JP2018109372A - 回転式圧縮機 - Google Patents
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Abstract
【課題】ミドルプレート(33)とその上下に配置された圧縮機構部(30a,30b)を有する圧縮機構(30)を備えた回転式圧縮機において、各シリンダ室(C1,C2)での再膨張による高周波脈動を簡単な構成で抑えるようにする。【解決手段】ミドルプレート(33)に、ピストン(40,50)の回転中の所定位置で、駆動軸(23)が挿通する油溜まり空間(60)と各シリンダ室(C1,C2)とに連通可能な油供給路(61)を形成する。【選択図】図3
Description
本発明は、ミドルプレートとその上下に配置された2つの圧縮機構部を有する回転式圧縮機に関し、特に、吐出行程の終了時に圧縮機構の吐出ポート内に残留した高圧ガスが次の吸入行程で再膨張することによりシリンダ室で生じる高周波脈動を、シリンダ室に潤滑油を供給することによって抑制する技術に関するものである。
従来、シリンダと、駆動軸の偏心部に外嵌されシリンダ内に配置されるピストンと、シリンダの軸方向の端部を閉塞する端板とを有し、シリンダ内においてピストンが偏心回転することによって流体が圧縮される回転式圧縮機が知られている。この種の回転式圧縮機には、圧縮機構のシリンダがミドルプレートを挟んで上下に配置された2シリンダ型の圧縮機がある(例えば、特許文献1の図3,特許文献2の図3を参照)。
特許文献1の回転式圧縮機では、2シリンダ型の回転式圧縮機において、駆動軸(2)に形成された給油通路(21)が、ミドルプレート(5)の高圧室(51)から、駆動軸(2)の2つの偏心部(41)にそれぞれ上記高圧室(51)に連通するように形成した断面L型の切り欠き部(16)と、この切り欠き部(16)に連通するように各ピストン(42)に形成した開放部(給油路)(13)とを介して、各圧縮機構のシリンダ室(34)へ潤滑油を供給するように構成されている。
また、特許文献2には、回転式圧縮機において、ケーシング(1)の底部に溜まった潤滑油を気筒休止中の圧縮室に導入する給油路(20)を設ける構成が開示されている。この特許文献2の回転式圧縮機も、圧縮機構のシリンダ室がミドルプレート(6)を挟んで上下に二段に配置された2シリンダ型の回転式圧縮機である。そして、この回転式圧縮機では、駆動軸(9)の偏心部とピストン(10,11)の摺動面から下側の圧縮機構の圧縮室に潤滑油を供給するように、上記給油路(20)が圧縮機構の下端のシリンダ端板(8)に形成されている。
しかしながら、特許文献1の回転式圧縮機では、駆動軸の2つの偏心部にそれぞれ切り欠きを形成し、さらに2つのピストンのそれぞれに給油路を形成する必要があるため、構成が複雑になってしまう問題があった。
また、特許文献2の構造を採用して上側の圧縮機構にも給油しようとすると、下側の圧縮機構のシリンダ室から上側の圧縮機構のシリンダ室へ給油する通路を設けなければならず、やはり構成が複雑になってしまう。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ミドルプレートの上下に配置された2つの圧縮機構部を有する回転式圧縮機において、各シリンダ室での再膨張による高周波脈動を簡単な構成で抑えられるようにすることである。
第1の発明は、ミドルプレート(33)と該ミドルプレート(33)の上下に配置された2つの圧縮機構部(30a,30b)とを有する圧縮機構(30)を備え、上記各圧縮機構部(30a,30b)が、シリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(32,34)と、駆動軸(23)の偏心部(25,26)に嵌合し上記シリンダ室(C1,C2)内で偏心回転するピストン(40,50)とを備え、上記圧縮機構(30)が、該圧縮機構(30)の摺動部に供給された潤滑油をその潤滑後に受け入れる油溜まり空間(60)を有し、上記油溜まり空間(60)が、上記ミドルプレート(33)に上記駆動軸(23)が挿通するように形成されるとともに該駆動軸(23)よりも大径の貫通孔で構成された軸周り油溜まり空間(60a)を有している回転式圧縮機を前提としている。
そして、この回転式圧縮機は、上記ミドルプレート(33)に、上記ピストン(40,50)の回転中の所定位置で上記各シリンダ室(C1,C2)と上記油溜まり空間(60)とに連通可能な油供給路(61)が形成されていることを特徴としている。
この第1の発明では、ピストン(40,50)が偏心回転動作をする際に、油溜まり空間(60)とシリンダ室(C1,C2)が油供給路(61)を介して連通すると、油溜まり空間(60)からシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油が供給される。
第2の発明は、第1の発明において、上記油供給路(61)が、上記ピストン(40,50)の回転中に、上記油溜まり空間(60)が上記圧縮機構部(30a,30b)のシリンダ室(C1,C2)の一方と連通する間は他方から遮断されるように構成されていることを特徴としている。
この第2の発明では、上下に配置された2つの圧縮機構部(30a,30b)のシリンダ室(C1,C2)へ交互に潤滑油が供給される。
第3の発明は、第2の発明において、上記圧縮機構(30)が、第1圧縮機構部(30a)と第2圧縮機構部(30b)とからなる2シリンダ型の圧縮機構(30)であり、上記油溜まり空間(60)が、上記軸周り油溜まり空間(60a)に加えて、上記偏心部(25,26)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成されるピストン部油溜まり空間(60b,60c)を備え、上記油供給路(61)は、上記駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿って上記ミドルプレート(33)に形成された貫通孔により構成され、かつ、上記ピストン(40,50)の回転中に、一端が上記第1圧縮機構部(30a)に形成されている第1シリンダ室(C1)に連通して他端が上記油溜まり空間(60)に連通する状態と、一端が上記油溜まり空間(60)に連通して他端が上記第2圧縮機構部(30b)に形成されている第2シリンダ室(C2)に連通する状態とに、連通状態が変化するように構成されていることを特徴としている。
