JP2015052095A - 放熱膜形成用コーティング剤、放熱膜付き基材、および放熱膜付き基材の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】 分散剤を用いずに、分散剤を用いずに、カーボンナノファイバーを含む放熱膜を常温で形成することが可能なコーティング液を提供することを目的とする。【解決手段】 (A)カーボンナノファイバーと、(B)シリカのシングルナノ粒子と、(C)溶媒とを含み、カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計100質量部に対して、カーボンナノファイバーを27〜60質量部含み、カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計が、放熱膜形成用コーティング剤100質量部に対して、1〜3質量部であることを特徴とする、放熱膜形成用コーティング剤である。【選択図】 なし
Description
本発明は、放熱膜形成用コーティング剤、この放熱膜形成用コーティング剤を用いて形成された放熱膜付き基材、および放熱膜付き基材の製造方法に関する。特に、カーボンナノファイバーを含む高放熱性の放熱膜形成用コーティング剤、この放熱膜形成用コーティング剤を用いて常温で形成された放熱膜付き基材、および放熱膜付き基材の製造方法に関する。
現在、パソコンやスマートフォンを中心とした電子機器のモバイル化や軽量化が進んでいる。この電子機器のモバイル化や軽量化に伴う電子機器の内部部品の高出力化や高集積化による発熱量の増大及び電子機器の温度上昇への対策として、ますます薄膜放熱技術が重要になっている。特に、CPUへの温度負荷低減を目的として、40〜100℃程度での低温下での高放熱性能が求められている。ここで、電子機器の軽量化を目的として、電子機器の筐体等の素材には、プラスチック等の軽量材料が使用されることが多く、金属や無機材料と比較して熱伝導率が低いプラスチックの放熱性が求められている。プラスチックの高熱伝導率化のために検討されているのは、プラスチックに放熱フィラーを練りこむ等のプラスチックの性質自体を変質させ得る方法での加工がほとんどであるが、プラスチックに塗布で形成可能な放熱膜も求められている。
上述の40〜100℃程度の低温度帯での高放熱性については、近年、普及が進んでいる太陽電池を利用する太陽光パネルも同様の問題を抱えており、放熱膜用コーティング剤を太陽光パネルのバックシートに塗布することにより太陽光パネルの温度上昇を抑制し、太陽光パネルの発電量の低下防止についても検討が始められている。
現在、主に、放熱フィラーとして検討されている材料は、窒化ホウ素、窒化ケイ素、酸化マグネシウム、アルミナ、シリカ、カーボン等であるが、高熱伝導化のために放熱フィラーを多量に必要とし、所望の放熱性を得るために必要な膜厚が20μm以上と非常に厚くなってしまう上に、放熱膜を得るために、基材に放熱膜形成用コーティング剤を塗布した後、塗膜を乾燥させるために、150℃で1時間加熱等のプロセスが必要になるため、コストが非常にかかってしまう。また、放熱フィラーをして使用される材料が、上述のようなセラミックスになる為、基材を曲げ加工すると、放熱膜にクラックが入ってしまう等、取扱いが難しいという問題がある。
放熱を求めている電子機器等には、放熱膜を、いかに軽く、いかに薄くするかが求められており、さらに、放熱膜を低温下で形成可能なことが求められている
薄膜に、放熱性を付与する材料として、カーボンナノファイバーが考えられる。カーボンナノファイバーの利用については、様々な研究がされているが、現状では、リチウムイオン電池や炭素繊維強化樹脂(CFRP)等の添加剤等で実用化されているのみである。カーボンナノファイバーの普及が進んでいない理由としては、カーボンナノファイバー自体のコスト、加工性が挙げられる。
