JP2018108724A - 保護フィルム付き化粧板及び化粧板の施工方法 - Google Patents

保護フィルム付き化粧板及び化粧板の施工方法 Download PDF

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克年 堀野
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Abstract

【課題】光触媒を担持した化粧板の表面に貼着された保護フィルムを剥離した場合でも、光触媒の機能が低下することのない保護フィルム付き化粧板及び化粧板の施工方法を提供する。【解決手段】基板上の表層樹脂層上に光触媒が担持された化粧板の表面に、粘着剤を介して保護フィルムが積層されてなり、上記化粧板の表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.1〜50μmであることを特徴とする保護フィルム付き化粧板。【選択図】 図1

Description

本発明は、保護フィルム付き化粧板及び化粧板の施工方法に関する。
従来から、メラミン化粧板等の化粧板に、光触媒などの機能性物質を添加もしくは塗布することで、防汚性、抗菌性等の機能性を付与した化粧板が提供されている。
特許文献1には、化粧板用の表面紙に、シリコーンバインダを含浸したシリコーン樹脂含浸表面紙を順次積層し、熱圧成形後、光触媒コーティング剤を塗布してなる防汚性化粧板が開示されている。
しかしながら、このような光触媒がコーティングされた化粧板は、積み重ねた状態で施工現場まで運搬するため、運搬中に触媒担持層に傷がついてしまい、光触媒の機能を低下させてしまうという問題があった。
そこで、特許文献2には、ポリオレフィン系フィルムに、α−オレフィンを主成分とするα−オレフィン(共)重合体0〜40重量%、プロピレン(共)重合体1〜40重量%、スチレン・イソブチレン共重合体からなるスチレン系エラストマー30〜96重量%、及び、スチレン系モノマー/脂肪族系モノマー共重合体からなるオリゴマー1〜40重量%にて構成される粘着剤が塗布された保護フィルムを建設部材に貼り付けた積層体とし、化粧板の運搬時の傷の発生を防止する技術が開示されている。
特開2003−276117号公報 特許第5443893号
しかしながら、上記した特許文献2に記載の積層体は、化粧板を施工現場に運搬し、保護フィルムを剥離すると、粘着剤は、光触媒が担持されている側に転着されてしまうか、又は、光触媒が保護フィルムに転着してしまい、光触媒の機能が低下するという新たな問題が発生する。
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、光触媒を担持した化粧板の表面に貼着された保護フィルムを剥離した場合でも、光触媒の機能が低下することのない保護フィルム付き化粧板及び化粧板の施工方法を提供することを目的とする。
本発明の保護フィルム付き化粧板は、基板上の表層樹脂層上に光触媒が担持された化粧板の表面に粘着剤を介して保護フィルムが積層されてなり、上記化粧板の表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.1〜50μmであることを特徴とする。
なお、算術平均粗さ(Ra)の測定は、化粧板の表面(保護フィルムを積層する面)において測定される。すなわち、化粧板の表面の算術平均粗さ(Ra)には、粘着剤と接触する化粧板の表面に存在する凹凸(表層樹脂層の凹凸、耐酸化性樹脂層の凹凸、光触媒の凹凸、セラミック粒子の凹凸、中間体の凹凸)が反映される。但し、もし凹陥模様があれば、それを除くこととする。
本発明の保護フィルム付き化粧板によれば、化粧板の表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.1〜50μmであり、この表面上に粘着剤を介して保護フィルムが剥離可能なように積層されており、化粧板の表面の凹凸の谷部には粘着剤が接触せず、粘着剤が化粧板の表面に完全に密着しない。このため、保護フィルムを容易に剥離できる。そして、光触媒の表面に粘着剤は残存しない。また、粘着剤に光触媒が付着して化粧板から離脱することはないので、光触媒の機能が低下しにくく、光触媒の機能に基づく防汚性や抗ウィルス性が低下しない。
上記化粧板の表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)は、1〜10μmであることが最適である。保護フィルムの粘着性と剥離性を両立できるからである。
一方、化粧板の表面の凹凸のアンカー効果で粘着剤が化粧板の表面に接触するため、化粧板への保護フィルムの密着力は実用に耐える程度レベルで維持されるので、保護フィルムは、搬送時や輸送時に化粧板から剥がれにくい。このため、化粧板を施工現場等に運搬する場合においても、上記化粧板が傷つきにくく、光触媒の機能に基づく防汚性や抗ウィルス性が低下しない。
なお、保護フィルムを剥がした際に、粘着剤が化粧板に若干残存する場合があるが、可視光や紫外線を照射することにより、粘着剤の分解除去を促すことができる。
なお、上記のような効果を発揮するためには、粘着剤の粘着性を0.14〜6.2N/25mmに調整することが望ましく、2.5〜3.0N/25mmが最適である。なお、粘着剤の粘着性の測定は、JIS Z 0237:2009に基づいて、幅25mmの保護フィルムを粘着層を介して化粧板に貼り付けた際の180°引きはがし試験によって行われる。
本発明で使用される粘着剤は、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤を使用できる。上記アクリル系粘着剤は、アクリルポリマーからなる粘着剤であり、アクリルモノマーを選択し共重合させることにより、必要な機能を持ったアクリルポリマーが合成され、粘着剤として使用できる。
アクリル系粘着剤の種類としては、溶剤系、エマルジョン系、UV硬化型等が挙げられる。
上記アクリル系粘着剤としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート及びアクリル酸の各モノマーを、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/アクリル酸=85/15/3の重量割合で配合し、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(2,2´−Azobis(isobutyronitrile))を触媒とし、窒素気流下、酢酸エチル中で重合して得た重合度Mw=70万〜80万、固形分30%の再剥離型アクリル粘着剤等を使用することができる。
ゴム系粘着剤は以下のような方法で製造できる。
ポリイソプレン30質量部、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体51質量部及び固形状ポリイソブチレン19質量部からなる固形状ゴム成分100質量部に対して、液状ポリイソブチレン10質量部、テルペン系樹脂55質量部、並びに、脂肪族系炭化水素樹脂20質量部を添加し、溶融混合して組成物を得る。続いて、流動パラフィン25質量部、中鎖脂肪酸トリグリセリド5質量部、及び、ジブチルヒドロキシトルエン2質量部を100℃で熱溶融したものを、上記工程で得られた組成物に添加混合する。次いで、L−メントールを、全体に対して12質量%の割合となるように加えてゴム系粘着剤とする。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、保護フィルムは、ポリオレフィン樹脂からなることが望ましい。
上記ポリオレフィン樹脂は、単純なアルケン(又は、オレフィン)をモノマーとして合成される高分子化合物であり、上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂のなかでは、特に柔らかく、変形し易いポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。柔らかく、変形し易いと、化粧板から剥離させ易いからである。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、保護フィルムの厚さは、40〜110μmであることが望ましい。
