JP2018104766A - Ni基合金一方向凝固部材および該一方向凝固部材の製造方法 - Google Patents

Ni基合金一方向凝固部材および該一方向凝固部材の製造方法 Download PDF

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明 吉成
玉艇 王
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田中 滋
Shigeru Tanaka
田中  滋
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Takeshi Izumi
岳志 泉
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Abstract

【課題】従来以上に高い機械的特性と低コスト化とが両立したNi基合金一方向凝固部材および該一方向凝固部材の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るNi基合金一方向凝固部材は、前記Ni基合金が化学組成としてReを含まず、前記一方向凝固部材は、ダブティル部とシャンク部と翼部とが連なるタービン動翼の構造を有し、前記ダブティル部から前記翼部にかけての厚さ20 mm以上の領域の表面上に酸化物被膜が形成されており、前記酸化物被膜が形成されている領域内に粒界割れが存在せず、前記一方向凝固部材は、温度1040℃、応力137 MPaの条件下でクリープ試験を行ったときに、クリープ破断時間が220時間以上となる機械的特性を有していることを特徴とする。
【選択図】図1

Description

本発明は、析出強化型Ni(ニッケル)基合金の鋳造部材に関し、特にタービン動翼用として望まれる機械的特性と低コスト化とを高いレベルでバランスさせたNi基合金一方向凝固部材、および該一方向凝固部材の製造方法に関するものである。
火力発電プラントや航空機のタービンにおいて、熱効率向上を目指した主流体温度の高温化は一つの技術トレンドになっており、タービン用高温部材における高温の機械的特性の向上は、重要な技術課題である。例えば、タービン用高温部材で最も過酷な環境に曝されるタービン翼(動翼、静翼)は、高温運転中の回転遠心力や振動や起動/停止に伴う熱応力を繰り返し受けることから、機械的特性の向上は大変重要になる。
要求される機械的特性を満たすため、タービン用高温部材の素材は、しばしばNi基合金(Ni基超合金と称することもある)が使用され、特に母相となるγ(ガンマ)相中に析出させるγ’(ガンマ プライム)相(例えば、Ni3Al相)の量を高めた強析出強化Ni基合金(例えば、γ’相を40〜70体積%析出させたNi基合金)が使用されている。
また、タービン動翼のような複雑形状を有する部材は、形状制御性および製造コストの観点から、一般的に精密鋳造部材が用いられている。精密鋳造部材には、等軸晶の集合体からなる普通精密鋳造部材と、部材長手方向に平行に延びた柱状晶からなる一方向凝固部材と、部材全体が一つの結晶からなる単結晶凝固部材とがある。クリープ特性向上の観点からは、弱化因子と考えられている部材長手方向を分断する結晶粒界を排除した一方向凝固部材および単結晶凝固部材が好ましく用いられる。
単結晶凝固部材は、クリープ特性(例えば、クリープ強度、クリープ寿命)が最も優れているが、その製造は大変デリケートなものであり、予期せぬ温度揺らぎや不純物の存在によって、意図した結晶方位と異なる角度の結晶方位を有する結晶(異結晶と称する)が生成し易く、クリープ特性を著しく低下させてしまうという問題がある。言い換えると、単結晶凝固部材は、製造歩留まりが低下し易い(製造コストが増大し易い)という弱点がある。
そのため、製造コストの観点から単結晶凝固部材の使用が不利になるような大型部材(例えば、全長が150 mm以上のタービン動翼)では、一方向凝固部材が好適に利用される。また、それに合わせて一方向凝固に好適なNi基合金も開発されている。
例えば、特許文献1(特開平9-272933)には、
重量で、C:0.03〜0.20%,B:0.004〜0.05%,Hf:1.5%以下,Zr:0.02%以下,Cr:1.5〜16%,Mo:6%以下,W:2〜12%,Re:0.1〜9%,Ta:2〜12%,Nb:4.0%以下,Al:4.0〜6.5%,Ti:0.4%未満,Co:9%以下、及び60%以上のNiを含むことを特徴とする方向性凝固用高強度Ni基超合金が、開示されている。
特許文献1によると、鋳造時の凝固割れを防止し、さらに使用中の信頼性を確保するのに十分な結晶粒界強度を有し、かつ優れた高温強度を併せ持つ方向性凝固用高強度Ni基超合金を提供できるとされている。ただし、特許文献1のNi基超合金は、高温強度を高めるために高価な成分であるReを含有しているため、高コスト化し易いという弱点がある。
そのようなコスト上の弱点を克服するためのNi基合金も開発されている。例えば、特許文献2(特開2015-30915)には、
0.05〜0.09質量%のCと、0.01〜0.04質量%のBと、0.1〜0.4質量%のHfと、0.05質量%以下のZrと、3.5〜5質量%のAlと、3〜6質量%のTaと、3〜5質量%のTiと、0.1〜1質量%のNbと、8〜12.5質量%のCrと、5〜10質量%のCoと、4〜8質量%のWと、1〜2.5質量%のMoと、SiおよびFeの少なくとも一方を含有し、前記Siが含有される場合の成分量は0.02〜2質量%であり、前記Feが含有される場合の成分量は0.1〜5質量%であり、残部がNiと不可避不純物とからなることを特徴とするNi基鋳造超合金が、開示されている。
特許文献2によると、高温強度と結晶粒界強度と耐酸化性とが従来以上に高い次元でバランスしており、かつ低コスト化が可能なNi基鋳造超合金を提供することができるとされている。
特開平9−272933号公報 特開2015−30915号公報
前述した主流体温度の高温化に加えて、近年、タービンの高出力化を目指したタービン回転の高速化が検討されている。タービン回転の高速化は、回転遠心力や振動の増大に直結することから、タービン動翼には、従来以上に高い機械的特性が要求される。
