JP2018117908A - 蒸気温熱具及びその使用方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】水蒸気発生体の位置調整が適切に行える蒸気温熱具を提供する。【解決手段】蒸気温熱具100は、着用者の口と鼻とを覆うマスク本体部101と、マスク本体部101の横方向両端部に接合され、マスク本体部101を着用者の顔に保持させる耳掛け部102と、マスク本体部101の着用者側の面に保持される水蒸気発生体120と、を備え、マスク本体部101が一対の突出部111を有する。【選択図】図1

Description

本発明は、蒸気温熱具及びその使用方法に関する。
近年、口および鼻を覆うマスクの機能が多様化し、様々なマスクが開発されている。中でも、マスクに発熱体を組み込んで鼻や頬を温める機能を付与することにより、マスクによる効果を向上させることが検討されている。例えば、特許文献1には、マスク本体部の縦中心線から左右に離れた位置に、発熱体を設けたマスクが開示されている。
一方、特許文献2には、マスクそのものの機能ではなく、使用前に折りたたまれたマスクを取り出しやすくする観点から、マスク本体部の左右それぞれ外側に、一端がマスク本体部に固定され他端が自由端とされている摘み部が備えられたマスクが開示されている。
特開2006−102145号公報 特開2009−201770号公報
しかしながら、特許文献1に記載されたマスクでは、発熱体による発熱効果を充分に得ることができなかった。本発明者らは、かかる点について鋭意検討を行い、発熱体を設けたマスクから発熱効果を充分に得るためには、発熱体と着用者との位置関係が重要であるといった知見を得た。そして、さらに検討を重ねた結果、従来の発熱体を備えたマスクでは、マスクを装着した状態で当該位置関係を微調整することが困難であるといった新たな課題を見出した。
なお、特許文献2に記載されたマスクは、マスクが折りたたまれた状態から当該摘み部をつまむことによって展開することを目的とするものにとどまるものであり、マスクの装着時を想定したものではなく、またマスクの位置調整に着目するものでもなかった。
本発明は、着用者の口と鼻とを覆う被覆部と、
前記被覆部の横方向両端部に接合され、当該被覆部を前記着用者の顔に保持させる保持部と、
前記被覆部の前記着用者側の面に保持される水蒸気発生体と、
を備え、
前記被覆部が一対の突出部を有する、蒸気温熱具に関する。
本発明によれば、水蒸気発生体の位置調整が適切に行える蒸気温熱具を提供できる。
蒸気温熱マスクを示す斜視図である。 蒸気温熱マスクの使用状態の一例を示す図である。 第1実施形態におけるマスクの一部を着用者側の面からみた平面図である。 第1実施形態におけるマスクの一部を上面(着用者の目側)からみた断面図である。 第1実施形態におけるマスクの変形例を着用者側の面からみた平面図である。 第1実施形態におけるマスクの変形例を着用者側の面からみた平面図である。 第2実施形態におけるマスクに水蒸気発生体を装着する前の着用者側の面からみた一部平面図である。 第2実施形態におけるマスクの一部を上面(着用者の目側)からみた断面図である。 水蒸気発生体の一例を示す断面図である。 通気抵抗測定装置を示す模式図である。 水蒸気発生量を測定する装置を示す模式図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、本明細書中において「〜」は特に断りがなければ以上から以下を表す。また、各実施形態に記載される構成・要素は発明の効果を損なわない限りにおいて適宜組み合わせることもできる。
本実施形態において、シート等の通気度は、以下のようにして計測することができる。
通気度はJIS P8117(2009年改正版)によって測定される値であり、一定の圧力のもとで100mlの空気が6.42cmの面積を通過する時間として定義される。したがって、通気度の数値が大きいことは空気の通過に時間がかかること、即ち通気性が低いことを意味している。逆に、通気度の数値が小さいことは通気性が高いことを意味している。このように、通気度の数値の大小と通気性の高低とは逆の関係を示す。通気度は、王研式通気度計で計測することができる。
なお、本明細書中において、この通気度が30000秒/100ml以上となるものを「難通気」、80000秒/100ml以上となるものを「非通気」であるものとして扱う。
(第1実施形態)
本実施形態における蒸気温熱マスク100は、着用者の口と鼻とを覆うマスク本体部101と、マスク本体部101の横方向両端部に接合され、マスク本体部101を着用者の顔に保持させる耳掛け部102と、マスク本体部101の着用者側の面に保持される水蒸気発生体120と、を備え、マスク本体部101が一対の突出部111を有する。蒸気温熱マスク100は、マスク110と水蒸気発生体120とを組み合わせたものである。
図1は、蒸気温熱マスク100の一例を示す斜視図である。図2は、蒸気温熱マスク100の使用状態の一例を示す図である。図3は、第1実施形態におけるマスク110の一部を着用者側の面からみた平面図である。図4は、第1実施形態におけるマスクの一部を上面(着用者の目側)からみた断面図である。
なお、本実施形態において、蒸気温熱マスク100はマスク110と水蒸気発生体120とが分離され、この水蒸気発生体120を収容体104に出し入れできるものとして記載がされているが、蒸気温熱マスク100は、マスク110の収容体104内部に水蒸気発生体120が封入されたものであってもよい。
〔マスク〕
図1、2に示すように、マスク110は、着用時に鼻と口とを覆うマスク本体部101と、該マスク本体部101の横方向両端部すなわち左右両端に設けられた一対の耳掛け部102と、一対の突出部111と、を備えている。
本実施形態においてマスク110は、着用者の鼻梁に対応する位置に折り畳み線103を有したものとして示しているが、用途等にあわせて、この折り畳み線103を有さない平坦形状のマスク110としてもよい。
以下、マスク110の形状について、この折り畳み線103を有するものを例示しながら説明する。
本実施形態において、マスク本体部101は、シート状であり、さらに具体的には、一枚のシートから形成され、折り畳み線103で左右対称に折られる。使用前は、マスク本体部101は、折り畳み線103に沿って山折りにされて、平面状に折り畳まれた状態となる。
図1、2に示すように、折り畳み線103は、鼻部が凸部となる略円弧状であり、上部と下部が貼り合わされている。マスク本体部101は、折り畳み線103とは反対側の辺から開かれ、シートが重ね合わされた内側の面が着用者側の面となるようにして、着用される。折り畳み線103は、マスク110を着用した際に、マスク本体部101の前方へ突出する。折り畳み線103があると、マスク本体部101の上部が鼻の形状に沿って密着するため、隙間が生じにくくなり、加温加湿効果を高めることができる点から好ましい。
マスク本体部101を形成する一枚のシートとは、単一の構造(即ち1プライ)でもよく、或いは複数枚のシートが積層されて一体的な構造(即ちマルチプライ)でもよい。複数枚のシートを用いることにより、各シートに別個の機能を付与することで、マスク本体部101に種々の機能を付与することができる点から好ましい。複数枚のシートを用いる場合には、各シート同士は、全面接合されたラミネート状態でもよく、シート間が離間した状態でもよい。また、各シート間が離間した状態の場合の各シート同士の接合は、マスク本体部101の形状に沿って各シートの縁をシールしてもよく、縁の一部をポイントシールにより接合するのみでもよい。
本実施形態では、例えば図4に示すように、マスク本体部101が単一の構造の例について説明する。
マスク本体部101の材料は、マスクの技術分野において従来から用いられているものを用いることができ、一定の通気性を有するものであれば特にその種類に制限はない。例えば、不織布やガーゼ等の繊維シートを用いることができ、加工のしやすさや経済性の観点から不織布を用いることが好ましい。不織布の繊維素材としては、例えば、PET(ポリエチレンテレフタレート)等のポリエステル;PE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、エチレンプロピレン共重合体等のポリオレフィン;レーヨン;コットン等から選択される1種又は2種以上の繊維で構成されるものが好ましい。また、不織布としては、前記の1種又は2種以上の素材の繊維を用いて、エアスルー法、スパンボンド法、ニードルパンチ法、メルトブローン法、カード法、熱融着法、水流交絡法、溶剤接着法等により製造されたものを用いることができる。
マスク本体部101は、水蒸気発生体120から発生した水蒸気をマスク110内に滞留させる観点、呼吸を楽にする観点から、適度な通気抵抗を有することが好ましい。
具体的には、マスク本体部101の通気抵抗は、好ましくは5Pa以上であり、より好ましくは20Pa以上であり、さらに好ましくは50Pa以上である。また、マスク本体部101の通気抵抗は、好ましくは200Pa以下であり、より好ましくは190Pa以下であり、さらに好ましくは180Pa以下である。