第4の発明は、第3の発明において、上記第1シリンダ室(C1)内で回転する第1ピストン(40)と上記第2シリンダ室(C2)内で回転する第2ピストン(50)とが180°の位相差をつけて配置され、上記ピストン部油溜まり空間(60b,60c)が、上記偏心部(25,26)のうちで上記第1圧縮機構部(30a)の第1ピストン(40)が嵌合する第1偏心部(25)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成される第1ピストン部油溜まり空間(60b)と、上記偏心部(25,26)のうちで上記第2圧縮機構部(30b)の第2ピストン(50)が嵌合する第2偏心部(26)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成される第2ピストン部油溜まり空間(60c)とを有し、上記油供給路(61)が、上記ピストン(40,50)の回転中に、一端が上記第1シリンダ室(C1)に連通して他端が上記第2ピストン部油溜まり空間(60c)に連通する状態と、一端が上記第1ピストン部油溜まり空間(60b)に連通して他端が上記第2シリンダ室(C2)に連通する状態とに、連通状態が変化するように構成されていることを特徴としている。
この第3,第4の発明では、上下に配置された2つの圧縮機構部(30a,30b)において、ピストン(40,50)が偏心回転動作をする際に、油溜まり空間(60)から、貫通孔で形成された油供給路(61)を通って、シリンダ室(C1,C2)へ交互に潤滑油が供給される。
第5の発明は、第1から第4の発明の何れか1つにおいて、上記油供給路(61)が、上記各圧縮機構部(30a,30b)のシリンダ室(C1,C2)に対し、各圧縮機構部(30a,30b)の動作中の吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間に連通するように構成されていることを特徴としている。
この第5の発明では、シリンダ室(C1,C2)が吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間の吐出圧力よりも低い圧力になっているときに、油溜まり空間(60)から油供給路(61)を介してシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油が供給される。
本発明によれば、ミドルプレート(33)に、上記駆動軸(23)が挿通するように該駆動軸(23)よりも大径の油溜まり空間(60)と、上下に配置された2つの圧縮機構部(30a,30b)の各シリンダ室(C1,C2)と該油溜まり空間(60)とに連通する油供給路(61)とを形成したことによって、ピストン(40,50)が偏心回転動作をする際に上記油溜まり空間(60)と上記シリンダ室(C1,C2)とが上記油供給路(61)を介して連通すると、上記油溜まり空間(60)から上記シリンダ室(C1,C2)へ潤滑油が供給される。したがって、上記シリンダ室(C1,C2)で吸入行程が開始されるときの高周波脈動を潤滑油によって軽減することができ、しかも構成が複雑になるのも抑制できる。
また、本発明によれば、上記油溜まり空間(60)から上記シリンダ室(C1,C2)へ潤滑油を直接供給することにより、上記油溜まり空間(60)からの排油量を確保できるので、駆動軸(23)の偏心部(25,26)とピストン(40,50)の摺動面に熱がこもって焼き付くのを抑制できる。つまり、この摺動面の潤滑油は、油膜の形成と軸受の冷却をその機能とするものであり、本発明によれば、その機能が損なわれるのを抑制できる。
この効果について説明する。一般に、上記油溜まり部(60)の潤滑油は、上記摺動部の熱を放出するために、CR隙間(ピストン(40,50)の端面と、ミドルプレート(33),フロントヘッド(31)及びリアヘッド(35)の端面との隙間)を通って圧縮室(C1,C2)へ流れていく。そして、CR隙間が小さいと、上記摺動部からの熱の除去効果が小さくなり、摺動部に熱が溜まって駆動軸(23)の偏心部(25,26)とピストン(40,50)とが焼き付く原因になる。また、逆にCR隙間を広げすぎると、ブレード(41,51)の上下の隙間を介して冷媒がシリンダ室(C1,C2)の高圧室(C12,C22)から低圧室(C11,C21)へ漏れやすくなり、性能が低下してしまう。これに対して、本発明によればCR隙間を広げすぎることなく圧縮室(C1,C2)への給油量を増やせるので、高低圧漏れによる性能低下を抑制でき、しかも脈動低減の効果も得ることができる。
また、例えば特開2011−021598号公報や特開2014−055534号公報には、圧縮機構の動作中における吐出行程の途中から次の吸入行程の開始までの間に吐出ポートに潤滑油を導入し、吸入行程が開始されると潤滑油がシリンダ室へ流入するようにして脈動を抑える技術が開示されている。この技術では、シリンダ室への給油量が多いほど脈動低減効果が大きくなり、圧縮室への給油量が少ないと、脈動が減衰せずに脈動に起因する騒音が大きくなる。
一方、上記従来の技術では、圧縮室への給油量が多くなりすぎると、圧縮終了過程で圧縮室にある油が圧縮機構から吐出されることで、吐出弁が閉じ遅れて性能が低下する。そのため、特開2011−021598号公報や特開2014−055534号公報の技術では、運転条件が変わっても圧縮室への給油量を一定にする必要があった。しかしながら、弁の閉じ遅れを起こさない給油量で上記各公報の技術を実用化しようとすると、脈動音が大きな高差圧条件では脈動の減衰効果が十分ではなくなる問題があった。
これに対して、本発明によれば、圧力条件によって(つまり差圧が変化すると)、給油量が変わるので、脈動音が大きな高差圧条件で給油量を増加させ、脈動音が小さい低差圧条件では給油量を減らすことが可能になる。したがって、本発明によれば、脈動の低減効果と、吐出弁が閉じ遅れることによる性能低下を抑制する効果を両立させることが可能になる。
上記第2の発明によれば、上下に配置された2つの圧縮機構部(30a,30b)のシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油を交互に効率よく供給できる。
上記第3,第4の発明によれば、2シリンダ型の圧縮機構(30)において、上記油供給路(61)を、上記駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿ってミドルプレート(33)に形成された貫通孔により構成したことにより、簡単な構成で、上下に隣り合うシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油を交互に効率よく供給できる。
つまり、本発明では、1本の貫通孔により構成された油供給路(61)が二つのシリンダ室(C1,C2)への給油路として機能するため、加工が簡単であり、生産性の向上効果やコストアップの抑制効果を図ることができる。
上記第5の発明によれば、シリンダ室(C1,C2)が吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間の吐出圧力よりも低い圧力になっているときに、油溜まり空間(60)から油供給路(61)を介してシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油を確実に供給できる。
