以下、図面を参照しながら本実施形態に係わる放射線治療装置を説明する。
図1は、本実施形態に係る放射線治療装置を含む放射線治療システム100の構成を示す図である。図1に示すように、本実施形態に係る放射線治療システム100は、ネットワーク等を介して互いに通信可能に接続された放射線治療装置1と治療計画装置5とを有する。
治療計画装置5は、例えば、汎用のコンピュータ又はワークステーションである。治療計画装置5は、治療計画時において、予め収集された治療計画画像に基づいて放射線治療装置1による放射線治療の治療計画を立案する。具体的には、治療計画装置5は、線量分布や放射線の照射回数、放射線のビームパス等を決定する。線量分布は、放射線治療により照射されるべき放射線の線量の空間分布である。放射線の照射回数は、治療対象の腫瘍全体に放射線を照射するために必要な照射回数に規定される。放射線のビームパスは、放射線の透過経路に規定される。治療計画画像は、X線コンピュータ断層撮影装置や磁気共鳴イメージング装置等の医用画像診断装置により収集される。収集された治療計画画像は、放射線治療装置1に伝送される。本実施形態に係る治療計画画像は、3次元状に配列された複数のボクセルから構成される3次元画像でも良いし、複数の3次元画像を一定間隔毎に収集した4次元画像でも良い。
放射線治療装置1は、治療計画装置5により計画された治療計画に従い被検体(患者)の腫瘍に放射線を照射する。本実施形態に係る放射線治療装置1は、放射線として、X線やガンマ線等の電磁波を照射しても良いし、電子線や陽子線、中性子線、重粒子線等の粒子線を照射しても良い。以下、本実施形態に係る放射線治療装置1は、X線を照射するリニアック装置であるとする。
図2は、図1の放射線治療装置1の構成を示す図である。図2に示すように、放射線治療装置1は、加速器11、加速系制御回路13、加速管15、ガントリ17、寝台36、MLC系駆動制御回路21、ガントリ駆動制御回路23及びコンソール50を有する。
加速器11は、電子銃等により発生された電子等を、加速器11により加速する。加速系制御回路13は、コンソール50の主制御回路57による指令に従い加速器11を制御する。加速管15は、加速器11から射出された電子をガントリ17内の照射器35まで輸送する輸送路である。なお、加速器11及び加速管15は、ガントリ17内に搭載されても良いし、ガントリ17外に設置されても良い。
ガントリ17は、固定部31と回転部33とを有している。固定部31は、床面に設置され、回転部33を回転軸回りに回転可能に支持している。回転部33には照射器35が取り付けられている。照射器35は、加速管15により輸送された電子が衝突する金属ターゲットを搭載する。金属ターゲットに電子が衝突することにより、放射線であるX線が発生する。
ガントリ17のヘッド部には支持機構41を介してマルチリーフ・コリメータ(MLC:Multi Leaf Collimator)43が設けられている。マルチリーフ・コリメータ43は、X線遮蔽物質により形成された複数のリーフを個別に移動可能に支持している。複数のリーフを移動させることにより任意の形状の照射野を形成することが可能である。なお、後述するように、本実施形態に係るマルチリーフ・コリメータ43は、一台であっても良いし、複数台であっても良い。支持機構41は、マルチリーフ・コリメータ43を上下動及び水平動の少なくとも一方方向に移動可能に支持する。
MLC系駆動装置37は、マルチリーフ・コリメータ43に含まれる複数のリーフを駆動するための動力や支持機構41を駆動するための動力を発生する。MLC系駆動装置37は、MLC系駆動制御回路21からの駆動信号の供給を受けて動力を発生する。MLC系駆動装置37は、固定部31に内蔵されても良いし、支持機構41やマルチリーフ・コリメータ43に内蔵されても良い。MLC系駆動制御回路21は、コンソール50の主制御回路57による指令に従いMLC系駆動装置37に駆動信号を供給する。
ガントリ駆動装置39は、例えば、固定部31に内蔵されている。ガントリ駆動装置39は、ガントリ駆動制御回路23からの駆動信号の供給を受けて回転部33を回転する。ガントリ駆動制御回路23は、コンソール50の主制御回路57による指令に従いガントリ駆動装置39に駆動信号を供給する。
MLC系駆動制御回路21、MLC系駆動装置37、支持機構41及びマルチリーフ・コリメータ43の詳細については後述する。
図2に示すように、コンソール50は、演算回路51、画像処理回路52、通信回路53、表示回路54、入力回路55、記憶回路56及び主制御回路57を有する。演算回路51、画像処理回路52、通信回路53、表示回路54、入力回路55、記憶回路56及び主制御回路57は、互いにバスを介して通信可能に接続されている。
演算回路51は、ハードウェア資源として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等のプロセッサとROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリとを有する。具体的には、演算回路51は、MLC配置決定機能511を有する。MLC配置決定機能511において演算回路51は、マルチリーフ・コリメータ43の配置を決定する。なお、演算回路51は、上記機能を実現可能なASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、SPLD(Simple Programmable Logic Device)により実現されても良い。なお、MLC配置決定機能511は、治療計画装置5に実装されても良い。
画像処理回路52は、ハードウェア資源として、CPUやGPU等のプロセッサとROMやRAM等のメモリとを有する。画像処理回路52は、治療計画画像に種々の画像処理を施す。例えば、画像処理回路52は、3次元の治療計画画像にボリュームレンダリングや、サーフェスボリュームレンダリング、画像値投影処理、MPR(Multi-Planer Reconstruction)処理、CPR(Curved MPR)処理等の3次元画像処理を施して表示用の2次元の医用画像を生成する。なお、画像処理回路52は、上記画像処理を実現可能なASICやFPGA、CPLD、SPLDにより実現されても良い。
通信回路53は、図示しない有線又は無線を介して、放射線治療システム100を構成する治療計画装置5との間でデータ通信を行う。
表示回路54は、種々の情報を表示する。具体的には、表示回路54は、表示インタフェース回路と表示機器とを有する。表示インタフェース回路は、表示対象を表すデータを映像信号に変換する。映像信号は、表示機器に供給される。表示機器は、表示対象を表す映像信号を表示する。表示機器としては、例えば、CRTディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、LEDディスプレイ、プラズマディスプレイ、又は当技術分野で知られている他の任意のディスプレイが適宜利用可能である。
