JP2018096354A - ルーツポンプ - Google Patents
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Abstract
Description
そこで、微細気泡を含む水を移送可能なポンプとして、容積型回転ポンプが用いられている。当該容積型回転ポンプは、吸込水量に対して50%以上の吸込空気量となるほどの空気を混入させた場合であっても自吸能力が低下しない。これによって、上記のような、汚水移送の際に空気を混入させて水中へ酸素を直接供給し、DO値を高める水質改善方法を行うことができる。これによって、河川や閉鎖性水域の底層へ堆積する汚濁物質、有機物を分解する好気性微生物へ酸素を供給して生育環境を整えたり、また嫌気環境下で堆積した汚濁物質等から溶出するリンやアンモニアの濃度を抑制したりして、汚染された閉鎖性水域等の水質を改善する処理が行われている。
前記ロータ室に回転可能に収納される一対のルーツロータとを有するルーツポンプであって、
前記ロータ室の内壁面に、複数本の溝を設け、
前記ルーツロータが回転するとき、
当該ルーツロータのロータ頂部が近接対向する前記溝の開口面上を横切って通過するようにしたことを特徴とする。
ここで、ルーツロータが回転するとき、ルーツポンプに吸い込まれた汚水と空気が、ロータ室内で撹拌混合される。そして、ロータ頂部が溝の開口面上を横切るとき、ルーツロータが回転する方向に沿った正方向のロータ面をロータ正面とし、回転する方向に対して逆方向のロータ面をロータ背面とすると、ロータ正面側では、押しのけられた水が溝内部に流れ込んで渦巻き、溝内部で乱流が発生する。そして、ロータ頂部が溝の開口面上を通り過ぎると、ロータ背面側では、吸込負圧が発生し、発生した乱流と相まって局所的な真空部分が発生する。当該真空部分が周囲の水圧によって圧潰されると、瞬間的にロータ室内の水に含まれている気泡が微細化し、当該気泡中の酸素が水に溶解される。
これによって、ケーシング内の水へ多くの酸素を溶け込ませることができ、排水中の溶存酸素濃度を高めることができる。すなわち、本発明に係るルーツポンプは、水中の溶存酸素濃度が低下することによって引き起こされていた水質汚染を改善することができる。さらに本発明に係るルーツポンプによれば、複数の溝を設けたことによって、水中へ酸素を効率よく短時間で溶かし込むことができるため、容易に溶存酸素濃度を高めることができ、水質改善効果を高めることができる。
そして好ましくは、ルーツロータを二葉式ルーツロータとした。そのため、3つのロータ部を有する三葉式ルーツロータ、或いは特許文献1に記載されているような6葉式ロータよりも加工精度を高くすることができる。また、二葉式ルーツロータは、ルーツロータ同士又はロータとロータ室のクリアランスの調整を容易に行うことができ、組み付けを容易に行うことができる。
ケーシング11は、図2に示すように、その内部が、ロータ室12、導水路13、排水路14に区画形成されている。
ケーシング11の正面には、図1に示すように、導水路13に連接する吸込口15が開口している。
ケーシング11の上方には、図2に示すように、吸込口15の近傍に導水路13に接続する吸気管22が立設されている。さらに、ケーシング11の上方には、図2に示すように、上面開口した吐出口16が排水路14に連接して設けられている。
ロータ室12は、導水路13を介して吸込口15に、排水路14を介して吐出口16に連通するように形成されている。ロータ室12には、一対のルーツロータ30a,30bが回転可能に収納されている。
吐出口16は、図6に示す排水管57を接続可能に形成されている。吐出口16の近傍には、呼び水を給水するための給水口18が形成されている。給水口18には、給水栓18aが嵌合されている。また給水した呼び水がケーシング11内で偏らないように導水路と排水路を隔てる壁面には貫通孔19が形成されている。
ケーシング11の底面近傍には、導水路13側、排水路14側それぞれに排水口20,21が形成されている。排水口20,21は、排水栓20a,21aが嵌合されている。ケーシング11の底面近傍の導水路13側、排水路14側にそれぞれ排水口20,21を設けたことによって、メンテナンスの際に、ケーシング11から容易に水を抜くことができる。
ロータ室12は、図3に示すように、その内壁面12aに複数本の溝25が形成されている。
