JP2018104795A - 缶用鋼板およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】缶用鋼板およびその製造方法を提供する。【解決手段】成分組成は、質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:0.100%以下、P:0.03%以下、N:0.0040%未満、S:0.03%以下、Al:0.02〜0.10%、B:0.001〜0.004%を含有し、かつ、2.0≦(Mn/55)/(C/12)≦8.0(Mn:Mn含有量(質量%)、C:C含有量(質量%))を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、降伏強度(YP)が290〜450MPaである。好ましくは、フェライト組織の面積率が95%以上であり、フェライト組織中に平均粒子径が10nm以上であるセメンタイト粒子が分散した組織を有する。【選択図】なし

Description

本発明は、食品や飲料品などの容器材料として用いられる缶用鋼板およびその製造方法に関するものである。詳しくは、高速製缶でもロールフォーム加工時に成形しやすく、溶接後の缶胴加工する際に溶接近傍の割れが生じにくい、ロールフォーム加工性および溶接性に優れた缶用鋼板およびその製造方法に関するものである。
近年、製缶技術が進むと共に、製缶ラインの高速化が進められている。製缶ラインの高速化は生産性、経済性の観点から重要である。一方、製缶ラインの高速化、すなわち、製缶速度の上昇に伴って、ロールフォーム加工時に、成形不良、製品の表面損傷などの製缶不良率が増えている。これらを解決するためには、製缶技術の向上はもちろん、製缶材料の軟質化が重要な手段となっている。
鋼板の軟質化に関する技術として、特許文献1には、質量%で、C:0.0015〜0.0050%、Mn:0.1〜0.8%、Al:0.01〜0.10%、N:0.0015〜0.0070%、Nb:4×C〜20×C(原子比では、0.52×C〜2.58×C)、B:0.15×N〜0.75×N(原子比では、0.20×N〜0.97×N)を含有し、冷間圧延条件として圧延率を70〜90%の範囲とし、連続焼鈍条件として均熱時間tを20〜90秒、均熱温度Tを700〜780℃とし、かつ、前記均熱時間t(秒)、均熱温度T(℃)、鋼成分(質量%)の関係が770≦t/3+T−14.8 ×loge(Nb)−32×B/N≦840 を満たし、圧延率:0.5〜5% の調質圧延を行なって調質度T2〜T3.5の範囲とする軟質缶用鋼板の製造方法の技術が開示されている。
特許文献2には、重量%で、N:0.0040〜0.0300%、Al:0.005〜0.080%を含有し、JIS5号試験片による引張試験における0.2%耐力:430MPa以下、全伸び:15〜40%の鋼板であって、内部摩擦によるQ-1 が0.0010以上である板厚0.4mm以下の缶強度、缶成形性に優れる容器用極薄軟質鋼板およびその製造方法の技術が開示されている。
また、特許文献3には、C:0.02〜0.1%、Mn:0.30%以下、sol.Al:0.07〜0.15%、N:0.0040〜0.01%で残部がFeおよび不可避的成分よりなる鋼をA3変態点以上の仕上げ温度で熱間圧延したものを600℃以下で巻取り、次いで通常の冷間圧延した後の焼鈍に当って加熱時の500〜600℃の間に1分以上保持してから再結晶温度以上で均熱し過時効処理する連続焼鈍による絞り用軟質鋼板の製造方法の技術が開示されている。
特開2012−21230号公報 特開2001−49383号公報 特開昭56−150133号公報
しかしながら、上記従来技術は、いずれも問題がある。
特許文献1の技術では、C量が0.0015〜0.0050%であるため、ロールフォーム加工後の溶接によって溶接部近傍の粒径が大きくなりやすく、溶接後の缶胴加工で缶が割れるという問題があった。
