にとらわれるわけではないが、ある修飾をリボサミン環(環III)に導入することにより、以前の概念の構造(例えば、上記化合物NB30およびNB54を参照のこと)における環Iおよび環IIの既に十分に確立された影響が保たれ、一方で、著しい抑制活性および低下した毒性を有する新しい構造モチーフが導入されることが示唆される。
本発明を実行に移している間に、本発明者らは、側鎖の(S)−5”−メチル基がリボサミン環(環III)に対して導入されたアミノグリコシド(例えば、NB30、NB54、NB74およびNB84)の調製に成功しており、それにより、新しい一群のアミノグリコシドを作製している。本発明者らは、これらの新しく設計された化合物が、例えば、ゲンタマイシンと比較した場合、著しく低下した細胞毒性を示し、一方で、同時に、病因となるナンセンス突然変異の実質的により高い読み過ごし活性を示すことを明らかにしている。また、(S)−5”−メチル基の設置は、細胞毒性に対し著しい影響を与えることはないが、得られた構造体の終止コドン読み過ごし活性および真核生物リボソームに対する特異性を、以前に報告された構造体の場合と比較して大幅に高めることも認められた。
メチル基をリボサミン環のC5”位に設置することにより、新しいステレオジェン中心が生じるので、本発明者らは、規定された絶対配置を有する両方のC5”−ジアステレオマーを調製し、それらの生物学的特性を比較している。
したがって、新しいファルマコフォア点、すなわち、(S)−5”−メチル基が、抑制活性に著しく影響し、かつ、細胞毒性に対する著しい影響を何ら有しないリボサミン環(環III)の有用な構造要素として発見されている。
この新しいファルマコフォア点は、例えば、国際公開第2007/113841号において発見および開示される4つの以前の点に今回加えられる5番目の点である。スキーム1は、これまでに発見された5つすべてのファルマコフォア点を有するパロマミンコアを示す(これらのファルマコフォア点がそれらの発見順に従ってiからivまでの数字で示される)。具体的には、“i”によって表されるファルマコフォア点は、ヒドロキシル基の6’位における提供を示す;“ii”によって表されるファルマコフォア点は、AHB基のN1位における提供を示す;ファルマコフォア点“iii”は、第2の糖類環に結合する第3の糖類成分(環III)の提供を示す;“iv”は6’位の修飾の提供である(これは低級アルキルとしてスキーム1において例示される);本明細書中に開示されるファルマコフォア点は“v”によって表され、5”位の修飾の提供を示す(これは低級アルキルとしてスキーム1において例示される)。
したがって、本発明のいくつかの実施形態の一局面によれば、下記の一般式Iを有する化合物またはその医薬的に許容され得る塩が提供される:
[式中、
R1は、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から選択され、好ましくはアルキルである;
R2は水素または(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリル(AHB)である;
R3は、水素、アルキル、シクロアルキルまたはアリールからなる群から選択され、好ましくは水素またはアルキルである;
かつ、
6’位および5”位のそれぞれの立体配置は独立してR−配置またはS−配置である]。
環II上のO5位における環IIIの位置が最適な結果を示すことが示されているが、環IIIについての他の位置も考えられることが本明細書中では留意される(例えば、環II上のO6位、ならびに、環I上の3’位および4’位など)。
本明細書中で使用される用語「ヒドロキシル」または「ヒドロキシ」は−OH基を示す。
本明細書中で使用される用語「アミン」は−NR’R’’基を記載し、ここでR’およびR’’のそれぞれは独立して水素、アルキル、シクロアルキル、ヘテロ脂環式環、アリール、またはヘテロアリールであり、これらの用語は本明細書中で定義される。
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分岐鎖基を含む脂肪族炭化水素を記載する。アルキル基は1個〜20個の炭素原子、または1個〜10個の炭素原子を有することができ、分岐されても分岐されなくてもよい。本発明のいくつかの実施形態によれば、アルキルは1〜4個の炭素原子を有する低級アルキル(すなわち、メチル、エチル、プロピルおよびブチル)である。
用語「シクロアルキル」は、3個以上の炭素原子を含有する、すべてが炭素の単環式環または縮合環(すなわち、隣接する一対の炭素原子を共有する環)の分岐型または非分岐型の基であって、環の1つ以上が完全共役のπ電子系を有さず、さらには置換され得るか、または非置換であり得るものを示す。例示的なシクロアルキル基には、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルまたはシクロドデシルが含まれる。
数値範囲、例えば「1個〜10個」が本明細書で述べられる場合は常に、それは基(この場合はアルキル基)が1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子などの10個までの炭素原子を含むということを意味する。いくつかの実施形態では、アルキルは1〜6個または1〜4個の炭素原子を有する低級アルキルである。アルキルは置換または非置換でありうる。置換されている場合、置換基は、例えば、アルキル(分岐されたアルキルを形成する)、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、およびヒドロキシアルキルであることができ、これらの用語は本明細書中下記で定義される。本明細書中で使用される用語「アルキル」はまた、飽和または不飽和の炭化水素を包含するので、この用語はアルケニルおよびアルキニルをさらに包含する。
用語「アルケニル」は、本明細書中に定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を有する不飽和なアルキル、例えばアリル、ビニル、3−ブテニル、2−ブテニル、2−ヘキセニルおよびi−プロペニルを記載する。アルケニルは、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
用語「アルキニル」は、本明細書中に定義されるように、少なくとも2つの炭素原子と少なくとも1つの炭素−炭素三重結合からなる不飽和アルキルを示す。アルキニルは、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
用語「アリール」は、完全共役のπ電子系を有する、すべてが炭素の単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基は、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。
用語「ヘテロアリール」は、例えば、窒素、酸素およびイオウなどの1個または複数個の原子を環(1つまたは複数)に有し、さらには完全共役のπ電子系を有する単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を記載する。ヘテロアリール基の非限定的な例には、ピロール、フラン、チオフェン、イミダゾール、オキサゾール、チアゾール、ピラゾール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、イソキノリンおよびプリンが含まれる。ヘテロアリール基は、本明細書において上記に記載されるような1つ以上の置換基によって置換されていても置換されていなくてもよい。代表的な例は、チアジアゾール、ピリジン、ピロール、オキサゾール、インドール、プリンなどである。
用語「複素脂環式」は、本明細書中で使用される場合、窒素、酸素および硫黄などの1つ以上の原子を環(複数可)に有する単環式環基または縮合環基を表す。環はまた、1つ以上の二重結合を有し得る。しかしながら、環は完全共役のπ電子系を有しない。複素脂環式は置換され得るか、または非置換であり得る。置換された複素脂環式は1つ以上の置換基を有してもよく、したがって、それぞれの置換基は独立して、例えば、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリールおよび複素脂環式であり得る。代表的な例として、モルホリン、ピペリジン、ピペラジン、テトラヒドロフランおよびテトラヒドロピランなどが挙げられる。
用語「ハライド」は、本明細書中で使用される場合、ハロ原子のアニオン、すなわち、F−、Cl−、Br−およびI−を示す。
用語「ハロ」は、置換基としてのF原子、Cl原子、Br原子およびI原子を表す。
用語「アルコキシ」は、R’−O−アニオン(式中、R’は本明細書中上記で定義される通りである)を示す。
用語「ヒドロキシアルキル」は、本明細書中で使用される場合、1つのヒドロキシル基により置換されたアルキル基を示し、例えば、ヒドロキシメチル、2−ヒドロキシエチルおよび4−ヒドロキシペンチルを示す。
用語「アルコキシアルキル」は、本明細書中で使用される場合、1つのアルコキシ基により置換されたアルキル基を示し、例えば、メトキシメチル、2−メトキシエチル、4−エトキシブチル、n−プロポキシエチルおよびt−ブトキシエチルを示す。
成分(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシブチリルはまた、本明細書中ではAHBとして示される。本発明のいくつかの実施形態によれば、AHB成分の代替として、α−ヒドロキシ−β−アミノプロピオニル(AHP)成分が可能である。これらのいわゆる側鎖または随意的成分は、標的部位へのアミノグリコシド修飾酵素の接近を阻止すると考えられる。そのうえ、AHBまたはAHPは、ホスホジエステルに結合し、かつ、16S rRNAのA部位のグアノシンのフーグスティン塩基面に結合する1,3−または1,2−ヒドロキシルアミン成分を含有する。本発明のいくつかの実施形態によれば、いずれかの立体化学を示す、低級アルキルに沿ったカルボニル(複数可)、ヒドロキシル(複数可)およびアミノ(複数可)の組合せを伴う他の成分が、AHBおよび/またはAHPに代わる随意的な置換基として考えられることが本明細書中では留意される。例えば、2−アミノ−3−ヒドロキシブタノイル、3−アミノ−2−ヒドロキシペンタノイルおよび5−アミノ−3−ヒドロキシヘキサノイルなど。
本明細書中では、AHBを指す場合は常に、本明細書中に記載されるような同等の基(例えば、AHP)もまた包含されることは言うまでもない。
本明細書中で使用される場合、表現「成分」は、化学反応を受けて、今度は別の分子実体に共有結合により結合する化学的実体(例えば、分子または基など)の一部、好ましくは主要部を表す。
本発明のいくつかの実施形態によれば、R1はアルキルである。
いくつかの実施形態によれば、R1は、本明細書中で定義されるような低級アルキルであり、これには、メチル、エチル、プロピル、ブチルおよびイソプロピルが含まれるが、これらに限定されない。本発明の他の実施形態によれば、R1はメチルである。
代替において、R1はシクロアルキルであり、これには、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチルおよびシクロヘキシルが含まれるが、これらに限定されない。
さらなる代替において、R1はアリールであり、例えば、置換または非置換フェニルなどである。非限定的な例には、フェニルおよびトルエンが含まれる。
本発明のいくつかの実施形態において、R1は、本明細書中に記載されるようにアルキルであり、R2およびR3はそれぞれが水素である。スキーム1(上記参照)に示されるファルマコフォア点に関して、これらの化合物は第5(v)の点を有しており、第2(ii)の点および第4(iv)の点を有しない。これらの化合物は、遺伝性障害の処置における使用のために考慮される以前から知られている化合物および薬物と比較して、優れた薬理学的プロフィールを示す。すなわち、これらの化合物は、下記の実施例の節において明らかにされるように、毒性がより低く、中途終止コドン突然変異を読み過ごすことにおいてより効率的である。
水素をR2位およびR3位に呈する例示的なアミノグリコシド化合物には、下記の化合物が含まれる:
これらは、環IIIの5”位におけるキラル中心の立体配置が互いに異なる。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2およびR3はそれぞれが水素である。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2およびR3はそれぞれが水素である。
本発明のいくつかの実施形態において、R1は、本明細書中に記載されるようにアルキルであり、R2はAHBであり、R3は水素原子である。スキーム1(上記参照)に示されるファルマコフォア点に関して、第5(v)の点を有すること以外に、これらの化合物は第2(ii)の点を有しており、第4(iv)の点を有しない。これらの化合物は、遺伝性障害の処置における使用のために考慮される以前から知られている化合物および薬物と比較して、優れた薬理学的プロフィールを示す。すなわち、これらの化合物は、下記の実施例の節において明らかにされるように、毒性がより低く、中途終止コドン突然変異を読み過ごすことにおいてより効率的である。
AHB成分をR2位に有し、かつ、水素をR3に有する例示的なアミノグリコシド化合物には、下記の化合物が含まれる:
これらは、環IIIの5”位におけるキラル中心の立体配置が互いに異なる。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2はAHBであり、R3は水素原子である。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2はAHBであり、R3は水素原子である。
本発明のいくつかの実施形態において、R1は、本明細書中に記載されるようにアルキルであり、R2は水素であり、R3はアルキルである。スキーム1(上記参照)に示されるファルマコフォア点に関して、第5(v)の点を有すること以外に、これらの化合物は第2(ii)の点を有しておらず、第4(iv)の点を有する。これらの化合物は、遺伝性障害の処置における使用のために考慮される以前から知られている化合物および薬物と比較して、優れた薬理学的プロフィールを示す。すなわち、これらの化合物は、下記の実施例の節において明らかにされるように、毒性がより低く、中途終止コドン突然変異を読み過ごすことにおいてより効率的である。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2は水素であり、R3はアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2は水素であり、R3はアルキルである。
本発明のいくつかの実施形態によれば、R3がアルキルである上記実施形態のいずれにおいても、R3は、本明細書中で定義されるように低級アルキルである。これらの実施形態によれば、R3はメチルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアルキルであり、R2は水素であり、R3はシクロアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2は水素であり、R3はシクロアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2は水素であり、R3はシクロアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアルキルであり、R2は水素であり、R3はアリールである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2は水素であり、R3はアリールである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2は水素であり、R3はアリールである。
水素をR2位に呈し、かつ、アルキルをR3位に呈する例示的なアミノグリコシド化合物には、下記の化合物が含まれる:
これらは、環IIIの5”位におけるキラル中心の立体配置が互いに異なる。
本発明のいくつかの実施形態において、R2はAHBであり、R3はアルキルである。スキーム1(上記参照)に示されるファルマコフォア点に関して、これらの化合物は5つすべての点を有する;これらの化合物は、下記の実施例の節において明らかにされるように、より低い細胞毒性およびより大きい読み過ごし効力の点で、以前から知られている化合物および薬物と比較して、最も優れた薬理学的プロフィールを示す。
R2がAHBであり、かつ、R3がアルキルである例示的なアミノグリコシド化合物には、下記の化合物が含まれる:
これらは、環IIIの5”位におけるキラル中心の立体配置が互いに異なる。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2はAHBであり、R3はアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2はAHBであり、R3はアルキルである。
