[第1実施形態]
以下、本発明の好適な第1実施形態について説明する。
<回転方向切換装置>
第1実施形態に係る回転方向切換装置1は、両方向に回転させる部分を含む種々の装置に搭載されるものである。図1、図2に示すように、第1実施形態に係る回転方向切換装置1は、シャフト11と、第1部材12と、第2部材13と、2つの中間傘歯車14(本発明の「中間ギヤ」)と、切換部15と、を備えている。
シャフト11は、円筒状の部材である。なお、以下では、シャフト11の軸11a(本発明の「中心軸」)と平行な方向を「シャフト軸方向」(本発明の「一方向」)とし、軸11aと平行な図1、図2の左右方向の右側及び左側を、それぞれ、「シャフト軸方向の右側」、及び、「シャフト軸方向の左側」として説明を行う。
第1部材12は、シャフト11に回転自在に支持されることで、軸11aを中心に回転可能となっている。第1部材12の外周部には、リング歯車12aが設けられている。リング歯車12aは、図示しないギヤなどを介してモータと接続されている。また、第1部材12には、シャフト軸方向における右側の端部に傘歯車12b(本発明の「第1ギヤ」)が設けられている。
第2部材13は、シャフト軸方向における第1部材12の右側に位置しており、シャフト11に回転自在に支持されることで、軸11aを中心に回転可能となっている。第2部材13の外周部には、リング歯車13aが設けられている。リング歯車13aは、図示しないギヤなどを介してモータによって駆動される駆動対象と接続されている。また、第2部材13には、シャフト軸方向における左側の端部に、傘歯車13bとシャフト軸方向に対向する傘歯車13b(本発明の「第2ギヤ」)が設けられている。
なお、ここでは、リング歯車12aにモータが接続され、リング歯車13aに駆動対象が接続されているとして説明を行うが、これとは逆に、リング歯車13aにモータが接続され、リング歯車12aに駆動対象が接続されていてもよい。
2つの中間傘歯車14は、傘歯車12bと傘歯車13bとの間に位置している。各中間傘歯車14は、その軸方向がシャフト軸方向と直交しており、傘歯車12b及び傘歯車13bと噛み合って、傘歯車12bと傘歯車13bとを接続している。また、2つの中間傘歯車14は、シャフト11の軸11aを中心に約180°離れて配置されている。
また、シャフト11には、第1部材12と第2部材13との間に位置する部分の、軸11aを中心に約180°離れた部分から、シャフト11の径方向に延びた2つの支持部11bが設けられている。2つの中間傘歯車14と2つの支持部11bとは対応しており、各中間傘歯車14が対応する支持部11bに回転可能に支持されている。これにより、シャフト11と2つの中間傘歯車14とは、軸11aを中心に一体的に回転可能となっている。
<切換部>
切換部15は、第1部材12と第2部材13との相対回転方向を切り換えるためのものであり、シャフト軸方向における、第2部材13の右側に位置している。また、シャフト軸方向における、シャフト11の、切換部15よりも右側の部分には、ホルダ16が取り付けられている。ホルダ16は、シャフト11に固定されており、シャフト11とホルダ16とが一体的に回転可能となっている。
切換部15は、フィールド21と、永久磁石22と、ボビン23と、コイル24と、アマチュア25(本発明の「第1連結部」)と、ロータ26(本発明の「第2連結部」)と、アマチュア27(本発明の「第4連結部」)と、ロータ28(本発明の「第3連結部」)とを備えている。
フィールド21は、金属材料からなる略円筒状の部材であり、シャフト11の全周を取り囲んでいる。フィールド21の内壁面には、シャフト軸方向における中央部に、径方向の内側に向かって延びた隔壁21aが形成されている。また、フィールド21は、固定爪30によって固定されることで、シャフト11の軸11aを中心とする回転が規制されている。
永久磁石22は、略円筒状に形成され、フィールド21内の、シャフト軸方向における、隔壁21aよりも左側の部分に収容され、シャフト11の全周を取り囲んでいる。ボビン23は、金属材料などからなり、フィールド21内の、シャフト軸方向における、隔壁21aよりも右側の部分に収容され、シャフト11の全周を取り囲んでいる。コイル24は、ボビン23に収容され、シャフト11の全周を取り囲んでいる。また、コイル24は、制御装置50に接続されている。制御装置50は、コイル24に電流を流すか否かを切り換える。