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
本発明の実施形態に係る回転式圧縮機(10)は、例えば空気調和装置の冷媒回路に設けられ、蒸発器から吸入した冷媒を圧縮して放熱器へ吐出する。図1に示すように、回転式圧縮機(10)は、ケーシング(11)と電動機(20)と圧縮機構(30)とを備えている。この圧縮機構(30)は、第1圧縮機構部(30a)と第2圧縮機構部(30b)とを備えた2シリンダ型の圧縮機構である。
上記ケーシング(11)は、円筒状の胴部(12)と、該胴部(12)の上端側を閉塞する上部鏡板(13)と、該胴部(12)の下端側を閉塞する下部鏡板(14)とを備えている。上記胴部(12)には、該胴部(12)の下側部分を貫通して第1吸入管(15a)及び第2吸入管(15b)が取り付けられている。また、上部鏡板(13)の上側部分には、該上部鏡板(13)を貫通するように吐出管(16)が取り付けられている。ケーシング(11)には、上記電動機(20)及び圧縮機構(30)が収容されている。また、下部鏡板(14)の底部には、上記圧縮機構(30)の摺動部を潤滑する潤滑油が貯留される油溜まり(17)が形成されている。
上記電動機(20)は、円筒状のステータ(21)と円筒状のロータ(22)と駆動軸(23)とを備えている。ステータ(21)は上記ケーシング(11)の胴部(12)に固定されている。一方、ロータ(22)は、ステータ(21)の中空部に配置されている。ロータ(22)の中空部には、該ロータ(22)を貫通するように駆動軸(23)が固定されている。
上記駆動軸(23)は、上下に延びる主軸部(24)と、該主軸部(24)の下端寄りに該主軸部(24)と一体に形成された2つの偏心部(25,26)とを有している。この2つの偏心部(25,26)は、上方の第1偏心部(25)と該第1偏心部(25)の下方に設けられた第2偏心部(26)とによって構成され、いずれも主軸部(24)よりも大径に形成されている。第1偏心部(25)及び第2偏心部(26)は、それぞれの軸心が主軸部(24)の軸心に対して所定距離だけ偏心している。なお、本実施形態では、第1偏心部(25)と第2偏心部(26)の主軸部(24)に対する偏心方向は180度ずれている(位相差が180°)。
上記圧縮機構(30)は、環状に形成されたフロントヘッド(31)、第1シリンダ(32)、ミドルプレート(33)、第2シリンダ(34)及びリアヘッド(下端板)(35)を有している。これらの環状の部材(31〜35)は、上側から下側に向かって順に積層され、軸方向に延びる複数のボルトによって締結されている。上記駆動軸(23)は、上記環状の部材(31〜35)を上下に貫通している。
ミドルプレート(33)には、中心部に駆動軸(23)の第1偏心部(25)と第2偏心部(26)の間の部分よりも直径が大きな開口(軸周り油溜まり空間(60a))が形成されており、図3に示すように、この軸周り油溜まり空間(60a)と後述の第1ピストン部油溜まり空間(60b)及び第2ピストン部油溜まり空間(60b)により油溜まり空間(60)が構成されている。上記圧縮機構(30)は、ミドルプレート(33)を挟んで上側に配置された上記第1圧縮機構部(30a)と、下側に配置された上記第2圧縮機構部(30b)とから構成されている。そして、第1圧縮機構部(30a)が有する第1シリンダ室(C1)と第2圧縮機構部(30b)が有する第2シリンダ室(C2)が、ミドルプレート(33)を挟んで上下に配置されている。
上記第1シリンダ(32)及び第2シリンダ(34)は、それぞれ肉厚の円筒部材によって構成されている。一方、フロントヘッド(31)、ミドルプレート(33)及びリアヘッド(35)は、肉厚の円板部材によって構成され、それぞれ中心部に上述した駆動軸(23)が挿通される孔部が形成されている。上記フロントヘッド(31)及びリアヘッド(35)における孔部を形成する内周縁部は、それぞれ上記駆動軸(23)の主軸部(24)を回転自在に支持する滑り軸受部(31a,35a)を構成している。なお、この実施形態では、フロントヘッド(31)が主軸受を構成し、リアヘッド(35)が副軸受を構成している。
第1シリンダ(32)は、上端がフロントヘッド(31)によって閉塞される一方、下端がミドルプレート(33)によって閉塞され、内部の閉空間が第1シリンダ室(C1)を構成している。該第1シリンダ室(C1)内には、上記駆動軸(23)の第1偏心部(25)に摺動自在に嵌合した第1ピストン(40)が第1シリンダ室(C1)内で偏心回転するように収容されている。図2に示すように、第1ピストン(40)の外周面には、該外周面から径方向外側へ延びる第1ブレード(41)が一体に形成されている。第1シリンダ室(C1)は、第1ブレード(41)によって第1吸入管(15a)に連通する低圧室(C11)と後述する第1吐出ポート(46)が開口する高圧室(C12)とに仕切られている。上記駆動軸(23)の第1偏心部(25)とミドルプレート(33)との間には少量の潤滑油が溜まるようにわずかな軸方向隙間(後述の第1ピストン部油溜まり空間(60b))が形成されている。
なお、図2は、第1圧縮機構部(30a)の第1シリンダ室(C1)付近の横断面図であるが、第2シリンダ室(C2)付近の横断面の構成も第1シリンダ室(C1)付近の横断面の構成とほぼ同様である。そこで、図2では、第2圧縮機構部(30b)の第2シリンダ室(C2)における各構成部材の符号を括弧内に記載している。
一方、第2シリンダ(34)は、図1に示すように、上端がミドルプレート(33)によって閉塞される一方、下端がリアヘッド(35)によって閉塞され、内部の閉空間が第2シリンダ室(C2)を構成している。該第2シリンダ室(C2)内には、上記駆動軸(23)の第2偏心部(26)に摺動自在に嵌合した第2ピストン(50)が第2シリンダ室(C2)内で偏心回に収容されている。図2に示すように、第2ピストン(50)の外周面には、該外周面から径方向外側へ延びる第2ブレード(51)が一体に形成されている。第2シリンダ室(C2)は、第2ブレード(51)によって第2吸入管(15b)に連通する低圧室(C21)と後述する第2吐出ポート(56)が開口する高圧室(C22)とに仕切られている。上記駆動軸(23)の第2偏心部(26)とミドルプレート(33)との間には少量の潤滑油が溜まるようにわずかな軸方向隙間(後述の第2ピストン部油溜まり空間(60b))が形成されている。
上記第1圧縮機構部(30a)に形成されている第1シリンダ室(C1)内で回転する第1ピストン(40)と第2圧縮機構部(30b)に形成されている第2シリンダ室(C2)内で回転する第2ピストン(50)とは、180°の位相差をつけて配置されている。