入力回路55は、具体的には、入力機器と入力インタフェース回路とを有する。入力機器は、ユーザからの各種指令を受け付ける。入力機器としては、キーボードやマウス、各種スイッチ等が利用可能である。入力インタフェース回路は、入力機器からの出力信号をバスを介して主制御回路57に供給する。
記憶回路56は、種々の情報を記憶するHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)、集積回路記憶装置等の記憶装置である。例えば、記憶回路56は、治療計画装置5から供給された治療計画情報と治療計画画像とを記憶する。ハードウェアとして記憶回路56は、CD−ROMドライブやDVDドライブ、フラッシュメモリ等の可搬性記憶媒体との間で種々の情報を読み書きする駆動装置等であっても良い。
主制御回路57は、放射線治療装置1の中枢として機能する。主制御回路57は、記憶回路56等に記憶された本実施形態に係る動作プログラムを実行し、当該動作プログラムに従い各部を制御することにより、本実施形態に係る放射線治療を実行する。
本実施形態に係る放射線治療装置1は、マルチリーフ・コリメータ43の台数及び移動方向に応じて複数の実施例が可能である。以下、放射線治療装置1のマルチリーフ・コリメータ43の詳細を実施例1から実施例5に分けて説明する。
(実施例1)
実施例1に係るマルチリーフ・コリメータ43は一台であり、移動方向は放射線の光軸に沿う方向である。
図3は、実施例1に係るマルチリーフ・コリメータ43に係る構成を示す図である。図3に示すように、マルチリーフ・コリメータ43は、上下動支持機構411により、放射線の光軸に沿って移動可能に支持されている。上下動支持機構411は、上記の支持機構41に含まれる。上下動支持機構411としては、例えば、ボールねじや直動ガイド等、マルチリーフ・コリメータ43を直線的に往復運動可能な如何なる機構が用いられても良い。上下動支持機構411には上下動駆動装置371が接続されている。上下動駆動装置371は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従いマルチリーフ・コリメータ43を、放射線の光軸に沿って移動する。上下動駆動装置371としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。
マルチリーフ・コリメータ43は、X線遮蔽物質により形成される複数のリーフを個別に移動可能に支持している。マルチリーフ・コリメータ43にはリーフ駆動装置372が接続されている。リーフ駆動装置372は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従い複数のリーフを個別に移動するためにマルチリーフ・コリメータ43を作動する。リーフ駆動装置372としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。MLC系駆動制御回路21は、予め決定された照射野の形状及び大きさを実現するため、リーフ駆動装置372を制御してマルチリーフ・コリメータ43を構成する複数のリーフを個別に移動させる。この際、MLC系駆動制御回路21は、マルチリーフ・コリメータ43により形成される照射野における複数のリーフの拡大率を調節するために、上下動支持機構411を制御してマルチリーフ・コリメータ43を光軸に沿って移動する。リーフの拡大率は、リーフの実際の大きさに対する、照射野におけるリーフの投影の大きさの比率を意味する。なお、照射野は、放射線の光軸に直交し且つ照射対象の腫瘍を含む平面において放射線が照射される空間領域に規定される。
図4は、実施例1に係るガントリ17のヘッド部の斜視図である。図5は、図4のヘッド部の横断面を示す図である。図4及び図5に示すように、図示しないガントリ17の前端部にはヘッド部61が設けられている。ヘッド部61には放射線を照射する照射器35が収容されている。ヘッド部61には上下動支持機構411が設けられている。上下動支持機構411の他端にはマルチリーフ・コリメータを収容するMLC筐体63が取り付けられている。上下動支持機構411は、照射器35から照射される放射線の光軸ABに沿って移動可能にMLC筐体63を支持している。また、上下動支持機構411は、MLC筐体63を患者Pとの距離を変更可能に支持している。ここで、照射器35から照射される放射線の光軸ABに平行する軸をY軸、Y軸に直交しガントリ17の回転軸に平行する軸をZ軸、Y軸及びZ軸に直交する軸をX軸に規定する。XYZ座標系はZ軸回りに回転する回転座標系を成す。また、便宜的に、Y軸に沿って患者Pから遠ざける方向を上方向、患者Pに接近する方向を下方向と呼ぶことにする。
図5に示すように、上下動支持機構411は、具体的には、円筒部材4111、水平部材4113及びボールねじ4115を有する。ボールねじ4115は、ねじ山が形成されたねじ軸と、当該ねじ軸に螺号するナットと、当該ねじ軸と当該ナットとの間を転動するボールを無限循環する循環部品とを有する。当該ナットには水平部材4113が取り付けられている。ボールねじ4115は、ねじ軸がY軸に平行するようにヘッド部61の内部に固定されている。ボールねじ4115のねじ軸には上下動駆動装置371に接続されている。上下動駆動装置371から動力を受けてボールねじ4115のねじ軸が回転する。当該ねじ軸の回転に連動して水平部材4113が当該ねじ軸に沿って移動する。
図5に示すように、水平部材4113は、ボールねじ4115と円筒部材4111とを接続する支持部材である。水平部材4113の中途部はボールねじ4115(より詳細には、ナット)に取り付けられ、両端は円筒部材4111に取り付けられている。水平部材4113は、放射線が照射される領域より外側に設けられると良い。円筒部材4111は、水平部材4113とMLC筐体63とを接続する、円筒形状を有する支持部材である。円筒部材4111は、当該円筒部材4111の中心軸が光軸ABに略一致するように位置決めされる。円筒部材4111は中空部を通る放射線の散乱線を遮蔽可能な物質により形成される。これにより散乱線が円筒部材4111の外部に漏れ出すことを防止することができる。
マルチリーフ・コリメータ43は、XZ平面における中心点が光軸ABに含まれるようにMLC筐体63内に配置される。マルチリーフ・コリメータ43内の複数のリーフは、同一方向に関して往復移動可能に支持されている。例えば、実施例1において複数のリーフは、X軸方向に関して往復移動可能に支持されているものとする。すなわち、リーフの長軸がX軸を向き、リーフの短軸(以下、リーフ短軸と呼ぶ)がZ軸を向くように配置される。
なお、上記の上下動支持機構411の構造は一例であり、これに限定されない。すなわち、MLC筐体63を光軸ABに沿って上下動可能であれば、上下動支持機構411は如何なる構造であっても良い。