カーボンナノファイバーのコストに関しては、上記用途での実用化により下がりつつある。しかし、従来、カーボンナノファイバーを実用化するためには、カーボンナノファイバーを、分散剤等を含む水やアルコール等の溶媒に分散して、カーボンナノファイバー表面を分散剤等でコーティングする必要があった(特許文献1)。このカーボンナノファイバーは、一般的なナノ粒子とは異なり、幅はnmオーダーであっても、長さはμmオーダーであるため、非常に凝集しやすく、均一分散が難しいという特徴がある。
カーボンナノファイバーを分散させるための技術は非常に高度であり、一般的なナノ粒子と比べて分散剤の使用量も多めになり易い。しかし、放熱性が必要とされる用途でカーボンナノファイバーを使用するためには、カーボンナノファイバーの表面をコーティングすることにより放熱性を低下させる分散剤を、加熱して分解させる必要がある。しかし、カーボンナノファイバーをコーティングしている分散剤を加熱して分解させると、分解によりカーボンナノファイバー間に空孔が発生し、放熱性等の物性が低下してしまう、という問題がある。さらに、分散剤を分解するための加熱により、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル樹脂ポリカーボネート(PC)樹脂等の基材に劣化が起きてしまう、という問題もある。
本発明は、分散剤を用いずに、カーボンナノファイバーを含む放熱膜を常温で形成することが可能なコーティング液を提供することを目的とする。
本発明は、以下の構成を有することによって上記問題を解決した放熱膜形成用コーティング剤、放熱膜付き基材、および放熱膜付き基材の製造方法に関する。
〔1〕(A)カーボンナノファイバーと、(B)シリカのシングルナノ粒子と、(C)溶媒とを含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計100質量部に対して、カーボンナノファイバーを27〜60質量部含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計が、放熱膜形成用コーティング剤100質量部に対して、1〜3質量部であることを特徴とする、放熱膜形成用コーティング剤。
〔2〕(B)成分が、さらに、ダイヤモンドのシングルナノ粒子を含む、上記〔1〕記載の放熱膜形成用コーティング剤。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕記載の放熱膜形成用コーティング剤で形成された放熱膜を有する、放熱膜付き基材。
〔4〕温度:0〜10℃にした上記〔1〕または〔2〕記載の放熱膜形成用コーティング剤を、湿度:50%以下で、基材の少なくとも一方の面に塗布する工程、および
放熱膜形成用コーティング剤が塗布された基材を、温度0〜40℃で乾燥させる工程、
をこの順に含むことを特徴とする、放熱膜付き基材の製造方法。
〔1〕(A)カーボンナノファイバーと、(B)シリカのシングルナノ粒子と、(C)溶媒とを含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計100質量部に対して、カーボンナノファイバーを27〜60質量部含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計が、放熱膜形成用コーティング剤100質量部に対して、1〜3質量部であることを特徴とする、放熱膜形成用コーティング剤。
〔2〕(B)成分が、さらに、ダイヤモンドのシングルナノ粒子を含む、上記〔1〕記載の放熱膜形成用コーティング剤。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕記載の放熱膜形成用コーティング剤で形成された放熱膜を有する、放熱膜付き基材。
〔4〕温度:0〜10℃にした上記〔1〕または〔2〕記載の放熱膜形成用コーティング剤を、湿度:50%以下で、基材の少なくとも一方の面に塗布する工程、および
放熱膜形成用コーティング剤が塗布された基材を、温度0〜40℃で乾燥させる工程、
をこの順に含むことを特徴とする、放熱膜付き基材の製造方法。