図2に示すように、第1シリンダ(32)には、平面視で円形の溝が形成されている。該円形溝は、一対のブッシュ(43,43)を収容するブッシュ溝(42)に構成されている。該ブッシュ溝(42)には、平面視で半月状に形成された一対のブッシュ(43,43)が第1ブレード(41)を挟むような状態で内嵌されている。一方、第2シリンダ(34)にも、第1シリンダ(32)と同様に、平面視で円形の溝が形成されている。該円形溝は、一対のブッシュ(53,53)を収容するブッシュ溝(52)に構成されている。該ブッシュ溝(52)には、平面視で半月状に形成された一対のブッシュ(53,53)が第2ブレード(51)を挟むような状態で内嵌されている。
また、第1シリンダ(32)には、内周面と外周面との間を径方向へ貫通する吸入貫通路(44)が形成されている。該吸入貫通路(44)に、第1吸入管(15a)の端部が挿入されている(図1参照)。一方、第2シリンダ(34)には、内周面と外周面との間を径方向へ貫通する吸入貫通路(54)が形成されている。該吸入貫通路(54)には、第2吸入管(15b)の端部が挿入されている。
図1に示すように、上記フロントヘッド(31)の上面には、上方に向かって開口する凹部が形成され、該凹部は内側カバー(36)によって覆われている。また、該内側カバー(36)の上面は、外側カバー(37)によって覆われている。上記凹部が形成されたフロントヘッド(31)の上面と内側カバー(36)との間には内側吐出空間(81)が形成される一方、内側カバー(36)と外側カバー(37)との間には外側吐出空間(82)が形成されている。
上記フロントヘッド(31)には、上下方向に貫通して内側吐出空間(81)と第1シリンダ室(C1)の高圧室(C12)とを連通する第1吐出ポート(46)が形成されている。また、フロントヘッド(31)には、第1吐出ポート(46)を開閉するための吐出弁(47)が取り付けられている。該吐出弁(47)が開閉することによって、第1吐出ポート(46)は、第1シリンダ(32)の内部に形成される高圧室(C12)に間欠的に連通する。さらに、内側カバー(36)には、内側吐出空間(81)と外側吐出空間(82)とを連通する貫通孔(図示省略)が形成され、外側カバー(37)には、外側吐出空間(82)とケーシング(11)の内部空間とを連通する貫通孔(図示省略)が形成されている。
上記リアヘッド(35)の下面には、周方向に延びて下方に向かって開口する凹部が形成され、該凹部は閉塞板(38)によって覆われ、内部に閉空間が形成されている。該閉空間は、下側吐出空間(83)を構成している。該下側吐出空間(83)は、リアヘッド(35)、第2シリンダ(34)、ミドルプレート(33)、第1シリンダ(32)及びフロントヘッド(31)を貫通する冷媒貫通孔(84)を介してフロントヘッド(31)と内側カバー(36)との間に形成された内側吐出空間(81)と連通している。
上記リアヘッド(35)には、上下方向に貫通して下側吐出空間(83)と第2シリンダ室(C2)における高圧室(C22)とを連通する第2吐出ポート(56)が形成されている。また、リアヘッド(35)には、第2吐出ポート(56)を開閉するための吐出弁(57)が取り付けられている。該吐出弁(57)が開閉することによって、第2吐出ポート(56)は、第2シリンダ(34)の内部に形成される高圧室(C22)に間欠的に連通する。
図1に示すように、駆動軸(23)の下端には、油溜まり(17)に浸漬する遠心ポンプ(27)が設けられている。駆動軸(23)の内部には、遠心ポンプ(27)が汲み上げた潤滑油が流通する給油通路(油通路)(70)が軸方向に形成されている。給油通路(70)には、第1〜第5通路(70a〜70e)が接続されている。第1〜第5通路(70a〜70e)は、それぞれ駆動軸(23)の径方向に延び、それぞれの流出端が駆動軸(23)の外周面において開口している。第1通路(70a)は、給油通路(70)の内部で発泡した冷媒ガスを排出するための排ガス通路であり、第2〜第5通路(70b〜70e)は、給油通路(70)に汲み上げられた潤滑油を流出させるための油流出通路である。
具体的には、第1通路(70a)は、駆動軸(23)における圧縮機構(30)の上端の上側近傍に形成されている。第2通路(70b)は、駆動軸(23)の第1偏心部(25)の上側近傍に形成され、第3通路(70c)は、第1偏心部(25)の内部に形成されている。第4通路(70d)は、第2偏心部(26)の内部に形成され、第5通路(70e)は、駆動軸(23)の第2偏心部(26)の下側近傍に形成されている。第1偏心部(25)に形成された第3通路(70c)と第2偏心部(26)に形成された第4通路(70d)とは、各偏心部(25,26)の偏心方向に対して120°位相がずれ、且つ互いに180°位相がずれる方向に延びている。
駆動軸(23)の外周面には、第1及び第2縦溝(71,72)が形成されている。第1縦溝(71)は、駆動軸(23)の第1偏心部(25)の外周面において軸方向に延び、上記第3通路(70c)の流出端が開口している。第2縦溝(72)は、駆動軸(23)の第2偏心部(26)の外周面において軸方向に延び、上記第4通路(70d)の流出端が開口している。
また、駆動軸(23)の外周面には、第1及び第2環状溝(73,74)が形成されている。第1環状溝(73)は、駆動軸(23)の第1偏心部(25)の上側近傍の外周面において周方向に延び、上記第2通路(70b)の流出端が開口している。第2環状溝(74)は、本発明に係る油溝を構成し、駆動軸(23)の第2偏心部(26)の下側近傍の外周面において周方向に延び、上記第5通路(70e)の流出端が開口している。
以上のような構成により、上記駆動軸(23)の回転に伴って上記遠心ポンプ(27)によって上記油溜まり(17)の潤滑油が給油通路(70)へ汲み上げられる。給油通路(70)に汲み上げられた潤滑油は、第2〜第5通路(70b〜70e)のそれぞれから流出し、第1及び第2縦溝(71,72)や第1及び第2環状溝(73,74)を介して圧縮機構(30)の摺動部に流れて該摺動部を潤滑及び冷却する。
本実施形態では、図3に示すように、上記駆動軸(23)と上記ミドルプレート(33)及び上記偏心部(25,26)との間に上記油溜まり空間(60)が形成されており、各摺動部に供給された潤滑油は、その潤滑後にこの油溜まり空間(60)に溜まる。また、上記ミドルプレート(33)には、上記油溜まり空間(60)と、上記第1圧縮機構部(30a)のシリンダ室(C1)及び第2圧縮機構部(30b)のシリンダ室(C2)とに連通する油供給路(61)が形成されている。この油供給路(61)は、図4,図8に示すように、第1ピストン(40)または第2ピストン(50)が上死点にあるときに、上死点を0°として時計回り方向に約270°の位置で、第1ピストン(40)または第2ピストン(50)の外周面にほぼ接する位置に形成されている。この油供給路(61)を形成したことにより、上記ピストン(40,50)の回転中の所定位置で上記油供給路(61)が上記各シリンダ室(C1,C2)と油溜まり空間(60)とに連通し、そのときに油溜まり空間(60)の潤滑油が各シリンダ室(C1,C2)に供給されるようになっている。