次に、上記構成を有する実施例1に係る放射線治療装置1の動作例について説明する。図6は、マルチリーフ・コリメータ43の上下動に伴うリーフ43Lの拡大率の変化を示す図である。なお、図6は、マルチリーフ・コリメータ43の複数のリーフ43Lを照射野に投影した平面図を示している。図6に示すように、腫瘍RCの形状に合うように複数のリーフ43Lが位置決めされる。図6の左図に示すように、MLC筐体63が患者Pから離れている場合、近接している場合に比して、照射野におけるリーフの拡大率が大きい。そのため、照射対象の腫瘍RC以外の部位にも放射線が照射される虞がある。リーフの拡大率を縮小して照射野の形状及び大きさを腫瘍RCの形状及び大きさにより厳密に合致させるため、MLC系駆動制御回路21は、上下動支持機構411を制御してマルチリーフ・コリメータ43を光軸ABに沿って患者Pに接近させる。
マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向の位置は、例えば、演算回路51のMLC配置決定機能511により決定される。図7は、マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向の位置の決定方法を示す図である。MLC配置決定機能511において演算回路51は、腫瘍RCの大きさDCと照射器35における放射線の発生源SOから腫瘍RCまでの距離LCとの組合せと、マルチリーフ・コリメータ43の開口の大きさDMと発生源SOからマルチリーフ・コリメータ43の開口までの距離LMとの組合せとの相似形に基づいて、マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向の位置、すなわち、距離LMを決定する。腫瘍全体に放射線を照射するため、距離LC、距離LM及び大きさDMによって決まる照射範囲が腫瘍のサイズと同じ又は大きい必要がある。具体的には、下記の(1)式を満たすように距離LMが決定される。なお、マルチリーフ・コリメータ43の開口は、X軸方向に関して対向する2つのリーフの間隔に規定される。すなわち、マルチリーフ・コリメータ43の開口は、Z軸方向位置に応じて異なる値を有することとなる。例えば、マルチリーフ・コリメータ43の開口がZ軸方向位置に応じて異なる値を有しているので、これらZ軸方向位置毎の開口値の最大値が開口の大きさDMに設定される。なお、ここでは腫瘍RCのX軸方向の大きさ及び開口の大きさDMによって距離LMを決定している。しかし、腫瘍RCのZ軸方向の大きさ及び開口の大きさDN、さらにMLC筐体63と患者との距離に基づいて総合的に設定されることが望ましい。
(LC/LM)*DM≧DC ・・・(1)
マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向の位置を決定するにあたり、更に照射対象の腫瘍RC周辺に存在する正常組織に対する放射線の許容影響度及びMLC筐体63と患者等との干渉リスクが考慮されても良い。この場合、演算回路51は、照射対象の腫瘍RCの大きさと腫瘍RCの周辺に存在する正常組織に対する放射線の許容影響度と、MLC筐体63と患者等との干渉リスクとに基づいて、マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向位置を決定する。許容影響度は、当該組織に照射されることが許される放射線の線量により規定される。許容影響度は、患者P及び組織毎に予め経験的に定められている。腫瘍RCの周辺に存在する正常組織に対する許容影響度が小さいほど、照射野形状を腫瘍RCの形状に厳密に合致させる必要があるので、可能な限り距離LMが長く、すなわち、マルチリーフ・コリメータ43が患者Pに近接していることが期待される。一方、マルチリーフ・コリメータ43が患者に近接していると、MLC筐体63と患者との干渉リスクが大きくなるので、式(1)に加えその2つを追加で考慮し、マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向位置が決定される。
ここで、演算回路51は、腫瘍RCの大きさが第1の閾値より大きく、且つ腫瘍RCの周辺に存在する正常組織に対する放射線の許容影響度が第2の閾値より小さい場合、腫瘍RCへの放射線の照射回数を複数回に決定する。第1の閾値は、マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向位置毎に規定されている。第1の閾値は、当該Y軸方向位置においてマルチリーフ・コリメータ43により形成可能な照射野の最大の大きさに規定される。第2の閾値は、患者P及び組織毎に規定されている。すなわち、腫瘍RCの周辺に存在する正常組織の許容影響度が第2の閾値より小さい場合、照射野形状を腫瘍RC形状に厳密に合致させるため距離LMを長くする必要があるが、腫瘍RCの大きさが第1の閾値より大きい場合、一回の放射線照射では腫瘍RCの全範囲に照射させることはできない。そのため、複数回の放射線照射により腫瘍RCの全範囲が照射されるように、演算回路51は、各照射回の照射野を決定する。例えば、照射回数が2回の場合、1回目の照射野は腫瘍RCの半分に放射線が照射されるように設定され、2回目の照射野は残りの半分に照射されるように設定される。
上記の説明においてマルチリーフ・コリメータ43のY軸方向位置及び照射回数は演算回路51により決定されるものとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。例えば、治療計画装置5により決定されても良い。なお、マルチリーフ・コリメータ43のY軸方向位置及び照射回数は演算回路51により決定される場合、治療計画装置5は、通常のマルチリーフ・コリメータ(すなわち、上下動不能なマルチリーフ・コリメータ)を前提として照射野及び開口の大きさを決定する。そして演算回路51は、決定された照射野及び開口の大きさに最適なマルチリーフ・コリメータ43のY軸方向位置及び照射回数を、上記アルゴリズムにより決定する。このように決定されたY軸方向位置及び照射回数のもとに放射線治療が行われた場合、演算回路51は、実際の被曝線量を治療レコードに反映すると良い。実際の被曝線量は、各種の線量計により計測されても良いし、演算回路51等により放射線の照射条件及び照射時間等に基づいて計算されても良い。これにより患者Pの被曝量をより厳密に管理することができる。
上記の説明の通り、実施例1に係る放射線治療装置1は、照射器35、マルチリーフ・コリメータ43、上下動支持機構411及びMLC系駆動制御回路21を有する。照射器35は、放射線を照射する。マルチリーフ・コリメータ43は、照射器35から照射された放射線の照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフ43Lを有する。上下動支持機構411は、マルチリーフ・コリメータ43を放射線の光軸ABに沿って移動可能に支持する。MLC系駆動制御回路21は、照射野における複数のリーフ43Lの拡大率を調節するために上下動支持機構411を制御してマルチリーフ・コリメータ43を光軸ABに沿って上下動する。
