JP2018104651A - グリース組成物及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】グリース層を形成した場合に、グリース層の成分が保護フィルム等に対して転写することを抑制可能な、グリース組成物を提供する。【解決手段】本発明のグリース組成物は、ベースグリースと、繊維状炭素ナノ構造体とを含み、該グリース組成物を用いて形成したグリース層に対して離型フィルムを積層して加圧した後に、グリース層から離型フィルムを剥離した際に、離型フィルム上に移行する一部のグリース層の質量が、グリース層の全質量の30質量%以下である。【選択図】なし

Description

本発明は、グリース組成物及びその製造方法に関するものであり、特に、炭素材料を含有するグリース組成物及びかかるグリース組成物の製造方法に関するものである。
半導体チップ等を備える半導体モジュールは、通電時に生じる熱を逃がすために、ヒートシンクに接続して用いられることが一般的である。半導体モジュールがヒートシンクに対して接続される場合、半導体モジュールとヒートシンクとの間には、熱伝達を促進するための熱伝導層が配置される。かかる熱伝導層としては、熱伝導性の高い熱伝導性グリース等を塗布する等して形成されうるグリース層や、熱伝導性の高いシート状の部材等が挙げられる。
従来、熱伝導層としてのグリース層の形成方法としては、塗工に適した所定粘度の熱伝導性のグリースを半導体モジュールに対して塗布した後に、塗布したグリースを増粘させる半導体モジュールユニットの製造方法が提案されてきた(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の製造方法によれば、グリースの塗工性を良好にするとともに、半導体モジュールをヒートシンク上に実装した後に、グリースを増粘させることによって、グリースのポンプアウトを防止することが可能であった。
特開第5383599号公報
ここで、半導体モジュールを製品に実装して用いるメーカー側には、熱伝導層を形成する工程を省略して製品の製造を効率化する観点から、熱伝導層が予め形成された半導体モジュールを調達したいというニーズがある。更に、熱伝導率の高さやコストの低さ等の利点から、熱伝導層としてグリース層を備える半導体モジュールが求められている。
しかし、特許文献1に記載されたような半導体モジュールは、グリース層が表面に露出したまま流通に供すれば、流通時にグリース層のグリース成分が他の部材等に転写する虞がある。このため、特許文献1に記載されたような熱伝導層としてグリース層を形成した半導体モジュールは、そのままでは流通には適さない。また、流通時に、グリース層を形成するグリース成分が他の部材等に転写することを防止するために、グリース層表面に対して保護フィルム等を配置すれば、かかる保護フィルムに対してグリースが転写してしまい、結果的に、保護フィルムをはがしてヒートシンク等に対して取り付ける際に、十分な熱伝導性を発揮することができない。
このように、熱伝導層を形成するために用いられうる従来のグリース組成物には、保護フィルムに対する転写を抑制して、半導体モジュール上にグリース層を形成した状態での流通を可能にするとともに、実装時に充分な熱伝導性を発揮し得るようにすることが必要とされてきた。
そこで、本発明は、グリース層表面に対して保護フィルム等の他の部材を配置した場合に、グリース層の成分が保護フィルム等に対して転写することを抑制可能なグリース層を形成しうるグリース組成物を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った。そして、本発明者らは、グリース組成物を調製する際にベースグリースに対して繊維状炭素ナノ構造体を配合することにより、グリース層の成分が保護フィルム等に対して転写することを抑制可能であることを見出した。また、本発明者らは、グリース層が固形成分を含む場合には、固形成分を含まない、ベースグリースからなるグリース層と比較して熱伝導性が低下する傾向があるが、固形成分として繊維状炭素ナノ構造体を含有させることで、熱伝導性の過度な低下を回避可能であることも見出し、本発明を完成させた。
即ち、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のグリース組成物は、ベースグリースと、繊維状炭素ナノ構造体とを含むグリース組成物であり、該グリース組成物を用いて形成したグリース層に対して離型フィルムを積層して加圧した後に、前記グリース層から前記離型フィルムを剥離した際に、前記離型フィルム上に移行する一部のグリース層の質量が、前記グリース層の全質量の30質量%以下であることを特徴とする。このように、グリース組成物にベースグリースと、繊維状炭素ナノ構造体とを含有させることで、グリース組成物を用いて形成したグリース層上に保護フィルムとしての離型フィルムを配置した場合に、保護フィルムに対するグリース組成物の転写を抑制することができるとともに、グリース層の熱伝導性を良好なものとすることができる。
また、本発明のグリース組成物は、前記グリース組成物中で、前記繊維状炭素ナノ構造体が絡合構造を形成してなることが好ましい。グリース組成物にて繊維状炭素ナノ構造体が絡合構造を形成していれば、グリース組成物を用いて形成したグリース層上に保護フィルムを配置した場合に、保護フィルムに対するグリース組成物の転写を一層効果的に抑制することができるとともに、グリース層の熱伝導性を一層良好なものとすることができる。