アマチュア25は、金属材料からなる略円形の部材であり、シャフト軸方向における第2部材13の右端部に取り付けられ、シャフト11の全周を取り囲んでいる。アマチュア25は、第2部材13と一体的に軸11aを中心に回転可能となっている。また、第2部材13には、アマチュア25を、シャフト軸方向における左側に付勢するバネ31が設けられている。
ロータ26は、金属材料からなる略円筒状の部材であり、シャフト軸方向における、切換部15の左端部に設けられ、シャフト11の全周を取り囲んでいる。また、ロータ26は、シャフト軸方向にアマチュア25と対向している。また、ロータ26は、シャフト11に固定されており、シャフト11と一体的に軸11aを中心に回転可能となっている。また、ロータ26の径方向における内側の端部は、シャフト軸方向の右側に延び、その先端部は、フィールド21の隔壁21aよりも右側に位置している。また、ロータ26の径方向における外側の端部は、シャフト軸方向の右側に延び、その先端部は、隔壁21aよりも左側に位置している。
アマチュア27は、金属材料からなる略円形の部材であり、シャフト軸方向における、ホルダ16の左端部に取り付けられ、シャフト11の全周を取り囲んでいる。アマチュア27は、ホルダ16及びシャフト11と一体的に軸11aを中心に回転可能となっている。また、ホルダ16には、アマチュア27をシャフト軸方向の右側に付勢するバネ32が設けられている。
ロータ28は、金属材料からなる略円筒状の部材であり、フィールド21の、シャフト軸方向における右端部に取り付けられ、シャフト11の全周を取り囲んでいる。また、ロータ28は、シャフト軸方向にアマチュア27と対向している。また、固定爪30によってフィールド21の軸11aを中心とする回転が規制されていることにより、フィールド21に取り付けられたロータ28の軸11aを中心とする回転も規制されている。
<相対回転方向の切換>
次に、回転方向切換装置1において、第1部材12と第2部材13との相対回転方向を切り換える方法について説明する。
切換部15では、コイル24に電流が流れていない状態で、永久磁石22による磁界が生じている。永久磁石22による磁界は、例えば図1に矢印Aで示すように、主に、フィールド21の隔壁21aよりも左側の部分、ロータ26を通る。そして、この磁界により、アマチュア25とロータ26との間に磁力が発生し、この磁力により、アマチュア25がバネ31の付勢力に逆らってロータ26に近づき、アマチュア25とロータ26とが吸着する(連結される)。アマチュア25とロータ26とが吸着した状態では、アマチュア25が取り付けられた第2部材13が、ロータ26が取り付けられたシャフト11と連結され、第2部材13がシャフト11と一体的に回転可能となる。これにより、第2部材13と中間傘歯車14とは軸11aを中心に一体的に回転可能となり、中間傘歯車14は、自身の軸を中心とした回転(以下、「自転」とすることがある)が傘歯車13bによって規制される。また、この状態では、アマチュア27がバネ32によりシャフト軸方向の右側に付勢されていることにより、アマチュア27とロータ28とは離れており、連結が解除されている。これにより、シャフト11は軸11aを中心に回転可能となっている(回転の規制が解除されている)。
この状態で、図示しないモータから動力が伝達された第1部材12が回転すると、中間傘歯車14の自転が規制されていることから、図1に示すように、第1部材12、第2部材13、及び、中間傘歯車14が取り付けられたシャフト11が、軸11aを中心に一体的に回転する。すなわち、この状態では、第1部材12と第2部材13とは同じ方向に回転する。
一方、コイル24に電流を流すと、コイル24の周囲に磁界が発生する。コイル24による磁界は、例えば図2に矢印Bで示すように、主に、隔壁21a、フィールド21の隔壁21aよりも右側の部分、及び、ロータ28を通る。そして、この磁界により、アマチュア27とロータ28との間に磁力が発生し、この磁力により、アマチュア27がバネ32の付勢力に逆らってロータ28に近づき、アマチュア27とロータ28とが吸着する(連結される)。アマチュア27とロータ28とが吸着した状態では、アマチュア27が取り付けられたホルダ16が、ロータ28が取り付けられたフィールド21と連結され、ホルダ16と連結されたシャフト11の、軸11aを中心とする回転が、フィールド21によって規制される。
