JP2018102816A - 歩行支援車 - Google Patents

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Abstract

【課題】簡単な構造であり、且つ起立動作補助から歩行動作補助に円滑に移行できる起立アシスト機能を有した歩行支援車を提供する。【解決手段】歩行支援車としての歩行器1は、下部に複数の車輪が設けられるとともに、上部に歩行動作時に使用者により把持される把持部25が設けられたフレーム2を有する。フレーム2の側方部位を構成する左右の側方フレーム22の外側にはそれぞれアーム部材61が設けられる。左右のアーム部材61の上端部をアーム部材61の回動軸線L1と平行状に連結し、使用者の両脇を下側から支える連結バー62が設けられる。フレーム2の前方下部であって左右両端には、アーム部材61の下端側を、フレーム2の左右方向に向いた回動軸線L1周りに回動可能に支持する端部ユニット7が設けられる。端部ユニット7には、回動軸線L1の位置に設けられ、アーム部材61を上昇させる方向に付勢する渦巻きばねが設けられる。【選択図】図2

Description

本発明は、使用者の起立姿勢での歩行動作を補助する歩行支援車に関する。
従来、使用者が起立する際のアシスト機能を備えた歩行支援車(歩行器)の提案がある(特許文献1参照)。この特許文献1には、略コの字型で後部が開いている形状のフレームの側部近傍に設けられた座面と、この座面を上下方向に駆動する電動式のガススプリングとを備えた歩行支援車が開示されている。これによれば、座面を使用者の臀部の下に位置させた状態でガススプリングにより座面を上方向に駆動することで、使用者の起立をアシストしている。
また、特許文献2には、歩行支援車ではないが、使用者の起立をアシストする介護支援装置が開示されている。特許文献2の介護支援装置は、使用者の方に突出された2本の脇支持部材を使用者の両脇の下に位置させ、コイルばねの付勢力を利用して脇支持部材を上方向に駆動することで、使用者の起立をアシストしている。詳しくは、2本の脇支持部材は、略L字状に形成された回動フレームの垂直部上部に設けられ、コイルばねは、回動フレームの水平部の下に設けられ、脇支持部材を上昇させる方向に水平部を付勢する。
特開2012−125486号公報 特許第5320572号公報
特許文献2の起立アシスト機能は、回動フレームの水平部の下位置に、コイルばねを、回動フレームの一方向(脇支持部材を下降させる方向)の回動で付勢力が増大し、回動フレームを他方向(脇支持部材を上昇させる方向)に回動復帰させるように設ける必要があり、このコイルばねによるトルク付与機構の構造が複雑であるという問題がある。
また、特許文献1の歩行支援車では、座面がフレームの側部近傍に設けられているので、座面を使用者の臀部の下に位置させたときに、使用者の正面方向と、歩行支援車の直進方向とが不一致となり、起立後、歩行動作に移行する前に、歩行支援車又は使用者の向きを変える必要があり、起立動作補助から歩行動作補助に円滑に移行できないという問題がある。
本発明は上記問題に鑑み、簡単な構造な起立アシスト機能を有した歩行支援車を提供することを第1の課題とし、起立動作補助から歩行動作補助に円滑に移行できる起立アシスト機能を有した歩行支援車を提供することを第2の課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は、使用者の位置する後方側に開放したフレームを有し、そのフレームの下側に装備された複数の走行車輪によって使用者の起立姿勢での歩行動作を補助する歩行支援車において、
使用者から見て前記フレームの前方側部位であって少なくとも左右方向の両端部において、左右方向に沿って水平状に配置された回動軸線に自身の下端部が位置するとともに、その回動軸線と同心に配置されたばね中心を有するばね部材により所定のトルクを付加されて当該回動軸線の周りに各々回動可能に取り付けられた回動部材と、
それらの回動部材の上端部を前記回動軸線と平行状に連結し、使用者の両脇を下側から支える1又は複数の連結部材と、
前記回動部材及び前記連結部材が前記回動軸線の周りに一体的に回動したときに形成される回動領域の内側に位置する状態で前記フレームの左右方向の両端部に各々固定配置され、起立姿勢の使用者に把持される側方把持部材と、
を備え、
着座状態で前傾姿勢にある使用者の両脇を支持する前記連結部材が前記ばね部材のトルクにより前記回動部材とともに前記側方把持部材の外側で回動して使用者を起立姿勢とし、前記側方把持部材が起立姿勢の使用者によって把持されて歩行動作を補助することを特徴とする。
本発明によれば、回動部材及びこれに連結された連結部材が、ばね部材によりトルクが付加されて、左右方向に沿って水平状に配置された回動軸線の周りに回動することで、連結部材により両脇が支えられた使用者の起立をアシストできる。このとき、ばね部材は、回動部材の回動軸線と同心にばね中心を有する構成であるので、特許文献2のように回動軸線からオフセットした位置で付勢力を付与するコイルばねを採用した場合に比べて、ばね部材によるトルク付与機構の構造を簡単かつ上下寸法を短小にすることができる。
また、起立姿勢の使用者に把持される側方把持部材が、回動部材及び連結部材が回動軸線の周りに一体的に回動したときに形成される回動領域の内側に位置する状態でフレームの左右方向の両端部に各々固定配置されているので、回動領域の内側で起立した使用者は、その内側に配置された側方把持部材を把持した状態に円滑に移行できる。つまり、起立動作補助から歩行動作補助に円滑に移行できる。このように、本発明では上記第1の課題と第2の課題の両方を解決できる。
また、前記側方把持部材は、一端部が前記フレームの前方下部に固定されて上昇し、続いて前記回動領域の内側に位置して前後方向でループ状に迂回する前後迂回部を経て下降に転じ、さらに他端部が前記フレームの前方下部に再び固定され、
前記前後迂回部は起立姿勢の使用者によって片手で把持可能な歩行補助部を構成する。
これによれば、側方把持部材は、両端部がフレームに固定されたループ状に構成されているので、簡素な構造でありながら、使用者がとっさの時でもつかみやすく、耐久性に優れる。
また、本発明において、前記複数の走行車輪のうち進行方向後方側に配置された左右の2個は、各々水平方向の転動軸線を中心に転動可能でありかつ垂直方向の旋回軸線を中心に首振り旋回可能である転動輪と、その首振り旋回を規制して直進状態を維持する直進ロック機構とを含んで構成されるとともに、左右のうちいずれか一方の前記側方把持部材には使用者によって操作されるロック操作部材が設けられ、
前記ロック操作部材の操作によって、2個の転動輪の前記直進ロック機構が同時にロック解除し、又は同時にロック作動可能である。
これによれば、後輪が、垂直方向の旋回軸線を中心に首振り旋回可能に構成されているので、歩行支援車の小回りが利くようになり、歩行支援車を用いて歩行する使用者の移動範囲を拡大できる。また、後輪は、首振り旋回を規制して直進状態を維持する直進ロック機構を含んで構成されるので、直進ロック機構を作動させることで、直進歩行時に、左右方向へのふらつきを抑制できる。さらに、左右のうちいずれか一方の側方把持部材には、直進ロック機構の作動、解除を切り替えるロック操作部材が設けられているので、使用者は、直進ロック機構の作動、解除を簡単に切り替えることができる。
また、本発明において、前記2個の転動輪は各々転動を制止するブレーキ機構を含んで構成されるとともに、前記ロック操作部材が設けられていない方の前記側方把持部材には使用者によって操作される制動操作部材が設けられ、
前記制動操作部材の操作によって、前記2個の転動輪の前記ブレーキ機構が同時に制動作動し、又は同時に制動解除する。
これによれば、使用者は、歩行動作の停止時に制動操作部材を操作することで、歩行支援車が移動してしまうのを抑制できる。
また、本発明において、前記制動操作部材と前記2個の転動輪の前記ブレーキ機構とはそれぞれブレーキワイヤーで連結され、各々のブレーキワイヤーは対応する転動輪の前記旋回軸線と同心に配置されている。
これによれば、ブレーキワイヤーは対応する転動輪の旋回軸線と同心に配置されているので、転動輪(後輪)が首振り旋回したときにブレーキワイヤーがねじれてしまうのを抑制できる。これにより、ブレーキワイヤーのねじれに伴う操作不良やねじれの矯正(巻き戻し)作業を抑制できる。
また、本発明において、前記フレームの前方側部位であって左右方向の中間部には、着座状態で前傾姿勢の使用者によって両手で又は片手で把持される前方把持部材が上向きに突出して固定配置されている。
これによって、使用者は、起立する際に前方把持部材を把持することで、起立する際の使用者の姿勢を安定させることができる。また、前方把持部材は、フレームの前方側部位であって左右方向の中間部において上向きに突出するように設けられているので、着座状態で前傾姿勢の使用者に、容易に前方把持部材を把持させることができる。
また、本発明において、前記前方把持部材は、一端部が前記フレームの前方下部に固定されて上昇し、続いて左右方向でループ状に迂回する左右迂回部を経て下降に転じ、さらに他端部が前記フレームの前方下部に再び固定され、
前記左右迂回部は前傾姿勢の使用者によって両手で把持可能な立上り補助部を構成する。
これによれば、前方把持部材は、両端部がフレーム前方下部に固定されたループ状に構成されているので、着座状態の時に両手で前方把持部材をつかむことによって使用者が楽に前傾姿勢をとれるので、起立動作支援に優れる。