また、マスク本体部101の通気抵抗は、好ましくは5Pa以上200Pa以下であり、より好ましくは、20Pa以上190Pa以下であり、さらに好ましくは、50Pa以上180Pa以下である。なお、マスク本体部101の構造がマルチプライのときは、複数枚のシートを全て重ね合わせた状態で測定される通気抵抗となる。
マスク本体部101の通気抵抗は、以下のようにして測定できる。
図10に示すように、マスクテスターMTS−2(柴田科学社製)の通気抵抗評価装置本体70上部に、マスク本体部101のシート材から3.5〜5cm角のサイズに切り出したシート101aを配置し、シート固定用治具71で、漏れがないように固定する。測定は、試験面積7cm(内径30mm)、試験流量10L/min.にて10秒間行い、シート101aへの空気流入側(入口側)と空気流出側(出口側)との差圧から通気抵抗を求める。
マスク本体部101の坪量は、マスク110の内部が透けて見えてしまうことを防止する観点や保温性、柔軟性、厚み、シート強度をバランスよく高める観点から、坪量が5g/m以上であることが好ましく、10g/m以上であることがより好ましく、30g/m以上であることがさらに好ましく、また、200g/m以下であることが好ましく、150g/m以下であることがより好ましく、120g/m以下であることがさらに好ましい。また、坪量が5g/m以上200g/m以下であることが好ましく、10g/m以上150g/m以下であることがより好ましく、30g/m以上120g/m以下であることがさらに好ましい。
本実施形態において、蒸気温熱マスク100は、水蒸気発生体120を備える。水蒸気発生体120は、マスク本体部101に組み込まれていてもよく、また、マスク本体部101に水蒸気発生体120を固定する固定手段を有し、使用時に固定して使用するものであってもよいが、本実施形態においては使用時に固定するものとなっている。
図1、2に示す実施形態においては、マスク本体部101は、シール部分107により、着用者側の面に収容体104が設けられている。収容体104は、水蒸気発生体120を出し入れ自在に収容するものである。これにより、マスク110を使用した後、水蒸気発生体120を使用前のものと取り替えることで、何回もマスク110を使用することができる。
収容体104の形成方法としては、たとえば、図3に示されるように、横方向に並んだ2つの水蒸気発生体120の上部を除く外周を囲うシール部分107aにより形成することができる。具体的には、マスク本体部101の着用者側の面に収容体104を構成するシートを重ね合わせ、図3に示したシール部分107aを熱融着等によりシールする方法や、マスク本体部101を作製する際に、収容体104を構成するシートを重ね合わせ、マスク本体部101縦中心部の折り畳み線103の部分をシールし、その後図3に示したシール部分107aをシールする方法等が挙げられる。これにより、マスク本体部101の上方から水蒸気発生体120を挿入できるポケット状の収容体104を形成することができる。
なお、収容体104の形成方法は、これに限られない。図5、図6は、第1実施形態におけるマスクの変形例を着用者側の面からみた平面図である。すなわち、図5、6に示されるように、収容体104は、水蒸気発生体120の下方の一部分が固定されるような位置に、マスク本体部101を構成するシートと、収容体104を構成するシートとを固着したシール部分107b、シール部分107cにより、形成されたものであってもよい。図5には、マスク本体部101の中央部横方向であって、水蒸気発生体120の下方に接するように延在する直線と、水蒸気発生体120の耳掛け部102側の側面下部の一部に延在する縦方向の直線とからなるシール部分107bが示されている。図6には、マスク本体部101の中央部よりやや上方の横方向であって、水蒸気発生体120の下部の形状に沿って、変形した直線状のシール部分107cが示されている。
本実施形態において、収容体104は、マスク本体部101の折り畳み線103近傍及びマスク本体部101の上端部近傍に固定されていることが、水蒸気発生体120を所定の位置でマスク本体部101に固定でき、着用者の鼻から頬にかけてのマスク110内の空間を加温加湿しやすくなる点から好ましい。
本実施形態において、収容体104は、上端部又は耳掛け部102側に水蒸気発生体120を出し入れできるよう開口部を有し、その他の端部はマスク本体部101に固定されている。開口部の位置は、特に限定されないが、マスク110着用時において水蒸気発生体120が収容体104外に出ないものであればよい。また、収容体104の大きさは、水蒸気発生体120を収容しつつ水蒸気発生体120の位置を固定できるものであればよい。
収容体104は、通気性を有し、マスク本体部101と同様の材料とすることができる。収容体104の通気抵抗は、過度な発熱を防止しつつ、水蒸気発生体120による加温加湿性能をマスク110内に効果的に付与する観点から、1Pa以上100Pa以下であることが好ましく、より好ましくは1Pa以上50Pa以下であり、さらに好ましくは1Pa以上30Pa以下である。
耳掛け部102は一対で用いられ、マスク本体部101の横方向(長手方向)の左右端部にそれぞれ設けられている。耳掛け部102によりマスク本体部101を着用者の顔に保持させることができる。
本実施形態において、耳掛け部102は、図1,2に示すように、ゴム紐のような伸縮性をもった紐状の材料をマスク本体部101の端部に形成された例について説明するが、マスク本体部101と一体となった伸縮性を有する部材を用いてもよい。
耳掛け部102は、マスク本体部101と同様な材料であってもよく、異なる材料であってもよい。
本実施形態において、一対の突出部111はマスク本体部101の横方向における両側領域にそれぞれ配置されている。これによりマスク110の外観を良好にするとともに、着用者が着用した状態で、左右の手により、一対の突出部111をそれぞれつまむことができる。突出部111とは、着用者が指でつまめる程度にマスク本体部101から突出したものであり、着用者がマスク110を装着した状態で突出部111をつまむことにより、マスク本体部101の位置調整ができるものである。突出部111の形状は、突起状、凸部が連続したもの、羽状、紐状などが挙げられる。マスク本体部101との接合性、つまみ易さと外観とのバランス、軽量性などの観点から、羽状であることが好ましい。また、突出部111は、自立する場合に限られず、自重により重力方向に傾いたり、マスク本体部101または耳掛け部102に重ね合わされてもよい。
なお、両側領域とは、マスク本体部101の左右端部を含む領域であり、折り畳み線103よりもマスク本体部101の左右端部に近い領域をいう。これにより、着用者がマスク110を装着した状態を維持したまま、左右から突出部111をつまみ易くなる。
また、両側領域において、なかでも、一対の突出部111が、マスク本体部101と耳掛け部102との接合部にそれぞれ設けられていることが好ましい。これにより、着用者がマスクを装着した状態を維持したまま、マスク本体部101全体を移動させ、位置調整がしやすくなる。
また、本実施形態において、突出部111はマスク本体部101の縦方向に沿って延在している。これにより、装着された形状を大きく変形させずに、マスク本体部101の位置調整が行えるようになる。なお、マスク本体部101の縦方向とは、マスク本体部の短手方向である。縦方向に沿うとは、縦方向に従うことであり、縦方向に対し厳密に平行であるものに限られず、また、直線的に延在するものに限られず、一部に曲線部、折り曲がり部等があってもよい。
なお、本実施形態において、突出部111はマスク本体部101の縦方向の一方の端部から他方の端部まで延在しているが、突出部111はマスク本体部101の縦方向の一部において延在しているものであってもよい。また、この場合、突出部111は、マスク本体部101を横方向に二分する横中央線lよりも上側領域にあることが好ましい(図1(a)参照)。
図1(a)に示すように、マスク本体部101と突出部111との境界から、突出部111の端縁までの高さd1が最大となる部分において、当該高さd1が2mm以上、54mm以下であることが好ましい。また、つまみやすさの観点から、高さd1は、3mm以上であることがより好ましく、4mm以上であることがさらに好ましく、12mm以上であることがことさら好ましく、25mm以上が一層好ましい。。一方、外観、装着感を良好に維持する観点から、高さd1は、50mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることがさらに好ましい。
マスク本体部101と突出部111との境界とは、突出部111がマスク本体部101からマスク着用者側とは反対側に突出し始める箇所である。マスク本体部101と突出部111との境界から、突出部111の端縁までの高さとは、マスク本体部101を平坦な状態にしたときに垂直方向に突出部111を突出させたときの高さである。言い換えると、マスク本体部101と突出部111との境界点における接線から垂直方向における突出部111の端部までの長さである。
また、図1(a)では突出部111の平面形状が円弧状である例が示されているが、図1(b)は、突出部111が頂点を有する山状である例が示されている。