上記油溜まり空間(60)は、具体的には、上記軸周り油溜まり空間(60a)に加えて、上記偏心部(25,26)のうちで上記第1圧縮機構部(30a)の第1ピストン(40)が嵌合する第1偏心部(25)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成される第1ピストン部油溜まり空間(60b)と、上記偏心部(25,26)のうちで上記第2圧縮機構部(30b)の第2ピストン(50)が嵌合する第2偏心部(26)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成される第2ピストン部油溜まり空間(60c)とを有している。
そして、上記油供給路(61)は、上記駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿って上記ミドルプレート(33)に形成された貫通孔により構成されている。また、上記油供給路(61)は、上記ピストン(40,50)の回転中に、一端が上記第1シリンダ室(C1)に連通して他端が上記第2ピストン部油溜まり空間(60c)に連通する状態と、一端が上記第1ピストン部油溜まり空間(60b)に連通して他端が上記第2シリンダ室(C2)に連通する状態とに、連通状態が変化するように構成されている。
上述したように、上記第1圧縮機構部(30a)の第1ピストン(40)と第2圧縮機構部(30b)の第2ピストン(50)の間には、180°の位相差が付けられている。そして、上記油供給路(61)は、上記駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿ってミドルプレート(33)に形成されたまっすぐな貫通孔により構成されている。このことにより、上記油供給路(61)は、上記油溜まり空間(60)が上記第1圧縮機構部(30a)のシリンダ室(C1)及び第2圧縮機構部(30b)のシリンダ室(C2)の一方と連通する間は、他方から遮断されるようになっている。
また、上記油供給路(61)は、上記第1圧縮機構部(30a)及び第2圧縮機構部(30b)のシリンダ室(C1,C2)に対し、各圧縮機構部(30a,30b)の動作中の吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間に連通するように構成されている。逆に言うと、上記油供給路(61)は、各圧縮機構部(30a,30b)の動作中の吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間を除いては、上記第1圧縮機構部(30a)及び第2圧縮機構部(30b)のシリンダ室(C1,C2)に対して連通しないようになっている。
−運転動作−
上記回転式圧縮機(10)では、上記電動機(20)が起動されて駆動軸(23)が回転するのに伴って、各偏心部(25,26)に外嵌された各ピストン(40,50)が各シリンダ室(C1,C2)内において偏心回転する。これにより、各ピストン(40,50)と各シリンダ室(C1,C2)の低圧室(C11,C21)と高圧室(C12,C22)との容積が周期的に変動し、冷媒の吸入動作、圧縮動作及び吐出動作が連続的に行われる。
上記回転式圧縮機(10)では、上記電動機(20)が起動されて駆動軸(23)が回転するのに伴って、各偏心部(25,26)に外嵌された各ピストン(40,50)が各シリンダ室(C1,C2)内において偏心回転する。これにより、各ピストン(40,50)と各シリンダ室(C1,C2)の低圧室(C11,C21)と高圧室(C12,C22)との容積が周期的に変動し、冷媒の吸入動作、圧縮動作及び吐出動作が連続的に行われる。
上記各吸入管(15a,15b)から上記各シリンダ室(C1,C2)の低圧室(C11,C21)へ吸入された冷媒は、各ピストン(40,50)の回転により低圧室(C11,C21)が高圧室(C12,C22)になると、各シリンダ室(C1,C2)の高圧室(C12,C22)で圧縮された後、各吐出ポート(46,56)から吐出される。第1吐出ポート(46)から吐出された冷媒は、上記内側吐出空間(81)へ流入する。一方、上記第2吐出ポート(56)から下側吐出空間(83)に吐出された冷媒は、冷媒貫通孔(84)を介して内側吐出空間(81)に流入し、該内側吐出空間(81)において第1シリンダ室(C1)から吐出された冷媒と合流する。内側吐出空間(81)において合流した第1シリンダ室(C1)と第2シリンダ室(C2)の吐出冷媒は、内側カバー(36)に形成された貫通孔を介して外側吐出空間(82)へ流入した後、外側カバー(37)に形成された貫通孔を介してケーシング(11)の内部空間に流入し、やがて吐出管(16)からケーシング(11)の外部へ流出する。
−潤滑油の流れ−
上記駆動軸(23)が回転すると、遠心ポンプ(27)によって油溜まり(17)の潤滑油が駆動軸(23)の内部の給油通路(70)に汲み上げられる。給油通路(70)に汲み上げられた潤滑油は、下方から上方に向かって流れた後、遠心力を受けて第2〜第5通路(70b〜70e)から駆動軸(23)の外周面に流出する。
上記駆動軸(23)が回転すると、遠心ポンプ(27)によって油溜まり(17)の潤滑油が駆動軸(23)の内部の給油通路(70)に汲み上げられる。給油通路(70)に汲み上げられた潤滑油は、下方から上方に向かって流れた後、遠心力を受けて第2〜第5通路(70b〜70e)から駆動軸(23)の外周面に流出する。
第2通路(70b)から流出した潤滑油は、第1環状溝(73)から、フロントヘッド(31)の滑り軸受部(31a)の内周面に形成された図示しない螺旋溝を伝ってフロントヘッド(31)の上端まで導かれ、その際に、フロントヘッド(31)の滑り軸受部(31a)と駆動軸(23)の主軸部(24)との間の摺動面を潤滑すると共に冷却する。また、第1環状溝(73)に溜まった潤滑油は、第1ピストン(40)の上端面とフロントヘッド(31)の下端面との間の摺動面間に流入し、該摺動面を潤滑すると共に冷却する。
第3通路(70c)から流出した潤滑油は、第1縦溝(71)から、駆動軸(23)の第1偏心部(25)と第1ピストン(40)の滑り軸受部との間の摺動面に流入し、該摺動面間を潤滑すると共に冷却する。また、第1縦溝(71)の潤滑油は、第1ピストン(40)の上端面とフロントヘッド(31)の下端面との間の摺動面、及び第1ピストン(40)の下端面とミドルプレート(33)の上端面との間の摺動面間に流入し、該摺動面を潤滑すると共に冷却する。