本発明は、下部に複数の車輪と、上部に使用者の上半身に含まれる所定部位をもって歩行動作時に体重をかけることが可能な身体支持部とが設けられたフレームを備えた歩行支援車であって、
使用者の着座と立ち上がりとの間の動作時に使用者の両脇を支える脇支持部材と、
一端側が前記脇支持部材に連結され、他端側が前記フレームにおいて回動軸線の周りに回転可能に設けられ、前記回動軸線の周りに回転することで前記脇支持部材を、使用者が着座した状態にあるときの脇の高さ位置である下降位置と、使用者が起立した状態にあるときの脇の高さ位置である上昇位置との間で移動させる回動部材と、
前記回動軸線周りの方向のうち前記脇支持部材を前記下降位置から前記上昇位置へと移動させる方向を上昇回転方向として、前記回動軸線の位置に設けられて前記回動部材を前記上昇回転方向に付勢するばね部材と、
を備えることを特徴とする。
本発明によれば、ばね部材及び回動部材により、脇支持部材を、着座する使用者の脇の高さ位置から上昇させる力が作用するので、脇支持部材に脇が支えられた使用者の起立をアシストできる。このとき、ばね部材は、回動部材の回動軸線の位置に設けられるので、回動軸線からオフセットした位置で付勢力を付与するコイルばねを採用した場合に比べて、ばね部材によるトルク付与機構の構造を簡単かつ上下寸法を短小にできる。
歩行器を前方から見た図である。 歩行器を側方から見た図である。 歩行器を上方から見た図である。 アームユニットが上昇位置にあるときの端部ユニットの内部を示した図である。 アームユニットが上昇位置から下降したときの端部ユニットの内部を示した図である。 端部ユニットの一部断面図である。 アームユニットのロック機構を説明する図である。 アームユニットのロック機構を説明する図である。 後輪機構の断面図であって、後輪の首振り旋回が規制された状態を示した図である。 後輪機構の斜視図である。 後輪機構の断面図であって、後輪の首振り旋回の規制が解除された状態を示した図である。 旋回操作部の操作を解除した直後の、後輪が直進方向以外の方向から直進方向を向く様子を示すとともに、後輪が直進方向を向いたときに、首振り旋回をロックするためのバーが溝に入る様子を示した図である。 後輪機構の断面図であって、ブレーキ機構が作動している様子を示した図である。 歩行器を用いた着座姿勢からの立ち上がり動作を示した図である。 後輪の首振り旋回が可能な場合の歩行器の回転軌跡と、首振り旋回が不能な場合の歩行器の回転軌跡とを比較した図である。 変形例の歩行器を前方から見た図である。
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。図1〜図3に示す歩行支援車としての歩行器1は、歩行や立ち上がり動作に支障がある高齢者又は障害者等を使用者として、その使用者の立ち上がり及び着座動作と起立姿勢での歩行動作とを補助する歩行補助具である。
歩行器1は、歩行器1の骨格を形成するフレーム2を備える。フレーム2は、例えば断面円形の筒状部材(パイプ材)により構成される。この筒状部材は例えばアルミニウム、鉄等の金属により形成されている。
フレーム2は、下部フレーム21と側方フレーム22と前フレーム23とを備えている。下部フレーム21は、フレーム2の下部を構成し、図3の平面視で見て、使用者の位置する後方側に開放した略コの字型に形成されている。詳しくは、下部フレーム21は、略水平方向(歩行器1の接地面に略平行な方向)に設けられた水平部211と、この水平部211から垂直下方向に設けられた垂直部212とを有する。水平部211が上記略コの字型に形成されている。すなわち、水平部211は、歩行器1を使用する使用者を間に挟んで左右両側に位置するとともに前後方向に延びた前後延設部211a(図2参照)と、それら2つの前後延設部211aの前端部間を連結するとともに左右方向に延びた左右延設部211b(図1参照)とを有する。
2つの前後延設部211aは略平行に配置される。また、2つの前後延設部211aの間の間隔は、前側(歩行器1の進行方向側)に比べて後側(使用者の位置する側)のほうが若干大きくなっている。この後側の間隔は、例えば便座を間に入れることができる程度の間隔に設定される。
垂直部212は、水平部211の前側に2箇所、後側に2箇所の計4箇所に設けられている。詳しくは、垂直部212は、図2に示すように、各前後延設部211aの前側(後述する端部ユニット7の下側)に設けられる前方垂直部212aと、各前後延設部211aの後端に設けられる後方垂直部212bとを有する。
側方フレーム22は、使用者から見て右側と左側の両方に設けられる。各側方フレーム22は、前後延設部211aとともにフレーム2の左右両側部を構成する。使用者から見て右側の側方フレーム22は、一端部が右側の前後延設部211aの前方下部に固定されて上昇し、続いて後述のアームユニット6の回動領域の内側に位置して前後方向でループ状に迂回する前後迂回部222を経て下降に転じ、さらに他端部が右側の前後延設部211aの前方下部に再び固定された形状に形成されている。使用者から見て左側の側方フレーム22は、両端が左側の前後延設部211aの前方下部に固定されている点を除き、右側の側方フレーム22と同じ形状に形成されている。
各側方フレーム22は、換言すると、図2に示すように、一端部が前後延設部211aの、後輪機構4が接続される部分よりも前輪機構3が接続される部分に寄った前寄部分211cに接続される。側方フレーム22は、その一端部211cから端部ユニット7の後端に沿うように上向きに若干進行した後に、上側にいくほど次第に使用者の位置する後方に進行する、つまり前後延設部211aから見て斜め上後方に延設された第1の傾斜部221を有する。さらに、側方フレーム22は、第1の傾斜部221の上端部(一端部211cと反対側の端部)から高さをほぼ一定にして前方向に延設された上記前後迂回部222を有する。さらに、側方フレーム22は、前後延設部211aの前端から端部ユニット7の前端に沿うように上向きに若干進行した後に、上側にいくほど次第に使用者の位置する後方に進行し、前後迂回部222に前端に接続される第2の傾斜部223を有する。第1、第2の傾斜部221、223は、前後方向に間隔をあけて設けられる。
側方フレーム22は、第1の傾斜部221、前後迂回部222、及び第2の傾斜部223によりループ状となっている。また、第1の傾斜部221、前後迂回部222、及び第2の傾斜部223は、法線が歩行器1の左右方向を向いた同一平面上に配置される。つまり、2つの側方フレーム22は左右方向に間隔をあけて平行に配置されている。2つの側方フレーム22の間の領域は使用者が位置する領域に設定される。また、各側方フレーム22は、例えば一本の筒状部材を曲げ加工することによりループ状に形成され、両端部が下部フレーム21に例えば溶接により接続される。
左右両側の前後迂回部222には、それぞれ、起立姿勢の使用者によって片手で把持可能であるとともに、歩行動作時に使用者の体重をかけることが可能な歩行補助部としての歩行時把持部25が設けられている。歩行時把持部25は、例えば、プラスチック、ゴム、ウレタン等により、前後迂回部222を構成する筒状部材の外側を覆う筒状に形成される。なお、歩行時把持部25が本発明の側方把持部材及び身体支持部に相当する。
前フレーム23は、2つの側方フレーム22の間において、上記下部フレーム21及び側方フレーム22の前端位置に設けられる。前フレーム23は、図1に示すように、一端部がフレーム2の前方下部に固定されて上昇し、続いて左右方向でループ状に迂回する左右迂回部233を経て下降に転じ、さらに他端部がフレーム2の前方下部に再び固定される形状に形成されている。
言い換えると、前フレーム23は、一端部が下部フレーム21の左右延設部211bの中央部に接続され、その中央部から使用者から見て右方且つ上方(つまり右斜め上方)に延設されて右側の側方フレーム22の第2の傾斜部223に一旦接触した後、今度は使用者から見て左方且つ上方(つまり左斜め上方)に延設されて、最終的に、2つの側方フレーム22の中間位置且つ所定高さまで延設された右側部231を有する。右側部231は、後述の端部ユニット7の高さ位置にて右側の側方フレーム22(第2の傾斜部223)に、ネジ等の締結部材、溶接等により接続されている。
さらに、前フレーム23は、右側部231の上端から使用者から見て左方且つ下方(つまり左斜め下方)に延設されて左側の側方フレーム22の第2の傾斜部223に一旦接触した後、今度は使用者から見て右方且つ下方(つまり右斜め下方)に延設されて、最終的に、左右延設部211bの中央部に接続される左側部232を有する。左側部232は、端部ユニット7の高さ位置にて左側の側方フレーム22(第2の傾斜部223)にネジ等の締結部材、溶接等により接続されている。
このように、右側部231及び左側部232はそれぞれ左右の延設方向が途中で逆向きになる略くの字形に形成される。また、右側部231及び左側部232は、2つの側方フレーム22の中間位置に対して対称形状に形成されている。前フレーム23は、右側部231及び左側部232によりループ状となっている。このとき、前フレーム23は、例えば一本の筒状部材を曲げ加工することによりループ状に形成されて、両端部(前フレーム23の下端)が左右延設部211bの中央部に固定部材24(図1、図3参照)により接続される。
右側部231及び左側部232の上側の一部233が上記左右迂回部を構成する。左右迂回部233の高さは、後述する連結バー62が下降位置(図1〜図3の2点鎖線の位置Q1)にあるときの高さより低い位置、かつ、連結バー62が上昇位置(図1〜図3の実線の位置Q2)にあるときの高さより低い位置に設定される。また、左右迂回部233は歩行時把持部25より低い位置に設けられる。また、左右迂回部233は、下降位置Q1及び上昇位置Q2にあるときのアームユニット6よりも前側に設けられる。