上記範囲の厚さの保護フィルムは、変形させ易く、化粧板の表面の凹凸面に追従して食い込むこともないので、好適に使用することができる。
保護フィルムの厚さが40μm未満であると、保護フィルムが化粧板の表面の凹凸面に追従して食い込み、より密着してしまうため、剥離しにくくなる。一方、保護フィルムの厚さが110μmを超えると、厚すぎるために変形しにくく、剥離させにくくなる。
本発明の保護フィルム付き化粧板は、気温50℃以上、湿度60%以上の環境で保管されることが望ましい。
本発明の保護フィルム付き化粧板は、光触媒上に粘着剤を介して保護フィルムが剥離可能なように積層されており、上述した作用・効果により、気温50℃以上、湿度60%以上の環境で保管されても、保護フィルムの剥離によっては光触媒の機能が低下しないので、夏場において、日本の倉庫に保管されても問題が発生しない。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、上記光触媒は、上記表層樹脂層上に露出して配置されたセラミック粒子の露出面上に担持されていることが望ましい。
次に、本発明の保護フィルム付き化粧板を構成する化粧板の具体的な構成の例を説明する。
本発明の保護フィルム付き化粧板を構成する化粧板は、(1)基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に担持された光触媒からなるか、(2)基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に露出して配置されるセラミック粒子又は中間体(金属体、樹脂体及び無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種)と、上記セラミック粒子又は上記中間体の露出面上に担持された光触媒からなるか、(3)基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上の耐酸化性樹脂層と、上記耐酸化性樹脂層上に担持された光触媒からなるか、(4)基板と、上記基板の一方面又は両面上に積層される表層樹脂層と、上記表層樹脂層上に形成される耐酸化性樹脂層と、上記耐酸化性樹脂層上のセラミック粒子又は中間体(金属体、樹脂体及び無機繊維からなる群から選ばれる少なくとも1種)と、上記セラミック粒子又は上記中間体の露出面上に担持された光触媒からなるか、(5)基板と表層樹脂層からなる積層体上に耐酸化性樹脂からなる耐酸化性樹脂層を設け、当該耐酸化性樹脂層上に担持された光触媒からなることが望ましい。
上記中間体は、金属体、樹脂体及び無機繊維から選ばれる少なくとも1種がよい。金属体としては、金属粒子や、金属のメッシュ状、ドット状のパターンを用いることができる。金属としては、銅や銀などを使用することができる。また、樹脂体としては、耐酸化性の樹脂を用いることができる。耐酸化性の樹脂としては、シリコーン樹脂やフッ素樹脂などを使用できる。無機繊維としては、シリカ繊維、アルミナ繊維、炭化ケイ素繊維、セラミックファイバーなどを使用できる。
上記中間体を介して光触媒を担持することで、光触媒が、直接表層樹脂層に接触して、表層樹脂層を酸化分解して、化粧板の表層樹脂層や基板を退色、劣化することを防止できるからである。また、中間体により形成される表面の凹凸がアンカー効果を発現して保護フィルムを密着させた場合に、保護フィルムと化粧板との密着性を向上させることができる。
本発明の保護フィルム付き化粧板においては、上記光触媒は、上記表層樹脂層上に露出して配置されたセラミック粒子の露出面上に担持されていることが望ましい。セラミック粒子は光触媒との接着性に優れるからである。
本発明の保護フィルム付き化粧板においては、化粧板の表面における光触媒の存在量が0.01〜0.21g/mであることが望ましく、0.03〜0.21g/mであることがさらに望ましい。光触媒の存在量が0.01g/m未満では、ウィルスに対する失活機能を十分に発揮できないからである。また、化粧板の表面における光触媒の存在量が0.03〜0.21g/mであると、ノロウィルスやインフルエンザウィルスなどのウィルスに対して光触媒の機能を充分に発揮することができ、かつ、光触媒によって化粧板の意匠性が低下することを防止できる。
化粧板の表面における光触媒の存在量が0.01g/m未満の場合、光触媒の量が少なすぎるため、充分な抗菌性、抗ウィルス性を発揮できない。一方、化粧板の表面における光触媒の存在量が0.21g/mを超えると、光触媒によって化粧板の意匠性が低下する。
光触媒がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、光触媒は表層樹脂層に直接接触しない。このため、光触媒による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の変色や表層樹脂層の劣化等に起因する光触媒の脱落を防止することができる。また、光触媒がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、光触媒の表層樹脂層中への埋没がなく、粘着剤を有する保護フィルムが剥離された後は、光触媒は、化粧板の表面上に露出されているので、抗菌性、抗ウィルス性等、光触媒としての本来の機能を発揮することができ、その効果を長期間維持することができる。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、光触媒は、銅又は銅化合物を含むことが望ましい。
本発明の保護フィルム付き化粧板の他の実施形態について説明する。
本発明の保護フィルム付き化粧板においては、表層樹脂層上に耐酸化性樹脂からなる耐酸化性樹脂層が形成され、上記耐酸化性樹脂層上に上記光触媒が担持されていることが好ましい。
耐酸化性樹脂層上に光触媒が担持されていると、セラミック粒子の露出面上に光触媒が担持されている場合と同様に、光触媒は表層樹脂層に直接接触しない。このため、光触媒による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の劣化等に起因する光触媒の脱落を防止することができる。
上記耐酸化性樹脂としては、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂を使用することができる。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、セラミック粒子の等電点は、光触媒の等電点よりも高いことが望ましい。ここで等電点とは、溶液の水素イオン濃度を変化させたとき、溶質となる粒子の正と負の電荷が全体としてゼロになり、電場をかけても移動しないような状態で、粒子全体の電荷平均が0となるときの水素イオン指数であり、その値をpHとして表す。この等電点は物質により規定される値であり、チタニアからなる光触媒の等電点はpH2.0〜6.7であり、それに対し、セラミック粒子は、光触媒の等電点よりも高い等電点となるものを用いることができる。特に、セラミック粒子の等電点は、pH7以上であることがより望ましい。なお、等電点の測定方法としては、電気泳動法(JIS R1638)により行うことができる。
セラミック粒子としては、具体的には、セリウム、ジルコニウム、ストロンチウム、アルミニウム、珪素、鉄、コバルト、銅、クロム、ニッケル、錫、カドミウム、マグネシウム、マンガン、タングステン、バナジウム、イットリウムなどから選ばれる少なくとも1種の金属を含む金属酸化物あるいは金属水和物の粒子、酸化アルミニウム含有粒子、シリカ含有粒子、珪藻土からなるセラミック粒子を用いることができる。また、等電点に関し、アルミナ(Al)の等電点は、pH:7.4〜9.2、ベーマイト(AlOOH)の等電点は、pH7.7〜9.4、カドミウム水酸化物(Cd(OH))の等電点は、pH10.5以上、酸化カドミウム(CdO)の等電点は、pH7.7、鉄水和物(Fe(OH))の等電点は、pH12、酸化鉄(Fe)の等電点は、pH12、酸化銅(CuO)の等電点は、pH9.5、銅水和物(Cu(OH))の等電点は、pH7.7である。これらの成分を複合化した場合、セラミック粒子としての等電点が、光触媒の等電点よりも高いことが望ましい。