本発明〔1〕によれば、分散剤を用いずに、カーボンナノファイバーを含む放熱性の高い放熱膜を常温で形成することが可能なコーティング剤を提供することができる。ここで、常温とは、0〜40℃である。
本発明〔3〕によれば、カーボンナノファイバーを含む放熱性の高い放熱膜を提供することができる。
本発明〔4〕によれば、カーボンナノファイバーを含む放熱膜付き基材を常温で簡便に製造することができる。
〔放熱膜形成用コーティング剤〕
本発明の放熱膜形成用コーティング剤は、
(A)カーボンナノファイバーと、(B)シリカのシングルナノ粒子と、(C)溶媒とを含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計100質量部に対して、カーボンナノファイバーを27〜60質量部含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計が、放熱膜形成用コーティング剤100質量部に対して、1〜3質量部であることを特徴とする。
本発明の放熱膜形成用コーティング剤は、
(A)カーボンナノファイバーと、(B)シリカのシングルナノ粒子と、(C)溶媒とを含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計100質量部に対して、カーボンナノファイバーを27〜60質量部含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計が、放熱膜形成用コーティング剤100質量部に対して、1〜3質量部であることを特徴とする。
カーボンナノファイバーは、特に限定されないが、カーボンナノファイバーは、繊維径が1〜100nmであり、アスペクト比が5以上であり、X線回折により測定されるグラファイト層の[002]面の間隔が0.35nm以下であると好ましい。上記繊維径とアスペクト比のカーボンナノファイバーは、溶媒中で均一に分散すると共に、相互に十分な接触点を形成することができる。X線回折により測定されるグラファイト層の[002]面の積層間隔が上記範囲内であるカーボンナノファイバーは結晶性が高いため、このカーボンナノファイバーから電気抵抗が小さく高導電の材料を得ることができる。さらに、カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗率が1.0Ω・cm以下であると、良好な放熱性、導電性を発揮することができる。
カーボンナノファイバーの繊維径は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して求めた質量平均粒子径である(n=50)。また、カーボンナノファイバーのアスペクト比は、透過型電子顕微鏡写真(倍率10万倍)を観察して、(長軸平均粒子径/短軸平均粒子径)を計算して求める(n=50)。X線回折による測定では、CuKα線を使用する。カーボンナノファイバーの圧密体の体積抵抗率は、三菱化学製ロレスタHP及びダイアインスツルメンツ製粉体測定ユニットを用いて、100kgf/cm2で加圧し測定する。
また、カーボンナノファイバーは、シングルウォールカーボンナノチューブやマルチウォールカーボンナノチューブを含み、分散剤を使用しないで、溶媒中に分散可能なものであればよい。カーボンナノファイバーを溶媒中に分散可能なものにする処理としては、硫酸等の強酸による処理が挙げられる。また、分散剤を使用していないカーボンナノファイバー分散液も市販されている。
シリカのシングルナノ粒子とは、透過型電子顕微鏡で測定した粒子径(n=50)が、10nm未満のものをいう。透過型電子顕微鏡で測定したシングルナノ粒子の粒径(n=50)は、2〜9nmであると好ましい。ここで、10nm以上のシリカのナノ粒子を使用すると、分子間力がシングルナノ粒子よりも落ちることから、分子間の空孔が大きくなり、放熱膜の基材への密着性が悪くなり、放熱膜の硬度が低くなってしまう。また、2nm未満のシリカのシングルナノ粒子が、多くなる、例えば、30質量部を超えると、放熱膜形成用コーティング剤がゲル化してしまい易くなる。
