以下、図面に基づいてこの発明の実施の形態を説明する。なお、以下の図面において、同一または相当する部分には同一の参照番号を付し、その説明は繰返さない。
<包装装置1の構成>
図1は、実施形態に係る包装装置1の概略構成図である。
包装装置1は、包装対象物を包装するために用いられる。包装対象物は、薬剤であり、具体的には固形の薬剤である。固形の薬剤としては、散剤、顆粒剤、錠剤、丸剤およびカプセル剤などが挙げられる。包装対象物は、固形の薬剤に限られない。包装対象物は、半固形の薬剤であってもよく、または、液状の薬剤であってもよい。
包装装置1は、処方箋に基づいて薬剤を包装するための薬剤包装装置である。処方箋は、医師が患者に交付するものである。処方箋には、患者情報および薬剤情報が記載されている。患者情報は、患者の氏名および年齢を含む。薬剤情報は、薬名、分量、用法および用量を含む。このような処方箋に基づいて薬剤を1回の服用分ずつ包装するために、包装装置1が用いられる。
包装装置1は、包材搬送部8を備えている。包材搬送部8は、包材2に駆動力を作用し、包材2を搬送する。包材2は、長尺シート状である。包材2は、この包材2の長手方向に搬送される。包材2は、包材ロール3から送り出される。包材ロール3は、包材2がロール状に巻回されたものである。図1中の矢印は、包材2の搬送方向DRを示す。以下、包材2の搬送方向DRを単に「搬送方向DR」という。搬送方向DRの上流(包材ロール3に近い側)を単に「上流」という。搬送方向DRの下流(包材ロール3から離れる側)を単に「下流」という。
包装装置1は、印刷部4と、薬剤供給部5と、収容部形成部6と、をさらに備えている。搬送方向DRの上流から下流に向けて、印刷部4、薬剤供給部5、収容部形成部6の順に並んでいる。印刷部4は、包材搬送部8によって搬送される包材2に、所定の情報を印刷する。所定の情報は、薬剤に関連する情報である。薬剤供給部5は、包材搬送部8によって搬送される包材2に、薬剤を供給する。薬剤は、処方箋に基づいて1回の服用分ずつ供給される。収容部形成部6は、包材搬送部8によって搬送される包材2を用いて、収容部を形成する。収容部には、薬剤が収容される。収容部形成部6は、薬剤供給部5から薬剤が供給された後に、包材2を熱融着して、薬剤が内部に収容された包装物を形成する。
包装装置1は、ミシン目形成部7をさらに備えている。ミシン目形成部7は、収容部形成部6に設けられている。ミシン目形成部7は、包材搬送部8によって搬送される包材2に、搬送方向DRに直交する方向に延びるミシン目を形成する。ミシン目は、複数の細孔が包材2の短手方向に連続して並んだものである。
このような包装装置1では、収容部形成部6とミシン目形成部7と包材搬送部8とによって、包装部9が構成されている。
図2は、図1に示す包装装置1における、薬剤供給部5および収容部形成部6の概略斜視図である。
薬剤供給部5が薬剤100を包材2に供給する薬剤供給位置では、包材2が、この包材2の短手方向の中心線に沿って二つ折りされている。包材2の短手方向両縁部2aは、包材2の短手方向中央部2bよりも上方に位置し、しかも互いに離れている。これによって包材2には、上方に臨む開口2cが形成されている。
包材2は、予め二つ折りされていてもよい。この場合、予め二つ折りされた包材2がロール状に巻回された包材ロール3から、二つ折りされた包材2が送り出される。
または包材2は、搬送経路の途中で二つ折りされてもよい。この場合、包材2は、二つ折りされることなく、ロール状に巻回される。このようにして製造された包材ロール3から、包材2が送り出される。包材2を二つ折りするための機構が、薬剤供給位置よりも上流に設けられる。包材ロール3から送り出された包材2は、薬剤供給位置よりも上流で、二つ折りされる。
薬剤供給部5は、図示しない供給部本体と、ホッパ51とを有している。供給部本体は、薬剤100を供給する。ホッパ51は、供給部本体から供給された薬剤100を包材2に導く。ホッパ51は、その先端に、薬剤100を包材2に投入する薬剤投入口52を有している。薬剤投入口52は、二つ折りされた包材2の内側に入り込むように配置されている。供給部本体から供給された薬剤100は、ホッパ51によって導かれることで、包材2の開口2cを通過して、二つ折りされた包材2の内側に入る。
収容部形成部6は、加熱部材61と、受け部材62と、加圧モータ65とを有している。加熱部材61には、ヒータ61a(後述する図4参照)が内蔵されている。受け部材62は、加熱部材61を受ける部材である。加熱部材61および受け部材62は、包材2を間に挟んで、対向して配置されている。加圧モータ65は、加熱部材61および受け部材62を駆動する。加圧モータ65により駆動された加熱部材61および受け部材62は、包材2を両側から加圧したり、包材2から離隔したりする。