さらに、左右迂回部233と連結バー62との距離は、脇下に連結バー62を配置することで前傾姿勢となった使用者が容易に左右迂回部233を把持可能な長さに設定されている。つまり、左右迂回部233は、前傾姿勢となった使用者によって両手で把持可能な立上り補助部を構成する。左右迂回部233には、着座姿勢からの立ち上がり時、又は起立姿勢からの着座時に使用者によって把持される起立時把持部26が設けられている。起立時把持部26は、使用者の右手によって把持されることを想定した右側把持部26aと、使用者の左によって把持されることを想定した左側把持部26bとを有する。右側把持部26aは、左右迂回部233のうち右側部231を構成する部分に設けられる。左側把持部26bは、左右迂回部233のうち左側部232を構成する部分に設けられる。起立時把持部26は、例えば、プラスチック、ゴム等により、左右迂回部233を構成する筒状部材の外側を覆う筒状に形成される。なお、起立時把持部26が本発明の前方把持部材に相当する。
歩行器1は、使用者の着座姿勢からの立ち上がり動作又は起立姿勢からの着座動作を支援する機能である起立アシスト機能を有する。なお、使用者が、歩行器1の接地面よりも高い座面(椅子、便座、ベッドなど)に着座している状態からの立ち上がり動作、又は起立姿勢から歩行器1の接地面よりも高い座面に着座する動作を支援することを想定している。起立アシスト機能は、アームユニット6と端部ユニット7とにより達成される。
アームユニット6は、使用者から見てフレーム2の前方側部位であって左右方向の両端部に位置する端部ユニット7から、上方且つ使用者の位置する後方に一直線状に延設される2つのアーム部材61と、これらアーム部材61の上端間を接続するよう左右方向に一直線状に延設された1つの連結バー62とを有する。一方のアーム部材61は、使用者から見て右側の位置にする端部ユニット7に接続され、他方のアーム部材61は、使用者から見て左側に位置する端部ユニット7に接続される。また、歩行器1(言い換えると2つの側方フレーム22)の左右方向における中心に位置するとともに、法線が左右方向を向いた面100を左右中心面100としたとき、2つのアーム部材61は、左右中心面100に平行に設けられる。また、一方のアーム部材61と左右中心面100との距離と、他方のアーム部材61と左右中心面100との距離は同じとなっている。つまり、2つのアーム部材61の中間位置に左右中心面100が位置するとともに、2つのアーム部材61は互いに平行となっている。
アーム部材61は、例えばフレーム2と同じ材料(例えば、アルミニウム、鉄等の金属)により形成される。また、アーム部材61は、内部が中空の筒状に形成されている。本実施形態では、アーム部材61は、断面が略長方形の筒状に形成されている。アーム部材61の長さは、例えば、アームユニット6が上昇位置Q2にあるときにおける連結バー62の高さよりも歩行時把持部25が低い位置にくるように、設定される。また、アーム部材61は、側方フレーム22よりも外側に設けられる。つまり、右側のアーム部材61は、右側の側方フレーム22よりも右側に設けられる。左側のアーム部材61は、左側の側方フレーム22よりも左側に設けられる。アーム部材61は、端部ユニット7により、左右方向に沿って水平状に配置された回動軸線L1(図1、図2参照)の周りに回転可能に設けられる。なお、右側のアーム部材61の回動軸線と、左側のアーム部材61の回動軸線は、同一の線L1に設定される。
連結バー62は、各アーム部材61の上端部に溶接等により接続される。連結バー62は、例えばフレーム2と同じ材料(例えば、アルミニウム、鉄等の金属)により形成される。また、連結バー6261は、例えば内部が中空の断面円形の筒状に形成されている。連結バー62は、着座姿勢から立ち上がり動作又は起立姿勢から着座動作を行う使用者の両脇を下側から支える脇支持部材として機能する部材である。連結バー62の外側を覆うように、ゴム、ウレタンなど、連結バー62を構成する筒状部材よりも柔らかい材質による筒状の保護部材621(図1参照)が設けられている。なお、図2では保護部材621の図示を省略している。保護部材621は、連結バー62のうち2つのアーム部材61の間に位置する部分の全範囲に設けられている。この保護部材621により、使用者の脇にかかる圧力を抑えることができる。
なお、アーム部材61が本発明の回動部材に相当し、連結バー62が連結部材及び脇支持部材に相当する。
端部ユニット7は、使用者から見てフレーム2の前方側部位であって左右方向の両端部に位置する。また、端部ユニット7は、図2に示すように、側方フレーム22の第1の傾斜部221の下側部位と、第2の傾斜部223の下側部位とで囲まれた領域に設けられる。使用者から見て右側の端部ユニット7は、右側のアーム部材61を回動軸線L1の周りに回転可能に支持するとともに、下降位置Q1から上昇位置Q2の方向に所定のトルクを付加する。使用者から見て左側の端部ユニット7は、左側のアーム部材61を回動軸線L1の周りに回転可能に支持するとともに、下降位置Q1から上昇位置Q2の方向に所定のトルクを付加する。
2つの端部ユニット7は互いに同じ構造となっている。図4、図5は、使用者から見て左側に位置する端部ユニット7の内部構造を示している。図4、図5は、左側の端部ユニット7のカバー部材81(図1参照)を外して、図1の矢印Aの方向から見た図である。
端部ユニット7には、端部ユニット7の各部品の支持基盤を構成する固定ベース部71が設けられている。固定ベース部71は、側方フレーム22の第1の傾斜部221の下側部位と、第2の傾斜部223の下側部位とで囲まれた領域を閉塞する形状に形成される。固定ベース部71は、側方フレーム22や下部フレーム21にネジ等により固定されている。
固定ベース部71の、歩行器1の左右外側を向いた面(図4、図5で示す面)側には、端部ユニット7を構成する他の部品が設けられている。詳しくは、アーム部材61の下端部にはアーム支持部材72が溶接等により接続されている。アーム部材61とアーム支持部材72は一体化されており、アーム支持部材72をアーム部材61の一部とみなした場合には、アーム支持部材72はアーム部材61の下端部を構成する。アーム支持部材72は、板状に形成されており、一方の板面が固定ベース部71の基面部BP(図7参照)側を向き、他方の板面が歩行器1の左右外側を向くように設けられる。
図6に示すように、アーム支持部材72には、アーム支持部材72の両板面間を貫通する孔721が形成されている。この孔721には、歩行器1の左右方向に向いた軸線L1(図1、図2参照)を有した軸74が挿入されている。この軸74は固定ベース部71に固定されている。また、アーム支持部材72は、軸線L1の周りの方向には移動が許容され、それ以外の方向には移動が規制されるように軸74に支持されている。また、図4に示すように、アーム支持部材72の外側の面には、ばね係止部73が設けられている。
さらに、アーム支持部材72又はアーム部材61には、基面部BPの方に突出した形態のアーム側係合部722(図4、図7参照)が固定されている。図7に示すように、アーム側係合部722の先端には、突出軸線方向に交差する方向に張り出すようにフランジ部723が形成されている。
アーム支持部材72の外側の面には渦巻きばね75が設けられている。渦巻きばね75は、細長状且つ金属の素材が同一平面に渦巻き状に加工された形態を有する。渦巻きばね75の中心に位置する一端が軸74に固定され、外側に位置する他端がばね係止部73に固定されている。このように、渦巻きばね75のばね中心は、軸74(回動軸線L1)と同心に配置されている。
また、渦巻きばね75は、図5に示すようにアームユニット6を上昇位置Q2から下降位置Q1に向けて旋回することにより、軸74に巻き取られる形で弾性変形する一方、アームユニット6の下降位置Q1に向けての旋回を解除することにより弾性復帰して、これを上昇位置Q2に戻す役割を果たす。このように、渦巻きばね75は、アームユニット6に対して、下降位置Q1から上昇位置Q2に向けて移動する方向にトルク(付勢力)を付加する。渦巻きばね75によるトルクは、アームユニット6が下降位置Q1に近い位置にあるほど大きくなる。なお、図5において、矢印P10は、アームユニット6を上昇位置Q2から下降位置Q1に向けて旋回させる方向を示している。矢印P11は、渦巻きばね75が巻き取られる方向を示している。なお、渦巻きばね75が本発明のばね部材に相当する。
固定ベース部71には、アームユニット6を、予め定められた上昇位置Q2を超えてさらに前方に旋回することを規制するストッパ76(図4参照)が固定されている。アーム支持部材72には、アームユニット6が上昇位置Q2に位置するときにストッパ76に当接する当接部72a(図4参照)が設けられている。当接部72aがストッパ76に当たることで、アームユニット6は上昇位置Q2にて停止した状態となる。
ここで、上昇位置Q2は、図2に示すように、例えば連結バー62が歩行時把持部25よりも前方且つ上方に位置し、起立時把持部26よりも後方且つ上方に位置するように設定される。また、上昇位置Q2は、別の言い方をすると、例えば回動軸線L1に鉛直方向に直交する鉛直線L2(図2参照)に一致する位置又は鉛直線L2よりも後方側に若干傾斜した位置に設定される。