また、図1(c)に示すように、さらに、突出部111のマスク本体部101を横方向に二分する横中央線よりも上側領域においてマスク本体部101と突出部111との境界から、突出部111の端縁までの高さd2が最大となる部分において、当該高さd2が2mm以上、54mm以下であることがより好ましい。すなわち、突出部111のマスク本体部101を横方向に二分する横中央線よりも上側領域において、高さd2を充足することで、マスク本体部101を上方向から易くし、その結果、微妙な位置調整がしやすくなる。高さd2は、つまみやすさの観点から、高さd2は、3mm以上であることがより好ましく、8mm以上であることがさらに好ましく、15mm以上であることがことさら好まし。一方、外観、装着感を良好に維持する観点から、高さd2は、50mm以下であることがより好ましく、40mm以下であることがさらに好ましい。
また、図1(c)では、突出部111の平面形状が三角状のである例が示されているが、突出部111の平面形状は、これらの提示に限定されるものではない。
突出部111がマスク本体部101と一体に形成されていることが好ましい。すなわち、突出部111がマスク本体部101と同じ材料で形成されることにより、突出部111とマスク本体部101との接合性が良好となり、突出部111による位置調整が安定しするようになる。またマスク本体部101と突出部111との接合部が目立たなくなり、外観も良好にできる。
また、突出部111の伸縮率が、耳掛け部102の伸縮率よりも低いことが好ましい。これにより、突出部111をつまんだ際の力がマスク本体部101に伝わり易くなり、位置調整が安定的に行えるようになる。
さらに、位置調整を安定させる観点から、突出部111の伸縮率は、64%以下であることが好ましく、50%以下であることがより好ましく、伸縮性を有さないことがさらに好ましい。
〔水蒸気発生体〕
水蒸気発生体120は、マスク本体部101の着用者側の面に保持される。水蒸気発生体120の位置は、着用した際にマスク本体部101の肌側に、鼻部と頬部の間の顔の窪みと水蒸気発生体120で囲まれた空間を生じさせ、水蒸気発生を抑制せずにマスク110内の温度と絶対湿度を高める観点から、図1,2に示すように、マスク本体部101の折り畳み線103近傍及びマスク本体部101の上端近傍に、左右対称に取り付けられることが好ましい。折り畳み線103近傍及びマスク本体部101の上端部近傍とは、折り畳み線103およびマスク本体部101の上端部に接する場合に限られず、折り畳み線103およびマスク本体部101の上端部の周囲の領域を示しており、マスク本体部101に取り付けられた水蒸気発生体120が着用者の鼻部を覆う領域である。また、水蒸気発生体120は、着用者の頬部まで達しても構わないが、頬部のみを覆うものではないことが、着用した際にマスク本体部101の肌側に、鼻部と頬部の間の顔の窪みと水蒸気発生体120で囲まれた空間が生じ、水蒸気発生を抑制せずにマスク110内の温度と絶対湿度を高める観点から好ましい。
水蒸気発生体120の位置は、マスク110を装着した際に水蒸気発生を抑制せずにマスク110内の温度と絶対湿度を高める観点から、水蒸気発生体120の鼻側端部が直線状である場合は、当該直線の両端の折り畳み線103からの各最短距離の平均が、また、水蒸気発生体120の鼻側端部が曲線状である場合は、当該曲線の折り畳み線103からの最短距離が、15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。また、水蒸気発生体120の位置は、同様の観点から、水蒸気発生体120の上側端部のマスク本体部101の上端部からの最短距離が15mm以下であることが好ましく、10mm以下であることがより好ましく、5mm以下であることがさらに好ましい。
また、水蒸気発生体120の平面形状は、特に限定されず、円形、多角形等であってもよい。製造効率、取り扱い易さ、加温加湿効果の観点から、長方形、略正方形等の四角形が好ましく、取り扱いやすさの観点から略正方形がより好ましい。また、水蒸気発生体120の鼻側端部が直線状である場合、マスク本体部101の折り畳み線103の水蒸気発生体120に接する部分は直線状であることが好ましい。
水蒸気発生体120をマスク110に対して着脱できるような態様とする場合、水蒸気発生体120は、使用前は、酸素遮断袋に入っている。
酸素遮断袋は、その全体が酸素バリア性を有し、水蒸気発生体120が空気中の酸素と接触しないようになっている。酸素遮断袋の酸素バリア性の材料としては、例えばその酸素透過係数(ASTM D3985)が10cm・mm/(m・day・MPa)以下、特に2cm・mm/(m・day・MPa)以下であるようなものが好ましい。具体的には、エチレン−ビニルアルコール共重合体やポリアクリロニトリル等のフィルム、又はそのようなフィルムにセラミック若しくはアルミニウム等を蒸着したフィルム等が挙げられる。
また、水蒸気発生体120がマスク110に対して封入されている態様を採用する場合は、このマスク110全体を酸素遮断袋に封入して、水蒸気発生体120と空気中の酸素との接触を避ければよい。
図9に示すように、水蒸気発生体120は内部に水蒸気発生部121を収容している。本実施形態において、水蒸気発生体120は、水蒸気発生部121、およびこれを収容する袋体122を有している。袋体122は、着用者側(肌側)の面に第1シート122A、及び着用者側(肌側)の面とは反対側の面に第2シート122Bを備える。
なお、水蒸気発生体120は、空気中の酸素と反応することにより、水蒸気を発生しながら発熱するものである。
水蒸気発生部121は種々の形態をとり得る。水蒸気発生部121は、例えば、粉体の混合物、抄造シートなどのシート状、または基材に分散液等を塗布した塗工シートのいずれであってもよい。
水蒸気発生部121は、被酸化性金属、吸水剤、水、電解質、その他必要に応じて反応促進剤等を含んでいる態様が挙げられる。
水蒸気発生部121が空気と接触すると、それに含まれている被酸化性金属の酸化反応が起こり、熱が発生する。この熱によって水蒸気発生部121に含まれている水が加熱されて所定温度の水蒸気となり、袋体122を通じて外部へ放出される。水蒸気は、袋体122のうち通気性部位から外部へ放出される。
被酸化性金属は、酸化反応熱を発する金属であり、例えば、鉄、アルミニウム、亜鉛、マンガン、マグネシウム、及びカルシウムから選ばれる1種又は2種以上の粉末あるいは繊維が挙げられる。中でも、取り扱い性、安全性、製造コスト、保存性及び安定性の点から鉄粉が好ましい。鉄粉としては、例えば、還元鉄粉、及びアトマイズ鉄粉から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
被酸化性金属が粉末である場合、酸化反応が効率的に行われるという観点から、その平均粒径が、0.1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましく、20μm以上であることがさらに好ましい。同様の観点から、300μm以下であることが好ましく、200μm以下であることがより好ましく、150μm以下であることがさらに好ましい。
さらに、塗工性を良好にする観点から、平均粒径が10μm以上200μm以下であることが好ましく、平均粒径が20μm以上150μm以下であることがより好ましい。
また、繊維状物等の保水材への定着性、反応のコントロールを良好にする観点から、粒径が0.1〜150μmのものを50質量%以上含有するものを用いることも好ましい。
なお、被酸化性金属の粒径は、粉体の形態における最大長さをいい、篩による分級、動的光散乱法、レーザー回折・散乱法等により測定される。
水蒸気発生部121における被酸化性金属の含有量は、坪量で表して、100g/m以上であることが好ましく、200g/m以上であることがより好ましい。また、水蒸気発生部121における被酸化性金属の含有量は、坪量で表して3000g/m以下であることが好ましく、1600g/m以下であることがより好ましい。
また、好ましくは、100g/m以上3000g/m以下であり、さらに好ましくは、200g/m以上1600g/m以下である。これにより、水蒸気発生体120の発熱温度を所望の温度に上昇させることができる。
ここで、被酸化性金属の含有量は、JIS P8128に準じる灰分試験や、熱重量測定器で求めることができる。他に外部磁場を印加すると磁化が生じる性質を利用して振動試料型磁化測定試験等により定量することができる。
吸水剤としては、水の保持が可能なものであればその種類に特に制限はないが、例えば、炭素成分、繊維状物、吸水性ポリマー、及び吸水性の粉体から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。吸水剤は、水蒸気発生部121の形態に応じて適切なものが用いられる。
炭素成分としては、保水能、酸素供給能、及び、触媒能を有するものを用いることができ、例えば、活性炭、アセチレンブラック、及び黒鉛から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。このなかでも、活性炭が好ましく、椰子殻炭、木粉炭、及びピート炭から選ばれる1種又は2種以上の微細な粉末状物又は小粒状物がより好ましい。中でも、良好な加温加湿効果を得る観点から、木粉炭がさらに好ましい。