加熱部材61および受け部材62は、各々、略T字状である。加熱部材61および受け部材62は、各々、長手方向部分63と、短手方向部分64と、を有している。長手方向部分63は、T字の横棒部分を構成しており、包材2の長手方向に延びている。長手方向部分63は、搬送方向DRに延びている。短手方向部分64は、T字の縦棒部分を構成しており、包材2の短手方向に延びている。短手方向部分64は、搬送方向DRに直交する方向に延びている。加熱部材61の長手方向部分63と受け部材62の長手方向部分63とは、包材2を間に挟んで、対向して配置されている。加熱部材61の短手方向部分64と受け部材62の短手方向部分64とは、包材2を間に挟んで、対向して配置されている。
このような収容部形成部6では、加熱部材61がヒータ61aによって加熱される。この状態で、加熱部材61および受け部材62が、包材2を両側から加圧する。これによって包材2には、長手方向融着部23および短手方向融着部24が形成される。長手方向融着部23は、加熱部材61の長手方向部分63と受け部材62の長手方向部分63とに挟まれた包材2の一部分が熱融着することで形成される。長手方向融着部23は、包材2の開口2cを塞ぐ。短手方向融着部24は、加熱部材61の短手方向部分64と受け部材62の短手方向部分64とに挟まれた包材2の一部分が熱融着することで形成される。短手方向融着部24は、包材2の内側を、下流側と上流側とに仕切る。
これにより、二つ折りされた包材2の折り目と、長手方向融着部23と、搬送方向DRに並ぶ2つの短手方向融着部24とによって包材2が区画され、包装物21が形成される。短手方向融着部24は、包材2の長手方向に隣り合う包装物21の境界を形成している。包装物21の内部には、収容部22が形成されており、薬剤100は収容部22内に収容されている。収容部形成部6は、包装対象物である薬剤を、一包装分ずつ包装している。
ミシン目形成部7は、受け部材62の短手方向部分64に設けられている。ミシン目形成部7は、受け部材62の短手方向部分64の幅方向中央部に位置している。ミシン目形成部7は、包材2の短手方向に延びている。
ミシン目形成部7は、加熱部材61および受け部材62が包材2を両側から加圧するときに、包材2に押し付けられる。ミシン目形成部7の刃先が受け部材62から突出して包材2を厚み方向に貫通することによって、包材2にミシン目25が形成される。ミシン目形成部7は、加熱部材61および受け部材62と同じく加圧モータ65により駆動されて、受け部材62に対して相対移動する。ミシン目25は、短手方向融着部24の幅方向中央部に形成される。ミシン目25に沿って包材2を切り裂くことで、隣り合う包装物21が容易に分離される。
ミシン目形成部7は、受け部材62に設けられなくてもよい。たとえば、収容部形成部6よりも下流に配置されたミシン目形成部7が、既に形成された短手方向融着部24の幅方向中央部にミシン目25を形成する構成としてもよい。
包材搬送部8は、一対の搬送ローラ81と、包材搬送モータ82とを有している。一対の搬送ローラ81は、包材2を間に挟んで、対向して配置されている。包材搬送モータ82は、一対の搬送ローラ81を回転駆動する。包材搬送モータ82が一対の搬送ローラ81を回転駆動することで、包材2が搬送される。
このような包装部9(図1)では、包材搬送部8が包材2を間欠的に搬送する。包材2の搬送を停止しているときに、加熱部材61および受け部材62が、包材2を両側から加圧する。このときに、ミシン目形成部7が包材2に押し付けられる。これによって包材2には、長手方向融着部23が、包材2の長手方向に連なるように形成され、また短手方向融着部24が、包材2の長手方向に一定の間隔で形成され、さらにミシン目25が、包材2の長手方向に一定の間隔で形成される。このようにして包材2の長手方向に、複数の包装物21が形成される。
包装物21は、包材2の長手方向に隣り合う短手方向融着部24の間の部分であり、包材2の長手方向に隣り合うミシン目25の間の部分である。短手方向融着部24は、包材2の長手方向に隣り合う包装物21の境界となる。加熱部材61の短手方向部分64と受け部材62の短手方向部分64とは、搬送方向DRに並ぶ包装物21の境界を形成する境界形成部としての機能を有している。
ここでは、搬送方向DRに隣り合う短手方向融着部24の各々の幅方向中央部間の長さを、搬送方向DRにおける包装物21の幅Wという。幅Wは、包材2の長手方向に隣り合うミシン目25の間の長さを示している。
<印刷部4の構成>
図3は、図1に示す包装装置1における、印刷部4の概略構成図である。
印刷部4は、印刷ヘッドであるサーマルヘッド41を用いて、インクリボン45のインクを包材2上に熱転写させる。
