JP2018103124A - 排ガス浄化触媒 - Google Patents

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Abstract

【課題】低減された排気背圧、触媒コート層の構造的安定性、及び優れた排ガス浄化能のすべてを満足する排ガス浄化触媒を提供すること。【解決手段】ハニカム基材10と、前記ハニカム基材10上の、メジアン径3.0μm以上のアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層13と、前記剥離防止コート層13上の触媒コート層12と、を有する、排ガス浄化触媒。【選択図】図4

Description

本発明は、排ガス浄化触媒に関する。
自動車等の内燃機関から排出される排ガスを浄化するために、排ガス浄化触媒が用いられている。内燃機関からの排ガスには、例えば、一酸化炭素(CO)、窒素酸化物(NO)、炭化水素(HC)等が含有されている。これらは、排ガスが排ガス浄化触媒を通過する際に浄化されて、それぞれ、二酸化炭素(CO)、窒素(N)、及び水(HO)になる。
排ガス浄化触媒としては、ハニカム基材のセル内の表面上に、触媒機能を有する触媒コート層が形成されて成る構成が広く知られている。
このような構造の排ガス浄化触媒を使用すると、排ガスはハニカム基材の細いセルを通過して浄化された後、排出されることになる。従って、排ガス浄化触媒の存在により、一定の排気背圧(圧損)が発生する。
排気背圧が高いと内燃機関の燃焼効率が低下するから、内燃機関の出力を向上させるためには、排気背圧を低減することが重要である。
触媒コート層において小粒径の粒子を使用すると、触媒コート層の表面積を維持しつつ、その厚さを薄くすることができる。これによれば、セル内の流路幅が拡大されるから、排気背圧を低減することができる。従って、排ガス浄化触媒の排ガス浄化能を維持しつつ排気背圧を低減するには、コート層に含有される粒子の粒径を小さくすることが有効である。
しかしながら、粒子を小粒径化すると、形成される触媒コート層が構造的に不安定となる。このような触媒コート層は、内燃機関の運転に伴う振動等によってヒビ割れ、脱落等が生じることがある。
従って従来技術においては、排気背圧の低減と、構造的安定性の向上とは、二律背反の関係にあると考えられている。
この点、特許文献1には、触媒成分を含む触媒スラリーを担体にコートして触媒成分を担体表面に付着させた排ガス浄化触媒において、触媒コート層の最表面に、厚さが50μm以下の亀裂防止コート層を備えた排ガス浄化触媒が記載されている。この特許文献1では、この亀裂防止コート層として、例えば、平均粒子径が3〜7μmのアルミナ、ゼオライト等を粒子の層を用いることができるとしている。
特開2001−232212号公報
特許文献1の技術は、排ガス浄化触媒における触媒コート層の構造的安定化の面では有効であるが、排ガス浄化性能に関して更に改良されることが好ましい。
本発明は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、低減された排気背圧、触媒コート層の構造的安定性、及び優れた排ガス浄化能のすべてを満足する排ガス浄化触媒を提供することである。
本発明の上記課題は、以下のとおりに要約される本発明によって解決される。
[1]ハニカム基材と、
前記ハニカム基材上の、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層と、
を有し、且つ、
前記アルミナ粒子のメジアン径が3.0μm以上である、
排ガス浄化触媒。
[2]前記アルミナ粒子のメジアン径が3.5μm以上7.5μm以下である、[1]に記載の排ガス浄化触媒。
[3]前記剥離防止コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり20g以上50g以下である、[1]又は[2]に記載の排ガス浄化触媒。
[4]前記触媒コート層が、メジアン径5.0μm未満の、触媒金属を担持している担体粒子を主成分とする、[1]〜[3]のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