吸水剤は、平均粒径が10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがさらに好ましい。また、吸水剤は、平均粒径が200μm以下であることが好ましく、さらには、100μm以下であることが好ましい。
また、吸水剤は平均粒径が10μm以上200μm以下であることが好ましく、平均粒径が12μm以上100μm以下であることがより好ましい。
なお、吸水剤の平均粒径は、粉体の形態における最大長さをいい、動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。炭素成分は粉体状の形態のものを用いることが好ましいが、粉体状以外の形態のものを用いることもでき、例えば、繊維状の形態のものを用いることもできる。
繊維状物としては、天然又は合成の繊維状物を特に制限無く用いることができる。
天然の繊維状物としては、例えばコットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わら等の植物繊維が挙げられる。また羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維等の動物繊維が挙げられる。更に、石綿等の鉱物繊維が挙げられる。
一方、合成の繊維状物としては、例えばレーヨン、ビスコースレーヨン、キュプラ、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート、プロミックス、塩化ゴム、塩酸ゴム等の半合成繊維が挙げられる。またナイロン、アラミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンに加え、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリロニトリル、アクリル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等の合成高分子繊維が挙げられる。更に金属繊維、炭素繊維、ガラス繊維等を用いることもできる。これらの繊維は単独でまたは混合して用いることもできる。これらの中でも、被酸化性金属や反応促進剤との定着性、水蒸気発生部121の柔軟性、酸素透過性、シート形態の維持機能、製造コスト等の点から、木材パルプ、コットン、ポリエチレン繊維、ポリエステル繊維が好ましく用いられる。また、木材パルプ、コットンは、鉄粉等の固体物を担持、固定化する機能を有している。
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持できる架橋構造を持つ親水性のポリマー等が挙げられる。
吸水性の粉体としては、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、おがくず、アルミナ、シリカゲル、及びパルプ粉末から選ばれる1種又は2種以上が挙げられる。
水蒸気発生部121がシート状である場合には、吸水剤として繊維状物を用いることが好ましい。この理由は、繊維状物が保水材としての機能と、水蒸気発生部121がシート形態を維持する機能とを兼ね備えるからである。その結果、被酸化性金属の偏りが起こりにくくなり、水蒸気発生部121はその発熱温度分布が均一になる。
水蒸気発生部121が粉体からなる混合物である場合には、吸水剤として高吸収性ポリマー、バーミキュライト、ケイ酸カルシウム、シリカゲル、シリカ系多孔質物質、アルミナ、木粉などを用いることが好ましい。
吸水剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、好ましくは0.3質量部以上であり、より好ましくは1質量部以上であり、さらに好ましくは3質量部以上である。また、吸水剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、好ましくは100質量部以下であり、より好ましくは80質量部以下であり、さらに好ましくは60質量部以下である。
また、吸水剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、0.3質量部以上100質量部以下が好ましく、1質量部以上80質量部以下がより好ましく、3質量部以上60質量部以下がさらに好ましい。こうすることで、得られる水蒸気発生体120中に、酸化反応を持続させるために必要な水分を蓄積できる。また、水蒸気発生部121への酸素供給が十分に得られて発熱効率が高い水蒸気発生体120が得られる。また、得られる発熱量に対する水蒸気発生体120の熱容量を小さく抑えることができるため、発熱温度上昇が大きくなり、所望の温度上昇が得られ、発熱反応を促進させることができる。
なお、吸水剤の含有量は、坪量で表して、4g/m以上290g/m以下であることが好ましく、更に7g/m以上160g/m以下であることが好ましい。このようにすることで、水蒸気発生部121の厚みを薄くすることができ、製品として嵩張らず、柔軟性がでる。たとえば、水蒸気発生部121の厚みを0.1mm以上2mm以下とすることができる。
電解質としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の硫酸塩、炭酸塩、塩化物又は水酸化物等が挙げられる。これらの中でも、導電性、化学的安定性、生産コストに優れる点からアルカリ金属、アルカリ土類金属又は遷移金属の塩化物が好ましく用いられ、特に塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化第一鉄、塩化第二鉄が好ましく用いられる。
水蒸気発生部121は、水を含む。水は、電解質水溶液(たとえば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の水溶液)由来のものであってもよく、また、水単独で、水蒸気発生部121に添加されたものでもよく、特に限定されない。
水蒸気発生部121における水分量は、被酸化性金属100質量部に対し、35質量部以上200質量部以下であることが好ましい。水蒸気発生部121の水分量を被酸化性金属100質量部に対し、200質量部以下とすることで、水蒸気発生部121が良好に発熱し、発熱温度の立ち上がりが速くなる(昇温時間が速くなる)。また、水蒸気発生部121の水分量を被酸化性金属100質量部に対し、35質量部以上とすることで、水蒸気発生部121の発熱反応に必要な水分量を確保でき、水蒸気発生部121の発熱反応を良好に持続させることができる。
このように、水蒸気発生部121の水分量を被酸化性金属100質量部に対し、35質量部以上、200質量部以下とすることで、良好な発熱状態の水蒸気発生部121とすることができる。すなわち、水蒸気発生部121の水分量は発熱速度を左右する。被酸化性金属100質量部に対し、水分量を35質量部以上、200質量部以下とすることで良好に発熱し、発熱温度の立ち上がりが速く、発熱温度が持続する。
同様の観点から、水蒸気発生部121の水分量は被酸化性金属100質量部に対し、40質量部以上であることがより好ましく、50質量部以上であることがさらに好ましい。また、水蒸気発生部121の水分量を被酸化性金属100質量部に対し、200質量部以下であることが好ましく、150質量部以下であることがより好ましく、100質量部以下であることがさらに好ましく、80質量部以下であることがことさらに好ましい。
また、水蒸気発生部121の水分量は被酸化性金属100質量部に対し、40質量部以上150質量部以下であることがより好ましく、50質量部以上100質量部以下であることがさらに好ましく、50質量部以上80質量部以下であることがことさらに好ましい。
水蒸気発生部121は、上述した各成分に加えて、増粘剤、界面活性剤、薬剤、凝集剤、着色剤、紙力増強剤、pH調整剤(例えば、リン酸三カリウムなど)、嵩高剤等を含むこともできる。
増粘剤として、水分を吸収して稠度を増大させるか、チキソトロピー性を付与する物質を用いることができ、アルギン酸ソーダ等のアルギン酸塩、アラビアゴム、トラガカントゴム、ローカストビーンガム、グアーガム、カラギーナン、寒天、キサンタンガムなどの多糖類系増粘剤;デキストリン、α化澱粉、加工用澱粉などの澱粉系増粘剤;カルボキシメチルセルロース、酢酸エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース又はヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体系増粘剤;ポリビニルアルコール(PVA)などの増粘剤;ステアリン酸塩などの金属石鹸系増粘剤;ベントナイトなどの鉱物系増粘剤等から選ばれた1種又は2種以上の混合物を用いることができる。なかでも、水蒸気発生部121中の水分量を一定に維持する観点から、多糖類系増粘剤が好ましく、キサンタンガムが好ましい。
水蒸気発生部121が塗工シートの場合、増粘剤の含有量は、塗工し易さの点から、被酸化性金属100質量部に対して、0.1質量部以上が好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましい。また、増粘剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、5質量部以下が好ましく、4質量部以下であることがより好ましい。そして、増粘剤の含有量は、被酸化性金属100質量部に対して、0.1質量部以上5質量部以下が好ましく、0.2質量部以上4質量部以下であることがより好ましい。