本発明の放熱膜形成用コーティング剤の顕著な効果の一つは、シリカのシングルナノ粒子の凝集を制御しつつ、基材との密着力を上げることができることである。一般に、粒子の粒径が小さくなると、比表面積が増加し、粒子が少量でもバインダーとしての効果を発揮しやすい傾向があるが、カーボンナノファイバーのバインダーとして、シリカのシングルナノ粒子を用いることにより、カーボンナノファイバーの熱伝導性や導電性を保持しつつ、カーボンナノファイバーと基材の密着性を得ることができる。カーボンナノファイバーのバインダーとしてのシリカのシングルナノ粒子の粒径が小さいほど、カーボンナノファイバーに対するシリカのシングルナノ粒子の量比を小さくすることができ、放熱膜の放熱性、導電性や基材との密着性が向上する。しかしながら、上述のように、粒径が小さい2nm以下のシリカのシングルナノ粒子の割合が増えすぎると、放熱膜形成用コーティング剤がゲル化してしまい易い。なお、本発明者は、カーボンナノファイバーにより、放熱膜に導電性を付与する場合、カーボンナノファイバー間の間隔が20nm以内であると好ましい、と考えており、シリカ粒子が10nm未満であれば、カーボンナノファイバー間にシリカ粒子が2〜3個重なっても、カーボンナノファイバー間の間隔を20nm以内にすることができ、カーボンナノファイバーが少量であっても、放熱膜に放熱性や導電性を付与することが可能になる。なお、分散液に分散剤が含有されていると、薄膜の形成時に、分散剤の分解が必要となるので、例えば、300℃以上の高温処理が必要となってしまう。例え高温処理をしても、有機の分散剤があったところの空孔が存在することから、放熱性能も低下してしまう。
溶媒としては、水、メタノール、エタノール等が挙げられ、シリカのシングルナノ粒子の分散性、塗布後の乾燥速度の観点から、エタノール、メタノール、水であると好ましい。ここで、PET等の基材への密着性の観点から、水は、エタノール、メタノールおよび水の合計100質量部に対して、5質量部以下であると好ましい。なお、基材が、親水性のガラスや、コロナ処理されたもの等である場合には、水が、エタノール、メタノールおよび水の合計100質量部に対して、90質量部以上でも使用することができるが、溶媒の揮発性が低下するため、放熱膜の緻密度が低下する傾向になる。また、水は、1質量部以上であると好ましい。カーボンナノファイバーの分散液の溶媒としては、エタノールまたは水が;シリカのシングルナノ粒子の分散液の溶媒としては、メタノールが;ダイヤモンドのシングルナノ粒子の分散液の溶媒としては、エタノール、メタノールまたは水が好ましい。
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計100質量部に対して、カーボンナノファイバーを27〜60質量部含むため、シングルナノ粒子は、シリカのシングルナノ粒子とカーボンナノファイバーとの合計100質量部に対して、40〜73質量部である。ここでのシングルナノ粒子は、シリカ以外の後述するダイヤモンド粒子等のシングルナノ粒子を含む。シングルナノ粒子が40質量部未満では、放熱膜の密着性が低下し易く、73質量部を超えても、放熱膜の密着性が低下し易い。73質量部を超えると、放熱性の阻害要因となり、また、膜厚を1μm近く塗布する場合にはマイクロクラックが入りやすくなるが、このマイクロクラックの発生がより顕著に表れる。なお、従来検討されているカーボンナノファイバー含有分散液では、通常、カーボンナノファイバー:10〜20質量%、バインダー:80〜90質量%であり、本発明のカーボンナノファイバー含有量は、非常に高い。
溶媒は、放熱膜形成用コーティング剤100質量部に対して、97〜99質量部であると、放熱膜を形成し易い。
また、放熱膜形成用コーティング剤は、放熱膜の耐摩耗性を向上させる観点からダイヤモンド粒子、ジルコニア粒子、酸化ニオブ粒子、酸化鉄粒子、酸化アルミニウム粒子、酸化セリウム粒子、酸化タンタル粒子、酸化タングステン粒子、酸化ネオジウム粒子、酸化チタン粒子、酸化イリジウム粒子、酸化錫粒子等を含むと好ましく、シリカのシングルナノ粒子と粒径の異なるものが、より好ましい。