上記の構成により、実施例1に係る放射線治療装置1は、上下動支持機構411を有することにより、マルチリーフ・コリメータ43のリーフ43Lの拡大率を調節することができる。リーフ43Lの拡大率を調節することにより、結果的に、リーフ43Lの分解能を調節することが可能になる。従って、より精密に照射野の形状及び大きさを腫瘍の形状及び大きさに合致させることができ、ひいては、周辺の正常組織への被曝量を低減することができる。
精密に照射野の形状及び大きさを腫瘍の形状及び大きさに合致させるための方法として、高精細マルチリーフ・コリメータやマイクロ・マルチリーフ・コリメータを、マルチリーフ・コリメータの後段に搭載することも考えられる。しかしながら、高精細マルチリーフ・コリメータやマイクロ・マルチリーフ・コリメータは、高額且つ操作が複雑である。また、高精細マルチリーフ・コリメータやマイクロ・マルチリーフ・コリメータがカバーする領域は腫瘍領域の中心部分のみである。実施例1によれば、上下動支持機構411によりマルチリーフ・コリメータ43の拡大率を調節することができるので、高精細マルチリーフ・コリメータやマイクロ・マルチリーフ・コリメータ無しに精密に照射野の形状及び大きさを腫瘍の形状及び大きさに合致させることができる。例えば、図7において、リーフ43Lの実際の幅を3.5mm、マルチリーフ・コリメータ43が初期位置にある時のLMを350mm、LCを1000mmとしたとき、マルチリーフ・コリメータ43を更に患者Pに350mm接近させることにより、体表面上(図7の場合は腫瘍RC上)の1枚のリーフ43Lの幅は10mmから5mmに縮小させることができ、高精細マルチリーフ・コリメータと同等の性能を実現することができる。また、マルチリーフ・コリメータ43を患者Pから離すことにより、マイクロ・マルチリーフ・コリメータでは実現できない大照射野を形成することが可能になる。
(実施例2)
実施例2に係るマルチリーフ・コリメータ43は一台であり、移動方向は放射線の光軸に沿う方向及び当該光軸に水平に直交する方向である。以下、実施例2に係る放射線治療装置について説明する。なお以下の説明において、実施例1と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図8は、実施例2に係るマルチリーフ・コリメータ43に係る構成を示す図である。図8に示すように、マルチリーフ・コリメータ43は、上下動支持機構411により、放射線の光軸に沿って移動可能に支持されている。上下動支持機構411は、上記の支持機構41に含まれる。上下動支持機構411としては、例えば、ボールねじや直動ガイド等、マルチリーフ・コリメータ43を直線的に往復運動可能な如何なる機構が用いられても良い。上下動支持機構411には上下動駆動装置371が接続されている。上下動駆動装置371は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従いマルチリーフ・コリメータ43を、放射線の光軸に沿って移動する。上下動駆動装置371としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。
マルチリーフ・コリメータ43は、X線遮蔽物質により形成される複数のリーフを個別に移動可能に支持している。マルチリーフ・コリメータ43にはリーフ駆動装置372が接続されている。リーフ駆動装置372は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従い複数のリーフを個別に移動するためにマルチリーフ・コリメータ43を作動する。リーフ駆動装置372としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。MLC系駆動制御回路21は、予め決定された照射野の形状及び大きさを実現するため、リーフ駆動装置372を制御してマルチリーフ・コリメータ43を構成する複数のリーフを個別に移動させる。この際、MLC系駆動制御回路21は、マルチリーフ・コリメータ43により形成される照射野における複数のリーフの拡大率を調節するために、上下動支持機構411を制御してマルチリーフ・コリメータ43を光軸に沿って移動する。
図8に示すように、マルチリーフ・コリメータ43は、上下動支持機構411に加え、左右動支持機構413により、マルチリーフ・コリメータ43のリーフ短軸に沿って移動可能に支持されている。左右動支持機構413は、上記の支持機構41に含まれる。左右動支持機構413としては、例えば、ボールねじや直動ガイド等、マルチリーフ・コリメータ43を直線的に往復運動可能な如何なる機構が用いられても良い。左右動支持機構413には左右動駆動装置373が接続されている。左右動駆動装置373は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従いマルチリーフ・コリメータ43を、リーフ短軸に沿って移動する。左右動駆動装置373としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。MLC系駆動制御回路21は、照射器35から放射線を複数回に亘り照射する場合、当該複数回のうちの第1の照射回と第2の照射回とにおいてマルチリーフ・コリメータ43の略中心が直交軸に沿って異なる位置に配置されるように左右動駆動装置373を制御する。
図9は、実施例2に係るガントリ17のヘッド部61の斜視図である。図10は、図9のヘッド部61の横断面を示す図である。図11は、図9のヘッド部61の縦断面を示す図である。図9、図10及び図11に示すように、図示しないガントリ17の前端部にはヘッド部61が設けられている。ヘッド部61には上下動支持機構411が設けられている。上下動支持機構411の他端には左右動支持機構413が取り付けられている。左右動支持機構413は、マルチリーフ・コリメータ43のリーフ短軸に沿って移動可能にMLC筐体63を移動可能に支持している。典型的には、リーフ短軸は、XZ平面内の任意の方向に設けられる。実施例2においてリーフ短軸はZ軸に平行であるとする。上下動支持機構411は、左右動支持機構413とMLC筐体63とを患者Pとの距離を変更可能に支持している。
図10及び図11に示すように、上下動支持機構411は、具体的には、円筒部材4111、水平部材4113及びボールねじ4115を有する。ボールねじ4115は、ねじ山が形成されたねじ軸と、当該ねじ軸に螺号するナットと、当該ねじ軸と当該ナットとの間を転動するボールを無限循環する循環部品とを有する。当該ナットには水平部材4113が取り付けられている。ボールねじ4115は、ねじ軸がY軸に平行するようにヘッド部61の内部に固定されている。ボールねじ4115のねじ軸には上下動駆動装置371に接続されている。上下動駆動装置371から動力を受けてボールねじ4115のねじ軸が回転する。当該ねじ軸の回転に連動して水平部材4113が当該ねじ軸に沿って移動する。