一方、下降位置Q1における連結バー62の高さは、使用者がベッド、椅子、便座等に着座しているときにおける脇の高さ、つまり着座姿勢の使用者の両脇の下に連結バー62を位置させることが可能な高さに設定される。また、下降位置Q1は、図2に示すように、例えば連結バー62が起立時把持部26よりも後方且つ上方に位置するように設定される。アームユニット6の上昇位置Q2から下降位置Q1への傾斜角度θ(図2参照)は、アーム部材61の長さ、使用者の脇高さの想定値等に基づいて設定される。
端部ユニット7は、アームユニット6を予め定められた下降位置Q1にロック保持するとともに、ロック保持されたアームユニット6に対して予め定められたロック解除操作を加えることによりロックを解除するロック機構を備えている。詳しくは、図4、図5に示すように、端部ユニット7にはロック部材77が設けられている。このロック部材77は、下降位置Q1に対応する形で固定ベース部71に設けられ、アーム部材61の旋回面と交差する向きにおいて、アーム部材61又はこれと一体的に回転するアーム支持部材72に形成されたアーム側係合部722(図4、図7参照)と係合するロック位置と、同じく係合解除される非ロック位置との間で進退するようになっている。
詳しくは、ロック部材77は、アーム部材61の旋回方向にスライド可能となるように固定ベース部71に取り付けられている。固定ベース部71には、図4に示すように、ロック部材77のスライド方向SLへの移動は許容し、アーム部材61の旋回半径方向への移動は拘束するガイド部82が設けられている。
ロック部材77は、アーム部材61の旋回周方向に沿って配置される円弧状セグメント形態をなし、ガイド部82として、その円弧状セグメントの内縁及び外縁に沿って一対のガイド凸状部82a、82bが形成されている。これらガイド凸状部82a、82bは、ロック部材77の移動方向を決定するレールとして機能している。なお、ガイド部82は、別の言い方をすると、旋回における外周側となる外周壁82bと内周側となる内周壁82aとによって溝状に形成することができる。
図7(a)に示すように、ロック部材77は板状に形成され、その後方部分には凸状のアーム側係合部722を出入りさせるための板厚方向の係合孔部771が形成される。さらに、ロック部材77は、アーム部材61の旋回方向への移動に伴うアーム側係合部722の移動経路上に、ロック部材77の板面から突出する形態の突出部772を有する。この突出部772は、アーム側係合部722と係合する係合孔部771の後側縁部775(図7参照)と反対側(つまり前側)において、係合孔部771に隣接する位置に設けられている。
また、ロック部材77には、そのスライド方向に長い長穴状のスライド孔773が形成されている。図7に示すように、固定ベース部71の、アーム部材61の旋回面と対向する基面部BPからは固定軸部材78が突設されている。この固定軸部材78がスライド孔773に挿入されている。そして、基面部BPとロック部材77との間において固定軸部材78の外側には、ロック部材77のスライド孔両縁部を付勢する形にてコイルばね79が、ロック部材77のスライド移動を許容した状態で圧縮状態にて配置される。
さらに、図4、図7に示すように、ロック部材77の、コイルばね79が配置される側と反対側の面には揺動支点部774が形成されている。揺動支点部774は、スライド孔773に隣接した位置において後述の張出部781に向けて突出するように形成されている。
固定軸部材78の、コイルばね79が位置するのと反対側に突出する部分には、半径方向外向きに張り出すように張出部781が形成されている。張出部781の揺動支点部774側の面は、揺動支点部774と接触して、ロック部材77を揺動させる支点受け部として機能する。
アームユニット6を下降位置Q1にてロックするロック機構の作用を説明する。図7(a)に示すように、係合孔部771の後側縁部775であるロック用係合部とアーム側係合部722とが非係合の状態においては、スライド孔773の前端縁位置にて規定される後方限界位置までロック部材77が後退することで、コイルばね79がロック部材77の揺動支点部774よりも前方側の部分(以下、前方部分という)に対応して位置する。これにより、ロック用係合部775の位置する後方部分が非ロック位置に退避する。なお、図7(a)の係合状態は、アームユニット6が上昇位置Q2にある状態に対応する。
一方、図7(a)の状態からアームユニット6を下降位置Q1の方向に旋回させると、アーム側係合部722がロック部材77の突出部772に当たり、ロック部材77が、スライド孔773の後端縁位置にて規定される前方限界位置まで前進する。その結果、コイルばね79がロック部材77の後方部分に対応する位置まで相対移動して、ロック部材77の後方部分がロック位置に向けて移動する。したがって、アームユニット6を下降位置Q1の方向に旋回させると、図7(b)、(c)と係合状態を変化させた後、図8(a)で示される状態となる。このとき、図5に示すように渦巻きばね75は軸74に巻き込まれる形で弾性変形する。
図8(a)に示すように、アーム側係合部722が係合孔部771に挿入されてフランジ部723がロック用係合部775よりも低位置となった状態でアーム部材61が逆方向に移動すると、アーム側係合部722がロック用係合部775と係合する。そして、その係合状態において、渦巻きばね75が部分的に弾性復帰することにより、アームユニット6が逆方向(上昇位置Q2に向かう方向)に少し旋回し、アーム側係合部722とロック用係合部775との係合状態が維持されたまま、ロック部材77が後退方向にスライドする。これにより、コイルばね79によるロック部材77の付勢モードが、ロック部材77の後方部分(揺動支点部774よりも係合孔部771側の部分)をアーム側係合部722側に近づく方向に付勢する接近付勢モードから、その後方部分をアーム側係合部722から離れる方向に付勢する退避付勢モードに切り替わる。したがって、図8(b)に示すように、退避付勢モードの状態においてアーム側係合部722のフランジ部723とロック用係合部775とが係合した状態に保持される。その結果、アームユニット6は下降位置Q1に保持される。
そして、図8(b)の状態においてアームユニット6に対しロック解除操作として、アームユニット6をさらに下降させる旋回操作を加えることにより、図8(c)に示すように、ロック部材77とアーム側係合部722との係合状態が解除され、ロック部材77の後方部分が非ロック位置に退避する。そして、ロックが解除されると、アームユニット6は上昇位置Q2の移動が可能となる。
図4に示すように、端部ユニット7には、アームユニット6が過度の勢いで上昇するのを制限するダンパー80が設けられている。ダンパー80は、例えばオイルの粘性抵抗で回転運動する構造物に制動力を作用させるオイルダンパーとすることができる。ダンパー80は、アーム支持部材72の、渦巻きばね75が配置される側と反対側の面において、アーム支持部材72の回転運動に連動してダンパー80のロータも回転するように取り付けられている。
図6に示すように、端部ユニット7には、アームユニット6の旋回方向に回転可能なカバー部材81が固定ベース部71を覆うように設けられている。なお、アーム支持部材72にはカバー部材81と一体的に固定するための固定部83(図4も参照)が備えられている。そして、例えばカバー部材81を貫通するビス等の締結部材によって固定部83とカバー部材81とを固定することで、カバー部材81とアーム支持部材72とを一体的に回転させることができる。カバー部材81の内側に、上記した渦巻きばね75、ロック部材77等の各部品が外部から視認不能に配置されている。なお、端部ユニット7には、電気で作動する部品が用いられておらず、機械的に作動する部品のみから構成されている。
図1〜図3の説明に戻り、下部フレーム21の各垂直部212には車輪機構3、4が設けられている。詳しくは、下部フレーム21の前側に位置する2つの前方垂直部212aにはそれぞれ前輪機構3が設けられている。前輪機構3は、図2に示すように、車輪31と、その車輪31を支持する支持部材32とを有する。支持部材32は、前方垂直部212aに取り付けられて、車輪31をその中心位置に設定される水平方向の転動軸線を中心に転動可能に支持する。加えて、支持部材32は、垂直方向(接地面に垂直な方向)の旋回軸線L3(図2参照)を中心に首振り旋回可能に前方垂直部212aに取り付けられている。旋回軸線L3は前方垂直部212aを構成する筒状部材の中心軸線に設定されている。なお、車輪31は、支持部材32によって常時、首振り旋回が可能に設けられる。つまり、前輪機構3には、首振り旋回を規制する機構が備えられていない。
一方、下部フレーム21の後側に位置する2つの後方垂直部212bにはそれぞれ後輪機構4が設けられている。後輪機構4は、左右で同じ構造であり、車輪41と、それを支持する支持部とを備えている。その支持部は、車輪41を転動及び首振り旋回が可能に支持するとともに、首振り旋回を規制して直進状態を維持する直進ロック機構と、転動を制止するブレーキ機構とを含む形で構成されている。
詳しくは、図10に示すように、車輪41には第1支持部材42が取り付けられている。第1支持部材42は、一対の板部を有して、それら板部が車輪41を間に挟んで対向するように設けられる。第1支持部材42の各板部には、車輪41の中心に設定される水平方向の線L4が交差する位置に貫通孔421が形成されている。この貫通孔421には、線L4を軸線とする軸422(図9参照、図10では不図示)が、軸線L4周りに回転可能に挿入されている。軸422は車輪41に固定されている。これにより、軸線L4を転動軸線として、その転動軸線L4を中心とした車輪41の転動が可能となる。
第1支持部材42は、転動軸線L4が設定される位置から、上方向に車輪41の径を超えた位置まで延設されている。第1支持部材42の上端は第2支持部材43に取り付けられている。