また、水蒸気発生部121が、シート状である場合、多数の孔及び/又は切り込みが形成されていることが好ましい。これによってシート状の水蒸気発生部121が薄くても十分に高い発熱特性が得られ、所望の水蒸気放出特性が得られる。当該孔の面積は、0.01〜10mm、特に、0.1〜8mmであることが、十分な発熱特性が得られることから好ましい。同様の理由により、孔は、シート状の水蒸気発生部121に0.1〜20個/cm、特に1〜15個/cm形成されていることが好ましい。孔の形状は、例えば円形、矩形、多角形、楕円形、長円形又はこれらの2種以上の組み合わせなどが挙げられる。一方、切込みを形成する場合、その長さは1〜50mm、特に5〜30mmとすることが好ましい。
水蒸気発生部121は、水蒸気発生体120の第1シート122Aと第2シート122Bを備える袋体122に収容されている。すなわち、水蒸気発生体120は、第1シート122Aと第2シート122Bとを含んで構成されており、これらの第1シート122Aと第2シート122Bの周縁部を好ましくは密閉接合することで袋体122が構成されている。第1シート122Aと第2シート122Bの周縁部以外の領域は非接合領域であり、非接合領域内に水蒸気発生部121が配置される。
本実施形態においては、この水蒸気発生部121について以下の構成が採用される。
すなわち、水蒸気発生体120において、水蒸気発生部121の着用者側の面に第1シート122Aが配置され、この第1シート122Aの通気度が7000秒/100ml以下であり、また、水蒸気発生部121の着用者側の面と反対側の面上に第2シート122Bが配置され、この第2シート122Bの通気度が8000秒/100ml超である。
これらの構成について、以下詳述する。
本実施形態では、水蒸気発生体120の着用者側に位置する面は第1シート122Aとなる。
ここで、第1シート122Aの通気度は、7000秒/100ml以下である。第1シート122Aの通気度は、水蒸気発生体120と鼻部及び頬部の間の顔の窪みで囲まれた空間を保持し、通気性を確保すると共に、水蒸気発生体120からの水蒸気を袋体122外部に多量に放出しやすくする観点から、好ましくは5000秒/100ml以下であり、より好ましくは2500秒/100ml以下であり、さらに好ましくは1000秒/100ml以下であり、さらに好ましくは600秒/100ml以下であり、さらに好ましくは10秒/100ml以下であり、さらに好ましくは5秒/100ml以下であり、ことさらに好ましくは0秒/100mlである。
このような通気度を有する第1シート122Aとしては、例えば透湿性は有するが透水性を有さない合成樹脂製の多孔性シートを用いることが好適である。具体的には、ポリエチレンに炭酸カルシウム等を含有させ延伸したフィルムを用いることができる。かかる多孔性シートを用いる場合には、多孔性シートの外面にニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、及び、スパンボンド不織布から選択される1種又は2種以上の不織布を始めとする各種の繊維シートをラミネートして、第1シート122Aの風合いを高めてもよい。
また、第1シート122Aは、上記の通気度を満足すれば、その一部が通気性を有しない非通気性シートであってもよい。
第2シート122Bは、その一部が通気性を有する通気性シートであってもよいし、通気性を有しない非通気性シートであってもよいが、全体としては通気性の低いシートが採用される。具体的にはこの第2シート122Bの通気度として8000秒/100ml超の条件が採用されるが、効果的にマスク本体部101内を安定的に加温加湿できる観点から、非通気性シートであることが好ましい。
第2シート122Bは、上記の通気度を満足すれば、用途に応じ、一層又は多層の合成樹脂製のフィルムや、該一層又は多層の合成樹脂製のフィルムの外面にニードルパンチ不織布、エアスルー不織布、及びスパンボンド不織布から選択される1種又は2種以上の不織布を始めとする各種の繊維シートをラミネートして、第2シート122Bの風合いを高めることもできる。具体的には、ポリエチレンフィルムとポリエチレンテレフタレートフィルムからなる2層フィルム、ポリエチレンフィルムと不織布とからなるラミネートフィルム、ポリエチレンフィルムとパルプシートからなるラミネートフィルムなどが用いられるが、ポリエチレンフィルムとパルプシートからなるラミネートフィルムが殊更に好ましい。
第2シート122Bは、上述の通気度の値を満足すれば、第1シート122Aと同様の素材を用いることができるし、あるいは、異なる素材を用いることができる。
また、第2シート122Bの通気度は、10000秒/100ml以上であることが好ましく、30000秒/100ml以上とすることがより好ましく、80000秒/100ml以上とすることがより好ましい。第2シート122Bの通気性をこのように設定することで、水蒸気発生部121で発生した蒸気を第1シート122A側から効率よく放出することができ、水蒸気発生体120の膨張を抑制することができる。
なかでも、被酸化性金属の酸化反応を良好とし、第1シート122A側から多量の水蒸気を発生し易くする観点から、第1シート122Aの通気度を2500秒/100ml以下とし、第2シート122Bの通気度を80000秒/100ml以上とすると殊更に好ましい。
この場合、水蒸気発生部121の着用者側に位置する面と反対側の面上、すなわち水蒸気発生部121から水蒸気発生体120の着用者とは反対側の最外層までの間に、非通気性又は難通気性のシート、より好ましくは、非通気性のシートが配置されている。これにより、水蒸気発生部121により発生した水蒸気が、マスク110の外部に漏れることを抑制し、マスク110内部、すなわち着用者側に、水蒸気を付与することができる。
水蒸気発生部121の製造方法の例について、以下、説明する。
水蒸気発生部121が例えばシート状である場合には、例えば本出願人の先の出願にかかる特開2003−102761号公報に記載の湿式抄造法や、ダイコーターを用いたエクストルージョン法を用いることができる。この場合には、まず、被酸化性金属、吸水剤及び反応促進剤を含む成形シートを湿紙抄造法によって形成し、この成形シートに電解質水溶液を添加することでシート状の水蒸気発生部121が得られる。得られたシート状の水蒸気発生部121は1枚で用いてもよく、或いは複数枚を重ねて用いてもよい。或いは1枚の水蒸気発生部121を折り畳み、折り畳まれた複数枚の水蒸気発生部121を重ねて使用してもよい。
水蒸気発生部121が粉体により構成される場合には、構成材料を均一混合することで、粉体の水蒸気発生部121が得られる。より具体的には、はじめに高吸収性ポリマー等の吸水剤と被酸化性金属とを均一混合し、そこに電解質水溶液を添加して、吸水剤の表面に被酸化性金属を付着させる。その後、残りの材料である反応促進剤等を添加することで水蒸気発生部121を調製することができる。このようにして水蒸気発生部121を調製することで、酸化反応の立ち上がり時間が早くなり、単位時間当たりの水蒸気の蒸散量が容易に最大となる。
また、水蒸気発生部121が、塗工シートからなる場合は、例えば本出願人の先の出願に係る特開2013−146554号公報に記載の方法で、保水シートに発熱粉体水分散液を塗工して、発熱層と保水シートとを備える発熱物の連続長尺物を任意の大きさに裁断して得られるものであってもよい。水蒸気発生部121は、1枚でもよく、複数枚を積層させた多層状態で収容してもよい。
ここで、水蒸気発生部121が、塗工シートからなる場合の水蒸気発生体120の構成について、以下、説明する。
図9に示すように、水蒸気発生部121は、基材層121Bと保水シート121Cとの間に、水蒸気発生層121Aを有している。水蒸気発生層121Aと保水シート121Cは直接接触している。水蒸気発生体120は、第1シート122A及び第2シート122Bを有する袋体122内に、保水シート121C側、すなわち第1シート122A側が着用者の肌側に位置し、基材層121Bが第2シート122B側に配置されるよう、水蒸気発生部121を備えている。これにより水蒸気発生部121からの蒸気を第1シート122Aから効率よく排出することができる。
なお、水蒸気発生層121Aは、保水シート121Cの一方の面に設けられてもよいし、保水シート121C及び基材層121Bに挟まれた形で設けられていてもよい。図9には、水蒸気発生層121Aが保水シート121Cと基材層121Bに挟まれた形で設けられている例を示す。
保水シート121Cは、水を含有している。水の含有量は、たとえば、当該保水シート121Cの最大吸水量の10質量%以上45質量%以下とすることができる。
保水シート121Cの最大吸水量は、以下のようにして算出できる。
保水シート121Cを25cmのサイズにカットした質量(W)を測定した後、5質量%塩化ナトリウム水溶液に5分間浸漬する。ピンセットで取り出して、1分間空気中に吊り下げ放置して抱えきれない水分をしたたり落とした後、質量(W)を測定し、下記の式より最大吸水量(Wmax)を算出する。
max=W−W