[5]前記触媒コート層がアルミナ粒子を含有する、[1]〜[4]のいずれ一項に記載の排ガス浄化触媒。
[6]前記ハニカム基材が、コージェライト又は金属酸化物粒子を主成分とするモノリス構造体である、[1]〜[5]のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
本発明によると、低減された排気背圧、触媒コート層の構造的安定性、及び優れた排ガス浄化能のすべてを満足する排ガス浄化触媒が提供される。
本発明の排ガス浄化触媒に称されるハニカム基材の一例を示す概略図である。 従来技術における排ガス浄化触媒の構造を示す概略断面図である。 従来技術における排ガス浄化触媒において、触媒コート層を薄く形成した場合の状況を示す概略断面図である。 本発明の排ガス浄化触媒の構造を示す概略断面図である。
<排ガス浄化触媒>
本発明の排ガス浄化触媒は、
ハニカム基材と、
ハニカム基材上の、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層と、
剥離防止コート層上の、触媒コート層と、
を有し、且つ、
アルミナ粒子のメジアン径が3.0μm以上である。
本発明の排ガス浄化触媒は、ハニカム基材上に、粒径が比較的大きいアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を介して触媒コート層を配置することにより、触媒コート層の構造的安定性が顕著に向上する。そのため、触媒コート層を構成する粒子を小粒径化して触媒コート層の厚さを薄くした場合であっても、内燃機関の運転に伴う振動等によってヒビ割れ、脱落等が生じることがない。
従って、本発明の排ガス浄化触媒は、コート層の厚さを全体として薄く形成して排ガスの流路幅を大きくすることができるから、排気背圧を低減することができ、内燃機関の出力向上に資する。
本発明の排ガス浄化触媒は、更に、粒径が比較的大きいアルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層が最表面に露出しておらず、触媒コート層が最表面にあるため、供給される排ガスが直接に触媒コート層に接触する。従って、触媒コート層による排ガス浄化を効率的に行うことができる。
以下、図を参照しつつ、本発明の効果について説明する。
図1に、本発明の排ガス浄化触媒に使用されるハニカム基材の一例を示した。図1(a)は、断面が矩形のセル11を有するハニカム基材10の斜視図であり、図1(b)は、図1(a)のA−A線断面図である。本発明の排ガス浄化触媒は、例えば、図1に示したようなハニカム基材上に、剥離防止コート層と、この剥離防止コート層上の触媒コート層とを有する。
図2に、従来公知の排ガス浄化触媒の例を示した。図2は、図1(b)のハニカム基材10が有するセル11の一部である20の領域を拡大して示した図である。
図2の排ガス浄化触媒は、ハニカム基材10上に触媒コート層12が直接形成されている。この触媒コート層12は、単層であっても2層以上の多層であってもよい。この排ガス浄化触媒における触媒コート層12は、比較的大粒径の粒子を用いて形成されているため厚さが大きく、そのために、排ガスの流路幅dは比較的狭い。
このような構成の従来公知の排ガス浄化触媒において、触媒コート層12を構成する粒子を小粒径化して薄膜化しようとすると、触媒コート層12の構造的安定性が損なわれ、外部からの振動が印加されると、例えば図3に示したように、触媒コート層12の一部剥離及び脱落が起こることがある。
この現象は、排ガス浄化触媒の製造時に、基材上に形成された小粒径の粒子を含むスラリーの塗膜において、粒子間に含まれる分散媒(典型的には水)の量が多いことに起因すると考えられる。塗膜が粒子間に多くの分散媒を含むと、該塗膜を乾燥及び焼成して触媒コート層12を形成するときに蒸散する分散媒の量が多くなる。そのため、該触媒コート層12の熱収縮量が増大して、例えばヒビ割れ等を来たし、外部からの振動によって、一部剥離及び脱落が起こると考えられる。
