以下、本発明の多剤式毛髪処理剤組成物(以下、単に「毛髪処理剤組成物」という)を具体化した一実施形態を説明する。毛髪処理剤組成物は、アルカリ剤及び酸化剤を含有する染毛剤又は毛髪脱色・脱染剤として構成される。毛髪処理剤組成物の具体例としては、例えば3剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤、4剤式の毛髪脱色・脱染剤又は染毛剤等が挙げられる。以下、各毛髪処理剤組成物の成分について例示する。
<3剤式の毛髪脱色・脱染剤>
3剤式の毛髪脱色・脱染剤は、例えば、少なくともアルカリ剤を含有する第1剤と、少なくとも酸化剤を含有する第2剤、少なくとも過炭酸塩を含有する第3剤とから構成される。
(3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤)
第1剤は、アルカリ剤を含有し、(A)ラノリン由来の親油基を有する非イオン性界面活性剤、(B)ポリオキシエチレン(以下、「POE」という)アルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、(C)カチオン性界面活性剤等を含有してもよい。第1剤に含有されるアルカリ剤は、第2剤に含有される酸化剤及び/又は第3剤に含有される過炭酸塩の作用を促進させ、毛髪の脱色効果及び/又は脱染効果を向上する働きをする。
アルカリ剤の具体例としては、例えばアンモニア、アルカノールアミン、ケイ酸塩、炭酸塩、炭酸水素塩、メタケイ酸塩、硫酸塩、塩化物、リン酸塩、有機アミン、塩基性アミノ酸、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物等が挙げられる。アルカノールアミンの具体例としては、例えばモノエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。ケイ酸塩の具体例としては、例えばケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。炭酸塩の具体例としては、例えば炭酸ナトリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられる。炭酸水素塩の具体例としては、例えば炭酸水素ナトリウム、炭酸水素アンモニウム等が挙げられる。メタケイ酸塩の具体例としては、例えばメタケイ酸ナトリウム、メタケイ酸カリウム等が挙げられる。硫酸塩の具体例としては、例えば硫酸アンモニウム等が挙げられる。塩化物の具体例としては、例えば塩化アンモニウム等が挙げられる。リン酸塩の具体例としては、例えばリン酸二水素アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられる。有機アミンの具体例としては、例えば2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、グアニジン、1−アミノ−2−プロパノール(MIPA)等が挙げられる。塩基性アミノ酸の具体例としては、例えばアルギニン、リジン等が挙げられる。アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物の具体例としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらのアルカリ剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、毛髪の明度を向上させる効果に優れる観点からアンモニア、アンモニウム塩が好ましく適用される。
使用時における毛髪脱色・脱染剤中、すなわち第1剤〜第3剤の混合物中におけるアルカリ剤の含有量は、毛髪脱色・脱染剤が通常の脱色・脱染処理に適用される場合、pHが7〜12の範囲となる量で配合されることが好ましく、pH9〜12の範囲となる量で配合されることがより好ましい。混合物のpHを7以上とすることにより、第2剤に含まれる酸化剤及び/又は第3剤に含まれる過炭酸塩の作用を促進することができる。混合物のpHを12以下とすることにより、毛髪脱色・脱染剤の塗布による毛髪のダメージを抑制することができる。なお、毛髪脱色・脱染剤のpHは、毛髪脱色・脱染剤を水に10質量%の濃度で溶解した際の25℃におけるpHを測定するものとする。
(A)ラノリン由来の親油基を有する非イオン性界面活性剤は、過炭酸塩を使用する毛髪処理剤組成物において、毛髪へのなじみを向上させる。(A)ラノリン由来の親油基を有する非イオン性界面活性剤とは、親油基を有するラノリン又はラノリンを出発物質として、加水分解、水素化、アルコキシル化等により得られるラノリン誘導体に親水基を結合した物質である。また、ラノリン脂肪酸カリウムやラノリン脂肪酸ナトリウムのように、ラノリン誘導体自体に界面活性能を有する物質でもよい。
ラノリン又はラノリン誘導体に結合する親水基としては、どのような構造でもよく、例えば、POE鎖、ポリグリセリン、ポリグルコシド、ソルビタン、ショ糖等の非イオン性の親水基、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、リン酸塩等のアニオン性の親水基、脂肪族アミン塩、4級アンモニウム塩等のカチオン性の親水基が挙げられる。親水基としては、好ましくは非イオン性の親水基であり、より好ましくは、POE鎖である。(A)成分の具体例としては、例えばPOEラノリン、POE還元ラノリン、ラノリン脂肪酸PEGエステル、POEラノリンアルコール等が挙げられる。これらの中で、毛髪へのなじみを向上させる効果に優れる観点から、好ましくは、POEラノリン、POE還元ラノリン、POEラノリンアルコールであり、より好ましくは、POE還元ラノリンである。これらの(A)成分の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
混合物中における(A)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上である。(A)成分の含有量が0.01質量%以上であると、毛髪へのなじみをより向上させる。
混合物中における(A)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは3質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。(A)成分の含有量が3質量%以下であると、毛髪へのなじみをより向上させる。