また、第1実施形態では、上述したようにロータ26の径方向の内側の端部が、隔壁21aよりも右側まで延びていることから、コイル24による磁界は、例えば、図2に矢印Cで示すように、隔壁21a、フィールド21の隔壁21aよりも右側の部分、ロータ26も通る。第1実施形態では、制御装置50は、コイル24による、ロータ26を通る磁界の向き(矢印Cの向き)と、永久磁石22による、ロータ26を通る磁界の向き(図1の矢印Aの向き)とが逆になるように、コイル24に電流を流す。これにより、永久磁石22によるロータ26を通る磁界が、コイル24によるロータ26を通る磁界によって消磁され、アマチュア25とロータ26との間に磁力が生じなくなる。すると、アマチュア25は、バネ31によりシャフト軸方向の左側に付勢されてロータ26から離れる。これにより、第2部材13とシャフト11との連結が解除される。なお、図面を見やすくするために、図2では、図1に矢印Aで示す、永久磁石22による磁界の図示を省略している。
この状態で、図示しないモータから動力が伝達されて第1部材12が回転すると、シャフト11の回転が規制されていることから、中間傘歯車14が自転し、第1部材12(傘歯車12b)の回転が、自転する中間傘歯車14を介して、第2部材13(傘歯車13b)に伝達される。これにより、第1部材12と第2部材13とは逆方向に回転する。
このように、回転方向切換装置1では、コイル24に電流を流すか否かを切り換えることによって、第1部材12と第2部材13とが同じ方向に回転する状態(図1の状態)と、第1部材12と第2部材13とが逆方向に回転する状態(図2の状態)とを切り換えることができる。
また、第1実施形態では、コイル24に電流を流すか否かを切り換えると、アマチュア25とロータ26とが吸着し、且つ、アマチュア27とロータ28とが離れた状態と、アマチュア25とロータ26とが離れ、且つ、アマチュア27とロータ28とが吸着した状態とが比較的短時間で切り換わる。これにより、第1部材12と第2部材13が同じ方向に回転する状態と逆方向に回転する状態とを切り換えるときの応答性を高くすることができる。
また、第1実施形態では、コイル24に電流を流した状態から電流を流さない状態に切り換えたときに、第2部材13とシャフト11とが連結されるのとほぼ同じタイミングで、シャフト11の回転の規制が解除される。これら2つの切換のタイミングがずれると、回転方向切換装置1のいずれかの部分に一時的に大きな負担がかかる虞があるが、第1実施形態では、これら2つのタイミングがほぼ同じであるため、回転方向切換装置1のいずれかの部分に大きな負担がかかってしまうのを防止することができる。
同様に、第1実施形態では、コイル24に電流を流さない状態から電流を流した状態に切り換えたときに、第2部材13とシャフト11との連結が解除されるのとほぼ同じタイミングで、シャフト11の回転が規制される。これにより、回転方向切換装置1のいずれかの部分に大きな負担がかかってしまうのを防止することができる。
また、第1実施形態では、コイル24に電流を流すか否かによって、第2部材13とシャフト11との連結とその解除の切換と、シャフト11の回転の規制とその解除の切り換えが連動する構造を有する。そして、第2部材13とシャフト11とが連結された状態で、シャフト11の回転の規制が解除された状態となる。また、第2部材13とシャフト11との連結が解除された状態で、シャフト11の回転が規制された状態となる。したがって、これら2つの切換が連動しておらず、これら2つの切換を別々の制御によって行う場合と比較して、第1部材12と第2部材13との相対回転方向の切換を簡単に行うことができる。
また、第1実施形態では、シャフト11の周方向に沿って配置された2つの中間傘歯車14を備えているため、傘歯車12bと傘歯車13bとの間に中間傘歯車14が1つだけ配置されている場合と比較して、傘歯車12b、13bの各部分に均一に負荷がかかるようにすることができる。
また、第1実施形態では、第1部材12及び第2部材13を、傘歯車12b、13bを有するものとし、中間傘歯車14によって、傘歯車12bと傘歯車13bとを接続している。この場合には、次に説明する第2実施形態のように、冠歯車とピニオンギヤとを用いた構成とする場合と比較して、第1部材12及び第2部材13を、一方向の長さが長く、径方向の長さが短いものとすることができる。
[第2実施形態]
次に、本発明の好適な第2実施形態について説明する。
<回転方向切換装置>
第2実施形態に係る回転方向切換装置101は、両方向に回転させる部分を含む種々の装置に搭載されるものである。図3、図4に示すように、第2実施形態に係る回転方向切換装置101は、シャフト111と、第1部材112と、第2部材113と、2つのピニオンギヤ114(本発明の「中間ギヤ」)と、切換部115と、を備えている。
