JP2018090677A - 芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】芳香族ポリカーボネート樹脂本来の特性を何ら損なうことなく、高光線透過率及び良好な色相を有し、高温成形や熱滞留にも耐え得ると共に、強度及び加工性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを提供すること。【解決手段】粘度平均分子量(Mv)が15,000〜39,000である芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)を0.01〜1.5質量部含有することを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムに関する。さらに詳しくは、高光線透過率及び良好な色相を有し、高温で熱滞留にも耐え得ると共に、強度及び加工性に優れた、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム、特に光学シート又はフィルムに関するものである。
パーソナルコンピュータ、携帯電話等にて使用される液晶表示装置には、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一かつ効率的に導く役割を果たす目的で、一面が一様な傾斜面を有する楔型断面の導光板や平板形状の導光板が備えられている。また導光板の表面に凹凸パターンを形成して光散乱機能を付与するものもある。
このような導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは入れ子の表面に形成された凹凸部の転写によって付与される。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA)等の樹脂材料から成形されてきたが、最近では、より鮮明な画像を映し出す表示装置が求められているため、また光源近傍で発生する熱によって機器装置内が高温化する傾向にあるため、より耐熱性の高い芳香族ポリカーボネート樹脂材料に置き換えられつつある。
芳香族ポリカーボネート樹脂は、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れるが、光線透過率はPMMA等に比べて低いことから、芳香族ポリカーボネート樹脂製の導光板と光源とから面光源体を構成した場合、輝度が低いという問題がある。また最近では導光板の入光部と入光部から離れた場所の色度差を少なくすることが求められているが、芳香族ポリカーボネート樹脂はPMMA樹脂と比べて黄変しやすいという問題がある。
従来から、芳香族ポリカーボネート樹脂製の導光板における輝度を高める方法が幾つか提案されている。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコール又はその脂肪酸エステルを添加することにより光線透過率及び黄色度(Yellowness Index:YI)を改善させた、導光板用芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、ポリカーボネート樹脂に対し、ポリオキシテトラメチレンポリオキシエチレングリコールを添加することにより光線透過率及び輝度を向上させると共に、ポリオキシアルキレングリコール又はその脂肪酸エステルを用いた際の欠点である耐熱不足を改善させた、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
さらに近年、導光板の更なる薄肉化が進んでおり、射出成形によって形成される導光板に代わり、フィルム押出成形により形成される導光フィルムを用いて、バックライトの薄型化を実現した、バックライトアセンブリが提案されている(例えば、特許文献3参照)。
特開2004−51700号公報 国際公開第2011/083635号公報 特開2010−123569号公報
しかしながら、芳香族ポリカーボネート樹脂と共に、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリオキシアルキレングリコールを含む樹脂組成物は耐熱性が低いため、320℃を超える温度で成形したり、成形サイクルが長い押出成形法で用いると、得られるシート又はフィルムの黄色度(YI)が大きくなり、輝度及び光線透過率が大きく低下してしまい、導光製品としての光学性能に悪影響を及ぼす恐れがある。また熱劣化した樹脂組成物が、押出機や成形機のシリンダー、スクリュー、ロール等に粘着して滞留し、成形機や押出機を汚染し、ひいてはシート又はフィルムを汚染してしまう恐れがある。芳香族ポリカーボネート樹脂と共に、ポリオキシテトラメチレンポリオキシエチレングリコールを含む樹脂シート又はフィルムでは、光線透過率及び輝度は改善が見られるものの、黄色度(YI)や耐熱性の改善が十分なレベルではない。
特に最近、スマートフォンやタブレット型端末等の各種携帯端末においては、薄肉化や大型薄肉化が著しいスピードで進行しており、超薄型の光源を構成する導光シート又はフィルムとして十分な輝度が要求されてきている。このようなハイエンドの導光シート又はフィルムにおいては、上記従来技術が達成する光線透過率や黄色度(YI)のレベルでは要求スペックを満たさないというのが現状である。
さらに、射出成形と比べて押出成形は、成形時の熱滞留時間が長くなる傾向にあるため、より高い耐熱性に加え、熱滞留時の黄色度(YI)が少ない芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムが求められている。
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであり、その目的は、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の特性を何ら損なうことなく、高光線透過率及び良好な色相を有し、高温成形や熱滞留にも耐え得ると共に、強度及び加工性に優れた、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム、特に光学シート又はフィルムを提供することにある。
本発明は以下のとおりである。
[1]粘度平均分子量(Mv)が15,000〜39,000である芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)を0.01〜1.5質量部含有することを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。