(B)POEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤は、過炭酸塩を使用する毛髪処理剤組成物において、毛髪へのなじみをより向上させる。また、毛髪の感触をより向上させる。POE鎖を構成するE.O.の付加モル数は、特に限定されないが、好ましくは2〜50、より好ましくは10〜40である。また、毛髪へのなじみをより向上させる観点からHLB10以上のPOEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤を使用することが好ましい。さらに毛髪へのなじみの他、感触をより向上させる観点からHLB10以上のPOEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤と、HLB10未満のPOEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤を組み合わせて含有されることがより好ましい。
(B)成分の具体例を以下に列挙する。なお、化合物名POEの括弧中の数値はE.O.の付加モル数を示す。また、ポリオキシプロピレンは、以下「POP」と表記し、括弧中の数字はP.O.の付加モル数を表わす。また、本発明においてHLB値は、後述する実測値により求められる値を採用するが、日光ケミカルズ社カタログ(2014年)記載の数値等を参考値として記載する。
HLBが10以上のPOEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばPOE(10)POP(4)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(20)POP(4)セチルエーテル(HLB値16.5)、POE(20)POP(8)セチルエーテル(HLB値12.5)、POE(4)アルキル(炭素数12〜15)エーテル(HLB値10.5)、POE(10)アルキル(炭素数12〜15)エーテル(HLB値15.5)、POE(4.2)ラウリルエーテル(HLB値11.5)、POE(9)ラウリルエーテル(HLB値14.5)、POE(10)ラウリルエーテル(HLB値14.5)、POE(21)ラウリルエーテル(HLB値19.0)、POE(25)ラウリルエーテル(HLB値19.5)、POE(5.5)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(6)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(6)セチルエーテル(HLB値10.5)、POE(7)セチルエーテル(HLB値11.5)、POE(10)セチルエーテル(HLB値13.5)、POE(15)セチルエーテル(HLB値15.5)、POE(20)セチルエーテル(HLB値17.0)、POE(23)セチルエーテル(HLB値18.0)、POE(25)セチルエーテル(HLB値18.5)、POE(30)セチルエーテル(HLB値19.5)、POE(40)セチルエーテル(HLB値20.0)、POE(20)ステアリルエーテル(HLB値18.0)、POE(150)ステアリルエーテル(HLB値19.2)、POE(7)オレイルエーテル(HLB値10.5)、POE(10)オレイルエーテル(HLB値14.5)、POE(15)オレイルエーテル(HLB値16.0)、POE(20)オレイルエーテル(HLB値17.0)、POE(50)オレイルエーテル(HLB値18.0)、POE(10)ベヘニルエーテル(HLB値10.0)、POE(20)ベヘニルエーテル(HLB値16.5)、POE(30)ベヘニルエーテル(HLB値18.0)、POE(150)ベヘニルエーテル(HLB値19.1)等が挙げられる。
HLBが10未満であるPOEアルキルエーテル型非イオン性界面活性剤は、例えば、POE(2)アルキル(炭素数12〜15)エーテル(HLB値9.0)、POE(3)アルキル(炭素数12〜14)エーテル(HLB値8.0)、POE(2)セチルエーテル(HLB値8.0)、POE(4)セチルエーテル(HLB値8.4)、POE(5)セチルエーテル(HLB値9.5)、POE(1)POP(4)セチルエーテル(HLB値9.5)、POE(12)POP(6)デシルテトラデシルエーテル(HLB値8.5)、POE(2)ラウリルエーテル(HLB値9.5)、POE(3)ラウリルエーテル(HLB値8.4)、POE(2)ミリスチルエーテル(HLB値5.8)、POE(3)ミリスチルエーテル(HLB値7.7)、POE(2)ヘキシルデシルエーテル(HLB値5.3)、POE(4)ヘキシルデシルエーテル(HLB値8.4)、POE(2)ステアリルエーテル(HLB値8.0)、POE(4)ステアリルエーテル(HLB値9.0)、POE(5)ステアリルエーテル(HLB値9.0)、POE(2)オレイルエーテル(HLB値4.9)、POE(3)オレイルエーテル(HLB値6.6)、POE(2)オクチルドデシルエーテル(HLB値4.6)、POE(5)オクチルドデシルエーテル(HLB値8.5)、POE(2)ベヘニルエーテル(HLB値4.3)、POE(3)ベヘニルエーテル(HLB値5.8)、POE(5)ベヘニルエーテル(HLB値7.0)、POE(6)ベヘニルエーテル(HLB値8.9)等が挙げられる。
尚、HLB(hydrophile-lipophile balance)は、W.C.Griffinによって考えられ、非イオン性界面活性剤に対して与えられた数値であり、非イオン性界面活性剤の親油基(アルキル基)と親水基(酸化エチレン鎖)との強さのバランスを数字で表したものである。HLB値は、乳化法から算出した実測値が用いられる(「ハンドブック−化粧品・製剤原料−」日光ケミカルズ株式会社(昭和52年2月1日改訂版発行)「20・3・1乳化法によるHLB値の実測」欄参照)。実測HLB値の測定には、界面活性剤の標準物質としてモノステアリン酸ソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL SS−10、HLB値4.7)とモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン(例えば日光ケミカルズ社製のNIKKOL TS−10、HLB値14.9)を組み合わせて使用する。被乳化物には流動パラフィンを使用する。尚、流動パラフィンは種類による又はロットによる変動が考えられる場合は、その都度測定する。流動パラフィンを上記2種類の界面活性剤で乳化し、最適な界面活性剤の割合を求め、流動パラフィンの所要HLB値(乳化されるHLB値)を求める。計算式は数式(1)に示される。
通常流動パラフィンの所要HLB値は、種類及びロットにもよるが10.1〜10.3程度である。次に未知の界面活性剤のHLBの測定は、所要HLB値を求めた流動パラフィンを用いて測定する。未知の界面活性剤が親水性であればモノステアリン酸ソルビタンと組み合わせ、未知の界面活性剤が疎水性であればモノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタンと組み合わせて、上記流動パラフィンを乳化し、安定性のあるところの最適割合を求め、未知の界面活性剤のHLB値をxとして上記数式(1)に当てはめて算出する。