本発明のいくつかの実施形態によれば、R3がアルキルである上記実施形態のいずれにおいても、R3は、本明細書中で定義されるように低級アルキルである。これらの実施形態によれば、R3はメチルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアルキルであり、R2はAHBであり、R3はシクロアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2はAHBであり、R3はシクロアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2はAHBであり、R3はシクロアルキルである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアルキルであり、R2はAHBであり、R3はアリールである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにシクロアルキルであり、R2はAHBであり、R3はアリールである。
場合により、R1は、本明細書中に記載されるようにアリールであり、R2はAHBであり、R3はアリールである。
合成アミノグリコシドが、中途終止コドン突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患を処置するための薬物候補物を構成し(読み過ごし活性を示し)、同時に、低い細胞毒性を示すか、または、細胞毒性を全く示さないことが可能であることを定量的に予測し、かつ、評価するための方法について探索している間に、原核生物の翻訳系(これはある程度、ミトコンドリアの翻訳系に類似しているか、または似ている)と比較して、真核生物の細胞質の翻訳系(すなわち、真核生物の細胞質リボソーム)に対する化合物の大きい選択性が予測尺度として使用され得ることが見出された。この選択性を定量化するために容易に使用することができる数値が、真核生物における翻訳阻害を原核生物における翻訳阻害に対して相関させる比率IC50 Euk/IC50 Proである(本明細書中下記の表3を参照のこと)。下記の実施例の節において明らかにされるように、どのような所与のアミノグリコシド化合物(例えば、本発明のいくつかの実施形態による化合物など)であれ、翻訳を原核生物において阻害することを上回る、翻訳を真核生物において阻害することに対する所与のアミノグリコシド化合物の顕著な選択性が、中途終止コドン突然変異に伴う遺伝性障害を処置するための薬物候補物としてのその有効性および安全性を予測するために使用され得る。
それにもかかわらず、選択性を示すIC50 Euk/IC50 Proの比率は、薬物候補物をこの一群のアミノグリコシドから選択するための十分な判断基準でないことが本明細書中では留意される;翻訳阻害の機構もまた考慮しなければならない。例えば、アミノグリコシドNB33(これは元化合物パロマミンの二量体である)は、低いと見なされ、したがって、良好な読み過ごし薬物候補物についての予測性を有する約2の比率値を示すことが見出された。しかしながら、NB33は読み過ごし活性を本質的に示さない。NB33は、RNAの細胞質A部位と、NB33との間における複合体の結晶において示されるように[ChemBioChem、2007、8(14)、1617頁]、翻訳機構を異なる阻害様式で阻害することが想定される。
何らかの特定の理論にとらわれる訳ではないが、上記検討からの1つの可能な結論は、アミノグリコシドが中途終止コドン突然変異読み過ごし薬物候補物の所望される形質を示すためには、1)薬物候補物は、原核生物リボソームおよび真核生物リボソームの両方を、アミノアシル−tRNA結合部位に結合し、デコーディング時の立体配座を安定化する同じ結合機構によって阻害しなければならないか、または、タンパク質翻訳プロセスを、校正プロセスの忠実性を妨げることによって阻害しなければならないことであり、そして、2)真核生物に有利であるIC50 Euk/IC50 Proの比率はまた、原核生物リボソームに対する化合物の特異性における著しい低下、言い換えれば、高まったIC50 Pro値を伴うべきであることである。この要件についての代表的な一例がG418である;そのIC50 Euk/IC50 Pro比率は225であり、これはゲンタマイシンのIC50 Euk/IC50 Pro比率に対して著しく低いが、それでもなお、G418は、相対的に非常に低いIC50 Pro値によって示されるように高毒性である。
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書中に示される化合物は、原核生物におけるIC50翻訳阻害に対する真核生物におけるIC50翻訳阻害の比率が、15〜1の間における任意の中間の値を含めて、15未満、10未満、5未満または1未満であることを特徴とする。
本明細書中下記において明らかにされるように、本発明のいくつかの実施形態による例示的な化合物を調製し、試験している間に、原核生物の細胞質のタンパク質合成の増大した阻害もまた、増大した読み過ごし活性に伴うことが認められている。表3に示されるデータは、スキーム1に示されるファルマコフォアの様々な点の系統的付加により、細胞質リボソームに対する化合物の特異性が徐々に増大し、かつ、原核生物リボソームに対するそれらの特異性が徐々に低下することを示す。
様々なアミノグリコシドが原核生物に対して選択的であると予測することは妥当であると思われる。これは、様々なアミノグリコシドが、他の原核生物に対して活性であるために、ストレプトミセス属および他の種(例えば、サッカロポリスポラ・エリトラエア(Saccharopolyspora erythraea)種など)における天然の選択によって開発されているからである。それにもかかわらず、本発明のいくつかの実施形態による化合物は、原核生物翻訳系(リボソーム)に対する真核生物翻訳系(リボソーム)の逆になった選択性を示す。
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書中に示される化合物は、原核生物におけるIC50翻訳阻害に対する真核生物におけるIC50翻訳阻害の比率が15未満であり、1未満であることを特徴とする。
本明細書中上記で検討したように、有望なアミノグリコシド化合物は、本発明のいくつかの実施形態によれば、顕著な抗菌活性を有しないもの、または、抗菌活性を何ら有しないものである。そのような非活性はまた、この化合物の哺乳動物に対する細胞毒性が低いか、または全くないことについて予測するものである。調製され、抗菌活性またはその欠如について試験された例示的な化合物によって示される結果を、本明細書中下記の表1および表2に示す。
したがって、本発明のいくつかの実施形態によれば、本明細書中に示される化合物は、200μM超、300μM超、500μM超、700μM超または1000μM超であるグラム陰性菌におけるMIC値、同様にまた、20μM超、40μM超、80μM超または100μM超であるグラム陽性菌におけるMIC値を特徴とする。
本実施形態は、さらに本明細書に記載された化合物の任意のエナンチオマー、ジアステレオマー、プロドラッグ、溶媒和物、水和物、および/または医薬的に許容される塩類を包含する。
本明細書中で使用される場合、用語「エナンチオマー」は、互いの完全な反転/反射(鏡像)によるのみでその対応物に関して重ね合わせられる化合物の立体異性体を指す。エナンチオマーは、それらが右手および左手のように互いを指すので、「掌性」を持つと言われている。エナンチオマーは、全生物系などの、掌性を単独で有する環境に存在する場合を除き、同一の化学的および物理的性質を有する。本発明の実施形態の関連において、化合物は1つ以上のキラル中心を示す場合があり(ただし、この場合、キラル中心のそれぞれがR−配置またはS−配置および任意の組合せを示す)、したがって、本発明のいくつかの実施形態による化合物は、どのようなキラル中心であれ、R−配置またはS−配置を示すそれらのキラル中心を有することができる。
用語「ジアステレオマー」は、本明細書中で使用される場合、互いにエナンチオマーでない立体異性体を示す。化合物の2つ以上の立体異性体が、異なる立体配置を等価な(関連した)立体中心のすべてではなく、その1つ以上において有し、互いの鏡像ではないとき、ジアステレオ異性が生じる。2つのジアステレオ異性体が、ただ1つだけの立体中心において互いに異なるとき、それらはエピマーである。それぞれの立体中心(キラル中心)が2つの異なる立体配置を生じさせ、したがって、2つの異なる立体異性体を生じさせる。本発明の関連において、本発明の様々な実施形態が、立体配置の任意の組合せで、すなわち、任意のジアステレオマーで存在する、多数のキラル中心を有する化合物を包含する。
用語「プロドラッグ」は、インビボで活性化合物(活性な親薬物)に変換される薬物を指す。プロドラッグは、親薬物の投与を促進するのに典型的に役立つ。それらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であるが、親薬物はそうではない。プロドラッグは、医薬組成物で親薬物と比較して改善された溶解度を有することができる。プロドラッグはまた、インビボで活性化合物の徐放を達成するためにもしばしば用いられる。制限されることなく、プロドラッグの例としては、1つ以上のカルボン酸部分を有し、エステル(「プロドラッグ」)として投与される本発明の化合物が挙げられるであろう。そのようなプロドラッグは、インビボで加水分解され、それによって遊離した化合物(親薬物)を提供する。選択されたエステルは、プロドラッグの溶解度特性および加水分解率の両方に影響を及ぼす可能性がある。
用語「溶媒和物」は、可変化学量論(例えば、ジ、トリ、テトラ、ペンタ、ヘキサなど)の複合体を指し、それは溶質(本発明の化合物)および溶媒によって形成され、それによって溶媒は溶質の生物学的活性を妨げない。適切な溶媒は、例えば、エタノール、酢酸などを含む。
用語「水和物」は、上記で定義されたように、溶媒和物を指し、溶媒は水である。
用語「医薬的に許容される塩」は、親化合物およびその対イオンの荷電種を指し、それは親化合物の溶解度特性を改変するために、および/または親化合物による生物体への任意の大きな刺激を減少させるために典型的に用いられ、一方で、投与された化合物の生物学的活性および特性を維持する。非限定的な医薬的に許容される塩の例としては、ヒドロキシルアニオン(O−)およびカチオン(非制限的に例えばアンモニウム、ナトリウム、カリウムなど)が挙げられる。非限定的な医薬的に許容される塩の別の一例がアンモニウムカチオンおよびその酸付加塩であろう。酸付加塩の例には、塩酸付加塩、硫酸付加塩(硫酸塩)、酢酸付加塩、アスコルビン酸付加塩、ベンゼンスルホン酸付加塩、ショウノウスルホン酸付加塩、クエン酸付加塩、マレイン酸付加塩、メタンスルホン酸付加塩、ナフタレンスルホン酸付加塩、シュウ酸付加塩、リン酸付加塩、コハク酸付加塩、硫酸付加塩、酒石酸付加塩およびトルエンスルホン酸付加塩が含まれるが、これらに限定されない。
本発明のいくつかの実施形態によれば、酸付加塩は硫酸塩である。
さらに本発明によれば、本明細書に記載される化合物を製造する方法が提供される。
本明細書で記載される合成経路は、受容体と供与体との間の反応を含み、それにより用語「受容体」は、本明細書ではパロマミンに由来する骨格の構造を記載するために使われ、それはC5、C6およびC3’などの位置で少なくとも1個の、好ましくは選択的に選ばれた利用可能な(保護されていない)ヒドロキシル基を有し、それはグリコシル化反応の間は反応性であって、グリコシルを受け入れることができ、そして、用語「供与体」は、本明細書ではグリコシルを記載するために使用される。本発明のいくつかの実施形態によれば、受容体上の位置はC5位である。
本明細書中で使用される場合、用語「グリコシル」は、単糖類のヘミアセタール官能基からヒドロキシル基を除去することによって、および低級オリゴ糖類の拡張によって得られる化学基を指す。
用語「単糖」は、本明細書中で使用され、また、この技術分野で広く知られているように、加水分解によってそれ以上分解され得ない糖類分子1個だけからなる糖の単純な形態を示す。単糖の最も一般的な例には、グルコース(デキストロース)、フルクトース、ガラクトースおよびリボースが含まれる。単糖はその炭水化物の炭素原子の数に従って分類することができる:すなわち、3個の炭素原子を有するトリオース、例えば、グリセロアルデヒドおよびジヒドロキシアセトンなど;4個の炭素原子を有するテトロース、例えば、エリトロース、トレオースおよびエリトルロースなど;5個の炭素原子を有するペントース、例えば、アラビノース、リキソース、リボース、キシロース、リブロースおよびキシルロースなど;6個の炭素原子を有するヘキソース、例えば、アロース、アルトロース、ガラクトース、グルコース、グロース、イドース、マンノース、タロース、フルクトース、プシコース、ソルボースおよびタガトースなど;7個の炭素原子を有するヘプトース、例えば、マンノヘプツロース、セドヘプツロースなど;8個の炭素原子を有するオクトース、例えば、2−ケト−3−デオキシ−マンノ−オクトナートなど;9個の炭素原子を有するノノース、例えば、シアロースなど;ならびに、10個の炭素原子を有するデコース。単糖は、スクロース(一般的な糖)のようなオリゴ糖および他の多糖類(例えば、セルロースおよびデンプンなど)の基本構成要素である。
本明細書中で使用される場合、用語「オリゴ糖類」は、2つ以上の単糖類単位(これらは本明細書で定義されている)を含む化合物を指す。本発明のいくつかの実施形態によれば、オリゴ糖類は、2〜6個の単糖類を含む。あるいは、オリゴ糖類は2〜4個の単糖類を含み、さらには、オリゴ糖類は2つの単糖類単位を有する二糖類部分である。
供与体および受容体は、本発明のいくつかの実施形態による望ましい化合物を形成するために設計される。以下は、本発明のこの態様のいくつかの実施形態を記載し、本明細書に記載される化合物の例示的な部分集合を製造する例示的な方法を提示する。本発明のいくつかの実施形態による例示的な化合物を製造する詳細な方法は、以下の実施例の節に与えられる。
本発明のいくつかの実施形態の化合物の合成は、一般に、(i)パロマミン骨格に存在する選択された位置で1個以上のヒドロキシルおよびアミンの選択的な保護によって受容体化合物を製造し、そして、1つまたは2つの位置を未保護のままとし、したがって上記で定義したように供与体(グリコシル)化合物を自由に受け入れることができるようにすること;(ii)グリコシルに存在する選択された位置で1個以上のヒドロキシルおよびアミンの選択的な保護によって供与体化合物を製造し、1つの位置を未保護のままにし、したがって上記で定義したように受容体化合物と自由に結合できるようにすること;(iii)供与体と受容体をカップリング反応に供すること;および(iv)全ての保護基を除去し、それにより所望の化合物を得ることを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「保護基」は、特定の官能性をブロックまたは保護し、一方で化合物上の他の官能基を反応させる一般的に使用される置換基を指す。例えば、「アミノ保護基」は、化合物中のアミン官能性をブロックまたは保護する、アミノ基に結合した置換基を指す。適切なアミノ保護基は、アジ化物(アジド)、N−フタルイミド、N−アセチル、N−トリフルオロアセチル、N−t−ブトキシカルボニル(BOC)、N−ベンジルオキシカルボニル(CBz)およびN−9−フルオレニルメチレンオキシカルボニル(Fmoc)を含む。同様に、「ヒドロキシル保護基」は、ヒドロキシル官能基をブロックまたは保護するヒドロキシル基の置換基を指す。適切な保護基は、イソプロピリデンケタールおよびシクロヘキサノンジメチルケタール(2つの隣接したヒドロキシル基との1,3−ジオキサンを形成する)、4−メトキシ−1−メチルベンゼン(2つの隣接したヒドロキシル基との1,3−ジオキサンを形成する)、O−アセチル、O−クロロアセチル、O−ベンゾイルおよびO−シリルを含む。保護基の一般的な記載およびそれらの使用については、T.W.Greene,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,New York,1991を参照されたい。
いくつかの実施形態によれば、アミノ保護基には、アジド(N3−)基および/またはN−フタルイミド基が含まれ、ヒドロキシル保護基には、O−アセチル(AcO−)、O−ベンゾイル(BzO−)および/またはO−クロロアセチルが含まれる。本明細書中では、適用可能であるとき、「保護基」は化合物上の1つの反応性官能基を保護することができるか、または、例えば、2つの隣接する官能基(例えば、イソプロピリデンケタールによって一度に保護され得る2つのヒドロキシル基)の場合などにおいて、2つ以上の官能基を同時に保護することができる成分を示すものとする。
したがって、本明細書で示される一般式Iを有する化合物を製造する方法が提供される。該方法は、適切に保護された受容体化合物と適切に保護された供与体化合物とを製造して、これらの2つの化合物を互いにカップリングさせて、その後、生成する化合物からすべての保護基を除去することにより実施される。
供与体化合物は、その1”位に脱離基(これはLによって表される)、および5”位にアルキル、シクロアルキルまたはアリール(これはR1によって表される)を有する一般式IIによって表すことができる保護された単糖である:
(式中、
R1は、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から選択される;
R4は水素または供与体アミノ保護基である;