(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、m及びnは、それぞれ独立に、2〜60の整数を示し、m+nは、4〜120の整数である。)
[2]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、さらに酸化防止剤(C)を0.005〜0.4質量部含有することを特徴とする、[1]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
[3]酸化防止剤(C)がリン系の酸化防止剤である、[2]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
[4]芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、さらにエポキシ化合物(D)を0.0005〜0.2質量部含有することを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
[5]ポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)が、下記式(2)で表されるポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコールである、[1]〜[4]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。

(式中、m及びnは、それぞれ独立に、2〜60の整数を示し、m+nは、4〜120の整数である。)
[6]光学シート又はフィルムである、[1]〜[5]のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
[7]光学シート又はフィルムが、導電シート又はフィルムである、[6]に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
本発明によれば、芳香族ポリカーボネート樹脂本来の特性を何ら損なうことなく、高光線透過率及び良好な色相を有し、高温成形や熱滞留にも耐え得ると共に、強度及び加工性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム、特に光学シート又はフィルムを提供することができる。
ロール汚れ性の評価において、(a)は、◎(ロールへの揮発成分の付着が少なく、フィルムの外観不良が発生しない)と評価されるロールの一例を示した写真である。(b)は、△(ロールへの揮発成分の付着があり、フィルムの外観不良が発生する)と評価されるロールの一例を示した写真である。(c)は、×(ロールへの揮発成分の付着多くがあり、フィルムの外観不良が多数発生する)と評価されるロールの一例を示した写真である。 フィルムの打ち抜き加工性の評価において、(a)は、◎(裁断面が全く荒れていない)と評価されるフィルムの裁断面の一例を示した写真である。(b)は、○(裁断面がほぼ荒れていない)と評価されるフィルムの裁断面の一例を示した写真である。(c)は、△(裁断面がやや荒れている)と評価されるフィルムの裁断面の一例を示した写真である。(d)は、×(裁断面が荒れている)と評価されるフィルムの裁断面の一例を示した写真である。
以下、本発明について実施形態及び例示物等を示して詳細に説明する。
なお、本願明細書において、「〜」とは、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用される。
[概要]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、粘度平均分子量(Mv)が15,000〜39,000である芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、上記一般式(1)で表されるポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)を0.01〜5質量部含有することを特徴とする。
以下、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを構成する各成分につき、詳細に説明する。
[芳香族ポリカーボネート樹脂(A)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムに含まれる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、その粘度平均分子量(Mv)が15,000〜39,000であれば特に限定はなく、公知の任意のものを使用できる。例えば、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)には、下記一般式(I)で表される構造単位を主たる構造単位として有する、芳香族ポリカーボネート樹脂が挙げられる。ここで「主たる」とは、芳香族ポリカーボネート樹脂中の全構造単位中における一般式(I)で表される構造単位の含有率が60モル%以上であることを意味し、80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましい。
一般式(I):
一般式(I)中、R及びRは、各々独立して、ハロゲン原子、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数6〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のシクロアルコキシ基、又は炭素数6〜20のアリールオキシ基を表す。p及びqは、0〜4の整数を表す。Xは、単結合又は下記(Ia)の群から選択される基を表す。
(Ia)中、R及びRは、各々独立して、水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、又は炭素数6〜10のアリール基を表すか、あるいはRとRは、相互に結合して脂肪族環を形成していてもよい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、上記一般式(I)で表される構造単位を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを塩基性化合物等のエステル交換触媒の存在下に反応させる公知のエステル交換法、あるいは該芳香族ジヒドロキシ化合物とホスゲン等とを酸結合剤の存在下に反応させる公知の界面重縮合法のいずれによっても容易に得ることができる。