本発明者等は、特許文献2に記載の技術をベースにして、タービン回転の高速化に対応するための一方向凝固部材からなるタービン動翼の初期検討を行った。その結果、該タービン動翼の製造段階において、タービン動翼の厚肉領域(例えば、厚さ20 mm以上の領域)や該厚肉領域の近傍で粒界割れが発生し易いという問題(すなわち、製造歩留まりが低下するという問題)に直面した。
工業製品に対しては、当然のことながら低コスト化の強い要求があり、性能向上と低コスト化の両立が求められている。したがって、本発明の目的は、従来以上に高い機械的特性と低コスト化とが両立したNi基合金一方向凝固部材および該一方向凝固部材の製造方法を提供することにある。
(I)本発明の一態様は、Ni基合金の一方向凝固部材であって、
前記Ni基合金は、化学組成としてRe(レニウム)を含まず、
前記一方向凝固部材は、ダブティル部とシャンク部と翼部とが連なるタービン動翼の構造を有し、前記ダブティル部から前記翼部にかけての厚さ20 mm以上の領域の表面上に酸化物被膜が形成されており、
前記酸化物被膜が形成されている領域内に粒界割れは存在せず、
前記一方向凝固部材は、温度1040℃、応力137 MPaの条件下でクリープ試験を行ったときに、クリープ破断時間が220時間以上となる機械的特性を有していることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材を、提供するものである。
(II)本発明の他の一態様は、上記のNi基合金一方向凝固部材を製造する方法であって、
前記Ni基合金の一方向凝固を行って前記タービン動翼の構造を有する一方向凝固体を形成する一方向凝固工程と、
前記一方向凝固体に対して前記一方向凝固工程で析出したγ’相を固溶させる溶体化熱処理を行う溶体化処理工程と、
前記溶体化熱処理を施した一方向凝固体に対して所望のγ’相を析出させる時効熱処理を行って前記一方向凝固部材を形成する時効処理工程と、を有し、
前記溶体化処理工程は、
前記一方向凝固体の前記ダブティル部から前記翼部にかけての厚さ20 mm以上の領域の表面上に前記酸化物被膜を形成する酸化物被膜形成素工程と、
前記酸化物被膜が形成された一方向凝固体に対して前記溶体化熱処理を行う溶体化熱処理素工程と、を有し、
前記溶体化熱処理素工程は、1200℃以上1280℃以下の溶体化温度で保持した後、該溶体化温度から1000℃までの冷却過程において、前記一方向凝固体の前記酸化物被膜が形成されている領域における平均冷却速度が70℃/分以上150℃/分以下となるように制御し、前記一方向凝固体の前記酸化物被膜が形成されている領域以外の領域における平均冷却速度が70℃/分以上となるように制御し、1000℃以下の冷却は前記一方向凝固体の全体を空冷または水冷する工程であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材の製造方法を、提供するものである。
なお、本発明において、一方向凝固体/タービン動翼のダブティル部、シャンク部、および翼部における厚さ20 mm以上の領域(厚肉領域)とは、凝固方向を法線とする横断面内で20 mm以上の厚さを有する領域と定義する。また、厚肉領域の近傍とは、該厚肉領域と同様の横断面で見て、該厚肉領域に隣接しながら20 mm未満の厚さを有する領域を意味するものとする。
本発明は、上記の本発明に係るNi基合金一方向凝固部材(I)および該一方向凝固部材の製造方法(II)において、以下のような改良や変更を加えることができる。
(i)前記酸化物被膜は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、イットリア、およびそれらの複合酸化物から選ばれる一種からなり、厚さが0.1 mm以上2 mm以下である。
(ii)前記翼部における前記酸化物被膜が形成されている領域は、前記シャンク部と前記翼部との境界から該翼部の長さの1/4以下である。
(iii)前記Ni基合金一方向凝固部材は、全体長さが300 mm以上である。
(iv)前記Ni基合金の前記化学組成は、
3.5質量%以上4.9質量%以下のAl(アルミニウム)と、
2.6質量%以上3.9質量%以下のTi(チタン)と、
4.4質量%以上8質量%以下のTa(タンタル)と、
0.05質量%以上1質量%以下のNb(ニオブ)と、
8質量%以上11.5質量%以下のCr(クロム)と、
4.1質量%以上6.9質量%以下のCo(コバルト)と、
4質量%以上10質量%以下のW(タングステン)と、
1質量%以上1.95質量%以下のMo(モリブデン)と、
0.03質量%以上0.15質量%以下のC(炭素)と、
0.002質量%以上0.04質量%以下のB(ホウ素)と、
0.01質量%以上1質量%以下のHf(ハフニウム)と、
0.05質量%以下のZr(ジルコニウム)と、
0.02質量%以上1質量%以下のSi(ケイ素)と、
3質量%以下のFe(鉄)とを含み、
残部がNiと不可避不純物とからなる。
(v)前記Ni基合金の前記化学組成は、
3.5質量%以上4.5質量%以下のAlと、
3質量%以上3.9質量%以下のTiと、
4.4質量%以上6質量%以下のTaと、
0.2質量%以上0.8質量%以下のNbと、
9.5質量%以上10.5質量%以下のCrと、
5.5質量%以上6.9質量%以下のCoと、
6.4質量%以上7.6質量%以下のWと、
1.2質量%以上1.9質量%以下のMoと、
0.05質量%以上0.09質量%以下のCと、
0.002質量%以上0.02質量%以下のBと、
0.01質量%以上0.5質量%以下のHfと、
0.02質量%以下のZrと、
0.02質量%以上0.1質量%以下のSiと、
0.5質量%以下のFeとを含み、
残部がNiと不可避不純物とからなる。
本発明によれば、従来以上に高い機械的特性と低コスト化とが両立したNi基合金一方向凝固部材および該一方向凝固部材の製造方法を提供することができる。