ダイヤモンド粒子は、シングルナノ粒子であると、より好ましく、ダイヤモンドのシングルナノ粒子が、ダイヤモンドのシングル粒子とシリカのシングルナノ粒子との合計100質量部に対して、0.2〜4質量部であると、放熱性、耐摩耗性の観点から、さらに好ましい。ここで、ダイヤモンドのシングルナノ粒子は、カーボンナノファイバーとシリカのシングルナノ粒子との空間に位置するため、粒径が、10nm未満であれば使用可能であるが、粒径が大きいと、放熱膜の透過率が低下するため、例えば、3.7nm等の粒径が小さい方が好ましい。
本発明の放熱膜形成用コーティング剤には、本発明の目的を損なわない範囲で、更に必要に応じ、添加剤等を配合することができる。
本発明の放熱膜形成用コーティング剤は、例えば、カーボンナノファイバー、シリカのシングルナノ粒子、溶媒、およびその他添加剤等を同時にまたは別々に、必要により加熱処理を加えながら、撹拌、溶融、混合、分散させることにより得ることができる。これらの混合、撹拌、分散等の装置としては、特に限定されるものではないが、ライカイ機、ボールミル、プラネタリーミキサー、ビーズミル等を使用することができる。また、これら装置を適宜組み合わせて使用してもよい。ここで、本発明者は、予め、シリカのシングルナノ粒子を含有する液を、シリカのシングルナノ粒子0.01〜5質量%と低含有率の液とした後、カーボンナノファイバーと混合して分散液とすることにより、分散したシリカのシングルナノ粒子を含有する放熱膜形成用コーティング剤を作製する技術を確立した。なお、放熱膜形成用コーティング剤は、塗布前に、10分以上の超音波撹拌処理をすることが好ましい。
以上のように、カーボンナノファイバーとシリカのシングルナノ粒子とを含有する放熱膜形成用コーティング剤により、分散剤を用いずに、カーボンナノファイバーを含む放熱膜を常温で形成することが可能な分散液を提供することができ、カーボンナノファイバーを含む放熱膜形成用コーティング剤の安価な多方面への用途開発が可能となる。
〔放熱膜付き基材〕
本発明の放熱膜付き基材は、上記放熱膜形成用コーティング剤で形成された放熱膜を有する。放熱膜の厚さは、0.1〜1μmであると、放熱膜にマイクロクラックを発生させない観点から好ましい。なお、既存の放熱コーティング剤の膜厚は、10μm以上であるので、本発明の放熱膜付き基材の放熱膜の膜厚は、1/10以下である。
本発明の放熱膜付き基材は、上記放熱膜形成用コーティング剤で形成された放熱膜を有する。放熱膜の厚さは、0.1〜1μmであると、放熱膜にマイクロクラックを発生させない観点から好ましい。なお、既存の放熱コーティング剤の膜厚は、10μm以上であるので、本発明の放熱膜付き基材の放熱膜の膜厚は、1/10以下である。
基材としては、ガラス、ステンレス、銅、アルミニウム、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、フッ素樹脂等の基板や、パソコン、スマートフォン等の電子機器、熱交換器を使用する家電製品全般、太陽光パネル用バックシート、フィルム等が挙げられる。
本発明の放熱膜付き基材の製造方法は、
温度:0〜10℃にした上述の放熱膜形成用コーティング剤を、湿度:50%以下で、基材の少なくとも一方の面に塗布する工程、および
放熱膜形成用コーティング剤が塗布された基材を、温度0〜40℃で乾燥させる工程、
をこの順に含むことを特徴とする、放熱膜付き基材の製造方法である。本発明の放熱膜形成用コーティング剤は、分散剤を使用していないため、塗布後の乾燥を常温で行うことができる。
温度:0〜10℃にした上述の放熱膜形成用コーティング剤を、湿度:50%以下で、基材の少なくとも一方の面に塗布する工程、および
放熱膜形成用コーティング剤が塗布された基材を、温度0〜40℃で乾燥させる工程、
をこの順に含むことを特徴とする、放熱膜付き基材の製造方法である。本発明の放熱膜形成用コーティング剤は、分散剤を使用していないため、塗布後の乾燥を常温で行うことができる。