図10及び図11に示すように、水平部材4113は、ボールねじ4115と円筒部材4111とを接続する支持部材である。水平部材4113の中途部はボールねじ4115(より詳細には、ナット)に取り付けられ、両端は円筒部材4111に取り付けられている。水平部材4113は、放射線が照射される領域より外側に設けられると良い。円筒部材4111は、水平部材4113と左右動支持機構413とを接続する、円筒形状を有する支持部材である。円筒部材4111は、当該円筒部材4111の中心軸が光軸ABに略一致するように位置決めされる。円筒部材4111は中空部を通る放射線の散乱線を遮蔽可能な物質により形成される。これにより散乱線が円筒部材4111の外部に漏れ出すことを防止することができる。
図10及び図11に示すように、左右動支持機構413は、支持台4131と直動ガイド4133とを有する。支持台4131の表面には円筒部材4111が取り付けられ、背面にはMLC筐体63が取り付けられている。更に支持台4131のうちの照射器35から照射される放射線が透過する部分が取り除かれても良い。例えば、支持台4131は、放射線が透過する領域は中空となっている。支持台4131とMLC筐体63との間には直動ガイド4133が取り付けられている。直動ガイド4133は、複数の歯が形成された歯車と当該歯車の歯に噛み合う複数の歯が形成されたガイド部材とを有する。当該ガイド部材は支持台4131との接触面に取り付けられる。左右動駆動装置373による当該歯車の回転に連動して支持台4131が当該ガイド部材に沿って移動する。より詳細には、直動ガイド4133は、マルチリーフ・コリメータ43の各リーフの短軸方向にMLC筐体63を移動可能に配置される。
次に、上記構成を有する実施例2に係る放射線治療装置の動作例について説明する。図12は、マルチリーフ・コリメータ43の左右動に伴う照射野の変化を示す図である。なお、図12は、マルチリーフ・コリメータ43の複数のリーフ43Lを照射野に投影した平面図を示している。なお、以下の実施例においては、治療計画において照射回数が2回に決定された場合を例に挙げる。1回目の放射線照射について、照射野形状が腫瘍RCの形状に合うように複数のリーフ43Lが位置決めされる。2回目の照射においてマルチリーフ・コリメータ43は、リーフ幅DLよりも狭い距離DSだけ異なるZ軸方向位置に配置される。距離DSは、例えば、リーフ幅DLの半分に設定されると良い。なお、リーフ幅は、リーフ43Lの短軸方向に関する長さに規定される。2回目の放射線照射について、当該Z軸方向位置における照射野形状が腫瘍RCの形状に合うように複数のリーフ43Lが位置決めされる。1回目と2回目とにおいてマルチリーフ・コリメータ43を、リーフ幅DLよりも狭い距離DSだけ、リーフ43Lの短軸方向に平行するZ軸方向に関して異なる位置に配置する。これにより、1回目において照射野に含まれている正常組織部分を、2回目において照射野に含めないことが可能になる。すなわち、実施例2によれば、複数の照射回に亘り、照射野周辺の高い線量部分を低減することができる。
なお、上記説明においては、第1回目と第2回目とでマルチリーフ・コリメータ43を、リーフ43Lのリーフ短軸方向にずらすものとした。本実施例はこれに限定されない。すなわち、複数の放射線照射において如何なる照射番目においてマルチリーフ・コリメータ43をずらして配置しても良い。また、マルチリーフ・コリメータ43を、3回以上の放射線を照射する場合において互いにリーフ短軸方向にずらしても良い。
また、上記実施例2は、治療計画において決定された照射回数と同数の照射回数にて放射線照射をする場合を例に挙げた。しかしながら、本実施例はこれに限定されない。すなわち、治療計画において照射回数が1回と決定された場合、2回以上の照射回数に分散しても良い。この場合、演算回路51は、各照射回当たりの線量を、初期の線量を増加回数分で除した線量値に修正すると良い。これにより、治療計画において1回照射予定の場合であっても照射野周辺部位の線量の平坦化が可能になる。
更に、上記実施例2は、同一方向から同一位置への照射を分割し、複数回の照射でマルチリーフ・コリメータ43をリーフ43Lの短軸方向にずらす場合を例に挙げた。しかしながら、本実施例はこれに限定されない。すなわち、MLC系駆動制御回路21は、左右動支持機構413を制御し、同一方向から同一位置への照射期間中にマルチリーフ・コリメータ43をリーフ43Lの短軸方向にずらしても良い。具体的には、同一方向から同一位置へ所望の線量を投与するため0.5秒の照射が必要だとする。この0.5秒の照射期間中、MLC系駆動制御回路21は、マルチリーフ・コリメータ43をリーフ43Lの短軸方向にリーフ幅DLだけずらしても良い。この時、MLC系駆動制御回路21は、複数のリーフ43Lを、マルチリーフ・コリメータ43の位置に応じて腫瘍RCの形状に合うように位置決めされる。照射を分割する方法は、治療時間が長くなるというデメリットがあったが、この方法ではそのデメリットが解消できる。但し、MLC系駆動制御回路21は、放射線照射とマルチリーフ・コリメータ43のリーフ43Lの短軸方向への移動、更に複数のリーフ43Lによる最適な照射野形成を同期して、且つ精度良く実現する必要がある。
上記の説明の通り、実施例2に係る放射線治療装置1は、照射器35、マルチリーフ・コリメータ43、左右動支持機構413及びMLC系駆動制御回路21を含む。照射器35は、放射線を照射する。マルチリーフ・コリメータ43は、照射器35から照射された放射線の照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフを有する。左右動支持機構413は、マルチリーフ・コリメータ43をリーフ短軸に沿って移動可能に支持する。MLC系駆動制御回路21は、照射器35から放射線を複数回に亘り照射する場合、あるいは放射線を照射する期間中、マルチリーフ・コリメータ43がリーフ短軸に沿って異なる位置に配置されるように左右動支持機構413を制御する。
上記の構成により、マルチリーフ・コリメータ43を当該リーフ短軸に沿って異なる位置に配置することにより、全体として照射野周辺の正常組織への被曝量を低減することができる。
(実施例3)
実施例3に係るマルチリーフ・コリメータ43は二台であり、一方のマルチリーフ・コリメータ43は固定であり、他方のマルチリーフ・コリメータ43の移動方向は放射線の光軸に沿う方向及び当該光軸に直交する面方向である。以下、実施例3に係る放射線治療装置について説明する。なお以下の説明において、実施例1及び2と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図13は、実施例3に係るマルチリーフ・コリメータ43に係る構成を示す図である。図13に示すように、実施例3に係るマルチリーフ・コリメータ43は、マルチリーフ・コリメータ43−1とマルチリーフ・コリメータ43−2とを有する。マルチリーフ・コリメータ43−2は、上下動及び左右動可能にヘッド部に支持され、マルチリーフ・コリメータ43−1は、ヘッド部に固定されている。以下、マルチリーフ・コリメータ43−2を可動マルチリーフ・コリメータと呼び、マルチリーフ・コリメータ43−1を固定マルチリーフ・コリメータと呼ぶことにする。