混合物中における(B)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。(B)成分の含有量が0.1質量%以上であると、毛髪へのなじみをより向上させる。
混合物中における(B)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは4質量%以下、さらに好ましくは3質量%以下である。(B)成分の含有量が10質量%以下であると、毛髪の感触をより向上させる。
混合物中における(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.015以上、さらに好ましくは0.03以上である。また、混合物中における(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比の上限は、適宜設定されるが、好ましくは1.2以下、より好ましくは0.4以下、さらに好ましくは0.3以下である。かかる質量比を上記範囲内に規定することにより、毛髪へのなじみ及び毛髪の感触をより向上させる。
(C)カチオン性界面活性剤は、過炭酸塩を使用する毛髪処理剤組成物において、毛髪へのなじみをより向上させる。また、毛髪の感触をより向上させる。(C)カチオン性界面活性剤としては、例えば第4級アンモニウム塩、エーテル型第4級アンモニウム塩、第3級アミン、ピリジニウム系が挙げられる。第4級アンモニウム塩の具体的としては、例えば、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ベヘニルトリメチルアンモニウム、塩化オクタデシルトリメチルアンモニウム、塩化ココイルトリメチルアンモニウム、臭化セチルトリメチルアンモニウム、臭化ステアリルトリメチルアンモニウム、臭化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化イソステアリルラウリルジメチルアンモニウム、塩化ジセチルジメチルアンモニウム、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ジココイルジメチルアンモニウム、塩化γ−グルコンアミドプロピルジメチルヒドロキシエチルアンモニウム、塩化ドデシルジメチルエチルアンモニウム、塩化オクチルジヒドロキシエチルメチルアンモニウム、塩化ラウリルジメチル(エチルベンジル)アンモニウム、塩化ベヘン酸アミドプロピル−N,N−ジメチル−N−(2,3−ジヒドロキシプロピル)アンモニウム、塩化ベンザルコニウム等を例示できる。
エーテル型第4級アンモニウム塩の具体例としては、例えば塩化ステアロキシプロピルトリモニウム、塩化ジ(ポリオキシエチレン)オレイルメチルアンモニウム、塩化トリ(ポリオキシエチレン)ステアリルアンモニウム、塩化ポリオキシプロピレンメチルジエチルアンモニウム等が挙げられる。
第3級アミンとしては、例えばアルキルアミン型、アルキルアミドアミン型が挙げられる。アルキルアミン型の具体例としては、例えばモノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウロイルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルパルミチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルベヘニルアミン、ジラウリルモノメチルアミン、トリオクチルアミン等が挙げられる。
アルキルアミドアミン型の具体例として、例えばステアリン酸ジエチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジエチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジエチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジエチルアミノエチルアミド等のアルキロイルアミドエチルジエチルアミンや、ステアリン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノプロピルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノプロピルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノプロピルアミド等のアルキロイルアミドプロピルジメチルアミン、ステアリン酸ジメチルアミノエチルアミド、ベヘニン酸ジメチルアミノエチルアミド、パルミチン酸ジメチルアミノエチルアミド、ミリスチン酸ジメチルアミノエチルアミド等のアルキロイルアミドエチルジメチルアミン等が挙げられる。これらの第3級アミンを中和して第3級アミン塩として使用してもよい。中和剤としては、限定はされないが、有機酸、無機酸、酸性アミノ酸等が挙げられ、具体的には、乳酸、グリコール酸、クエン酸、コハク酸、リンゴ酸、塩酸、硫酸、リン酸、グルタミン酸、アスパラギン酸等が挙げられる。
ピリジニウム系のカチオン性界面活性剤の具体例としては、例えば塩化ブチルピリジニウム、塩化ドデシルピリジニウム、塩化セチルピリジニウム等が挙げられる。これらのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
混合物中における(C)成分の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.02質量%以上、さらに好ましくは0.1質量%以上である。(C)成分の含有量が0.01質量%以上であると、毛髪へのなじみ及び毛髪の感触をより向上させる。
混合物中における(C)成分の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは5質量%以下、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下である。(C)成分の含有量が5質量%以下であると、毛髪へのなじみ及び毛髪の感触をより向上させる。
毛髪脱色・脱染剤は、必要に応じて、前述した成分以外の成分、例えば可溶化剤、水溶性ポリマー、油性成分、多価アルコール、上記以外の界面活性剤、pH調整剤、糖、防腐剤、安定剤、植物抽出物、生薬抽出物、ビタミン、香料、酸化防止剤、キレート化剤、紫外線吸収剤等をさらに含有してもよい。
