JP2018107975A - 電動モータ - Google Patents

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Abstract

【課題】永久磁石の周囲にスリーブを設けたモータ構造において、永久磁石の割れや繊維の剥離等の問題を抑制する。【解決手段】電動モータ100のロータ140は、ロータ軸142と、前記ロータ軸の外周に設けられた永久磁石144と、前記永久磁石の外周に設けられ繊維強化樹脂材料で形成されたスリーブ150と、を備える。前記スリーブは、前記永久磁石に接する内層154と、前記内層よりも外側に設けられた外層152とを有し、前記内層の繊維方向が、前記外層の繊維方向よりも前記ロータ軸の軸方向に近い方向に設定されている。【選択図】図2

Description

本発明は、永久磁石を用いた電動モータに関する。
特許文献1では、ロータの永久磁石の周囲に、繊維強化樹脂材料で形成された保護カバーを設けることによって、遠心力による永久磁石の破損を防止する電動モータが提案されている。この電動モータでは、永久磁石付きのロータが、保護カバーから圧縮力を受けた状態で固定される。なお、以下では保護カバーを「スリーブ」とも呼ぶ。
特開平8−107641号公報
高速で回転する電動モータの場合に、遠心力による永久磁石の破損を防止するためには、スリーブの締め代をより大きく設定することが望ましい。しかし、スリーブの締め代を大きく設定すると、永久磁石の割れや繊維の剥離等の問題が生じ得る。そこで、これらの問題の発生を抑制可能な技術が望まれている。
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
本発明の一形態によれば、ステータ(120)とロータ(140)とを備えた電動モータ(100,100a)が提供される。この電動モータにおいて、前記ロータは、ロータ軸(142)と、前記ロータ軸の外周に設けられた永久磁石(144)と、前記永久磁石の外周に設けられ、繊維強化樹脂材料で形成されたスリーブ(150,150a)と、を備える。前記スリーブは、前記永久磁石に接する内層(154,154a)と、前記内層よりも外側に設けられた外層(152,152a)とを有し、前記内層の繊維方向が、前記外層の繊維方向よりも前記ロータ軸の軸方向に近い方向に設定されている。
この形態の電動モータによれば、スリーブの内層の繊維方向が、外層の繊維方向よりもロータ軸の軸方向に近い方向に設定されているので、スリーブに大きな締め代を設けても、永久磁石の割れや繊維の剥離等の問題の発生を抑制することができる。
第1実施形態としての電動モータの構成を示す説明図。 第1実施形態においてスリーブにロータ軸を圧入する様子を示す説明図。 第2実施形態としての電動モータの構成を示す説明図。 第2実施形態においてスリーブにロータ軸を圧入する様子を示す説明図。
A.第1実施形態:
図1に示すように、第1実施形態の電動モータ100は、モータケース110と、ステータ120と、ロータ140と、軸受け160とを備える。ステータ120は、モータケース110内に収容されており、電磁コイル124と、図示しないステータコアとを有する。ロータ140は、ステータ120の内側にギャップを介して配置されており、モータケース110の両端に設けられた軸受け160によって支持されている。ロータ140は、ロータ軸142と、ロータ軸142の外周に設けられた永久磁石144と、永久磁石144の外周に設けられたスリーブ150とを有する。
スリーブ150は、繊維強化樹脂材料で形成された円筒状部材である。スリーブ150は、ロータ軸142が高速に回転する際に、永久磁石144が破損することを防止する保護部材として機能する。繊維強化樹脂材料としては、例えば炭素繊維強化樹脂材料(CFRP)や、ガラス繊維強化樹脂材料(GFRP)を使用することが可能である。スリーブ150の強度を高めるという観点からは、炭素繊維強化樹脂材料を用いることが好ましい。
図2に示すように、スリーブ150は、永久磁石144に接する内層154と、内層154よりも外側に設けられた外層152とを有する。本実施形態では、スリーブ150は内層154と外層152の2層構造であるが、内層154と外層152の間に他の層を設けても良い。
スリーブ150の外層152は、その繊維方向が、ロータ軸142の軸方向Cと直交する方向に設定されている。ここで、「繊維方向」とは、繊維束が延びる方向を意味する。また、「軸方向Cと直交する方向」とは、ロータ軸142周りの周方向を意味する。なお、本明細書において、「軸方向Cと直交する方向」という用語は、軸方向Cと厳密に直交する方向のみを意味している訳ではなく、軸方向Cと厳密に直交する方向との成す角度が±5°未満である方向を含む広い意味で使用する。外層152の繊維方向がロータ軸142の軸方向Cと直交する方向に設定されている理由は、遠心力から永久磁石144を保護するために適した繊維方向だからである。外層152の繊維束の層数は1層でも良いが、大きな強度を得るために2層以上の複数の層に重ね巻きすることが好ましい。なお、1本の繊維束の直径は、例えば5μm〜20μmなので、これらを多層に重ね巻きしても外層152の厚みが過度に大きくなることはない。但し、図2では、図示の便宜上、外層152の厚みを実際よりも誇張して大きく描いている。