なお、本発明において、「絡合構造」は本明細書の実施例に記載の方法により確認することができる。
また、本発明のグリース組成物は、前記繊維状炭素ナノ構造体が、カーボンナノチューブを含み、該カーボンナノチューブのBET比表面積が300m/g以上であることが好ましい。グリース組成物が、BET比表面積が300m/g以上であるカーボンナノチューブを含んでいれば、グリース層の熱伝導性を高めることができるからである。
なお、本発明において、「BET比表面積」は、BET法を用いて測定した窒素吸着比表面積を指す。
さらに、本発明のグリース組成物は、前記繊維状炭素ナノ構造体の含有量が、前記ベースグリース100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましい。グリース組成物中における繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記範囲内であれば、保護フィルムに対する転写の抑制(以下、「耐転写特性」とも称する)と、グリース層の熱伝導性とを一層良好に両立することができるからである。
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明のグリース組成物の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒に対して分散して繊維状炭素ナノ構造体分散液を得て、該繊維状炭素ナノ構造体分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50を0.1μm以上とする分散液調製工程と、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液をベースグリースに対して添加して撹拌し、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液由来の前記溶媒を除去する混合工程と、を含むことを特徴とする。
このように、特定の粒度分布の繊維状炭素ナノ構造体分散液を調製して、かかる繊維状炭素ナノ構造体分散液をベースグリースに対して混ぜ込めば、グリース組成物中において繊維状炭素ナノ構造体を良好に分散させることができ、耐転写特性と熱伝導性とを両立可能なグリース組成物を良好に調製することができる。
なお、本発明において「繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50」は、レーザー解析/散乱式粒子径分布測定装置で測定した体積基準の粒度分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる繊維状炭素ナノ構造体の粒子径(いわゆる、メジアン径)を意味する。
本発明によれば、グリース層を形成した場合に、グリース層の成分が保護フィルム等の他部材に対して転写することを抑制可能な、グリース組成物及びその製造方法を提供することができる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明のグリース組成物は、例えば、ヒートシンク等の被取付物と半導体モジュールとの間に介在し得る熱伝導層を形成するために用いることができる。さらに、本発明のグリース組成物は、例えば、半導体モジュール表面に塗布されて、熱伝導層を形成し、かかる熱伝導層上に保護フィルム等を配置した状態で流通可能な半導体モジュールを製造するために用いることができる。さらに、本発明のグリース組成物は、特に限定されることなく、熱伝導性の層が必要とされうるあらゆる用途に適用しうる。
本発明のグリース組成物は、本発明のグリース組成物の製造方法により良好に製造することができるが、得られたグリース組成物の性状を、該グリース組成物を用いて形成したグリース層に対して離型フィルムを積層して加圧した後に、グリース層から離型フィルムを剥離した際に、離型フィルム上に移行する一部のグリース層の質量が、グリース層の全質量の30質量%以下となるようにしうる限りにおいて、他の製造方法によっても製造することが可能である。
(グリース組成物)
本発明のグリース組成物は、ベースグリースと、繊維状炭素ナノ構造体とを含み、該グリース組成物を用いて形成したグリース層に対して離型フィルムを積層して加圧した後に、前記グリース層から前記離型フィルムを剥離した際に、前記離型フィルム上に移行する一部のグリース層の質量が、前記グリース層の全質量の30質量%以下であることを特徴とする。グリース組成物にベースグリースと、繊維状炭素ナノ構造体とを含有させることで、グリース組成物を用いて形成したグリース層上に保護フィルムを配置した場合に、保護フィルムに対してグリース層の一部が転写することを抑制することができるとともに、グリース層の熱伝導性を良好なものとすることができる。