放熱膜形成用コーティング剤の温度が、0℃未満では放熱膜形成用コーティング剤中の水分が凍結するおそれがあり、10℃を超えると、放熱膜形成用コーティング剤の揮発が早くなり、量産時での長時間の塗布中に放熱膜形成用コーティング剤中の固形分(カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子)の濃度が上昇してしまうおそれがある。放熱膜形成用コーティング剤を塗布するときの湿度が、50%を超えると放熱膜形成用コーティング剤の塗膜中に雰囲気の水分を取り込みやすくなり、放熱膜形成用コーティング剤の塗膜が白濁するおそれがある。特に、湿度が60%以上になると、放熱膜形成用コーティング剤の塗膜が白濁する傾向が強くなる。また、塗布時の雰囲気温度は、常温である温度0〜40℃である。次に、放熱膜形成用コーティング剤が塗布された基材を乾燥する温度は、常温である温度0〜40℃であり、5〜20℃であると好ましく、10〜15℃であると、より好ましい。
本発明について、実施例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の実施例において、部、%はことわりのない限り、質量部、質量%を示す。
カーボンナノファイバー分散液は、MDナノテック製CNF5%エタノール分散液(品名:MDCNF/エタノール)を用いた。ジャパンナノコート製放熱膜用シリカバインダーには、2〜9nmのシリカのシングルナノ粒子4質量部と、メタノール91質量部、水5質量部とを混合したもの(品名:B−4)を用いた。比較例7では、平均粒径:15nmのシリカのナノ粒子(扶桑化学製、品名:PL−1)20質量部と、メタノール80質量部とを混合したものを用いた。ダイヤモンドナノ粒子分散液には、ニューメタルス エンド ケミカルズ コーポレーション製水分散液(品名:ナノアマンド、平均粒径:3.7nm、固形分:5%)を用いた。
テープ剥離試験は、JIS K5400に準拠し、ガラス基材に形成した放熱膜に、カッターナイフで1mm×1mmの切り込みを100個入れ、ニチバン製セロファンテープを貼った後、セロファンテープを剥がし、放熱膜の剥離箇所の有無を観察した。鉛筆硬度は、HB〜6Hの硬度の鉛筆を用いて、ガラス基材に形成した放熱膜をひっかき、放熱膜の欠けがでない最も硬い鉛筆の硬度とした。表面抵抗値は、太洋電機産業製表面抵抗計(型番:WA−400、2点間抵抗法)で測定した。放熱試験は、以下のように行った。図1に、放熱試験を行った装置の模式図を示す。まず、ホットプレート10を60℃に加熱した。次に、放熱膜を形成していないガラス基材20と、放熱膜付きガラス基材30を、ホットプレート10の上に載置した。この後、ガラス基材20と、放熱膜付きガラス基材30の表面温度を接触式温度計で測定し、ガラス基材20の表面温度が50℃になったとき、放熱膜付きガラス基材の温度が45℃以下である場合に「○」、44℃以下である場合に「◎」、45度より高い場合を「×」とした。
〔実施例1〜9、比較例1〜7〕
カーボンナノファイバー(CNF)分散液ジャパンナノコート製放熱膜用シリカバインダー、ダイヤモンドナノ粒子分散液、メタノールを、表1に示す割合で混合し、放熱膜形成用コーティング剤を作製した。ここで、表1でのCNFとシングルナノ粒子の数値は、質量部であり、固形分は、〔(CNFとシングルナノ粒子の質量部)/(放熱膜形成用コーティング剤の質量部)〕である。
作製した7〜10℃の放熱膜形成用コーティング剤を、SHARP製超音波発生装置(型番:UT1204、電源:100V、高周波出力:最大1200W、40kHz)で10分間、超音波分散した後、幅:155mm、長さ:155mm、厚さ:3mmのガラス基材(表面抵抗値:1013Ω)に対して、作製した7〜10℃の放熱膜形成用コーティング剤を、安田精機製作所製バーコーター(ROD No.14)を用いて手動で、塗布膜厚(ウェット)が約30μmになるように塗布し、室温(25℃)で2時間乾燥した。