しかしながら、本発明の排ガス浄化触媒は、図4に示したように、ハニカム基材10上に、剥離防止コート層13を介して触媒コート層12が配置されている。そして、このことにより、触媒コート層12の構造安定性が顕著に向上している。そのため、触媒コート層12を薄く形成することができるから、排ガスの流路幅dを大きくすることができ、内燃機関の出力を効果的に向上することができるのである。
本発明の排ガス浄化触媒において、粒子を小粒径化して触媒コート層12を薄く形成した場合であっても高度の構造安定性を示すことは、剥離防止コート層13中のアルミニウムイオンが多くの結合手を持つこと、アルミニウムイオンが関与する結合(例えば水素結合)が強力であること、等に起因すると考えられる。このことにより、ハニカム基材10と剥離防止コート層13との間、及び剥離防止コート層13と触媒コート層12との間の密着性が顕著に高くなり、従って、触媒コート層12の構造安定性が顕著に向上するものと推察される。
更に本発明の好ましい実施態様においては、剥離防止コート層中のアルミナ粒子が基材の表面凹凸にはまり込むこと、及び触媒コート層中の粒子が剥離防止コート層の表面凹凸にはまり込むこと、のうちの少なくとの一方により、所謂「アンカー効果」を発揮して、各層間の密着力がより高くなると推察される。
[ハニカム基材]
本発明の排ガス浄化触媒における基材は、ハニカム基材である。ハニカム基材の形状は、典型的には、略円柱状又は略多角柱状の外形を有し、軸方向に連通する多数のセルを有していてよい。
セルの断面形状は、例えば、円形、矩形、多角形等の任意の形状であってよい。
基材を構成する材料は、例えば、金属、セラミックス(コージェライト)、金属酸化物粒子(例えば、アルミナ粒子、セリア粒子、ゼオライト粒子等)等であってよい。好ましくは、コージェライト又は金属酸化物粒子を主成分とするモノリス構造体である。
ハニカム基材は、400セル/inch(約62セル/cm)以上750セル/inch(約116セル/cm)以下程度のセル数を有するものが、本発明の効果が最も効果的に発現される観点から、好ましい。
ハニカム基材は、セル表面に微細な凹凸を有していてよい。剥離防止コート層中のアルミナ粒子が、基材のセル表面の凹凸にはまり込むと、基材のセル表面−剥離防止コート層間の密着性が、アンカー効果によってより高くなるため好ましい。従って、ハニカム基材のセル表面の凹凸の大きさは、剥離防止コート層中のアルミナ粒子のメジアン径と略同等であるか、又はこれよりも大きいことが好ましい。この観点から、ハニカム基材のセル表面における凹凸の平均間隔Smは、5μm以上25μm以下であることが好ましい。
[剥離防止コート層]
本実施形態の排ガス浄化触媒は、上記のようなハニカム基材上に、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層を有する。このアルミナ粒子は、メジアン径が3.0μm以上である。剥離防止コート層は、典型的には、ハニカム基材のセル内の表面上に存在する。
剥離防止コート層が「アルミナ粒子を主成分とする」とは、剥離防止コート層が、その全質量に対して50質量%以上のアルミナ粒子を含有することをいう。剥離防止コート層におけるアルミナ粒子の含有割合は、55質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、75質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよく、100質量%であってもよい。
上記アルミナ粒子のメジアン径は、3.0μm以上であれば、ハニカム基材及び触媒コート層との密着性が高い剥離防止コート層を緻密に形成することができる。アルミナ粒子のメジアン径は、密着性をより向上する観点から、3.5μm以上、4.0μm以上、4.5μm以上、又は5.0μm以上であってよい。一方で、剥離防止コート層を形成する際に、好ましく使用される剥離防止コート層形成用スラリーの良好な塗布性を確保する観点から、アルミナ粒子のメジアン径は、15.0μm以下であることが好ましく、12.0μm以下、10.0μm以下、8.0μm以下、7.5μm、7.0μm以下、又は6.5μmであってよい。