さらに、本発明のグリース組成物は、該グリース組成物中で、繊維状炭素ナノ構造体が絡合構造を形成してなることが好ましい。グリース組成物中にて、繊維状炭素ナノ構造体がバンドル状や塊状ではなく、繊維形状を呈しており、さらに、繊維形状の繊維状炭素ナノ構造体があたかも相互に絡み合うかのように見られる絡合構造を形成していれば、半導体モジュール上にグリース層を形成した場合に、グリース層の成分が保護フィルムに対して転写することを抑制可能である。また、維状炭素ナノ構造体が絡合構造により、グリース層の熱伝導性を一層良好なものとすることができる。この理由は明らかではないが、以下の通りであると推察される。
まず、流動物であるベースグリースに対して、繊維状炭素ナノ構造体等の非粒子状の固形成分を添加して得たグリース組成物を用いて形成したグリース層は、非粒子状の固形成分を含有しないベースグリースを用いて形成したグリース層と比較して、熱伝導性が低下する。これは、非粒子状の固形分がグリース層に構造的強度を付与して、グリース層が硬くなるためでありうる。しかし、本発明者らは、繊維状炭素ナノ構造体を添加したグリース組成物では、熱伝導性の低下の程度が低く、且つ、保護フィルムに対するグリース組成物の転写を抑制することができるという新規な効果を奏することがあることを見出した。これは、繊維状炭素ナノ構造体の絡合構造により生じる熱伝導効果により、グリース層が硬くなることに起因する熱伝導性の低下の影響の少なくとも一部を補償可能なためであると考えられる。さらに、繊維状炭素ナノ構造体により形成される絡合構造は、グリース層中の成分をグリース層内にとどめるようにも作用すると考えられる。このため、グリース組成物内にて繊維状炭素ナノ構造体が絡合構造を形成してなるグリース組成物を用いて形成されたグリース層を備える半導体モジュールは、保護フィルム等を剥離した際に保護フィルムへの転写が少ない。よって、繊維状炭素ナノ構造体が絡合構造を形成してなるグリース組成物によれば、熱伝導性の低下を一層良好に抑えつつ、グリース層の耐転写特性を向上させることができる。
さらに、絡合構造がグリース層の成分をグリース層内にとどめるように作用することで、かかるグリース層を備える半導体モジュールを製品に実装した後に、半導体モジュールの発熱に起因して、グリース層の成分が流動してポンプアウトすることを抑制することができる。
<ベースグリース>
ベースグリースとしては、特に限定されることなく、エポキシ樹脂系グリースやシリコーン樹脂系グリースを使用することができる。中でも、シリコーン樹脂系グリースを用いることが好ましい。
[混和ちょう度]
ベースグリースは、グリースの硬さの指標となりうるパラメータである混和ちょう度が500以下であることが好ましく、400以下であることがより好ましく、350以下であることが好ましい。また、100以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましい。ベースグリースの混和ちょう度が上記上限値以下であれば、耐転写特性を一層向上させることができる。また、ベースグリースの混和ちょう度が上記下限値以上であれば、グリース層が過度に硬くなることを回避して、グリース層の熱伝導性を一層向上させることができる。
なお、本明細書において、グリースの混和ちょう度は、JIS K 2220に従って測定することができる。
[熱伝導率]
ベースグリースは、熱伝導率が0.5W/m・K以上であることが好ましく、0.8W/m・K以上であることがより好ましい。ベースグリースの熱伝導率が上記下限値以上であれば、グリース層の熱伝導性を一層向上させることができる。
なお、本明細書において、ベースグリースの熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により測定することができる。
<繊維状炭素ナノ構造体>
繊維状炭素ナノ構造体としては、例えば、カーボンナノチューブ(CNT)等の円筒形状の炭素ナノ構造体や、炭素の六員環ネットワークが扁平筒状に形成されてなる炭素ナノ構造体等の非円筒形状の炭素ナノ構造体が挙げられる。そして、本発明のグリース組成物に含有される繊維状炭素ナノ構造体は、カーボンナノチューブ(以下、「CNT」とも称する)を含むことが好ましい。繊維状炭素ナノ構造体がCNTを含めば、得られるグリース組成物の耐転写特性を一層高めることができる。本発明のグリース組成物により形成したグリース層の熱伝導性を高めることができる。また、得られるグリース組成物内で一層良好な絡合構造を形成しうる。
CNTとしては、特に限定されることなく、単層カーボンナノチューブおよび/または多層カーボンナノチューブを用いることができるが、CNTは、単層から5層までのカーボンナノチューブであることが好ましく、単層カーボンナノチューブであることがより好ましい。単層カーボンナノチューブを使用すれば、多層カーボンナノチューブを使用した場合と比較し、グリース層の熱伝導性を更に向上させることができるからである。
また、繊維状炭素ナノ構造体としては、平均直径(Av)に対する、直径の標準偏差(σ)に3を乗じた値(3σ)の比(3σ/Av)が0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を用いることが好ましく、3σ/Avが0.25超の繊維状炭素ナノ構造体を用いることがより好ましい。3σ/Avが0.20超0.60未満の繊維状炭素ナノ構造体を使用すれば、得られるグリース組成物の耐転写特性を一層高めることができる。また、一層良好な絡合構造を形成しうる。