第4通路(70d)から流出した潤滑油は、第2縦溝(72)から、駆動軸(23)の第2偏心部(26)と第2ピストン(50)の滑り軸受部との間の摺動面に流入し、該摺動面間を潤滑すると共に冷却する。また、第2縦溝(72)の潤滑油は、第2ピストン(50)の上端面とミドルプレート(33)の下端面との間の摺動面、第2ピストン(50)の下端面とリアヘッド(35)の上端面との間の摺動面及び駆動軸(23)の第2偏心部(26)の下端面のスラスト軸受面(26a)とリアヘッド(35)の上端面(35b)との間の摺動面間に流入し、各摺動面間を潤滑すると共に冷却する。
第5通路(70e)から流出した潤滑油は、第2環状溝(74)から、リアヘッド(35)の滑り軸受部(35a)と駆動軸(23)の主軸部(24)との間の摺動面、第2ピストン(50)の下端面とリアヘッド(35)の上端面との間の摺動面、及び駆動軸(23)の第2偏心部(26)の下端面のスラスト軸受面(26a)とリアヘッド(35)の上端面(35b)との間の摺動面、即ち、スラスト軸受の摺動面間に流入し、各摺動面間を潤滑すると共に冷却する。
各部を潤滑した潤滑油は、油溜まり空間(60)に溜まる。
−油溜まり空間からシリンダ室への潤滑油の供給−
図4に示すように、第1ピストン(40)が上死点にあり、第2ピストン(50)が下死点にある状態を0°とする。そして、0°の第1の動作状態から時計回り方向に45°間隔で回転した第2〜第8の動作状態を図5〜図11に示している。
図4に示すように、第1ピストン(40)が上死点にあり、第2ピストン(50)が下死点にある状態を0°とする。そして、0°の第1の動作状態から時計回り方向に45°間隔で回転した第2〜第8の動作状態を図5〜図11に示している。
図4の0°の状態(第1の動作状態)では、油供給路(61)の一端は、第1ピストン(40)の径方向外側で第1シリンダ室(C1)に開放されているので、油溜まり空間(60)と第1シリンダ室(C1)とが連通する。一方、油供給路(61)の他端は、第2ピストン(50)の端面で塞がれているため、油溜まり空間(60)と第2シリンダ室(C2)とは連通しない。したがって、油溜まり空間(60)から第1シリンダ室(C1)に給油され、第2シリンダ室(C2)へは給油されない。
図5の45°の状態(第2の動作状態)では、0°の状態と同様に、油供給路(61)の一端は、第1ピストン(40)の径方向外側で第1シリンダ室(C1)に開放されているので、油溜まり空間(60)と第1シリンダ室(C1)とが連通する。一方、油供給路(61)の他端は、第2ピストン(50)の端面の径方向内側に位置しているので油溜まり空間(60)と第2シリンダ室(C2)とは連通しない。したがって、この状態でも、油溜まり空間(60)から第1シリンダ室(C1)に給油され、第2シリンダ室(C2)へは給油されない。
図6の90°の状態(第3の動作状態)も45°の状態と同様であり、油溜まり空間(60)から第1シリンダ室(C1)に給油され、第2シリンダ室(C2)へは給油されない。
図7の135°の状態(第4の動作状態)では、第1シリンダ室(C1)で油供給路(61)の一端が第1ピストン(40)の端面によって閉じ始める。この点を除いては45°や90°の状態と同じである。
図8の180°の状態(第5の動作状態)になると、第1ピストン(40)が下死点、第2ピストン(50)が上死点になる。この状態では、油供給路(61)の一端は、第1ピストン(40)の端面で塞がれているため、油溜まり空間(60)と第1シリンダ室(C1)とは連通しない。一方、油供給路(61)の他端は、第2ピストン(50)の径方向外側で第2シリンダ室(C2)に開放されているので、油溜まり空間(60)と第2シリンダ室(C2)とが連通する。したがって、油溜まり空間(60)から第2シリンダ室(C2)に給油され、第1シリンダ室(C1)へは給油されない。
図9の225°の状態(第6の動作状態)では、180°の状態と同様に、油供給路(61)の一端は、第1ピストン(40)の端面の径方向内側に位置しているので油溜まり空間(60)と第1シリンダ室(C1)とは連通しない。一方、油供給路(61)の他端は、第2ピストン(50)の径方向外側で第2シリンダ室(C2)に開放されているので、油溜まり空間(60)と第2シリンダ室(C2)とが連通する。したがって、この状態でも、油溜まり空間(60)から第2シリンダ室(C2)に給油され、第1シリンダ室(C1)へは給油されない。
図10の270°の状態(第7の動作状態)も225°の状態と同様であり、油溜まり空間(60)から第2シリンダ室(C2)に給油され、第1シリンダ室(C1)へは給油されない。
図11の315°の状態(第8の動作状態)では、第2シリンダ室(C2)で油供給路(61)の他端が第2ピストン(50)の端面によって閉じ始める。この点を除いては45°や90°の状態と同じである。
以上のように、上記油供給路(61)は、上記油溜まり空間(60)が上記第1圧縮機構部(30a)のシリンダ室(C1)及び第2圧縮機構部(30b)のシリンダ室(C2)の一方と連通する間は、他方から遮断されるので、油溜まり空間(60)の潤滑油は、各シリンダ室(C1,C2)に交互に供給される。
また、上記油供給路(61)は、上記第1圧縮機構部(30a)及び第2圧縮機構部(30b)のシリンダ室(C1,C2)に対し、各圧縮機構部(30a,30b)の動作中の吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間に連通し、各圧縮機構部(30a,30b)の動作中の吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間を除いては、上記第1圧縮機構部(30a)及び第2圧縮機構部(30b)のシリンダ室(C1,C2)に連通しないので、連通するのは各シリンダ室(C1,C2)が低圧の間だけであり、潤滑油が差圧によって各シリンダ室(C1,C2)へ供給される。
−実施形態の効果−
本実施形態によれば、ミドルプレート(33)に、上記駆動軸(23)が挿通するように該駆動軸(23)よりも大径の油溜まり空間(60)と、上下に隣り合う各シリンダ室(C1,C2)と該油溜まり空間(60)とに連通する油供給路(61)とを形成したことにより、ピストン(40,50)が偏心回転動作をする際に油溜まり空間(60)とシリンダ室(C1,C2)が油供給路(61)を介して連通すると、油溜まり空間(60)からシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油が供給される。したがって、上下に隣り合うシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油を交互に効率よく確実に供給し、シリンダ室(C1,C2)が吸入行程を開始するときの高周波脈動を潤滑油で軽減することができ、しかも、油供給路(61)を駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿ってミドルプレート(33)と平行な貫通孔により構成したことにより、構成が複雑になるのも抑制できる。