セラミック粒子は、菌やウィルスを引き寄せやすいという作用を有する。そもそも、菌やウィルスは、タンパク質や脂肪を含んでいるため、アニオン物質であり、アニオン物質は、その対極であるカチオン物質に引き寄せられるという性質を有する。つまり、化粧板の表層に存在する菌やウィルスは、セラミック粒子に引き寄せられ、セラミック粒子に担持された光触媒により、菌やウィルスを減少させることができ、また、菌やウィルスが増殖しないので、抗菌や抗ウィルスの効果を得やすくなる。セラミック粒子でない粒子の場合、化粧板の表層に存在する菌やウィルスが光触媒に接触する頻度が低いので、菌やウィルスが残存または増殖し、抗菌や抗ウィルスの効果を得にくいのである。
また、セラミック粒子は、チタニアからなる光触媒を一定間隔で担持しやすいという性質を有する。セラミック粒子でない粒子に光触媒を担持させると、光触媒の間隔が狭くなりやすい。そのため、菌やウィルスと光触媒との接触頻度が低下し、想定される菌やウィルスの減少作用が発揮されなくなる。その結果、菌やウィルスを減少させるのに時間を要し、抗菌、抗ウィルスの効果が発現しにくくなる。これに対して、本発明で用いるセラミック粒子は、一定間隔に担持されるので、菌やウィルスが光触媒との接触頻度の低下がなく、所望の時間で菌やウィルスを減少させ、抗菌、抗ウィルスの効果が発現しやすくなる。このように、セラミック粒子は、光触媒の担持を一定間隔にさせ、菌やウィルスを引き寄せるという効果があり、抗菌や抗ウィルス効果を向上させることができる。光触媒に、菌やウィルスが接触すると、光触媒は、菌やウィルスを全分解させるか、又は、一部を損傷させることができるので、菌やウィルスを減少させることができる。
上記した効果は、セラミック粒子に光触媒を担持させることにより得られる。
本発明の保護フィルム付き化粧板では、セラミック粒子として、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることが望ましい。アルミナは、セラミック粒子の中で最も利用しやすい上に、上記で説明した菌やウィルスを減少させる作用を効率的に利用することができる。また、アルミン酸ストロンチウムは、蓄光作用があるので、光がない環境下でも菌やウィルスを減少させる作用を長時間持続させることができる。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、セラミック粒子の平均粒子径は、0.1〜55μmであることが望ましい。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、上記セラミック粒子は、上記表層樹脂層表面に対して5〜30%の面積率で露出して存在することが望ましい。
セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して5%以上の面積率で露出していると、光触媒を充分に担持させることができるため、菌やウィルスを減少させる作用を充分に発揮させることができる。また、セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して30%以下の面積率で露出していると、光触媒を担持するセラミック粒子が表層樹脂層に強固に接合され脱落しにくくなるため、菌やウィルスを減少させる作用を充分に持続させることができる。
本発明の保護フィルム付き化粧板においては、上記光触媒の周囲に無機ゾルの乾燥体が配置されていることが望ましい。無機ゾルの乾燥体によって光触媒の固定化を補強することができるからである。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、光触媒としては、可視光応答型光触媒が挙げられる。可視光応答型光触媒の具体例としては、例えば、チタニアに白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウムなどの白金族、鉄、銅などを担持させたものなどが挙げられる。具体的には、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、又は、炭素ドープチタニア触媒であることが望ましい。
上記光触媒は、光触媒としての機能を充分に発揮することができるからである。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、上記表層樹脂層は、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有することが望ましい。
本発明の化粧板の施工方法は、上記した本発明の保護フィルム付き化粧板を被施工体に貼付けた後、保護フィルムを剥離除去することを特徴とする。
本発明の化粧板の施工方法によれば、上記保護フィルム付き化粧板は、保護フィルムを貼った状態で施工現場まで運搬され、接着剤で壁、床、天井あるいは家具などの被施工体の表面に貼りつけられ、接着剤が硬化した後、保護フィルムが剥離される。このため、化粧板の表面が運搬や施工作業で傷つくことがない。
本発明の保護フィルム付き化粧板は、基板上の表層樹脂層上に光触媒が担持された化粧板であって、上記光触媒上に粘着剤を介して保護フィルムが剥離可能なように積層されているので、運搬等の後で、光触媒を担持した化粧板の表面に貼着された保護フィルムを剥離した場合でも、光触媒の機能が低下することがなく、充分な抗菌性、抗ウィルス性を発揮することができる。
また、粘着剤がアクリル系粘着剤で構成されている場合、光触媒上に積層されたアクリル樹脂は分解されず、アクリル系粘着剤の粘着力が低下しないので、保護フィルムは、光触媒の間に存在するアクリル系粘着剤の粘着力で保持され、搬送時や輸送時に化粧板の表面から剥がれにくい。このため、化粧板を施工現場等に運搬する場合においても、上記化粧板が傷つき、光触媒の機能に基づく防汚性や抗ウィルス性が低下しない。
本発明の化粧板の施工方法によれば、上記した本発明の保護フィルム付き化粧板は、保護フィルムを貼った状態で施工現場まで運搬され、接着剤で被施工体の表面に貼りつけられ、接着剤が硬化した後、保護フィルムが剥離されるので、化粧板の表面が運搬や施工作業で傷つくことがない。
図1は、本発明の一実施形態に係る保護フィルム付き化粧板を模式的に示す概略断面図である。 図2は、本発明の他の実施形態に係る保護フィルム付き化粧板を模式的に示す概略断面図である。 図3は、実施例1に係る化粧板の表面の算術平均粗さ(Ra)の測定結果である。
以下、本発明の一実施形態に係る保護フィルム付き化粧板について詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る保護フィルム付き化粧板を模式的に示す概略断面図である。本明細書では、以下に説明する本発明の一実施形態に係る保護フィルム付き化粧板を、単に本発明の保護フィルム付き化粧板ということとする。
本発明の保護フィルム付き化粧板1は、基板10と基板10の表面上に積層されるメラミン樹脂等からなる表層樹脂層20を有し、セラミック粒子40が表層樹脂層20上に露出して配置され、光触媒30がセラミック粒子40上に担持されている。
また、表層樹脂層20の表面及びセラミック粒子40の周囲には、粘着剤50が存在し、粘着剤50は保護フィルム60に粘着されるとともに、セラミック粒子40の間に存在する表層樹脂層20にも粘着している。このように、セラミック粒子40の一部は、表層樹脂層20に埋まっているとともに、他の一部は、粘着剤50中に存在する。光触媒30は、粘着剤50中に存在する。なお、保護フィルム付き化粧板1における化粧板100は、基板10、表層樹脂層20、セラミック粒子40及び光触媒30とから構成される。
粘着剤50は、表層樹脂層20の表面の凹凸の谷部には充分に密着しないため、保護フィルム60を剥離しやすい。一方、表層樹脂層20の凸部は粘着剤50の内部にも入り込むため、保護フィルムの化粧板に対する粘着性は低下しない。
このため、保護フィルム60は、粘着剤50の粘着力で保持され、搬送時や輸送時に表層樹脂層20から剥がれにくく、保護フィルム付き化粧板1を施工現場等に運搬する場合においても、化粧板が傷つきにくく、光触媒の機能に基づく防汚性や抗ウィルス性が低下しない。
本発明の保護フィルム付き化粧板を構成する基板は、特に限定されるものではなく、一般的に化粧板に使用されるコア紙やマグネシアセメント等の不燃材等を使用することができる。コア紙は単独でもよく複数枚のコア紙を積層した積層体としてもよい。コア紙の枚数は特に限定されないが、1〜20枚とすることができる。コア紙としては、例えば、水酸化アルミニウム抄造紙を使用することができる。コア紙には、フェノール樹脂を含浸させることができる。また、コア紙とマグネシアセメント不燃材を積層させて基板とすることもできる。