印刷部4は、サーマルヘッド41と、プラテンローラ44と、を有している。サーマルヘッド41は、複数の発熱素子を有している。プラテンローラ44は、包材2を支える。サーマルヘッド41およびプラテンローラ44は、インクリボン45および包材2を間に挟んで、対向して配置されている。
印刷部4は、ヘッド接離モータ42と、ヘッド移動モータ43とを、さらに有している。ヘッド接離モータ42は、サーマルヘッド41を、包材2の厚み方向(図3中の上下方向)に往復移動させ、圧接位置と離隔位置とに移動させる。圧接位置は、サーマルヘッド41がインクリボン45および包材2を介してプラテンローラ44に圧接する位置である。離隔位置は、サーマルヘッド41がプラテンローラ44から離隔する位置である。ヘッド移動部であるヘッド移動モータ43は、サーマルヘッド41およびプラテンローラ44を、包材2の搬送方向DR(図3中の左右方向)に往復移動させる。
印刷部4は、リボン供給軸46と、リボン巻取軸47と、ガイドローラ48,49と、リボン搬送モータ47aと、をさらに有している。リボン供給軸46は、インクリボン45を供給する。リボン巻取軸47は、インクリボン45を巻き取る。ガイドローラ48,49は、リボン供給軸46とリボン巻取軸47との間に設けられ、インクリボン45を案内する。リボン搬送モータ47aは、リボン巻取軸47を回転駆動する。
リボン搬送モータ47aがリボン巻取軸47を回転駆動することで、インクリボン45がリボン供給軸46からリボン巻取軸47に向かって、その長手方向に搬送される。インクリボン45の搬送方向と包材2の搬送方向DRとは、互いに平行であり、いずれも図3中の左右方向である。
このような印刷部4では、サーマルヘッド41を圧接位置に移動させる。この状態で、サーマルヘッドを包材2の搬送経路に沿って移動させる。このとき、サーマルヘッドの複数の発熱素子を、選択的に発熱させる。これによって、包装対象物である薬剤100に関連する所定の情報が、インクリボン45を用いて包材2に一包装分ずつ印刷される。
<包装装置1の電気的構成>
図4は、実施形態に係る包装装置1の電気的構成を示すブロック図である。図4に示すように、包装装置1は、操作部91と、全体制御部90と、を備えている。
操作部91は、包装装置1を操作する操作者によって操作される。操作者によって操作部91が操作されることで、包装装置1の包装動作に必要な情報が、全体制御部90に入力される。包装装置1の包装動作に必要な情報としては、処方箋に基づく処方データおよび種々の設定情報が挙げられる。設定情報としては、包装物21の幅Wの寸法および印刷内容などが挙げられる。包装装置1の包装動作に必要な情報は、外部のコンピュータから全体制御部90に入力されてもよい。
全体制御部90は、包装装置1の包装動作に必要な情報に基づいて、包装装置1全体の動作を制御する。全体制御部90は、薬剤供給部5、包装部9および印刷部4を制御する。
全体制御部90は、薬剤供給部5に制御信号を送信し、薬剤供給部5が供給すべき薬剤100の種類および数量を指令する。全体制御部90は、包装物21の搬送方向DRにおける幅Wが所定の値となるように、包装部9に制御信号を送信する。幅Wは、たとえば操作部91を介して入力された値であってもよく、または、薬剤100の種類および数量に基づいて全体制御部90が設定した値であってもよい。
包装部9は、包装制御部96を有している。包装制御部96は、全体制御部90からの制御信号に基づいて、ヒータ61a、加圧モータ65および包材搬送モータ82を制御する。これらヒータ61a、加圧モータ65および包材搬送モータ82が適宜駆動および停止することにより、包材2の包装が行なわれる。
印刷部4は、印刷制御部94を有している。印刷制御部94は、全体制御部90からの制御信号に基づいて、サーマルヘッド41、ヘッド接離モータ42、ヘッド移動モータ43およびリボン搬送モータ47aを制御する。サーマルヘッド41が有する発熱素子、ヘッド接離モータ42、ヘッド移動モータ43、およびリボン搬送モータ47aが適宜駆動および停止することにより、包材2に薬剤100に関連する情報が印刷される。
<印刷可能範囲29の例>
図5は、包材2に設定される印刷可能範囲29の例を示す模式図である。
印刷制御部94(図4)は、包材2に、図5中に二点鎖線の矩形で示す印刷可能範囲29を設定する。印刷部4は、印刷可能範囲29内において、包材2に所定の印刷データを印刷可能である。所定の印刷データは、包装物21の収容部22内に収容される薬剤100に関連する情報を含んでいる。薬剤100に関連する情報としては、患者の氏名、薬名および用法などが挙げられる。
印刷可能範囲29は、包装物形成予定部21a内に設定される。包装物形成予定部21aは、包材2上に設定される部分であり、1つの包装物21を構成することが予定されている部分である。包装物形成予定部21aは、搬送方向DRに隣り合う境界形成予定部25aによって規定される。