R5は、R4が水素であるならば、供与体アミノ保護基であるか、または、R4が供与体アミノ保護基であるならば、水素である;かつ
HPdのそれぞれが供与体ヒドロキシル保護基である)。
本明細書中では、5”位におけるキラル中心の絶対的立体配置が、R−配置およびS−配置の両方の選択肢を(ジアステレオマーである)2つの個々の分離可能な供与体として、または、そのラセミ混合物として与えるR4およびR5の正体によって決定されるものとする。R−供与体化合物およびS−供与体化合物のそれぞれを得るための詳細な方法、ならびに、それらの絶対的立体配置を割り当て方法が下記の実施例の節において示される。
本明細書中で使用される場合、「脱離基」なる表現は、有機分子からの脱離が化学反応中に容易に行われ、一方で、脱離が、そのときの脱離する原子、基または成分の相対的な安定性によって促進される、化学変化を起こしやすい原子、基または化学的成分を表す。典型的には、強酸の共役塩基である基はどれも、脱離基として作用することができる。したがって、本発明の実施形態による好適な脱離基の代表的な例には、限定されないが、トリクロロアセトイミダート、アセテート、トシラート、トリフラート、スルホナート、アジド、ハライド、ヒドロキシ、チオヒドロキシ、アルコキシ、シアナート、チオシアナート、ニトロおよびシアノが含まれる。
本発明のいくつかの実施形態によれば、脱離基はトリクロロアセトイミダートであり、これは受容体とのカップリング反応における最も満足すべき結果を与えたが、他の脱離基も考えられる。
本発明のいくつかの実施形態によれば、供与体ヒドロキシル保護基のそれぞれがO−ベンゾイルであり、R4またはR5のどちらかにおける供与体アミノ保護基がアジドであるが、他の保護基も考えられる。
供与体化合物の構造により、本発明のいくつかの実施形態による生じた化合物における環IIIの絶対構造、すなわち、5”位の立体配置と、その位置におけるアルキルのタイプとが決まる。本発明のいくつかの実施形態による化合物を与えるために好適である例示的な供与体化合物には、化合物(S)−17および化合物(R)−18が含まれ、それらの調製が本明細書中下記のスキーム2に例示される。
受容体は、いくつかの実施形態によれば、一般式IIIを有する:
(式中、
点線はR−配置またはS−配置を示す;
R3は、水素、アルキル、シクロアルキルおよびアリールからなる群から選択される;
R6は受容体アミノ保護基または(S)−4−アジド−2−O−アセチル−1−ブチリル(AHBの保護形態)である;
HPaは受容体ヒドロキシル保護基である;かつ
APaは受容体アミノ保護基である)。
本発明のいくつかの実施形態によれば、受容体ヒドロキシル保護基はO−アセチルであり、供与体アミノ保護基はアジドであるが、他の保護基も考えられる。
本明細書中では、上記で提供される例示的な実施形態はAHBの保護された形態を示すが、他の有用な成分(例えば、本明細書中上記で示されるようなAHPなど)が代わりに使用されることがあるので、AHB成分の使用に限定することを意味するものではないものとする。それらの場合において、この過程は、AHBの代わりに使用される成分の反応基がそれに応じて保護される受容体化合物を使用することによって改変されることになる。
受容体化合物の構造により、本発明のいくつかの実施形態による生じた化合物における環Iおよび環IIの絶対構造、すなわち、6’位の立体配置と、存在するときにはその位置におけるアルキルのタイプと、N1位でのアミノ基における置換基とが決まる。本発明のいくつかの実施形態による化合物を与えるために好適である例示的な受容体化合物には、化合物19、20、219および220が含まれ、それらの調製が本明細書中下記のスキーム3およびスキーム4に例示される。
したがって、上記過程は下記によって行われる:
(a)目的供与体化合物および目的受容体化合物の両方を提供すること;
(b)上記受容体化合物を上記供与体化合物にカップリングすること(これはまた、グリコシル化反応として示される);および
(c)続いて、保護基のそれぞれを除くことにより、目的化合物を得ること。
例えば、例示的な化合物NB118を、化合物(S)−21(これは、受容体化合物19を供与体化合物(S)−17によりグリコシル化すること(カップリングすること)によって得られる)を脱保護することによって得ることができる。対応して、例示的な化合物NB119は、受容体化合物19を供与体化合物(R)−18とカップリングすることの生成物である化合物(R)−22を脱保護することによって得られる。
同様に、例示的な化合物NB122は、受容体化合物20と供与体化合物(S)−17との間におけるカップリング生成物である化合物(S)−23を脱保護することによって得られる。対応して、例示的な化合物NB123は、受容体化合物20を供与体化合物(R)−18とカップリングすることの生成物である化合物(R)−24を脱保護することによって得られる。
例示的な化合物NB124は、受容体化合物219と供与体化合物(S)−17との間におけるカップリング生成物である化合物(S)−221を脱保護することによって得られる。対応して、例示的な化合物NB125は、受容体化合物219を供与体化合物(R)−18とカップリングすることの生成物である化合物(R)−222を脱保護することによって得られる。
例示的な化合物NB127は、受容体化合物220と供与体化合物(S)−17との間におけるカップリング生成物である化合物(S)−223を脱保護することによって得られる。対応して、例示的な化合物NB128は、受容体化合物220を供与体化合物(R)−18とカップリングすることの生成物である化合物(R)−224を脱保護することによって得られる。
後続の実施例の部分で証明されるように、本明細書で示される化合物は、切断変異抑制活性、すなわち中途終止コドン突然変異のリードスルーを誘発する能力を有するように設計され、そして実際にそれが示された。そのような活性は、これらの化合物を遺伝子疾患、特に切断変異により特徴づけられる疾患の治療のための治療的に活性な薬物としての使用に適した化合物とする。
このように、本発明の別の態様によれば、遺伝子疾患を治療する方法が提供される。その方法は、本発明のこの態様にしたがって、それを必要とする被験体に、一般式Iを有する治療上有効量の1つ以上の本明細書で示される化合物を投与することにより実施される。
本明細書中で使用される場合、用語「治療(処置)」は、病態の進行を止めるか、実質的に阻害するか、遅らせるか、または後退させるか、病態の臨床的または感覚的な徴候を実質的に改善するか、または病態の臨床的または感覚的な徴候の出現を実質的に防止することを含む。
本明細書中で使用される場合、用語「治療有効量」は、治療されている病態の徴候の1つ以上をある程度まで取り除いてくれる、投与された高分子の量を言う。
用語「遺伝子疾患(遺伝性障害)」は、本明細書中で使用される場合、両親からしばしば継承される1つ以上の欠陥遺伝子に起因し、欠陥のある劣性遺伝子の2人の健康なキャリアが子供をつくる場合あるいは欠陥遺伝子が優性である場合に予想外に出現しうる慢性疾患を指す。遺伝子疾患は、異なる遺伝様式で現れ、それは遺伝子の1つの変異したコピーだけが子孫が影響を受けるのに必要である常染色体優性様式、および遺伝子の2つのコピーが子孫が影響を受けるのに変異される必要がある常染色体劣性様式を含むことができる。
いくつかの実施形態によれば、遺伝子疾患は、その不適切な翻訳をもたらす切断変異を有する遺伝子を含む。不適切な翻訳は、必須タンパク質の合成の減少または中止を引き起こす。
そのような遺伝子疾患の例示として、非制限的には、嚢胞性線維症(CF)、デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)、毛細血管拡張性運動失調、ハーラー症候群、血友病A、血友病B、アッシャー症候群およびテイ−サックス病が挙げられる。
したがって、遺伝子疾患を治療するための医薬の製造において、本明細書で示される一般式Iを有する化合物の使用が提供される。
本明細書で記載された方法および使用のいずれにおいても、本明細書に記載される化合物は、それ自身で利用されうるし、または医薬組成物の一部を形成することができ、さらに医薬的に許容される担体を含む。
このように、さらに本発明によれば、活性成分としての本明細書で記載の新規化合物のいずれかおよび医薬的に許容される担体を含む医薬組成物が提供される。
本明細書中で使用される「医薬組成物」は、本明細書中に示される化合物と、他の化学的成分(例えば、医薬的に許容されかつ好適な担体および賦形剤)との調製物を示す。医薬組成物の目的は、生物体に対する化合物の投与を容易にすることである。
以降、用語「医薬的に許容される担体」は、生物体に対する著しい刺激を生じさせず、かつ、投与された化合物の生物学的活性および生物学的性質を阻害しない担体または希釈剤を示す。担体の非限定的な例には、プロピレングリコール、生理食塩水、エマルジョン、および有機溶媒と水の混合物、ならびに固体の担体(例えば、粉末状の担体)およびガス状の担体がある。
本明細書中において、用語「賦形剤」は、化合物の投与をさらに容易にするために医薬組成物に添加される不活性な物質を示す。賦形剤の非限定的な例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖およびタイプのデンプン、セルロース誘導体、ゼラチン、植物油およびポリエチレングリコールが含まれる。
薬物の配合および投与のための様々な技術が「Remington’s Pharmaceutical Sciences」(Mack Publishing Co.、Easton、PA、最新版)(これは参考として本明細書中に組み込まれる)に見出され得る。
本発明の医薬組成物は、この分野で十分に知られている様々な方法によって、例えば、混合、溶解、造粒、糖衣錠作製、研和、乳化、カプセル化、包括化または凍結乾燥の従来の方法によって製造することができる。
本発明に従って使用するための医薬組成物は、本明細書中に示される化合物を医薬として使用可能な製剤にする加工を容易にする賦形剤および補助剤を含む一つ以上の医薬的に許容される担体を使用して従来のように配合されてもよい。適切な配合は選択された投与経路に依存する。
いくつかの実施形態によれば、投与は経口的に達成される。経口投与の場合、本明細書中に示される化合物は、化合物を、この分野で十分に知られている薬学的に許容される担体と組み合わせることによって容易に配合することができる。そのような担体により、本明細書中に示される化合物は、患者によって経口摂取される錠剤、ピル、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー剤、懸濁物などとして配合することが可能になる。経口使用される薬学的調製物は、錠剤または糖衣錠コアを得るために、固体の賦形剤を使用し、得られた混合物を場合により粉砕し、そして所望する場合には好適な補助剤を添加した後、顆粒の混合物を加工して作製することができる。好適な賦形剤は、具体的には、ラクトース、スクロース、マンニトールまたはソルビトールを含む糖などの充填剤;セルロース調製物、例えば、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントゴム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ナトリウムカルボメチルセルロースなど;および/またはポリビニルピロリドン(PVP)などの生理学的に許容されるポリマーである。所望する場合には、架橋型ポリビニルピロリドン、寒天、またはアルギン酸もしくはその塩(アルギン酸ナトリウムなど)などの崩壊剤を加えることができる。
経口使用され得る医薬組成物には、ゼラチンから作製されたプッシュ・フィット型カプセル、ならびにゼラチンおよび可塑剤(グリセロールまたはソルビトールなど)から作製された軟密閉カプセルが含まれる。プッシュ・フィット型カプセルは、充填剤(ラクトースなど)、結合剤(デンプンなど)、滑剤(タルクまたはステアリン酸マグネシウムなど)および場合により安定化剤と混合された活性成分を含有し得る。軟カプセルでは、本明細書中に示される化合物を好適な液体(脂肪油、流動パラフィンまたは液状のポリエチレングリコールなど)に溶解または懸濁させることができる。さらに、安定化剤を加えることができる。経口投与される配合物はすべて、選ばれた投与経路に好適な投薬形態でなければならない。
注射の場合、本明細書中に示される化合物は、水溶液において、好ましくは生理学的に適合し得る、緩衝液(例えば、ハンクス溶液、リンゲル溶液、または生理学的な食塩水緩衝液など)であって、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールの如き有機溶媒を含むまたは含まない緩衝液において配合することができる。
経粘膜投与の場合、浸透剤が配合において使用される。そのような浸透剤はこの分野では一般に知られている。
糖衣錠コアには、好適なコーティングが施される。この目的のために、高濃度の糖溶液を使用することができ、この場合、糖溶液は、場合により、アラビアゴム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、二酸化チタン、ラッカー溶液および好適な有機溶媒または溶媒混合物を含有し得る。色素または顔料が、活性なアミノグリコシド化合物の量を明らかにするために、または活性なアミノグリコシド化合物の量の種々の組合せを特徴づけるために、錠剤または糖衣錠コーティングに添加され得る。
口内投与の場合、組成物は、従来の様式で配合された錠剤またはトローチの形態を取ることができる。
吸入による投与の場合、本明細書中に示される化合物は、好適な噴射剤(例えば、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタンまたは二酸化炭素)の使用により加圧パックまたはネブライザーからのエアロゾルスプレー提示物(典型的には、粉末状の担体、液状の担体、および/またはガス状の担体を含む)の形態で都合よく送達される。加圧されたエアロゾルの場合、投薬量単位は、計量された量を送達するためのバルブを提供することによって決定され得る。吸入器または吹き入れ器で使用される、例えば、ゼラチン製のカプセルおよびカートリッジで、本明細書中に示される化合物と好適な粉末基剤(ラクトースまたはデンプンなど)との粉末混合物を含有するカプセルおよびカートリッジを配合することができる。
本明細書中に示される化合物は非経口投与、例えばボーラス注射または連続点滴のために配合されることができる。注射のための配合は、単位用量形態(例えばアンプルまたは多用量コンテナ)で提供されることができ、これらには所望により保存剤が添加されている。組成物は懸濁物、溶液または油性もしくは水性ビヒクル中のエマルジョンであることができ、懸濁剤、安定化剤および/または分散剤の如き配合剤を含むことができる。
非経口投与される医薬組成物には、水溶性形態における化合物調製物の水溶液が含まれる。さらに、本明細書中に示される化合物の懸濁物を、適切なオイル状の注射用懸濁物およびエマルジョン(例えば、油中水型、水中油型、または油エマルジョン中の油中水型)として調製することができる。好適な親油性の溶媒またはビヒクルには、脂肪油(ゴマ油など)、または合成脂肪酸エステル(オレイン酸エチルなど)、トリグリセリドまたはリポソームが含まれる。水性の注射用懸濁物は、懸濁物の粘度を増大させる物質、例えば、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトールまたはデキストランなどを含有し得る。場合により、懸濁物はまた、高濃度の溶液の調製を可能にするために本明細書中に示される化合物の溶解性を増大させる好適な安定化剤または薬剤を含有し得る。
あるいは、本明細書中に示される化合物は、使用前に好適なビヒクル(例えば、滅菌されたパイロジェン非含有水)を用いて構成される粉末形態にする。
本明細書中に示される化合物はまた、例えば、カカオ脂または他のグリセリドなどの従来の座薬基剤を使用して、座薬または停留浣腸剤などの直腸用組成物に配合することができる。
本明細書中に記載される医薬組成物はまた、固相またはゲル相の好適な担体または賦形剤を含むことができる。そのような担体または賦形剤の例には、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、様々な糖、デンプン、セルロース誘導体、ゼラチンおよびポリマー(例えば、ポリエチレングリコールなど)が含まれるが、これらに限定されない。
本発明に関連した使用のために好適な医薬組成物には、活性成分が、意図された目的を達成するために効果的な量で含有される組成物が含まれる。より具体的には、治療効果がある量は、処置されている被験体の疾患の症状を防止、軽減または改善するために、あるいは、処置されている被験体の生存を延ばすために効果的な本明細書中に示される化合物の量を意味する。
治療効果がある量の決定は十分に当業者の範囲内であり、特に本願明細書で与えられる詳細な開示に鑑みればそうである。
本実施形態の方法に使用される本明細書中に示される化合物に対して、治療的に有効な量または用量は最初に動物における活性アッセイから推定されることができる。例えば、活性アッセイによって測定されるような変異抑制レベルを含む循環濃度範囲(例えば切断変異の実質的なリードスルーを達成する試験化合物の濃度)を達成するために、用量は動物モデルで配合されることができ、かかる情報は人間に有用な用量をより正確に決定するために使用されることができる。