特許文献2の技術によって得られた鋼板は、強度が高くないが、C量が0.010%以下になると、溶接部近傍の粒径が大きくなり、溶接後の缶胴加工で缶が割れるという問題があった。
特許文献3の技術では、C量とN量が多く、製造条件により降伏強度(YP)が上昇し、ロールフォーム加工性が低下するという問題があった。
本発明は、かかる事情に鑑みなされたもので、ロールフォーム加工性および溶接性に優れた缶用鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を行った。その結果、以下の知見を得た。
溶接時に、溶接部の粒径の粗大化を防止し溶接性を向上させるためには、C量が多い低炭素鋼板が必要である。しかし、C量が多くなると、降伏強度(YP)が上昇し高速での製缶中のロールフォーム加工性が悪くなり、製缶不良率が増えることで生産性が低下する可能性がある。これに対して、本発明では、まず、溶接する際の溶接部の粒成長を抑制しすなわち粒径の粗大化を防止し、溶接性を向上させるために低炭素鋼板を用いる。C量を多くすることによりロールフォーム加工性が悪くなる問題に対しては、Mn量と製造条件を制御することにより解決する。すなわち、Mn量と製造条件を制御することにより、Mnをセメンタイト中に濃化させてセメンタイトを安定化させ、焼鈍工程の昇温・均熱中にセメンタイトが溶解して固溶炭素となることを妨げ、昇温および均熱後での固溶炭素量を低下させる。加えて、未溶解のセメンタイト粒子を増やすことにより、焼鈍工程の冷却中でのセメンタイトの再析出を促進し、さらに固溶炭素を低下させる。これによりYPを低減させる。その結果、ロールフォーム加工性が向上する。
以上のように、本発明は、低炭素鋼をベースに化学成分、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍条件および2次冷間圧延を最適化することで、ロールフォーム加工性および溶接性に優れた鋼板を製造することができることを知見し、本発明を完成するに至った。
本発明は、以上の知見に基づきなされたもので、その要旨は以下のとおりである。
[1]成分組成は、質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:0.100%以下、P:0.03%以下、N:0.0040%未満、S:0.03%以下、Al:0.02〜0.10%、B:0.001〜0.004%を含有し、かつ、2.0≦(Mn/55)/(C/12)≦8.0(Mn:Mn含有量(質量%)、C:C含有量(質量%))を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、降伏強度(YP)が290〜450MPaであることを特徴とする缶用鋼板。
[2]フェライト組織の面積率が95%以上であり、フェライト組織中に平均粒子径が10nm以上であるセメンタイト粒子が分散した組織を有することを特徴とする上記[1]に記載の缶用鋼板。
[3]上記[1]に記載の成分組成を有する鋼スラブを、仕上げ圧延温度:870℃以上で熱間圧延し、巻取温度:600℃以上で巻取り、圧下率:80%以上で冷間圧延し、次いで、焼鈍温度:600〜850℃、焼鈍温度から室温までの平均冷却速度:25℃/s以下の条件で焼鈍を行い、次いで、圧下率:10%以下で冷間圧延を行うことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
なお、本明細書において、鋼の成分を示す%は、すべて質量%である。
本発明によれば、ロールフォーム加工性および溶接性に優れた缶用鋼板が得られる。したがって、高速製缶でもロールフォーム加工時に成形しやすく、成形後のラップ代(巻幅)のバラツキが小さい。また、溶接後の缶胴加工する際に溶接近傍の割れが生じにくい。
図1は、溶接性の評価方法を示す図である。
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の缶用鋼板の成分組成について説明する。
C: 0.010〜0.050%
