JP2018090843A - α+β型チタン合金製翼部材の製造方法 - Google Patents

α+β型チタン合金製翼部材の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 強度と靱性を高い水準で維持したα+β型Ti合金製翼部材を得ることができるα+β型Ti合金製翼部材の製造方法を提案する。
【解決手段】 α+β型Ti合金製翼部材の製造方法において、(1)翼形状に成形されたチタン合金を60〜140℃/hの昇温速度で固溶化処理温度−50〜20℃まで昇温し、0.25時間以上保持する工程、(2)60〜140℃/hの昇温速度でβ変態点−20〜50℃の固溶化処理温度まで昇温する工程、(3)固溶化処理温度にて、0.5〜2.0時間保持した後、急冷する工程、(4)60〜140℃/hの昇温速度で焼鈍温度−50〜20℃まで昇温し、0.5時間以上保持する工程、(5)20〜100℃/hの昇温速度で針状αが生成するノーズ温度±50℃の焼鈍温度まで昇温する工程、(6)焼鈍温度にて0.5〜4.0時間保持した後、空冷以下の冷却速度で冷却する工程を含むα+β型Ti合金製翼部材の製造方法。
【選択図】図1

Description

本発明は、α+β型チタン合金製翼部材の製造方法に関するものである。
α+β型チタン合金(以下、「チタン合金」とも記載)製の翼部材(以下、「翼部材」とも記載)は、鋼製のものに匹敵する高強度を有しながら、鋼製のものよりも軽量であり、しかも優れた耐食性を有していることから、例えば、蒸気タービン、ガスタービン、航空機エンジン用等の翼として使用されている。しかしながら、前記チタン合金は、靱性にばらつきが生じやすいという問題がある。この問題に対して、例えば、特開昭47−8755号公報(特許文献1)として靱性を改善する熱処理方法の発明がある。また、前記特許文献1よりも更に靱性を改善可能な提案として、特開平7−90523号公報(特許文献2)の提案がある。
特開昭47−8755号公報 特開平7−90523号公報
前記特許文献1や特許文献2では、α+β型チタン合金製翼部材について、引張特性(強度、耐力)を優先させた熱処理を行うと高強度は確保できるが靱性特性(破壊靭性値)が相対的に低下する傾向にある。逆に熱処理条件を変更することで靱性特性の改善を行うと引張特性が低下するという関係が成り立っている。更には、翼部材は製品形状が一様ではないため、熱処理の加熱あるいは冷却過程で被熱処理材の温度のばらつきが生じやすくなる。その結果、翼部材の部位ごとに強度特性、靱性特性のばらつきが生じやすくなる。そのため、前記の問題を要因として、翼部材全域において強度と靱性をどちらも高い水準で維持した高強度・高靱性のα+β型チタン合金製翼部材を得ることは困難であった。
本発明の目的は、強度と靱性を高い水準で維持したα+β型チタン合金製翼部材を得ることができるα+β型チタン合金製翼部材の製造方法を提案することである。
本発明は上述した課題に鑑みてなされたものである。
すなわち本発明は、α+β型チタン合金製翼部材の製造方法において、
(1)翼形状に成形されたチタン合金を60〜140℃/時間の昇温速度で固溶化処理温度マイナス50〜で固溶化処理温度マイナス20℃の第一昇温温度まで昇温し、0.25時間以上保持する第一昇温工程と、
(2)翼形状に成形されたチタン合金を60〜140℃/時間の昇温速度でβ変態点マイナス50〜β変態点マイナス20℃の固溶化処理温度まで昇温する第二昇温工程と、
(3)翼形状に成形されたチタン合金を前記固溶化処理温度にて、0.5〜2.0時間保持した後、急冷する固溶化処理工程と、
(4)翼形状に成形されたチタン合金を60〜140℃/時間の昇温速度で焼鈍温度マイナス50〜焼鈍温度マイナス20℃の第三昇温温度まで昇温し、0.5時間以上保持する第三昇温工程と、
(5)翼形状に成形されたチタン合金を20〜100℃/時間の昇温速度で針状αが生成するノーズ温度±50℃の焼鈍温度まで昇温する第四昇温工程と、