本明細書中に示される化合物の毒性および治療効力は、実験動物における標準的な薬学的手法によって、例えば対象化合物についてEC50(最大効果の50%が観察される化合物の濃度)およびLD50(試験された動物の50%の死を生ずる致死量)を測定することによって明らかにすることができる。これらの活性アッセイおよび動物研究から得られたデータは、ヒトへの使用のための投薬量範囲を定める際に使用することができる。
投薬量は、用いられる投薬形態物および利用される投与経路に依存して変化し得る。正確な配合、投与経路および投薬量は、患者の状態を考慮して個々の医師によって選ぶことができる(例えば、Fingl他、1975、「The Pharmacological Basis of Therapeutics」(第1章、1頁)を参照のこと)。
投薬量および投薬間隔を、望ましい効果を維持するために十分である本明細書中に示される化合物の血漿中レベル(これは最小有効濃度(MEC)と呼ばれる)を提供するために個々に調節することができる。MECはそれぞれの調製物について変化するが、インビトロデータ(例えば、切断変異、すなわち変異コドンのリードスルーを有する遺伝子全体の発現の50%〜90%を達成するために必要な化合物の濃度)から推定することができる。MECを達成するために必要な投薬量は個々の特性および投与経路に依存する。HPLCアッセイまたはバイオアッセイを使用して、血漿中濃度を求めることができる。
投薬間隔もまた、MEC値を使用して決定することができる。調製物は、時間の10%〜90%について、好ましくは30%〜90%の間、最も好ましくは50%〜90%の間、MECを越える血漿中レベルを維持する治療法を使用して投与されなければならない。
処置される慢性状態の重篤度および応答性に依存して、投薬は上述の徐放性組成物の単回投与であることも可能であり、処置の経過が、数日から数週間まで、あるいは、定期的な処置の間に十分な改善が達成されるまで、または、定期的な処置の間に疾患状態の実質的な縮小が達成されるまで続く。
投与される組成物の量は、当然のことではあるが、処置されている被験体、苦痛の重篤度、投与様式、主治医の判断などに依存する。本発明の組成物は、所望される場合には、活性成分を含有する1つまたは複数の単位用量形態を含有し得るパックまたはディスペンサーデバイス(例えば、FDA(食品医薬品局)承認キットなど)で提供され得る。パックは、例えば、金属箔またはプラスチック箔を含むことができ、例えば、ブリスターパックまたは(吸入用の)加圧容器などである。パックまたはディスペンサーデバイスには、投与のための説明書が添付され得る。パックまたはディスペンサーにはまた、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府当局により定められた形式で容器に付けられた通知が伴うことがあり、この場合、そのような通知は、組成物の形態またはヒトもしくは動物への投与の当局による承認を反映する。そのような通知は、例えば、処方薬物についての米国食品医薬品局により承認されたラベル書きであり得るか、または承認された製品添付文書であり得る。適合し得る医薬用担体に配合された本実施形態による化合物を含む組成物はまた、本明細書において上記に詳述されるように、適応される状態の処置または診断をするために、調製され、適切な容器に入れられ、かつ表示され得る。
従って、いくつかの実施形態において、医薬組成物は、本明細書で規定されたように、包装材で包装されて、遺伝子疾患の治療で使用するために、包装材料中にまたは包装材料上に印刷されて識別される。
本明細書において記載される組成物、方法および使用のいずれにおいても、化合物は遺伝子疾患の治療に有用な他の薬剤と組み合わせて利用されることができる。
本明細書中に示される化合物、または、本明細書中に示される化合物を含有する医薬組成物は、当然、慢性のものである遺伝性障害を処置することに主に向けられるので、処置されている対象の全生涯にわたって投与されることが予想される。したがって、本化合物を含有する医薬組成物の投与様式は、投与、好ましくは自己投与による投与について容易かつ快適なものとなるべきであり、また、患者の安寧および生涯の経過にもたらす犠牲を最小限にとどめるものとするべきである。
本明細書中に示される化合物、または、本明細書中に示される化合物を含有する医薬組成物の反復的かつ周期的な投与は、例えば、毎日、すなわち、1日あたり1回行われることが可能であり、より好ましくは、投与は、毎週、すなわち、1週間あたり1回行われ、より好ましくは、投与は、毎月、すなわち、1ヶ月あたり1回行われ、最も好ましくは、投与は、数ヶ月毎に(例えば、1.5ヶ月毎に、2ヶ月毎に、3ヶ月毎に、4ヶ月毎に、5ヶ月毎に、または、さらには6ヶ月毎に)1回行われる。
本明細書中上記で検討したように、現在知られているアミノグリコシドを切断突然変異読み過ごし薬剤として使用するための制限のいくつかには、それらが主として抗菌性である(主として抗菌剤として使用される)という事実が関連している。どのような抗菌剤であれ、抗菌剤の長期使用はあまり保証されておらず、また、命を脅かすことさえある。これは、抗菌剤が腸の微生物叢を変化させ、このことが他の医学的状態(例えば、炎症性腸疾患の再燃など)を誘発または悪化させることがあり、また、微生物の一部の病理学的菌株における抵抗性の出現を誘発することがあるからである。
いくつかの実施形態において、本明細書中に示される化合物は抗菌活性を実質的に有しない。「抗菌活性がない」とは、特定の菌株についてのその最小阻害濃度(MIC)が、この菌株に関して抗生物質であると見なされる化合物の濃度よりもはるかに大きいことを意味する。さらに、これらの化合物のMICは、切断突然変異抑制活性を発揮するために要求される濃度よりも著しく大きい。
実質的に非殺菌性であるので、本明細書中に示される化合物は上記の有害作用を発揮せず、したがって、標的とされない良性の微生物および/または有益な微生物を含有し得る吸収経路を介して投与され得、したがって、それらの保存が要求されることさえあり得る。本明細書中に示される化合物のこの重要な特徴により、これらの化合物は、慢性状態に対する特に効果的な薬剤となる。これは、本明細書中に示される化合物が、抗菌剤に関連した有害な蓄積的作用を誘発することなく反復的かつ生涯にわたって投与されることが可能であり、また、さらには、経口投与または直腸投与により、すなわち、GI管を介して投与されることが可能であるからである(このことは、慢性障害を処置することに向けられる薬物にとって非常に有用かつ重要な特徴である)。
本明細書中上記で検討したように、いくつかの実施形態によれば、本明細書中に示される化合物は、原核生物細胞の翻訳系と比較して真核生物の細胞翻訳系に対して選択的である。すなわち、本明細書中に示される化合物は、原核生物細胞(例えば、細菌の細胞など)におけるそれらの活性と比較した場合、より高い活性を真核生物細胞(例えば、哺乳動物(ヒト)の細胞など)において示す。何らかの特定の理論にとらわれる訳ではないが、本明細書中に示される化合物は、リボソームが遺伝子の翻訳に関与している間に16SリボソームRNAのA部位に結合することによって作用することが知られているので、原核生物のリボソームのA部位、ならびに、その原核生物対応物質に似ているミトコンドリアのリボソームのA部位と比較して、真核生物のリボソームのA部位に対するより高い親和性を有するか、または、そうではない場合には、真核生物のA部位に対して選択的であることが想定される。
本明細書中で使用される用語「約」は、±10%を示す。
用語「含む/備える(comprises、comprising、includes、including)」、「有する(having)」、およびそれらの同根語は、「含むが、それらに限定されない(including but not limited to)」ことを意味する。
用語「からなる(consisting of)」は、「含み、それらに限定される(including and limited to)」ことを意味する。
表現「から本質的になる(consisting essentially of)」は、さらなる成分、工程および/または部分が、主張される組成物、方法または構造の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物、方法または構造がさらなる成分、工程および/または部分を含み得ることを意味する。
本明細書中で使用される場合、単数形態(「a」、「an」および「the」)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。例えば、用語「化合物(a compound)」または用語「少なくとも1つの化合物」は、その混合物を含めて、複数の化合物を包含し得る。本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲である/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
本明細書中で使用される用語「方法(method)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
本出願から成熟する特許の存続期間の期間中には、多くの関連する5”−アルキル基を有するアミノグリコシド類が開発されることが予想され、この用語の範囲は、すべてのそのような新しい技術を先験的に包含することが意図される。
明確にするため別個の実施形態の文脈で説明されている本発明の特定の特徴が、単一の実施形態に組み合わせて提供されることもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施形態で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで、あるいは本発明の他の記載される実施形態において好適なように提供することもできる。種々の実施形態の文脈において記載される特定の特徴は、その実施形態がそれらの要素なしに動作不能である場合を除いては、それらの実施形態の不可欠な特徴であると見なされるべきではない。
本明細書中上記に描かれるような、および、下記の請求項の節において特許請求されるような本発明の様々な実施形態および態様のそれぞれは、実験的裏付けが下記の実施例において見出される。
次に下記の実施例が参照されるが、下記の実施例は、上記の説明と一緒に、本発明を非限定様式で例示する。
実施例1
化学合成
合成手順:
NB118、NB119、NB122、NB123、NB124、NB125、NB127およびNB128の各化合物を、既に確立された立体化学により(S)−5−メチルおよび(R)−5−メチルを有する2つの個々の化合物(化合物(S)−17および化合物(R)−18)として環IIIの構築を伴う一般的手順に従って、かつ、それらをグリコシル化反応のための供与体として使用して合成した。これらの供与体は、下記のスキーム2に例示されるように既知のチオグリコシド化合物7から容易に得ることができた(スキーム2において、“a”は、1,1−ジメトキシプロパン、CSA、アセトン、室温を表す;“b”は、Dess−Martinペルヨージナン(DMP)、DCM、室温を表す;“c”は、MeMgBr、THF、−30℃を表す;“d”は、TsCl、Py、4−DMAP、室温を表す;“e”は、NaN3、HMPA、DMF、70℃を表す;“f”は、酢酸/水(8:2)、還流を表す;“g”は、BzCl、Py、4−DMAP、室温を表す;“h”は、NBS、アセトン/水(8:2)、−30℃を表す;“I”は、CCl3CN、DBU、DCM、0℃を表す)。
C2−ヒドロキシルおよびC3−ヒドロキシルのイソプロピリデンによる選択的保護(2,2−ジメトキシプロパン/アセトン、CSA)の後、残っている第一級アルコールの酸化を、Dess−Martinペルヨージナン(DMP、ジクロロメタン)を使用して行って、アルデヒド化合物8を2工程について70%の単離収率で得た。化合物8をMeMgBrにより処理して、対応する第二級アルコールを88%の単離収率でC5−ジアステレオマーの混合物(4:1の比率)として得た。この混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィーによって分離し、主成分ジアステレオマーを、別々にC5位での絶対的立体化学の割り当てに供した(下記参照)。本研究では、主成分ジアステレオマーおよび少量成分ジアステレオマーが(R)−配置および(S)−配置をそれぞれ示すことが立証された(化合物(R)−9および化合物(S)−10)。
スキーム2におけるその後の工程をそれぞれのジアステレオマーに対して別々に行った。第二級アルコールのトシル化(TsCl、ピリジン、4−DMAP)の後、対応するトシラート(化合物(R)−11および化合物(S)−12)のNaN3によるSN2置換(DMF、HMPA)を行って、反転した配置を有するアジドの化合物(S)−13および化合物(R)−14を得た。イソプロピリデンケタールの酢酸水溶液による加水分解、その後、生じた第二級アルコールのベンゾイル化を行って、ベンゾアートの化合物(S)−15および化合物(R)−16を得た。プソイド三糖のNB30およびNB54の組立てに関する初期の研究では、所望されるC5受容体はグリコシル化反応において反応性がより小さく、トリクロロアセトイミダート型供与体が満足すべき結果を与えたことが明らかにされている。
ただし、供与体としてのチオグリコシド型供与体(例えば、(S)−15および(R)−16など)(上記のスキーム2を参照のこと)を使用するグリコシル化反応は、N−ヨードスクシンイミド(NIS)およびトリフルオロメタンスルホン酸(HOTf)、または、NISおよびトリフル酸銀(AgOTf)を含む様々なグリコシル化試薬の存在下で行われ得るものとする。
したがって、チオグリコシドの化合物(S)−15および(R)−16は、対応するトリクロロアセトイミダートの化合物(S)−17および(R)−18に、2つの連続する工程で、すなわち、アセトン水溶液中でのNBSによる加水分解、および、生じたヘミアセタールのDBU存在下でのCCl3CNによる処理で変換された。供与体の化合物(S)−17および(R)−18を、さらに精製することなくグリコシル化反応において使用した。
例示的なプソイド三糖の化合物NB118、NB119、NB122およびNB123の合成を、下記のスキーム3に例示されるように、本質的には同じ化学的転換を使用することによって、以前の報告(国際公開第2007/113841号)に示されるような対応する選択的に保護されたプソイド二糖受容体の化合物19および20と、供与体の化合物(S)−17および(R)−18とから達成した(スキーム3において、“a”は、BF3・Et2O、DCM、4Å MS、−20℃を表す;“b”は、MeNH2−EtOH、室温を表す;“c”は、PMe3、NaOH、THF、室温を表す)。
ルイス酸(BF3・Et2O/DCM)により促進されるグリコシル化により、保護されたプソイド三糖化合物21〜24を、排他的に新たに生じたグリコシド結合におけるベータ−アノマーとして、79%〜85%の単離収率で得た。その後、2つの逐次的脱保護工程、すなわち、すべてのエステル保護を除くためのメチルアミンによる処理、および、アジドを対応するアミンに変換するためのStaudinger反応(Me3P、THF/NaOH)により、標的化合物のNB118、NB119、NB122およびNB123を2工程について79%〜82%の単離収率で得た。
すべての例示的化合物の構造、すなわち、NB118、NB119、NB122、NB123、NB124、NB125、NB127およびNB128の構造を、質量スペクトル分析と一緒に、2D 1H−13C HMQCおよびHMBC、2D COSY、ならびに、1D選択的TOCSYの各実験を含む、1D−NMRおよび2D−NMRの様々な技術の組合せによって確認した(ESMを参照のこと)。
図1A〜図1Cは下記のものを表す:C5−ジアステレオマーエステル(R,X)−27および(S,X)−28の合成計画、試薬ならびに条件(条件において、“a”は、DCC、4−DMAP、CSA、DCM、室温を表す)(図1A);(R,X)−27および(S,X)−28の1H−NMRスペクトル(スペクトルにおいて、(R,X)−27および(S,X)−28の特定プロトン間における化学シフトの差(Δδ)が強調されている)(図1B);およびセクター則による主成分アルコール化合物9の(Xによって表される)5−炭素における絶対配置の割り当て(図1C)。
化合物9および10(スキーム2を参照のこと)における側鎖C5−アルコールにおける立体化学の割り当てについて、主生成物の化合物9を、以前に報告された手順に従って、既知の絶対的立体化学を有する(R)−2−メトキシ−2(1−ナフチル)プロパン酸(R)−MαNPおよび(S)−MαNPとの(DCC、4−DMAP、CSAを使用する)カップリングに別個に供して、対応するエステル(R,X)−MαNP−27および(S,X)−MαNP−28を得た(図1Aを参照のこと)。その後、(Xによって表される)C5位の絶対配置を、1H−NMR異方性法を使用することによって決定した(図1B〜図1C):化学シフトの差[Δδ=δ(R,X)−δ(S,X)]がH−3(−0.15)およびH−4(−0.30)については負であり、一方で、H−6(+0.28)についての化学シフトの差は正であった。その後、セクター則に従った(R,X)−MαNP−27および(S,X)−MαNP−28の各構造の配置(図1Cを参照のこと;OMαNPおよびH−5は前方および後方にそれぞれ位置し、一方で、Δδ正部分はMαNP面の右側であり、Δδ負部分は左側である)により、化合物9におけるC5のR−配置(X=R)が確認された。