Cは、固溶C及び微細炭化物を形成し、溶接部近傍の粒径の粗大化を防止する。これらの効果を得るためには、0.010%以上の含有を必要とする。一方、0.050%を超えると、強度が増加しすぎ、降伏強度(YP)が本発明の範囲:290〜450MPaの上限である450MPaを超え、ロールフォーム加工性が悪くなる。以上より、Cは0.010〜0.050%の範囲とする。好ましくは0.010〜0.030%である。
2.0≦(Mn/55)/(C/12)≦8.0
MnとCを適切な関係に制御することは本発明において重要な要件である。Mnは、セメンタイトに濃化し、焼鈍中のセメンタイトを安定化させる。2.0≦(Mn/55)/(C/12)として、焼鈍工程の昇温・均熱段階での未溶解セメンタイトを増やすことにより固溶炭素が低減し、YPが低減する。一方、Mn量が多くなりすぎると、Mnの固溶強化により、YPが過度に上昇し、降伏強度(YP)が本発明の範囲:290〜450MPaの上限である450MPaを超え、また、溶接性が悪くなる。よって、Mn/55)/(C/12)≦8.0とする。以上より、Mnは、2.0≦(Mn/55)/(C/12)≦8.0(Mn:Mn含有量(質量%)、C:C含有量(質量%))を満足するよう含有する。
Si:0.100%以下
Siは固溶強化により鋼板のYPを高める作用を有する元素である。しかし、0.100%を超えて含有すると、YPが上昇し過ぎて、ロールフォーム加工性が低下する。また、Siは缶用としての耐食性に有害な元素である。以上より、Siは0.100%以下とする。
P:0.03%以下
Pは粒界に偏析して、鋼板の延性および靱性を低下させる。また、耐食性を低下させる有害な元素である。以上より、Pは0.03%以下とする。好ましくは0.02%以下である。一方で、Pは固溶強化により鋼板のYPを高める作用を有する元素でもある。この点から0.01%以上が好ましい。
N:0.0040%未満
Nは多量に含まれると、溶接部近傍で硬さのばらつきが大きくなり、溶接部近傍での割れが発生しやすくなる。また、過剰な窒化物が生成し、YPが上昇しすぎる可能性がある。また、鋼板の延性や靱性が低下し、加工性を劣化させる。以上より、Nは0.0040%未満とする。
S:0.03%以下
Mnを含有する本発明では、SはMnと結合してMnSを形成する。これらの硫化物は、表面性状を劣化させるとともに、熱間圧延での延性を低下させる。また、セメンタイトを安定化させるMn量を低減させ、YPが上昇する。以上より、Sは0.03%以下とする。好ましくは0.01%以下である。
Al:0.02〜0.10%
Alは脱酸剤として作用する有用な元素である。この効果を得るために、0.02%以上含有する必要がある。一方、0.10%を超えると、鋼板の表面欠陥を誘発するので、上限は0.10%とする。
B:0.001〜0.004%
Bは、Nを固定し、BNを形成することにより、固溶Nによる鋼板の高強度化を抑制する。また、固溶Bとして溶接部近傍の粒成長を抑制する作用がある。これらの効果を得るため、Bは0.001%以上にする必要がある。一方、0.004%を超えると、Bの固溶強化で降伏強度(YP) が本発明の範囲:290〜450MPaの上限である450MPaを超えて、ロールフォーム加工性が低下する。以上より、Bは0.001〜0.004%とする。
残部はFeおよび不可避的不純物とする。
次に、本発明の組織、特性について説明する。
組織と降伏強度(YP)ついて下記のように規定することで、さらに優れた効果が得られる。

フェライト組織が面積率で95%以上を占め、フェライト組織中に平均粒子径が10nm以上であるセメンタイト粒子が分散した組織を有する(好適条件)。
フェライト組織の面積率:95%以上
パーライト組織やマルテンサイト組織等のフェライト組織以外の金属組織が形成されると、板面内の強度均一性が著しく劣化する場合がある。その結果、ロールフォーム加工時に鋼板の硬質な部分が曲げにくくなり、ロールフォーム加工後のラップ代が不均一となり、製缶できない場合がある。したがって、フェライト組織の面積率は95%以上が好ましい。さらに好ましくは97%以上である。