上記アルミナ粒子の細孔容積は、高い密着性を得る観点から、例えば、0.1cm/g以上、0.2cm/g以上、0.3cm/g以上、又は0.4cm/g以上であってよく、例えば、0.9cm/g以下、0.8cm/g以下、0.7cm/g以下、又は0.6cm/g以下であってよい。
上記アルミナ粒子の結晶形は問わない。例えば、α−アルミナ、γ−アルミナ等の他、アモルファスのアルミナであってもよいし、複数の結晶形の集合であってもよい。
本実施形態の排ガス浄化触媒における剥離防止コート層は、任意的にアルミナ以外の成分を含んでいてよい。アルミナ以外の成分としては、例えば、アルミナ以外の金属又は半金属の酸化物、バインダー(無機バインダー)等を挙げることができる。
上記アルミナ以外の金属又は半金属の酸化物としては、例えば、ケイ素、ジルコニウム、セリウム、イットリウム、希土類元素等から成る群より選択される1種以上の金属原子を含む酸化物であってよい。具体的には例えば、ジルコニア、セリア、シリカ、マグネシア、酸化チタン等、及びこれらの固溶体等から選択されてよい。これらの酸化物は、アルミナと同等のメジアン径を有する粒子状であることが好ましい。
上記無機バインダーは、例えば、ベーマイト、アルミナゾル、ジルコニアゾル、シリカゾル等であってよい。
上記貴金属としては、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム等である。これらの貴金属は、アルミナ及び他の酸化物から選択される1種以上の粒子に担持されていてよい。
本実施形態の排ガス浄化触媒における剥離防止コート層のコート量は、ハニカム基材及び触媒コート層との密着性を高くする観点から、ハニカム基材の容量1L当たり、10g以上、15g以上、又は20g以上であってよく、コート層を過度に厚くせずに十分な排ガス流路幅を確保する観点から、75g以下、50g以下、45g以下、又は40g以下であってよい。
[触媒コート層]
本実施形態の排ガス浄化触媒は、上記のような剥離防止コート層上に、触媒コート層を更に有する。
触媒コート層は、触媒金属を担持している担体粒子を有している。
担体粒子は、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、セリウム、イットリウム、希土類元素等から成る群より選択される1種以上の金属の酸化物であってよい。
担体粒子に担持される触媒金属は、例えば、白金、パラジウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム等である。
担体粒子は、触媒コート層を緻密に薄く形成し、排気圧損をできるだけ低減する観点から、小粒径であることが好ましい。具体的には、担体粒子のメジアン径は、5.0μm未満であることが好ましく、4.5μm以下、4.0μm以下、3.5μm以下、3.0μm以下、又は2.5μμm以下であってよい。一方で、触媒コート層の表面だけでなく、層の下の方まで排ガスを流通させ、排ガス浄化の効率を高くする観点から、担体粒子のメジアン径は、0.1μm以上、0.3μm以上、又は0.5μm以上であってよい。
触媒コート層は、上記のような触媒金属を担持している担体粒子を主成分とすることが好ましい。
触媒コート層が「触媒金属を担持している担体粒子を主成分とする」とは、触媒コート層が、その全質量に対して50質量%以上のこのような担体粒子を含有することをいう。触媒コート層におけるこのような担体粒子の含有割合は、55質量%以上、60質量%以上、70質量%以上、又は80質量%以上であってよい。
触媒コート層は、任意的に、触媒金属を担持している担体粒子以外に、他の成分を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、触媒金属を担持していない粒子、バインダー(無機バインダー)等を挙げることができる。
触媒コート層が、触媒金属を担持していない粒子を含む場合、その具体例としては、例えば、ジルコニア、セリア、シリカ、マグネシア、酸化チタン等、及びこれらの固溶体を挙げることができる。これらの粒子は、触媒金属を担持している担体粒子と同等のメジアン径を有することが好ましい。
触媒コート層は、アルミナ粒子を含むことが、剥離防止コート層との密着性がより高くなる観点から好ましい。
