JP2018095933A - 高炉 - Google Patents

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Abstract

【課題】高出銑比操業を行う高炉において、適正なC濃度の溶銑を得ることができる高炉を提供する。【解決手段】羽口送風中の酸素濃度が50vol%以上の高炉において、湯溜り部容積Rが0.31≦R/V≦0.40(但し、R:湯溜り部容積[m3]、V:炉内容積[m3])を満足する炉体構造を有する。溶銑の湯溜り部での滞留時間が十分に確保されて必要とされる浸炭がなされるため、高出銑比操業であっても溶銑のC濃度が適正レベルに維持できる。【選択図】図2

Description

本発明は、高出銑比操業を行う高炉の炉体構造に関するものである。
近年の高炉は、稼働基数の集約、原料制約緩和のための炉体の小型化などが志向され、より高い生産性が求められている。そのため、高い出銑比での操業を実施することが必要とされている。ここで出銑比とは、高炉1基が1日当たりに出銑する量を高炉の内容積(高炉内の羽口レベルからストックラインのレベルまでの容積)で割った値であり、高炉の効率を表す指標として用いられている。
一般的な高炉は、熱風炉で発生させた高温の空気(熱風)を羽口から炉内に吹き込む操業を行う。以下、このような一般的な高炉を熱風高炉という。
熱風高炉では、生産性を上げるために数vol%程度の酸素富化をすることはあるが、羽口前における窒素の濃度は50vol%程度あり、この窒素は鉄鉱石の還元には直接寄与しないため、熱風高炉の出銑比は高くとも2.0〜3.0t/d・m程度である。
一方、熱風高炉とは異なるタイプの高炉として、羽口から常温の純酸素を炉内に吹き込むことにより高い出銑比での操業を可能とした、いわゆる酸素高炉(例えば、特許文献1参照)が知られている。この酸素高炉は、送風ガスに窒素を含まないため還元ガス濃度が高い。そのため還元速度が高く、しかも溶銑1tを製造するのに必要なガス量も少ないため、熱風高炉よりも高い出銑比(例えば4.0〜6.0t/d・m)を達成できる。
ところで、高炉で生産される溶銑はその94mass%はFeであるが、6mass%程度はC、S、P、Si、Mn、Nなどで構成されている。なかでもCは、高炉内で溶銑がコークス充填層中を流下することでコークス中のCが溶銑中へ浸炭し、熱風高炉の場合は4.5〜5mass%程度の濃度で溶銑に含有される。この溶銑中のCは、高炉プロセスに続く製鋼プロセスにおいて酸化製錬を行うときに熱源として働くため、溶銑中のC濃度は4.2mass%以上が望ましいとされている。
特開昭60−159104号公報
しかしながら、本発明者らが検討した結果では、酸素高炉のように高出銑比で操業を行った場合、炉内における造銑滓速度が高くなるため、それにバランスして炉床からの出銑滓速度を高める必要があり、結果として、溶銑の炉内滞留時間が減少するため、浸炭反応が起こる時間が短くなり、溶銑中のC濃度が低下するという課題があることが判った。すなわち、溶銑中のC濃度は、熱風高炉程度の出銑比であれば適正レベル(4.2mass%以上)となるが、酸素高炉のような高出銑比の操業の場合には適正レベルを下回り、製鋼プロセスにおける酸化製錬を安定的に実施することが困難になることが想定される。
したがって本発明の目的は、高出銑比操業を行う高炉において、適正なC濃度の溶銑を得ることができる高炉を提供することにある。