溝25の長さ方向は、図1に示すように、ロータ室12に収納されたルーツロータ30a,30bのロータ軸31a,31b(図2参照)方向に沿って延伸している。溝25の幅方向に沿った断面は、図2及び図3に示すように、矩形状に形成されている。本実施例に係る溝25は、幅5mm、深さ2mm程度の矩形状であることがが好ましい。
なお、溝25の幅方向に沿った断面視形状はこれらに限定されるものではなく、たとえば、図4に示したロータ室12Aの他の実施例に表したように、断面視形状が三角形状となるような溝25Aとしても良い。また、溝の断面視形状は、半円状或いはU字状であったり、さらにはそれら各種形状の溝を組み合わせたりと、後述する乱流を発生可能な溝であれば良い。
そして、溝25,25Aは、図2、図3、又は図4の各図に示すように、ロータ室12の内壁面12aに等間隔となるように形成されている。本実施例に係る溝25,25Aの間隔は、ルーツロータ30a,30bのロータ軸31を中心にして15度毎に形成することが好ましい。なお、必ずしも等間隔に形成しなければならないわけではなく、たとえば、内壁面12aの一端では間隔を狭く、他端では間隔を広く開けたり、又はその逆に一端では間隔を広くし、他端では間隔を狭くしたり、或いは各溝同士の間隔をランダムにしても良い。
さらに、溝25の幅、深さ、溝25同士の間隔は本実施例の数値に限定されず、ロータ室12の大きさ等を反映して任意に設定することができる。
ロータ室12の内壁面12aに対する溝25の加工は、直接当該内壁面12aへ刻設しても良いし、溝25を刻設したブッシング材をロータ室13へ挿入して形成しても良い。
また、本実施例において、溝25は、図1に示すように、ロータ軸31の軸方向に沿って、等間隔で複数本形成するようにした。しかし、これに限定されるものではなく、たとえば、ロータ軸31の軸方向に対して所定の角度を成すように斜めにして雌ネジのような溝を設けたり、またそのような斜めの溝を複数本設け、互いに交差させてダイヤ柄のようにして、ロータ室12内で乱流が発生するように内壁面12aへ溝を設けるようにすれば良い。
図2又は図3に示すように、ルーツロータ30aは、ロータ軸31aを有し、ルーツロータ30bはロータ軸31bを有している。ルーツロータ30a,30bは、それぞれ一対のロータ部32,32を有している。当該ロータ部32,32は、ロータ頂部32a,32aが、それぞれロータ軸31a,31bを挟んで同一線上で相反する位置に配されている。
ロータ軸31aとロータ部32,32、ロータ軸31bとロータ部32,32は一体形成されている。
ロータ軸31a,31bは、ステンレス鋼材、好ましくは硬く耐摩耗性に優れたマルテンサイト系のSUS420J2からなるが、これに限定されるものではなく、耐摩耗性に優れた素材であれば良い。
また、ロータ部32,32は、ロータ軸31a,31bと同じく耐摩耗性に優れ、反発弾性、引き裂き強さ、耐屈曲亀裂性にも優れたポリウレタンゴムからなるが、これもまた限定されるものではなく、上記の性能を満たす素材であれば良い。これによって、ルーツロータ30a,30bは、耐摩耗性に優れ、ロータ部32,32は折れ難く形成されている。
ここで、ルーツロータ30a,30bが回転する方向に沿った正方向のロータ面をロータ正面33aとし、回転する方向に対して逆方向のロータ面をロータ背面33bとする。ルーツロータ30a,30bがロータ室12内で回転するとき、ロータ正面33a側で水をロータ室12内へ押し込むと、ロータ背面33b側では吸込負圧が発生する。また、ロータ室12内へ吸い込まれた水が溝25内へ流れ込んで、ロータ頂部32aが開口面25a上を通過したとき、溝25近傍では水流が乱れて乱流が発生する。当該乱流と上記の吸込負圧が、ロータ室12内の気泡を圧潰して瞬間的に、当該気泡を微細化させることによって、当該気泡に含まれている酸素が水に溶解される。
ハウジング40に収められているロータ軸31aの一端には、プーリ51が固定されている。そして、プーリ51は、図6に示すように、モータ52と、タイミングベルト53を介して連結されている。ここで、プーリ51が駆動するロータ軸31aをロータ主軸31aとし、当該ロータ主軸31aによって回転するルーツロータ30aを主ルーツロータ30aとする。ロータ主軸31aの他端には、ギヤ歯車43aが固定されている。当該ロータ主軸31aのギヤ歯車43aは、ハウジング41内のギヤ歯車43bと噛合している。ギヤ歯車43aとギヤ歯車43bは、タイミングギヤ43を形成している。ギヤ歯車43bを備えたロータ軸31bを、ロータ従軸31bとし、当該ロータ従軸31bによって回転するルーツロータ30bを従ルーツロータ30bとする。これによって、主ルーツロータ30aが正方向へ回転するとき、タイミングギヤ43を介して従ルーツロータ30bが逆方向へ回転する。そのため、一対のルーツロータ30a,30bは互いに相反する方向へ回転することができる。