類似する合成手順および合成の基本原理に従って、プソイド三糖のNB124、NB125、NB127およびNB128の合成を、下記のスキーム3に例示されるのと本質的には同じ化学的転換を使用することによって、以前に報告された(国際公開第2007/113841号)対応する選択的に保護されたプソイド二糖受容体化合物219および220と、供与体化合物(S)−17および(R)−18とから達成した(下記のスキーム4を参照のこと)(スキーム4において、“a”は、BF3・Et2O、DCM、4Å MS、−20℃を表す;“b”は、MeNH2−EtOH、室温を表す;“c”は、PMe3、NaOH、THF、室温を表す)。
材料および方法:
反応を全てアルゴン雰囲気下で実施し、特に明記しない限り、無水溶媒を使用した。
化学薬品は全て、特に明記しない限り、Sigma−Aldrich,Flukaなどの一般の販売業者から得た。
反応をシリカゲル60F254(0.25mm、Merck)でのTLCによってモニターし、スポットを、(NH4)Mo7O24・4H2O(120グラム)および(NH4)2Ce(NO3)6(5グラム)を10%H2SO4(800ml)中に含有する黄色溶液による炭化によって可視化した。
カラムクロマトグラフィーをシリカゲル60(70〜230メッシュ)で行った。
1D−および2D−NMRスペクトルを、Bruker Avance(商標)500分光計で常法により記録した。
質量スペクトル分析を、Bruker Daltonix Apex3質量分析計で電子スプレーイオン化(ESI)のもとで、または、TSQ−70B質量分析計(Finnigan Mat)によって行った。
すべての生物学的試験において、すべての試験されたアミノグリコシドはそれらの硫酸塩形態であった。報告された濃度は各アミノグリコシドの遊離アミン形態の濃度を示す。
4−メチルフェニル・2,3−O−1−メチルエチリデン−1−チオ−β−D−リボペントジアルド−1,4−フラノシド(化合物8)の調製:
アセトン(500ml)中の4−メチルフェニル・1−チオ−β−D−リボフラノシド(化合物7、25グラム、0.097mol)および1,1−ジメトキシプロパン(22.3ml、0.39mol)の混合物を室温で約5分間撹拌し、その後、触媒量のCSA(1.0グラム)と、MgSO4(5.0グラム)とを加えた。反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を5時間後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、所望される2,3−イソプロピリデン誘導体を82%の収率で得た(23.5グラム)。
上記工程の生成物(22グラム、0.074mol)をジクロロメタン(500ml)中室温で撹拌し、これにDess−Martinペルヨージナン(DMP、34.6グラム、0.082mol)およびMgSO4(5.0グラム)を加えた。反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物をエーテルにより希釈し、飽和NaHCO3、Na2S2O3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物8を得た(18.0グラム、85%の収率)。
4−メチルフェニル・6−デオキシ−2,3−O−1−メチルエチリデン−1−チオ−β−D−アロフラノシド(化合物(R)−9)および4−メチルフェニル・6−デオキシ−2,3−O−1−メチルエチリデン−1−チオ−α−L−タロフラノシド(化合物(S)−10)の調製:
アルデヒド化合物8(17グラム、0.057mol)をTHF(200ml)において−30℃で30分間撹拌し、これに、MeMgBrの溶液(THF/トルエンにおける1.4M、235ml、0.171mol)を注射器により滴下した。反応混合物を同じ温度で2時間撹拌し、進行をTLCによってモニターした。完了後、反応混合物を飽和NH4Clにより停止処理し、酢酸エチルにより抽出した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)によって精製して、比率が4:1の2つのC5−ジアステレオマーを88%の収率で得た:主生成物の化合物(5R)−9(13グラム、Rf=0.38(EtOAc/ヘキサン、1:4))および少量生成物の化合物(5S)−10(3グラム、Rf=0.48(EtOAc/ヘキサン、1:4))。C5位の絶対配置を、下記の1H−NMR異方性法を使用することによって決定した。
C5位の絶対配置を割り当てるためのエステル、化合物(R,X)−27および化合物(S,X)−28の調製:
(R)−2−メトキシ−2(1−ナフチル)プロパン酸[(R)−MαNP]または(S)−MαNP(0.07グラム、0.0003mol)、4−ジメチルアミノピリジン(DMAP、0.05グラム、0.0004mol)、10−ショウノウスルホン酸(CSA、0.025グラム)および1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC、0.240グラム、0.0016mol)の混合物をCH2Cl2(30ml)中0℃で撹拌した。上記から得られる主成分アルコール9(0.1グラム、0.0003mol)をCH2Cl2(5ml)に溶解し、上記の撹拌溶液にゆっくり加え、反応液を室温で一晩放置した。混合物をEtOAcにより希釈し、1%HCl溶液、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、所望されるエステルの化合物(R,X)−27(0.135グラム、80%)または化合物(S,X)−28(0.138グラム、80%)を得た。
4−メチルフェニル・6−デオキシ−5−O−トシル−2,3−O−1−メチルエチリデン−1−チオ−β−D−アロフラノシド(化合物(R)−11)の調製:
ピリジン(200ml)中の化合物(R)−9(13グラム、0.041mol)の0℃での撹拌溶液に、トシルクロリド(15.6グラム、0.082mol)および4−DMAP(1グラム)を加えた。反応温度を室温に上げ、進行をTLCによってモニターした。完了後(36時間後)、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、1%HCl水溶液、飽和NaHCO3および食塩水により順次洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(R)−11(16.0グラム)を82%の収率で得た。
4−メチルフェニル・6−デオキシ−5−O−トシル−2,3−O−1−メチルエチリデン−1−チオ−α−L−アロフラノシド(化合物(S)−12)の調製:
ピリジン(200ml)中の化合物(S)−10(10グラム、0.032mol)の0℃での撹拌溶液に、トシルクロリド(15.6グラム、0.082mol)および4−DMAP(1グラム)を加えた。反応温度を室温に上げ、進行をTLCによってモニターした。完了後(36時間後)、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、1%HCl水溶液、飽和NaHCO3および食塩水により順次洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(S)−12(14.0グラム)を88%の収率で得た。
4−メチルフェニル・5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−1−メチルエチリデン−1−チオ−α−L−タロフラノシド(化合物(S)−13)の調製:
DMF(250ml)中の化合物(R)−11(15グラム、0.032mol)の撹拌溶液に、室温でNaN3(10グラム、0.15mol)およびHMPA(15ml)を加えた。反応温度を70℃に上げ、進行をTLCによってモニターした。完了後(10時間後)、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、1%HCl水溶液、飽和NaHCO3および食塩水により順次洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(S)−13(6グラム)を55%の収率で得た。
4−メチルフェニル・5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−1−メチルエチリデン−1−チオ−β−D−アロフラノシド(化合物(R)−14)の調製:
DMF(250ml)中の化合物(S)−12(13グラム、0.028mol)の撹拌溶液に、室温でNaN3(10グラム、0.15mol)およびHMPA(13ml)を加えた。反応温度を70℃に上げ、進行をTLCによってモニターした。完了後(10時間後)、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、1%HCl水溶液、飽和NaHCO3および食塩水により順次洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(R)−14(9グラム)を97%の収率で得た。
4−メチルフェニル・5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−1−チオ−α−L−タロフラノシド(化合物(S)−15)の調製:
化合物(S)−13(6グラム、0.018mol)を酢酸−水の混合物(100ml、8:2)において70℃で一晩撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターし、完了後、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、所望されるイソプロピリデン脱保護生成物(5グラム)を96%の収率で得た。
上記工程の生成物をピリジン(200ml)中0℃で撹拌し、これに、BzCl(7.14グラム、0.051mol)および4−DMAP(1グラム)をゆっくり加えた。反応温度を室温に上げ、一晩撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターし、完了後、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、1%HCl溶液、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(S)−15(8.0グラム)を94%の収率で得た。
4−メチルフェニル・5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−1−チオ−β−D−アロフラノシド(化合物(R)−16)の調製:
化合物(R)−14(8グラム、0.023mol)を酢酸−水の混合物(100ml、8:2)において70℃で一晩撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターし、完了後、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、所望されるイソプロピリデン脱保護生成物(6.5グラム)を92%の収率で得た。
上記工程の生成物をピリジン(200ml)中0℃で撹拌し、これに、BzCl(7.14グラム、0.051mol)および4−DMAP(1グラム)をゆっくり加えた。反応温度を室温に上げ、一晩撹拌した。反応の進行をTLCによってモニターし、完了後、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、1%HCl溶液、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(R)−16(9.5グラム)を93%の収率で得た。
L−タロフラノース,5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−ジベンゾアート・1−(2,2,2−トリクロロエタンイミダート)(化合物(S)−17)の調製:
化合物(S)−15(8グラム、0.016mol)をアセトン−水の混合物(100ml、9:1)中−30℃で10分間撹拌し、これに、N−ブロモスクシンイミド(9.16グラム、0.051mol)をゆっくり加えた。反応混合物を同じ温度で撹拌し、進行をTLCによってモニターした。完了後(3時間後)、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3、飽和Na2S2O3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮して、6.3グラムの対応するヘミアセタールを得た。このヘミアセタールをジクロロメタン(40ml)およびトリクロロアセトニトリル(5ml)の混合物において0℃で10分間撹拌し、これに、触媒量のDBU(0.3ml)を加えた。反応混合物を同じ温度で撹拌し、進行をTLCによってモニターした。完了後(3時間後)、反応混合物をDCMにより希釈し、飽和NH4Clにより洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮して、化合物(S)−17(9グラム)を得た。この粗生成物を、精製することなくグリコシル化反応のためにそのまま使用した。
D−アロフラノース,5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−ジベンゾアート・1−(2,2,2−トリクロロエタンイミダート)(化合物(R)−18)の調製:
化合物(R)−16(9グラム、0.018mol)をアセトン−水の混合物(100ml、9:1)中−30℃で10分間撹拌し、これに、N−ブロモスクシンイミド(9.0グラム、0.050mol)をゆっくり加えた。反応混合物を同じ温度で撹拌し、進行をTLCによってモニターした。完了後(3時間後)、反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3、飽和Na2S2O3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮して、6.5グラムの対応するヘミアセタールを得た。このヘミアセタールをジクロロメタン(50ml)およびトリクロロアセトニトリル(6ml)の混合物において0℃で10分間撹拌し、これに、触媒量のDBU(0.3ml)を加えた。反応混合物を同じ温度で撹拌し、進行をTLCによってモニターした。完了後(3時間後)、反応混合物をDCMにより希釈し、飽和NH4Clにより洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮して、化合物(R)−18(9グラム)を得た。この粗生成物を、精製することなくグリコシル化反応のためにそのまま使用した。
5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−α−L−タロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,1,3−トリアジドパロマミン(化合物(S)−21)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物19(0.75グラム、0.0013mol)および供与体化合物(S)−17(2.1グラム、0.0039mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を60分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(S)−21(1.0グラム)を80%の収率で得た。
5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−β−D−アロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,1,3−トリアジドパロマミン(化合物(R)−22)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物19(0.75グラム、0.0013mol)および供与体化合物(R)−18(2.1グラム、0.0039mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を60分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(R)−22(1.02グラム)を82%の収率で得た。
5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−α−L−タロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,3−ジアジド−1−N−[(S)−4−アジド−2−O−アセチル−ブタノイル]パロマミン(化合物(S)−23)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物20(1.0グラム、0.0014mol)および供与体化合物(S)−17(2.2グラム、0.0042mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を60分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(S)−23(1.19グラム)を79%の収率で得た。