(6)翼形状に成形されたチタン合金を前記焼鈍温度にて0.5〜4.0時間保持した後、空冷と同じか、空冷よりも遅い冷却速度で冷却する焼鈍工程と、
を含むα+β型チタン合金製翼部材の製造方法である。
本発明によれば、α+β型チタン合金製翼部材について、翼部材全域において強度と靱性をどちらも高い水準で維持した高強度・高靱性のα+β型チタン合金製翼部材を得ることができる。
本発明の製造方法によるチタン合金の金属組織写真である。 本発明の製造方法によるチタン合金の金属組織写真である。 比較例の製造方法によるチタン合金の金属組織写真である。
本発明は、チタン合金製の翼部材が本来有する高強度を維持したまま、靱性をより確実に向上させるものであり、その最大の特徴は、従来、十分な検討がなされていなかった固溶化処理温度及び焼鈍温度への昇温条件と、焼鈍時の冷却速度を適切な条件としたものである。以下に本発明を詳しく説明する。
本発明が対象とするチタン合金(α+β型チタン合金)としては、Ti−6Al−4V合金が代表的である。その他、例えば、Ti−6Al−2Sn−2Zr−2Mo−2Cr合金、Ti−4Al−4Mn合金、Ti−2Al−2Mn合金、Ti−7Al−4Mo合金、Ti−4Al−3Mo−1V合金、Ti−8Mn合金、Ti−4Al−4Mo−2Sn−0.5Si合金、Ti−2.5Al−16V合金、Ti−5Al−1.5Cr−1.5Fe−1.5Mo合金、Ti−7Al−2Co合金、Ti−5Al−2Cr−1Fe合金がある。本発明で言う「翼部材」とは、前記合金に代表されるα+β型チタン合金を翼部材として成形したものである。翼部材は厚さが厚い(体積の大きな)根部と、根部側から徐々に湾曲して厚さが薄くなっていく翼部を有するものである。前記翼部材への成形は、熱間鍛造によって行われるのが代表的な成形方法であり、その大きさは40〜60インチが代表的な大きさであるが、今後は45インチ以上のより長さの長い長翼が主流ととなる可能性がある。
上記の翼部材を用いて固溶化処理を行う。固溶化処理を行う場合、湾曲した翼部の変形を防止する目的で根部の一部または全部と翼部の一部または全部に、変形を防止する治具を用いて固溶化処理を行うことが好ましい。
本発明では固溶化処理を以下の条件で行う。それぞれの限定理由について説明する。なお、各温度の規定において、その温度は熱処理炉の制御温度である。
<第一昇温工程>
本発明では、固溶化処理温度までの昇温を多段処理で行う。その最初の昇温工程を「第一昇温工程」と呼ぶ。第一昇温工程の昇温速度を60〜140℃/時間とする。この昇温速度としたのは、作業効率・生産性を維持し、且つ、被熱処理材(湾曲した翼部を有する翼部材)の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形することを抑制することができるためである。第一昇温工程の昇温速度が60℃/時間未満であると昇温に要する時間が長時間必要となり、作業効率・生産性は著しく低下する。一方、第一昇温工程の昇温速度が140℃/時間を超えると被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形する可能性が高まるため、第一昇温工程の昇温速度を60〜140℃/時間とした。好ましい昇温速度の下限は80℃/時間であり、好ましい昇温速度の上限は120℃/時間である。
そして、前記の昇温速度により、固溶化処理温度マイナス50〜固溶化処理温度マイナス200℃の温度域(第一昇温温度)で一旦加熱を停止して、0.25時間以上保持する。この第一昇温温度を固溶化処理温度マイナス50〜5固溶化処理温度マイナス20℃の温度範囲としたのは、固溶化処理温度より低い温度域で一旦加熱を停止することで、固溶化処理温度に到達した時点の被熱処理材の焼けむらを低減でき、更に、固溶化処理の設定温度に対しオーバーシュートすることを抑制するためである。第一昇温温度が固溶化処理温度マイナス20℃未満の高温になると固溶化処理温度に近すぎて固溶化処理の設定温度に対しオーバーシュートする可能性があり、仮にオーバーシュートが起こると所定の材料特性を得ることはできなくなる。