図13に示すように、可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、上下動支持機構411−2により、放射線の光軸に沿って移動可能に支持されている。上下動支持機構411−2は、上記の支持機構41に含まれる。上下動支持機構411−2としては、例えば、ボールねじや直動ガイド等、可動マルチリーフ・コリメータ43−2を直線的に往復運動可能な如何なる機構が用いられても良い。上下動支持機構411−2には上下動駆動装置371−2が接続されている。上下動駆動装置371−2は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従い可動マルチリーフ・コリメータ43−2を、放射線の光軸に沿って移動する。上下動駆動装置371−2としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。
可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、X線遮蔽物質により形成される複数のリーフを個別に移動可能に支持している。可動マルチリーフ・コリメータ43−2にはリーフ駆動装置372−2が接続されている。リーフ駆動装置372−2は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従い複数のリーフを個別に移動するために可動マルチリーフ・コリメータ43−2を作動する。リーフ駆動装置372−2としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。
図13に示すように、可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、左右動支持機構413−2により、放射線の光軸に直交する面に沿って移動可能に支持されている。左右動支持機構413−2は、上記の支持機構41に含まれる。左右動支持機構413−2としては、例えば、ボールねじや直動ガイド等、可動マルチリーフ・コリメータ43−2を直線的に往復運動可能な如何なる機構が用いられても良い。左右動支持機構413−2には左右動駆動装置373−2が接続されている。左右動駆動装置373−2は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従い可動マルチリーフ・コリメータ43−2を、直交面に沿って移動する。左右動駆動装置373−2としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。
固定マルチリーフ・コリメータ43−1は、X線遮蔽物質により形成される複数のリーフを個別に移動可能に支持している。固定マルチリーフ・コリメータ43−1にはリーフ駆動装置372−1が接続されている。リーフ駆動装置372−1は、MLC系駆動制御回路21からの指令に従い複数のリーフを個別に移動するために固定マルチリーフ・コリメータ43−1を作動する。リーフ駆動装置372−1としては、サーボモータ等の如何なるモータが用いられても良い。MLC系駆動制御回路21は、予め決定された照射野の形状及び大きさを実現するため、リーフ駆動装置372−1とリーフ駆動装置372−2とを制御して固定マルチリーフ・コリメータ43−1を構成する複数のリーフと可動マルチリーフ・コリメータ43−2を構成する複数のリーフとを個別に移動させる。この時、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とで形成される照射野が、腫瘍RCの形状に外接し、且つその差異が最も小さくなるように、MLC系駆動制御回路21は上下動駆動装置371−2と左右動駆動装置373−2とを制御し、可動マルチリーフ・コリメータ43−2のY軸方向位置(上下動位置)及びXZ方向位置(水平動位置)を適切に設定する。
図14は、実施例3に係るガントリ17のヘッド部61の斜視図である。図15は、図14のヘッド部61の横断面を示す図である。図16は、図14のヘッド部61の縦断面を示す図である。図14、図15及び図16に示すように、図示しないガントリ17の前端部にはヘッド部61が設けられている。ヘッド部61には、固定マルチリーフ・コリメータ43−1を収容する固定MLC筐体65が取り付けられている。
固定MLC筐体65には上下動支持機構411が設けられている。上下動支持機構411の他端には左右動支持機構413が取り付けられている。左右動支持機構413は、照射器35から照射される放射線の光軸ABに直交する直交面に沿って移動可能にMLC筐体63を支持している。上下動支持機構411は、左右動支持機構413と、可動マルチリーフ・コリメータ43−2を収容する可動MLC筐体63とを患者Pとの距離を変更可能に支持している。
図15及び図16に示すように、上下動支持機構411は、具体的には、円筒部材4111−2、水平部材4113−2及びボールねじ4115−2を有する。ボールねじ4115−2は、ねじ山が形成されたねじ軸と、当該ねじ軸に螺号するナットと、当該ねじ軸と当該ナットとの間を転動するボールを無限循環する循環部品とを有する。当該ナットには水平部材4113−2が取り付けられている。ボールねじ4115−2は、ねじ軸がY軸に平行するように固定MLC筐体65の内部に固定されている。ボールねじ4115−2のねじ軸には上下動駆動装置371−2に接続されている。上下動駆動装置371−2から動力を受けてボールねじ4115−2のねじ軸が回転する。当該ねじ軸の回転に連動して水平部材4113−2が当該ねじ軸に沿って移動する。
図15及び図16に示すように、水平部材4113−2は、ボールねじ4115−2と円筒部材4111−2とを接続する支持部材である。水平部材4113−2の中途部はボールねじ4115−2(より詳細には、ナット)に取り付けられ、両端は円筒部材4111−2に取り付けられている。水平部材4113−2は、放射線に対する透過性が良好な物質により形成される。更に水平部材4113−2のうちの照射器35から照射される放射線が透過する部分が取り除かれても良い。円筒部材4111−2は、水平部材4113−2と左右動支持機構413−2とを接続する、円筒形状を有する支持部材である。円筒部材4111−2は、当該円筒部材4111−2の中心軸が光軸ABに略一致するように位置決めされる。円筒部材4111−2は中空部を通る放射線の散乱線を遮蔽可能な物質により形成される。これにより散乱線が円筒部材4111−2の外部に漏れ出すことを防止することができる。
図15及び図16に示すように、左右動支持機構413は、支持台4131−2と直動ガイド4133−2とを有する。支持台4131−2の表面には円筒部材4111−2が取り付けられ、背面には可動MLC筐体63が取り付けられている。支持台4131−2は、放射線に対する透過性が良好な物質により形成される。更に支持台4131−2のうちの照射器35から照射される放射線が透過する部分が取り除かれても良い。支持台4131−2の側部には直動ガイド4133−2が取り付けられている。直動ガイド4133−2は、側面に複数の歯が形成された歯車と当該歯車の歯に噛み合う複数の歯が形成されたガイド部材とを有する。当該ガイド部材は支持台4131−2の側面に取り付けられる。左右動駆動装置373−2による当該歯車の回転に連動して支持台4131−2が当該ガイド部材に沿って移動する。