本発明に係るNi基合金一方向凝固部材の一例を示す斜視模式図である。 本発明に係るNi基合金一方向凝固部材の製造方法の一例を示す工程図である。 溶体化熱処理での平均冷却速度と合金部材のクリープ破断時間との関係を示すグラフである。 合金部材A3-12〜A3-13における表面組織観察の結果を示す写真である。
(初期検討および本発明の基本思想)
前述したように、本発明は、タービン動翼として用いられる強析出強化Ni基合金の一方向凝固部材を対象としており、特に、高価な成分であるReを含まない化学組成のNi基合金からなる一方向凝固部材を対象としている。
本発明者等は、Reを含まないNi基合金として特許文献2に記載の技術をベースにし、タービン回転の高速化に対応するための一方向凝固部材からなるタービン動翼の初期検討を行った。強析出強化Ni基合金においてクリープ強度を高めるためには、溶体化熱処理の冷却過程における冷却速度を高めることが有効である。
初期検討の結果、タービン動翼の製造段階において、該タービン動翼の厚肉領域(例えば、厚さ20 mm以上の部分)や該厚肉領域の近傍で粒界割れが発生し易いという問題(すなわち、製造歩留まりが低下するという問題)に直面した。これは、冷却速度を高めるために行った不活性ガス吹き付けによって、タービン動翼の厚肉領域で表面と内部との温度差が大きくなり、その熱応力により粒界割れが発生したものと考えられた。
一方、タービン動翼の厚肉領域やその近傍で粒界割れが発生しないように冷却速度を調整したところ、今度はクリープ強度が目標レベルに到達しないことが判った。
そこで、本発明者等は、タービン動翼のように部位によって厚さに大きな差異がある一方向凝固部材において、従来以上に高い機械的特性と低コスト化とを両立させるための製造技術を鋭意研究した。その結果、Ni基合金組成および溶体化熱処理プロセスの最適化を図ることによって、厚肉領域やその近傍での粒界割れを回避しながら、クリープ特性を高められることを見出した。本発明は、これら知見に基づいて完成されたものである。
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら具体的に説明する。ただし、本発明は、ここで取り挙げた実施形態に限定されるものではなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で、公知技術と適宜組み合わせたり公知技術に基づいて改良したりすることが可能である。
(本発明のNi基合金の化学組成)
本発明におけるNi基合金は、Reを含む従来のNi基合金に比して、Ti、Cr、Coの含有率が高めであり、Al、Ta、Wの含有率が低めになっている。以下、本発明のNi基合金の組成(各成分)について説明する。
Al成分:
Al成分は、Ni基合金の高温強化因子であるγ’相を形成するための必須成分である。また、Al成分は、鋳造物表面に酸化物被膜(Al2O3)を形成することで耐酸化性と耐食性との向上に寄与する。Al含有率は、3.5質量%以上4.9質量%以下が好ましく、3.5質量%以上4.5質量%以下がより好ましい。Al含有率が3.5質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、Al含有率が4.9質量%超になると、一方向凝固時に共晶γ’相粒(時効熱処理により析出するγ’相と形態が異なる粒)が大きく成長する。過大な共晶γ’相粒は、クリープ現象での亀裂の起点となる可能性がある。
Ti成分:
Ti成分は、Al成分とTa成分と共にγ’相(Ni3(Al,Ta,Ti)相)を形成し高温強度を向上させる効果がある。さらに、Ti成分は、Ni基合金の高温における耐食性(例えば、溶融塩腐食に対する耐食性)を大きく向上させる効果がある。Ti含有率は、2.6質量%以上3.9質量%以下が好ましく、3質量%以上3.9質量%以下がより好ましい。Ti含有率が2.6質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、Ti含有率が3.9質量%超になると、Ni基合金の耐酸化性を劣化させると共に脆化相のη相(Ni3Ti相)が析出し易くなる。
Ta成分:
Ta成分は、Al成分とTi成分と共にγ’相(Ni3(Al,Ta,Ti)相)を形成し高温強度を向上させる効果がある。Ta含有率は、4.4質量%以上8質量%以下が好ましく、4.4質量%以上6質量%以下がより好ましい。Ta含有率が4.4質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、Ta含有率が8質量%超になると、γ’相の固溶温度が上昇してγ’相の溶体化熱処理の完全な遂行が困難になり、クリープ強度を低下させる。
Nb成分:
Nb成分は、Al成分とTi成分と共にγ’相(Ni3(Al,Nb,Ti)相)を形成し高温強度を向上させる効果がある。また、Ni基合金における高温耐食性を改善する効果もある。Nb含有率は、0.05質量%以上1質量%以下が好ましく、0.2質量%以上0.8質量%以下がより好ましい。Nb含有率が0.05質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、本発明のようにTi含有率が比較的高いNi基合金でNb含有率を1質量%超にすると、脆化相のη相が析出し易くなる。
Cr成分:
Cr成分は、γ相中に固溶すると共に、鋳造物表面に酸化物被膜(Cr2O3)を形成して耐食性と耐酸化性とを向上させる効果がある。Cr含有率は、8質量%以上11.5質量%以下が好ましく、9.5質量%以上10.5量%以下がより好ましい。Cr含有率が8質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、Cr含有率が11.5質量%超になると、他の固溶強化元素(例えば、W、Mo)の固溶可能量を低下させて固溶強化の効果を減じさせる。
Co成分:
Co成分は、Niに近い元素でありNiと置換する形でγ相中に固溶し、クリープ強度を向上させると共に耐食性を向上させる効果がある。Co含有率は、4.1質量%以上6.9質量%以下が好ましく、5.5質量%以上6.9質量%以下がより好ましい。Co含有率が4.1質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、Co含有率が6.9質量%超になると、γ’相の析出量を減少させて高温強度を低下させる。
W成分:
W成分は、γ相中に固溶して高温強度を向上させる(固溶強化する)効果がある。W含有率は、4質量%以上10質量%以下が好ましく、6.4質量%以上7.6質量%以下がより好ましい。W含有率が4質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、W含有率が10質量%超になると、Wを主成分とする針状の析出物が析出して高温強度が低下する。
Mo成分:
Mo成分は、Cr成分と同様に耐食性を向上させる効果がある。また、W成分と同様に固溶強化する効果がある。Mo含有率は、1質量%以上1.95質量%以下が好ましく、1.2質量%以上1.9質量%以下がより好ましい。Mo含有率が1質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、Mo含有率が1.95質量%超になると、耐酸化性が大きく低下する。
C成分:
C成分は、クリープ強度と結晶粒界強度との両立を図る上で重要な成分である。C含有率が増えるに従って、鋳造物の凝固方向(結晶粒の長手方向)のクリープ強度は低下する傾向があるが、凝固方向に垂直方向(結晶粒の短手方向、すなわち結晶粒界に垂直な方向)の引張強さ(いわゆる結晶粒界強度)は向上する傾向がある。クリープ強度と結晶粒界強度とをバランスさせるためには、C含有率は、0.03質量%以上0.15質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.09質量%以下がより好ましい。C含有率が0.03質量%未満になると、粒界割れを抑制する効果が十分に得られない。一方、C含有率が0.15質量%超になると、クリープ強度が急激に低下する。
B成分:
B成分は、結晶粒界に偏析して結晶粒界強度の向上に寄与する成分である。クリープ強度と結晶粒界強度とをバランスさせるためには、B含有率は0.002質量%以上0.04質量%以下が好ましく、0.002質量%以上0.02質量%以下がより好ましい。B含有率が0.002質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、B含有率が0.04質量%超になると、γ相の固相線温度(いわゆる融点)が大きく低下するため、クリープ強度が著しく低下する。
Hf成分:
Hf成分は、その一部がγ相に固溶し、残部がγ’相(Ni3Hf相)を形成する成分である。Hf成分の添加は、凝固方向のクリープ強度を低下させることなく、結晶粒界強度を改善する効果がある。さらに、鋳造物表面に形成される酸化被膜の剥離を抑制し、耐酸化性を向上させる効果も見られる。Hf含有率は、0.01質量%以上1質量%以下が好ましく、0.01質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。Hf含有率が0.01質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られない。一方、Hf含有率が1質量%超になると、γ相の固相線温度が著しく低下するため、クリープ強度が著しく低下する。
Zr成分:
Zr成分は、その一部がγ相に固溶し、残部がγ’相(Ni3Zr相)を形成する成分である。ただし、Zr成分の添加は、γ相の固相線温度が低下してクリープ強度が著しく低下するマイナス効果が大きい。そのため、Zr含有率は、0.05質量%以下が好ましく、0.02質量%以下がより好ましい。実質的に無添加でもよい。
Si成分:
Si成分は、耐酸化性を向上させる効果がある。一方、Si成分は、Al成分と置換しながらγ’相を形成するが、該γ’相の格子定数が変化してクリープ強度が低下するマイナス効果も有する。そのため、従来のReを含むNi基合金では、クリープ強度の重要性からSi成分を不純物として扱い、Si含有率は0.01質量%以下と規定する場合が多かった。
これに対し、本発明のNi基合金では、8質量%以上のCr成分を含むことから、Si成分のマイナス効果を抑制できる。Si含有率は、0.02質量%以上1質量%以下が好ましく、0.02質量%以上0.1質量%以下がより好ましい。Si含有率が0.02質量%未満になると、耐酸化性向上の作用効果が十分に得られない。一方、Si含有率が1質量%超になると、上記マイナス効果の方が大きくなる。
なお、γ’相の析出を制御する観点から、Al成分とTi成分とSi成分との総量(Al+Ti+Si)を7質量%以上8.5質量%以下とすることが望ましい。
Fe成分:
Fe成分は、従来のReを含むNi基合金では、Co成分と容易に置換することによりクリープ強度を低下させるマイナス効果があり、不純物成分と扱われてきた。また、Fe成分は、自身の耐酸化性が悪いことから、Ni基合金の耐酸化性を低下させる不純物成分と扱われてきた。
これに対し、本発明のNi基合金では、8質量%以上のCr成分を含むことから、上記Fe成分のマイナス効果が抑制され、逆に耐酸化性を向上させる効果がある。Fe成分は必須成分ではないが、添加する場合の含有率は、0.1質量%以上3質量%以下が好ましく、0.05質量%以上0.5質量%以下がより好ましい。実質的に無添加でもよい。Fe含有率が0.1質量%未満になると、上記の作用効果が十分に得られないだけである。一方、Fe含有率が3質量%超になると、上記マイナス効果の方が大きくなる。
なお、上述したように、Fe成分はNi基合金中のCo成分と置換し易いことから、Fe成分を添加する場合は、Co成分とFe成分との総量(Co+Fe)を先述のCo成分の規定に合わせることが望ましい。
(本発明のNi基合金一方向凝固部材)
図1は、本発明に係るNi基合金一方向凝固部材の一例を示す斜視模式図である。図1に示したように、Ni基合金一方向凝固部材100は、タービン動翼用の部材であり、ダブティル部110とシャンク部120と翼部130とが連なる構造を有している。シャンク部120は、プラットホーム121とラジアルフィン122とを備えている。さらに、Ni基合金一方向凝固部材100は、ダブティル部110から翼部130にかけての厚さ20 mm以上の領域の表面上に酸化物被膜150が形成されている。