可溶化剤は、例えば、第1剤を液状にする場合に配合される。使用される可溶化剤の例としては、例えば水及び有機溶媒(溶剤)が挙げられる。有機溶媒の具体例としては、例えばエタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、γ−フェニルプロピルアルコール、ケイ皮アルコール、アニスアルコール、p−メチルベンジルアルコール、α−ジメチルフェネチルアルコール、α−フェニルエタノール、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、フェノキシイソプロパノール、2−ベンジルオキシエタノール、N−アルキルピロリドン、炭酸アルキレン、アルキルエーテル等が挙げられる。これらの可溶化剤のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。これらの中で、第1剤中のその他の成分を溶解する能力に優れることから水が好ましく適用される。溶媒として水が用いられる場合、第1剤〜第3剤の混合物中における水の含有量(使用時の含有量)は、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは50質量%以上である。
水溶性ポリマーは、毛髪脱色・脱染剤に適度な粘度を与える。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において水溶性ポリマーを含有してもよい。水溶性ポリマーとしては、例えば天然高分子、半合成高分子、合成高分子、及び無機物系高分子が挙げられる。天然高分子の具体例としては、例えばデンプン、グアーガム、ローカストビーンガム、クインスシード、カラギーナン、ガラクタン、アラビアガム、トラガカントガム、ペクチン、マンナン、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、カードラン、ヒアルロン酸、ゼラチン、カゼイン、アルブミン、コラーゲン、デキストリン、トリグルコ多糖(プルラン)等が挙げられる。
半合成高分子の具体例としては、例えば結晶セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースジメチルジアリルアンモニウムクロリド、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カチオン化セルロース、カチオン化グアーガム、デンプンリン酸エステル、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アルギン酸塩等が挙げられる。
合成高分子の具体例としては、例えばポリビニルカプロラクタム、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ビニルピロリドン−酢酸ビニル(VP/VA)コポリマー、ポリビニルブチラール、ポリビニルメチルエーテル、カルボキシビニル重合体、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリエチレンオキシド、エチレンオキシド・プロピレンオキシドブロック共重合体、アクリル酸/アクリル酸アルキル共重合体、ポリ塩化ジメチルメチレンピペリジニウム(ポリクオタニウム−6)(マーコート100:メルク社製)、イタコン酸とPOEアルキルエーテルとの半エステル、又はメタクリル酸とPOEアルキルエーテルとのエステルと、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらのアルキルエステルから選ばれる少なくとも一つの単量体と、からなる共重合体が挙げられる。これらのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
油性成分は、毛髪にうるおい感を付与する。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において油性成分を含有してもよい。油性成分としては、例えば油脂、ロウ類、炭化水素、エステル油、高級アルコール、高級脂肪酸、アルキルグリセリルエーテル、シリコーン等が挙げられる。
油脂の具体例としては、例えばアルガニアスピノサ核油、オリーブ油(オリブ油)、ツバキ油、シア脂、アーモンド油、サフラワー油、ヒマワリ油、大豆油、綿実油、ゴマ油、トウモロコシ油、ナタネ油、コメヌカ油、コメ胚芽油、ブドウ種子油、アボカド油、マカダミアナッツ油、ヒマシ油、ヤシ油、月見草油、杏仁油、パーシック油、桃仁油、パーム油、卵黄油等が挙げられる。ロウ類の具体例としては、例えばラノリン、ミツロウ、キャンデリラロウ、カルナウバロウ、ホホバ油等が挙げられる。炭化水素の具体例としては、例えばパラフィン、オレフィンオリゴマー、ポリイソブテン、水添ポリイソブテン、ミネラルオイル、スクワラン、ポリブテン、ポリエチレン、マイクロクリスタリンワックス、ワセリン、流動パラフィン、軽質イソパラフィン、軽質流動イソパラフィン、イソパラフィン、α−オレフィンオリゴマー、合成スクワラン等が挙げられる。
エステル油の具体例としては、例えばアジピン酸ジイソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、オクタン酸セチル、イソノナン酸イソノニル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ステアリル、ミリスチン酸ミリスチル、ミリスチン酸イソトリデシル、パルミチン酸2−エチルへキシル、リシノール酸オクチルドデシル、10〜30の炭素数を有する脂肪酸コレステリル/ラノステリル、乳酸セチル、酢酸ラノリン、ジ−2−エチルヘキサン酸エチレングリコール、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ジペンタエリスリトール脂肪酸エステル、カプリン酸セチル、トリカプリル酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、コハク酸ジオクチル、2−エチルヘキサン酸セチル、イソステアリン酸硬化ヒマシ油等が挙げられる。
高級アルコールの具体例としては、例えばセチルアルコール(セタノール)、2−ヘキシルデカノール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、セトステアリルアルコール、オレイルアルコール、アラキルアルコール、ベヘニルアルコール、2−オクチルドデカノール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、デシルテトラデカノール、ラノリンアルコール等が挙げられる。
高級脂肪酸の具体例としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、イソステアリン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、オレイン酸、ラノリン脂肪酸等が挙げられる。アルキルグリセリルエーテルの具体例としては、例えばバチルアルコール、キミルアルコール、セラキルアルコール、イソステアリルグリセリルエーテル等が挙げられる。