一方、第一昇温温度が固溶化処理温度マイナス50℃を超えて低温になるとその後の昇温工程の後、固溶化処理温度に到達した時点の被熱処理材の焼けむら低減効果は少なくなるため、第一昇温温度を固溶化処理温度マイナス50〜固溶化処理温度マイナス20℃の温度範囲とした。好ましい第一昇温温度の下限は固溶化処理温度マイナス35℃であり、好ましい第一昇温温度の上限は固溶化処理温度マイナス25℃である。また、第一昇温温度での保持時間を0.25時間以上としたのは、0.25時間未満の短時間では、翼部材全体を所定の温度まで高めることができないためである。本発明の翼部材は、前記の通り、厚さが厚い根部と厚さが薄い翼部とが一体に成形されているものであるため、どうしても根部側全体が所定の温度に到達するまで時間がかかる。そのため、根部側の温度と翼部側の温度との差異をゼロに近づけることができるだけの時間が必要になるため、第一昇温温度での保持時間を0.25時間以上とする。なお、保持時間の上限は特に限定しないが、おおよそ0.5時間で良い。0.5時間よりも長く保持しても、生産性が悪くなるだけである。
<第二昇温工程>
前記第一昇温工程に続いて行う固溶化処理温度までの昇温工程を「第二昇温工程」と呼ぶ。第二昇温工程の昇温速度を60〜140℃/時間とする。この昇温速度としたのは、作業効率・生産性を維持し、且つ、被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形することを抑制するためである。第二昇温工程の昇温速度が60℃/時間未満であると昇温に要する時間が長時間必要となり、作業効率・生産性は著しく低下する。一方、第二昇温工程の昇温速度が140℃/時間を超えると被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形する可能性が高まるため、第二昇温工程の昇温速度を60〜140℃/時間とした。好ましい昇温速度の下限は80℃/時間であり、好ましい昇温速度の上限は120℃/時間である。この第二昇温工程によって、第一昇温工程に続いて固溶化処理温度までの昇温を行う。
この昇温速度を適切にすることによってオーバーシュートすることなく所定の固溶化処理の設定温度まで被熱処理材を均一に昇温することができ、厚さが厚い根部と厚さが薄い翼部とが一体に成形されている翼部材全域において品質バラつきの少ないα+β型チタン合金製翼部材を得ることができる。
<固溶化処理>
本発明では固溶化処理温度をβ変態点マイナス50〜β変態点マイナス20℃の温度範囲とする。固溶化処理は熱間鍛造工程により不均一となった等軸α相の面積率、大きさ、分布形態を調整し、翼部材の品質を改善するために行うものである。固溶化処理温度を前記の範囲としたのは、高強度・高靱性のα+β型チタン合金製翼部材を得るには等軸α相の組織を所定の面積率、大きさへ調整する必要があり、β変態点マイナス20〜50℃に加熱保持することで所望した等軸α相の組織を得ることができるためである。この固溶化処理温度がβ変態点マイナス20℃未満の高温になると所望した等軸α相の大きさと比較し、等軸α相が小さくなり、その面積率も小さくなってしまう可能性があり、更に、熱処理炉の温度均一性が不十分な場合は部分的にβ変態点よりも高い温度まで加熱されるおそれがある。また、固溶化処理温度がβ変態点マイナス50℃を超えて低温になると所望した等軸α相の大きさと比較し、等軸α相が大きくなり、その面積率も大きくなってしまうため、固溶化処理温度をβ変態点マイナス50〜β変態点マイナス20℃の温度範囲とした。好ましい固溶化処理温度の下限はβ変態点マイナス35℃であり、好ましい固溶化処理温度の上限はβ変態点マイナス25℃である。なお、前記のβ変態点は、例えば、示差熱分析(DTA)を用い、基準試料(プラチナ)と分析試料の熱変化差を測定してチタンインゴットのTop側、Bottom側のβ変態点をそれぞれ測定し、それらのデータを平均した値をβ変態点として使用すると良い。