図15及び図16に示すように、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とは、機械的な原点として、固定マルチリーフ・コリメータ43−1のXZ平面での略中心と可動マルチリーフ・コリメータ43−2のXZ平面での略中心とが光軸ABに一致するように配置される。可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、左右動支持機構413により当該原点を基準にXZ平面内において移動される。
なお、上記の説明において可動マルチリーフ・コリメータ43−2を上下動可能に支持する上下動支持機構411と左右動可能に支持する左右動支持機構413とは別体であるとした。しかしながら、本実施形態はこれに限定されない。すなわち、上下動支持機構411と左右動支持機構413−2との代わりに、可動マルチリーフ・コリメータ43−2を上下動可能且つ左右動可能な単一の機構が用いられても良い。
次に、上記構成を有する実施例3に係る放射線治療装置の動作例について説明する。まず、演算回路51は、実施例1と同様のアルゴリズムにより、可動マルチリーフ・コリメータ43−2のY軸方向位置を決定する。次に、演算回路51は、固定マルチリーフ・コリメータ43−1で形成される照射野の中で、腫瘍RCの形状との差異が最も大きい部分を特定する。当該部分は、例えば、治療計画画像に含まれる腫瘍RCの範囲と固定マルチリーフ・コリメータ43−1の照射野とに基づいて特定されても良いし、入力回路55を介してユーザにより指定されても良い。次に演算回路51は、特定された当該部分のXY方向位置を、可動マルチリーフ・コリメータ43−2のXY方向位置に決定する。そして演算回路51は、当該部分において腫瘍RCの形状と固定マルチリーフ・コリメータ43−1の照射野の形状との差異を小さくする照射野を形成するよう、可動マルチリーフ・コリメータ43−2の各リーフのXY方向位置を決定する。
図17は、可動マルチリーフ・コリメータ43−2の左右動に伴う照射野の変化を示す図である。なお、図17は、固定マルチリーフ・コリメータ43−1の複数のリーフ43L−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2の複数のリーフ43L−2とを照射野に投影した平面図を示している。図17に示すように、固定マルチリーフ・コリメータ43−1は、可動マルチリーフ・コリメータ43−2に比して、照射器35に近い側に取り付けられているため、リーフ43L−1の拡大率が大きい。従って固定マルチリーフ・コリメータ43−1は、大まかな照射野を形成するために用いられ、可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、複雑な照射野を形成するために用いられる。なお、リーフ43L−1とリーフ43L−2との幅(リーフ短軸方向すなわちZ軸方向に関する各リーフの距離)は同一値DLに設計されているものとする。
図17(a)は、可動マルチリーフ・コリメータ43−2の直交面位置が初期位置にある場合、照射野形状が腫瘍RCの形状に合うように、固定マルチリーフ・コリメータ43−1の複数のリーフ43L−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2の複数のリーフ43L−2各々の位置が決定される。しかし腫瘍RCの周辺の正常組織(白く見える部分)にも強い放射線が照射されてしまう。図17(b)は、強い放射線が照射される正常組織領域を極力小さくするよう、可動マルチリーフ・コリメータ43−2のXZ方向位置を最適化した場合である。二台のマルチリーフ・コリメータ43−1及び43−2により照射野を形成する場合、固定マルチリーフ・コリメータ43−1が広い照射野形状をカバーし、さらに可動マルチリーフ・コリメータ43−2が複雑な照射野形状を形成する。このため、一台の可動マルチリーフ・コリメータ43により照射野を形成する場合に比して、広範囲の照射野形状を形成することができ、また照射野形状を精密に腫瘍RC形状に合わせることができるので、被曝量及び治療時間の低減を同時に実現することができる。
上記の説明の通り、実施例3に係る放射線治療装置1は、照射器35、固定マルチリーフ・コリメータ43−1、可動マルチリーフ・コリメータ43−2、固定MLC筐体65、上下動支持機構411及びMLC系駆動制御回路21を含む。照射器35は、放射線を照射する。固定マルチリーフ・コリメータ43−1は、照射器35から照射された放射線の照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフ43L−1を有する。可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、照射器35から照射された放射線の照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフ43L−2を有する。固定MLC筐体65は、固定マルチリーフ・コリメータ43−1を照射器35に対し固定し、可動マルチリーフ・コリメータ43−2を固定マルチリーフ・コリメータ43−1の前方において光軸ABに沿って、更に光軸ABに直交する直交面に沿って移動可能に支持する。MLC系駆動制御回路21は、照射野におけるリーフ43L−2の拡大率を調節するために上下動支持機構411を制御して可動マルチリーフ・コリメータ43−2を光軸ABに沿って上下動し、光軸ABに直交する直交面に沿って移動する。
上記の構成により、実施例3に係る放射線治療装置1は、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とを有することにより、固定マルチリーフ・コリメータ43−1を照射野の全体的形成に用い、可動マルチリーフ・コリメータ43−2を照射野の精密な形成に用いることができる。従って、一台のマルチリーフ・コリメータを搭載する場合に比して、より精密に照射野の形状及び大きさを腫瘍の形状及び大きさに合致させることができ、ひいては、被曝量を低減することができる。
(実施例4)
実施例4は実施例3の変形例である。以下、実施例4に係る放射線治療装置について説明する。なお以下の説明において、実施例1−3と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図18は、実施例4に係るガントリ17のヘッド部61の横断面と、固定MLC筐体65に収容された固定マルチリーフ・コリメータ43−1の複数のリーフ43L−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2の複数のリーフ43L−2を照射野に投影した平面図を示している。図18に示すように、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とは、リーフ43L−1とリーフ43L−2とが同一方向を向くように配置される。図18においては、例えば、リーフ43L−1とリーフ43L−2との長軸がX軸に平行するように固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とが固定MLC筐体65と可動MLC筐体63とにそれぞれ配置されている。