シリコーンの具体例としては、例えばジメチルポリシロキサン(ジメチコン)、メチルフェニルポリシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、末端水酸基変性ジメチルポリシロキサン、高重合シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン(例えば、(PEG/PPG/ブチレン/ジメチコン)コポリマー)、アミノ変性シリコーン、ベタイン変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、メルカプト変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。これらの油性成分のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
多価アルコールとしては、例えばグリコール、グリセリン等が挙げられる。グリコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、高重合ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、イソプレングリコール、1,3−ブチレングリコール等が挙げられる。グリセリンとしては、例えばグリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等が挙げられる。これらの多価アルコールのうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
上記以外の界面活性剤は、乳化剤又は各成分を可溶化させるための成分として毛髪脱色・脱染剤を使用時に乳化又は可溶化させ、粘度を調整したり、粘度安定性を向上させたりする。そのため、毛髪脱色・脱染剤は、本発明の効果を阻害しない範囲内において界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び上記以外の非イオン性界面活性剤が挙げられる。
アニオン性界面活性剤の具体例としては、例えばアルキルエーテル硫酸塩、アルキル硫酸塩、アルキルエーテル硫酸エステル塩、アルケニルエーテル硫酸塩、アルケニル硫酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩、飽和又は不飽和脂肪酸塩、アルキル又はアルケニルエーテルカルボン酸塩、α−スルホン脂肪酸塩、N−アシルアミノ酸型界面活性剤、リン酸モノ又はジエステル型界面活性剤、スルホコハク酸エステル、N−アルキロイルメチルタウリン塩、及びそれらの誘導体等が挙げられる。これらの界面活性剤のアニオン基の対イオンの具体例としては、例えばナトリウムイオン、カリウムイオン、トリエタノールアミン等が挙げられる。より具体的には、アルキルエーテル硫酸エステル塩としては、例えばPOEラウリルエーテル硫酸ナトリウムが挙げられる。アルキル硫酸塩の具体例として、例えばラウリル硫酸ナトリウム、セチル硫酸ナトリウム等が挙げられる。アルキル硫酸塩の誘導体の具体例として、例えばPOEラウリル硫酸ナトリウム等が挙げられる。スルホコハク酸エステルの具体例として、例えばスルホコハク酸ラウリル二ナトリウム等が挙げられる。N−アルキロイルメチルタウリン塩の具体例として、例えばN−ステアロイル−N−メチルタウリンナトリウム等が挙げられる。なお、アニオン性界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、毛髪へのなじみ及び感触をより向上させる観点から、混合物中において、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下である。
両性界面活性剤の具体例としては、例えばココベタイン、ラウラミドプロピルベタイン、コカミドプロピルベタイン、ラウロアンホ酢酸ナトリウム、ココアンホ酢酸ナトリウム、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルベタイン(ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン)、ラウリルアミノプロピオン酸ナトリウム等が挙げられる。
上記以外の非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えば上記以外のエーテル型非イオン性界面活性剤、エステル型非イオン性界面活性剤、アルキルグルコシド等が挙げられる。エステル型非イオン性界面活性剤の具体例としては、例えばモノオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEソルビタン、モノパルミチン酸POEソルビタン、モノラウリン酸POEソルビタン、トリオレイン酸POEソルビタン、モノステアリン酸POEグリセリン、モノミリスチン酸POEグリセリン、テトラオレイン酸POEソルビット、ヘキサステアリン酸POEソルビット、モノラウリン酸POEソルビット、POEソルビットミツロウ、モノオレイン酸ポリエチレングリコール、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、モノラウリン酸ポリエチレングリコール、親油型モノオレイン酸グリセリン、親油型モノステアリン酸グリセリン、自己乳化型モノステアリン酸グリセリン、モノオレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノラウリン酸ソルビタン、ショ糖脂肪酸エステル、モノラウリン酸デカグリセリル、モノステアリン酸デカグリセリル、モノオレイン酸デカグリセリル、モノミリスチン酸デカグリセリル等が挙げられる。
アルキルグルコシドの具体例として、例えばアルキル(炭素数8〜16)グルコシド、POEメチルグルコシド、POEジオレイン酸メチルグルコシド等が挙げられる。これらの界面活性剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
pH調整剤は、毛髪脱色・脱染剤のpHを調整するために配合してもよい。pH調整剤としては、無機酸、有機酸、それらの塩等が挙げられる。無機酸の具体例としては、例えばリン酸、塩酸、硝酸、硫酸、ホウ酸等が挙げられる。さらにリン酸の具体例としては、例えばオルトリン酸、ポリリン酸、ピロリン酸、メタリン酸等が含まれる。有機酸の具体例としては、例えばクエン酸、酒石酸、乳酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、ピロリン酸、グルコン酸、グルクロン酸、安息香酸等が挙げられる。塩の具体例としては、例えばナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等が挙げられる。糖の具体例としては、例えばグルコース、ガラクトース等の単糖、マルトース、スクロース、フルクトース、トレハロース等の二糖、糖アルコール等が挙げられる。防腐剤の具体例としては、例えばパラベン、メチルパラベン、安息香酸ナトリウム等が挙げられる。安定剤の具体例としては、例えばフェナセチン、8−ヒドロキシキノリン、アセトアニリド、ピロリン酸ナトリウム、バルビツール酸、尿酸、タンニン酸等が挙げられる。酸化防止剤の具体例としては、例えばアスコルビン酸類及び亜硫酸塩等が挙げられる。キレート化剤の具体例としては、例えばエデト酸(エチレンジアミン四酢酸(EDTA))、エデト酸二ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸及びその塩類、エチレンジアミンヒドロキシエチル三酢酸及びその塩類、並びにヒドロキシエタンジホスホン酸(HEDP)及びその塩類等が挙げられる。