本実施形態によれば、ミドルプレート(33)に、上記駆動軸(23)が挿通するように該駆動軸(23)よりも大径の油溜まり空間(60)と、上下に隣り合う各シリンダ室(C1,C2)と該油溜まり空間(60)とに連通する油供給路(61)とを形成したことにより、ピストン(40,50)が偏心回転動作をする際に油溜まり空間(60)とシリンダ室(C1,C2)が油供給路(61)を介して連通すると、油溜まり空間(60)からシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油が供給される。したがって、上下に隣り合うシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油を交互に効率よく確実に供給し、シリンダ室(C1,C2)が吸入行程を開始するときの高周波脈動を潤滑油で軽減することができ、しかも、油供給路(61)を駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿ってミドルプレート(33)と平行な貫通孔により構成したことにより、構成が複雑になるのも抑制できる。
また、本実施形態によれば、油溜まり空間(60)からシリンダ室(C1,C2)へ潤滑油を直接供給することにより、油溜まり空間(60)からの排油量を確保できるので、駆動軸(23)の偏心部(25,26)とピストン(40,50)の摺動面に熱がこもって焼き付くのを抑制できる。つまり、この摺動面の潤滑油は、油膜の形成と軸受の冷却をその機能とするものであり、本実施形態によれば、その機能が損なわれるのを抑制できる。
上記の効果について説明する。一般に、上記油溜まり部(60)の潤滑油は、上記摺動部の熱を放出するために、CR隙間(ピストン(40,50)の端面とミドルプレート(33),フロントヘッド(31)及びリアヘッド(35)との隙間)を通って圧縮室(C1,C2)へ流れていく。そして、CR隙間が小さいと、上記摺動部からの熱の除去効果が小さくなり、摺動部に熱が溜まって駆動軸(23)の偏心部(25,26)とピストン(40,50)とが焼き付く原因になる。また、CR隙間を広げすぎると、ブレード(41,51)の上下の隙間を介して冷媒がシリンダ室(C1,C2)の高圧室(C12,C22)から低圧室(C11,C21)へ漏れやすくなり、性能が低下してしまう。これに対して、本実施形態によればCR隙間を広げすぎることなく圧縮室(C1,C2)への給油量を増やせるので、高低圧漏れによる性能低下を抑制でき、しかも脈動低減の効果も得ることができる。
また、例えば特開2011−021598号公報や特開2014−055534号公報には、圧縮機構の動作中の吐出行程から次の吸入行程が始まるまでの間に吐出ポートに潤滑油を導入し、吸入行程が開始すると潤滑油がシリンダ室へ流入するようにして脈動を抑える技術が開示されている。この技術では、シリンダ室への給油量が多いほど脈動低減効果は大きくなり、圧縮室への油が少ないと、脈動が減衰せずに脈動に起因する騒音が大きくなる。
一方、上記従来の技術では、圧縮室への給油量が多くなりすぎると、圧縮終了過程で圧縮室にある油が圧縮機構から吐出されることで、吐出弁が閉じ遅れて性能が低下する。そのため、特開2011−021598号公報や特開2014−055534号公報の技術では、運転条件が変わっても圧縮室への給油量を一定にする必要があった。しかしながら、弁の閉じ遅れを起こさない給油量で上記各公報の技術を実用化しようとすると、脈動音が大きな高差圧条件では脈動の減衰効果が十分ではなくなる問題があった。
これに対して、本実施形態によれば、圧力条件によって(つまり差圧が変化すると)、給油量が変わるので、脈動音が大きな高差圧条件で給油量を増加させ、脈動音が小さい低差圧条件では給油量を減らすことが可能になる。したがって、本実施形態によれば、脈動の低減効果と、吐出弁が閉じ遅れることによる性能低下を抑制する効果を両立させることが可能になる。
さらに、本実施形態では、1本の貫通孔により構成された油供給路(61)が二つのシリンダ室(C1,C2)への給油路として機能するため、加工が簡単であり、生産性の向上やコストアップの抑制効果を図ることができる効果もある。
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
例えば、上記実施形態では、2シリンダの型の圧縮機に本発明を適用した例を説明したが、本発明を適用する圧縮機は、ミドルプレートの上下に少なくとも2つの圧縮機構部が配置されていればよく、3つ以上のシリンダを有する圧縮機であっても適用可能である。
また、上記実施形態では、駆動軸(23)の第1偏心部(25)と第2偏心部(26)の角度のずれを180°としているが、この角度は圧縮機構の具体的な構成に応じて適宜変更してもよい。
また、上記油供給路(61)は、図12に示すように、ピストン(40,50)の内周の角部に形成した面取り(40C,50C)を介して油溜まり空間(60)と連通するように構成してもよい。
また、上記油供給通路(61)は、図13に示すように形成してもよい。
図13に示す変形例では、上記油供給路(61)は、上記駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿って上記ミドルプレート(33)に形成された軸方向油供給路(61a)と、上記軸周り油溜まり空間(60a)と上記軸方向油供給路(61a)とに連通する径方向油供給路(61b)とを備えている。そして、上記軸方向油供給路(61a)は、一端が上記第1シリンダ室(C1)に連通して他端が第2シリンダ室(C2)から遮断される状態と、一端が第2シリンダ室(C2)に連通して他端が第1シリンダ室(C1)から遮断される状態とに、連通状態が変化するように構成されている。
このように構成しても、上記実施形態と同様の効果を得ることができる。
なお、以上の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
以上説明したように、本発明は、ミドルプレートとその上下に配置された2つの圧縮機構を有する回転式圧縮機において、吐出行程の終了時に圧縮機構の吐出ポート内に残留した高圧ガスが次の吸入行程で再膨張することによりシリンダ室で生じる高周波脈動を、シリンダ室に潤滑油を供給することによって抑制する技術について有用である。
10 回転式圧縮機
23 駆動軸
25 第1偏心部
26 第2偏心部
30 圧縮機構
30a 第1圧縮機構部
30b 第2圧縮機構部
32 第1シリンダ