マグネシアセメント不燃材は、単独で使用することにより、又は、コア紙の中心部に積層して配置させることにより基板を構成することができる。マグネシアセメント不燃板は、酸化マグネシウム(MgO)と塩化マグネシウム(MgCl)を混合し、さらに骨材と水を加えて混練し、板状に成形することにより製造されるものである。骨材としては、ロックウール、グラスウール等の無機質繊維、ウッドチップ、パルプ等の有機質繊維を用いることができる。また、マグネシアセメント不燃板の強度を高めるため、中間層として網目状等に形成されたガラス繊維層を設けることができる。
複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃材からなる基板表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。例えば、基板の片面又は両面にメラミン樹脂含浸紙を積層し、熱圧成形する方法を用いることができる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
また、本発明の保護フィルム付き化粧板を構成する表層樹脂層に用いることができる樹脂としては、メラミン樹脂、ジアリルフタレート(DAP)樹脂、ポリエステル樹脂、オレフィン樹脂、塩化ビニル樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂、グアナミン樹脂などが挙げられる。これらの中では、メラミン樹脂を用いることが望ましい。
メラミン樹脂は、透光性などの光学的、視覚的特性を損なうことなく、寸法安定性や靭性を改善した樹脂である。メラミン樹脂としては、メラミン及びその誘導体をモノマーとする樹脂であれば公知のものを採用することができる。また、メラミン樹脂は、単一のモノマーからなる樹脂であってもよく、複数のモノマーからなる共重合体であってもよい。メラミンの誘導体としては、例えば、イミノ基やメチロール基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基等のアルコキシメチル基などの官能基を有する誘導体が挙げられる。また、メチロール基を有するメラミン誘導体に低級アルコールを反応させて部分的あるいは完全にエーテル化した化合物をモノマーとして用いることができる。モノメチロールメラミン、ジメチロールメラミン、トリメチロールメラミン、テトラメチロールメラミン、ペンタメチロールメラミン、ヘキサメチロールメラミン等のメチロール基を有する誘導体(以下、「メチロール化メラミン」という。)を架橋剤としてメラミンと共重合させてなるメラミン樹脂を用いることができる。
メラミン樹脂含浸紙は、パターン紙にメラミン樹脂を所定の含浸率で含浸させた後、加熱、乾燥させることにより作製される。メラミン樹脂をパターン紙に含浸させるには、溶媒として、例えば、ホルムアルデヒド水溶液を使用したメラミン樹脂含有溶液中にパターン紙を浸漬することにより行うことができる。また、メラミン樹脂含浸紙に曲げ加工性を付与するために、メラミン樹脂と共に可塑剤を含む溶液を含浸させることができる。可塑剤としては、例えば、ε−カプロラクタム、アセトグアナミン、パラトルエンスルフォン酸アミド、尿素等を使用することができる。パターン紙としては、例えばチタン紙が用いられる。パターン紙の坪量は、パターン紙の厚みや重さを考慮して80〜150g/mとすることができる。加熱、乾燥の温度は、パターン紙にメラミン樹脂を強固に固着させるために100〜150℃に設定することができる。
粘着剤としては、アクリル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤などを適宜使用することができる。特にアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤が好適である。上記アクリル系粘着剤は、アクリルポリマーからなる粘着剤であり、アクリルモノマーを選択し共重合させることにより、必要な機能を持ったアクリルポリマーが合成され、粘着剤として使用できる。
アクリル系粘着剤の種類としては、溶剤系、エマルジョン系、UV硬化型等が挙げられる。
本発明の保護フィルム付き化粧板で用いるアクリル系粘着剤としては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート及びアクリル酸の各モノマーを、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/アクリル酸=85/15/3の重量割合で配合し、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(2,2´−Azobis(isobutyronitrile))を触媒とし、窒素気流下、酢酸エチル中で重合して得た重合度Mw=70万〜80万、固形分30%の再剥離型アクリル粘着剤等を使用することができる。
上記アクリル系粘着剤には、アクリル樹脂の特性に応じ、粘着付与剤、軟化剤、架橋剤、充填剤等を添加して製造することができる。
本発明の保護フィルム付き化粧板で用いる保護フィルムは、ポリオレフィン樹脂からなることが望ましい。
上記ポリオレフィン樹脂は、単純なアルケン(又は、オレフィン)をモノマーとして合成される高分子化合物であり、上記オレフィンとしては、エチレン、プロピレン等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂のなかでは、特に柔らかく、変形し易いポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。柔らかく、変形し易いと、化粧板から剥離させ易いからである。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、保護フィルムの厚さは、40〜110μmであることが望ましい。
上記範囲の厚さの保護フィルムは、変形させ易く、光触媒を有する化粧板の表面の凹凸面に追従して食い込むこともないので、好適に使用することができる。
保護フィルムの厚さが40μm未満であると、保護フィルムが光触媒を有する化粧板の表面の凹凸面に追従して食い込み、より密着してしまうため、剥離しにくくなる。一方、保護フィルムの厚さが110μmを超えると、厚すぎるために変形しにくく、剥離させにくくなる。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、化粧板の表面における光触媒の存在量は、0.01〜0.21g/mであることが望ましく、0.03〜0.21g/mであることがより望ましく、0.05〜0.19g/mであることがさらに望ましい。
光触媒の存在量が0.01g/m未満では、ウィルスに対する失活機能を充分に発揮できないからである。また、本発明の保護フィルム付き化粧板で、化粧板の表面における光触媒の存在量が0.03〜0.21g/mであると、ノロウィルスやインフルエンザウィルスなどのウィルスに対して光触媒の機能を充分に発揮することができ、かつ、光触媒によって化粧板の意匠性が低下することを防止できる。
本発明の保護フィルム付き化粧板においては、上記表層樹脂層上には、セラミック粒子が露出して配置され、上記光触媒は、上記セラミック粒子の露出面上に担持されていることが望ましい。
光触媒がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、光触媒は表層樹脂層に直接接触しない。このため、光触媒による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の変色や表層樹脂層の劣化等に起因する光触媒の脱落を防止することができる。また、光触媒がセラミック粒子の露出面上に担持されていると、光触媒の表層樹脂層中への埋没がなく、粘着剤を有する保護フィルムが剥離された後は、光触媒は、化粧板の表面上に露出されているので、抗菌性、抗ウィルス性等、光触媒としての本来の機能を発揮することができ、その効果を長期間維持することができる。