ハウジング41には、タイミングギヤ43を覆蓋するギヤカバー44が取り付けられている。
ショックゴム45aは、ウレタンゴム製からなり、ロータ主軸31aの段付き部34に密接し、当該段付き部34とシールリング45bに挟持されている。
シールリング45bと、フローティングシート45cの間には一対の金属製のメタルシール46a,46bが配されている。
フローティングシート45cは、環状に切り欠いた縁部にOリング47が外嵌されている。
オイルシール45dは、環状のカラー48に嵌着されている。カラー48は、またOリング47をフローティングシート45c側へ押圧固定している。
そして、ロータ軸31aの段付き部34と軸受42との間では、軸封装置45を構成するショックゴム45aとシールリング45bが互いに密着し、またフローティングシート45cとオイルシール45dが互いに密着し、シールリング45bとフローティングシート45cとの間に挟まれたメタルシール46a,46bが互いに密接している。これによって、ロータ軸31aとケーシング11の間の隙間を軸封して、当該隙間から水が漏れることを抑制することができる。
ルーツポンプ10の吸込口15には、吸水管55が接続されている。吸水管55の先端には、ルーツロータ30a,30bの回転を妨げる障害物の侵入を防ぐストレーナ56が取り付けられている。ルーツポンプの吐出口16には、排水管57が接続されている。
吸水管55と排水管57の先端は共に、図6に示すように、同一の水槽60内に沈められている。これによって、水槽60内の水は、、ルーツポンプ10を介して循環するように形成されている。
ここで、ロータ室12内でルーツロータ30a,30bのロータ頂部32aが溝25の開口面25a上を横切って通過すると、溝25近傍には乱流が発生する。また同時に、ロータ背面33b側では、吸込負圧による局所的な真空部分が発生する。当該真空部分に周囲から水圧と乱流による圧力が加わり、ロータ室12内の気泡が圧潰して瞬間的に微細化され、当該気泡に含まれている酸素が水に溶解される。これが内壁面12aに複数本形成された溝25上をロータ頂部32aが横切って通過する度に繰り返し行われることによって、水槽60内の溶存酸素濃度が次第に高められることとなる。
実験例(1)〜実験例(3)の比較対照実験は、図6に示す微細気泡発生装置50と水槽60を、以下に示す各条件の下で動作させたものである。
各実験の共通条件は、まず水槽60の容積が3000リットルである。水槽60内の水は、各実験毎に河川から水を引いて満たした。実験時の水温は13℃であって、当該水温における飽和溶存酸素量は10.2mg/Lである。
次に、実験例(1)〜実験例(3)の各ポンプは、吸込口の口径が50mm、吐出水量が毎分300リットル、吸込空気量が毎分20リットルである。そして、モータ52の定格出力は0.75kWとし、当該定格出力の下で、実験例(1)及び実験例(3)のルーツポンプは回転数が850rpmとなるように、また実験例(2)の容積型ポンプは回転数が1050rpmとなるように、モータ52とプーリ51の回転比が定められている。
そして、水槽60中の溶存酸素量を測定する測定器は、東亜ディーケーケー株式会社製の溶存酸素計DO−31Pを使用した。
各実験時間は60分間とし、その間の溶存酸素量(以下「DO値」という)の変化を示したグラフが、図7のグラフである。
実験例(1)は、本実施例に係るルーツポンプ10を使用したものである。実験例(1)の実験結果は、図7の実線で示された線グラフである。
実験例(2)は、特許文献1(特開2014−031759号公報)に開示されている2軸6葉式容積型ポンプを使用したものである。実験例(2)の実験結果は、図7の一点鎖線で示された線グラフである。
実験例(3)は、従来型のルーツポンプを使用したものである。実験例(3)の実験結果は、図7の点線で示された線グラフである。
図7の縦軸のうち、たとえば、30分時の縦軸に注目すると、各ポンプを30分間動作させたときのDO値は、それぞれ、実験例(1)は、約9mg/L、実験例(2)は、約8mg/L、実験例(3)は、約7.6mg/Lとなっている。すなわち、一定時間動作させたとき、実験例(1)の本実施例に係るルーツポンプ10が最も多く水中へ酸素を溶解させていることがわかる。