第2支持部材43は、第1支持部材42の上側に設けられる部材であって、図9に示すように、円形の外形を有するとともに後方垂直部212bよりも大径に形成された大径部431と、その大径部431の上面の中心から上方に突出するとともに後方垂直部212bよりも小径に形成された突出部432とを有する。大径部431の下面(車輪41側の面)に第1支持部材42が取り付けられている。突出部432は、大径部431と同軸の円筒状に形成されている。突出部432は、後方垂直部212bを構成する筒状部材の下端に形成された開口からその筒状部材内に挿入されている。このとき、突出部432は、その中心軸線が、後方垂直部212bの中心軸線L5(図9参照)と一致するように設けられる。なお、中心軸線L5は、車輪41の接地面に垂直方向に延びた線である。この中心軸線L5を旋回軸線として、突出部432は旋回軸線L5の周りの回転は許容され、それ以外の方向には移動が規制されるように設けられる。具体的には、後方垂直部212b内において突出部432と後方垂直部212bの内面との間には、突出部432を旋回軸線L5の周りに回転可能に支持する軸受部材49が設けられている。
また、第2支持部材43には、その中心位置(旋回軸線L5の位置)に、後述のブレーキワイヤー55を通すために挿通孔433が形成されている。
第2支持部材43が旋回軸線L5の周りに回転するのに連動して、第1支持部材42及びこれに取り付けられた車輪41も旋回軸線L5の周りに回転する。つまり、車輪41は、第2支持部材43によって旋回軸線L5を中心に首振り旋回可能に設けられる。
第2支持部材43の大径部431の外周を囲むようにリング部材44が設けられている。リング部材44は、板状かつリング状(環状)に形成されており、大径部431から径方向外側に張り出すように設けられる。また、リング部材44は、第2支持部材43との間で相対移動が不能に固定されている。これにより、第2支持部材43の旋回軸線L5周りの旋回に連動してリング部材44も回転する。
図10に示すように、リング部材44の外周部には溝441が形成されている。溝441は、リング部材44の上面と下面の間を貫通するとともに、リング部材44の外周部から径方向内側に凹むように形成される。溝441は、リング部材44の外周部から径方向内側に凹むが、リング部材44の内周部までは達していない。つまり、溝441の径方向深さは、リング部材44の外径と内径の差であるリング幅よりも小さい。
後方垂直部212bには、後述のバー48を支持するためのバー支持部材46が取り付けられている。バー支持部材46は、後方垂直部212bの側面に取り付けられて、後方垂直部212bの側方に張り出すように設けられる一対の張出部461を有する。これら張出部461はそれぞれ板状に形成されて、後方垂直部212bを間に挟んで後方垂直部212bの円周方向において一方の張出部461が他方の張出部461に対して180°反対側に位置するように設けられる。一対の張出部461の間には空間が形成されている。また、バー支持部材46は、一対の張出部461の上端間を繋ぐ板状の上面部462を有する。この上面部462により、一対の張出部461間に形成された空間の上方が閉塞されている。
図9に示すように、バー支持部材46には回動部材47が取り付けられている。回動部材47は、一対の張出部461間の空間に設けられて、張出部461の内側面に取り付けられる基部471と、バー48が取り付けられるバー取付部472と、後述の旋回ワイヤー50が取り付けられるワイヤー取付部473と、後述の捩じりコイルばね52の一端が取り付けられるばね取付部474とを有する。張出部461の内側面には、水平方向の軸線を有する軸463が取り付けられている。基部471は、この軸463の軸線周りに回転可能に設けられている。
バー取付部472は、バー48の軸方向に沿って延設された形態をなし、バー48の側面がこのバー取付部472に取り付けられている。ワイヤー取付部473は、バー取付部472の下端から、旋回軸線L5を中心とした円における径方向外側に張り出すように設けられる。ワイヤー取付部473には係止孔475が形成されている。この係止孔475に、旋回ワイヤー50の一端が係止している。
バー48は一直線状に延びた棒状部材である。バー48の軸線に直交する平面でバー48を切ったときの断面は例えば円形である。バー48は、一端側が一対の張出部461間の空間において上記のバー取付部472に取り付けられ、他端側がその空間から下側に露出してリング部材44の位置まで延設されている。また、バー48の径はリング部材44の溝441の幅よりも小さい。そして、バー48は、溝441に出入り可能に設けられる。すなわち、バー48の両端のうち溝441側の端を先端としたとき、バー48は、回動部材47の回動に連動して、先端が溝441に入った図9の状態と、先端が溝441から出た図11の状態との間で、軸463の周りに移動可能に設けられる。なお、図9に示すように、バー48の先端が溝441に入った状態では、バー48は接地面に垂直方向に向いている。また、バー48の先端が溝441に入った状態では、車輪41が直進方向に向くように、バー48及び溝441の位置が設定されている。
さらに、軸463の外側には捩じりコイルばね52が設けられている。捩じりコイルばね52は、一端がバー支持部材46の上面部462に取り付けられ、他端が回動部材47のばね取付部474に取り付けられている。このとき、捩じりコイルばね52は、軸463の周りの回転方向のうち図9の方向から見て時計回りの方向P1に回動部材47を付勢するように設けられる。この方向P1は、バー48を、図9の方向から見て時計回りの方向P2に回転させる方向であり、バー48の先端をリング部材44の中心(言い換えると旋回軸線L5)に向かわせる方向P3である。なお、捩じりコイルばね52は、バー48の先端が溝441に入った状態においても、その先端をリング部材44の中心に向かわせる方向P3に付勢力が作用するように設けられる。
図3に示すように、左右の歩行時把持部25のうちの一方には、車輪41の首振り旋回の許可、禁止を切り替えるための旋回操作部91が設けられている。図3の例では、使用者から見て右側の歩行時把持部25に旋回操作部91が設けられた例を示しているが、左側の歩行時把持部25に設けられたとしても良い。なお、旋回操作部91が本発明のロック操作部材に相当する。
旋回操作部91は、図2に示すように、自転車のブレーキレバーと同様の構造を有している。すなわち、旋回操作部91は、歩行時把持部25の直下に設けられ、レバー92と、そのレバー92の一端側を回動可能に支持する支持部93とを有する。支持部93は、歩行時把持部25の前端に隣接した位置において前後迂回部222に取り付けられ、その取り付け位置から下方に突出するように設けられている。
レバー92は、歩行器1の前後方向に細長状に形成され、使用者から見て奥側の端部側が支持部93に回動可能に支持されるとともに、歩行時把持部25の下方位置において歩行時把持部25と間をあけて対向するように設けられている。また、レバー92が操作されていないときのレバー92の位置を初期位置として、レバー92は、その初期位置よりも下方には移動不能に設けられるとともに、支持部93に支持された端部側を支点として初期位置よりも上方(つまりレバー92と歩行時把持部25との間隔を狭める方向)には移動可能に設けられる。
また、レバー92の支持部93に支持された一端側には、旋回ワイヤー50の一端が接続されている。レバー92が初期位置から上方に操作されると、旋回ワイヤー50が引っ張られるように、レバー92と旋回ワイヤー50とは接続されている。この旋回ワイヤー50の他端は上記したようにワイヤー取付部473の係止孔475に係止している(図9参照)。
旋回ワイヤー50は、レバー92の操作を後輪機構4のバー48に伝達するための部材である。旋回ワイヤー50は例えば細い銅線をよりあわせることで形成されている。また、図9に示すように、旋回ワイヤー50の外側を囲むように管状部材51が設けられている。管状部材51は、旋回ワイヤー50が管状部材51内を摺動可能とするために、旋回ワイヤー50の直径より僅かに大きい内径を有している。管状部材51は、旋回ワイヤー50及び管状部材51の歩行器1への取り回しを容易とするため、可とう性を有する材料で形成されている。この管状部材51により旋回ワイヤー50が保護されている。
さらに、1つのレバー92の操作で、左右両側の後輪41に対して首振り旋回を同時に許可することが可能に構成されている。詳しくは、旋回ワイヤー50は、レバー92には1本のワイヤーとして接続されるともに、途中で2手に分岐して、分岐後の一方の旋回ワイヤー50は一方の後輪機構4に取り付けられ、分岐後の他方の旋回ワイヤー50は他方の後輪機構4に取り付けられている。本実施形態では、旋回ワイヤー50は、レバー92から一旦、フレーム2の前方下部中央に配置された固定部材24(図1参照)の位置まで1本の状態で取り回される。そして、固定部材24の位置で2手に分岐して、分岐後の各旋回ワイヤー50が各後輪機構4の位置まで取り回されて、各後輪機構4に取り付けられている。
次に、後輪41の首振り旋回の許可、禁止を切り替える機構の作用を説明する。図9、図10に示すように、バー48がリング部材44の溝441に入った状態では、リング部材44及びこれに接続された第1、第2支持部材42、43が旋回不能となることで、第1支持部材42に接続された後輪41も旋回不能となる。