また、保水シート121Cに含まれる水分量は、坪量で表して、50〜350g/mが好ましく、更に180〜260g/mであることがより好ましい。保水シート121Cに含まれる水分量は水蒸気発生源となるため、保水シート121Cに含まれる水分量を、坪量で表して、好ましくは50g/m以上とすることで、良好な蒸気発生量を確保できる。また、保水シート121Cは、吸水により通気抵抗(吸水膨潤により、乾燥時に比べて通気性が下がる)が発生する。そのため、坪量で表して、好ましくは350g/m以下とすることで、保水シート121Cから蒸気を放出しやすくすることができ、加えて、水蒸気発生層121Aへの通気性が十分に確保されるため、酸素供給が十分に得られて発熱効率が高い水蒸気発生体120が得られる。
また、保水シート121Cの通気度は、水分を含んだ状態の通気度で500秒/100ml以下であることが好ましく、通気性、蒸気の通しやすさを考慮すると、300秒/100ml以下であることがより好ましく、50秒/100ml以下であることがさらに好ましい。
なお、水分を含んだ状態(すなわち、水分量が当該保水シート121Cの最大吸水量の15質量%以上30質量%以下)の通気度下限値は、たとえば、1秒/100mlである。
ここで、保水シート121Cとしては、水分の吸収保持が可能であり、柔軟性を有するシート材料が用いられる。そのような材料としては、例えば繊維を原料とする紙、不織布、織物、編み物等の繊維シートが挙げられる。またスポンジ等の多孔体などが挙げられる。前記の繊維としては、例えば植物繊維や動物繊維などの天然繊維を主成分とするものや化学繊維を主成分とするもの挙げられる。植物繊維としては、例えばコットン、カボック、木材パルプ、非木材パルプ、落花生たんぱく繊維、とうもろこしたんぱく繊維、大豆たんぱく繊維、マンナン繊維、ゴム繊維、麻、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、羅布麻、椰子、いぐさ、麦わらから選択される1種又は2種以上が挙げられる。動物繊維としては、例えば羊毛、やぎ毛、モヘア、カシミア、アルパカ、アンゴラ、キャメル、ビキューナ、シルク、羽毛、ダウン、フェザー、アルギン繊維、キチン繊維、ガゼイン繊維から選択される1種又は2種以上が挙げられる。化学繊維としては、例えばレーヨン、アセテート、セルロースから選択される1種又は2種以上を用いることができる。
なかでも保水シート121Cとしては、前述した繊維で構成される繊維材料と、吸水性のポリマーとを含むものが好ましい。
吸水性ポリマーとしては、自重の20倍以上の液体を吸収・保持でき且つゲル化し得るヒドロゲル材料を用いることが保水シート121Cに含まれる水の含有量を、保水シート121Cの最大吸水量の15〜30質量%に維持でき好ましい。
吸水性ポリマーの粒子の形状としては、球状、塊状、ブドウ房状、繊維状等が挙げられる。
また、吸水性ポリマーの粒子の粒径は、製造時の取り扱い易さの観点から、1μm以上であることが好ましく、10μm以上であることがより好ましい。また、吸水性ポリマーの粒子の粒径は、吸水速度の観点から、1000μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
また、吸水性ポリマーの粒子の粒径は、1μm以上1000μm以下であることが好ましく、10μm以上500μm以下であることがより好ましい。
なお、吸水性ポリマー粒子の粒径は動的光散乱法、レーザー回折法等により測定される。
吸水性ポリマーの具体例としては、デンプン、架橋カルボキシルメチル化セルロース、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体から選択される1種又は2種以上が挙げられる。中でも、アクリル酸又はアクリル酸アルカリ金属塩の重合体又は共重合体等、ポリアクリル酸及びその塩並びにポリアクリル酸塩グラフト重合体を用いることが好ましい。
基材層121Bは、水蒸気発生層121Aの保水シート121Cとは反対側の表面に設けられている。基材層121Bは、水蒸気発生層121Aに直接接触し、水蒸気発生層121Aを被覆している。この基材層121Bは、非通気性又は難通気性のシートのものが好ましく、例えば樹脂シートを用いると好ましい。非通気性又は難通気性のシート(50000秒/100ml以上であり、80000秒/100ml以上が好ましい)とすることで保水シート121C側から蒸気をより確実に放出させることができるのみならず、基材層121B側から気化熱が奪われることを防止できる。
基材層121Bとしては、たとえば合成樹脂フィルムがあげられ、ポリエチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等が挙げられる。
なお、保水シート121Cを水蒸気発生層121A上に形成し、基材層121Bを設けない場合、水蒸気発生部121が第2シート122Bに直接接触してしまう可能性があるため、第2シート122Bは耐水性を有するシートとすることが好ましい。
本実施形態の水蒸気発生体120の水蒸気発生量は、マスク着用者に適度な蒸気感を与える観点から、水蒸気発生体120全体として、好ましくは30mg/セル・10min以上であり、より好ましくは50mg/セル・10min以上であり、さらに好ましくは150mg/セル・10min以上であり、さらに好ましくは250mg/セル・10min以上であり、ことさらに好ましくは300mg/セル・10min以上である。
また、本実施形態の水蒸気発生体120の水蒸気発生量は、マスク中の結露を抑止する観点から、水蒸気発生体120全体として、好ましくは1200mg/セル・10min以下であり、より好ましくは1000mg/セル・10min以下であり、さらに好ましくは800mg/セル・10min以下であり、さらに好ましくは700mg/セル・10min以下であり、ことさらに好ましくは500mg/セル・10min以下である。
また、本実施形態の水蒸気発生体120の水蒸気発生量は、水蒸気発生体120全体として、好ましくは30mg/セル・10min以上1200mg/セル・10min以下であり、より好ましくは50mg/セル・10min以上1000mg/セル・10min以下であり、さらに好ましくは150mg/セル・10min以上800mg/セル・10min以下であり、さらに好ましくは250mg/セル・10min以上700mg/セル・10min以下であり、ことさらに好ましくは300mg/セル・10min以上500mg/セル・10min以下である。
また、本実施形態の水蒸気発生体120の単位面積あたりの水蒸気発生量は、マスク着用者に適度な蒸気感を与える観点から、水蒸気発生体120全体として、好ましくは1mg/cm・10min以上であり、より好ましくは1.5mg/cm・10min以上であり、さらに好ましくは5mg/cm・10min以上であり、さらに好ましくは7mg/cm・10min以上であり、ことさらに好ましくは9mg/cm・10min以上である。
また、本実施形態の水蒸気発生体120の単位面積あたりの水蒸気発生量は、マスク中の結露を抑止する観点から、水蒸気発生体120全体として、好ましくは20mg/cm・10min以下であり、より好ましくは18mg/cm・10min以下であり、さらに好ましくは15mg/cm・10min以下である。
また、本実施形態の水蒸気発生体120の単位面積あたりの水蒸気発生量は、水蒸気発生体120全体として、好ましくは1mg/cm・10min以上20mg/cm・10min以下であり、より好ましくは1.5mg/cm・10min以上18mg/cm・10min以下であり、さらに好ましくは5mg/cm・10min以上15mg/cm・10min以下であり、さらに好ましくは7mg/cm・10min以上15mg/cm・10min以下であり、ことさらに好ましくは9mg/cm・10min以上15mg/cm・10min以下である。
〔水蒸気発生量測定法〕
ここで、水蒸気発生体120または蒸気温熱マスク100の水蒸気発生量は図11に示す装置30を用いて、次のように測定される数値である。図11に示す装置30は、アルミニウム製の測定室(容積2.1L)31、測定室31の下部に除湿空気(湿度2%未満、流量2.1L/分)を流入させる流入路32、測定室31の上部から空気を流出させる流出路33、流入路32に設けられた入口温湿度計34と入口流量計35、流出路33に設けられた出口温湿度計36と出口流量計37、測定室31内に設けられた温度計(サーミスタ)38からなっている。温度計38としては、温度分解能が0.01℃程度のものを使用する。
水蒸気発生体120または蒸気温熱マスク100の肌側に位置する面の表面温度の測定は、測定環境温度30℃(30±1℃)において水蒸気発生体120を酸素遮断袋から取り出し、水蒸気発生体120または蒸気温熱マスク100の肌側に位置する面、すなわち水蒸気放出面を上にして測定室31に載置し、金属球(4.5g)をつけた温度計38をその上に載せて計測する。また、この状態で下部より除湿空気を流し、入口温湿度計34と出口温湿度計36で計測される温度及び湿度から測定室31に空気が流入する前後の絶対湿度の差を求め、さらに入口流量計35と出口流量計37で計測される流量から水蒸気発生体120または蒸気温熱マスク100が放出した水蒸気量を算出する。なお、本明細書における水蒸気発生量とは、水蒸気発生体120を酸素遮断袋から取り出した時点を起点とし、10分後までに測定された総量をいう。