触媒コート層におけるアルミナ粒子の含有量は、触媒コート層の全質量に対して、例えば、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、又は25質量%以上とすることができ、例えば、50質量%以下、45質量%以下、40質量%以下、又は35質量%以下とすることができる。
触媒コート層における無機バインダーは、例えば、ベーマイト、アルミナゾル、ジルコニアゾル、シリカゾル等であってよい。
触媒コート層のコート量は、高い排ガス浄化能を確保する観点から、ハニカム基材の容量1L当たり、100g以上、110g以上、120g以上、130g以上、140g以上、又は150g以上であってよく、コート層を過度に厚くせずに十分な排ガス流路幅を確保する観点から、例えば、200g以下、195g以下、190g以下、185g以下、又は180g以下であってよい。
触媒コート層は、単層であっても、多層であってもよい。触媒コート層が多層である場合、上記のコート量は多層の触媒コート層の全体についての数値範囲であると理解されるべきである。例えば、担体粒子及び他の粒子のメジアン径、担体粒子及び他の粒子の種類等の他の要件については、少なくとも最下層の触媒コート層がこれら他の要件を満たしていることが好ましく、最下層の触媒コート層とともに多層の触媒コート層が全体として他の要件を満たしていることがより好ましく、各層がそれぞれ他の要件を満たしていることが更に好ましい。
触媒コート層は、ハニカム基材の上流側端部から下流側端部まで同じ組成であってもよいし、ハニカム基材の排ガス流れ方向の途中で組成が変わる、所謂「ゾーンコート」構成であってもよい。触媒コート層がゾーンコート構成である場合、少なくとも1つのゾーンが上記の要件を満たしていればよく、全部のゾーンが上記の要件を満たしていることが好ましい。
<排ガス浄化触媒の製造方法>
本発明の排ガス浄化触媒は、上記の構成を有するものである限り、どのような方法によって製造されたものであってもよい。本発明の排ガス浄化触媒は、当業者が適切に選択した公知の方法の組み合わせによって製造されてよく、例えば、下の方法によって製造されてよい。
ハニカム基材に、剥離防止コート層形成用スラリーを塗布し、必要に応じて乾燥し、更に、触媒コート層形成用スラリーを塗布し、必要に応じて乾燥した後、焼成することにより、本発明の排ガス浄化触媒を製造することができる。或いは、ハニカム基材に、剥離防止コート層形成用スラリーを塗布し、必要に応じて乾燥した後、焼成し、更に、触媒コート層形成用スラリーを塗布し、必要に応じて乾燥した後、焼成することによっても、本発明の排ガス浄化触媒を製造することができる。
上記いずれの場合であっても、剥離防止コート層形成用スラリー及び触媒コート層形成用スラリーは、例えば、以下の組成であってよい。
剥離防止コート層形成用スラリーは、少なくともアルミナ粒子と分散媒とを含む。分散媒は、典型的には水である。
剥離防止コート層形成用スラリーは、アルミナ粒子及び分散媒以外に他の成分を任意的に含んでもよい。剥離防止コート層形成用スラリーにおける他の成分としては、例えば、アルミナ以外の金属又は半金属の酸化物(好ましくは粒子状)、無機バインダー、有機バインダー(例えば有機ポリマー)、貴金属前駆体等である。
触媒コート層形成用スラリーは、例えば、
触媒金属を担持していない粒子と、触媒金属前駆体と、分散媒とを含むスラリー、又は
触媒金属を担持している担体粒子と分散媒とを含むスラリー、
のいずれであってもよい。
触媒金属を担持していない粒子を用いる上記のスラリーの場合、スラリーを塗布、乾燥、及び焼成した後に、触媒金属を担持している担体粒子が形成される。
触媒金属を担持している担体粒子を用いる上記のスラリーの場合は、このスラリーは、触媒金属を担持していない粒子を更に含有していてよい。
上記のスラリーのいずれも、例えば、無機バインダー、有機バインダー(例えば有機ポリマー)等を、更に含有していてよい。触媒コート層形成用スラリーにおける分散媒は、典型的には水である。触媒コート層形成用スラリーは、上記した以外に他の成分を任意的に含んでもよい。