図5中に二点鎖線で示す境界形成予定部25aは、包材2上に設定される部分であり、搬送方向DRに隣り合う包装物21の境界が形成されることが予定されている部分である。つまり境界形成予定部25aは、短手方向融着部24の搬送方向DRにおける中央部となることが予定されている部分、またはミシン目形成部7によって形成されるミシン目25が形成されることが予定されている部分である。搬送方向DRに隣り合う境界形成予定部25aの間の距離は、包装物21の搬送方向DRにおける幅Wに相当する。
印刷可能範囲29の周囲には、余白が設けられている。印刷可能範囲29の上流側には、上流側余白27が設けられている。上流側余白27は、包装物形成予定部21aにおける上流側の境界形成予定部25aから印刷可能範囲29の上流端29aまでの余白である。印刷可能範囲29の下流側には、下流側余白28が設けられている。下流側余白28は、包装物形成予定部21aにおける下流側の境界形成予定部25aから印刷可能範囲29の下流端29bまでの余白である。
図5中に示す幅w1は、上流側余白27の搬送方向DRにおける幅を示し、幅w2は、下流側余白28の搬送方向DRにおける幅を示している。上流側余白27の幅w1と下流側余白28の幅w2とは、同一であってもよく、または、異なっていてもよい。
<印刷データ110の生成>
図6は、印刷データを生成する処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示すように、まずステップS11において、包装装置1に情報を入力する。ステップS11で包装装置1に入力される情報は、包装対象物である薬剤100に関連する情報であって、薬名、分量、用法および用量を含んでいる。図4を参照して説明した通り、操作者が操作部91を操作することにより必要な情報を全体制御部90に入力してもよい。または、外部のコンピュータから全体制御部90に情報が送信されてもよい。
次にステップS12において、包装物21の幅Wを設定する。ステップS11で入力された情報が包装物21の幅Wに関する情報を含んでいる場合には、その情報に従って、全体制御部90が包装物21の幅Wを設定する。または、ステップS11で入力された薬剤100の種類および数量に関する情報に基づいて、全体制御部90が包装物21の幅Wを設定してもよい。包装物21の幅Wを設定することにより、包材2上に、隣り合う包装物21の境界となることが予定されている境界形成予定部25aの配置が設定される。
次にステップS13において、印刷可能範囲29を設定する。包装物21の幅Wに応じて、図5に示す上流側余白27の幅w1と、下流側余白28の幅w2とが設定される。印刷可能範囲29の上流端29aは、上流側の境界形成予定部25aから幅w1だけ下流側の位置に設定される。印刷可能範囲29の下流端29bは、下流側の境界形成予定部25aから幅w2だけ上流側の位置に設定される。全体制御部90は、搬送方向DRにおいて上流端29aと下流端29bとの間の領域に、印刷可能範囲29を設定する。
包装物21の搬送方向DRにおける幅Wは、変更可能である。全体制御部90は、包装物21の幅Wに対応して、印刷可能範囲29を設定する。幅Wの異なる複数の包装物21に対して同一の印刷可能範囲29が設定されてもよく、この場合、上流側余白27の幅w1および下流側余白28の幅w2が包装物21の幅Wによって異なることになる。または、包装物21の幅Wに関わらず上流側余白27の幅w1および下流側余白28の幅w2を等しく設定することにより、幅Wの異なる複数の包装物21に対して各々異なる印刷可能範囲29が設定されてもよい。
次にステップS14において、印刷データを生成する。印刷データは、包装対象物である薬剤100に関連する情報を含んでいる。ステップS11において入力された情報のうち、少なくとも1つの情報が、印字項目として選択される。たとえば、朝、昼、夕などの用法が、印字項目として選択されてもよい。印刷データは、印刷可能範囲29の搬送方向DRにおける長さから、印字項目よりも上流に存在する印字されない領域を除くことにより、生成される。結果として、印刷データは、搬送方向DRにおける長さが、印刷可能範囲29よりも小さく生成される。全体制御部90が印刷データを生成してもよく、または外部で生成された印刷データを全体制御部90が受信してもよい。
図7は、印刷可能範囲29内における印刷データ110の配置の例を示す模式図である。図7に示す印刷データ110は、印字項目111を含んでいる。印字項目111を印字するために必要な搬送方向DRの長さは、一包装分の印刷可能範囲29の搬送方向DRの長さ(図7に示す幅WA)よりも小さい。印刷可能範囲29は、包装対象物である薬剤100に関連する情報が実際に印刷される実印刷範囲291と、情報が印刷されない空白範囲292とを含んでいる。空白範囲292は、印刷可能範囲29のうち実印刷範囲291を除く範囲である。印字項目111は、実印刷範囲291に印刷され、空白範囲292には印刷されない。