シャフト111は、円筒状の部材である。なお、以下では、シャフト111の軸111a(本発明の「中心軸」)と平行な方向を「シャフト軸方向」とし、軸111aと平行な図3、図4の左右方向の右側及び左側を、それぞれ、「シャフト軸方向の右側」、及び、「シャフト軸方向の左側」として説明を行う。
第1部材112は、シャフト111に回転自在に支持されることで、軸111aを中心に回転可能となっている。第1部材112の外周部には、リング歯車112aが設けられている。リング歯車112aは、図示しないギヤなどを介してモータと接続されている。また、第1部材112には、シャフト軸方向における右端部に冠歯車112b(本発明の「第1ギヤ」)が設けられている。
第2部材113は、シャフト軸方向における第1部材112の右側に位置しており、シャフト111に回転自在に支持されることで、軸111aを中心に回転可能となっている。第2部材113の外周部には、リング歯車113aが設けられている。リング歯車113aは、図示しないギヤなどを介してモータの駆動対象と接続されている。また、第2部材113には、シャフト軸方向における左端部に、冠歯車112bと対向する冠歯車113b(本発明の「第2ギヤ」)が設けられている。
なお、ここでは、リング歯車112aにモータが接続され、リング歯車113aに駆動対象が接続されているとして説明を行うが、これとは逆に、リング歯車113aにモータが接続され、リング歯車112aに駆動対象が接続されていてもよい。
2つのピニオンギヤ114は、その軸方向がシャフト軸方向と直交しており、冠歯車112bと冠歯車113bとの間に位置している。各ピニオンギヤ114は、冠歯車112b及び冠歯車113bと噛み合って、冠歯車112bと冠歯車113bとを接続している。また、2つのピニオンギヤ114は、シャフト111の軸111aを中心に約180°離れて配置されている。
また、シャフト111には、第1部材112と第2部材113との間に位置する部分の、軸111aの中心に約180°離れた部分から、シャフト111の径方向に延びた2つの支持部111bが設けられている。2つのピニオンギヤ114と2つの支持部111bとは対応しており、各ピニオンギヤ114が対応する支持部11bに回転可能に支持されている。これにより、シャフト111と2つのピニオンギヤ114とは、軸111aを中心に一体的に回転可能となっている。
<切換部>
切換部115は、第1部材112と第2部材113との相対回転方向を切り換えるためのものであり、シャフト軸方向における、第2部材113の右側に位置している。切換部115は、ソレノイド機構121と、摩擦部122、123と、アマチュア124と、ロータ125と、バネ126とを備えている。なお、第2実施形態では、ソレノイド機構121とバネ126とを合わせたものが、本発明の「移動装置」に相当する。
ソレノイド機構121は、可動子131と、固定子132と、フィールド133と、ボビン134と、コイル135とを備えている。可動子131は、金属材料からなり、シャフト軸方向における、第2部材113の右側に位置し、シャフト111の全周を取り囲んでいる。可動子131は、シャフト軸方向に移動可能に支持され、且つ、シャフト111と一体的に可能となっている。固定子132は、金属材料からなり、シャフト軸方向における、可動子131の右側に位置し、シャフト111の全周を取り囲んでいる。固定子132は、固定爪140によって固定されることで、シャフト111の軸111aを中心とする回転が規制されている。
フィールド133は、金属材料からなり、可動子131及び固定子132の全周を取り囲むように配置され、固定子132に固定されている。これにより、フィールド133は、固定子132と同様、シャフト111の軸111aを中心とする回転が規制されている。また、フィールド133には、径方向における可動子131及び固定子132よりも外側の部分に円環状の空間が形成されている。ボビン134は、金属材料などからなり、フィールド133の上記空間内に収容され、可動子131及び固定子132の全周を取り囲んでいる。コイル135は、ボビン134に収容され、可動子131及び固定子132の全周を取り囲んでいる。また、コイル135は制御装置150に接続されている。制御装置150は、コイル135に電流を流すか否かを切り換える。