これによって、本実施例に係るルーツポンプ10は、所定時間内に水中へ酸素をより多く溶解させることに適していることが解る。つまり、閉鎖性水域が貧酸素化又は無酸素化状態に陥った場合であっても、極めて短時間で溶存酸素量を復活させることができる。
また、その後も実験例(1)の本実施例に係るルーツポンプ10は、他の実験例よりも溶存酸素の濃度を高く保ち続け、60分間の実験終了時のDO値は、約9.5mg/Lとなっている。水温13℃における飽和溶存酸素量は10.2mg/Lであるから、飽和溶存酸素量に対するDO値の比率は、約93.1%となる。すなわち、本実施例に係るルーツポンプ10を60分間動作させた場合、水槽60内の水へ飽和溶存酸素量の略9割方まで酸素を溶解させることができる。これによって、本実施例に係るルーツポンプを長時間にわたって動作させることにより好気性微生物の生育環境を高い水準で容易に整えることができる。
図7の横軸のうち、たとえば、8mg/Lの横軸に注目すると、DO値が8mg/Lとなるまでにかかった時間は、実験例(1)では約23分、実験例(2)では約30分、実験例(3)では約34分となっている。すなわち、所定のDO値へ達するのに、実験例(1)の本実施例に係るルーツポンプ10が最も早く溶かし込める。これによって、本実施例に係るルーツポンプ10は、所定量の酸素を水中へより早く溶解させることに適していることが解る。つまり、より短時間で多くの酸素を溶解させることができれば、モータ52の稼働時間を短縮させることができ、微細気泡発生装置50の電力消費を抑え、高い省エネ効果を得ると共に、環境に対する負荷を軽くすることができる。
そして、上記の実験例で明らかであるように、所定時間内に多くの酸素を水中へ溶け込ませることができ、また従来よりも短時間で所定量の酸素を水中へ溶け込ませることができる。
これによって、汚水槽のような閉鎖性水域において、堆積した汚泥、有機物を分解可能な好気性微生物の生育環境を従来よりも短時間で整え、溶存酸素量が低下して貧酸素化・無酸素化となることを防止することができ、一方で汚泥、有機物を分解するときに硫化水素、メタンガスを発生させる嫌気性微生物の繁殖を抑えて硫化水素ガス、メタンガスの発生を抑え、堆積した汚泥、有機物から溶出した炭酸ガスによって加圧浮上するスカムの発生を抑えることができる。
11…ケーシング、
12,12A…ロータ室、12a…内壁面、13…導水路、14…排水路、15…吸込口、16…吐出口、17…吸気口、18…給水口、18a…給水栓、19…貫通孔、20,21…排水口、20a,21a…排水栓、22…吸気管、22a…エアバルブ、
25…溝(断面視矩形状)、25a…開口面、25A…溝(断面視三角形状)、
30a…主ルーツロータ、30b…従ルーツロータ、31a…ロータ主軸、31b…ロータ従軸、32…ロータ部、32a…ロータ頂部、33a…ロータ正面、33b…ロータ背面、34…段付き部
40,41…ハウジング、
42…軸受、42a…ベアリング、
43…タイミングギヤ、43a,43b…ギヤ歯車、44…ギヤカバー、
45…軸封装置、45a…ショックゴム、45b…シールリング、45c…フローティングシート、45d…オイルシール、46a,46b…メタルシール、47…Oリング、48…カラー、
50…微細気泡発生装置、
51…プーリ、52…モータ、53…タイミングベルト、54…基台、55…吸水管、56…ストレーナ、57…排水管、
60…水槽。
Claims (4)
- 吸込口と吐出口に連通するロータ室を備えたケーシングと、
前記ロータ室に回転可能に収納される一対のルーツロータとを有するルーツポンプであって、
前記ロータ室の内壁面に、複数本の溝を設け、
前記ルーツロータが回転するとき、
当該ルーツロータのロータ頂部が近接対向する前記溝の開口面上を横切って通過するようにしたことを特徴とするルーツポンプ。 - 前記溝が、前記ルーツロータの軸方向に沿って延伸されていることを特徴とする請求項1に記載のルーツポンプ。
- 前記溝が、前記内壁面に等間隔で設けられていることを特徴とする請求項1に記載のルーツポンプ。
- 前記ルーツロータは、当該ルーツロータのロータ軸を挟んで同一線上で対向するように配された一対のロータ部を有する二葉式ルーツロータであることを特徴とする請求項1に記載のルーツポンプ。
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- 2016-12-16 JP JP2016244750A patent/JP6478966B2/ja active Active
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