セラミック粒子としては、光触媒の等電点より高い等電点を有し、光触媒を担持することができる粒子であれば特に限定されないが、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子を用いることが望ましい。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、セラミック粒子の平均粒子径は0.1〜55μmであることが望ましく、0.5〜5μmであることがより望ましい。セラミック粒子の平均粒子径が0.1μm未満であると、セラミック粒子が表層樹脂層に埋まり易くなり、光触媒がセラミック粒子に担持されにくくなる傾向にあり、セラミック粒子の平均粒子径が55μmを超えると、セラミック粒子が脱落したり、化粧板の表面に凹凸が形成されたりするため、化粧板の外観及び意匠性に不具合が生じる傾向にある。セラミック粒子の平均粒子径が0.5〜5μmであると、光触媒としての機能性が発揮されて、化粧板の外観及び意匠性においても問題とならない。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、上記セラミック粒子は、上記表層樹脂層表面に対して5〜30%の面積率で露出して存在することが望ましい。
セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して5%以上の面積率で露出していると、光触媒を充分に担持させることができるため、菌やウィルスを減少させる作用を充分に発揮させることができる。また、セラミック粒子が、表層樹脂層表面に対して30%以下の面積率で露出していると、光触媒を担持するセラミック粒子が表層樹脂層に強固に接合され脱落しにくくなるため、菌やウィルスを減少させる作用を充分に持続させることができる。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、チタニアからなる光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、又は、炭素ドープチタニア触媒であることが望ましく、銅担持チタニア触媒であることがより望ましい。銅担持チタニア触媒としては、例えば、特開2006−232729号公報に記載されたCuO/TiO(重量%比)=1.0〜3.5の範囲で銅を含有するアナターゼ型酸化チタン、特開2012−210557号公報に記載された亜酸化銅(酸化銅(I):CuO)と酸化チタンとが複合化した光触媒組成物、特開2013−166705号公報に記載された一価銅化合物及び二価銅化合物を含む混合物を表面に担持した酸化チタン、並びに、国際公開第2013/094573号に記載された結晶性ルチル型酸化チタンを含む酸化チタンと2価銅化合物とを含有する銅及びチタン含有組成物などが挙げられる。
本発明の保護フィルム付き化粧板において、表層樹脂層は、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有していてもよい。
表層樹脂層がシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有すると、メラミン樹脂等の表面に撥水性を付与することができる。光触媒をセラミック粒子の露出面上に担持させる際に表層樹脂層がシリコーン樹脂及びシランカップリング剤を含有しない場合には、セラミック粒子表面だけでなく、表層樹脂層表面に光触媒が付着することがある。一方、表層樹脂層がシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有する場合には、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有する表層樹脂層表面の撥水性によって、光触媒は、表層樹脂層の表面を避け、極力、セラミック粒子の表面に付着するようになり、表層樹脂層の表面に直接接触する光触媒の量をさらに低減することができる。また、表層樹脂層がシランカップリング剤を含有すると、メラミン樹脂等に硬化性を付与することができ、セラミック粒子を熱圧着する際に、表層樹脂層中に埋没することを防ぐことができる。
シリコーン樹脂としては、例えば、シリコーンレジン、変性シリコーンオイル等を用いることができる。変性シリコーンオイルとしては、分子内に1個以上の官能基を有するシリコーンオイルを用いることができる。官能基を導入する位置は特に限定されず、ポリシロキサン主鎖の片末端、両末端あるいは側鎖のいずれの位置に導入してもよい。また、官能基としては、例えば、水酸基、アミノ基、メトキシ基、ヒドラジノ基、エポキシ基、メタクリル基、カルボキシル基、カルビノール基等を導入することができる。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、アクリロイル基、メタクリロキシ基、アミノ基、メルカプト基、イソシアネート基といった官能基を持ったものが望ましい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリイソプロポキシシラン、アリルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、ジアリルジメチルシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−イソシアネ−トプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
本発明の保護フィルム付き化粧板においては、光触媒の周囲に無機ゾルの乾燥体が配置されていることが望ましく、セラミック粒子の表層に無機ゾルの乾燥体が配置されていることがより望ましい。セラミック粒子の表層に無機ゾルを付着させた後、光触媒を担持し、乾燥させることにより、光触媒を無機ゾルの乾燥体で固定化し、光触媒をより強固に固定化することができるからである。無機ゾルとしては、シリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル等を用いることができるが、シリカゾルを用いることが望ましい。
また、表層樹脂層上に耐酸化性樹脂からなる耐酸化性樹脂層を設け、耐酸化性樹脂層上に光触媒を担持してもよい。
耐酸化性樹脂層を含む化粧板の例を、図2を用いて説明する。
図2は、本発明の他の実施形態に係る保護フィルム付き化粧板を模式的に示す概略断面図である。
図2に示すように、保護フィルム付き化粧板2は、基板10と基板10の表面上に積層されるメラミン樹脂等からなる表層樹脂層20と、表層樹脂層20上に形成された耐酸化性樹脂からなる耐酸化性樹脂層70を有し、光触媒30が耐酸化性樹脂層70上に配置されている。
耐酸化性樹脂層70の表面及び光触媒30の周囲には粘着剤50が存在し、粘着剤50は保護フィルム60に粘着されるとともに、光触媒30の間に存在する耐酸化性樹脂層70にも粘着しており、光触媒30は粘着剤50中に存在する。なお、保護フィルム付き化粧板2における化粧板101は、基板10、表層樹脂層20、耐酸化性樹脂層70及び光触媒30で構成される。
セラミック粒子を用いた場合と同様に、光触媒は表層樹脂層に直接接触しない。このため、光触媒による表層樹脂層の劣化を防ぐことができ、表層樹脂層の変色や表層樹脂層の劣化等に起因する光触媒の脱落を防止することができる。
上記耐酸化性樹脂としては、シリコーン樹脂もしくはフッ素樹脂を使用することができる。
シリコーン樹脂としては、具体的には、国際公開第2012/117929号、国際公開第2014/073341号に記載されたシリコーン樹脂や市販のシリコーン樹脂等を使用することができる。
次に、本発明の保護フィルム付き化粧板を製造する方法について説明する。
最初に、複数又は単数のコア紙及び/又はマグネシアセメント不燃材等からなる基板表面上に表層樹脂層を形成する。上記基板やその製造方法、上記表層樹脂層については、本発明の保護フィルム付き化粧板の説明において説明したので、ここでは省略する。
基板表面上に表層樹脂層を形成する方法は、特に限定されるものではなく、一般的な方法で行うことができる。具体的な表層樹脂層の形成方法としては、例えば、コア紙の積層体からなる基板の一方面又は両面上にメラミン樹脂等の樹脂含浸紙を積層する積層工程と、メラミン樹脂等の樹脂含浸紙が積層された基板を熱圧成形する熱圧成形工程を含む方法が挙げられる。上記方法を用いると、メラミン樹脂含浸紙のメラミン樹脂がコア紙に浸透し、そこで硬化反応が進行して、コア紙に対するメラミン樹脂含浸紙の接着力が発現する。