なお、「繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)」および「繊維状炭素ナノ構造体の直径の標準偏差(σ:標本標準偏差)」は、それぞれ、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径(外径)を測定して求めることができる。そして、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)および標準偏差(σ)は、繊維状炭素ナノ構造体の製造方法や製造条件を変更することにより調整してもよいし、異なる製法で得られた繊維状炭素ナノ構造体を複数種類組み合わせることにより調整してもよい。
また、繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)は、0.5nm以上であることが好ましく、2.0nm以上であることが更に好ましく、20nm以下であることが好ましく、10nm以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体の平均直径(Av)が上記範囲内であれば、得られるグリース組成物の耐転写特性を一層高めることができる。また、一層良好な絡合構造を形成しうる。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、合成時における構造体の平均長さが100μm以上であることが好ましい。なお、合成時の構造体の長さが長いほど、分散時に繊維状炭素ナノ構造体に破断や切断などの損傷が発生し易いので、合成時の構造体の平均長さは5000μm以下であることが好ましい。
そして、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比(長さ/直径)は、10を超えることが好ましい。なお、繊維状炭素ナノ構造体のアスペクト比は、透過型電子顕微鏡を用いて無作為に選択した繊維状炭素ナノ構造体100本の直径および長さを測定し、直径と長さとの比(長さ/直径)の平均値を算出することにより求めることができる。
更に、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積は、300m/g以上であることが好ましく、600m2/g以上であることがより好ましく、800m2/g以上であることが更に好ましく、2500m2/g以下であることが好ましく、1200m2/g以下であることが更に好ましい。繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が300m2/g以上であれば、グリース層の熱伝導性を高めることができる。また、繊維状炭素ナノ構造体のBET比表面積が2500m2/g以下であれば、得られるグリース組成物の耐転写特性を一層高めることができるとともに、一層良好な絡合構造を形成しうる。
また、繊維状炭素ナノ構造体は、後述のスーパーグロース法によれば、カーボンナノチューブ成長用の触媒層を表面に有する基材上に、基材に略垂直な方向に配向した集合体(配向集合体)として得られるが、当該集合体としての繊維状炭素ナノ構造体の質量密度は、0.002g/cm3以上0.2g/cm3以下であることが好ましい。質量密度が0.2g/cm3以下であれば、繊維状炭素ナノ構造体同士の結びつきが弱くなるので、一層良好な絡合構造を形成することができる。また、質量密度が0.002g/cm3以上であれば、繊維状炭素ナノ構造体の一体性を向上させ、バラけることを抑制できるため本発明のグリース組成物の調製時に取り扱いが容易になる。
そして、上述した性状を有する繊維状炭素ナノ構造体は、例えば、カーボンナノチューブ製造用の触媒層を表面に有する基材上に、原料化合物およびキャリアガスを供給して、化学的気相成長法(CVD法)によりCNTを合成する際に、系内に微量の酸化剤(触媒賦活物質)を存在させることで、触媒層の触媒活性を飛躍的に向上させるという方法(スーパーグロース法;国際公開第2006/011655号参照)において、基材表面への触媒層の形成をウェットプロセスにより行うことで、効率的に製造することができる。なお、以下では、スーパーグロース法により得られるカーボンナノチューブを「SGCNT」と称することがある。
なお、スーパーグロース法により製造した繊維状炭素ナノ構造体は、SGCNTのみから構成されていてもよいし、SGCNTと、非円筒形状の炭素ナノ構造体とから構成されていてもよい。具体的には、繊維状炭素ナノ構造体には、内壁同士が近接または接着したテープ状部分を全長に亘って有する単層または多層の扁平筒状の炭素ナノ構造体(以下、「グラフェンナノテープ(GNT)」と称することがある。)が含まれていてもよい。
本発明のグリース組成物は、繊維状炭素ナノ構造体の含有量が、ベースグリース100質量部に対して、0.01質量部以上であることが好ましく、0.05質量部以上であることが好ましく、2.00質量部以下であることが好ましく、0.60質量部以下であることが好ましく、0.40質量部以下であることがより好ましく、0.30質量部以下であることが更に好ましい。グリース組成物中における繊維状炭素ナノ構造体の含有量が上記範囲内であれば、グリース層の保護フィルムに対する転写の抑制と、グリース層の熱伝導性とを一層良好に両立することができる。さらに、グリース層のポンプアウトも一層良好に抑制することができる。また、繊維状炭素ナノ構造体の絡合構造を一層良好に形成しうる。