スリーブ150の内層154の繊維方向は、ロータ軸142の軸方向Cと平行な方向に設定されている。この理由は、永久磁石144が設けられたロータ軸142(以下、「永久磁石付きロータ軸146」と呼ぶ)と、スリーブ150との組み立てを容易にするためである。この点については以下で詳述する。
図2は、永久磁石付きロータ軸146とスリーブ150を組み立てる前の状態を示している。室温では、永久磁石付きロータ軸146の外径D146は、スリーブ150の内径D150よりも大きい。電動モータの100の通常の運転状態でも同様である。スリーブ150の締め代は、室温における両者の直径の差の半分であり、(D146−D150)/2で与えられる。従って、両者を組み立てる際には、焼き嵌めや冷し嵌めが利用される。なお、典型的な繊維強化樹脂材料は熱膨張係数が小さいので、通常は冷し嵌めを利用することが好ましい。冷し嵌めでは、永久磁石付きロータ軸146を冷却してその外径D146を小さくした状態で、スリーブ150の内部に挿入する。この挿入時には、永久磁石付きロータ軸146の外径D146が、スリーブ150の内径D150よりも小さくなるように十分に冷却することが好ましい。但し、永久磁石付きロータ軸146の外径D146がスリーブ150の内径D150よりも大きな状態で、永久磁石付きロータ軸146をスリーブ150に圧入するようにしてもよい。永久磁石付きロータ軸146をスリーブ150に挿入した後は、永久磁石付きロータ軸146が室温になると、永久磁石付きロータ軸146が熱膨張してその外径D146がスリーブ150の内径D150よりも大きくなる。この結果、永久磁石付きロータ軸146が、スリーブ150から圧縮力を受けた状態で固定される。
本実施形態では、スリーブ150の外層152の内側に、ロータ軸142の軸方向Cと平行な繊維方向を有する内層154が設けられているので、永久磁石付きロータ軸146とスリーブ150とを組み立てる作業が容易である。すなわち、内層154を設けない場合には、外層152の繊維方向がロータ軸142の軸方向Cと直交する方向であるため、スリーブ150の締め代を大きく設定すると、組み立て作業の際に永久磁石144と繊維とが干渉して、永久磁石144の割れや繊維の剥離等の問題が発生する可能性がある。一方、本実施形態のように内層154を設けると、その繊維方向がロータ軸142の軸方向Cと平行なので、永久磁石付きロータ軸146を挿入又は圧入する際の抵抗が小さくなり、この結果、永久磁石144の割れや繊維の剥離等の問題の発生を抑制することが可能である。
スリーブ150は、例えば以下のように製造することが可能である。まず、未硬化の樹脂(例えばエポキシ樹脂)を含浸させた炭素繊維などの繊維束を準備する。この繊維束を「未硬化繊維強化樹脂部材」と呼ぶ。また、スリーブ150の製造に用いる円筒状のマンドレルを準備する。そして、マンドレルの外面に、未硬化繊維強化樹脂部材をマンドレルの軸方向に沿って配列することによって、未硬化の内層154を形成する。その後、未硬化の内層154の外側に、未硬化繊維強化樹脂部材を巻き付けることによって未硬化の外層152を形成する。その後、未硬化の内層154と外層152とを有するスリーブ150を加熱して樹脂を硬化させる。そして、硬化後にマンドレルを抜き取ることによって、図2に示した構造のスリーブ150が得られる。なお、必要に応じて、スリーブ150の長さや外径を調整するための加工を施しても良い。
このように、第1実施形態では、永久磁石144の外周に、繊維強化樹脂材料で形成されたスリーブ150を設けたので、ロータ140の回転時に永久磁石144を遠心力から保護することが可能である。また、スリーブ150の外層152の繊維方向を、ロータ軸142の軸方向Cに直交する方向としたので、永久磁石144を遠心力から保護するためのスリーブ150の強度を高めることができる。更に、外層152の内側に、繊維方向がロータ軸142の軸方向Cに平行な内層154を設けたので、永久磁石付きロータ軸146をスリーブ150に挿入又は圧入する際の抵抗が小さくなる。この結果、永久磁石144の割れや繊維の剥離等の問題の発生を抑制することが可能である。