表層樹脂層上にさらに耐酸化性樹脂層を形成する場合には、例えば、上記の熱圧成形工程の際に、メラミン樹脂等の樹脂含浸紙を積層した後に、さらに耐酸化性樹脂のエマルジョンを含浸させた樹脂含浸紙をさらに積層する方法が挙げられる。
化粧板の表面粗さ(Ra)を調整する方法としては、表層樹脂層もしくは耐酸化性樹脂層の表面に凹凸を設ける方法が挙げられる。具体的には、表面に凹凸を設けたステンレス製の賦型板や表面に凹凸を設けた樹脂フィルムを凹凸面を未硬化の表層樹脂層や未硬化の耐酸化性樹脂層の表面に押し付けて加熱加圧して凹凸を形成する。ステンレス製賦型板は、アルミナや炭化ケイ素サンドブラストでステンレス板を粗化することで製造できる。また、樹脂フィルムの表面をサンドブラスト処理、スクラッチ処理、研磨処理、コロナ放電処理などで粗化して凹凸を形成できる。
また、サンドブラストなどで表層樹脂層や耐酸化性樹脂層を直接粗化してもよい。さらに、光触媒を担持するセラミック粒子、樹脂粒子、金属粒子などの中間体の平均粒子径や光触媒の平均粒子径を調整して表面粗さを調整することもできる。
熱圧成形する際の加熱条件としては、化粧板の温度を125〜150℃とすることができ、加圧条件としては、1.96〜9.80MPa(20〜100kg/cm)とすることができる。温度が125℃未満の場合又は圧力が1.96MPa未満の場合には、基板に対する樹脂含浸紙の密着性が不足し、剥離が発生しやすくなる。一方、温度が150℃を超える場合又は圧力が9.80MPaを超える場合には、亀裂が発生するおそれがある。
基板上に表層樹脂層を有する表層樹脂層表面に、セラミック粒子を固定する方法としては、例えば、セラミック粒子を含むスプレー液を表層樹脂層表面に吹き付け、乾燥後、熱圧着する方法をとることができる。上記方法により、表層樹脂層上にセラミック粒子を露出して固定させることができる。
また、樹脂フィルムの表面を粗化し、この粗化面にセラミック粒子を担持した後、セラミック粒子の担持面がメラミン樹脂等の樹脂含浸紙に接するように当該樹脂フィルムを積層し、加熱加圧して樹脂を硬化させた後、樹脂フィルムを除去することでセラミック粒子を表層樹脂層に転写することが望ましい。樹脂フィルムの表面は、コロナ放電、サンドブラスト、スクラッチ処理から選ばれる少なくとも1種以上の方法で粗化されることが望ましい。
樹脂フィルムの粗化面は、JIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.05〜50μmであることが望ましく、0.1〜10μmが好適である。樹脂フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる少なくとも1種以上の材質が望ましい。
セラミック粒子を表層樹脂層表面に熱圧着する際には、セラミック粒子吹き付け面と熱圧着プレス面との間にポリエチレンテレフタレート(PET)からなる離形クッション材を介在させて行うことができる。これによって、セラミック粒子が表層樹脂層内に埋没するのを防止することができ、表層樹脂層の表面上にセラミック粒子を露出させて固定することができる。
表層樹脂層の表面上にセラミック粒子を露出させて固定する他の方法としては、転写フィルムにセラミック粒子を含むスプレー液を吹き付け、次いで、表層樹脂層を有する基板の樹脂表面に、転写フィルムのセラミック粒子付着面を対向させて、セラミック粒子を熱転写する方法が挙げられる。
表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有させる際には、メラミン樹脂溶液中に、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含ませることによって、表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含浸する方法を用いることができる。
表層樹脂層にシリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有させることで、セラミック粒子を埋没させずに固定化させることができ、表層樹脂層に光触媒が付着しにくくする効果がある。具体的には、工程中に過剰となった光触媒が表層樹脂層に付着しても、洗浄工程後に除去しやすいということである。さらに、菌やウィルスなどを含む汚染水が親水性のセラミック粒子や光触媒に引き寄せられやすくなり、機能性が発現しやすくなる。特に、表層樹脂層にメラミン樹脂を用いた場合には、上記の作用、効果を得やすい。
表層樹脂層の表面上に露出して固定されたセラミック粒子の表面に光触媒を担持させる方法としては、例えば、セラミック粒子を固定した表層樹脂層に、光触媒を含む溶液をスプレー等により塗布し、溶媒を除去する方法が挙げられる。
なお、表層樹脂層に塗布した光触媒の量は、使用した光触媒を含む溶液の量から算出することができる。
また、塗布されている光触媒の存在量は、以下のようにして測定することができる。まず、化粧板の表面に担持された光触媒を分離する。分離の方法は光触媒を溶解させることができればどのような方法を用いてもよいが、弗酸、熱濃硫酸および溶解アルカリ塩などを用いて、化粧板の表面から光触媒を溶出させる。
続いて、得られた溶出液を用いて、ICP(誘導結合プラズマ)発光分光法で含有量を分析する。
銅担持チタニア触媒では酸化チタンと銅が光触媒であるので、酸化チタンの含有量に酸化物係数を乗じた値と、銅の含有量に酸化物係数を乗じた値との和が光触媒の含有量である。また、光触媒の含有量を分析した化粧板の面積で除すると存在量を得ることができる。酸化物係数とは、酸化物の組成式に占める測定元素の比率である。
一方、オレフィン樹脂からなる保護フィルム上に、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート及びアクリル酸の各モノマーを共重合させることにより得たアクリル系粘着剤を塗工して粘着層を形成し、アクリル系粘着剤を有する保護フィルムを製造する。
この後、アクリル系粘着剤を有する保護フィルムを、光触媒が担持された表層樹脂層上にアクリル系粘着剤が光触媒に接触するように載置し、押圧して保護フィルムを粘着させ、アクリル系粘着剤を有する保護フィルムが貼着された保護フィルム付き化粧板の製造を終了する。
さらに、本発明の保護フィルム付き化粧板を製造する際には、セラミック粒子の表層に無機ゾルを付着させることが望ましい。光触媒の固定化を補強することができるからである。無機ゾルとしてはシリカゾル、アルミナゾル、シリカ−アルミナゾル等を用いることができ、シリカゾルを用いることが望ましい。
また、本発明の保護フィルム付き化粧板を製造する際には、セラミック粒子の表層にシリカゾルなどの無機バインダを介して光触媒を結合させることができるが、光触媒と無機バインダの混合液をスプレーにて吹き付け、無機バインダを乾燥、硬化させた後、アルコールなどの洗浄液を吹き付けてセラミック粒子以外の場所(表層樹脂層や耐酸化性樹脂層)に付着した光触媒を除去することができる。光触媒や無機バインダは樹脂表面とは密着しないため、アルコールなどで簡単に除去することができる。また、アルコールを染み込ませた布などで光触媒をふき取ってもよい。
本発明の化粧板の施工方法は、例えば以下のような手順で行う。
軸組や鉄筋などの軸組みにパーチクルボードや石膏ボードなどの壁の下地材などの被施工体を取り付ける。化粧板の基材側裏面(光触媒が担持されていない面側)に接着剤を塗布するか、両面テープを貼り付ける。この接着剤塗布面もしくは両面テープ貼着面を被施工体に当接させて接着して貼り付ける。接着剤の硬化後、保護フィルムを剥離することで施工が完了する。光触媒が化粧板の両面に担持されている場合は、化粧板の側面に接着剤を塗布するか両面テープを貼り付けて、軸組みなどの被施工体に当接させて接着して貼り付ける。その後、保護フィルムを剥離することで施工が完了する。
接着剤は、酢酸ビニル系接着剤、ゴム系接着剤が望ましい。
(実施例1)
(一次メラミン含浸工程)
所定の色彩が印刷された厚さ0.2〜0.3mmのロール紙を、メラミン樹脂を含む溶液中に浸漬する。溶液の温度20℃、浸漬時間2分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、ロール紙にメラミン樹脂を含浸させる。なお、ロール紙の移動速度は、10〜20cm/秒とする。