セメンタイト粒子の平均粒子径:10nm以上
本発明においては、セメンタイト粒子のサイズを制御することによって鋼板の低YP化を達成することが好ましい。セメンタイト粒子の平均粒子径が大きいほど、セメンタイト粒子の数が減り、降伏強度(YP)が下がる。降伏強度(YP)を450MPa以下とするには、セメンタイト粒子の平均粒子径を10nm以上とするのが好ましい。より好ましくは30nm以上、さらに好ましくは50nm以上である。過度に粗大なセメンタイト粒子が鋼板表面に存在すると耐食性が低下する場合があるため、平均粒子径は2μm以下とすることが好ましい。固溶炭素をセメンタイトとして固定し、YPを450MPa以下とする観点からセメンタイト粒子は面積率で0.1%以上存在することが好ましい。セメンタイト粒子の面積率が多くなりすぎると粒子数も増加してYPを増加させてしまうので、セメンタイト粒子の面積率は1.0%以下とすることが好ましい。
上記セメンタイト粒子の平均粒子径は、鋼成分ならびに製造条件を所定の範囲に制御することで、10nm以上とすることが出来る。特にCおよびMnをそれぞれ特定の範囲に制御することに加え、CとMnのバランスを一定の範囲にすることで、セメンタイトを安定化させて、焼鈍工程の加熱・均熱段階でのセメンタイト粒子の溶解を防ぐ。かつ、適切な冷却速度に制御することで、焼鈍工程の冷却段階にてセメンタイトが再析出する際に、未溶解のセメンタイト粒子が成長・粗大化する。以上により、セメンタイト粒子の平均粒子径を10nm以上とすることができる。
また、上記フェライト相の面積率およびセメンタイト相の平均粒子径は、後述する実施例の方法にて測定することができる。
降伏強度(YP):290MPa以上450MPa以下
本発明の缶用鋼板では、降伏強度(YP)は290MPa以上450MPa以下とする。YPを450MPa以下とすることで、ロールフォーム加工後のラップ代のバラツキが低減し、ロールフォームしやすくなる。また、高速製缶の場合でもロールフォーム加工時に成形しやすく、成形後のラップ代のバラツキが小さい。一方、YPが290MPaより低い場合は、高速製缶ではラップ代のバラツキが大きくなり、さらに製缶後の耐圧強度が低下する。なお、降伏強度(YP)は圧延方向によりJIS5号引張試験片を切り出し、JIS Z 2241に基準した引張試験によって測定することができる。
板厚が0.18mm以下(好適条件)
現在、スチール缶のコスト削減を目的として、スチール缶用鋼板の薄肉化が進められている。しかしながら、鋼板の薄肉化、すなわち、鋼板板厚の低減に伴って、ロールフォーム加工および溶接の時に、缶胴部の変形が大きく、真円度が大きくなり、缶強度の低下が懸念される。これに対して、本発明の缶用鋼板は、板厚が薄い場合に、ロールフォーム加工性に優れ、溶接性に優れるという本発明の効果が顕著にでる。この点から、板厚は0.18mm以下が好適である。
次に、本発明の缶用鋼板の製造方法の一例について説明する。
本発明の缶用鋼板は、上記成分組成からなる鋼スラブを、仕上げ圧延温度:870℃以上で熱間圧延し、巻取温度:600℃以上で巻取り、圧下率:80%以上で冷間圧延し、次いで、焼鈍温度:600〜850℃、焼鈍温度から室温までの冷却速度:25℃/s以下の条件で焼鈍を行い、次いで、圧下率:10%以下で圧延を行うことで製造される。
熱間圧延時の仕上げ圧延温度:870℃以上
熱間圧延時の仕上げ圧延温度が870℃を下回ると、加工組織が残存することになるため、伸びが低下し、降伏強度(YP)が上昇し、本発明範囲である290〜450MPaとするのが難しい。よって、熱間圧延時の仕上げ圧延温度は870℃以上とする。
熱間圧延時の巻取温度:600℃以上
熱間圧延時の巻取温度が600℃を下回ると、ベイナイト組織やマルテンサイト組織など硬質な低温変態相の生成により、鋼板が硬質化する。さらに、その後の行われる冷間圧延時における荷重が高くなってしまい、操業上、困難となる。よって、巻取温度は600℃以上とする。