また、Ni基合金一方向凝固部材100は、温度1040℃、応力137 MPaの条件下でクリープ試験を行ったときに、クリープ破断時間が220時間以上となるクリープ特性を有している。このクリープ特性は、応力137 MPaでクリープ破断時間が10万時間となる温度が900℃以上であることを意味し、要求される特性を満足するものである。
なお、タービン動翼がガスタービン動翼の場合、該動翼の大きさ(図中縦方向の全体長さ)は、通常150〜500 mm程度である。タービン動翼の全体長さが長くなるほど回転遠心力が大きくなるため、遠心力に対抗するように厚肉領域も多くなり、粒界割れがより発生し易い状況になる。クリープ特性の向上と粒界割れの抑制とを両立できる本発明のNi基合金一方向凝固部材100は、全体長さ300 mm以上のタービン動翼に対して適用することが特に好ましい。
(本発明のNi基合金一方向凝固部材の製造方法)
次に、本発明のNi基合金一方向凝固部材の製造方法について説明する。図2は、本発明に係るNi基合金一方向凝固部材の製造方法の一例を示す工程図である。
図2に示したように、まず、所望の化学組成を有するNi基合金のマスターインゴットを溶解し、一方向凝固を行ってタービン動翼の構造を有する一方向凝固体を形成する一方向凝固工程(ステップ1:S1)を行う。一方向凝固体は最終的にタービン動翼として使用されることから、タービン動翼の長手方向が凝固方向となるように一方向凝固体を形成する。一方向凝固の方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。
次に、一方向凝固体に対して、一方向凝固工程S1で析出したγ’相を母相のγ相中に固溶させる溶体化熱処理を行う溶体化処理工程(ステップ2:S2)を行う。ここで、本発明の溶体化処理工程S2は、一方向凝固体におけるダブティル部110から翼部130にかけての厚さ20 mm以上の領域の表面上に酸化物被膜150を形成する酸化物被膜形成素工程(ステップ2a:S2a)と、酸化物被膜150が形成された一方向凝固体に対して溶体化熱処理を行う溶体化熱処理素工程(ステップ2b:S2b)とからなる。
酸化物被膜150としては、熱処理中に一方向凝固体との化学反応性が低い酸化物が好ましく、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、イットリア、およびそれらの複合酸化物から選ばれる一種を好適に用いることができる。
酸化物被膜150の厚さは、0.1 mm以上2 mm以下が好ましい。厚さが0.1 mm未満になると、製造のハンドリング中のちょっとした接触や摺動で擦り切れ易くなる。一方、厚さが2 mm超になると、熱処理中に熱膨張率の差異に起因するクラックや剥離が生じ易くなる。
翼部130において酸化物被膜150を形成する領域は、シャンク部120と翼部130との境界から該翼部130の長さの1/4以下が好ましい。タービン動翼においては、翼部130の先端から翼部長さの3/4付近までが最も高い高温環境に曝される領域であり、特に高いクリープ特性が要求される領域である。また、翼部130は、根元付近(シャンク部120との境界付近)を除いて厚さが20 mm未満であることが多いため、粒界割れが発生しづらい。これらのことから、翼部130では、高いクリープ特性を優先することが望ましい。
酸化物被膜150の形成方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、酸化物被膜150となる酸化物を含むスラリーを用意し、該スラリーを塗布・焼付する方法を好適に用いることができる。
溶体化熱処理素工程S2bは、1200℃以上1280℃以下の溶体化温度で保持した後(例えば、合計30分間〜10時間保持した後)、該溶体化温度から1000℃までの冷却過程において、一方向凝固体の酸化物被膜150が形成されている領域における平均冷却速度が70℃/分以上150℃/分以下となるように制御し、一方向凝固体の酸化物被膜150が形成されている領域以外の領域における平均冷却速度が70℃/分以上となるように制御し、1000℃以下の冷却は一方向凝固体の全体を空冷または水冷する工程である。
溶体化温度が1200℃未満になると、γ’相の固溶が不完全になり易い。一方、溶体化温度が1280℃超になると、γ相の固相線温度に近づくため、一方向凝固体10が変形し易くなる。
溶体化温度から1000℃までの冷却過程における平均冷却速度が70℃/分未満になると、最終的なタービン翼のクリープ特性が要求レベルを満たせなくなる。また、一方向凝固体の酸化物被膜150が形成されている領域における平均冷却速度が150℃/分超になると、粒界割れが発生し易くなる。当該平均冷却速度は、75℃/分以上130℃/分以下がより好ましく、80℃/分以上120℃/分以下が更に好ましい。
なお、翼部130の残領域(一方向凝固体の酸化物被膜150が形成されている領域以外の領域、部材厚さが20 mm未満の領域)では、平均冷却速度が150℃/分超になっても粒界割れは発生しない。言い換えると、一方向凝固体において酸化物被膜150が形成されている領域とは、溶体化温度から1000℃までの平均冷却速度を150℃/分超にした場合に、粒界割れが発生し易い領域と言える。
平均冷却速度の制御方法に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、冷却ガス(例えば、アルゴンガス等の不活性ガス)を吹き付けるガスブロー冷却を好適に利用できる。酸化物被膜150が形成されている領域は、冷却ガスが一方向凝固体の本体に直接当たらないことに加えて、単位表面積あたりの熱容量が大きくなることから、酸化物被膜150が形成されていない領域よりも平均冷却速度が遅くなる。そのため、酸化物被膜150が形成されている領域では、一方向凝固体の表面と内部との温度差が小さくなり、粒界割れを抑制することができる。