なお、第1実施形態では、スリーブ150の内層154の繊維方向がロータ軸142の軸方向Cと平行であり、また、外層152の繊維方向が軸方向Cと直交する方向としていたが、内層154と外層152の繊維方向としては、これら以外の他の方向を採用することも可能である。例えば、外層152を交差巻きで形成することによって、その繊維方向を、ロータ軸142の軸方向Cと交差する2つの方向に向けるようにしてもよい。また、内層154の繊維方向として、例えば、ロータ軸142の軸方向Cに平行な方向と繊維方向との成す角度が5°以上45°以下になるような方向を採用してもよい。このような種々の繊維方向を採用する場合にも、内層154の繊維方向が、外層152の繊維方向よりもロータ軸142の軸方向Cに近い方向に設定されていることが好ましい。ここで、「軸方向Cに近い方向」とは、軸方向Cに平行な方向との成す角度がより小さい方向を意味する。この際、軸方向Cに平行な方向と繊維方向との成す角度としては、軸方向Cに平行な直線と繊維方向の接線との交差で作られる2つの角度のうちの小さな方の値を使用する。内層154の繊維方向を外層152の繊維方向よりもロータ軸142の軸方向Cに近い方向に設定すれば、内層154が無い場合に比べてスリーブ150の内部に永久磁石付きロータ軸146を挿入又は圧入し易くなるので、大きな締め代を設けても、永久磁石の割れや繊維の剥離等の問題の発生を抑制することができる。但し、内層154の繊維方向としては、ロータ軸142の軸方向Cと平行な方向が最も好ましい。また、外層152の繊維方向としては、ロータ軸142の軸方向Cと直交する方向が最も好ましい。
B.第2実施形態:
図3に示すように、第2実施形態の電動モータ100aは、ロータ140aのスリーブ150aの構造が第1実施形態のロータ140と異なり、他の構造は第1実施形態と同じである。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
図4に示すように、第2実施形態のスリーブ150aは、その一端に、外側に向けて広がるテーパ部156を有する。なお、スリーブ150aの直円筒状の部分を「ストレート部158」と呼ぶ。テーパ部156とストレート部158は、それぞれ外層152aと内層154aとを有する。テーパ部156とストレート部158の内層154aは、テーパ部156とストレート部158にわたって連続する同一の繊維束で形成されている。テーパ部156は、永久磁石付きロータ軸146をスリーブ150aに挿入又は圧入するときの入口として利用される。このような構成を採用すれば、スリーブ150aの内部に永久磁石付きロータ軸146を更に挿入又は圧入し易くなるので、永久磁石の割れや繊維の剥離等の問題の発生を更に抑制することができる。特に、本実施形態では、テーパ部156の内層154aとストレート部158の内層154aが連続した同一の繊維束で形成されているので、スリーブ150aの内部に永久磁石付きロータ軸146を更に挿入又は圧入し易くなり、また、より大きな締め代を確保することができる。
前述した図3に示すように、電動モータ100aを組み立てた状態において、テーパ部156が永久磁石144と電磁コイル124との間のギャップよりも外側に配置されるようにスリーブ150aを形成することが好ましい。このようにすれば、テーパ部156が電磁コイル124と接触して電磁コイル124を損傷させる可能性を低減できる。或いは、永久磁石付きロータ軸146をスリーブ150aに挿入又は圧入した後に、テーパ部156を切除してもよい。この場合には、図1に示した第1実施形態と同じ構造が得られる。なお、第1実施形態で説明した各種の変形例は、第2実施形態にも同様に適用可能である。
本発明は、上述の実施形態や変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
100,100a…電動モータ、110…モータケース、120…ステータ、124…電磁コイル、140,140a…ロータ、142…ロータ軸、144…永久磁石、146…永久磁石付きロータ軸、150,150a…スリーブ、152,152a…外層、154,154a…内層、156…テーパ部、158…ストレート部、160…軸受け

Claims (4)

  1. ステータ(120)とロータ(140)とを備えた電動モータ(100,100a)であって、
    前記ロータは、
    ロータ軸(142)と、
    前記ロータ軸の外周に設けられた永久磁石(144)と、
    前記永久磁石の外周に設けられ、繊維強化樹脂材料で形成されたスリーブ(150,150a)と、
    を備え、
    前記スリーブは、前記永久磁石に接する内層(154,154a)と、前記内層よりも外側に設けられた外層(152,152a)とを有し、
    前記内層の繊維方向が、前記外層の繊維方向よりも前記ロータ軸の軸方向に近い方向に設定されている、電動モータ。
  2. 請求項1に記載の電動モータにおいて、
    前記内層の繊維方向が、前記ロータ軸の軸方向に平行である、電動モータ。
  3. 請求項2に記載の電動モータにおいて、
    前記外層の繊維方向が、前記ロータ軸の軸方向に直交する方向である、電動モータ。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載の電動モータ(100a)において、
    前記スリーブ(150a)は、前記スリーブの一端に外側に向けて広がるテーパ部(156)を有する、電動モータ。
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