図6に示すステップS14では、実印刷範囲291分の印刷データ110が作成される。印刷データ110は、搬送方向DRにおいて、印刷可能範囲29の下流端29bから、印字項目111を含む範囲にまで亘って配置される。印刷データ110の搬送方向DRにおける下流端110bは、印刷可能範囲29の下流端29bと同じ位置に設定される。実印刷範囲291における搬送方向DRの下流端は、印刷可能範囲29における搬送方向DRの下流端29bに一致している。印刷データ110の搬送方向DRにおける上流端110aは、印刷可能範囲29の上流端29aよりも下流に設定される。
印刷可能範囲29は、搬送方向DRにおいて上流端29aと下流端29bとの間の境界位置29cを有し、印刷データ110の上流端110aは境界位置29cに設定される。境界位置29cは、実印刷範囲291と空白範囲292との境界を成している。
したがって、上述した通り、印刷データ110の搬送方向DRの長さ(図7に示す幅WB)は、印刷可能範囲29の搬送方向DRの長さ(幅WA)よりも小さくなっている。印刷可能範囲29のうち、上流端29aの近傍には、印刷データ110が印刷されない空白範囲292が存在する。この空白範囲292の搬送方向DRにおける長さ(図7に示す幅WC)は、印刷可能範囲29の搬送方向DRの長さ(幅WA)から、印刷データ110の搬送方向DRの長さ、すなわち実印刷範囲291の搬送方向DRの長さ(幅WB)を減じた長さになっている。
図7に示すように、搬送方向DRにおいて、印刷データ110の全体に亘って印字項目111が存在するのではなく、印刷データ110の下流端110bの近傍には印字項目111が存在しない空白範囲が存在する。一方、印刷データ110の上流端110aの近傍には、空白範囲は存在しない。印刷データ110の上流端110aの近傍に、印字項目111が設けられている。
<印刷データ110の印刷>
上記の通り生成された印刷データ110を包材2に印刷する処理について、以下に説明する。図8は、印刷データ110を印刷する処理の流れを示すフローチャートである。
図8に示すように、まずステップS21において、包材2が搬送中であるか否かを判断する。包材2が搬送中であるか否かは、図4に示す包装制御部96が、包材2を搬送方向DRに移動させるように包材搬送モータ82を駆動する制御信号を、包材搬送モータ82に対して送信しているか否かに基づいて、判断される。
包材2が搬送中であると判断されると(ステップS21においてYES)、包材2への印刷が実行されることなく、そのまま処理を終了する。包材2は間欠的に搬送され、包材2が搬送されている間には、包材2への印刷は実行されない。後述する通り、包材2の搬送が停止されている間に、包材2への印刷が行なわれる。
包材2が搬送中ではない、すなわち包材2の搬送が停止していると判断されると(ステップS21においてNO)、次にステップS22において、印刷ヘッドであるサーマルヘッド41(図3,4)を、包材2に圧接する。
図9は、印刷ヘッドを下流端へ移動した状態を示す模式図である。図9および後述する図10〜15において、図中の左右方向が包材2の搬送方向DRを示し、図中の左側が搬送方向DRの上流側を示し、図中の右側が搬送方向DRの下流側を示す。図9〜15では、包材2に対するサーマルヘッド41の移動に着目して説明するために、印刷部4を構成するプラテンローラ44およびインクリボン45は図示を省略されている。
図7を参照して説明した通り、印刷データ110が実際に印刷される実印刷範囲291は、印刷可能範囲29のうち境界位置29cと下流端29bとの間に設定される。印刷データ110を包材2に印刷する際には、まず、サーマルヘッド41を、印刷可能範囲29の下流端29bの位置、すなわち実印刷範囲291の下流端の位置に移動させる。図4に示す印刷制御部94は、サーマルヘッド41を印刷可能範囲29の下流端29bの位置に移動させるようにヘッド移動モータ43を駆動する制御信号を、ヘッド移動モータ43に対して送信する。このとき、サーマルヘッド41は、離隔位置にある。インクリボン45は、搬送されていない。包材2は、搬送されていない。包材2は、加熱部材61および受け部材62によって加圧されていない。
図10は、印刷ヘッドを圧接した状態を示す模式図である。印刷可能範囲29の下流端29b、すなわち実印刷範囲291の下流端へ移動したサーマルヘッド41を、離隔位置から圧接位置へ移動させる。図4に示す印刷制御部94は、サーマルヘッド41をプラテンローラ44へ近づける方向に移動させるようにヘッド接離モータ42を駆動する制御信号を、ヘッド接離モータ42に対して送信する。これにより、図10に示すように、サーマルヘッド41が包材2に圧接される。