乾燥後の放熱膜付きガラス基材の中央部をカットし、幅:75mm、長さ:50mmの試験片を得た。
得られた試験片のテープ剥離試験、鉛筆硬度試験、表面抵抗値測定、放熱性試験を行った。表1に、結果を示す。
カーボンナノファイバー(CNF)分散液ジャパンナノコート製放熱膜用シリカバインダー、ダイヤモンドナノ粒子分散液、メタノールを、表1に示す割合で混合し、放熱膜形成用コーティング剤を作製した。ここで、表1でのCNFとシングルナノ粒子の数値は、質量部であり、固形分は、〔(CNFとシングルナノ粒子の質量部)/(放熱膜形成用コーティング剤の質量部)〕である。
作製した7〜10℃の放熱膜形成用コーティング剤を、SHARP製超音波発生装置(型番:UT1204、電源:100V、高周波出力:最大1200W、40kHz)で10分間、超音波分散した後、幅:155mm、長さ:155mm、厚さ:3mmのガラス基材(表面抵抗値:1013Ω)に対して、作製した7〜10℃の放熱膜形成用コーティング剤を、安田精機製作所製バーコーター(ROD No.14)を用いて手動で、塗布膜厚(ウェット)が約30μmになるように塗布し、室温(25℃)で2時間乾燥した。
乾燥後の放熱膜付きガラス基材の中央部をカットし、幅:75mm、長さ:50mmの試験片を得た。
得られた試験片のテープ剥離試験、鉛筆硬度試験、表面抵抗値測定、放熱性試験を行った。表1に、結果を示す。
表1からわかるように、実施例1〜9の全てで、テープ剥離試験、鉛筆硬度試験、表面抵抗値、放熱性試験の結果が、良好であった。特に、ダイヤモンドのシングルナノ粒子を含む実施例7〜9では、鉛筆硬度が6Hと非常に硬く、カーボンナノファイバーを55〜60質量部含み、かつダイヤモンドのシングルナノ粒子を含む実施例7、8では、放熱性が◎であった。これに対して、カーボンナノファイバーの含有量が少なすぎる比較例1、2では、表面抵抗値が高く、放熱性も悪かった。カーボンナノファイバーの含有量が多すぎる比較例3、4では、テープ試験で放熱膜が剥離し、鉛筆硬度も低くかった。固形分が多すぎる比較例5では、放熱膜形成用コーティング剤がゲル化してしまい、テープ試験で放熱膜が剥離し、鉛筆硬度や表面抵抗値の測定ができなかった。分散剤入りのカーボンナノファイバー分散液を使用した比較例6では、テープ試験で放熱膜が剥離し、鉛筆硬度が低く、放熱性も悪かった。粒径が15nmのシリカ粒子を使用した比較例7では、テープ試験で放熱膜が剥離し、鉛筆硬度が低かった。
本発明は、パソコン、スマートフォン等の電子機器、熱交換器を使用する家電製品全般、太陽光パネル用バックシート、フィルム等の基材の放熱性を向上させる放熱膜を形成するためのコーティング剤である。
10 ホットプレート
20 ガラス基材
30 放熱膜付きガラス基材
20 ガラス基材
30 放熱膜付きガラス基材
Claims (4)
- (A)カーボンナノファイバーと、(B)シリカのシングルナノ粒子と、(C)溶媒とを含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計100質量部に対して、カーボンナノファイバーを27〜60質量部含み、
カーボンナノファイバーとシングルナノ粒子の合計が、放熱膜形成用コーティング剤100質量部に対して、1〜3質量部であることを特徴とする、放熱膜形成用コーティング剤。 - (B)成分が、さらに、ダイヤモンドのシングルナノ粒子を含む、請求項1記載の放熱膜形成用コーティング剤。
- 請求項1または2記載の放熱膜形成用コーティング剤で形成された放熱膜を有する、放熱膜付き基材。
- 温度:0〜10℃にした請求項1または2記載の放熱膜形成用コーティング剤を、湿度:50%以下で、基材の少なくとも一方の面に塗布する工程、および
放熱膜形成用コーティング剤が塗布された基材を、温度0〜40℃で乾燥させる工程、
をこの順に含むことを特徴とする、放熱膜付き基材の製造方法。
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