5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−β−D−アロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,3−ジアジド−1−N−[(S)−4−アジド−2−O−アセチル−ブタノイル]パロマミン(化合物(R)−24)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物20(1.0グラム、0.0014mol)および供与体化合物(R)−18(2.2グラム、0.0042mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を60分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(R)−24(1.27グラム)を89%の収率で得た。
5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−α−L−タロフラノシル)パロマミン(NB118)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(S)−21(1.0グラム、0.001mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB118を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB118を得た(0.405グラム、82%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。[α]D 20=+38.4(c=0.2、MeOH)。
5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−β−D−アロフラノシル)パロマミン(NB119)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(R)−22(1.0グラム、0.001mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB119(NB119としても言及する)を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB119を得た(0.398グラム、80%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。[α]D 20=+37.0(c=0.2、MeOH)。
5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−α−L−タロフラノシル)−1−N−[(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシ−ブタノイル]パロマミン(NB122)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(S)−23(1.1グラム、0.001mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB122を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB122を得た(0.450グラム、79%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。[α]D 20=+35.4(c=0.2、H2O)。
5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−β−D−アロフラノシル)−1−N−[(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシ−ブタノイル]パロマミン(NB123)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(R)−24(1.2グラム、0.0011mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB123を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB123を得た(0.510グラム、82%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。[α]D 20=+32.2(c=0.2、H2O)。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−α−L−タロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,1,3−トリアジドパロマミン(化合物(S)−221)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物219(0.9グラム、0.0015mol)および供与体化合物(S)−17(2.0グラム、0.0037mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を120分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(S)−221(1.1グラム)を75%の収率で得た。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−β−D−アロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,1,3−トリアジドパロマミン(化合物(R)−222)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物219(1.0グラム、0.0017mol)および供与体化合物(R)−18(2.2グラム、0.004mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を120分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(R)−222(1.2グラム)を75%の収率で得た。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−α−L−タロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,3−ジアジド−1−N−[(S)−4−アジド−2−O−アセチル−ブタノイル]パロマミン(化合物(S)−223)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物220(1.0グラム、0.0014mol)および供与体化合物(S)−17(2.5グラム、0.0046mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を60分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(S)−223(1.1グラム)を73%の収率で得た。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アジド−5,6−ジデオキシ−2,3−O−ジベンゾイル−β−D−アロフラノシル)−3’,4’,6’,6−テトラ−O−アセチル−2’,3−ジアジド−1−N−[(S)−4−アジド−2−O−アセチル−ブタノイル]パロマミン(化合物(R)−224)の調製:
無水CH2Cl2(15ml)を、粉末化された火炎乾燥の4Åモレキュラーシーブ(2.0グラム)に加え、その後、受容体化合物220(1.0グラム、0.0014mol)および供与体化合物(R)−18(2.5グラム、0.0046mol)を加えた。反応混合物を室温で10分間撹拌し、その後、−20℃に冷却した。触媒量のBF3−Et2O(0.1ml)を加え、混合物を−15℃で撹拌し、反応の進行をTLCによってモニターした。TLCは完了を90分後に示した。反応混合物を酢酸エチルにより希釈し、飽和NaHCO3および食塩水により洗浄した。一緒にした有機層をMgSO4で乾燥し、濃縮し、カラムクロマトグラフィー(EtOAc/ヘキサン)に供して、化合物(R)−224(1.15グラム)を76%の収率で得た。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−α−L−タロフラノシル)パロマミン(NB124)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(S)−221(1.0グラム、0.001mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB124を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB124を得た(0.400グラム、79%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−β−D−アロフラノシル)パロマミン(NB125)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(R)−222(1.0グラム、0.001mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB125を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB125を得た(0.398グラム、79%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−α−L−タロフラノシル)−1−N−[(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシ−ブタノイル]パロマミン(NB127)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(S)−223(1.05グラム、0.001mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB127を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB127を得た(0.480グラム、86%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。
6’−(R)−メチル−5−O−(5−アミノ−5,6−ジデオキシ−β−D−アロフラノシル)−1−N−[(S)−4−アミノ−2−ヒドロキシ−ブタノイル]パロマミン(NB128)の調製:
グリコシル化生成物の化合物(R)−224(1.12グラム、0.001mol)をMeNH2の溶液(EtOH中33%の溶液、50ml)により処理し、反応の進行をTLC(EtOAc/MeOH、85:15)によってモニターした。TLCは完了を8時間後に示した。反応混合物を濃縮乾固させ、残渣をTHF(5ml)およびNaOH水溶液(1mM、5.0ml)の混合物に溶解した。混合物を室温で10分間撹拌し、その後、PMe3(THF中1Mの溶液、5.0ml、5.0mmol)を加えた。反応の進行をTLC[CH2Cl2/MeOH/H2O/MeNH2(EtOHにおける33%溶液)、10:15:6:15]によってモニターした。TLCは完了を1時間後に示した。生成物をシリカゲルの短いカラムでのカラムクロマトグラフィーによって精製した。カラムを下記の溶媒により洗浄した:THF(800ml)、CH2Cl2(800ml)、EtOH(200ml)およびMeOH(400ml)。その後、生成物を20%MeNH2(EtOHにおける33%溶液)/80%MeOHの混合物により溶出した。生成物を含有する分画物を一緒にし、濃縮乾固させた。残渣を少量の水に再溶解し、再び濃縮し(2回〜3回反復)、遊離アミン形態のNB128を得た。
上記生成物をAmberlite CG50(NH4 +型)の短いカラムに通すことによって、分析的に純粋な生成物を得た。カラムを最初、MeOH/H2O(3:2)の混合物により洗浄し、その後、生成物をMeOH/H2O/NH4OH(80:10:10)の混合物により溶出して、NB128を得た(0.500グラム、84%の収率)。
貯蔵および生物学的試験用に、化合物をその硫酸塩形態に変換した:遊離塩基を水に溶解し、pHをH2SO4(0.1N)でおよそ7.0に調節し、凍結乾燥した。
実施例2
終止コドン読み過ごし
本明細書中上記で示されたように、アミノグリコシド誘導による読み過ごしの効率は、(i)終止コドンの正体(UGA>UAG>UAA)、(ii)終止コドンのすぐ下流側の最初のヌクレオチドの正体(C>U>A≧G)、および、(iii)終止コドンの周りの局所的な配列状況に大きく左右される。したがって、設計された構造の構造活性相関関係に関する広範な理解をもたらそうという試みにおいて、中途終止コドンの周りの異なる配列状況を含む様々な構築物を使用した。これらの例示的な配列は、USH1、CF、HSおよびDMDの根底にあるPCDH15遺伝子、CFTR遺伝子、IDUA遺伝子およびジストロフィン遺伝子にそれぞれ由来した。選ばれたこれらの疾患の広く認められるナンセンス突然変異は、本明細書中下記で示されるように、USH1についてはR3XおよびR245X、CFについてはG542XおよびW1282X、HSについてはQ70X、およびDMDについてはR3381Xであった。
読み過ごしアッセイ:
試験されたナンセンス突然変異または対応する野生型(wt)コドンと、4から6個の上流側および下流側の隣接コドンとを含む、PCDH15、CFTR、ジストロフィンおよびIDUAのcDNAに由来するDNAフラグメントを、相補的オリゴヌクレオチドの下記の対をアニーリングすることによって作製した:
フラグメントを、p2Lucプラスミドのポリリンカーの中に読み枠を合わせて、BamHI制限部位とSacI制限部位との間(p.R3Xおよびp.R245X)、または、SalI制限部位とSacI制限部位との間(残りすべて)でのどちらかで挿入した。
インビトロ読み過ごしアッセイのために、得られたプラスミドに、試験アミノグリコシドを添加して、TNT Reticulocyte Lysate Quick Coupled Transcription/Translation Systemを使用して転写し、翻訳した。ルシフェラーゼ活性を、Dual Luciferase Reporter Assay System(Promega(商標))を使用して30℃での90分のインキュベーションの後で求めた。
エクスビボ読み過ごしアッセイのために、R3X、R245X、Q70XおよびW1282X突然変異を有する各構築物を、Lipofectamine 2000(Invitrogen)を用いてHEK−293細胞にトランスフェクションし、試験化合物の添加をトランスフェクションの6時間後に行った。細胞を試験アミノグリコシドとの16時間のインキュベーションの後で集めた。終止コドン読み過ごしを以前の記載のように計算した(Grentzmann,G.ら、RNA、1998、4、479頁を参照のこと)。
読み過ごし結果:
最初に、読み過ごし能に対するキラルなC5”−メチル基の影響を、本明細書中上記で記載されるような二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステムを使用することによってプソイド三糖のNB118およびNB119に対して評価した。簡単に記載すると、DNAフラグメントを、p2lucベクターのBamHI制限部位とSacI制限部位との間にクローン化し、得られた構築物を、TNT迅速共役転写/翻訳システムを使用して転写し、翻訳した。翻訳産物の量を、二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステムを使用して評価し、抑制レベルを計算するために使用した。少なくとも3回の独立した実験の平均を表す結果を図2A〜図2Fにまとめる。
図2A〜図2Fは終止コドン読み過ごしアッセイの結果を示しており、様々な遺伝性疾患(括弧内)を表す一連のナンセンス突然変異状況構築物において、NB30(白丸によって表示される)、NB118(黒三角によって表示される)、NB119(白三角によって表示される)および対照薬物ゲンタマイシン(黒四角によって表示される)によって誘導されるインビトロ終止コドン抑制レベルの比較グラフを示し、R3X(USH1)構築物に関する結果が図2Aに示され、R245X(USH1)構築物に関する結果が図2Bに示され、G542X(CF)構築物に関する結果が図2Cに示され、W1282X(CF)構築物に関する結果が図2Dに示され、Q70X(HS)構築物に関する結果が図2Eに示され、R3381X(DMD)構築物に関する結果が図2Fに示される。
図2A〜図2Fにおいて認められ得るように、試験されたすべての突然変異において、NB30における、NB118でのような(S)−5”−メチル基の設置は、そのインビトロ読み過ごし活性を劇的に増大させ、これに対して、NB119でのような(R)−5”−メチル基の設置による増大は比較的小さい。加えて、試験されたすべての突然変異において(ただし、G542Xを除く。図2Cを参照のこと)、NB118の読み過ごし活性は、臨床薬物ゲンタマイシンの読み過ごし活性よりも顕著に良好であった。