バー48が溝441に入った状態において、使用者が、旋回操作部91のレバー92を、捩じりコイルばね52の付勢力より大きい力で上方に操作すると、レバー92は上方に移動する。このレバー92の移動に連動して旋回ワイヤー50は上に引っ張られる(図11参照)。このとき、一方の後輪機構4に取り付けられた旋回ワイヤー50と、他方の後輪機構4に取り付けられた旋回ワイヤー50とは、レバー92の操作に連動して同時に上に引っ張られる。
図11に示すように、旋回ワイヤー50が引っ張られることで、回動部材47は、捩じりコイルばね52の付勢力に抗して、図11の方向から見て反時計回りの方向P4に回転する。この回転に伴い、バー48は、旋回軸線L5を中心とした円における径方向外側に移動して溝441から外れる。これにより、後輪41の首振り旋回が可能となる。このとき、左右2つの後輪41は同時に首振り旋回が可能となる。また、回動部材47が反時計回りの方向P4に回転することで、捩じりコイルばね52が圧縮される。
その後、レバー92の操作が解除されると、圧縮された捩じりコイルばね52の復元力により、レバー92は初期位置に戻るとともに、バー48には図11の方向から見て時計回りの方向に回転させる力、言い換えるとバー48の先端側をリング部材44の中心に向かわせる力が働く。このとき、溝441とバー48の位置が一致していない場合には、図12の左図に示すように、バー48はリング部材44の外周部に接触した状態となる。その後、図12の中央の状態を経て、後輪41が直進方向を向いたときにバー48は溝441に入る。これにより、後輪41の首振り旋回が不能となる。
次に、各後輪機構4に備えられた、車輪41の転動を制止するブレーキ機構について説明する。図10に示すように、第2支持部材43及びリング部材44の下には、ブレーキ支持部材45が設けられている。ブレーキ支持部材45は例えば第2支持部材43の下面に取り付けられる。ブレーキ支持部材45は、第1支持部材42を構成する一対の板部の外側に位置する一対の側面部と、各側面部の前端を接続する前面部とを有した、上から見たときに略コの字型の形状に形成されている。図9に示すように、ブレーキ支持部材45の側面部には、後述のブレーキ部材54の回動軸線を形成する軸部451が設けられている。この軸部451は、車輪41の転動軸線L4(図10参照)と平行に設けられる。また、軸部451は、ブレーキ支持部材45の一対の側面部間に形成される空間側に突出するように設けられる。
また、図9に示すように、ブレーキ支持部材45の側面部には、後述の捩じりコイルばね53の一端を係止する係止部452が設けられている。この係止部452は、ブレーキ支持部材45の一対の側面部間に形成される空間側に突出するように設けられる。
図9に示すように、ブレーキ支持部材45を構成する一対の側面部及び前面部で囲まれた空間にはブレーキ部材54が設けられている。ブレーキ部材54は、ブレーキ支持部材45に、軸部451の軸線周りに回動可能に支持されている。ブレーキ部材54には、車輪41の地面に接触する面(以下、接触面という)に対峙した対峙端部541が設けられている。ブレーキ部材54が軸部451の周りに回動することで、対峙端部541は、車輪41の接触面に当たる制動位置と、接触面から離れる解除位置との間で移動する。
対峙端部541は、車輪41の接触面に当たったときに、その接触面との間に摩擦力を作用させて、この摩擦力により車輪41の転動を制止させる部分である。対峙端部541は、耐摩耗性があり、且つ、車輪41との間に作用する摩擦力が大きい材料(金属など)で形成される。
また、ブレーキ部材54には、後述のブレーキワイヤー55の一端が取り付けられるワイヤー取付部542と、捩じりコイルばね53の一端と接触して捩じりコイルばね53の付勢力を受ける力受け部543とが設けられている。ワイヤー取付部542は、車輪41の旋回軸線L5の位置に設けられている。
軸部451の外側には捩じりコイルばね53が設けられている。捩じりコイルばね53の一端はブレーキ支持部材45の係止部452に係止され、他端は力受け部543に接触している。このとき、捩じりコイルばね53は、若干圧縮された状態で設けられることで、ブレーキ部材54に対して図9の方向P5への復元力(付勢力)を付加した状態で設けられる。方向P5は、ブレーキ部材54の対峙端部541が車輪41の接触面から離れようとする方向である。
図3に示すように、左右の歩行時把持部25のうち、旋回操作部91が設けられていない方には、車輪41の転動の許可、禁止を切り替えるためのブレーキ操作部94が設けられている。図3では、使用者から見て左側の歩行時把持部25にブレーキ操作部94が設けられた例を示している。ブレーキ操作部94は、旋回操作部91と同様の構造を有し、すなわち、レバー(図示外)とそのレバーを回動可能に支持する支持部(図示外)とを有する。なお、ブレーキ操作部94が本発明の制動操作部材に相当する。
また、ブレーキ操作部94のレバーの操作に連動して引っ張られるようにブレーキワイヤー55(図9参照)が設けられている。なお、ブレーキワイヤー55は、管状部材56で覆われている。これらブレーキワイヤー55、管状部材56の構成は、旋回ワイヤー50及びこれを覆う管状部材51と同様である。
ブレーキワイヤー55の一端がブレーキ操作部94のレバーに接続され、他端がブレーキ部材54のワイヤー取付部542に取り付けられている。そして、ブレーキ操作部94の操作によりブレーキワイヤー55が引っ張られたときに、ブレーキ部材54が方向P5と反対方向に回動するようになっている。
また、ブレーキ部材54に取り付けられるブレーキワイヤー55の他端側は、図9に示すように、フレーム2の後方垂直部212bの内部を通った後、第2支持部材43の中心に形成された挿通孔433を通って、ワイヤー取付部542に取り付けられている。図2に示すように、下部フレーム21には、ブレーキワイヤー55を下部フレーム21内に入れるための孔27が形成されている。この孔27は、例えば、下部フレーム21の水平部211と、後方垂直部212bとの境界辺りに設けられる。ブレーキワイヤー55及びこれを覆う管状部材56は、ブレーキ操作部94から孔27までは外部に露出した状態で設けられ、孔27から下部フレーム21内に入っている。
さらに、ブレーキ操作部94の操作で、左右両側の後輪41に対して転動の許可、禁止を同時に切り替えることが可能に構成されている。詳しくは、ブレーキワイヤー55は、ブレーキ操作部94には1本のワイヤーとして接続されるともに、途中で2手に分岐して、分岐後の一方のブレーキワイヤー55は一方の後輪機構4に取り付けられ、分岐後の他方のブレーキワイヤー55は他方の後輪機構4に取り付けられている。本実施形態では、ブレーキワイヤー55は、ブレーキ操作部94から一旦、フレーム2の前方下部中央に配置された固定部材24(図1参照)の位置まで1本の状態で取り回される。そして、固定部材24の位置で2手に分岐して、分岐後の各ブレーキワイヤー55が各後輪機構4の位置まで取り回されて、各後輪機構4に取り付けられている。
次に、ブレーキ機構の作用を説明する。ブレーキ操作部94が操作されていない状態では、図9に示すように、捩じりコイルばね53の付勢力により、ブレーキ部材54の対峙端部541は車輪41から離れており、車輪41の転動が可能となっている。
一方、使用者が、ブレーキ操作部94を、捩じりコイルばね53の付勢力より大きい力で操作すると、ブレーキワイヤー55が上に引っ張られる。このとき、一方の後輪機構4に取り付けられたブレーキワイヤー55と、他方の後輪機構4に取り付けられたブレーキワイヤー55とは、ブレーキ操作部94の操作に連動して同時に上に引っ張られる。
図13に示すように、ブレーキワイヤー55が引っ張られることで、ブレーキ部材54は、捩じりコイルばね53の付勢力に抗して、図13の方向から見て反時計回りの方向P6に回転する。この回転に伴い、対峙端部541が後輪41に接触することで、後輪41の転動が不能となる。また、ブレーキ部材54が反時計回りの方向P6に回転することで、捩じりコイルばね53が圧縮される。
その後、ブレーキ操作部94の操作が解除されると、圧縮された捩じりコイルばね53の復元力により、ブレーキ操作部94は初期位置に戻るとともに、対峙端部541は後輪41から離れる。これにより、後輪41の転動が可能となる。
なお、前輪31及び後輪41は、歩行動作時に使用者が歩行時把持部25に体重をかけたとしても、転動が制止しないように構成されている。つまり、前輪31及び後輪41は、使用者の歩行動作を補助するための車輪であり、使用者が居ない状態の歩行支援車1を移動させるためだけに用いられる車輪とは異なる。また、後輪機構4、旋回操作部91、及びブレーキ操作部94は、電気で作動する部品が用いられておらず、機械的に作動する部品のみから構成されている。
次に、歩行器1の使用方法を説明する。先ず立ち上がり時の使用方法について説明する。椅子等に着座している使用者は、予めアームユニット6が下降位置Q1にロックされた歩行器1の左右の側方フレーム22の間に位置した状態で、両脇の下に連結バー62を配置させる(図14(a)参照)。このとき、使用者は、前傾姿勢となることで、両脇の下への連結バー62の配置や、その後の立ち上がり動作を円滑に行うことができる。また、使用者は、両脇の下に連結バー62を配置した後、両手で起立時把持部26を把持する。
その後、使用者は、アームユニット6に対するロック解除操作として、連結バー62に接触している身体の部位(つまり脇や腕)によってアームユニット6を少し下降させ、アームユニット6のロックを解除する。