なお、ベースグリースとして混和ちょう度が低いもの、即ち、硬いベースグリースを用いる場合には、グリース組成物が過度に硬くなることを抑制するために繊維状炭素ナノ構造体の添加量を少なくすることが好ましい。
<添加剤>
本発明のグリース組成物には、必要に応じて、熱伝導層の形成に用いうるグリース組成物に含有されうる既知の添加剤を配合することができる。そして、グリース組成物に配合し得る添加剤としては、特に限定されることなく、例えば、熱伝導層の熱伝導性を高めるための金属微粉末や金属酸化物等、炭素材料の熱伝導材が挙げられる。
<熱伝導性>
また、本発明のグリース組成物は、50℃、0.05MPaの条件で測定した熱抵抗値が0.40℃/W以下であることが好ましく、0.35℃/W以下であることがより好ましく、0.30℃/W以下であることが更に好ましく、0.25℃/W以下であることがより好ましい。また、本発明のグリース組成物は、50℃、0.30MPaの条件で測定した熱抵抗値が0.35℃/W以下であることが好ましく、0.30℃/W以下であることがより好ましく、0.27℃/W以下であることが更に好ましく、0.25℃/W以下であることがより好ましい。熱抵抗値が大きければ、熱伝導率が低く、熱抵抗値が小さいほど、熱伝導性が高い。
<耐転写特性>
また、本発明のグリース組成物は、かかるグリース組成物を用いて形成したグリース層に対して離型フィルムを積層して加圧した後に、グリース層から離型フィルムを剥離した際に、離型フィルム上に移行する一部のグリース層の質量が、グリース層の全質量の30質量%以下であることが好ましい。このような条件を満たすグリース組成物は、耐転写特性に優れる。さらに、離型フィルム上に移行する一部のグリース層の質量は、グリース層の全質量の25%以下であることが好ましい。
<保護フィルム>
なお、本発明のグリース組成物を用いて形成したグリース層の表面を保護するための保護フィルムとしては、特に限定されることなく、ポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフィルム)や、フッ素樹脂フィルム、ポリオレフィン樹脂フィルムのような、一般的な離型フィルムを用いることができる。これらのフィルムは、任意で、表面がシリコーン処理されてなる。
<基板>
本発明のグリース組成物は、特に限定されることなく、熱伝導層としてのグリース層を塗布する対象となりうる半導体モジュールの最外層を形成し得る各種材料よりなる基板上に塗布されて、グリース層を形成し得る。半導体モジュールの最外層は、特に限定されることなく、例えば銅箔やアルミニウム箔等の熱伝導性の金属箔により形成されてなる。
(グリース組成物の製造方法)
本発明のグリース組成物の製造方法は、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒に対して分散して分散液を得て、該分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50を0.1μm以上とする分散液調製工程と、繊維状炭素ナノ構造体分散液をベースグリースに対して添加して撹拌し、繊維状炭素ナノ構造体分散液由来の溶媒を除去する混合工程とを含む。
<分散液調製工程>
分散液調製工程では、繊維状炭素ナノ構造体を溶媒に対して分散して分散液を得て、該分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50を0.1μm以上とする。さらに、分散液調製工程にて、分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50を1.0μm以上とすることが好ましく、10μm以上とすることがより好ましく、500μm以下とすることが好ましく、100μm以下とすることがより好ましく、40μm以下とすることが更に好ましい。分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径を上記範囲内とすれば、得られるグリース組成物の耐転写特性を一層高めることができるからである。また、分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径を上記範囲内とすれば、グリース組成物中にて繊維状炭素ナノ構造体の絡合構造を一層良好に形成しうる。
そして、本工程で配合する繊維状炭素ナノ構造体としては、本発明のグリース組成物に配合し得る上述したような繊維状炭素ナノ構造体を用いることができる。
[溶媒]
溶媒としては、特に限定されることなく、例えば、水、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、t−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、アミルアルコールなどのアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系極性有機溶媒、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、オルトジクロロベンゼン、パラジクロロベンゼンなどの芳香族炭化水素類などが挙げられる。これらは1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。中でも、メチルエチルケトンを用いることが好ましい。