摩擦部122(本発明の「第1連結部」)は、第2部材113の可動子131側の端部に設けられ、シャフト111の全周を取り囲んでいる。摩擦部122は、シリコンゴムなど比較的摩擦係数の大きい材料によって構成される、あるいは、表面に微細な凹凸が形成されることにより、表面の摩擦係数が周囲の部分よりも大きくなっている。摩擦部123(本発明の「第2連結部」)は、可動子131の第2部材113側の端部に設けられ、シャフト111の全周を取り囲んでいる。これにより、摩擦部123は、シャフト軸方向における摩擦部122の右側に位置し、摩擦部122と対向している。摩擦部123も、摩擦部122と同様に、表面の摩擦係数が周囲の部分よりも大きくなっている。
アマチュア124(本発明の「第4連結部」)は、金属材料からなる略円形の部材であり、可動子131に設けられ、シャフト111の全周を取り囲んでいる。ロータ125(本発明の「第3連結部」)は、金属材料からなる略円筒状の部材であり、シャフト軸方向におけるアマチュア124の右側に位置し、シャフト111の全周を取り囲んでいる。ロータ125は、フィールド133に固定されており、固定子132及びフィールド133と同様、シャフト111の軸111aを中心とする回転が規制されている。バネ126は、可動子131と固定子132との間に配置され、可動子131を第2部材113に向けて付勢する。
また、第2実施形態では、摩擦部122、123、アマチュア124、及びロータ125がこのような位置関係に配置されていることから、シャフト軸方向において、摩擦部123が摩擦部122の一方側に位置し、アマチュア124がロータ125の他方側に位置する。
<相対回転方向の切換>
次に、回転方向切換装置101において、第1部材112と第2部材113との相対回転方向を切り換える方法について説明する。
切換部115では、コイル135に電流が流れていない状態では、図3に示すように、バネ126の付勢力で、可動子131が第2部材113に向けて付勢されていることにより、第2部材113に設けられた摩擦部122と、可動子131に設けられた摩擦部123とが密着している。この状態では、第2部材113と可動子131とが連結され、第2部材113がシャフト111と一体的に回転可能となる。これにより、第2部材113とピニオンギヤ114とは、軸111aを中心に一体的に回転可能となり、ピニオンギヤ114は、自身の軸を中心とした回転(以下、「自転」とすることがある)が冠歯車113bによって規制される。また、この状態では、アマチュア124とロータ125とは離れており、シャフト111は軸111aを中心に回転可能となっている(回転の規制が解除されている)。
この状態で、図示しないモータから動力が伝達されて第1部材112が回転すると、ピニオンギヤ114の自転が規制されていることから、図3に示すように、第1部材112、第2部材113、及び、ピニオンギヤ114が取り付けられたシャフト111が、軸111aを中心に一体的に回転する。すなわち、この状態では、第1部材112と第2部材113とは同じ方向に回転する。
一方、コイル135に電流を流すと、コイル135の周囲に磁界が発生する。コイル135による磁界は、例えば図4に矢印Dで示すように、主に、フィールド133、固定子132、可動子131、ロータ125を通る。そして、この磁界により、可動子131と固定子132との間に磁力が発生し、この磁力によって可動子131がバネ126の付勢力に逆らってシャフト軸方向の右側に移動する(固定子132に近づく)。これにより、摩擦部122と摩擦部123とが離れ、第2部材113と可動子131との連結が解除される。また、上記磁界により、アマチュア124とロータ125との間に磁力が発生し、この磁力によりアマチュア124とロータ125とが吸着する(連結される)。アマチュア124とロータ125とが吸着した状態では、アマチュア124が取り付けられた可動子131が、ロータ125が取り付けられたフィールド21と連結される。この状態では、可動子131と一体的に回転可能なシャフト111の、軸111aを中心とする回転が規制される。
この状態で、図示しないモータから動力が伝達されて第1部材112が回転すると、シャフト111の回転が規制されていることから、ピニオンギヤ114が自転し、第1部材112(冠歯車112b)の回転が、自転するピニオンギヤ114を介して、第2部材113(冠歯車113b)に伝達される。これにより、第1部材112と第2部材113とは逆方向に回転する。
このように、回転方向切換装置101では、コイル135に電流を流すか否かを切り換えることによって、第1部材112と第2部材113とが同じ方向に回転する状態(図3の状態)と、第1部材112と第2部材113とが逆方向に回転する状態(図4の状態)とを切り換えることができる。