また、前記の固溶化処理温度での保持時間を0.5〜2.0時間とする。翼部材は、前記の通り、厚さが厚い根部と厚さが薄い翼部とが一体に成形されているものであるため、どうしても根部側全体が所定の温度に到達するまで時間がかかる。そのため、根部側の温度と翼部側の温度との差異をゼロに近づけることができるだけの時間が必要になるからである。固溶化処理時間が0.5時間未満の短時間では、翼部材全体を所定の温度まで高めることができない。一方、固溶化処理時間が2.0時間を超える長時間となるとクリープ変形による変形が大きくなる可能性があり、更には生産性が悪くなるだけである。そのため、固溶化処理温度での保持時間を0.5〜2.0時間とした。好ましい固溶化処理時間の下限は50分であり、好ましい固溶化処理時間の上限は80分である。
続いて、前記固溶化処理温度から急冷して固溶化処理を終了する。急冷方法は常法で差し支えなく、例えば、衝風冷却、ミスト冷却、ポリマー冷却、水冷等を適用するか、或いは、前記の常法の組合わせであっても良い。何れにしても、この急冷時には翼部材の変形が懸念されることから、前記急冷時に翼部材の変形を抑制することか可能な治具を用いることが好ましい。
<第三昇温工程>
本発明では、前記固溶化処理の後、焼鈍を行う。この焼鈍温度までの昇温についても多段処理で行う。その焼鈍温度への最初の昇温工程を「第三昇温工程」と呼ぶ。第三昇温工程の昇温速度を60〜140℃/時間とする。この昇温速度としたのは、作業効率・生産性を維持し、且つ、被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形することを抑制するためである。第三昇温工程の昇温速度が60℃/時間未満であると昇温に要する時間が長時間必要となり、作業効率・生産性は著しく低下し、また、第三昇温工程の昇温速度が140℃/時間を超えると被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形する可能性が高まるため、第三昇温工程の昇温速度を60〜140℃/時間とした。好ましい昇温速度の下限は80℃/時間であり、好ましい昇温速度の上限は120℃/時間である。
そして、前記の昇温速度により、焼鈍温度マイナス50〜焼鈍温度マイナス20℃の温度域(第三昇温温度)で一旦加熱を停止して、0.5時間以上保持する。この第三昇温温度を焼鈍温度マイナス50〜焼鈍温度マイナス20℃の温度範囲としたのは、焼鈍温度より低い温度域で一旦加熱を停止することで、焼鈍温度に到達した時点の被熱処理材の焼けむらを低減でき、更に、焼鈍の設定温度に対しオーバーシュートすることを抑制するためである。第三昇温温度が焼鈍温度マイナス20℃未満の高温になると焼鈍温度に近すぎて焼鈍の設定温度に対しオーバーシュートする可能性があり、仮にオーバーシュートが起こると所定の材料特性を得ることはできない。また、第三昇温温度が焼鈍温度マイナス50℃を超えて低温になるとその後の昇温工程の後、焼鈍温度に到達した時点の被熱処理材の焼けむら低減効果は少なくなるため、第三昇温温度を焼鈍温度マイナス50〜焼鈍温度マイナス20℃の温度範囲とした。好ましい第三昇温温度の下限は焼鈍温度マイナス35℃であり、好ましい第三昇温温度の上限は焼鈍温度マイナス25℃である。また、第三昇温温度での保持時間を0.5時間以上としたのは、0.5時間未満の短時間では、翼部材全体を所定の温度まで高めることができないためである。本発明の翼部材は、前記の通り、厚さが厚い根部と厚さが薄い翼部とが一体に成形されているものであるため、どうしても根部側全体が所定の温度に到達するまで時間がかかる。そのため、根部側の温度と翼部側の温度との差異をゼロに近づけることができるだけの時間が必要になり、また、焼鈍は固溶化処理と比較して処理温度が低くなるため熱処理材を均熱化するには固溶化処理よりも長く保持する必要があるため、第三昇温温度での保持時間を0.5時間以上とする。なお、保持時間の上限は特に限定しないが、おおよそ1.5時間で良い。1.5時間よりも長く保持しても、生産性が悪くなるだけである。