図3を参照して、実際にはサーマルヘッド41は、インクリボン45および包材2を介してプラテンローラ44に圧接されることになる。サーマルヘッド41は、インクリボン45を介して、包材2に圧接されている。
次にステップS23において、印刷ヘッドであるサーマルヘッド41を移動する。図11は、印刷ヘッドを移動した状態を示す模式図である。
図11に示すように、サーマルヘッド41を、印刷可能範囲29の下流端29bから境界位置29cへ向けて、搬送方向DRと反対方向に移動させる。すなわち、サーマルヘッド41を、実印刷範囲291の下流端から上流端へ向けて移動させる。印刷制御部94は、ヘッド移動モータ43に対し、搬送方向DRの上流へ向けてサーマルヘッド41を移動させる制御信号を送信する。移動の間、サーマルヘッド41は、圧接位置に維持されている。
サーマルヘッド41の移動中に、サーマルヘッド41の複数の発熱素子が、選択的に発熱する。印刷制御部94は、サーマルヘッド41に対し、発熱素子を発熱させる制御信号を送信する。これにより、図11に示すように、包材2にインクリボン45のインクが転写されて、印字項目が包材2に印刷される(ステップS24、図8)。
このとき、インクリボン45は、搬送されていない。包材2は、搬送されていない。包材2は、加熱部材61および受け部材62によって加圧されていない。印刷部4は、包材2が搬送されていない間に、サーマルヘッド41を搬送方向DRに沿って移動させて、包材2に情報(印字項目)を印刷する。包材2の搬送が停止されている間に印刷することで、印刷品質が向上されている。
次にステップS25において、サーマルヘッド41が実印刷範囲291の上流端に到達したか否かを判断する。ヘッド移動モータ43の回転数に基づいてサーマルヘッド41の移動量を検出してもよく、または実印刷範囲291の上流端の位置(境界位置29c)にセンサを設けてもよい。サーマルヘッド41が実印刷範囲291の上流端に到達していない(ステップS25においてNO)と判断されると、ステップS25の判断が繰り返される。その間、サーマルヘッド41は、実印刷範囲291の下流端から上流端へ向けて移動を継続し、発熱素子が適宜発熱することにより、所望の印字項目が印刷される。
サーマルヘッド41が実印刷範囲291の上流端に到達したと判断されると(ステップS25においてYES)、ステップS26に進み、サーマルヘッド41をプラテンローラ44から離隔させる。すなわち、サーマルヘッド41を包材2から離隔させる。
図12は、印刷ヘッドを離隔した状態を示す模式図である。印刷制御部94は、サーマルヘッド41の搬送方向DRの移動を停止させる制御信号を、ヘッド移動モータ43に対し送信する。印刷制御部94はまた、サーマルヘッド41を圧接位置から離隔位置へ移動させる。具体的には、印刷制御部94は、サーマルヘッド41をプラテンローラ44から離れる方向に移動させるようにヘッド接離モータ42を駆動する制御信号を、ヘッド接離モータ42に対して送信する。図11には、実印刷範囲291の上流端において圧接位置にあるサーマルヘッド41が図示されている。図12には、実印刷範囲291の上流端において離隔位置にあるサーマルヘッド41が図示されている。
サーマルヘッド41が離隔位置に到達すると、印刷制御部94は、サーマルヘッド41の移動を停止させる制御信号を、ヘッド接離モータ42に対し送信する。印刷制御部94はまた、サーマルヘッド41を、印刷可能範囲29の境界位置29c(実印刷範囲291の上流端、空白範囲292の下流端)から、上流端29aへ向けて移動させる。印刷制御部94は、ヘッド移動モータ43に対し、搬送方向DRの上流へ向けてサーマルヘッド41を移動させる制御信号を送信する。空白範囲では、サーマルヘッド41は、包材2から離隔させた状態とされている。
次にステップS27において、サーマルヘッド41が印刷可能範囲29の上流端29aに到達したか否かを判断する。ヘッド移動モータ43の回転数に基づいてサーマルヘッド41の移動量を検出してもよく、または印刷可能範囲29の上流端29aの位置にセンサを設けてもよい。サーマルヘッド41が印刷可能範囲29の上流端に到達していない(ステップS27においてNO)と判断されると、ステップS27の判断が繰り返され、その間、サーマルヘッド41は、印刷可能範囲29の上流端29aへ向けて移動を継続する。移動の間、サーマルヘッド41は、離隔位置に維持されている。
図13は、印刷ヘッドを上流端へ移動した状態を示す模式図である。図13に示すように、包材2の搬送が停止されている間に、サーマルヘッド41を、印刷可能範囲29の下流端29bから上流端29aの位置まで移動させる。サーマルヘッド41が印刷可能範囲29の上流端29aに到達したと判断されると(ステップS27においてYES)、ステップS28に進み、サーマルヘッド41を停止する。印刷制御部94は、サーマルヘッド41の搬送方向DRの移動を停止させる制御信号を、ヘッド移動モータ43に対し送信する。