その後、使用者は、両脇の下に連結バー62を配置し、且つ両手で起立時把持部26を把持した状態で立ち上がり動作を行う。このとき、連結バー62には、渦巻きばね75の弾性復帰力により、上昇方向へ移動させる力が作用しているので、使用者は容易に立ち上がることができる。図14(a)→(b)→(c)に示すように、アームユニット6は使用者の立ち上がりに伴って上昇する。なお、連結バー62は、下降位置Q1から上昇位置Q2にいくにしたがって次第に前方に移動するので、その連結バー62の前方移動に伴い、使用者の頭も、立ち上がりが進むにつれて次第に前方に移動していく。一方で、使用者の腰はほぼ上方に移動する。
図14(c)に示すように、アームユニット6が上昇位置Q2にきたときには、使用者は立ち上がった状態となる。その後、使用者は、両手を起立時把持部26から離すとともに、両脇の下から連結バー62を外す。以上で、着座姿勢からの立ち上がり動作が完了する。
使用者は、連結バー62を利用して立ち上がりを行った場合には、立ち上がった状態で、左右の側方フレーム22の間に位置するとともに、使用者の正面方向と歩行器1の直進方向とが一致している。起立姿勢の使用者は、歩行時把持部25を手で把持してこの歩行時把持部25に体重を預けることにより歩行動作を行うことができる。
使用者は、直進歩行をする場合には、旋回操作部91への操作を行わないで後輪41の首振り旋回を禁止することで、歩行器1が左右にふらついてしまうのを抑制できる。
また、使用者は、歩行動作を停止する場合には、ブレーキ操作部94を操作して後輪41の転動を禁止することで、停止中に歩行器1が動いてしまうのを抑制できる。
さらに、使用者は、トイレの室内など狭い場所で方向転換を行う場合には、旋回操作部91を操作して後輪41の首振り旋回を許可することで、容易に歩行器1の方向転換を行うことができる。ここで、図15は、後輪の首振り旋回が可能な場合の歩行器の回転軌跡200と、首振り旋回が不能な場合の歩行器の回転軌跡201とを示している。図15に示すように、後輪の首振り旋回を可能とすることで、歩行器の回転軌跡を小さくでき、その場で方向転換を行うことも可能である。
起立姿勢からの着座動作は、立ち上がり動作と逆の手順(図14(c)→(b)→(a)の手順)を踏めばよい。すなわち、使用者は、着座しようとする椅子等の座面の前に立った状態で、両脇の下に連結バー62を配置させるとともに両手で起立時把持部26を把持する。その後、使用者は着座動作を行う。このとき、連結バー62には、渦巻きばね75の弾性復帰力により、上昇方向へ移動させる力が作用するので、使用者はゆっくりと安全に着座動作を行うことができる。
その後、連結バー62が下降位置Q1にきたときに自動的に(使用者が特別な操作を行わなくても)ロックがかかる。使用者は、連結バー62がロックされた状態で、両手を起立時把持部26から離すとともに、両脇の下から連結バー62を外す。以上で、起立姿勢からの着座動作が完了する。
以下、本実施形態の効果を説明する。本実施形態の歩行器1には、アームユニット6及び端部ユニット7による起立アシスト機能が備えられているので、使用者の立ち上がり動作における負担及び着座動作における負担を軽減できる。また、アームユニット6の回動軸線の位置に配置された渦巻きばね75によってアームユニット6へのトルク付与を行っているので、アームユニット6へのトルク付与機構の構造を簡素にできる。
また、渦巻きばね75を採用することで、アームユニット6へのトルク付与機構の上下寸法を短小にできる。トルク付与機構の上下寸法を短小にできることで、アームユニット6のアーム部材61の長さを確保しやすい。アーム部材61を長くすることで、下降位置Q1と上昇位置Q2との高さの差を大きくできる。これにより、立ち上がり動作時においてアームユニット6が上昇位置Q2にきたときに、使用者の膝が伸びた状態にしやすくなり、連結バー62を外した後も起立姿勢を維持しやすくできる。換言すると、連結バー62を外した後に、起立姿勢を維持できずにまた着座してしまうのを抑制できる。
また、アームユニット6へのトルク付与機構としての端部ユニット7は、歩行器1の左右両側に配置されているので、アームユニット6に対して大きなトルクを付与できる。これにより、使用者はより少ない力で立ち上がり動作又は着座動作を行うことができる。また、左右両側に端部ユニット7が設けられることで、1つの端部ユニット7が担う、アームユニット6に付与するトルクを小さくできるので、端部ユニット7をコンパクトにすることができる。
また、端部ユニット7には、アームユニット6を下降位置Q1でロックする機構が備えられているので、着座姿勢の使用者は、起立アシスト時においては安心して両脇の下に連結バー62を配置させることができ、着座アシスト時においては安心して両脇の下から連結バー62を外すことができる。言い換えると、両脇の下に連結バー62を配置させている途中(起立アシスト時)又は両脇の下から連結バー62を外している途中(着座アシスト時)で、連結バー62が上昇してしまうのを抑制できる。
また、アームユニット6のロックは、連結バー62を下降位置Q1から少し下降させることで解除するので、使用者は、両脇の下に連結バー62を配置し、且つ起立時把持部26を把持した状態でも、容易にアームユニット6のロックを解除できる。また、連結バー62をロック解除の操作部に兼用することで、起立アシスト機能に関する構成を簡素にできる。
また、着座アシスト時において、連結バー62は下降位置Q1にきたときに自動的にロックされるので、連結バー62をロックするための使用者の特別な操作を不要にでき、これにより使用者の負担を軽減できる。
また、端部ユニット7にはダンパー80が設けられているので、両脇の下に連結バー62が配置されていない状態でアームユニット6が下降位置Q1から上昇してしまったとしても、アームユニット6が過度の勢いで上昇してしまうのを抑制できる。例えば、上昇中のアームユニット6に周囲の人、物が当たってしまっても、打撃を小さくできる。
また、歩行時把持部25とは別に起立時把持部26が設けられているので、立ち上がり動作時又は着座動作時に起立時把持部26を把持することで、立ち上がり動作や着座動作がしやすくなる。すなわち、立ち上がり動作時又は着座動作時に起立時把持部26を把持することで、使用者は前傾姿勢をとりやすくなり、前傾姿勢をとることで、立ち上がり動作や着座動作がしやすくなる。また、起立時把持部26は、連結バー62が下降位置Q1と上昇位置Q2のどちらの位置にあったとしても、連結バー62よりも下方且つ前方に配置されているので、使用者は、両脇の下に連結バー62を配置させた状態でも容易に起立時把持部26を把持できる。
また、左右のアーム部材61を連結する連結バー62が設けられているので、左右のアーム部材61の回動角度がずれてしまうのを抑制できる。この連結バー62を、使用者の両脇を支える脇支持部材として用いているので、別に脇支持部材を設ける場合に比べて、起立アシスト機能に関する構成を簡素にできる。また、左右方向に延びた連結バー62を脇支持部材とすることで、使用者の肩幅に応じた位置で脇と連結バー62とを接触させることができる。つまり、肩幅が異なる使用者に対しても同じように両脇を支持することができる。これに対して、特許文献2のように、使用者が入れる間隔で使用者側に突出された2本の脇支持部材を採用した場合には、使用者の肩幅によっては、両脇の下に上手く2本の脇支持部材を配置できない可能性がある。
また、連結バー62を採用することで、使用者の胸を支える胸支持部材を別に設けなくても、上半身が前方に倒れこんでしまうのを抑制できる。つまり、連結バー62に胸が当たることで、連結バー62より前方に上半身が倒れこんでしまうのを防止する倒れ込み防止ストッパとして連結バー62を機能させることができる。
また、連結バー62はどの高さにあったとしても水平方向と平行となるので、連結バー62の移動に伴い、連結バー62による両脇の支持状態が変わってしまうのを抑制できる。これに対して、特許文献2のように、使用者の方に突出された脇支持部材を採用する場合には、脇支持部材がどの高さにあっても脇支持部材の角度を一定にするための機構が必要となり、起立アシスト機能の構造が複雑になる。
また、連結バー62は上昇位置Q2にあるときには歩行時把持部25よりも前に位置するので、歩行動作時に連結バー62に使用者の上半身が当たってしまうのを抑制できる。
また、連結バー62は、両端がアーム部材61で固定されているので、使用者の脇を支えている時に連結バー62が撓んでしまうのを抑制できる。
また、端部ユニット7は側方フレーム22の外側に配置されているので、左右の側方フレーム22の間の空間を広くとることができ、歩行動作をしやすくできる。
また、連結バー62を利用した立ち上がり動作時における使用者の向きは、歩行器1の直進方向と一致しているので、使用者は立ち上がり動作から歩行動作に円滑に移行できる。
また、起立アシスト機能を構成するアームユニット6及び端部ユニット7は、電気を利用して作動する部品が用いられておらず、機械的に作動する部品のみから構成されているので、コストを抑えることができる。
また、歩行動作時に使用者が位置する空間である左右の側方フレーム22間の空間及び歩行時把持部25は、アームユニット6の回動領域(図2、図3の下降位置Q1(破線部)と上昇位置Q2(実線部)の間の領域)の内側に配置されているので、使用者は立ち上がり動作から歩行動作に円滑に移行できる。
また、歩行時把持部25が設けられる側方フレーム22はループ状に形成されているので、側方フレーム22の剛性や耐久性を良好にでき、歩行時把持部25に体重をかけたときに歩行時把持部25が撓んでしまうのを抑制できる。
また、起立時把持部26が設けられる前フレーム23はループ状に形成されているので、前フレーム23の剛性や耐久性を良好にでき、起立時把持部26に体重をかけたときに起立時把持部26が撓んでしまうのを抑制できる。