上記一般式(I)で表される構造単位を誘導する芳香族ジヒドロキシ化合物としては、下記一般式(V)で表される化合物が挙げられる。
一般式(V):
上記一般式(V)中、R〜R、p、q、及びXは、各々上記一般式(I)におけるのと同様である。
このような芳香族ジヒドロキシ化合物としては、具体的にはビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メトキシフェニル)プロパン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
中でも2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわち、ビスフェノールA)が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)とした際の耐衝撃性、耐熱性の点から、また芳香族ジヒドロキシ化合物としての安定性、さらにはそれに含まれる不純物の量が少ないものの入手が容易である点から、より好ましいものとして挙げられる。
本発明においては、上記芳香族ジヒドロキシ化合物のうち複数種を必要に応じて組み合わせて用いてもよい。
上記一般式(I)で表される構造単位を誘導する炭酸ジエステルとしては、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(2−クロロフェニル)カーボネート、m−クレシルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(4−フェニルフェニル)カーボネート等の芳香族炭酸ジエステルが挙げられる。その他、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジシクロヘキシルカーボネート等も所望により使用することができる。これらのうち、ジフェニルカーボネートが、反応性、得られる樹脂の着色に対する安定性、更にはコストの点より、好ましい。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、界面重合法で合成したものであっても溶融重合法で合成したものであってもよく、また、固相重合法や薄膜重合法などの方法で合成したものであってもよい。また、使用済みディスク成形品等の使用済み製品から回収されたポリカーボネートを用いることも可能である。例えば界面重合法で重合したポリカーボネートと溶融重合法で重合したポリカーボネートとを混合してもよく、また、溶融重合法あるいは界面重合法で重合したポリカーボネートと使用済みディスク成形品等から回収されたポリカーボネートとを混合してもよい。
ただし、回収されたポリカーボネートは、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のうち、80質量%以下であることが好ましく、中でも50質量%以下であることがより好ましい。再生されたポリカーボネートは、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このようなポリカーボネートを上記の範囲よりも多く用いた場合、色相や機械的物性を低下させる可能性があるためである。
本発明で用いられる芳香族ポリカーボネート樹脂(A)として好ましくは、特定条件を満たす末端封止された芳香族ポリカーボネート樹脂(A)が挙げられる。
すなわち、上記芳香族ポリカーボネート樹脂(A)は、その少なくとも一部が芳香族モノヒドロキシ化合物由来の末端基あるいは末端フェニル基(以下、「封止末端基」ともいう)で封止されていることが好ましい。
その封止末端基の割合としては、全末端量に対して60モル%以上が好ましい。また、末端フェニル基濃度(全構成単位に対する封止末端基の割合)は2モル%以上、好ましくは2〜20モル%、特に好ましくは2〜12モル%である。末端フェニル基濃度が2モル%以上の場合にジオール化合物との反応が速やかに進行し、上記特有の効果が特に顕著に発揮される。芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端量に対する封止末端量の割合は、芳香族ポリカーボネート樹脂のH−NMR解析により分析することができる。
また、Ti複合体による分光測定によって末端水酸基濃度を測定することが可能である。さらに末端水酸基濃度はH−NMR解析により測定することも可能である。同評価による末端水酸基濃度としては1,500ppm以下が好ましく、さらに好ましくは1,000ppm以下が好適である。この範囲内の水酸基末端あるいはこの範囲内の封止末端量であれば、ジオール化合物とのエステル交換反応によって十分な高分子量化の効果が得られる傾向がある。
ここでいう「芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端基量」又は「芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端基量」は、例えば分岐の無いポリカーボネート(すなわち、鎖状ポリマー)0.5モルがあれば、全末端基量は1モルであるとして計算される。
封止末端基の具体例としては、フェニル末端基、クレジル末端基、o−トリル末端基、p−トリル末端基、p−t−ブチルフェニル末端基、ビフェニル末端基、o−メトキシカルボニルフェニル末端基、p−クミルフェニル末端基等の末端基を挙げることができる。
これらの中では、ジオール化合物とのエステル交換反応で反応系より除去されやすい低沸点の芳香族モノヒドロキシ化合物で構成される末端基が好ましく、フェニル末端基、p−t−ブチルフェニル末端基等が特に好ましい。
このような封止末端基は、界面法においては芳香族ポリカーボネート樹脂製造時に末端停止剤を用いることにより導入することができる。末端停止剤の具体例としては、p−t−ブチルフェノール、フェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキル置換フェノール等が挙げられる。末端停止剤の使用量は、所望する芳香族ポリカーボネートの末端量(すなわち所望する芳香族ポリカーボネート樹脂の分子量)や反応装置、反応条件等に応じて適宜決定することができる。
溶融法においては、芳香族ポリカーボネート製造時にジフェニルカーボネートのごとき炭酸ジエステルを芳香族ジヒドロキシ化合物に対して過剰に使用することにより、封止末端基を導入することができる。反応に用いる装置及び反応条件にもよるが、具体的には芳香族ジヒドロキシ化合物1モルに対して炭酸ジエステルを1.00〜1.30モル、より好ましくは1.02〜1.20モル使用する。これにより、上記末端封止量を満たす芳香族ポリカーボネートが得られる。