1次冷間圧延での圧下率:80%以上
本発明が規定する降伏強度(YP)を達成するために1次冷間圧延の圧下率(熱間圧延と焼鈍の間の冷間圧延における圧下率)を80%以上とする。圧下率が80%に満たないと、熱延板中の炭化物を圧延で粉砕することができず、延性が低下する。また、結晶粒が粗大化して材質が過度に軟化する。よって、圧下率は80%以上とする。
なお、熱間圧延工程後、必要に応じて酸化皮膜を除去する。酸化皮膜の除去方法としては、酸洗や機械的除去などがあげられる。
焼鈍温度:600〜850℃
焼鈍温度(焼鈍時の最高到達板温)が600℃を下回ると圧延方向に展伸した未再結晶フェライト組織が残留してYPが過度に高くなり、延性が低下する。また、セメンタイト粒子の平均粒子径が小さくなる。これらの結果、降伏強度(YP)が上昇し、本発明範囲である450MPa以下とするのが難しくなる。したがって、焼鈍温度は600℃以上とする。好ましくは650℃以上である。一方、焼鈍温度が850℃を上回ると、フェライト組織の結晶粒が粗大化し、降伏強度(YP)が低下し、本発明範囲である290MPa以上とするのが難しい。よって、焼鈍温度は850℃以下とする。好ましくは800℃以下である。さらに好ましくは760℃以下である。また、セメンタイト粒子の溶け残りを促進するため、均熱時間は10秒〜40秒にすることが好ましい。ここでの焼鈍時の均熱時間とは、焼鈍温度-10℃以上の温度域での滞留時間である。
焼鈍温度から室温までの平均冷却速度:25℃/s以下
焼鈍温度から室温までの平均冷却速度は、本発明において重要な要件である。平均冷却速度が25℃/s超であると、セメンタイト組織の析出が不十分となり、固溶Cが残ってしまう。その結果、降伏強度(YP)が高くなり本発明範囲である450MPa以下とするのが難しくなる。よって、焼鈍温度から室温までの平均冷却速度は25℃/s以下とする。好ましくは20℃/s以下、より好ましくは15℃/s以下である。平均冷却速度の下限はとくに設けないが、平均冷却速度が小さいと作業効率が低下することから、下限は10℃/s程度で十分である。なお、焼鈍時の均熱時間には、焼鈍温度-10℃以上の温度域での滞留時間も含めることから、焼鈍温度から室温までの平均冷却速度は、均熱時間終了時の温度、すなわち、焼鈍温度-10℃からの平均冷却速度とする。
2次冷間圧延での圧下率(焼鈍後の冷間圧延における圧下率):10%以下(焼鈍後の調質圧延を含む)
圧下率が10%を超えると、加工歪みが大きくなりすぎ、降伏強度(YP)が上昇し、本発明範囲である450MPa以下とするのが難しくなる。その結果、ロールフォーム加工性が低下する。よって、圧下率は10%以下とする。
焼鈍後の鋼板の表面粗さの調整や、ストレッチャーストレインの発生を抑制するために、一般的に調質圧延をかけることが行われる。本発明においては、焼鈍後の調質圧延を上記2次冷間圧延として行うことができる。この場合、本発明の効果を損なうことはない。
上記のようにして得た鋼板は、その後、必要に応じて、鋼板に、例えば電気めっきにより、錫めっき、クロムめっき、ニッケルめっき等のめっき処理を施したり、樹脂被膜を施したりする表面処理を行い、缶用鋼板とする。なお、めっきや樹脂皮膜等の表面処理の膜厚は、板厚に対して十分に小さいので、缶用鋼板の機械特性への影響は無視できるレベルである。
以上により、本発明の缶用鋼板が得られる。
表1に示す成分組成を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼スラブに対して、表2に示す条件で熱間圧延を行った。次いで、酸洗後、表2に示す条件で、冷間圧延、焼鈍、および2次冷間圧延を施し、板厚が0.12mmの2次冷間圧延板(缶用鋼板)を製造した。なお、酸洗は、塩酸等により通常の方法にて、焼鈍は、連続焼鈍炉にて保持時間30秒で行った。
上記にて得られた缶用鋼板に対して、以下に示す方法にて、各性能を測定、調査した。各試験方法および測定方法は次の通りである。
(1)組織観察