[その他]
分散液の調製にあたり、必要に応じて、分散剤などの添加剤を配合しても良い。分散剤としては、特に限定されることなく、繊維状炭素ナノ構造体の分散を補助し得る既知の分散剤を配合しうる。そのような分散剤としては、例えば、界面活性剤や、カルボキシメチルセルロースなどの多糖類等が挙げられる。
[分散処理]
そして、分散液調製工程では、上述した溶媒に対して上述した繊維状炭素ナノ構造体および分散剤を添加してなる粗分散液を、特開2016‐190772に記載されたようなキャビテーション効果が得られる分散処理または解砕効果が得られる分散処理に供する。
<混合工程>
混合工程では、上記分散液調製工程で得られた繊維状炭素ナノ構造体分散液をベースグリースに対して添加して撹拌し、繊維状炭素ナノ構造体分散液由来の溶媒を除去する。ベースグリースとしては、グリース組成物に含有されうるベースグリースとして上述したものを用いることができる。
[混合方法]
混合方法としては、特に限定されることなく、スターラーや手による撹拌など、一般的な撹拌方法を採用することができる。混合物中における繊維状炭素ナノ構造体分散液由来の溶媒を効率的に除去する観点から、混合工程は、繊維状炭素ナノ構造体分散液をベースグリースに対して添加して得た混合液を溶媒の沸点以上の温度で加熱することを含むことが好ましい。具体的には、加熱温度は、50℃以上が好ましく、70℃以上がより好ましく、120℃以下であることが好ましい。加熱温度を溶媒の沸点以上、120℃以下とすることで、溶媒を効率的に除去するとともに、得られるグリース組成物の耐転写特性を一層高めることができる。また、かかる加熱温度範囲とすれば、得られるグリース組成物内で一層良好な絡合構造を形成しうる。
また、混合工程は、撹拌回転数100rpm以上15000rpm以下で行うことが好ましい。さらに、混合工程は、撹拌時間を1分以上30分以下で行うことが好ましい。上記撹拌条件の範囲内にて混合工程を実施すれば、効率的に混合物中における繊維状炭素ナノ構造体分散液由来の溶媒を効率的に除去するとともに、得られるグリース組成物の耐転写特性を一層高めることができる。また、得られるグリース組成物内で一層良好な絡合構造を形成しうる。
なお、混合工程における撹拌条件は、上記分散液調製工程における分散条件よりもマイルドな条件とすることが好ましい。
以下、本発明について実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。なお、以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、特に断らない限り、質量基準である。
そして、実施例および比較例において、繊維状炭素ナノ構造体の絡合構造及び体積平均粒子径D50、並びに、グリース組成物の熱伝導性、耐転写特性、及び耐ポンプアウト性は、それぞれ以下の方法に従って測定または評価した。
<繊維状炭素ナノ構造体の絡合構造>
実施例、比較例で調製したグリース組成物0.50gを、40×40×1mmのガラス基板上に均一に塗布してグリース層を形成し試験片とした。ブンゼンバーナーの空気およびガスの流量を調整して高さ20mm程度の青色炎をつくり、垂直に支持した試験片の下端にブンゼンバーナーの炎をあてて(炎と試験片とが約10mm交わるように)10秒間保った後、試験片とブンゼンバーナーの炎とを離した。その後、試験片の炎が消えれば直ちにブンゼンバーナーの炎を試験片に再びあて、更に10秒間保持した後、試験片とブンゼンバーナーの炎とを離した。
燃焼後の試験片をFE−SEMにて観察し、10000倍の倍率の視野内にて明色表示される絡合構造の有無を目視確認した。そして5点観察した際に、5点のいずれかで、バンドル状や塊状ではなく、相互に絡み合うように見られる複数の繊維形状を呈している繊維状炭素ナノ構造体が確認された場合には、絡合構造が形成されたものとして判定した。また、5点観察した際に、5点のいずれでも繊維形状を呈している繊維状炭素ナノ構造体を確認することができなかった場合に、絡合構造が形成されなかったと判定した。
<体積平均粒子径D50>
実施例、比較例で調製した繊維状炭素ナノ構造体分散液について、レーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置(堀場製作所社製、製品名「LA−960」)を用いて粒度分布(体積基準)を測定した。得られた粒度分布において、小径側から計算した累積体積が50%となる粒子径(μm)として求め、体積平均粒子径D50とした。
<グリース組成物の熱伝導性>
実施例、比較例で調製したグリース組成物0.10gを樹脂材料熱抵抗試験器(株式会社日立テクノロジーアンドサービス製、製品名「C47108」)を使用して、試験片の熱抵抗値[℃/W]を測定した。熱抵抗値の測定は、試験片に対して、0.05MPa(低圧)及び0.30MPa(高圧)の圧力を加えた場合について、それぞれ行った。また、熱抵抗値の測定時の試験片の温度は50℃とした。熱抵抗値が小さい程、グリース層が熱伝導性に優れ、発熱体である半導体モジュールとヒートシンクとの間に介在させた際の放熱特性に優れる。