本発明者らは、高炉において高出銑比操業を行いつつ、溶銑中のC濃度を適正範囲にするには、高炉内での浸炭時間を十分に確保できる工夫が必要であると考えた。高炉内における鉄鉱石などの原料の挙動を考えると、炉頂から装入された原料は、炉内を上昇するガスにより固体のまま昇温・還元されつつ炉内を降下し、溶融する温度を超えると溶銑滓となってコークス充填層中を流下する。この過程で溶銑がコークスと接触することにより溶銑の浸炭が進行するものと考えられる。ここで、鉄鉱石の溶解は高炉の羽口よりも上方で始まるが、この溶解が始まってから羽口までの流下時間は、高炉内のどの高さ位置で溶解が始まるかによって左右されるものであり、高炉の操業条件により変動してしまう。他方、高炉の羽口レベルから出銑口レベルまでの湯溜り部の容積は操業条件によらず一定であり、この湯溜り部容積を適切に設計することで、高炉の操業条件に拘わりなく、コークスから溶銑への浸炭を安定して制御できると考えた。
本発明者らは、そのような着想のもとに、出銑比、溶銑の炉内滞留時間及び溶銑中のC濃度を考慮して湯溜り部容積の最適な設計を行うべく検討を重ねた結果、
高出銑比操業でも溶銑中のC濃度を適正レベルに維持できる湯溜り部容積分率R/V(湯溜り部容積Rを炉内容積Vで割ったもの)の範囲を見出した。
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、以下を要旨とするものである。
[1]羽口送風中の酸素濃度が50vol%以上の高炉において、湯溜り部容積Rが下記(1)式を満足することを特徴とする高炉。
0.31≦R/V≦0.40 …(1)
但し R:湯溜り部容積(m
V:炉内容積(m
[2]上記[1]の高炉において、出銑比4.0〜6.0t/d・mで操業される高炉であることを特徴とする高炉。
本発明の高炉は、高出銑比操業を行いつつ、適正なC濃度の溶銑を得ることができる。このため製鋼プロセスにおける酸化製錬を安定的に実施することができる。
実機の熱風高炉の操業実績に基づいて出銑比と溶銑中のC濃度との関係を調査した結果を示すグラフ 出銑比4.0〜6.0t/d・mで操業される高炉において、湯溜り部容積分率R/Vと溶銑中のC濃度との関係を示すグラフ
高炉の操業は、一般に羽口送風中の酸素濃度が50vol%未満の高炉で行われるが、本発明では羽口送風中の酸素濃度が50vol%以上の高炉(純酸素を羽口送風するいわゆる酸素高炉を含む)を対象とする。また、高出銑比操業とは、一般の熱風高炉の出銑比は高くとも2.0〜3.0t/d・m程度であるのに対して、出銑比3.0t/d・m超の操業を指し、一般に酸素高炉では出銑比4.0〜6.0t/d・m程度の操業が行われる。
本発明において、高炉の炉内容積Vとは、羽口レベルからストックライン(高炉毎に決められている)のレベルまでの容積である。また、湯溜り部容積Rとは、羽口レベルから出銑口レベルまでの容積であり、湯溜り部容積分率R/Vとは、湯溜り部容積Rを炉内容積Vで割った値である。
本発明者らは、実機の熱風高炉の操業実績に基づいて、出銑比と溶銑中のC濃度との関係を調査した。その結果を図1に示す。図1によれば、出銑比の増加とともに溶銑中のC濃度が低下していることが判る。したがって、高出銑比操業を行うには、溶銑中のC濃度が適正レベル(4.2mass%以上)に維持されるような炉体設計をすることが重要であると考えられる。本発明では、そのような炉体設計を以下のようにして行い、高出銑比操業に最適な炉体構造を求めた。
溶銑中のC濃度は溶銑の湯溜り部での滞留時間に依存する。
1日に生産される溶銑滓の体積(m/d)は、溶銑密度:6.6t/m、スラグ密度:2.6t/m、スラグ比:0.3t/tとした場合(以上は溶銑滓の一般的な条件)、出銑比x(t/d・m)、炉内容積V(m)との関係で下記(i)式で表される。
(1/6.6+0.3/2.6)×V×x=0.267×V×x …(i)
溶銑滓が湯溜り部に滞留する時間T(hr)は、湯溜り部充填コークスの空隙率:0.3で、スラグ液面レベルが湯溜り部の高さ方向7割の位置に維持される(以上は一般的に想定される条件)とすれば、上記(i)式と湯溜り部容積R(m)から下記(ii)式で表される。