(乾燥工程)
メラミン溶液中を通過したロール紙は、乾燥機(ESPEC社製、OVEN PH−201)により、温度100℃、乾燥時間30秒となるように乾燥させる。
(二次メラミン含浸工程)
乾燥工程を経たロール紙を、メラミン樹脂からなる溶液中に浸漬させる。溶液の温度20℃、浸漬時間30分となるように、ロール紙を溶液中に浸漬しながら通過させることにより、メラミン樹脂をロール紙に含浸させる。なお、ロール紙の移動速度は、10〜20cm/秒とする。
(乾燥・切断工程)
メラミン溶液中を通過したロール紙は、乾燥機(ESPEC社製、OVEN PH−201)により、温度100℃、乾燥時間2時間となるように乾燥させる。乾燥後、910mm×1820mmに切断する。
(乾燥工程)
メラミン樹脂含浸紙を乾燥機(ESPEC社製、OVEN PH−201)により、温度110℃、乾燥時間2分となるように乾燥させる。
(アルミナ粒子スプレー工程)
ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムの表面をアルミナのサンドブラストで粗化してJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が3.5μmであるフィルムとする。平均粒子径0.5μmのγアルミナ粒子とエタノールからなるスプレー液を調製する。スプレー液を常温でスプレーに充填し、フィルムの粗化面に吹き付けて乾燥させて、アルミナ粒子担持フィルムを製造する。
(組合せ工程)
厚み0.3〜0.4mmのフェノール樹脂含浸コア紙を4枚積層し、その上に、メラミン樹脂含浸紙及び上記工程により得られたアルミナ粒子担持フィルムを、メラミン樹脂含浸紙がフェノール樹脂含浸コア紙側となるように、かつ、アルミナ粒子担持フィルムのアルミナ粒子担持面(サンドブラストにより粗化した面でもある)がメラミン樹脂含浸紙と接触するように積層配置し、PETからなる離形クッション材を介在させて、温度143℃、プレス圧80kg/cm、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着し、アルミナ粒子担持フィルムを構成するポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムを剥離する。これにより、メラミン樹脂含浸層上にアルミナ粒子が露出して固定され、表面に凹凸が形成された表層樹脂層が得られる。
(光触媒担持工程)
平均粒子径100nmのCuO−TiOの光触媒を水に分散したスラリー(固形分濃度25重量%)と、シリカゾル(SiO濃度:3重量%)とを、4.5:5.5の重量割合(固形分重量)で含むメタノール混合溶液(光触媒濃度0.05重量%)を調製した。上記工程で得られた表層樹脂層の表面に、スプレーを用いて上記メタノール混合溶液を塗布し、25℃で12時間乾燥させることにより、シリカゾルの乾燥体を介してアルミナ粒子上に上記光触媒が担持された化粧板(本発明の保護フィルム付き化粧板を構成する化粧板)の製造を完了する。光触媒に担持された光触媒の固形分重量を、0.11g/mとする。
(算術平均粗さ(Ra)の測定)
続いて、下記条件で化粧板の表面の算術平均粗さ(Ra)を測定する。
表面粗さ測定器として、(株)東京精密製のサーフコム1800Dを用い、測定長さ12.5mmの条件で、JIS B 0601:2013に基づく表面の算術平均粗さ(Ra)を測定する。測定条件は、算出規格:JIS−´94規格、測定長さ:12.5mm、カットオフ波長:2.5mm、測定倍率:×2K、測定速度:0.30mm/s、カットオフ種別:ガウシアン、傾斜補正:最小二乗直線補正である。
化粧板の表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が4.24μmである実施例1に係る化粧板を製造する。
得られた化粧板の表面の算術平均粗さ(Ra)の測定結果を図3に示す。
(実施例2)
(パターン層用メラミン樹脂含浸紙作製工程)
厚さ0.2mmのチタン紙(酸化チタン含有量15重量%)の一方の表面にパターンをグラビア印刷する。このチタン紙をメラミン樹脂溶液中に浸漬し、溶液の温度20℃、浸漬時間2分となるように、チタン紙にメラミン樹脂を含浸させる。
メラミン樹脂溶液を含浸させたチタン紙は、乾燥機に(ESPEC社製、OVEN PH−201)より、温度100℃で30秒間乾燥させる。乾燥後、910mm×1820mmに切断し、パターン層用メラミン樹脂含浸紙を得る。
(耐酸化性樹脂シート作製工程)
厚さ0.2mmのオーバーレイ紙(タルク含有量0.5重量%)に、アクリルシリコーン樹脂エマルジョン(チタン工業株式会社製 PCU−103)を、固形分重量に換算して77g/mとなるように含浸させる。アクリルシリコーン樹脂エマルジョンを含浸させたオーバーレイ紙は、乾燥機により、温度100℃で30秒間乾燥させる。乾燥後、910mm×1820mmに切断し、耐酸化性樹脂シートを得る。
(組合せ工程)
厚み0.3mmのフェノール樹脂含浸コア紙を4枚積層し、その上に、チタン紙に印刷された色彩面が上記コア紙とは反対側となるように上記パターン層用メラミン樹脂含浸紙を積層し、さらにその上に耐酸化性樹脂シートを積層して、JIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が49μmであるステンレス賦型板をプレス機と耐酸化性樹脂シートとの間に介在させ、温度143℃、プレス圧80kg/cm、プレス時間(昇温時間を含む)50分で熱圧着する。これにより、表面に凹凸が形成された耐酸化性樹脂層を形成する。
(光触媒担持工程)
平均粒子径50nmのCu−TiOの光触媒を水に分散したスラリー(固形分濃度25重量%)と、シリカゾル(SiO濃度:3重量%)とを、4.5:5.5の重量割合(固形分重量)で含むメタノール混合溶液(光触媒濃度0.05重量%)を調製する。上記工程で得られた耐酸化性樹脂層の表面に、スプレーを用いて上記メタノール混合溶液を塗布し、25℃で12時間乾燥させることにより、シリカゾルの乾燥体を介して上記光触媒が担持された化粧板の製造を完了する。化粧板に担持された光触媒の固形分重量は、0.11g/mである。
表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が50μmである化粧板を形成することができる。
(実施例3)
実施例2と同様であるが、JIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.05μmであるステンレス賦型板を使用する。表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.1μmである化粧板を形成することができる。
(比較例1)
実施例2と同様であるが、JIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.01μmであるステンレス賦型板を使用する。表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.06μmである化粧板を形成することができる。
(比較例2)
実施例2と同様であるが、JIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が55μmであるステンレス賦型板を使用する。表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が55.1μmである化粧板を形成することができる。
(保護フィルムの製造)
2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート及びアクリル酸の各モノマーを、2−エチルヘキシルアクリレート/メチルメタアクリレート/アクリル酸=85/15/3の重量割合で配合し、2,2´−アゾビスイソブチロニトリル(2,2´−Azobis(isobutyronitrile))を触媒とし、窒素気流下、酢酸エチル中で重合して得た重合度Mw=70万〜80万、固形分30%の再剥離型アクリル粘着剤を、厚さ65±10μmのポリエチレンフィルムの表面に、固形分で25g/mとなるように塗工し、100℃で3分間乾燥して粘着層を形成し、アクリル系粘着剤を有する保護フィルムとする。
(保護フィルムの貼着)