図14は、印刷ヘッドを上流端へ移動した状態を示す他の模式図である。図12,13に示す例では、実印刷範囲291の上流端(すなわち境界位置29c)において、搬送方向DRのサーマルヘッド41の移動を停止し、その状態で、サーマルヘッド41を圧接位置から離隔位置へ移動している。図14に示す例では、実印刷範囲291の上流端(境界位置29c、空白範囲292の下流端)に到達しても、搬送方向DRのサーマルヘッド41の移動を停止しない。印刷制御部94は、サーマルヘッド41が実印刷範囲291の上流端に到達すると、ヘッド移動モータ43に対しサーマルヘッド41の移動を継続する制御信号を送信し、かつ、ヘッド接離モータ42に対しサーマルヘッド41を圧接位置から離隔位置へ移動させる制御信号を送信する。
サーマルヘッド41が実印刷範囲291から空白範囲292に移動すると、搬送方向DRへのサーマルヘッド41の移動を維持しつつ、サーマルヘッド41を包材2から離隔させる。その結果、サーマルヘッド41は、図14に示すように、包材2の搬送方向DRに対して斜めに移動して、印刷可能範囲29の上流端29aの位置まで移動する。図12,13と比較して、印刷に要する時間を短縮することができる。
サーマルヘッド41が印刷可能範囲29の上流端29aに到達すると、印刷制御部94は、サーマルヘッド41の移動を停止させる制御信号を、ヘッド移動モータ43に対し送信する。
印刷可能範囲29の上流端29aにおいてサーマルヘッド41が停止すると、次にステップS29において、包材2の搬送を開始したか否かが判断される。包材2の搬送を開始していない(ステップS29においてNO)と判断されると、ステップS29の判断が繰り返され、その間、サーマルヘッド41は、印刷可能範囲29の上流端29aの位置において、離隔位置に停止している。
包材2の搬送を開始したと判断されると(ステップS29においてYES)、ステップS30に進み、サーマルヘッド41を印刷可能範囲29の下流端29bの位置へ復帰させる。印刷制御部94は、ヘッド移動モータ43に対し、搬送方向DRの下流へ向けてサーマルヘッド41を移動させる制御信号を送信する。移動の間、サーマルヘッド41は、離隔位置に維持されている。包材2が搬送されている間に、サーマルヘッド41を、包材2から離隔させた状態で、印刷可能範囲29における上流端29aから下流端29bまで移動させる。
図15は、印刷ヘッドを復帰した状態を示す模式図である。図15に示すように、サーマルヘッド41を、次に印刷される印刷可能範囲29の下流端29bの位置まで移動させる。サーマルヘッド41が印刷可能範囲29の下流端29bに到達すると、印刷制御部94がサーマルヘッド41の移動を停止させる制御信号をヘッド移動モータ43に対し送信して、サーマルヘッド41を停止する。
また、ステップS31において、インクリボン45が搬送される。インクリボン45の搬送の開始は、ステップS30の印刷ヘッドの復帰と同じく、包材2の搬送の開始をトリガーとして、行なわれる。つまり、ステップS30の印刷ヘッドの復帰が行なわれた後にインクリボン45の搬送を開始する必要はない。ステップS30における印刷ヘッドの復帰と、ステップS31におけるインクリボン45の搬送とは、包材2が搬送されている間に、同時に行なうことが可能であり、これにより印刷に要する時間が短縮されている。
図16は、インクリボン45の搬送について説明する模式図である。図16では、インクリボン45に対するサーマルヘッド41の移動に着目して説明するために、包材2は図示を省略されている。
図8中のステップS23〜S25および図10〜11を参照して上述した通り、サーマルヘッド41は、実印刷範囲291における搬送方向DRの寸法分移動して、実印刷範囲291に印字項目を印刷する。実印刷範囲291への印刷に伴うサーマルヘッド41の移動距離は、図7にも示す実印刷範囲291の搬送方向DRの長さ(幅WB)である。
図16(a)には、実印刷範囲291の下流端にあるサーマルヘッド41が図示されている。図16(b)には、実印刷範囲291の上流端にあるサーマルヘッド41が図示されている。サーマルヘッド41は、図16(a)に示す位置から、図16(b)に示す位置へ移動しており、この間の移動距離は幅WBである。
図8中のステップS23〜S25および図10〜11に示すサーマルヘッド41の移動中、インクリボン45は搬送されていない。サーマルヘッド41は、インクリボン45に対し、幅WBだけ相対移動する。上述した通り、このサーマルヘッド41の移動中に、包材2への印刷が行なわれる。図16(b)には、インクリボン45のうち、包材2への印刷にインクが使用された部分が、白抜き文字で示されている。