好ましくは、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)として、芳香族ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステルとを反応(エステル交換反応)させて得られる末端封止された重縮合ポリマーを使用する。
芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するとき、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物とともに、一分子中に3個以上の官能基を有する多官能化合物を併用することもできる。このような多官能化合物としてはフェノール性水酸基、カルボキシル基を有する化合物が好ましく使用される。
さらに芳香族ポリカーボネート樹脂を製造するとき、上記の芳香族ジヒドロキシ化合物とともに、ジカルボン酸化合物を併用し、ポリエステルカーボネートとしても構わない。上記ジカルボン酸化合物としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等が好ましく、これらのジカルボン酸は酸クロリド又はエステル化合物として反応させることが好ましく採用される。また、ポリエステルカーボネート樹脂を製造する際に、ジカルボン酸は、上記ジヒドロキシ成分とジカルボン酸成分との合計を100モル%とした時に、0.5〜45モル%の範囲で使用することが好ましく、1〜40モル%の範囲で使用することがより好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてジクロロメタンを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、15,000〜39,000である。好ましくは17,000以上、より好ましくは19,000以上、特には21,000以上であり、好ましくは35,000以下、さらに好ましくは30,000以下、特には28,000以下である。粘度平均分子量を上記範囲の下限値以上とすることにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの機械的強度をより向上させることができ、フィルム打ち抜き加工時の裁断面の荒れを少なくすることができる。粘度平均分子量を上記範囲の上限値以下とすることにより、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム原料の流動性低下を抑制することができ、成形性が良好になる。
なお、粘度平均分子量の異なる2種類以上の芳香族ポリカーボネート樹脂を混合して用いてもよく、この場合には、粘度平均分子量が上記の好適な範囲外である芳香族ポリカーボネート樹脂を混合してもよい。
なお、粘度平均分子量[Mv]とは、溶媒としてジクロロメタンを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度20℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10−4Mv0.83 から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]とは、各溶液濃度[C](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により算出した値である。
また、シート又はフィルムの外観の向上やシート又はフィルム原料の流動性の向上を図るため、芳香族ポリカーボネート樹脂は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量[Mv]は、通常1,500以上、好ましくは2,000以上であり、また、通常9,500以下、好ましくは9,000以下である。さらに、含有されるポリカーボネートリゴマーは、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)(ポリカーボネートオリゴマーを含む)の30質量%以下とすることが好ましい。
[ポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、下記一般式(1)で表されるポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)を含有する。

(式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、m及びnは、それぞれ独立に、2〜60の整数を示し、m+nは、4〜120の整数である。)
上記一般式(1)において、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であるが、好ましくは、水素原子、メチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基又はエチル基であり、特に好ましくはエチル基である。ポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコール誘導体(B)が、分岐鎖アルキレン(Rが、炭素数1〜3のアルキル基である)単位を含むと、ポリカーボネートとの相溶性が高いため、黄変を抑制し、色相を改善することができる。
したがって、特に好ましいポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)は、下記式(2)で表されるポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコールである。

(式中、m及びnは、それぞれ独立に、2〜60の整数を示し、m+nは、4〜120の整数である。)
上記式(1)及び(2)において、mは、2〜60の整数であるが、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下である。nは、2〜60の整数であるが、好ましくは4以上、より好ましくは5以上であり、好ましくは50以下、より好ましくは40以下である。m+nは、4〜120の整数であるが、好ましくは8以上、より好ましくは10以上であり、好ましくは100以下、より好ましくは80以下である。上記式(1)及び(2)において、mが2以上であると、樹脂シート又はフィルムの導光性能が向上し、耐熱性が良好となる。nが2以上であると、成分(B)の成分(A)との相溶性、分散性が良好となり、導光性能が安定した樹脂シート又はフィルムが得られる。m+nが4以上であると、耐熱性が高く、成形時のガス発生が抑制され、取り扱いが良好な樹脂シート又はフィルムが得られる。m+nが120以下の場合、成分(B)の成分(A)との相溶性が良好で好ましい。なお、m及びnの比率測定は、H−NMR測定装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として測定される。