次に、溶体化熱処理を施した一方向凝固体に対して、所望のγ’相を析出させる時効熱処理を行って一方向凝固部材を形成する時効処理工程(ステップ3:S3)を行う。時効熱処理に特段の限定はなく、従前の方法を利用できる。例えば、1050〜1150℃の第1時効熱処理と、800〜950℃の第2時効熱処理とを順次行う方法を好適に利用できる。本工程により、本発明のNi基合金一方向凝固部材100が完成する。
なお、時効熱処理を施した一方向凝固部材100に対して仕上げ工程(ステップ4:S4)を行うことにより、タービン動翼が完成する。本発明では、仕上げ工程S4に特段の限定を設けないが、例えば、部材の形状仕上げや熱遮蔽バリア(TBC)の施工を挙げることができる。また、酸化物被膜150は、タービン動翼の設計思想に応じて、そのまま残してもよいし除去してもよい。
以下、種々の実験により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実験に限定されるものではない。
[実験1]
(合金部材A1-1〜A9-1およびB1-1〜B10-1の作製)
表1に示す名目化学組成を有する合金A1〜A9(本発明の規定を満たす合金)および合金B1〜B10(本発明の規定から外れる合金)のマスターインゴットを溶解し、一方向凝固鋳造により柱状晶板材(幅100 mm×長さ200 mm×厚さ15 mm)を作製した。長さ方向が凝固方向である。
Figure 2018104766
上記で用意した各柱状晶板材に対して、溶体化熱処理(真空中、1200℃で2時間保持し、引き続き1230℃で2時間保持し、引き続き1250℃で2時間保持した後、室温まで空冷)と、第1時効熱処理(真空中、1100℃で4時間保持した後、室温まで空冷)と、第2時効熱処理(真空中、871℃で20時間保持した後、室温まで空冷)とを順次行って一方向凝固部材の模擬試料(合金部材A1-1〜A9-1およびB1-1〜B10-1)を作製した。
得られた各合金部材の粒界割れの有無を確認するために、板材の一部分に対してマクロ腐食を行って、表面組織観察を行った(以降の表面組織観察も同様)。その結果、本実験では、各合金部材に粒界割れは観察されなかった。
[実験2]
(クリープ試験)
実験1で得られた各合金部材から、一方向凝固の凝固方向が長手方向となるようにしてクリープ試験片(直径14 mm×長さ180 mm)を採取した。次に、各クリープ試験片に対して、クリープ試験(1040℃、137 MPa)を行い、クリープ破断時間、破断伸び、および破断絞りを測定した。本発明が対象とするタービン動翼に対する要求特性から、クリープ破断時間が220時間以上を「合格」と判定し、220時間未満を「不合格」と判定した。結果を表2に示す。
Figure 2018104766
表2に示したように、本発明の規定を満たす化学組成を有する合金部材A1-1〜A9-1は、クリープ破断時間が220時間以上を達成し、合格であった。一方、化学組成が本発明の規定から外れる合金部材B1-1〜B10-1は、クリープ破断時間が220時間未満であり、不合格であった。本実験から、本発明で規定した化学組成の有効性が確認された。
[実験3]
(合金部材A1-2〜A9-2の作製と評価)
本実験では、柱状晶板材の厚さの影響を調査した。合金A1〜A9のマスターインゴットを用い、実験1と同様にして、一方向凝固鋳造により柱状晶板材(幅100 mm×長さ200 mm×厚さ20 mm)を作製した。実験1との差異は、柱状晶板材の厚さである。
次に、各柱状晶板材に対して、実験1と同じ溶体化熱処理、第1時効熱処理および第2時効熱処理を行って、合金部材A1-2〜A9-2を作製した。得られた各合金部材の表面組織観察を行ったところ、微細な粒界割れが散見された。この実験結果から、合金部材の厚さが厚くなると、粒界割れが発生し易くなることが確認された。
[実験4]
(合金部材A3-3〜A3-9の作製と評価)
本実験では、溶体化熱処理における冷却速度の影響を調査した。合金A3のマスターインゴットを用い、実験3と同様にして、一方向凝固鋳造により柱状晶板材(幅100 mm×長さ200 mm×厚さ20 mm)を7枚作製した。
次に、各柱状晶板材に対して、実験1と同じ溶体化温度の溶体化熱処理を行った。ただし、1250℃で2時間保持した後、該温度から1000℃までの冷却過程において、アルゴンガスの吹き付け流量を調整しながらガスブロー冷却による平均冷却速度を制御した。1000℃以下の冷却は、室温まで空冷とした。その後、実験1と同じ第1時効熱処理および第2時効熱処理を行って、合金部材A3-3〜A3-9を作製した。
次に、実験3と同様にして、得られた各合金部材の表面の組織観察を行った。また、実験2と同様にして、各合金部材からクリープ試験片(直径19 mm×長さ180 mm)を採取し、クリープ試験(1040℃、137 MPa)を行って、クリープ破断時間、破断伸び、および破断絞りを測定した。結果を表3および図3に示す。図3は、溶体化熱処理での平均冷却速度と合金部材のクリープ破断時間との関係を示すグラフである。
Figure 2018104766
表3および図3に示したように、溶体化熱処理での平均冷却速度を遅くしていくと、粒界割れが抑制できるが、クリープ破断時間が急激に短くなっていくことが判った。また、クリープ特性が合格(クリープ破断時間が220時間以上)となり、かつ粒界割れを抑制できる平均冷却速度は、70℃/分以上150℃/分以下であることが判った。
なお、粒界割れが発生した合金部材A3-3〜A3-4もクリープ破断時間が220時間以上になっているが、これは、クリープ試験の応力方向が合金部材の凝固方向に平行のためと考えられる。ただし、合金部材A3-3〜A3-4の凝固方向と垂直方向に引張応力が掛かったとしたら、粒界割れに起因して極めて短時間で破断すると考えられる。すなわち、タービン動翼の実機を考慮すると、粒界割れを抑制する必要があると考えられる。
[実験5]
(合金部材A3-10の作製と評価)