33 ミドルプレート
34 第2シリンダ
40 第1ピストン
50 第2ピストン
60 油溜まり空間
61 油供給路
C1 第1シリンダ室
C2 第2シリンダ室
23 駆動軸
25 第1偏心部
26 第2偏心部
30 圧縮機構
30a 第1圧縮機構部
30b 第2圧縮機構部
32 第1シリンダ
33 ミドルプレート
34 第2シリンダ
40 第1ピストン
50 第2ピストン
60 油溜まり空間
61 油供給路
C1 第1シリンダ室
C2 第2シリンダ室
Claims (5)
- ミドルプレート(33)と該ミドルプレート(33)の上下に配置された2つの圧縮機構部(30a,30b)とを有する圧縮機構(30)を備え、
上記各圧縮機構部(30a,30b)が、シリンダ室(C1,C2)を有するシリンダ(32,34)と、駆動軸(23)の偏心部(25,26)に嵌合し上記シリンダ室(C1,C2)内で偏心回転するピストン(40,50)とを備え、
上記圧縮機構(30)は、該圧縮機構(30)の摺動部に供給された潤滑油をその潤滑後に受け入れる油溜まり空間(60)を有し、
上記油溜まり空間(60)が、上記ミドルプレート(33)に上記駆動軸(23)が挿通するように形成されるとともに該駆動軸(23)よりも大径の貫通孔で構成された軸周り油溜まり空間(60a)を有している回転式圧縮機であって、
上記ミドルプレート(33)に、上記ピストン(40,50)の回転中の所定位置で上記各シリンダ室(C1,C2)と上記油溜まり空間(60)とに連通可能な油供給路(61)が形成されていることを特徴とする回転式圧縮機。 - 請求項1において、
上記油供給路(61)は、上記ピストン(40,50)の回転中に、上記油溜まり空間(60)が上記圧縮機構部(30a,30b)のシリンダ室(C1,C2)の一方と連通する間は他方から遮断されるように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。 - 請求項2において、
上記圧縮機構(30)は、第1圧縮機構部(30a)と第2圧縮機構部(30b)とからなる2シリンダ型の圧縮機構(30)であり、
上記油溜まり空間(60)は、上記軸周り油溜まり空間(60a)に加えて、上記偏心部(25,26)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成されるピストン部油溜まり空間(60b,60c)を備え、
上記油供給路(61)は、上記駆動軸(23)の軸心と平行な直線に沿って上記ミドルプレート(33)に形成された貫通孔により構成され、かつ、上記ピストン(40,50)の回転中に、一端が上記第1圧縮機構部(30a)に形成されている第1シリンダ室(C1)に連通して他端が上記油溜まり空間(60)に連通する状態と、一端が上記油溜まり空間(60)に連通して他端が上記第2圧縮機構部(30b)に形成されている第2シリンダ室(C2)に連通する状態とに、連通状態が変化するように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。 - 請求項3において、
上記第1シリンダ室(C1)内で回転する第1ピストン(40)と上記第2シリンダ室(C2)内で回転する第2ピストン(50)とが180°の位相差をつけて配置され、
上記ピストン部油溜まり空間(60b,60c)は、上記偏心部(25,26)のうちで上記第1圧縮機構部(30a)の第1ピストン(40)が嵌合する第1偏心部(25)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成される第1ピストン部油溜まり空間(60b)と、上記偏心部(25,26)のうちで上記第2圧縮機構部(30b)の第2ピストン(50)が嵌合する第2偏心部(26)と上記ミドルプレート(33)との間の軸方向隙間に形成される第2ピストン部油溜まり空間(60c)とを有し、
上記油供給路(61)は、上記ピストン(40,50)の回転中に、一端が上記第1シリンダ室(C1)に連通して他端が上記第2ピストン部油溜まり空間(60c)に連通する状態と、一端が上記第1ピストン部油溜まり空間(60b)に連通して他端が上記第2シリンダ室(C2)に連通する状態とに、連通状態が変化するように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。 - 請求項1から4の何れか1つにおいて、
上記油供給路(61)は、上記各圧縮機構部(30a,30b)のシリンダ室(C1,C2)に対し、各圧縮機構部(30a,30b)の動作中の吸入閉じ切り位置から吐出開始位置の間に連通するように構成されていることを特徴とする回転式圧縮機。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2016256831A JP2018109372A (ja) | 2016-12-28 | 2016-12-28 | 回転式圧縮機 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016256831A JP2018109372A (ja) | 2016-12-28 | 2016-12-28 | 回転式圧縮機 |
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JP2018109372A true JP2018109372A (ja) | 2018-07-12 |
Family
ID=62844412
Family Applications (1)
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JP2016256831A Pending JP2018109372A (ja) | 2016-12-28 | 2016-12-28 | 回転式圧縮機 |
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JP (1) | JP2018109372A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN110360107A (zh) * | 2019-06-28 | 2019-10-22 | 谷利伟 | 压缩机 |
-
2016
- 2016-12-28 JP JP2016256831A patent/JP2018109372A/ja active Pending
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CN110360107A (zh) * | 2019-06-28 | 2019-10-22 | 谷利伟 | 压缩机 |
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