ハニカム基材への各コート層形成用スラリーの塗布は、公知の方法によってよい。例えば、セル孔が鉛直方向となるように保持したハニカム基材の下側からスラリーを押し上げる「押上げ法」、セル孔が鉛直方向となるように保持したハニカム基材の上側又は下側の端部にスラリーを配置して反対側端部から該スラリーを吸引する「吸引法」、ハニカム基材をスラリー中に浸漬する「浸漬法」等によってよい。
塗布後の乾燥及び焼成は、公知の条件を採用して行ってよい。乾燥の際の好ましい条件は、使用する分散媒の種類による。分散媒として水を使用する場合の乾燥は、例えば80℃以上200℃以下の温度において、例えば10分以上1時間以下行ってよい。焼成は、例えば400℃以上650℃以下の温度において、例えば3分以上1時間以下行ってよい。
<実施例1>
(1)剥離防止コート層形成用スラリーの調製
アルミナとしてアルミナA(細孔容量0.5cm/g、メジアン径4μm):100質量部、バインダー:1質量部、及びpH調製剤:1質量部をミリングし、水を加えて固形分濃度を20質量%に調整することにより、剥離防止コート層形成用スラリーを調製した。
(2)触媒コート層形成用スラリーの調製
Pd及びRhを担持したセリア−ジルコニア複合酸化物:123質量部、アルミナA:34質量部、及びベーマイト(バインダー):2質量部をミリングし、メジアン径が1.5μmとなるように分級したうえで、水を加えて固形分濃度を20質量%に調整することにより、触媒コート層形成用スラリーを調製した。
(3)排ガス浄化触媒の調製
基材としては、セル数600セル/inch(約93セル/cm)、セル壁厚2.5mil(約0.06mm)のスクエアセルを有する、直径103mmφ、長さ105mm、及び容量0.875Lのコージェライト製ハニカム基材を用いた。
上記基材に、上記で調製した剥離防止コート層形成用スラリーを、基材容量1L当たりのコート量がアルミナ換算で30gとなるように、ウォッシュコートによって塗布した後、90℃以上100℃以下の温度範囲を維持して10分間乾燥した。
剥離防止コート層形成用スラリーを塗布し、乾燥した後の基材に、上記で調製した触媒コート層形成用スラリーを、基材容量1L当たりのコート量が酸化物換算で167gとなるように、吸引法により塗布した後、90℃以上110℃以下の温度範囲を維持して10分間乾燥した。
その後、乾燥した後の基材を、空気中、450〜550℃の温度範囲を維持して2時間焼成することにより、排ガス浄化触媒を製造した。
<実施例2〜10及び比較例3>
使用したアルミナの種類、触媒コート層形成用スラリーの調製におけるミリング物を分級した後のメジアン径、剥離防止コート層のコート量、粒子のメジアン径、及び触媒コート層のコート量を、それぞれ表1及び2に記載のとおりに変更した他は、実施例1と同様にして排ガス浄化触媒を製造した。各実施例及び比較例における剥離防止コート層形成用スラリー及び触媒コート層形成用スラリーには、それぞれ同種のアルミナを使用した。
<比較例1>
剥離防止コート層形成用スラリーの塗布及び乾燥工程を省略した他は、実施例1と同様にして排ガス浄化触媒を製造した。
<比較例2(参考例)>
各スラリーの塗布及び乾燥工程を、触媒コート層形成用スラリー、及び剥離防止コート層形成用スラリーの順に実施し、剥離防止コート層をコート層の最表面に配置した他は、実施例1と同様にして排ガス浄化触媒を製造した。
<触媒コート層剥離率の測定>
上記各実施例及び比較例で製造した排ガス浄化触媒につき、18mm×18mm×18mmの立方体にカットしたものを測定サンプルとした。
上記の測定サンプルを磁性るつぼに入れ、空気中、1,050℃において5時間の熱処理を施した。
熱処理中に剥離してるつぼに落ちたコート層の質量を秤量し、「質量1」として記録した。また、熱処理後の測定サンプルの質量を秤量し、振動印加前の質量(質量2)として記録した。
ワイヤーの先端を折り曲げた治具に熱処理後の測定サンプルを引っ掛けて超音波洗浄機の洗浄層内に吊るし、周波数40〜45kHz、音圧10〜12mVの超音波を10分間印加した。
上記超音波印加後の測定サンプルを回収し、180℃において1時間以上乾燥した後に秤量し、振動印加後の質量(質量3)を調べた。
上記の質量1、質量2、及び質量3を用いて、下記数式(1)によってコート層剥離率を算出した。