第1剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。噴射剤又は発泡剤の具体例としては、例えば液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、窒素ガス、炭酸ガス等が挙げられる。また、固形状の剤型の場合、分散剤、例えばステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム等のステアリン酸金属塩、硫酸ナトリウム、タルク、乳糖、及び低置換度ヒドロキシプロピルセルロースを配合してもよい。これらのうち一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
(3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第2剤)
第2剤は、酸化剤の他、上述した可溶化剤等を配合することもできる。酸化剤は、毛髪に含まれるメラニンの脱色性を向上させる。酸化剤としては、保存安定性向上の観点から、好ましくは第3剤に配合される過炭酸塩以外の酸化剤が適用される。酸化剤の具体例としては、過酸化水素、過酸化尿素、過酸化メラミン、過ホウ酸ナトリウム、過ホウ酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過酸化ストロンチウム、硫酸塩の過酸化水素付加物、リン酸塩の過酸化水素付加物、及びピロリン酸塩の過酸化水素付加物等が挙げられる。これらの酸化剤の具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。第2剤中における酸化剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上であり、より好ましくは2.0質量%以上であり、さらに好ましくは3.0質量%以上である。酸化剤の含有量が0.1質量%以上の場合、メラニンの脱色性をより向上することができる。また、第2剤中における酸化剤の含有量は、好ましくは15.0質量%以下であり、より好ましくは9.0質量%以下であり、さらに好ましくは6.0質量%以下である。酸化剤の含有量が15.0質量%以下の場合、毛髪のダメージ等を抑制することができる。
酸化剤として過酸化水素を第2剤に配合する場合、過酸化水素の安定性を向上させるために、好ましくは、第2剤は、安定化剤、例えばスズ酸ナトリウム、エチレングリコールフェニルエーテル(フェノキシエタノール)、ヒドロキシエタンジホスホン酸、又はその塩を含有する。ヒドロキシエタンジホスホン酸塩としては、例えばヒドロキシエタンジホスホン酸四ナトリウム、及びヒドロキシエタンジホスホン酸二ナトリウムが挙げられる。第2剤は、毛髪脱色・脱染剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
第2剤の剤型は特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状、固形状等が挙げられる。また、エアゾール、ノンエアゾール等とすることもでき、ノンエアゾールの場合、更にスクイズフォーマー式及びポンプフォーマー式等の種々の形態をとることができる。また、エアゾールの場合、公知の噴射剤及び発泡剤を適用することができる。また、固形状の剤型の場合、分散剤を配合してもよい。
(3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第3剤)
第3剤は、過炭酸塩の他、分散剤等を配合することもできる。過炭酸塩は、酸化作用を向上させ、毛髪処理後の毛髪の明度をより向上させる。過炭酸塩の具体例としては、過炭酸ナトリウム、過炭酸カリウム等が挙げられる。これらの具体例の内、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
混合物中における過炭酸塩の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上である。過炭酸塩の含有量が0.1質量%以上であると、明度をより向上させることができる。
混合物中における過炭酸塩の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、さらに好ましくは15質量%以下である。過炭酸塩の含有量が30質量%以下であると、毛髪の感触の低下を抑制することができる。
第3剤の剤型は、製剤安定性の観点から、25℃における剤型が、固形状が好ましい。固形状としては、粉末状、粒状、タブレット状等が挙げられる。また、第3剤は、毛髪脱色・脱染剤に一般的に含有され、且つ前述した各成分の作用を阻害しない各成分を含有してもよい。例えば、前述した第1剤に含有される成分を本発明の効果を阻害しない範囲内において適宜含有してもよい。
なお、3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤〜第3剤の混合比は、混合物中の各成分の濃度、混合性等を考慮して適宜設定されるが、好ましくは1:0.5:0.1〜1:3:0.4である。
<4剤式の毛髪脱色・脱染剤>
4剤式の毛髪脱色・脱染剤は、3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤中の成分を別剤とすることにより構成できる。例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、上述した3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第3剤と同じ組成を有する第3剤と、上述した3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第4剤とから構成される。このようにして構成される4剤式の毛髪脱色・脱染剤は良好な保存安定性を有する。また、上述した3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第1剤と、上述した3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、3剤式の毛髪脱色・脱染剤の第3剤と同じ組成を有する第3剤と、過硫酸塩等の酸化助剤を含む第4剤とから構成されてもよい。なお、4剤式の毛髪脱色・脱染剤の第1剤〜第4剤の混合比は、混合物中の各成分の濃度、混合性等を考慮して適宜設定される。