また、後輪41の転動を禁止するブレーキ機構が設けられているので、歩行停止中に歩行器1が動いてしまうのを抑制できる。また、1つのブレーキ操作部94の操作で、左右両方の後輪41が同時に制止するので、後輪41ごとにブレーキ操作部を設ける場合に比べて歩行器1の構造を簡素にできるとともに、片方の後輪41のみ制止する場合に比べて、歩行器1の制止力を高くできる。
また、後輪41の首振り旋回を不能状態から可能状態に切り替える機構が備えられているので、狭い場所でも容易に歩行器1の方向転換を行うことができる。また、1つの旋回操作部91の操作で、左右両方の後輪41が同時に首振り旋回が可能となるので、後輪41ごとに旋回操作部を設ける場合に比べて歩行器1の構造を簡素にできるとともに、片方の後輪41のみ首振り旋回を許可する場合に比べて、歩行器1の方向転換をしやすくできる。
また、旋回操作部91及びブレーキ操作部94は歩行時把持部25の位置に設けられているので、使用者は、歩行動作中に歩行時把持部25を把持した状態で旋回操作部91、ブレーキ操作部94を操作することができる。
また、旋回操作部91及びブレーキ操作部94は同じ操作態様の構造となっているので、使用者の操作負担を軽減できる。
また、ブレーキワイヤー55は、後輪41の旋回軸線L5の位置で後輪機構4に取り付けられているので、後輪41の首振り旋回時にブレーキワイヤー55が捩じれてしまうのを抑制できる。
また、後輪41のブレーキ機構及び首振り旋回の機構は、電気を利用して作動する部品が用いられておらず、機械的に作動する部品のみから構成されているので、コストを抑えることができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載を逸脱しない限度で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、使用者の脇を支える脇支持部材として1本の連結バー62を設けた例を示したが、図16に示すように、左右のアーム部材61ごとに、アーム部材61の回動軸線と平行状に連結した連結部材63、64を設けたとしても良い。これら連結部材63、64は別体に構成される。一方の連結部材63は、使用者から見て右側のアーム部材61の上端から左向きに突出するように設けられる。他方の連結部材64は、使用者から見て左側のアーム部材61の上端から右向きに突出するように設けられる。使用者から見て右側の連結部材63は右脇を支える右脇支持部材として機能し、使用者から見て左側の連結部材64は左脇を支える左脇支持部材として機能する。なお、図16の場合、連結部材63、64とは別に、左右のアーム部材61間を連結する連結バーを設けたとしても良い。これによれば、左右のアーム部材61の回動角度がずれてしまうのを抑制できる。
また、上記実施形態では、歩行器1の左右両端にアーム部材61及び端部ユニット7を設けた例を示したが、左右両端のアーム部材61及び端部ユニット7に加えて、左右両端以外の箇所(例えば、左右方向の中心)にアーム部材(以下、追加アーム部材)及びこれにトルクを付与する端部ユニット(以下、追加端部ユニットという)を設けても良い。追加アーム部材の上端は連結バーに固定され、他端は追加端部ユニットに回動可能に支持される。追加端部ユニットは、例えば歩行器のフレームの前方下部における左右方向の中心位置に取り付けられる。これによれば、アームユニットに対して大きなトルクを付与でき、使用者はより少ない力で立ち上がり動作又は着座動作を行うことができる。また、1つの端部ユニットが担う、アームユニットに付与するトルクを小さくできるので、端部ユニットをコンパクトにすることができる。
また、上記実施形態では、歩行器1の左右両端にアーム部材61及び端部ユニット7を設けた例を示したが、これらアーム部材61及び端部ユニット7に代えて、左右両端以外の箇所(例えば、左右方向の中心)に1つ又は複数のアーム部材及び端部ユニットを設けても良い。
また、上記実施形態では、歩行動作時に手で身体を支える歩行時把持部25を設けた例を示したが、歩行時把持部25に加えて又は代えて、使用者の上半身のうちの手以外の部位(具体的には例えば腕や上部体幹)で身体を支える身体支持部を設けても良い。この身体支持部も、アームユニットの回動領域の内側に設けられる。
また、上記実施形態では、アームユニットにトルクを付与するばね部材として金属ばねの一種である渦巻きばねを例示したが、アームユニットの回動軸線の位置に設けられてアームユニットにトルクを付与可能であれば、竹の子ばね、捩じりコイルばね等、渦巻きばね以外の金属ばねを採用しても良い。
1 歩行器(歩行支援車)
2 フレーム
25 歩行時把持部(側方把持部材、身体支持部)
3 前輪機構(走行車輪)
4 後輪機構(走行車輪)
6 アームユニット
61 アーム部材(回動部材)
62 連結バー(連結部材、脇支持部材)
7 端部ユニット
75 渦巻きばね(ばね部材)

Claims (8)

  1. 使用者の位置する後方側に開放したフレームを有し、そのフレームの下側に装備された複数の走行車輪によって使用者の起立姿勢での歩行動作を補助する歩行支援車において、
    使用者から見て前記フレームの前方側部位であって少なくとも左右方向の両端部において、左右方向に沿って水平状に配置された回動軸線に自身の下端部が位置するとともに、その回動軸線と同心に配置されたばね中心を有するばね部材により所定のトルクを付加されて当該回動軸線の周りに各々回動可能に取り付けられた回動部材と、
    それらの回動部材の上端部を前記回動軸線と平行状に連結し、使用者の両脇を下側から支える1又は複数の連結部材と、
    前記回動部材及び前記連結部材が前記回動軸線の周りに一体的に回動したときに形成される回動領域の内側に位置する状態で前記フレームの左右方向の両端部に各々固定配置され、起立姿勢の使用者に把持される側方把持部材と、
    を備え、
    着座状態で前傾姿勢にある使用者の両脇を支持する前記連結部材が前記ばね部材のトルクにより前記回動部材とともに前記側方把持部材の外側で回動して使用者を起立姿勢とし、前記側方把持部材が起立姿勢の使用者によって把持されて歩行動作を補助することを特徴とする歩行支援車。
  2. 前記側方把持部材は、一端部が前記フレームの前方下部に固定されて上昇し、続いて前記回動領域の内側に位置して前後方向でループ状に迂回する前後迂回部を経て下降に転じ、さらに他端部が前記フレームの前方下部に再び固定され、
    前記前後迂回部は起立姿勢の使用者によって片手で把持可能な歩行補助部を構成する請求項1に記載の歩行支援車。
  3. 前記複数の走行車輪のうち進行方向後方側に配置された左右の2個は、各々水平方向の転動軸線を中心に転動可能でありかつ垂直方向の旋回軸線を中心に首振り旋回可能である転動輪と、その首振り旋回を規制して直進状態を維持する直進ロック機構とを含んで構成されるとともに、左右のうちいずれか一方の前記側方把持部材には使用者によって操作されるロック操作部材が設けられ、
    前記ロック操作部材の操作によって、2個の転動輪の前記直進ロック機構が同時にロック解除し、又は同時にロック作動可能である請求項1又は請求項2に記載の歩行支援車。
  4. 前記2個の転動輪は各々転動を制止するブレーキ機構を含んで構成されるとともに、前記ロック操作部材が設けられていない方の前記側方把持部材には使用者によって操作される制動操作部材が設けられ、
    前記制動操作部材の操作によって、前記2個の転動輪の前記ブレーキ機構が同時に制動作動し、又は同時に制動解除する請求項3に記載の歩行支援車。
  5. 前記制動操作部材と前記2個の転動輪の前記ブレーキ機構とはそれぞれブレーキワイヤーで連結され、各々のブレーキワイヤーは対応する転動輪の前記旋回軸線と同心に配置されている請求項4に記載の歩行支援車。
  6. 前記フレームの前方側部位であって左右方向の中間部には、着座状態で前傾姿勢の使用者によって両手で又は片手で把持される前方把持部材が上向きに突出して固定配置されている請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載の歩行支援車。
  7. 前記前方把持部材は、一端部が前記フレームの前方下部に固定されて上昇し、続いて左右方向でループ状に迂回する左右迂回部を経て下降に転じ、さらに他端部が前記フレームの前方下部に再び固定され、
    前記左右迂回部は前傾姿勢の使用者によって両手で把持可能な立上り補助部を構成する請求項6に記載の歩行支援車。
  8. 下部に複数の車輪と、上部に使用者の上半身に含まれる所定部位をもって歩行動作時に体重をかけることが可能な身体支持部とが設けられたフレームを備えた歩行支援車であって、
    使用者の着座と立ち上がりとの間の動作時に使用者の両脇を支える脇支持部材と、
    一端側が前記脇支持部材に連結され、他端側が前記フレームにおいて回動軸線の周りに回転可能に設けられ、前記回動軸線の周りに回転することで前記脇支持部材を、使用者が着座した状態にあるときの脇の高さ位置である下降位置と、使用者が起立した状態にあるときの脇の高さ位置である上昇位置との間で移動させる回動部材と、
    前記回動軸線周りの方向のうち前記脇支持部材を前記下降位置から前記上昇位置へと移動させる方向を上昇回転方向として、前記回動軸線の位置に設けられて前記回動部材を前記上昇回転方向に付勢するばね部材と、
    を備えることを特徴とする歩行支援車。
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