従来技術として、ポリオキシアルキレングリコールを添加することで、光透過率が向上
することは、特許文献1(特開2004−51700号公報)に開示されている。これらの技術内容で使用するポリオキシアルキレングリコールは、式:CHRCHOで表される繰り返し単位を持ち、Rが水素原子又は炭素数が1〜3のアルキル基からなるポリオキシアルキレングリコール、又はその脂肪酸エステルが用いられる。
このようなグリコールとは、具体的には、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコール等が挙げられる。これらは、主鎖の炭素数が2のアルキル基のポリオキシアルキレングリコールであるがゆえに、親水性があり、ポリカーボネート樹脂との相溶性も高い。しかし、一方で耐熱性が低く、これを添加したポリカーボネート樹脂では、320℃を超える温度で成形すると、色相低下で輝度及び光線透過率の低下が起きるという欠点がある。
一方、主鎖の炭素数が4のアルキル基からなるポリオキシテトラメチレングリコールは、適度な分子量であれば、上記の主鎖の炭素数が2のアルキル基のポリオキシアルキレングリコールに比べて耐熱性が高い。しかし、主鎖の炭素数が増える分、親油性が強くなり、芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性が悪くなる。このため、これを単独で芳香族ポリカーボネート樹脂に添加しても混合し難く、均一分散し難いため、透過性は向上し難い。また、常温常圧で固体のため、芳香族ポリカーボネート樹脂に均一に混合させるには、加温し液体にする必要があった。
本発明で用いるポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)は、テトラヒドロフランと、エチレンオキシド誘導体(例えば、エチレンオキシド、1,2−プロピレンオキシド、1,2−ブチレンオキシド等)を共重合することで、上記式(1)で表される、ポリエーテル主鎖にオキシテトラメチレン(CHCHCHCHO)繰り返し単位と式:CHRCHOで表される繰り返し単位が、m:nの比率で共重合してなる、共重合ポリエーテルである。この共重合ポリエーテルは、芳香族ポリカーボネート樹脂との相溶性のあるポリオキシアルキレングリコールの性質と、耐熱性が高く、芳香族ポリカーボネート樹脂に対する可塑化作用のあるポリオキシテトラメチレングリコールの性質を併せ持つ。さらに常温常圧で液体のため、芳香族ポリカーボネート樹脂に混合し易く、均一分散が可能である。
オキシテトラメチレン(CHCHCHCHO)繰り返し単位とオキシアルキレン(CHRCHO)繰り返し単位は、ランダム結合であってもブロック結合であってもよく、これらの併用でもよい。少なくとも一部にランダム結合部分を有すると低温での流動性が優れるという点で好ましく、特に(OCHCHCHCH)のうちの80質量%以上がランダム付加であるのがより好ましい。
上記式(1)のポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)は、例えば、日油(株)などの供給業者より入手することもできるが、ポリオキシテトラメチレンポリオキシアルキレングリコールを合成するための公知の方法により、製造することもできる。
例えば、上記式(2)のポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコール(B)は、触媒の存在下、好ましくは温度30〜120℃、好ましくは圧力0〜0.6MPaでテトラヒドロフラン(以下、THFともいう)と、1,2−ブチレンオキシドをランダム付加、ブロック付加又はこれらの併用をして製造できる。上記の触媒としては、公知の触媒を使用できるが、例えば、BF、BaCl、AlCl、FeCl及びSnCl等のルイス酸、並びにそれらの錯体[例えば、BFエーテル錯体、BFテトラヒドロフラン錯体(BF・THF)];HSO及びHClO等のプロトン酸;KClO及びNaClO等のアルカリ金属の過塩素酸塩;Ca(ClO及びMg(ClO等のアルカリ土類金属の過塩素酸塩;Al(ClO等の上記以外の金属の過塩素酸塩等が挙げられ、好ましいのは、BFエーテル錯体及びBF・THFである。
また、上記式(1)のポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)は、その片末端あるいは両末端の水酸基が、脂肪酸又はアルコールで封鎖されていてもその性能発現に影響はない。したがって、上記式(1)のポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)として、その脂肪酸エステル化物又はエーテル化物が同様に使用できる。
脂肪酸エステル化物としては、直鎖状又は分岐状脂肪酸エステルのいずれも使用でき、脂肪酸エステルを構成する脂肪酸は、飽和脂肪酸であっても不飽和脂肪酸であってもよい。
そのような脂肪酸としては、炭素数1〜22の飽和又は不飽和脂肪酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキジン酸、ベヘン酸等の飽和脂肪酸、又は例えば、オレイン酸、エライジン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸を挙げることができる。また、炭素数10以上の脂肪族飽和又は不飽和ジカルボン酸、例えば、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、デセン二酸、ウンデセン二酸、ドデセン二酸等を挙げることもできる。また、これらの脂肪酸の一部の水素原子がヒドロキシル基などの置換基で置換されたものであってもよい。
これらの脂肪酸は1種又は2種以上組み合せて使用できる。
上記式(1)のポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)の脂肪酸エステルの好ましい具体例としては、モノパルミチン酸エステル、ジパルミチン酸エステル、モノステアリン酸エステル、ジステアリン酸エステル、(モノパルミチン酸・モノステアリン酸)エステル、ベヘン酸エステル等が挙げられる。