<3剤式の染毛剤>
3剤式の染毛剤は、例えば、少なくともアルカリ剤及び酸化染料を含有する第1剤と、少なくとも酸化剤を含有する第2剤、少なくとも過炭酸塩を含有する第3剤とから構成される。以下、上述した毛髪脱色・脱染剤との相違点を中心に説明する。
(3剤式の染毛剤の第1剤)
染毛剤の第1剤は、例えばアルカリ剤、及び酸化染料を含有し、(A)ラノリン由来の親油基を有する非イオン性界面活性剤、(B)POEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤、(C)カチオン性界面活性剤等を含有してもよい。第1剤に含有されるアルカリ剤及び(A)〜(C)成分の例としては、上述した毛髪脱色・脱染剤において使用されるアルカリ剤及び(A)〜(C)成分の具体例として先に説明したのと同じである。酸化染料は、酸化剤による酸化重合に起因して発色可能な化合物であり、染料中間体及びカプラーに分類され、酸化染料は好ましくは染料中間体及びカプラーを含んでいる。
染料中間体としては、例えばp−フェニレンジアミン、トルエン−2,5−ジアミン(パラトルイレンジアミン)、N−フェニル−p−フェニレンジアミン、4,4'−ジアミノジフェニルアミン、p−アミノフェノール、o−アミノフェノール、p−メチルアミノフェノール、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−フェニレンジアミン、2−ヒドロキシエチル−p−フェニレンジアミン、o−クロル−p−フェニレンジアミン、4−アミノ−m−クレゾール、2−アミノ−4−ヒドロキシエチルアミノアニソール、2,4−ジアミノフェノール、1−ヒドロキシエチル−4,5−ジアミノピラゾール及びそれらの塩が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらの染料中間体の具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。
カプラーは、染料中間体と結合することにより発色する。カプラーとしては、例えばレゾルシン、5−アミノ−o−クレゾール、m−アミノフェノール、α−ナフトール、5−(2−ヒドロキシエチルアミノ)−2−メチルフェノール、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノフェノキシエタノール、トルエン−3,4−ジアミン、2,6−ジアミノピリジン、ジフェニルアミン、N,N−ジエチル−m−アミノフェノール、フェニルメチルピラゾロン、1,5−ジヒドロキシナフタレン、及びそれらの塩が挙げられる。塩の具体例としては、例えば塩酸塩、硫酸塩等が挙げられる。これらのカプラーの具体例のうち、一種のみが単独で含有されてもよいし、二種以上が組み合わされて含有されてもよい。酸化染料は、毛髪の色調を様々に変化させることができることから、好ましくは、染料中間体の前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種と、カプラーの前記具体例の中から選ばれる少なくとも一種とから構成される。第1剤は、前記酸化染料以外の染料として、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された酸化染料を適宜含有してもよい。
染毛剤中における酸化染料の含有量の下限は、適宜設定されるが、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、さらに好ましくは0.5質量%以上である。酸化染料の含有量が0.01質量%以上であると、特に色味をより向上させることができる。
染毛剤中における酸化染料の含有量の上限は、適宜設定されるが、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下である。酸化染料の含有量が10質量%以下であると、特に可溶化剤を使用する場合、可溶化剤に対する溶解性を向上させることができる。
また、第1剤は必要に応じて前述した成分以外の成分、例えば上述した毛髪脱色・脱染剤の第1剤に含まれる成分をさらに含有してもよい。
(3剤式の染毛剤の第2剤)
染毛剤の第2剤は、例えば、上述した毛髪脱色・脱染剤の第2剤と同じ組成を有する。
(3剤式の染毛剤の第3剤)
染毛剤の第3剤は、例えば、上述した毛髪脱色・脱染剤の第3剤と同じ組成を有する。過炭酸塩は、酸化作用を向上させ、毛髪処理後の毛髪の明度を向上させる。そして、白髪隠蔽性を向上させる。
<4剤式の染毛剤>
4剤式の染毛剤は、3剤式の染毛剤の第1剤中の成分を別剤とすることにより構成できる。例えば、アルカリ剤を含有する第1剤と、上述した3剤式の染毛剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、3剤式の染毛剤の第3剤と同じ組成を有する第3剤と、上述した3剤式の染毛剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第4剤とから構成される。このようにして構成される4剤式の染毛剤は良好な保存安定性を有する。また、上述した3剤式の染毛剤の第1剤からアルカリ剤を除いた組成を有する第1剤と、上述した3剤式の染毛剤の第2剤と同じ組成を有する第2剤と、3剤式の染毛剤の第3剤と同じ組成を有する第3剤と、過硫酸塩等の酸化助剤を含む第4剤とから構成されてもよい。
次に、本実施形態の毛髪処理剤組成物の使用方法を以下に説明する。
まず、上述した複数剤からなる毛髪処理剤組成物の各剤が混合されることにより、アルカリ剤、酸化剤、及び過炭酸塩等を含有する毛髪処理剤組成物の混合物が調製された後、毛髪に塗布される。混合方法は、特に限定されず、例えば撹拌棒又は刷毛等を使用し、手で撹拌してもよく、撹拌子及び電動式撹拌機等を使用してもよい。毛髪処理剤組成物の混合物の毛髪への塗布は、公知の方法、例えば薄手の手袋をした手、コーム(櫛)又は刷毛に付着されて毛髪に塗布する方法を適用することができる。混合物が毛髪に塗布された後、所定時間経過後、常法に従い毛髪に塗布した混合物を水ですすぐ工程が行われる。次に、好ましくは常法に従いシャンプー用組成物を使用して、毛髪を洗浄し、水で洗い流す工程が行われる。シャンプー用組成物は、毛髪の洗浄用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のシャンプー用組成物を適用することができる。シャンプー用組成物には、例えば、洗髪剤(ヘアシャンプー)の他、リンスインシャンプー、スキャルプシャンプー等が含まれるものとする。次に、好ましくは常法に従いリンス用組成物を使用して、毛髪をリンス処理し、水で洗い流す工程が行われる。リンス用組成物は、毛髪のリンス用に適用されるものであれば特に限定されず、公知のリンス用組成物を適用することができる。リンス用組成物には、例えば、ヘアリンス、カラーリンス、クリームリンス、酸性リンス、テンポラリーリンス、コンディショナー、ヘアトリートメント、ヘアパック、ヘアマスク等が含まれるものとする。リンス用組成物を用いた処理工程は、公知のリンス用組成物を適用することができる。次に、好ましくは常法に従い毛髪を乾燥する工程が行われる。