コート層剥離率(%)=[{(質量1+質量2)−質量3}÷(質量1+質量2)]×100 (1)
この評価はN=2で行った。得られた結果を表1に示した。
Figure 2018103124
<排気背圧(圧損)の測定>
上記各実施例で得られた排ガス浄化触媒をブロワ式の圧損測定機に装着し、空気流量6mにおける流動圧力損失値を測定した。結果を表2に示した。
Figure 2018103124
上記表1の結果から、以下のことが理解される。
剥離防止コート層を有さない比較例1の触媒は、触媒コート層の粒子のメジアン径が4.5μmと大きいにもかかわらず、コート層剥離率(N=2の平均値、以下同じ)は2.20%の高い値を示した。
メジアン径2μmのアルミナ粒子を含む剥離防止コート層を介して触媒コート層を有する比較例3の触媒は、触媒コート層に含有される粒子のメジアン径が1.5μmのとき、コート層剥離率は3.46%と高かった。
比較例2(参考例)の触媒は、粒子のメジアン径が1.5μmである場合のコート層剥離率こそ低いものの、最上層に、粒子径が大きい剥離防止コート層を有するため、触媒コート層への排ガスの接触が阻害され、排ガス浄化効率に劣ると考えられる。
これらに対して、メジアン径3.0μm以上のアルミナ粒子を含む剥離防止コート層を介して触媒コート層を有する実施例1〜10の触媒は、粒子のメジアン径が1.5μmと小さい場合であってもコート層剥離率が1.98%以下と低く、高度の構造的安定性を有していることが検証された。特に、アルミナ粒子のメジアン径が3.5μm以上7.5μm以下である実施例1〜9のコート層剥離率は1.78%以下とより低く、これらのうちで剥離防止コート層のコート量が20g/基材−L以上の実施例2〜9においては、コート層剥離率は1.42%以下と極めて低い値を示した。
上記表2の結果からは、メジアン径3.0μm以上のアルミナ粒子を含む剥離防止コート層を介して触媒コート層を有する実施例1〜10の触媒を使用した場合の排気背圧は、触媒コート層に含有される粒子のメジアン径にあまり依存しないことが分かる。
これらのことから、本発明の排ガス浄化触媒は、所定の粒径を有するアルミナを含む剥離防止コート層の存在によって、構造安定性が顕著に向上されており、触媒コート層に含有される粒子を小粒径化した場合でも、コート層が剥離脱落する程度が抑制されている。従って本発明の排ガス浄化触媒は、触媒コート層の粒子の小粒径化によってコート層の薄くした場合であっても、実用的な構造強度を維持することができ、構造安定性の向上と排気背圧の低減とが両立されたものである。
更に、本発明の排ガス浄化触媒は、触媒コート層が最表面に位置するため、触媒コート層による所期の排ガス浄化能を発現することができる。
10 ハニカム基材
11 セル
12 触媒コート層
13 剥離防止コート層
20 拡大領域
d 排ガスの流路幅

Claims (6)

  1. ハニカム基材と、
    前記ハニカム基材上の、アルミナ粒子を主成分とする剥離防止コート層と、
    前記剥離防止コート層上の触媒コート層と、
    を有し、且つ、
    前記アルミナ粒子のメジアン径が3.0μm以上である、
    排ガス浄化触媒。
  2. 前記アルミナ粒子のメジアン径が3.5μm以上7.5μm以下である、請求項1に記載の排ガス浄化触媒。
  3. 前記剥離防止コート層のコート量が、前記ハニカム基材の容量1L当たり20g以上50g以下である、請求項1又は2に記載の排ガス浄化触媒。
  4. 前記触媒コート層が、メジアン径5.0μm未満の、触媒金属を担持している担体粒子を主成分とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
  5. 前記触媒コート層がアルミナ粒子を含有する、請求項1〜4のいずれ一項に記載の排ガス浄化触媒。
  6. 前記ハニカム基材が、コージェライト又は金属酸化物粒子を主成分とするモノリス構造体である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の排ガス浄化触媒。
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