アルキルエーテル化物としては、直鎖状又は分岐状脂肪族のいずれも使用でき、アルキルエーテル化物を構成するアルコールは、アルキルエーテル化物を構成するアルコールとしては、直鎖状又は分岐状アルコールのいずれも使用でき、飽和脂肪族アルコールであってもよく不飽和脂肪族アルコールであってもよい。そのようなアルコールとしては、炭素数1〜22のアルコール、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール等であり、ポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)のアルキルエーテルの好ましい具体例としては、メチルエーテル、エチルエーテル、ブチルエーテル、ラウリルエーテル、ステアリルエーテル等が挙げられる。
また、上記式(1)のポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)の数平均分子量(以下、Mnともいう)としては、200〜5,000であることが好ましく、より好ましくは300以上、さらに好ましくは500以上であり、より好ましくは4,000以下、さらに好ましくは3,000以下である。上記範囲の上限以下であると、成分(B)の成分(A)との相溶性が良好であるので好ましく、又上記範囲の下限以上であると、樹脂シート又はフィルムの成形時のガス発生を抑制できるので好ましい。ここでいう数平均分子量はJIS K1577に準拠して測定した水酸基価に基づいて算出した数平均分子量である。
上記式(1)のポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対し、0.01〜1.5質量部である。好ましい含有量は0.1質量部以上、より好ましくは0.15質量部以上であり、好ましくは1.25質量部以下、より好ましくは1.0質量部以下である。含有量が0.01質量部以上であると、樹脂シート又はフィルムの色相が良好で、十分な光透過性能が得られ、1.5質量部以下であると、樹脂シート又はフィルムの成形時の発泡が抑制され、成形性が良好となり、また十分な光透過性能を保持する。
[酸化防止剤(C)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、酸化防止剤を含有することが好ましい。特に、リン系酸化防止剤を含有することで、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの色相が良好なものとなり、さらに耐熱変色性が向上する。
リン系酸化防止剤としては、公知の任意のものを使用できる。具体例を挙げると、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸などのリンのオキソ酸;酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウムなどの酸性ピロリン酸金属塩;リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛など第1族又は第2B族金属のリン酸塩;ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物などが挙げられるが、ホスファイト化合物が特に好ましい。ホスファイト化合物を選択することで、より高い耐変色性と連続生産性を有するポリカーボネート樹脂シート又はフィルムが得られる。
ここでホスファイト化合物は、一般式:P(OR)で表される3価のリン化合物であり、Rは、1価又は2価の有機基を表す。
このようなホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ/ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレン−ジホスファイト、6−[3−(3−tert−ブチル−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]−ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
ホスファイト化合物としては、なかでもトリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましく、なかでもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、ADEKA(株)製「アデカスタブ1178」、住友化学(株)製「スミライザーTNP」、城北化学工業(株)製「JP−351」、ADEKA(株)製「アデカスタブ2112」、BASF社製「イルガフォス168」、城北化学工業(株)製「JP−650」等が挙げられる。
特に好ましいホスファイト化合物としては、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトのようなペンタエリスリトールジホスファイト構造を有するものが挙げられる。このような、有機ホスファイト化合物としては、具体的には例えば、ADEKA(株)製「アデカスタブPEP−36」、Doverchemical社製「Doverphos S−9228」等が好ましく挙げられる。
なお、リン系酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
さらに本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムでは、酸化防止剤として、上記のようなリン系酸化防止剤と、ヒンダードフェノール系酸化防止剤とを組み合わせて使用すること好ましい。また、本発明において、ヒンダードフェノール系酸化防止剤としては、非アミンのヒンダードフェノール系酸化防止剤を用いることが特に好ましい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤の具体例としては、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、チオジエチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオナミド)、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ジエチル[[3,5−ビス(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシフェニル]メチル]ホスフォエート、3,3’,3”,5,5’,5”−ヘキサ−tert−ブチル−α,α’,α”−(メシチレン−2,4,6−トリイル)トリ−p−クレゾール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート]、ヘキサメチレンビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン,2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール等が挙げられる。