T=24×R×0.3×0.7/(0.267×V×x)
=18.9×R/V×1/x …(ii)
図1から、出銑比xと溶銑中C濃度Pcの関係式として、Pc=−0.3899×x+5.3447が導かれる。溶銑滓の湯溜り部での滞留時間T(hr)と溶銑中のC濃度Pc(mass%)との関係は、図1から導かれるPc=−0.3899×x+5.3447と上記(ii)式から、下記(iii)式で表される。なお、図1中に示した高炉の湯溜り部容積分率R/Vは0.15であった。
Pc=−1.104/T+5.3447 …(iii)
ここで、上記(iii)式に上記(ii)式を代入した下記(iv)式を用いることで、溶銑中のC濃度を適正レベル(4.2mass%以上)とする炉体設計が可能となる。
Pc=−0.058×x/(R/V)+5.3447 …(iv)
図2に、出銑比4.0〜6.0t/d・mで操業される高炉において、上記(iv)式により求められる湯溜り部容積分率R/Vと溶銑中のC濃度との関係を示す。図2によれば、酸素高炉における最大の出銑比6.0t/d・mであっても、湯溜り部容積割合R/Vを0.31以上とすれば溶銑中のC濃度が4.2mass%以上となり、適正なC濃度にできることが判る。一方、湯溜り部容積分率R/Vが大きくなり過ぎると、鉱石の還元を行う炉上部の割合が減少するため好ましくない。また、溶銑は高炉から転炉などの精錬施設に到達するまでに温度が低下し、溶銑表面から溶銑中Cがキッシュグラファイトとして析出して大気中に飛散することが知られている。そのように大気中に飛散したカーボン源の回収は難しくエネルギーロスとなるため、溶銑中のC濃度は4.75mass%以下であることが望ましい。図2によれば、湯溜り部容積分率R/Vを0.40以下とすることで、出銑比4.0t/d・mの操業においても溶銑中のC濃度が4.75mass%以下となる。
以上の理由から、本発明の高炉は、湯溜り部容積Rが下記(1)式を満足する炉体構造を有する。
0.31≦R/V≦0.40 …(1)
但し R:湯溜り部容積(m
V:炉内容積(m
なお、従来の高炉の湯溜り部容積分率R/Vは0.15程度が一般的であり、考え得る最大の値でも0.20程度である。
出銑比4.0〜6.0t/d・mで操業され、湯溜り部容積分率R/Vを0.25〜0.45とした高炉での浸炭反応のシミュレーションを行い、溶銑中のC濃度を求めた。その結果を表1に示す。これによれば、湯溜り部容積分率R/Vが0.31未満の高炉では、出銑比6.0t/d・mの場合に溶銑中のC濃度を適正レベル(0.42mass%以上)とすることができない。一方、湯溜り部容積分率R/Vが0.40を超える高炉では、出銑比が4.0t/d・mの場合に溶銑中のC濃度が4.75mass%を超えてキッシュグラファイト分のエネルギーロスが発生し、好ましくない。これに対して、湯溜り部容積分率R/Vを本発明範囲とした高炉では、出銑比4.0〜6.0t/d・mにおいて溶銑中のC濃度を4.20〜4.75mass%とすることができ、高出銑比操業が可能であることが判る。
Figure 2018095933

Claims (2)

  1. 羽口送風中の酸素濃度が50vol%以上の高炉において、湯溜り部容積Rが下記(1)式を満足することを特徴とする高炉。
    0.31≦R/V≦0.40 …(1)
    但し R:湯溜り部容積(m
    V:炉内容積(m
  2. 出銑比4.0〜6.0t/d・mで操業される高炉であることを特徴とする請求項1に記載の高炉。
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