本実験では、溶体化熱処理における酸化物被膜の影響を調査した。合金A3のマスターインゴットを用い、実験3と同様にして、一方向凝固鋳造により柱状晶板材(幅100 mm×長さ200 mm×厚さ20 mm)を作製した。
次に、得られた柱状晶板材に対し、シリカ粉末とコロイダルシリカとを混合して用意したシリカスラリー中への浸漬塗布と1000℃の焼付けとを繰り返し行うことによって、柱状晶板材の表面上に酸化物被膜(厚さ約0.5 mm)を形成した。
次に、酸化物被膜を形成した柱状晶板材に対して、先の合金部材A3-4と同じガスブロー冷却条件(実験4で粒界割れが発生したガスブロー冷却条件)で溶体化熱処理を行った。その後、実験1と同じ第1時効熱処理および第2時効熱処理を行って、合金部材A3-10を作製した。
得られた合金部材A3-10の酸化物被膜を除去し、部材表面の組織観察を行ったところ、粒界割れは観察されなかった。また、実験2と同様にして、合金部材A3-10からクリープ試験片(直径19 mm×長さ180 mm)を採取し、クリープ試験(1040℃、137 MPa)を行ったところ、220時間以上のクリープ破断時間が得られた。
これらの実験結果から、酸化物被膜の形成により、良好なクリープ特性と粒界割れの抑制とが両立できることが確認された。
[実験6]
(合金部材A3-11〜A3-12の作製と評価)
本実験では、タービン動翼と同じ構造を有する一方向凝固体に対して、本発明の効果を確認した。合金A3のマスターインゴットを用い、一方向凝固鋳造により図1に示したような構造を有する一方向凝固体(全体長さ350 mm)を2個作製した。
次に、一方の一方向凝固体に対して、アルミナ粉末とアルミナゾルとを混合して用意したアルミナスラリー中への浸漬塗布と1000℃の焼付けとを繰り返し行うことによって、一方向凝固体の表面上に酸化物被膜(厚さ約1 mm)を形成した。酸化物被膜を形成した領域は、ダブティル部の先端から翼部の長さの1/5までとした。他方の一方向凝固体に対しては、酸化物被膜の形成を行わなかった。
次に、上記2種類の一方向凝固体に対して、先の合金部材A3-4と同じガスブロー冷却条件(実験4で粒界割れが発生したガスブロー冷却条件)で溶体化熱処理を行った。その後、実験1と同じ第1時効熱処理および第2時効熱処理を行って、合金部材A3-11(酸化物被膜なし)とA3-12(酸化物被膜あり)とを作製した。
合金部材A3-12の酸化物被膜を除去し、合金部材A3-11と共に部材表面の組織観察を行った。結果を図4に示す。図4は、合金部材A3-11〜A3-12における表面組織観察の結果を示す写真である。
図4に示したように、酸化物被膜を形成しなかった合金部材A3-11は、翼部の根元付近(翼部とシャンク部との境界付近)とシャンク部とに粒界割れが観察されたが、酸化物被膜を形成した合金部材A3-12は、翼部の根元付近およびシャンク部において粒界割れが観察されなかった。この実験結果から、本発明の効果が確認された。
上述した実施形態や実施例は、本発明の理解を助けるために説明したものであり、本発明は、記載した具体的な構成のみに限定されるものではない。例えば、実施形態の構成の一部を当業者の技術常識の構成で置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に当業者の技術常識の構成を加えることも可能である。すなわち、本発明は、本明細書の実施形態や実施例の構成の一部について、削除・他の構成に置換・他の構成の追加をすることが可能である。
100…Ni基合金一方向凝固部材、110…ダブティル部、120…シャンク部、121…プラットホーム、122…ラジアルフィン、130…翼部、150…酸化物被膜。

Claims (12)

  1. Ni基合金の一方向凝固部材であって、
    前記Ni基合金は、化学組成としてReを含まず、
    前記一方向凝固部材は、ダブティル部とシャンク部と翼部とが連なるタービン動翼の構造を有し、前記ダブティル部から前記翼部にかけての厚さ20 mm以上の領域の表面上に酸化物被膜が形成されており、
    前記酸化物被膜が形成されている領域内に粒界割れは存在せず、
    前記一方向凝固部材は、温度1040℃、応力137 MPaの条件下でクリープ試験を行ったときに、クリープ破断時間が220時間以上となる機械的特性を有していることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材。
  2. 請求項1に記載のNi基合金一方向凝固部材において、
    前記酸化物被膜は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、イットリア、およびそれらの複合酸化物から選ばれる一種からなり、厚さが0.1 mm以上2 mm以下であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材。
  3. 請求項1又は請求項2に記載のNi基合金一方向凝固部材において、
    前記翼部における前記酸化物被膜が形成されている領域は、前記シャンク部と前記翼部との境界から該翼部の長さの1/4以下であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材。
  4. 請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載のNi基合金一方向凝固部材において、
    前記Ni基合金一方向凝固部材は、全体長さが300 mm以上であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材。
  5. 請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のNi基合金一方向凝固部材において、