得られた2次冷間圧延板に対して、圧延方向に平行な板厚断面を鏡面研磨して、ナイタール腐食液でフェライト結晶粒を現出させた。
フェライト組織の面積率については、走査型電子顕微鏡で1000倍に拡大して10視野分撮影した。画像解析によりフェライト組織とベイナイト組織やマルテンサイト組織等のフェライト組織以外とを分離し、観察視野に対するフェライト組織の面積率によって求めた。フェライト組織は、パケットやラスのような下部組織が観察されない形態を有する組織である。
セメンタイトの平均粒子径については、走査型電子顕微鏡で8000倍に拡大して20視野撮影し,視野内のセメンタイトについて粒子径(円相当直径)を測定し、これらの平均値を算出することによって求めた。
(2)降伏強度の測定
上記により得られた缶用鋼板から、圧延方向に対して平行方向を引張方向とするJIS 5号引張試験片(JIS Z 2201)を採取し、JIS Z 2241の規定に準拠した引張試験を行って、降伏強度(YP)を測定した。
(3)ロールフォーム加工性の測定
ロールフォーム加工性を評価するために、上記により得られた缶用鋼板に対して、3ピース缶ロールフォーム成形を行った。具体的には、上記により得られた2次冷間圧延板(缶用鋼板)の表面に錫をメッキした鋼板を長方形平板ブランク(長さ:160mm、横:140mm)にせん断した。表2に示すNo.3の鋼板を用い、圧延方向を曲げ方向として、巻幅が8mmになるようにロールフォーマを調整し、ロールフォーミング加工を行った。表2に示すNo.3の板を用いたロールフォーマの加工条件をそのまま利用し、全水準の鋼板をロールフォーミング加工し、巻幅(ラップ代)を測定した。巻幅7mm超え〜9mm未満を合格(◎)、巻幅5mm以上〜7mm以下および9mm以上〜11mm以下を合格(○)、巻幅5mm未満および11mmを超える場合を不合格(×)とした。
(4)溶接性の評価方法
上記により得られた缶用鋼板に対して、巻幅が8mmになるように成形し、次いで、得られた円筒状の両端を電気抵抗溶接でシーム溶接により接合し溶接缶胴を製造した。この溶接缶胴に、押込み深さを4mmとして、60度円錐ポンチを押込み、割れの有無で溶接性を評価した。調査、評価方法を図1に示す。各水準10個の内、割れ発生なしが8個超えを合格(◎)、割れ発生なしの3個超え〜8個以下を合格(○)、割れ発生なしの3個以下を不合格(×)とした。
以上により得られた結果を表3に示す。
Figure 2018104795
Figure 2018104795
Figure 2018104795
表3より、本発明例では、ロールフォーム加工性および溶接性に優れた缶用鋼板が得られていた。

Claims (3)

  1. 成分組成は、質量%で、C:0.010〜0.050%、Si:0.100%以下、P:0.03%以下、N:0.0040%未満、S:0.03%以下、Al:0.02〜0.10%、B:0.001〜0.004%を含有し、かつ、2.0≦(Mn/55)/(C/12)≦8.0(Mn:Mn含有量(質量%)、C:C含有量(質量%))を満足し、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、
    降伏強度(YP)が290〜450MPaである
    ことを特徴とする缶用鋼板。
  2. フェライト組織の面積率が95%以上であり、フェライト組織中に平均粒子径が10nm以上であるセメンタイト粒子が分散した組織を有することを特徴とする請求項1に記載の缶用鋼板。
  3. 請求項1に記載の成分組成を有する鋼スラブを、仕上げ圧延温度:870℃以上で熱間圧延し、巻取温度:600℃以上で巻取り、圧下率:80%以上で冷間圧延し、
    次いで、焼鈍温度:600〜850℃、焼鈍温度から室温までの平均冷却速度:25℃/s以下の条件で焼鈍を行い、
    次いで、圧下率:10%以下で冷間圧延を行うことを特徴とする缶用鋼板の製造方法。
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