また、第2実施形態では、コイル135に電流を流すか否かを切り換えると、摩擦部122と摩擦部123とが密着し、且つ、アマチュア124とロータ125とが離れた状態と、摩擦部122と摩擦部123とが離れ、且つ、アマチュア124とロータ125とが吸着した状態とが比較的短時間で切り換わる。これにより、第1部材112と第2部材113が同じ方向に回転する状態と逆方向に回転する状態とを切り換えるときの応答性を高くすることができる。
また、第2実施形態では、コイル135に電流を流した状態から電流を流さない状態に切り換えたときに、第2部材113とシャフト111とが連結されるのとほぼ同じタイミングで、シャフト111の回転の規制が解除される。これら2つの切換のタイミングがずれると、回転方向切換装置101のいずれかの部分に一時的に大きな負担がかかる虞があるが、第2実施形態では、これら2つのタイミングがほぼ同じであるため、回転方向切換装置101のいずれかの部分に大きな負担がかかってしまうのを防止することができる。
同様に、第2実施形態では、コイル135に電流を流さない状態から電流を流した状態に切り換えたときに、第2部材13とシャフト11との連結が解除されるのとほぼ同じタイミングで、シャフト111の回転が規制される。これにより、回転方向切換装置101のいずれかの部分に大きな負担がかかってしまうのを防止することができる。
また、第2実施形態では、コイル135に電流を流すか否かによって、第2部材113とシャフト111との連結とその解除の切換と、シャフト111の回転の規制とその解除の切り換えが連動する構造を有する。そして、第2部材113とシャフト111とが連結された状態で、シャフト111の回転の規制が解除された状態となる。また、第2部材113とシャフト111との連結が解除された状態で、シャフト111の回転が規制された状態となる。したがって、これら2つの切換が連動しておらず、これら2つの切換を別々の制御によって行う場合と比較して、第1部材112と第2部材113との相対回転方向の切換を簡単に行うことができる。
また、第1実施形態では、シャフト111の周方向に沿って配置された2つのピニオンギヤ114を備えているため、冠歯車112bと冠歯車113bとの間にピニオンギヤ114が1つだけ配置されている場合と比較して、冠歯車112b、113bの各部分に均一に負荷がかかるようにすることができる。
また、第2実施形態では、第1部材112及び第2部材113を、冠歯車112b、113bを有するものとし、ピニオンギヤ114によって、冠歯車112bと冠歯車113bとを接続している。この場合には、上述の第1実施形態のように、傘歯車と中間傘歯車とを用いた構成とする場合と比較して、第1部材112及び第2部材113を、径方向の長さが長く、一方向の長さが短いものとすることができる。
次に、第1、第2実施形態に種々の変更を加えた変形例について説明する。
第1実施形態において、第2部材13とシャフト11とが連結され、シャフト11の回転の規制が解除された状態と、第2部材13とシャフト11との連結が解除され、シャフト11の回転の規制された状態とを切り換える切換部は、切換部15には限られない。
例えば、第1実施形態において、永久磁石22とコイル24の位置が逆であってもよい。この場合には、第1実施形態とは逆に、コイル24に電流が流れていないときには、アマチュア25とロータ26とが離れ、アマチュア27とロータ28とが吸着する。一方、コイル24に電流を流すと、アマチュア25とロータ26とが吸着し、アマチュア27とロータ28とが離れる。
また、第1実施形態において、第2実施形態の切換部115と同様の切換部によって、第2部材13とシャフト11とが連結され、シャフト11の回転の規制が解除された状態と、第2部材13とシャフト11との連結が解除され、シャフト11の回転の規制された状態とが切り換えられるようになっていてもよい。
また、第2実施形態において、第2部材113とシャフト111とが連結され、シャフト111の回転の規制が解除された状態と、第2部材113とシャフト111との連結が解除され、シャフト111の回転の規制された状態とを切り換える切換部は、切換部115には限られない。
例えば、アマチュア124及びロータ125の表面に摩擦係数の高い摩擦部が設けられ、コイル135に電流を流したときに、アマチュア124とロータ125とが磁力によって吸着するのに加えて、摩擦部の摩擦力によって一体的に回転可能に連結されるようになっていてもよい。あるいは、アマチュア124及びロータ125の代わりに、摩擦部122、123と同様の摩擦部が設けられ、コイル135に電流を流したときに、これらの摩擦部が互いに接触し、これらの間の摩擦力で一体的に回転可能に連結されるようになっていてもよい。