図18に示すように、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とは、リーフ43L−1とリーフ43L−2との幅(リーフの短軸幅)よりも短い距離だけ、当該Z軸方向にずらして固定MLC筐体65とMLC筐体63とにそれぞれ配置されている。例えば、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とは、リーフの短軸幅の半分だけ、Z軸方向にずらして配置される。これにより、より精密に照射野形状を腫瘍RC形状に合致させることができる。また、これに伴い被曝量を低減することができる。
なお、実施例4において、可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、必ずしも上下動及び左右動可能に支持されている必要はない。すなわち、可動マルチリーフ・コリメータ43−2は第2の固定マルチリーフ・コリメータ43−2であっても良い。第2の固定マルチリーフ・コリメータ43−2のY軸方向位置は、固定マルチリーフ・コリメータ43−1よりも患者P側であれば任意の位置に設置可能である。この場合、固定マルチリーフ・コリメータ43−1のリーフ拡大率と第2の固定マルチリーフ・コリメータ43−2の腫瘍RCの中心位置におけるリーフ拡大率とが同一となるように、固定マルチリーフ・コリメータ43−1のリーフ幅と第2の固定マルチリーフ・コリメータ43−2のリーフ幅との比率が設計されると良い。さらに固定マルチリーフ・コリメータ43−1と第2の固定マルチリーフ・コリメータ43−2のZ軸方向位置は、腫瘍RCの中心位置においてリーフ短軸方向の幅の1/2だけずらして設置される。
上記の説明の通り、実施例4に係る放射線治療装置1は、照射器35、固定マルチリーフ・コリメータ43−1、可動マルチリーフ・コリメータ43−2、可動MLC筐体63及び固定MLC筐体65を有する。照射器35は、放射線を照射する。固定マルチリーフ・コリメータ43−1は、照射器35から照射された放射線の照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフ43L−1を有する。可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフ43L−2を有する。可動MLC筐体63と固定MLC筐体65とは、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とを、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とが光軸AB及び光軸ABに直交する直交面に沿って移動可能に支持する。
上記の構成により、実施例4に係る放射線治療装置1は、照射回数を増やす事無く、精密に照射野形状を腫瘍RC形状に合致させることができ、ひいては、伴い被曝量を低減することができる。
(実施例5)
実施例5は実施例3及び4の変形例である。以下、実施例5に係る放射線治療装置について説明する。なお以下の説明において、実施例1−4と略同一の機能を有する構成要素については、同一符号を付し、必要な場合にのみ重複説明する。
図19は、実施例5に係るガントリ17のヘッド部61の横断面と、固定MLC筐体65に収容された固定マルチリーフ・コリメータ43−1の複数のリーフ43L−1と、可動MLC筐体63に収容された可動マルチリーフ・コリメータ43−2の複数のリーフ43L−2を照射野に投影した平面図を示している。図19に示すように、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とは、リーフ43L−1とリーフ43L−2とが異なる方向を向くように配置される。図19においては、例えば、リーフ43L−1とリーフ43L−2との長軸が直交するように固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とが配置されている。具体的には、リーフ43L−1の長軸は、X軸に平行し、リーフ43L−2の長軸は、Z軸に平行する。上記配置の場合、リーフ43L−1とリーフ43L−2との長軸が同一方向を向く配置に比して、リーフ43L−1及びリーフ43L−2の配置方向の同一性に起因するフィッティングムラを解消することができる。すなわち、リーフ43L−1とリーフ43L−2との長軸が同一方向を向く場合、リーフ43L−1とリーフ43L−2とのリーフ短軸方向に関する照射野形状と腫瘍RC形状との合致精度は、マルチリーフ・コリメータ一台の場合と同等である。リーフ43L−1とリーフ43L−2との長軸が直交する場合、一方のリーフの短軸が他方のリーフの長軸を向くことにある。この配置によれば、一方のリーフでは低い合致精度しか発揮し得ない方向に関し、他方のリーフでその合致精度を補うことができる。従って上記配置により、より精密に照射野形状を腫瘍RC形状に合致させることができ、また、これに伴い被曝量を低減することができる。
なお、実施例5において、可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、必ずしも上下動及び左右動可能に支持されている必要はない。すなわち、可動マルチリーフ・コリメータ43−2は第2の固定マルチリーフ・コリメータ43−2であっても良い。
上記の説明の通り、実施例5に係る放射線治療装置1は、照射器35、固定マルチリーフ・コリメータ43−1、固定MLC筐体65、可動マルチリーフ・コリメータ43−2及び可動MLC筐体63を有する。照射器35は、放射線を照射する。固定マルチリーフ・コリメータ43−1は、照射器35から照射された放射線の照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフ43L−1を有する。可動マルチリーフ・コリメータ43−2は、照射野を形成するため個別に移動可能な複数のリーフ43L−2を、リーフ43L−1の直交方向に有する。可動MLC筐体63と固定MLC筐体65とは、固定マルチリーフ・コリメータ43−1と可動マルチリーフ・コリメータ43−2とを、複数のリーフ43L−1と複数のリーフ43L−2とが互いに直交して配置されるように支持する。
上記の構成により、実施例5に係る放射線治療装置1は、精密に照射野形状を腫瘍RC形状に合致させることができ、ひいては、伴い被曝量を低減することができる。
かくして、上記の少なくとも一つの実施例によれば、被曝量を低減することができる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。