図16(c)には、実印刷範囲291の下流端へ復帰するサーマルヘッド41と、搬送されるインクリボン45とが図示されている。実印刷範囲291へ印字項目を印刷するために使用されるインクリボン45の搬送方向の長さは、実印刷範囲291の搬送方向DRの長さ(幅WB)分である。
次回の印刷のために、未使用のインクリボン45を実印刷範囲291に重ねて配置する必要があるが、そのために必要なインクリボン45の搬送量は、実印刷範囲291における包材2の搬送方向DRの寸法以上であればよい。インクリボン45を、包装物21の幅Wだけ搬送する必要はなく、印刷可能範囲29の搬送方向DRの寸法(幅WA)だけ搬送する必要もない。包材2への印字項目の印刷に伴って、インクリボン45を、実印刷範囲291における搬送方向DRの寸法(幅WB)以上、かつ、印刷可能範囲29における搬送方向DRの寸法(幅WA)未満の、所定距離だけ搬送すれば、次回の印刷に未使用のインクリボン45を使用することが可能になる。
したがって、印刷可能範囲29のうち印字項目が印刷されない空白範囲292の搬送方向DRの寸法(幅WC)の少なくとも一部に相当する長さ分、インクリボン45の搬送量を低減することができる。印刷に使用されていないインクリボン45が搬送されることが抑制され、インクリボン45の無駄な消費が減ることになるので、インクリボン45の使用量を減らすことができる。
インクリボン45が搬送されるとき、サーマルヘッド41は、図15を参照して説明した通り、離隔位置に維持されている。サーマルヘッド41を実印刷範囲291の下流端に復帰させるときのサーマルヘッド41の移動中、および、インクリボン45の搬送中、サーマルヘッド41は、インクリボン45から離隔している。これにより、インクリボン45がサーマルヘッド41で擦れてインクリボン45からインクが剥がれる事態を抑制できるので、次回の印刷に良好な状態のインクリボン45を使用することが可能になる。したがって、印刷品質を向上することができる。
本実施形態では、包材2の搬送が停止されている間に、包材2への印刷が行なわれる。本実施形態の、印刷可能範囲29に対する実印刷範囲291の設定は、包材2の搬送中に印刷する場合にも適用することが可能である。しかし、包材2の搬送中に印刷する場合には、実印刷範囲291の上流端に到達したサーマルヘッド41が離隔しても、インクリボン45と包材2とが貼り付いた状態が継続される可能性がある。この場合、包材2の搬送に伴ってインクリボン45も搬送されてしまい、インクリボン45が無駄に消費されることになる。したがって、包材2の搬送が停止されている間に印刷することで、インクリボン45の無駄な消費を確実に低減でき、インクリボン45の使用量を効果的に減らすことが可能になる。
また本実施形態では、図7を参照して説明したように、印刷データ110の下流端110bを印刷可能範囲29の下流端29bと同じ位置に設定し、実印刷範囲291の下流端を印刷可能範囲の下流端29bに一致させている。インクリボン45の使用量を最も低減するためには、印刷データ110を、印字項目111が含まれる最小の範囲に設定することが考えられる。その場合、実印刷範囲291の下流端が印刷可能範囲29の下流端29bよりも上流に設定されることになり、印刷を開始する前にインクリボン45と包材2との位置合わせのための包材2に対するインクリボン45の相対移動が必要になるため、印刷動作が複雑になる。本実施形態によれば、インクリボン45の使用量を低減できる効果を実現し、かつ、印刷動作を簡素にすることができる。
本実施形態の包装装置1は、薬剤分包装置に適用されている。薬剤分包装置では、処方箋に従って、同じ情報を繰り返し包材2に印刷する機会が多い。したがって、薬剤分包装置に本実施形態の包装装置1を適用することで、インクリボン45の使用量を低減できる効果を、より顕著に得ることができる。
なお、これまでの説明においては、サーマルヘッド41を搬送方向DRの下流から上流へ向けて移動して包材2に情報を印刷する例について説明したが、印刷中のサーマルヘッド41の移動方向は逆であってもよい。つまり、印刷可能範囲29において、実印刷範囲291を上流側に設定し、空白範囲292を下流側に設定し、印刷可能範囲29の上流端29aにおいてサーマルヘッド41を圧接して、その状態でサーマルヘッド41を下流端29bへ向けて搬送方向DRに移動することによって、印刷してもよい。
以上のように本発明の実施形態について説明を行なったが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味、および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。