また、本実施形態の蒸気温熱マスク100の水蒸気発生量は、マスク着用者に適度な蒸気感を与える観点から、好ましくは60mg/10min以上であり、より好ましくは100mg/10min以上であり、さらに好ましくは300mg/10min以上であり、さらに好ましくは500mg/10min以上であり、ことさらに好ましくは600mg/10min以上である。
また、本実施形態の蒸気温熱マスク100の水蒸気発生量は、マスク中の結露を抑止する観点から、好ましくは2000mg/10min以下であり、より好ましくは1400mg/10min以下であり、さらに好ましくは1000mg/10min以下である。
また、本実施形態の蒸気温熱マスク100の水蒸気発生量は、好ましくは60mg/10min以上2000mg/10min以下であり、より好ましくは100mg/10min以上1400mg/10min以下であり、さらに好ましくは300mg/10min以上1000mg/10min以下であり、さらに好ましくは500mg/10min以上1000mg/10min以下であり、ことさらに好ましくは600mg/10min以上1000mg/10min以下である。
続いて、本実施形態の蒸気温熱マスク100による効果について説明する。
蒸気温熱マスク100は、着用者の口と鼻とを覆うマスク本体部101と、マスク本体部101の横方向両端部に接合され、マスク本体部101を着用者の顔に保持させる耳掛け部102と、マスク本体部101の着用者側の面に保持される水蒸気発生体120と、を備え、マスク本体部101が一対の突出部111を有する。
すなわち、突出部111により、蒸気温熱マスク100を着用した状態で着用者がマスク本体部101の位置調整がしやすくなり、微妙な位置調整も可能となる。また、蒸気温熱マスク100の装着状態を維持したまま位置調整できるため、着用者の動作等によって蒸気温熱マスク100の位置ずれが生じたとしても、すぐに元の適切な状態に戻すことができる。また、従来のマスクでは、位置調整を行う際に、マスク本体部101をつかんだり、装着し直すといったことが行われていたため、蒸気や温熱が外部に放出したり、外気がマスク本体部101の内部に入り込んだりするといった問題が生じたが、蒸気温熱マスク100によれば、突出部111をつまむことにより、装着状態を維持したまま微妙な位置調整を可能とするため、かかる問題を解消できる。かかる結果、水蒸気発生体120による温熱蒸気効果を効果的に付与することが出来る。さらには、マスク本体部101の装着状態や形状を大きく変形させないため、呼吸を妨げたり、外観を損ねる等といった不快感も抑制できる。また、着用者がマスク本体部101に直接触れずに位置調整ができるため、衛生面にも優れることができる。
蒸気温熱マスク100は、たとえば、以下のようにして使用される。
すなわち、マスク110と水蒸気発生体120が分離されている場合、蒸気温熱マスク100は、酸素遮断袋を開封して水蒸気発生体120を取り出し、マスク110の所定の位置に固定する。マスク110は、耳掛け部102により顔に装着される。具体的には、各耳掛け部102を着用者の耳に掛けて、マスク本体部101を着用者の口と鼻を覆うように装着される。
また、水蒸気発生体120がマスク110における収容体104に封入されている場合は、通常、蒸気温熱マスク100全体として、酸素遮断袋に封入される。この場合の使用方法としては、この酸素遮断袋を開封の上、蒸気温熱マスク100を取り出し、各耳掛け部102を着用者の耳に掛けて、マスク本体部101を着用者の口と鼻を覆うように装着する。
その後、水蒸気発生体120は、空気中の酸素と反応し、発熱するとともに水蒸気を発生する。
着用者は、蒸気温熱マスク100を装着した状態で、突出部111を用いてマスク本体部101の位置を調整し、水蒸気発生体120の位置調整を行う。
(第2実施形態)
第1実施形態では、固定手段として収容体104が用いられている例について説明したが、第2実施形態では、固定手段として、粘着剤が用いられている例について説明する。以下、第1実施形態と同様の構成、効果についての説明は適宜省略する。
図7は、第2実施形態におけるマスクに水蒸気発生体を装着する前の着用者側の面からみた一部平面図である。図8は、第2実施形態におけるマスクの一部を上面(着用者の目側)からみた断面図である。
〔マスク〕
マスク本体部101は、上記第1実施形態と同様の素材を用いることができる。
本実施形態において、図7に示すように、マスク本体部101の着用者側の面には、水蒸気発生体120を貼付する位置がわかるようにマーキング領域105が形成されていることが好ましい。図8に示すように、マーキング領域105上に、粘着剤106を介して、水蒸気発生体120がマスク本体部101に固定されている。マーキング領域105は、印刷にて領域内の色を変えてもいいし、エンボス加工を施してもよい。また、マーキング領域105は、周囲に実線、点線等のラインを設けたものであってもよい。
また、装着感を高める観点から、水蒸気発生体120の第1シート122Aと着用者との間に、風合いの良いシート材料であるエアスルー不織布などの不織布が配されてもよい(図示なし)。この場合、不織布は、水蒸気の通過を阻害しない程度の通気性を有していることが好ましい。またさらに、不織布が水蒸気により濡れることに起因して、水蒸気の通過を阻害せず、かつ、空気の流入を阻害しないよう、撥水性を有することがより好ましい。
このような不織布は、水蒸気発生体120の第1シート122A上に形成されたものでもよく、マスク110の着用者側の面に開閉自在に取り付けられ、水蒸気発生体120を貼付後、閉じられるものであってもよい。
〔粘着剤〕
本実施形態において、水蒸気発生体120の着用者側とは反対の面、すなわち、第2シート122Bの着用者側とは反対の面には、粘着剤106が設けられている。これにより、水蒸気発生体120をマスク110に安定的に固定できる。
粘着剤106は、少なくとも水蒸気発生体120をマスク本体部101に固定できればよく、大きさ、形状は特に限定されない。
粘着剤106としては、好ましくはホットメルト粘着剤が用いられる。ホットメルト粘着剤は一般に粘着基剤、粘着付与樹脂及び軟化剤を構成成分として含有している。ホットメルト粘着剤の種類としては、例えば合成ゴム系、ポリオレフィン系(Polyethylene(PE)系、Ethylene Vinyl Acetate(EVA)系、Ethylene−Ethyl−Acrylate(EEA)系、Atactic Polypropylene(APP)系、Amorphous PolyAlpha Olefin(APAO)系等)、ポリアミド系(ナイロン系、ポリアミド系等)、ポリエステル系、アクリル系等が含まれる。これらは単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。特に保存性、粘着力、安全性等の面から、合成ゴム系、ポリオレフィン系、アクリル系、ポリアミド系が好ましく、とりわけ合成ゴム系が好ましい。
粘着剤106は、蒸気温熱マスク100の使用前の状態においては剥離紙によって保護されるとともに外部に付着しないようになっている。剥離紙は、特に限定されず用いることができる。
なお、マスク本体部101の着用者側の面に、粘着剤が設けられていてもよい。具体的には、マスク本体部101の折り畳み線103近傍及びマスク本体部101の上端部近傍に、左右対称に一対に設けられている。これにより、水蒸気発生体120の固定位置がわかりやすくなる。この場合、繰り返し使える粘着剤とすることが好ましい。
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
例えば、上記各実施形態では、水蒸気発生体120は、マスク110に、別々に2個貼付けられる例について説明したが、2個の水蒸気発生体120が一つの袋体により連なった構造であってもよい。
また、上記各実施形態では、マスク本体部101が、一枚のシートから形成され、折り畳み線103で左右対称に折られている例について説明したが、マスク本体部101は、同形の二枚のシートを重ね合わせ、一辺を貼り合わせることで折り畳み線103を形成したものであってもよい。この場合に用いられるシートは、上記各実施形態で説明したものと同様のものを用いることができる。
また、第1実施形態では、第1シートの通気度が7000秒/100ml以下、第2シートの通気度が8000秒/100ml超であることが好ましい例について説明したが、第2シートの通気度が250秒/100ml以上8000秒/100ml以下であり、第1シートの通気度が第2シートの通気度に対して20%以下としてもよい。これにより、水蒸気発生部121により発生した水蒸気が、マスク110の外部に漏れることを抑制し、マスク110内部、すなわち着用者側に水蒸気を付与することができる。
第1シート122A、第2シート122Bとしては、上記の通気度を満足すれば、第1実施形態に記載されたものと同様の材料を用いたシートとすることができる。
上述した実施形態に関し、本発明はさらに以下の組成物、製造方法、或いは用途を開示する。
次に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明の内容は実施例に限られるものではない。