<第四昇温工程>
前記第三昇温工程に続いて行う、焼鈍温度までの昇温工程を「第四昇温工程」と呼ぶ。第四昇温工程の昇温速度を20〜100℃/時間とする。この昇温速度としたのは、作業効率・生産性を維持し、且つ、被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形することを抑制するためである。また、焼鈍は固溶化処理と比較して処理温度が低くなるため熱処理材を均一に加熱するには固溶化処理よりも昇温速度を遅くする必要があるからである。第四昇温工程の昇温速度が20℃/時間未満であると昇温に要する時間が長時間必要となり、作業効率・生産性は著しく低下する。また、第四昇温工程の昇温速度が100℃/時間を超えると被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらにより熱応力が発生することで被熱処理材の形状が変形する可能性が高まるため、第四昇温工程の昇温速度を20〜100℃/時間とした。好ましい昇温速度の下限は30℃/時間であり、好ましい昇温速度の上限は70℃/時間である。この第四昇温工程によって、第三昇温工程に続いて焼鈍温度までの昇温を行う。
この焼鈍時の昇温速度を適切にすることによってオーバーシュートすることなく所定の焼鈍の設定温度まで被熱処理材を均一に昇温することができ、厚さが厚い根部と厚さが薄い翼部とが一体に成形されている翼部材全域において品質ばらつきの少ないα+β型チタン合金製翼部材を得ることができる。
<焼鈍工程>
本発明では焼鈍温度を針状αが生成するノーズ温度±50℃の温度範囲とする。焼鈍は溶体化処理で発生した内部応力を緩和させ、更に針状α組織の形態を制御するために行うものである。
焼鈍温度を前記の範囲としたのは、針状αが生成するノーズ温度±50℃の温度範囲とすることで、より短時間で効率よく針状αを生成・成長させることができるためである。この焼鈍温度が針状αが生成するノーズ温度プラス50℃を超える高温になると針状αが粗大に成長してしまう。一方、焼鈍温度が針状αが生成するノーズ温度マイナス50℃を超えて低温になると針状αが細く微細になるため、焼鈍温度を針状αが生成するノーズ温度±50℃の温度範囲とした。好ましい焼鈍温度の下限は針状αが生成するノーズ温度マイナス25℃であり、好ましい焼鈍温度の上限は針状αが生成するノーズ温度プラス25℃である。なお、前記の針状αが生成するノーズ温度は、例えば、小試験片を複数個準備し、それぞれ所定の溶体化処理を実施した後に次いで650〜900℃の温度域で等温保持を実施し、それぞれの金属組織を光学顕微鏡にて観察することで針状αの生成・成長具合を確認することで恒温変態図を作成して確認すれば良い。
また、前記の焼鈍温度での保持時間を0.5〜4.0時間とする。これは、針状αは十分生成・成長させる必要があるためである。焼鈍時間が0.5時間未満の短時間では、保持時間が不十分となるため、被熱処理材の表層部と中心部の加熱時の焼けむらが生じることで品質のばらつきが生じる可能性があり、更には針状αが十分成長することができない可能性がある。一方、焼鈍時間が4.0時間を超える長時間となると生産性が悪くなるだけである。そのため、焼鈍温度での保持時間を0.5〜4.0時間とした。好ましい焼鈍時間の下限は1時間であり、好ましい焼鈍時間の上限は3時間である。
続いて、前記焼鈍温度から空冷と同じか、空冷よりも遅い速度で冷却する。本発明において焼鈍温度からの冷却を空冷と同じか、空冷よりも遅いゆっくりとした冷却速度とするのは、針状α形態は焼鈍温度からの冷却速度に依存せず、高温保持する過程で生成・成長すると考えられるからである。焼鈍温度からの冷却を空冷を超える速い冷却速度とすると、被熱処理材の変形が生じる可能性がある。そのため、本発明においては焼鈍温度から空冷と同じか、空冷よりも遅い速度で冷却する。なお、冷却方法は常法で差し支えなく、例えば、空冷、炉冷等を適用するか、或いは、前記の常法の組合わせであっても良い。なお、冷却終了温度は500℃以下までで十分である。