同じ効力増強(これは(S)−5”−メチル基の付加に起因すると考えられる)をNB54の場合において詳しく調べた。C5”位の立体化学の影響を評価するために、両方のC5”−ジアステレオマーを合成した(すなわち、NB122およびNB123)。プソイド三糖(NB54、NB122、NB123)および対照薬物ゲンタマイシンの比較インビトロ抑制試験を、NB30、NB54およびNB118の各化合物について本明細書中上記で記載したのと同じ実験条件のもとで行った。観察されたデータ(少なくとも3回の独立して実験の平均)を図3A〜図3Fに示す。
図3A〜図3Fは終止コドン読み過ごしアッセイの結果を示しており、様々な遺伝性疾患(括弧内)を表す一連のナンセンス突然変異状況構築物において、NB54(黒丸によって表示される)、NB122(黒三角によって表示される)、NB123(白三角によって表示される)および対照薬物ゲンタマイシン(黒四角によって表示される)によって誘導されるインビトロ終止コドン抑制レベルの比較グラフを示し、R3X(USH1)構築物に関する結果が図3Aに示され、R245X(USH1)構築物に関する結果が図3Bに示され、G542X(CF)構築物に関する結果が図3Cに示され、W1282X(CF)構築物に関する結果が図3Dに示され、Q70X(HS)構築物に関する結果が図3Eに示され、R3381X(DMD)構築物に関する結果が図3Fに示される。
図3A〜図3Fにおいて認められ得るように、読み過ごしの効力は、試験された種々の構築物および化合物の間で実質的に異なっており、アミノグリコシド上に導入された修飾のタイプに対する読み過ごし有効性の明白な依存性は何ら認められない。それにもかかわらず、試験されたすべての突然変異において(ただし、R3XおよびQ70Xを除く。図3Aおよび図3Eを参照のこと)、NB122は最高レベルの読み過ごしを誘導し、NB123、NB54およびゲンタマイシンが続いた。UGACのテトラコドン配列(R3X)はUGAAおよびUGAGよりも最良の翻訳読み過ごしを示し、UAGCテトラコドンは効率が最も小さく、これらは以前の観察結果と一致していた。
NB122およびNB123の読み過ごし能をさらに評価するために、それらの活性を、USH1のPCDH15−R3XおよびPCDH15−R245Xナンセンス突然変異、HSのIDUA−Q70Xナンセンス突然変異、ならびに、CFのCFTR−W1282Xナンセンス突然変異を有する4つの異なる二重ルシフェラーゼレポータープラスミドを使用して培養哺乳動物細胞においてアッセイした。これらのレポーター構築物は、インビトロ研究について本明細書中上記で示したのと同じものであり、単一レポーター分析または直接のタンパク質解析の利点を上回る、正常配列とナンセンス含有配列との間でのmRNAレベルの違いについて制御するための明白な利点を有する。
構築物をヒト胚性腎臓細胞株(HEK−293)にトランスフェクションし、様々な濃度のNB122、NB123、NB54および対照薬物ゲンタマイシンとインキュベーションした。結果を図4A〜図4Dに示す。
図4A〜図4Dは、NB54(黒丸によって表示される)、NB122(黒三角によって表示される)、NB123(白三角によって表示される)および対照薬物ゲンタマイシン(黒四角によって表示される)によって達成されるPCDH15−R3Xナンセンス突然変異のエクスビボ抑制(図4A)、PCDH15−R245Xナンセンス突然変異のエクスビボ抑制(図4B)、IDUA−Q70Xナンセンス突然変異のエクスビボ抑制(図4C)およびCFTR−W1282Xナンセンス突然変異のエクスビボ抑制(図4D)を示す。
本明細書中上記で記載されるように、R3X突然変異、R245X突然変異、Q70X突然変異およびW1282X突然変異を有するp2lucプラスミドの各構築物を、リポフェクタミン2000を使用してHEK−293細胞にトランスフェクションし、試験化合物をトランスフェクションの6時間後に加えた。細胞を16時間のインキュベーションの後で集め、ルシフェラーゼ活性を、二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステム(Promega(商標))を使用して求めた。終止コドン読み過ごしを以前の記載のように計算した。結果は少なくとも3回の独立した実験の平均である。
図4A〜図4Fにおいて認められ得るように、試験された突然変異のすべてにおいて、アミノグリコシド誘導による読み過ごしの認められた効力は、NB122≧NB123>NB54>ゲンタマイシンの順であった。NB122およびNB123についてのこの傾向は、NB122およびNB123間における効力差のギャップがたとえ、無細胞抽出物における同じ突然変異の抑制について認められるギャップより小さかったとしても、同じ終止突然変異のインビトロでの抑制について認められる傾向と類似していた(図3A〜図3Fを参照のこと)。
R3XおよびQ70XにおけるNB54の読み過ごし効力を上回る、NB122およびNB123の両方について認められる顕著に高い読み過ごし効力(図4Aおよび図4Cを参照のこと)は、インビトロにおける同じ突然変異の読み過ごし効力(図3Aおよび図3E)に対してかなり異なっていた。このデータは、NB122およびNB123の両方の細胞透過性が、5”−メチル基の存在のために、NB54の細胞透過性を上回ってより良好であることを示し得る。
(R)−6’−メチル基とN1−AHBを含む1つの分子に組み入れる上記ファルマコフォア点のいくつかの組合せにより、既知化合物のNB84が得られ、N1−AHBが(S)−5”−メチル基および(R)−5”−メチル基を伴う場合は、本発明のいくつかの実施形態による例示的な化合物、すなわち、NB122およびNB123が得られた。これらすべての例示的な化合物は、元の構造よりも著しく改善された読み過ごし活性を示し、一方で、生じた新規な構造体の細胞毒性はあまり変化しなかったことが示されている。本研究の目的の1つが、上記構成要素のさらなる組合せを試験することであった。そのようなものとして、(R)−6’−メチル基を1つの分子の中に(S)−5”−メチル基または(R)−5”−メチル基のどちらかと組み合わせること。その目的のために、例示的な化合物NB124および化合物NB125が調製され、試験されている。後者の2つのキラルなメチル基をN1−AHB基と組み合わせることにより、2つの例示的な化合物NB127および化合物NB128が得られた。
前回のシリーズと同様、読み過ごし能に対する2つのキラルなメチル基の影響を、本明細書中上記で記載されるような二重ルシフェラーゼレポーターアッセイシステムを使用することによってプソイド三糖のNB124[(R)−6’,(S)−5”]およびNB125[(R)−6’,(R)−5”]に対してインビトロで評価した。結果を図5A〜図5Bおよび図6A〜図6Fに示す。
図5A〜図5Dは、本発明のいくつかの実施形態による例示的な化合物のNB124(黒丸によって表示される)、NB125(白丸によって表示される)、NB127(黒三角によって表示される)、NB128(白三角によって表示される)、NB74(白菱形によって表示される)、NB84(黒菱形によって表示される)、ならびに、対照薬物のゲンタマイシン(黒四角によって表示される)およびG418(白四角によって表示される)によって達成される、CFTR−G542X(図5Aおよび図5C)、CFTR−W1282X(図5Bおよび図5D)のインビトロ中途終止コドン突然変異抑制アッセイの結果の比較プロットを示す。
図6A〜図6Fは終止コドン読み過ごしアッセイの結果を示しており、様々な遺伝性疾患(括弧内)を表す一連のナンセンス突然変異状況構築物において、NB124(黒丸によって表示される)、NB125(白丸によって表示される)、NB74(白菱形によって表示される)および対照薬物ゲンタマイシン(黒四角によって表示される)によって誘導されるインビトロ終止コドン読み過ごしレベルの比較グラフを示し、R3X(USH1)構築物に関する結果が図6Aに示され、R245X(USH1)構築物に関する結果が図6Bに示され、G542X(CF)構築物に関する結果が図6Cに示され、W1282X(CF)構築物に関する結果が図6Dに示され、Q70X(HS)構築物に関する結果が図6Eに示され、R3381X(DMD)構築物に関する結果が図6Fに示されている。
図5A〜図5Bおよび図6A〜図6Fにおいて認められ得るように、NB124を得るための、既知化合物NB74の構造における(S)−5”−メチル基の付加は、そのインビトロ読み過ごし活性を著しく増大させ、これに対して、(化合物125における)(R)−5”−メチル基の付加による増大は比較的小さい。加えて、試験されたすべての突然変異において、NB124の読み過ごし活性が、臨床薬物ゲンタマイシンの読み過ごし活性と比較して顕著に改善されていた。したがって、化合物124における(R)−6’−メチルおよび(S)−5”−メチルの2つのメチル基は、NB30、NB74およびNB118との比較において、読み過ごし活性を高めるために相加的または相乗的に働いている。NB30をNB74に変換し、これをNB124に変換すること(すなわち、最初の(R)−6’−メチル基をNB30上に付加してNB74を得、その後、(S)−5”−メチル基をNB74上にさらに付加してNB124を得ること)、または、NB30をNB118に変換し、これをNB124に変換すること(すなわち、最初の(S)−5”−メチル基をNB30上に付加してNB118を得、その後、(R)−6’−メチル基をNB118上にさらに付加してNB124を得ること)はどちらも、相加的に作用することにより、生じた構造体で観察される活性を段階的に増大させている。
興味深いことに、類似する相加的効果はまた、図5C〜図5Dおよび図7A〜図7Fに示されるように、NB124およびNB125における上記の2つのメチル基を、N1−AHB基と組み合わせて化合物127および128をそれぞれ得たときに認められた。
図7A〜図7Fは終止コドン読み過ごしアッセイの結果を示しており、様々な遺伝性疾患(括弧内)を表す一連のナンセンス突然変異状況構築物において、NB84(黒菱形によって表示される)、NB127(黒三角によって表示される)、NB128(白三角によって表示される)、G418(白四角によって表示される)およびゲンタマイシン(黒四角によって表示される)によって誘導されるインビトロ終止コドン抑制レベルの比較グラフを示し、R3X(USH1)構築物に関する結果が図7Aに示され、R245X(USH1)構築物に関する結果が図7Bに示され、G542X(CF)構築物に関する結果が図7Cに示され、W1282X(CF)構築物に関する結果が図7Dに示され、Q70X(HS)構築物に関する結果が図7Eに示され、R3381X(DMD)構築物に関する結果が図7Fに示されている。
図5C〜図5Dおよび図7A〜図7Fにおいて認められ得るように、(S)−5”−メチル基を含有するNB127は、(R)−5”−メチル基を含有するNB128よりも顕著に強力である。加えて、NB127およびNB128はともに、AHB成分をN1位に有しない対応する対応物質(すなわち、NB124およびNB125)、ならびに、(R)−6’−メチルおよびN1−AHBのみを含有する化合物NB84よりも顕著に強い読み過ごし誘導剤である。
ただし、本明細書では、試験されたいくつかの突然変異状況、例えば、G542X、W1282XおよびQ70Xにおいて、NB127は、G418の活性と類似する活性、または、それよりも大きい活性を示したこと、さらに、今までに行われたインビトロ試験のすべてにおいて、G418は最強の読み過ごし誘導剤と見なされることが示されている。NB127はG416活性を越えることができ、一方で、G418の場合より細胞毒性ははるかに低いという観察結果(表2を参照のこと)により、本発明のいくつかの実施形態による化合物によってもたらされる利点が明らかにされる。
観察されたインビトロ活性データはさらに、図8〜図10に示されるエクスビボ比較活性試験によって裏付けられる。
図8A〜図8Dは、NB124(黒丸によって表示される)、NB125(白丸によって表示される)、NB127(黒三角によって表示される)、NB128(白三角によって表示される)、NB74(白菱形によって表示される)、NB84(黒菱形によって表示される)、ならびに、対照薬物のゲンタマイシン(黒四角によって表示される)およびG418(白四角によって表示される)によって達成される、構築物CFTR−G542X(図8Aおよび図8C)、構築物CFTR−W1282X(図8Bおよび図8D)について行われたエクスビボ中途終止コドン突然変異抑制アッセイの結果の比較プロットを示す。
図9A〜図9Eは終止コドン読み過ごしアッセイの結果を示しており、様々な遺伝性疾患(括弧内)を表す一連のナンセンス突然変異状況構築物において、NB124(黒丸によって表示される)、NB125(白丸によって表示される)、NB74(黒菱形によって表示される)、ならびに、対照薬物のゲンタマイシン(黒四角によって表示される)およびG418(白四角によって表示される)によって誘導されるエクスビボ終止コドン抑制レベルの比較グラフを示し、R3X(USH1)構築物に関する結果が図9Aに示され、R245X(USH1)構築物に関する結果が図9Bに示され、Q70X(HS)構築物に関する結果が図9Cに示され、W1282X(CF)構築物に関する結果が図9Dに示され、G542X(CF)構築物に関する結果が図9Eに示されている。
図10A〜図10Eは終止コドン読み過ごしアッセイの結果を示しており、様々な遺伝性疾患(括弧内)を表す一連のナンセンス突然変異状況構築物において、NB127(黒三角によって表示される)、NB128(白三角によって表示される)、NB84(黒菱形によって表示される)、ならびに、対照薬物のゲンタマイシン(黒四角によって表示される)およびG418(白四角によって表示される)によって誘導されるエクスビボ終止コドン抑制レベルの比較グラフを示し、R3X(USH1)構築物に関する結果が図10Aに示され、R245X(USH1)構築物に関する結果が図10Bに示され、Q70X(HS)構築物に関する結果が図10Cに示され、W1282X(CF)構築物に関する結果が図10Dに示され、G542X(CF)構築物に関する結果が図10Eに示されている。
図8〜図10において認められ得るように、試験された突然変異のすべてにおいて、アミノグリコシド誘導による読み過ごしの観察された効力は、NB124>NB125>NB74>ゲンタマイシン、および、NB127≧NB128>NB84>ゲンタマイシンの順であった。これらの傾向は、NB127とNB128との間における効力差のギャップがたとえ、無細胞抽出物におけるインビトロでの同じ突然変異の抑制について認められるものよりも小さかったとしても、同じ終止突然変異のインビトロでの抑制について認められる傾向と類似している(図5〜図7を参照のこと)。
実施例3
細胞毒性対読み過ごし
試験化合物のそれぞれについての好適な細胞生存性を試験濃度で確実にするために、半数致死濃度値(LC50値)をHEK−293細胞およびHFF細胞(ヒト包皮線維芽細胞)において測定することによって、細胞毒性をそれぞれの化合物について評価した。
細胞生存性の百分率を、同一プロトコルのもとではあるが、試験化合物の非存在下で成長させた培養物に対する、試験化合物の存在下で成長させた培養物における生細胞の数の比率として計算した。結果は少なくとも3回の独立した実験の平均を表す。
図11A〜図11Dは、NB118(図11A)、NB119(図11B)、NB122(図11C)およびNB123(図11D)について測定された原核生物系(黒丸によって表示される)および真核生物系(白丸によって表示される)におけるインビトロ翻訳阻害の半対数プロットを示す。
図12A〜図12Dは、ゲンタマイシン(白四角によって表示される)、NB118(白丸によって表示される)、NB119(黒丸によって表示される)、NB122(白三角によって表示される)およびNB123(黒三角によって表示される)について、HEK−293細胞(図12Aおよび図12C)およびヒト包皮線維芽細胞(HFF細胞)(図12Bおよび図12D)における試験化合物濃度に対するエクスビボ細胞生存性の百分率の半対数プロットを示す。
半数致死濃度(LC50)の値を、GraFit5ソフトウエアを使用して、濃度応答曲線を少なくとも3回の独立した実験のデータに合わせることから得た。
原核生物および真核生物での翻訳阻害を、本明細書中の上記要領で行われる活性ルシフェラーゼ検出を使用することによって共役転写/翻訳アッセイで定量化した。MIC値を、それぞれの試験化合物の2つの異なる開始濃度(384μg/mLおよび6144μg/mL)を用いて、二重微量希釈法を使用することによって求めた。実験のすべてを二連で行い、類似した結果を3回の異なる実験で得た。すべての生物学的試験において、すべての試験されたアミノグリコシドはそれらの硫酸塩形態であった。報告される濃度はそれぞれのアミノグリコシドの遊離アミン形態の濃度を示す。
表1は、ゲンタマイシン、パロモマイシン、以前に報告されたNB30およびNB54、ならびに、例示的な化合物NB118、NB119、NB122およびNB123について得られる比較での細胞毒性アッセイ、真核生物および原核生物翻訳阻害アッセイ、ならびに、抗菌活性アッセイを示す。