上記実施例1〜3及び比較例1〜2に係る化粧板の光触媒担持面に粘着層が接触するように、アクリル系粘着剤を有する保護フィルムを載置し、押圧して、アクリル系粘着剤を有する保護フィルムを化粧板の表面に貼着して、実施例1〜3及び比較例1〜2に係る保護フィルム付き化粧板を得る。
(剥離後の保護フィルムに対する光触媒付着の有無の評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2に係る保護フィルム付き化粧板を70℃で24時間放置したのち、保護フィルムを剥離し、粘着剤が粘着された側の保護フィルムについて、蛍光X線分析装置を用いてチタンの元素マッピングを行う。その結果、実施例1〜3に係る保護フィルム付き化粧板から剥離した保護フィルムでは、炭素元素と酸素元素が検出されるが、チタン元素は全く検出されず、粘着剤中には、チタニアが剥がれて付着している可能性はない。一方、比較例1、2では粘着剤中にチタン元素が検出される。
(抗ウィルス性評価)
実施例1〜3及び比較例1〜2に係る保護フィルム付き化粧板を70℃で24時間放置したのち、保護フィルムを剥離し、抗ウィルス性を評価するために、JIS R1756 可視光応答形光触媒材料の抗ウィルス性試験方法に準じて抗ウィルス性に関する測定を行う。保護フィルムの影響を調べるために、実施例1〜3及び比較例1〜2と同じ製造方法で製造し保護フィルムを貼りつけない化粧板についても同様に測定する。
実施例1〜3及び比較例1〜2に係る保護フィルム付き化粧板の抗ウィルス性を評価するために、JIS R1756 可視光応答形光触媒材料の抗ウィルス性試験方法に準じて抗ウィルス性に関する測定を行う。測定結果は、大腸菌に対して不活化されたウィルス濃度で表す。ここで、ウィルス濃度の指標として、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度(ウィルス不活度)を使用する。
ウィルス不活度とは、バクテリオファージを用いた抗ウィルス性試験で、ファージウィルスQβ濃度:830万個/ミリリットルを用いて、大腸菌に感染することができるウィルスの濃度を測定することにより、大腸菌に対して不活化されたウィルスの濃度を算出した結果である。すなわち、ウィルス不活度は、ファージウィルスQβ濃度に対して、大腸菌に感染することができない濃度の度合いであり、(ファージウィルスQβ濃度−大腸菌に感染することができるウィルスの濃度)/(ファージウィルスQβ濃度)×100で算出することができる。ウィルス不活度の値が高いほど(ウィルス不活性度の絶対値が高い程)、抗ウィルス性に優れるといえる。ウィルス不活度からウィルス不活性度を求め、表1に示す。
また、ウィルス不活度からウィルス不活性度を計算する。
ウィルス不活性度とは、元のウィルスの量を1とし、ウィルス失活処理後に失活したウィルスの相対量をXとした場合に、常用対数log(1−X)で示される数値(負の値で示される)であり、絶対値が大きい程ウィルスを不活性化する能力が高い。例えば、元のウィルスの99.9%が失活した場合、ウィルス不活性度は、log(1−0.999)=−3.00で表記される。なお、ウィルス失活処理前の全ウィルス量に対するウィルス失活処理後に失活したウィルス量の割合を%で表したもの(上記の場合、99.9%)をウィルス不活度という。
Figure 2018108724
(引きはがし試験)
実施例2と同様の手順で、表面の算術平均粗さRaがそれぞれ1.0μm、10μmの化粧板(実施例4及び実施例5)を製造し、実施例1〜5に係る化粧板に保護フィルムを貼り付けて、JIS Z 0237:2009に基づいて、180°の引きはがし試験を実施する。試験サンプルは、幅25mmのものを用い、粘着力の単位をN/25mmで表記する。粘着力は、実施例1では2.6N/25mm、実施例2では3.1N/25mm、実施例3では3.1N/25mm、実施例4では2.8N/25mm、実施例5では2.7N/25mmであり、いずれも粘着性に優れるが、実施例2、3では粘着力が3.0N/25mmを超えるため、引きはがしのためにやや力が必要になる。
実施例1〜3に係る保護フィルム付き化粧板は、保護フィルムを貼り付けた後、保護フィルムを剥離しても高い抗ウィルス性を有する。このため、光触媒の表面に粘着剤が付着していないと考えられる。
一方、比較例1、2に係る保護フィルム付き化粧板では、保護フィルムを剥がした後のウィルス不活性度が低下しており、粘着剤によるウィルス失活機能の低下が疑われる。化粧板の表面粗さが小さい場合には、粘着剤が凹凸の谷部まで侵入して保護フィルムと化粧板との密着性が高くなり、化粧板の表面粗さが大きすぎても化粧板の表面の凹凸のアンカー効果により、保護フィルムと化粧板との密着性が高くなってしまうため、いずれにせよ、保護フィルムを剥離した場合に光触媒が粘着剤側に転写されて脱離してしまうと推定される。
1、2 保護フィルム付き化粧板
10 基板
20 表層樹脂層
30 光触媒
40 セラミック粒子
50 粘着剤
60 保護フィルム
70 耐酸化性樹脂層
100、101 化粧板

Claims (16)

  1. 基板上の表層樹脂層上に光触媒が担持された化粧板の表面に、粘着剤を介して保護フィルムが積層されてなり、
    前記化粧板の表面のJIS B 0601に基づく算術平均粗さ(Ra)が0.1〜50μmであることを特徴とする保護フィルム付き化粧板。
  2. 前記保護フィルムは、ポリオレフィン樹脂からなる請求項1に記載の保護フィルム付き化粧板。
  3. 前記保護フィルムの厚さは、40〜110μmである請求項1又は2に記載の保護フィルム付き化粧板。
  4. 前記化粧板は、気温50℃以上、湿度60%以上の環境で保管される請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  5. 前記光触媒は、前記表層樹脂層上に露出して配置されたセラミック粒子の露出面上に担持されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  6. 前記セラミック粒子は、アルミナ又はアルミン酸ストロンチウムのいずれかからなる粒子である請求項5に記載の保護フィルム付き化粧板。
  7. 前記セラミック粒子の平均粒子径は、0.1〜55μmである請求項5又は6に記載の保護フィルム付き化粧板。
  8. 前記光触媒は、金属体、樹脂体及び無機繊維から選ばれる少なくとも1種の中間体を介して担持されてなる請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  9. 前記表層樹脂層上には、耐酸化性樹脂からなる耐酸化性樹脂層が形成され、前記耐酸化性樹脂層上に前記光触媒が担持されている請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  10. 前記化粧板の表面における光触媒の存在量は、0.01〜0.21g/mである請求項1〜9のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  11. 前記光触媒の周囲に無機ゾルの乾燥体が配置されている請求項1〜10のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  12. 前記光触媒は、可視光応答型光触媒である請求項1〜11のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  13. 前記光触媒は、白金担持チタニア触媒、銅担持チタニア触媒、鉄担持チタニア触媒、窒素ドープチタニア触媒、硫黄ドープチタニア触媒、又は、炭素ドープチタニア触媒である請求項12に記載の保護フィルム付き化粧板。
  14. 前記光触媒は、銅又は銅化合物を含む請求項1〜12のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  15. 前記表層樹脂層は、シリコーン樹脂及び/又はシランカップリング剤を含有する請求項1〜14のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の保護フィルム付き化粧板を被施工体に貼付けた後、保護フィルムを剥離除去することを特徴とする化粧板の施工方法。
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