チタン合金として、JIS60種で規定されるアルミニウム(Al)を6質量%、バナジウム(V)を4質量%含み、残部がチタン及び不可避的不純物でなるTi−6Al−4V合金製の翼部材を用意した。翼部材は熱間鍛造(プレス)を用いて成形したものであった。前記翼部材を表1に示す条件で固溶化処理を行い、その後、表2に示す条件で焼鈍を行った。固溶化処理時には翼部材の変形を抑制する治具を用いて行った。
なお、用いたチタン合金のβ変態点は翼部材No1、2、3すべて1013℃であり、針状αが生成するノーズ温度は実験より825〜850℃付近であった。この各温度の測定は、前記した方法により求めた。
表1、表2に示す熱処理を実施した後、機械的性質を調査した。その結果を表3に示す。
表3の結果から、β変態点よりも50℃以上低い温度で固溶化処理を実施し、更に、針状α生成ノーズ温度よりも100℃以上低い温度で焼鈍を実施した比較例(翼部材No.3)は高強度特性を有していたが、破壊靭性値は本発明(No.1及びNo.2)と比較して低い値となった。一方、本発明は(No.1及びNo.2)の破壊靭性値は比較例(No.3)と比較して高い値となり、更に比較例(翼No.3)と同程度の高い強度レベルを維持することが確認された。
すなわち、本発明で提案したα+β型チタン合金製翼部材の熱処理方法を用いることで、α+β型チタン合金製翼部材について、翼部材全域において強度と靱性をどちらも高い水準で維持した高強度・高靱性のα+β型チタン合金製翼部材を得ることができた。
続いて、それぞれのミクロ組織を光学顕微鏡で確認した写真を図1〜3に示す。なお、上記本発明No.1の金属組織写真が図1、記本発明No.2の金属組織写真が図2、上記比較例No.3の金属組織写真が図3である。金属組織観察の結果から、比較例(No.3)に対し、本発明は(No.1及びNo.2)のミクロ組織は等軸α面積率がわずかであるが少なく、No.3の等軸α面積率は約35%であるのに対し、No.1の等軸α面積は約25%であった。これは、等軸α面積率はβ変態点と溶体化処理温度の温度差に依存しており、β変態点に近い温度で溶体化処理することで等軸α面積率は少なくなる。更に、α+βの2相領域においては、針状α生成ノーズより100℃以上低い温度で焼鈍を行った比較例(No.3)に対し、針状α生成ノーズに近い温度域で焼鈍を実施した本発明(No.1及びNo.2)は針状α組織が太く成長した組織を呈した。

Claims (1)

  1. α+β型チタン合金製翼部材の製造方法において、
    (1)翼形状に成形されたチタン合金を60〜140℃/時間の昇温速度で固溶化処理温度マイナス50℃〜固溶化処理温度マイナス20℃の第一昇温温度まで昇温し、0.25時間以上保持する第一昇温工程と、
    (2)翼形状に成形されたチタン合金を60〜140℃/時間の昇温速度で、前記第一昇温温度から、β変態点マイナス50〜β変態点マイナス20℃の固溶化処理温度まで昇温する第二昇温工程と、
    (3)翼形状に成形されたチタン合金を前記固溶化処理温度にて、0.5〜2.0時間保持した後、急冷する固溶化処理工程と、
    (4)翼形状に成形されたチタン合金を60〜140℃/時間の昇温速度で焼鈍温度マイナス50〜焼鈍温度マイナス20℃の第三昇温温度まで昇温し、0.5時間以上保持する第三昇温工程と、
    (5)翼形状に成形されたチタン合金を20〜100℃/時間の昇温速度で、前記第三昇温温度から、針状αが生成するノーズ温度±50℃の焼鈍温度まで昇温する第四昇温工程と、
    (6)翼形状に成形されたチタン合金を前記焼鈍温度にて0.5〜4.0時間保持した後、空冷と同じか、空冷よりも遅い冷却速度で冷却する焼鈍工程と、
    を含むことを特徴とするα+β型チタン合金製翼部材の製造方法。

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