    前記Ni基合金の前記化学組成は、3.5質量%以上4.9質量%以下のAlと、2.6質量%以上3.9質量%以下のTiと、4.4質量%以上8質量%以下のTaと、0.05質量%以上1質量%以下のNbと、8質量%以上11.5質量%以下のCrと、4.1質量%以上6.9質量%以下のCoと、4質量%以上10質量%以下のWと、1質量%以上1.95質量%以下のMoと、0.03質量%以上0.15質量%以下のCと、0.002質量%以上0.04質量%以下のBと、0.01質量%以上1質量%以下のHfと、0.05質量%以下のZrと、0.02質量%以上1質量%以下のSiと、3質量%以下のFeとを含み、残部がNiと不可避不純物とからなることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材。
  6. 請求項5に記載のNi基合金一方向凝固部材において、
    前記Ni基合金の前記化学組成は、3.5質量%以上4.5質量%以下のAlと、3質量%以上3.9質量%以下のTiと、4.4質量%以上6質量%以下のTaと、0.2質量%以上0.8質量%以下のNbと、9.5質量%以上10.5質量%以下のCrと、5.5質量%以上6.9質量%以下のCoと、6.4質量%以上7.6質量%以下のWと、1.2質量%以上1.9質量%以下のMoと、0.05質量%以上0.09質量%以下のCと、0.002質量%以上0.02質量%以下のBと、0.01質量%以上0.5質量%以下のHfと、0.02質量%以下のZrと、0.02質量%以上0.1質量%以下のSiと、0.5質量%以下のFeとを含み、残部がNiと不可避不純物とからなることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材。
  7. 請求項1に記載のNi基合金一方向凝固部材を製造する方法であって、
    前記Ni基合金の一方向凝固を行って前記タービン動翼の構造を有する一方向凝固体を形成する一方向凝固工程と、
    前記一方向凝固体に対して前記一方向凝固工程で析出したγ’相を固溶させる溶体化熱処理を行う溶体化処理工程と、
    前記溶体化熱処理を施した一方向凝固体に対して所望のγ’相を析出させる時効熱処理を行って前記一方向凝固部材を形成する時効処理工程と、を有し、
    前記溶体化処理工程は、
    前記一方向凝固体の前記ダブティル部から前記翼部にかけての厚さ20 mm以上の領域の表面上に前記酸化物被膜を形成する酸化物被膜形成素工程と、
    前記酸化物被膜が形成された一方向凝固体に対して前記溶体化熱処理を行う溶体化熱処理素工程と、を有し、
    前記溶体化熱処理素工程は、1200℃以上1280℃以下の溶体化温度で保持した後、該溶体化温度から1000℃までの冷却過程において、前記一方向凝固体の前記酸化物被膜が形成されている領域における平均冷却速度が70℃/分以上150℃/分以下となるように制御し、前記一方向凝固体の前記酸化物被膜が形成されている領域以外の領域における平均冷却速度が70℃/分以上となるように制御し、1000℃以下の冷却は前記一方向凝固体の全体を空冷または水冷する工程であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材の製造方法。
  8. 請求項7に記載のNi基合金一方向凝固部材の製造方法において、
    前記酸化物被膜は、アルミナ、シリカ、ジルコニア、イットリア、およびそれらの複合酸化物から選ばれる一種からなり、厚さが0.1 mm以上2 mm以下であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材の製造方法。
  9. 請求項7又は請求項8に記載のNi基合金一方向凝固部材の製造方法において、
    前記翼部における前記酸化物被膜が形成されている領域は、前記シャンク部と前記翼部との境界から該翼部の長さの1/4以下であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材の製造方法。
  10. 請求項7乃至請求項9のいずれか一項に記載のNi基合金一方向凝固部材の製造方法において、
    前記Ni基合金一方向凝固部材は、全体長さが300 mm以上であることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材の製造方法。
  11. 請求項7乃至請求項10のいずれか一項に記載のNi基合金一方向凝固部材の製造方法において、
    前記Ni基合金の前記化学組成は、3.5質量%以上4.9質量%以下のAlと、2.6質量%以上3.9質量%以下のTiと、0.05質量%以上1質量%以下のNbと、4.4質量%以上8質量%以下のTaと、8質量%以上11.5質量%以下のCrと、4.1質量%以上6.9質量%以下のCoと、4質量%以上10質量%以下のWと、1質量%以上1.95質量%以下のMoと、0.03質量%以上0.15質量%以下のCと、0.002質量%以上0.04質量%以下のBと、0.01質量%以上1質量%以下のHfと、0.05質量%以下のZrと、0.02質量%以上1質量%以下のSiと、3質量%以下のFeとを含み、残部がNiと不可避不純物とからなることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材の製造方法。
  12. 請求項11に記載のNi基合金一方向凝固部材の製造方法において、
    前記Ni基合金の前記化学組成は、3.5質量%以上4.5質量%以下のAlと、3質量%以上3.9質量%以下のTiと、0.2質量%以上0.8質量%以下のNbと、4.4質量%以上6質量%以下のTaと、9.5質量%以上10.5質量%以下のCrと、5.5質量%以上6.9質量%以下のCoと、6.4質量%以上7.6質量%以下のWと、1.2質量%以上1.9質量%以下のMoと、0.05質量%以上0.09質量%以下のCと、0.002質量%以上0.02質量%以下のBと、0.01質量%以上0.5質量%以下のHfと、0.02質量%以下のZrと、0.02質量%以上0.1質量%以下のSiと、0.5質量%以下のFeとを含み、残部がNiと不可避不純物とからなることを特徴とするNi基合金一方向凝固部材の製造方法。
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