また、第2実施形態において、固定子132を可動子131よりもシャフト軸方向の右側に位置するものとし、バネ126を、可動子131をシャフト軸方向の右側に付勢するものとし、アマチュア124及びロータ125の代わりに、摩擦部122、123と同様の摩擦部を設けたものとしてもよい。この場合には、第2実施形態とは逆に、コイル135に電流が流れていないときに、第2部材113とシャフト111との連結が解除され、シャフト111の回転が規制される。一方、コイル135に電流が流れているときに、第2部材113とシャフト111とが連結され、シャフト111の回転の規制が解除される。また、この場合には、摩擦部122、123の代わりに、金属材料によって構成される部分を設け、コイル135に電流が流れたときに生じる磁力によって、これらの金属材料からなる部分同士を吸着させてもよい。
また、第2実施形態では、ソレノイド機構121の可動子131に摩擦部123及びアマチュア124を設けている。そして、バネ126の付勢力により可動子131をシャフト軸方向の左側に移動させる。また、コイル135に電流を流したときに生じる磁力によって可動子131をシャフト軸方向の右側に移動させる。しかしながら、摩擦部123及びアマチュア124をシャフト軸方向に一体的に移動させる構成は、これには限られない。例えば、摩擦部123及びアマチュア124が取り付けられ、シャフト軸方向に移動可能な移動部材をシリンダに取り付け、シリンダを駆動させることによって、移動部材をシャフト軸方向の右側及び左側移動させることで、摩擦部123及びアマチュア124を一体的に移動させてもよい。なお、この場合には、アマチュア124とロータ125とが接触した状態でこれらの間に磁力を発生させるための専用のコイルを設ける、あるいは、アマチュア124及びロータ125の代わりに、摩擦部122、123と同様の摩擦部を設け、摩擦部の摩擦力によって、シャフト111の回転が規制されるようにする。また、この場合には、移動部材とシリンダとを合わせたものが、本発明の「移動装置」に相当する。
また、第2実施形態において、第1実施形態の切換部15と同様の切換部によって、第2部材113とシャフト111とが連結され、シャフト111の回転の規制が解除された状態と、第2部材113とシャフト111との連結が解除され、シャフト111の回転の規制された状態とが切り換えられるようになっていてもよい。
また、第1実施形態では、アマチュア25とロータ26との間に生じる磁力によって、アマチュア25とロータ26とが一体的に回転可能となるように連結され、アマチュア27とロータ28との間に生じる磁力によって、アマチュア25とロータ26とが一体的に回転可能となるように連結されたが、これには限られない。例えば、アマチュア25及びロータ26の互いの対向面に、周方向に沿って凹凸が並んだギヤ状の部分などの係合部を設け、アマチュア25とロータ26とが接触したときに係合部同士が係合するようにしてもよい。この場合には、アマチュア25とロータ26との間に生じる磁力をそれほど大きくしなくても、アマチュア25とロータ26とを一体的に回転可能となるように連結させることができる。
また、アマチュア27及びロータ28の互いの対向面に上述したのと同様の係合部を設けてもよい。また、第2実施形態において、摩擦部122、123の代わりに、上述したのと同様の係合部を有する部材を設けてもよい。また、アマチュア124とロータ125の互いの対向面に、上述したのと同様のギヤ状の部分を設けてもよい。
あるいは、アマチュア124及びロータ125の代わりに、上述したのと同様の係合部を有する、合成樹脂など金属以外の材料からなる部材を設けてもよい。この場合には、コイル135に電流を流したときに、これらの部材の間に磁力が生じないが、係合部同士が係合することで、これらの部材が一体的に回転可能となるように連結される。
また、第1実施形態において、第2部材13とシャフト11とが連結された状態で、シャフト11の回転の規制が解除された状態となり、第2部材13とシャフト11との連結が解除された状態で、シャフト11の回転が規制された状態となるように、第2部材13とシャフト11との連結とその解除と、シャフト11の回転の規制とその解除とを連動させる構成は、以上に説明したものと異なる構成であってもよい。