また、余剰のグリース組成物は測定時の圧力によって試験台から除去される。
<グリース組成物の耐転写特性>
実施例、比較例で調製したグリース組成物0.25gを、3cm角のアルミ基板の片面上に塗布して、均一に伸ばしてグリース層を形成したものを試験片とした。試験片のグリース層表面に対して、保護フィルムとして、4cm角の表面がシリコーン処理された離型PETフィルムを積層し、2kgローラーで2往復した。その後、グリース層から離型PETフィルムを剥離し、試験片のアルミ基板上に残留したグリースの質量を測定し、試験片の質量減少量を塗布量(0.25g)で除して移行率[質量%]を算出した。移行率が低いほど、保護フィルムに対するグリース層の転写が抑制されており、耐転写特性が良好であることを示す。
<グリース組成物の耐ポンプアウト性>
5cm角のガラス板を2枚準備した。1方のガラス板の略中心部分に0.10gのグリース組成物を置き、ガラス版の外縁に厚さ0.05mm、幅0.5cmのPETフィルムを載置し、該PETフィルムを介して、他方のガラス板を、グリース組成物を塗布した方のガラス板と対向させ、(ガラス板)−(グリース組成物及びPETフィルム)−(ガラス板)の順で積層された積層体として、四方をクリップで留めた。そして、積層時に、PETフィルムの枠内で面方向に押し広げられたグリース組成物の外周を一方のガラス板の上からなぞり線を引き、基準線とした。かかる積層体を試験片として、125℃の恒温槽内で垂直に立てて100時間保管した。100時間保管後の試験片を観察し、グリース組成物の輪郭線と、基準線との間の最大距離を測定した。かかる測定値を、以下の基準に従って評価した。
なお、基準線から100時間保管後の輪郭線までの距離が長いほど、グリース組成物が基準線からはみ出して試験片の端部に向かって広がった程度が大きいということである。グリース組成物の広がりが大きいほど、半導体モジュールの動作時の発熱に起因してグリース組成物が流動し易く、ポンプアウトし易いということを意味する。逆に、グリース組成物の広がりが小さい程、半導体モジュールの動作時に加熱されてもグリース組成物が流動し難く、ポンプアウトし難いということを意味する。
A:基準線から100時間保管後の輪郭線までの距離が0.5cm未満
B:基準線から100時間保管後の輪郭線までの距離が0.5cm以上1.0cm未満
C:基準線から100時間保管後の輪郭線までの距離が1.0cm以上1.5cm未満
D:基準線から100時間保管後の輪郭線までの距離が1.5cm以上
(実施例1)
<グリース組成物の製造>
国際公開第2006/011655号に記載された方法に従って合成したSGCNT(単層CNT、平均直径:3.5nm、BET比表面積:1050m/g、3σ/Av:0.28)400mgを、溶媒としてのメチルエチルケトン2L中に投入し、ホモジナイザーにより2分間撹拌して粗分散液を調製した。次に、湿式ジェットミル(株式会社常光製、製品名「JN−20」)を使用し、得られた粗分散液を湿式ジェットミルの0.5mmの流路に100MPaの圧力で2サイクル通過させて、SGCNTをメチルエチルケトンに分散させた。そして、固形分濃度0.20質量%の繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た。得られた繊維状炭素ナノ構造体分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50を上記方法に従って測定した。結果を表1に示す。
[混合工程]
ベースグリースとしてのシリコーン樹脂系グリース(信越化学工業社製、品名「G−747」、混和ちょう度:328、熱伝導率:0.90W/m・K)100質量部に対して、上記分散液調製工程で得られた繊維状炭素ナノ構造体分散液を100質量部添加し、混合物を得た。得られた混合物をホットプレートの上で、80℃で加熱しながら1000rpmで10分間撹拌し、分散液由来の溶媒成分を除去し、グリース組成物を得た。
そして、得られたグリース組成物について、上述の方法に従って、繊維状炭素難構造体の絡合構造の有無、熱伝導性、耐転写特性、及び耐ポンプアウト性を測定、評価した。結果を表1に示す。
(実施例2)
混合工程で添加する繊維状炭素ナノ構造体分散液の量を200質量部として、ベースグリース100質量部に対する繊維状炭素ナノ構造体分散液の配合量を0.4質量部とした以外は実施例1と同様にして、グリース組成物を得た。そして、実施例1と同様にして、各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例3)
混合工程で用いるベースグリースを、より硬いシリコーン樹脂系グリース(信越化学工業社製、品名「X−23−7921−5」、混和ちょう度:200、熱伝導率:6.0W/m・K)に変更した。さらに、混合工程で添加する繊維状炭素ナノ構造体分散液の量を25質量部として、ベースグリース100質量部に対する繊維状炭素ナノ構造体の配合量を0.05質量部とした以外は、実施例1と同様にして、グリース組成物を得た。そして、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
[分散液調製工程]