上記実施形態の毛髪処理剤組成物によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)本実施形態は、過炭酸塩を含有する第3剤を含む毛髪処理剤組成物において、(A)ラノリン由来の親油基を有する非イオン性界面活性剤を配合した。したがって、過炭酸塩を含有する毛髪処理剤組成物の処理において、毛髪へのなじみを向上できる。
(2)本実施形態の毛髪処理剤組成物において、さらに、(B)POEアルキルエーテル型の非イオン性界面活性剤を含み、該(B)成分の含有量が使用時に1〜5質量%である場合、毛髪へのなじみをより向上させる。また、毛髪の感触、特に毛髪の乾燥後の感触をより向上できる。
(3)本実施形態の毛髪処理剤組成物において、さらに、(C)カチオン性界面活性剤を含有する場合、毛髪へのなじみをより向上させる。また、毛髪の感触、特に毛髪の乾燥後の感触をより向上できる。
(4)本実施形態の毛髪処理剤組成物の使用方法において、まず毛髪処理剤組成物を構成する各剤を混合した混合物を毛髪に塗布し、毛髪処理した後、混合物を水ですすぐ工程が行われる。次に、シャンプー用組成物を使用して、毛髪を洗浄し、水で洗い流す工程が行われる。次に、場合により、リンス用組成物を使用して、毛髪をリンス処理し、水で洗い流す工程が行われる。最後に、毛髪を乾燥する工程が行われ、一連の毛髪処理工程が完了する。本実施形態の毛髪処理剤組成物により、毛髪へのなじみを向上させ、かかる一連の毛髪処理工程における操作性を向上させる。また、毛髪処理剤組成物のすすぎ時から乾燥処理後の毛髪の感触、特に乾燥後の毛髪の感触を向上できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記染毛剤において、上述した酸化染料以外の染料として、本発明の効果を阻害しない範囲内において、例えば「医薬部外品原料規格」(2006年6月発行、薬事日報社)に収載された直接染料を適宜含有してもよい。
・上記実施形態の毛髪処理剤組成物は、少なくともアルカリ剤を含有する剤、酸化剤を含有する剤、過炭酸塩を含有する剤の3種類の剤が存在すればよく、上述した毛髪処理剤組成物を構成する各剤に含有される各成分の一部を別剤として構成し、剤型の数を増やしてもよい。
・上記実施形態において(A)〜(C)成分は、使用時に毛髪処理剤組成物の混合物中に配合されていればよく、保存時において毛髪処理剤組成物を構成する各剤のいずれに配合されてもよい。各剤のいずれに配合しても、毛髪へのなじみを向上させ、毛髪の感触を向上できる。なお、(A)成分は、感触をより向上させる観点から第2剤に配合されることが好ましい。また、(C)成分は、感触及び毛髪へのなじみをより向上させる観点から第2剤に配合されることが好ましい。
・上記実施形態において、シャンプー用組成物を使用した毛髪の洗浄回数、及びリンス用組成物を使用した毛髪のリンス処理回数は、特に限定されず、1回でもよく、2回以上繰り返して行ってもよい。また、リンス処理工程は省略してもよい。
・上記実施形態において、製剤の安定性を低下させない範囲において、過炭酸塩を酸化剤が配合される第2剤に配合してもよい。
・上記実施形態において、各剤が混合された混合物の剤型は、特に限定されず、具体例として、25℃における剤型が、例えば乳化物、水溶液や乳液等の液状、ゲル状、フォーム状、クリーム状等が挙げられる。
・上記実施形態の毛髪処理剤組成物の使用において、別剤として酸を0.5質量%以上含有する組成物と混合して使用してもよい。
次に、実施例及び比較例を挙げて前記実施形態を更に具体的に説明する。尚、本発明は、実施例欄記載の構成に限定されるものではない。
表1〜3に示す各成分を含有する、毛髪処理剤組成物として酸化染毛剤の第1剤、第2剤、及び第3剤をそれぞれ調製した。なお、各表における各成分を示す欄中の数値は当該欄の成分の含有量を示し、その単位は質量%である。表中「成分」欄における(A)〜(C)の表記は、本願請求項記載の各成分に対応する化合物を示す。一方、表中「成分」欄における「a」の表記は、本願請求項記載の各成分の対比化合物を示す。化合物名POEの括弧中の数値はE.O.の付加モル数を示す。
そして、第1剤と第2剤と第3剤を1:2:0.3の質量比で混合して各例の酸化染毛剤を調製した。得られた酸化染毛剤を、黒毛及び白毛の毛束(10cmのビューラックス社製)(以下、単に毛束という。)に刷毛を用いて塗布し、30℃にて30分間放置した。次に、毛束に付着した酸化染毛剤を水ですすいだ後、毛束にシャンプー(シャンプー用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントシャンプー)を2回、及びリンス(リンス用組成物としてホーユー社製のビゲントリートメントリンス)を1回施した。なお、シャンプー用組成物及びリンス用組成物は、それぞれ処理毎に水で洗い流している。続いて、毛束を温風で乾燥した後、一日間放置した。混合物の毛髪へのなじみ及び乾燥処理後の毛束の感触について、下記に示す方法に従い評価を行った。
(毛髪へのなじみ)
酸化染毛剤を、刷毛を用いて毛束に塗布する際の酸化染毛剤の毛束へのなじみについて、パネラー5名が、以下の基準で判断した。毛束へのなじみが、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
(感触)
一連の染毛処理工程が完了した毛束の感触について、パネラー5名が、毛束の感触を以下の基準で判断した。毛束の感触が、優れる(5点)、良好(4点)、可(3点)、やや不良(2点)及び不良(1点)の5段階で採点し、各パネラーの採点結果について平均値を算出し、平均値が4.6点以上を「優れる:5」、3.6点以上4.6点未満を「良好:4」、2.6点以上3.6点未満を「可:3」、1.6点以上2.6点未満を「やや不良:2」、及び1.6点未満を「不良:1」とし、評価結果とした。結果を下記表に示す。
表1,2に示されるように、各実施例は、各評価について可以上の結果であることが確認された。表2に示されるように、(A)成分を含有しない比較例1,2は、各実施例に対して、毛髪へのなじみの評価が劣ることが確認された。過炭酸を第3剤に配合する毛髪処理剤組成物を用いて毛髪処理した場合において、毛髪へのなじみを向上させる効果は、特定のノニオン性界面活性剤を使用した場合に得られる効果であることが確認された。
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、以下に追記する。前記(B)成分の含有量に対する(A)成分の含有量の質量比が0.01〜1.2である前記多剤式毛髪処理剤組成物。