第1実施形態で説明したものと同様の蒸気温熱マスクを作製した。具体的には以下のとおりである。
<水蒸気発生部121の作製>
表1に示す組成の発熱組成物を、次の手順で調製した。
増粘剤を水に溶解し、次いでリン酸三カリウムを溶解して水溶液を用意した。一方で鉄粉、活性炭をプレ混合した粉体を用意し、前記水溶液にプレ混合粉体を入れ、ディスクタービン型攪拌羽根で150rpm、10分間攪拌してスラリー状の発熱組成物を得た。
そして、得られた発熱組成物を基材層121Bの片面にダイコーティング法を用い、水蒸気発生部121の1個(4.9cm×4.9cm;面積24.0cm)あたり、1.4gになるように塗工した。さらに、塗工面上に食塩(局方塩化ナトリウム(大塚製薬社製))を水蒸気発生部121の1個(同上)あたり0.07gとなるように散布して水蒸気発生層121Aを形成し、その上に、保水シート121Cを重ねて水蒸気発生部121を作製した。
基材層121Bとしては、坪量27g/mのポリエチレンフィルムを使用した。保水シート121Cとしては、木材パルプ製の紙(秤量20g/m、伊野紙株式会社製)と吸水性ポリマー(ポリアクリル酸ナトリウム、球状、平均粒子径300μm、秤量50g/m、アクアリックCA、株式会社日本触媒製)と木材パルプ製の紙(坪量30g/m、伊野紙株式会社製)を積層して一体化したポリマーシートを使用した。
このようにして得られた水蒸気発生部121を、保水シート121Cが肌側(第1シート122A側)に配置されるように2層に重ねた(質量3.43g)。作製直後の水蒸気発生部121中の水分量は、鉄粉100質量部に対し、62質量部であった。
Figure 2018117908
<水蒸気発生体120の作製>
得られた水蒸気発生部121全体を、通気度の第1シート122A、及び第2シート122Bからなる袋体122で被覆し、水蒸気発生体120を作製した。
具体的には、水蒸気発生体120の第1シート122A(以下同じ)として、TMS不織布(サーマルボンド(PET/PE)−メルトブローン(ポリプロピレン)−スパンボンド(ポリプロピレン)積層一体型、坪量50g/m、株式会社クラレ製)を2層積層し、通気度0秒/100mlのシートとした。
水蒸気発生体120の第2シート122B(以下同じ)として、ポリエチレン100質量%のフィルムとパルプシートとをラミネートした坪量40g/mの非通気性シートを使用した。
第1シート122Aと第2シート122Bとの間に水蒸気発生部121を配置して、周縁部を密閉シールし、水蒸気発生体120を得た。このとき、水蒸気発生部121の基材層121Bは、第2シート122B側に配置された。
水蒸気発生体120は、後述する評価を実施するまで、酸素遮断袋に入れて保存した。
<蒸気温熱マスクの作製>
マスク110を構成するシートとして、SMS不織布(スパンボンド(ポリプロピレン)−メルトブローン(ポリプロピレン)−スパンボンド(ポリプロピレン)積層一体型、坪量50g/m)が外側、坪量25gのスパンボンド不織布(ポリプロピレン)が内側(着用者側)となるように2層を重ねた。
マスク110のマスク本体部101の縦中心の折り畳み線103を挟んで両側の上方に1つずつ(計2つ)、収容体104のマスク上部以外を熱融着し、水蒸気発生体120を収容する収容体104を作製した。マスク110の両端部が突出部111、中央部がマスク本体部101となるように、マスク110の両端部から内側領域に、伸縮性のあるゴム紐状の耳掛け部102を取り付け、立体形状となる蒸気温熱マスク100を作製した。
なお、下記評価においては、収容体104に水蒸気発生体120を各1つずつ(計2つ)、マスク本体部101の2枚の不織布が熱融着されていないマスク110の上側から入れ、マスク本体部101の折り畳み線103近傍及びマスク本体部101の上端部近傍(鼻脇)に、左右対称に一対の水蒸気発生体120をとりつけ、蒸気温熱マスク100とした。
また、比較例1の蒸気温熱マスクは、突出部111を有さない以外は、蒸気温熱マスク100と同じ構成のものとした。
得られた蒸気温熱マスクを用いて、以下の測定・評価を行った。結果を表2または表3示す。
<測定>
・高さd1、d2の測定
マスク本体部101と突出部111との境界線から垂線を引き、突出部111の端部と交わる最大の距離を求め、それを高さd1として、当該d1(cm)を測定した。同様に、境界線の上半分(マスク着用時における上側)の位置から突出部111の端部と交わる最大の距離をd2とし、当該d2(cm)を測定した。
・突出部111の伸縮率
突出部111となる素材を幅1cmの短冊状の試験片を作成し、当該試験片の両端をクリップにて挟みしっかりと固定した。この際、クリップとクリップとの距離が5.0cmになるように設定した。上側のクリップを固定し、試験片を重力方向にぶら下げ、下側のクリップに50gの分銅を取り付けて、試験片が伸びた長さL(cm)を求め、下記式に当てはめて、伸縮率(%)算出した。その結果、30%であった。
伸縮率(%)=(L−5.0)/5.0×100
<評価−1>
5名の被験者により、蒸気温熱マスクを着用した際の掴みやすさ、外観、位置調整のし易さについて5段階で評価(5が最も良好)し、平均値をとった。
Figure 2018117908
<評価−2>
5名の被験者により、蒸気温熱マスクを顔に着用し、位置調整をし、10分後の温感の心地よさを評価5段階で評価(5が最も良好)し、平均値をとった。位置調整は、実施例のものは、突出部を掴み、比較例のものは、マスク本体部を掴んで行った。
Figure 2018117908
実施例1〜3は、突出部を掴んで位置調整をすることにより、マスクを装着したまま微妙な位置調整をすることができ、その結果、良好な温熱効果が得られた。一方、比較例1は突出部がないため、マスク本体部を掴んで位置調整をしたが、微妙な位置調整ができず、その結果、充分な温熱効果が得られなかった。
30 装置
31 測定室
32 流入路
33 流出路
34 入口温湿度計
35 入口流量計
36 出口温湿度計
37 出口流量計
38 温度計
70 通気抵抗評価装置本体
71 シート固定用治具
100 蒸気温熱マスク
101 マスク本体部
101a シート
102 耳掛け部
103 折り畳み線
104 収容体
105 マーキング領域
106 粘着剤
107 シール部分
107a シール部分
107b シール部分
107c シール部分
111 突出部
110 マスク
120 水蒸気発生体
121 水蒸気発生部
121A 水蒸気発生層
121B 基材層
121C 保水シート
122 袋体
122A シート
122B シート

Claims (12)

  1. 着用者の口と鼻とを覆う被覆部と、
    前記被覆部の横方向両端部に接合され、当該被覆部を前記着用者の顔に保持させる保持部と、
    前記被覆部の前記着用者側の面に保持される水蒸気発生体と、
    を備え、
    前記被覆部が一対の突出部を有する、蒸気温熱具。
  2. 前記一対の突出部が前記被覆部の横方向における両側領域にそれぞれ配置される、請求項1に記載の蒸気温熱具。
  3. 前記突出部が前記被覆部の縦方向に沿って延在する、請求項1または2に記載の蒸気温熱具。
  4. 前記被覆部と前記突出部との境界から、前記突出部の端縁までの高さd1が最大となる部分において、当該高さd1が2mm以上、54mm以下である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  5. 前記一対の突出部が、前記被覆部と前記保持部との接合部にそれぞれ設けられている、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  6. 前記突出部の前記被覆部を横方向に二分する横中央線よりも上側領域において前記被覆部と前記突出部との境界から、前記被覆部から前記突出部の端縁までの高さd2が最大となる部分において、当該高さd2が2mm以上、54mm以下である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  7. 前記突出部の伸縮率が、前記保持部の伸縮率よりも低い、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  8. 前記突出部が伸縮性を有さない、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  9. 前記突出部が前記被覆部と一体に形成されている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  10. 前記保持部が、一対の耳かけ部である、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  11. 前記水蒸気発生体が被酸化性金属の酸化反応により水蒸気を発生するものである請求項1乃至10のいずれか一項に記載の蒸気温熱具。
  12. 請求項1乃至11のいずれか一項に記載の蒸気温熱具の使用方法であって、
    前記蒸気温熱具を前記保持部により顔に装着し、前記蒸気温熱具を装着した状態で前記突出部を用いて前記被覆部の位置を調整する、蒸気温熱具の使用方法。
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