表1における観察された細胞毒性データを、図2〜図4における読み過ごし活性データと比較することにより、(S)−5”−メチル基をNB30上に設置してNB118を得ること、または、NB54上に設置してNB122を得ることのどちらも、細胞毒性にあまり影響を与えず(LC50値が、HEK−293においてそれぞれ、NB30およびNB118についてそれぞれ21.4mMおよび23.5mMであり、NB54およびNB122についてそれぞれ6.1mMおよび10.1mMである)、一方で、(S)−5”−メチル基のそのような設置はどちらも、観察された終止コドン抑制活性を大幅に増大させること(NB30<NB118、および、NB54<NB122)が明らかにされている。HEK−293細胞およびHFF細胞においてNB122およびNB54の場合に認められる類似した細胞毒性(表1を参照のこと)は、培養細胞でのインビトロおよびエクスビボの両方における、NB54の抑制活性を上回るNB122の実質的に高められた抑制活性とともに、NB122が、抑制治療においてNB54よりも優れている1つの選択肢を表し得ることを示している。
図4における比較エクスビボ抑制データは、NB122の優先性がNB123の優先性をほんの少ししか上回らないことを示し、一方で、表1における細胞毒性データは、NB123の細胞毒性プロフィールが、NB122の細胞毒性プロフィールよりもわずかに良好(HEK−293細胞)から、著しく良好(HFF細胞)であることを示している。したがって、NB123ジアステレオマーのインビボ成績はNB122のインビボ成績よりも一層良好であるのではないかと主張されるかもしれない。加えて、ゲンタマイシンに関するつい最近の研究では、ただ1つの炭素原子における絶対配置の反転、すなわち、(S)−6’−ゲンタマイシンC2から(R)−6’−ゲンタマイシンC2への反転は、細胞培養および動物試験において求められるように、(S)−ジアステレオマーの細胞毒性および見かけの腎毒性との比較で、(R)−ジアステレオマーの細胞毒性および見かけの腎毒性を著しく低下させ、一方で、殺菌効力は影響されないことが明らかにされている。
これらの観察結果に基づくと、腎毒性および耳毒性(これらは、知られているアミノグリコシドの大きな欠点である)を含む、さらなる毒性試験により、この問題が申し分なく解決され、そして、NB122またはNB123のいずれについても、NB54およびゲンタマイシンの利点を凌ぐ利点が観察されたことを確認できることは明らかである。
さらに、NB118およびNB122の高まった読み過ごし活性に対する(S)−5”−メチル基の影響は、真核生物で観察された翻訳阻害データによって裏付けられる(表1を参照のこと)。NB122が真核生物の翻訳を阻害する効力(半数阻害濃度値IC50=5.2μM)は、NB118の効力(IC50=16.0μM)およびNB54の効力(IC50=24.0μM)よりも大きく、これは、読み過ごし活性について認められる傾向と類似する傾向である:すなわち、NB122>NB118>NB54(図2〜図4を参照のこと)。加えて、NB118およびNB122のIC50値をそれらの元の構造体のNB30およびNB54のIC50値(それぞれ、31μMおよび24μMのIC50値)と比較することにより、NB118およびNB122は、それらの元となったNB30およびNB54によりも真核生物のリボソームに対して1.9倍および4.6倍特異的であることが明らかにされ、このことは、NB118およびNB122の高まった読み過ごし活性に対する(S)−5”−メチル基の認められた影響は、真核生物のリボソームに対するそれらの増大した特異性に伴うことを示している。
表2は、ゲンタマイシン、G418、以前に報告されたNB74およびNB84、ならびに、例示的な化合物NB124、化合物NB125、化合物NB127および化合物NB128について得られる、細胞毒性アッセイ、真核生物および原核生物での翻訳阻害アッセイ、ならびに、抗菌活性アッセイの比較結果を示す。
表2において認められ得るように、表2における観察された細胞毒性データを図8〜図10に示される読み過ごし活性データと比較することにより、本発明のいくつかの実施形態による化合物、例えば、NB124、NB125、NB127およびNB128は、以前に開示された化合物との比較では、ヒト包皮線維芽細胞(HFF)におけるNB128の細胞毒性を除き、ほぼ同じレベルの細胞毒性を示すことが明らかにされる。
加えて、以前に開示された化合物と同様に、NB124、NB125、NB127およびNB128の新規な各化合物は、著しい抗菌活性をE.coliおよびB.subtilisの両方では示さない(上記の表2を参照のこと)。これらのデータは、標準的なアミノグリコシド系抗生物質との比較における原核生物のタンパク質合成のそれらの劇的に低下した阻害によってさらに裏付けられ(表2)、したがって、低下した原核生物の翻訳阻害を有するアミノグリコシドはまた、おそらくはミトコンドリアのタンパク質合成の低下した阻害のために細胞毒性がより小さいという一般的な傾向と一致している。
実施例4
抗菌活性
本発明の実施形態によるいくつかの例示的化合物について得られた抗菌活性アッセイの結果を本明細書中上記の表1および表2に示す。
NB30、NB54、NB74およびNB84などの化合物がゲンタマイシンおよびパロモマイシンに対し約1/10の強さの弱い原核生物翻訳阻害剤であり、また、さらに、グラム陰性菌およびグラム陽性菌の両方に対する殺菌活性をほとんど示さないことが以前に示されている。本実験では、本発明のいくつかの実施形態による化合物、例えば、NB118、NB119、NB122、NB123、NB124、NB125、NB127およびNB128が、類似する性質を保持するかが明らかにされる。
したがって、例示的な化合物のNB118、NB119、NB122、NB123、NB124、NB125、NB127およびNB128を、原核生物でのそれらの抗翻訳活性と一緒に、グラム陰性菌(大腸菌(Escherichia coli))およびグラム陽性菌(枯草菌(Bacillus subtilis))の両方に対する抗菌剤として調べた(表1および表2を参照のこと)。
表1および表2において認められ得るように、測定されたIC50値は、本発明のいくつかの実施形態による例示的な化合物が原核生物のリボソームを阻害する効力が、この組の化合物の観察された抗菌性データと一致して、パロモマイシンおよびゲンタマイシンの効力よりも著しく低いことを示す;ゲンタマイシンおよびパロモマイシンは、著しい抗菌活性をE.coliおよびB.subtilisの両方に対して示す一方で、本発明のいくつかの実施形態による例示的な化合物は大きな抗菌活性を有してはいない。
NB118、NB119、NB122、NB123、NB124、NB125、NB127およびNB128に関する観察データは、NB30、NB54、NB74およびNB84についての観察データと類似しており、また、原核生物の抗翻訳活性およびMIC値間のアミノグリコシドにおける以前に報告された相関をさらに裏付けている。すなわち、低下した原核生物の翻訳活性には、抗菌活性の低下が伴う。
そのうえ、NB118、NB119、NB122、NB123、NB124、NB125、NB127およびNB128の場合と同様に、NB30、NB54、NB74およびNB84では、それらの低下した原核生物リボソーム特異性と併せて、著しい抗菌活性を示すことができないことが引き続き認められることは、原核生物リボソームに対する特異性を低下させ、それにより、それらの抗菌活性を取り除くことによって、真核生物のミトコンドリアのタンパク質合成装置に対するそれらの作用が低下するかもしれず、したがって、ヒトに対するそれらの毒性影響を著しく低下させ得ることが示唆される。この見方は、哺乳動物のミトコンドリアのタンパク質合成装置が原核生物の装置と非常に類似しているという事実によって、また、アミノグリコシドにより誘導される毒性が、少なくとも部分的には、薬物により伝達されるミトコンドリアリボソームの機能不全に結びつけられ得るという事実によって裏付けられる。
観察された著しく増大した真核生物での抗翻訳活性(これは実際には、細胞質でのタンパク質合成の阻害のみを測定するだけであり、ミトコンドリアでのタンパク質合成の阻害を測定していない)は、(ゲンタマイシンおよびパロモマイシンの細胞毒性との比較では)NB118、NB119、NB122、NB123、NB124、NB125、NB127およびNB128の各化合物の著しく低下した細胞毒性とともに、この考えをさらに裏付けている。
実施例5
真核生物対原核生物の選択性
本明細書中上記で検討したように、中途終止コドン突然変異によって引き起こされる遺伝性疾患を処置するために使用され得る相応の薬物候補物を構成するためには、アミノグリコシドは非毒性であり、かつ、真核生物の細胞質リボソームと相互作用するべきである。非毒性であるという長所は、抗菌活性の欠如によって確認することができ、このことは、当該薬物が原核生物の翻訳をより少ない程度に阻害することになり、したがって、当該薬物は十中八九、ミトコンドリアでの翻訳を阻害しないであろうことを意味する。アミノグリコシド(例えば、本明細書中に示される化合物など)における所望される特性のこの有益な組合せの存在は、真核生物対原核生物の選択的活性によって明らかにされ得る。
また、原核生物における翻訳阻害を上回る、真核生物における翻訳阻害に対するアミノグリコシド化合物の注目すべき選択性が、中途終止コドン突然変異に伴う遺伝性障害を処置するための薬物候補としてのその有効性および安全性を予測するために使用され得ることも言える。
表3では、真核生物および原核生物のリボソーム系を用いて行われた翻訳阻害アッセイにおける、一連の例示的な既知アミノグリコシドおよび例示的な今回開示されたアミノグリコシドについて得られた結果がまとめられ、比較されている。それぞれの化合物はまた、化合物が上記スキーム1に示される5つのファルマコフォア点の中から示すファルマコフォア点のタイプによって表される。表3において、ファルマコフォア点は、6’位のヒドロキシル基については“i”によって表され、N1位のAHB基については“ii”によって表され、第3の糖類成分である“環III”については“iii”によって表され、6’位のメチルについては“iv”によって表され、5”位のメチルについては“v”によって表される。
行われたすべての生物学的実験において、すべての試験されたアミノグリコシドはそれらの硫酸塩形態であった。表3に報告される濃度はそれぞれのアミノグリコシドの遊離アミン形態の濃度を示す。原核生物および真核生物での翻訳阻害を、以前に記載されるような共役転写/翻訳アッセイで定量化した。最大半値濃度(IC50)の値を、GraFit5ソフトウエアを使用して、濃度応答曲線を少なくとも3回の独立した実験のデータに合わせることから得た。実験のすべてを二連で行い、類似した結果を3回の異なる実験で得た。
表3において認められ得るように、IC50 Euk/IC50 Pro比(原核生物における翻訳阻害に対する真核生物における翻訳阻害)における顕著な低下が認められ、約115の平均値(NB30、NB54、NB74およびNB84の比率の平均)から、今回開示されたファルマコフォア点“v”を付加したことについては約7の平均値(NB118、NB119、NB122およびNB123の比率の平均)にまで低下し、今回開示されたファルマコフォア点“v”および以前に開示されたファルマコフォア点“iv”を付加したことについては約1.6の平均値(NB124、NB125、NB127およびNB128の比率の平均)にまで低下している。
本発明のいくつかの実施形態による例示的なアミノグリコシド化合物は、5つすべてのファルマコフォア点を示すものであり、5”位の立体配置にもかかわらず、最大の真核生物対原核生物の選択性もまた示すことを表3において明瞭に認めることができる。すなわち、これらの化合物は、ヒトにおける遺伝性障害を処置するための可能な薬物候補のリストにおいて上位に位置している。
実際、例示的な化合物NB124、化合物125、化合物NB127および化合物128を調製し、試験している間に、原核生物での細胞質タンパク質合成の増大した阻害は、増大した読み過ごし活性に伴うことが見出されている。表3におけるデータは、幅広いファルマコフォアの体系的展開により、新しく開発された化合物の細胞質リボソームに対する特異性を徐々に増大させることができ、かつ、原核生物リボソームに対するそれらの特異性を、5つすべてのファルマコフォア点が実行されるNB127およびNB128が原核生物の翻訳系(リボソーム)と比較して真核生物の翻訳系(リボソーム)に対する逆転した選択性を示すまで低下させ得たことを示す。
2つの観察結果が本明細書中では特筆される:
1)ゲンタマイシンおよびパロモマイシンのような標準的なアミノグリコシド系抗生物質は、真核生物のリボソームと比較して原核生物のリボソームに対して2214倍および1181倍選択性が高い一方で、G418におけるこの選択性は、とりわけ真核生物での翻訳のその比較的増大した阻害のために、わずか225倍まで低下する。真核生物での翻訳のこの強い阻害(IC50 Euk=2μM)は、G418の劇的に高い細胞毒性の主たる理由として、同様にまた、その非常に強い読み過ごし活性に対する主たる理由として考えられた。表3に示される結果は、真核生物での翻訳の高まった阻害が実際、その強い読み過ごし活性に対する裏付けである一方で、真核生物での翻訳の阻害はG418の唯一の毒性事象ではなく、真核生物細胞に対するG418のそれ以外の影響(複数可)がその毒性と相関することを示唆する。
表3に示されるデータによれば、本発明のいくつかの実施形態によるいくつかの化合物は、NB124、NB127およびNB128を含めて、真核生物での翻訳の類似する阻害能またはより大きい阻害能を示し、一方で、細胞毒性はG418よりも顕著に低い。
2)IC50 Eukの値を、試験された標準アミノグリコシドおよび合成アミノグリコシドのすべてのインビトロ読み過ごし活性に対してプロットすることにより、これら2つのパラメータの間における密接な相関が認められている。すなわち、増大した阻害には、図13A〜図13Bに例示されるように、増大した読み過ごし活性が伴う。
図13A〜図13Bは、一連の公知化合物および本発明のいくつかの実施形態による例示的な化合物について認められるような、真核生物系におけるインビトロでの読み過ごし活性と、タンパク質翻訳阻害との間における可能な相関を特定するための散乱プロットを示しており、タンパク質合成の増大する阻害(より低いIC50)には、読み過ごし活性の増大が伴っている:これに対して、図13Aは、6つの異なるナンセンス突然変異(W1282X、Q70X、R3X、R245X、G542XおよびR3381X)を使用する、試験アミノグリコシドの1.4μMの濃度におけるインビトロ読み過ごし活性に対する真核生物での翻訳阻害(X軸に示される)の半対数プロットであり、図13Bは、図13Aに示される同じデータの線形プロットである。
ただし、読み過ごし活性が用量依存的であり、そして、終止コドンの正体、当該終止の下流側配列における4番目の塩基、および、当該終止コドンの周りの配列状況を含めて、様々な要因によっても影響されるので、図13に示されるデータは、化合物のすべてが試験された1つの濃度(1.4μM)と、4つの異なる疾患モデルの6つの異なる構築物を表す一連の異なる構築物とを使用しながら集められたものとする。したがって、原核生物リボソームに対する増大する特異性および選択性により、化合物の所望される生物学的活性におけるその後の増大が、低下した毒性とともに引き起こされる。
本発明者らによって行われた別の観察では、2つのパロマミン成分がメチレン架橋により3’−酸素においてつながれる本質的にはパロマミンの二量体である以前に報告された化合物NB33が含まれる。NB33は真核生物リボソームに対して高特異的であり、タンパク質合成を1.1mMのIC50 Euk値によって阻害し、これはG418(2.0mMのIC50 Euk)のほぼ2倍である。しかしながら、NB33は読み過ごし活性をほとんど有しておらず、このことは、その阻害機構が、読み過ごし活性を示す既知のアミノグリコシドおよび本発明のいくつかの実施形態による化合物の阻害機構とは異なることを示している。したがって、アミノグリコシドの阻害効力を単に増大しても、増大した読み過ごし活性は必ずしも付随しないことが結論された。そのような相関は、同じ機構を有する、すなわち、校正プロセスの忠実性を有する翻訳プロセスを阻害するそのようなアミノグリコシド化合物について考慮されるべきである。実際、NB33と、ヒトA部位tRNAオリゴヌクレオチドモデルとの相互作用に関する最近の研究では、NB33が、非デコーディング時の立体配座においてA部位と結合し、それを安定化し、そのようなものとして、リボソーム転位段階を阻止することが明らかにされた。
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更および変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更および変形すべてを包含するものである。
本明細書で挙げた刊行物、特許および特許出願はすべて、個々の刊行物、特許および特許出願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用または確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。節の見出しが使用されている程度まで、それらは必ずしも限定であると解釈されるべきではない。