同様に、第2実施形態において、第2部材113とシャフト111とが連結された状態で、シャフト111の回転の規制が解除された状態となり、第2部材113とシャフト111との連結が解除された状態で、シャフト111の回転が規制された状態となるように、第2部材113とシャフト111との連結とその解除と、シャフト111の回転の規制とその解除とを連動させる構成は、以上に説明したものと異なる構成であってもよい。
さらには、第1実施形態では、切換部は、上述したような、第2部材13とシャフト11との連結とその解除と、シャフト11の回転の規制とその解除とが連動する構造を有していることにも限られない。第2部材13とシャフト11との連結とその解除の切り換えと、シャフト11の回転の規制とその解除の切り換えとを独立に行うことができるようになっていてもよい。この場合には、例えば、制御装置50により、第2部材13とシャフト11とを連結させるのと同じタイミングで、シャフト11の回転の規制を解除させるように制御を行い、第2部材13とシャフト11との連結を解除させるのと同じタイミングで、シャフト11の回転を規制させるように制御を行う。このように切り換えを行えば、装置に大きな負担がかかることはない。
また、この場合には、第2部材13とシャフト11とを連結させるタイミングと、シャフト11の回転の規制を解除させるタイミングとが多少ずれていてもよい。また、第2部材13とシャフト11との連結を解除させるタイミングと、シャフト11の回転を規制させるタイミングとが多少ずれていてもよい。例えば、第1部材12及び第2部材の回転速度がそれほど速くなければ、上記のように切り換えのタイミングがずれていても、回転方向切換装置1にかかる負担はそれほど大きなものとはならない。
同様に、第2実施形態において、第2部材113とシャフト111との連結とその解除の切り換えと、シャフト111の回転の規制とその解除の切り換えとを独立に行うことができるようになっていてもよい。さらに、この場合に、第2部材113とシャフト111とを連結させるタイミングと、シャフト111の回転の規制を解除させるタイミングとが多少ずれていてもよい。また、第2部材113とシャフト111との連結を解除させるタイミングと、シャフト111の回転を規制させるタイミングとが多少ずれていてもよい。
また、第1実施形態において、切換部が、第2部材13とシャフト11との連結とその解除と、シャフト11の回転の規制とその解除とが連動する構造を有している場合であっても、第2部材13とシャフト11とを連結させるタイミングと、シャフト11の回転の規制を解除させるタイミングとが多少ずれていてもよい。また、第2部材13とシャフト11との連結を解除させるタイミングと、シャフト11の回転を規制させるタイミングとが多少ずれていてもよい。第2実施形態での切り換えについても同様である。
また、第1実施形態では、コイル24に制御装置50が接続されており、制御装置50がコイル24に電流を流すか否かを切り換える制御を行ったが、これには限られない。例えば、コイル24に、電源と、ユーザによる操作が可能なスイッチとが接続され、ユーザがスイッチを操作することによってコイル24に電流を流すか否かを切り換えるようになっていてもよい。同様に、第2実施形態において、コイル135に、電源とスイッチとが接続され、ユーザがスイッチを操作することによってコイル135に電流を流すか否かを切り換えるようになっていてもよい。
また、第1実施形態では、2つの中間傘歯車14によって、傘歯車12bと傘歯車13bとが接続されていたが、これには限られない。1つの中間傘歯車14、あるいは、傘歯車12b、13bの周方向に沿って配列された3つ以上の中間傘歯車14によって、傘歯車12bと傘歯車13bとが接続されていてもよい。同様に、第2実施形態において、1つのピニオンギヤ114、あるいは、冠歯車112b、113bの周方向に沿って配列された3つ以上のピニオンギヤ114によって、冠歯車112bと冠歯車113bとが接続されていてもよい。
第1実施形態では、第1部材12が傘歯車12bを有し、第2部材13が傘歯車13bを有し、中間傘歯車14によって傘歯車12bと傘歯車13bとが接続されている。また、第2実施形態では、第1部材112が冠歯車112bを有し、第2部材113が冠歯車113bを有し、ピニオンギヤ114によって冠歯車112bと冠歯車113bとが接続されている。しかしながら、これには限られない。第1部材、第2部材が、中心軸を中心に回転可能な傘歯車及び冠歯車以外のギヤ(本発明の「第1ギヤ」、「第2ギヤ」)を有し、中間傘歯車及びピニオンギヤ以外の、軸方向が中心軸と直交するギヤ(本発明の「中間ギヤ」)によって、第1ギヤと第2ギヤとが接続されていてもよい。