実施例1と同じSGCNTを400mg、分散剤であるカルボキシメチルセルロース(ダイセルファインケム社製、「CMC−1120」、重量平均分子量:300,000)を400mg計り取り、溶媒としての水2L中に混ぜ、ホモジナイザーにより2分間撹拌し、粗分散液を得た。次に、実施例1と同じ湿式ジェットミルを用いて、0.5mmの流路に100MPaの圧力で40サイクル通過させて、SGCNTを水に分散させた。このようにして、固形分濃度0.20質量%の繊維状炭素ナノ構造体分散液を得た。そして、実施例1と同様にして分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50を上記方法に従って測定した。結果を表1に示す。
[混合工程]
実施例1と同じベースグリースに対して、上記分散液調製工程で得た分散液を25質量部として、ベースグリース100質量部に対する繊維状炭素ナノ構造体の配合量を0.05質量部とした以外は、実施例1と同様にして、グリース組成物を得た。そして、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例5)
繊維状炭素ナノ構造体として、SGCNTに代えて多層CNT(KUMHO PETROCHEMICAL社製、商品名「K−NANO」、平均繊維径:13nm、平均繊維長:30μm、BET比表面積:266m/g)を用いた。この他の点は実施例1と同様にしてグリース組成物を得た。そして、実施例1と同様にして各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
繊維状炭素ナノ構造体を配合せず、ベースグリースであるシリコーン樹脂系グリース(信越化学工業社製、品名「G−747」、混和ちょう度:328、熱伝導率:0.90W/m・K)をそのまま用いて、各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
分散液調製工程を実施しなかった。そして、混合工程において、実施例1と同じSGCNTを、ベースグリースであるシリコーン樹脂系グリース(信越化学工業社製、品名「G−747」、混和ちょう度:328、熱伝導率:0.90W/m・K)100質量部に対して0.2質量部となるように添加した。そして、混合物に対して実施例1と同じ混合処理を実施し、グリース組成物を製造した。そして、実施例1と同様にして、各種測定及び評価を行った。結果を表1に示す。
Figure 2018104651
表1より、ベースグリースと、繊維状炭素ナノ構造体とを含み、上記方法に従って算出した移行率の値が30質量%以下であるグリース組成物を用いた実施例1〜5では、グリース層の成分が保護フィルム等の他部材に対して転写することを十分に抑制可能であったことが分かる。また、実施例1〜5では耐ポンプアウト性も良好であったことが分かる。なお、これらの実施例1〜5にかかるグリース組成物は、ベースグリースをそのまま用いた比較例1と比較して、熱抵抗値が若干上昇しており熱伝導性が若干低下している。しかし、実施例1〜5に係るグリース組成物程度の熱伝導性を有していれば、かかるグリース組成物を用いて形成したグリース層を半導体モジュールとヒートシンクとの間に配置した場合に、熱伝導層としての機能を十分に奏し得る。
一方、上記方法に従って算出した移行率の値が30質量%超である比較例1及び比較例2では、グリース層の成分が保護フィルム等の他部材に対して転写してしまい、半導体モジュール上にグリース層を形成した状態での流通に不適であることがわかる。
本発明によれば、グリース層表面に対して保護フィルム等の他の部材を配置した場合に、グリース層の成分が保護フィルム等に対して転写することを抑制可能なグリース層を形成しうるグリース組成物とその製造方法を提供することができる。

Claims (5)

  1. ベースグリースと、繊維状炭素ナノ構造体とを含むグリース組成物であり、該グリース組成物を用いて形成したグリース層に対して離型フィルムを積層して加圧した後に、前記グリース層から前記離型フィルムを剥離した際に、前記離型フィルム上に移行する一部のグリース層の質量が、前記グリース層の全質量の30質量%以下である、グリース組成物。
  2. 前記グリース組成物中で、前記繊維状炭素ナノ構造体が絡合構造を形成してなる、請求項1に記載のグリース組成物。
  3. 前記繊維状炭素ナノ構造体が、カーボンナノチューブを含み、該カーボンナノチューブのBET比表面積が300m/g以上である、請求項1又は2に記載のグリース組成物。
  4. 前記繊維状炭素ナノ構造体の含有量が、前記ベースグリース100質量部に対して、0.01質量部以上である、請求項1〜3の何れかに記載のグリース組成物。
  5. 繊維状炭素ナノ構造体を溶媒に対して分散して繊維状炭素ナノ構造体分散液を得て、該繊維状炭素ナノ構造体分散液中における繊維状炭素ナノ構造体の体積平均粒子径D50を0.1μm以上とする分散液調製工程と、
    前記繊維状炭素ナノ構造体分散液をベースグリースに対して添加して撹拌し、前記繊維状炭素ナノ構造体分散液由来の前記溶媒を除去する混合工程と、
    を含む、グリース組成物の製造方法。
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