なかでも、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好ましい。このようなフェノール系酸化防止剤としては、具体的には、例えば、BASFジャパン社製「イルガノックス1010」(登録商標、以下同じ)、「イルガノックス1076」、ADEKA社製「アデカスタブAO−50」、「アデカスタブAO−60」等が挙げられる。なお、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、1種が含有されていてもよく、2種以上が任意の組み合わせ及び比率で含有されていても良い。
酸化防止剤(C)の含有量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.005〜0.4質量部であり、好ましくは0.007質量部以上、より好ましくは0.008質量部以上、特に好ましくは0.01質量部以上であり、また、好ましくは0.3質量以下、より好ましくは0.2質量部以下、さらに好ましくは0.15質量部以下、特には0.1質量部以下である。酸化防止剤(C)の含有量が上記範囲の0.005質量部以上の場合は、色相、耐熱変色性が良好な樹脂シート又はフィルムを得ることができ、酸化防止剤(C)の含有量が0.4質量以下の場合は、耐熱変色性を悪化させることなく、湿熱安定性が良好な樹脂シート又はフィルムを得ることができる。また、成分(C)としてリン系酸化防止剤とヒンダードフェノール系酸化防止剤を組み合わせて使用する場合、その含有割合は成分(A)100質量部に対して、リン系酸化防止剤が0.005〜0.2質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0〜0.2質量部の範囲で含有することが好ましい。より好ましくは、リン系酸化防止剤が0.01〜0.2質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0〜0.1質量部の範囲であり、さらに好ましくはリン系酸化防止剤が0.01〜0.15質量部、ヒンダードフェノール系酸化防止剤が0〜0.05質量部の範囲である。
[エポキシ化合物(D)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、エポキシ化合物(D)を含有してもよい。エポキシ化合物(D)として、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。具体的には、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル6’−メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAグリシジルエーテル、フタル酸ジグリシジル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジル、ビス−エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス−エポキシエチレングリコール、ビス−エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−tert−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、オクタデシル2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ブチル2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、ブチル−2−イソプロピル−3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6−ジメチル−2,3−エポキシシクロヘキシル3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−tert−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ−n−ブチル3−tert−ブチル−4,5−エポキシ−シス−1,2−シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等を好ましく例示することができる。
エポキシ化合物は、単独で用いても2種以上組み合わせて用いてもよい。
エポキシ化合物(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、0.0005〜0.2質量部であり、好ましくは0.001質量部以上、より好ましくは0.003質量部以上、さらに好ましくは0.005質量部以上であり、また、好ましくは0.15質量以下、より好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.05質量部以下である。エポキシ化合物(D)の含有量が0.0005質量部以上の場合は、色相、耐熱変色性が良好な樹脂シート又はフィルムを得ることができ、0.2質量部以下の場合は、耐熱変色性が良好で、色相や湿熱安定性も良好な樹脂シート又はフィルムを得ることができる。
[その他の添加剤(E)]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、上記した以外のその他の添加剤、例えば、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤などの添加剤を含有することができる。これらの添加剤を1種又は2種以上配合してもよい。
[芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム及びその原料]
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムの製造方法は特に限定されない。
例えば上記成分(A)及び(B)、そして必要に応じて、成分(C)、(D)及び/又はその他の添加剤を混合し、溶融混練を行う。溶融混練は、通常用いられている方法、例えば、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー、単軸スクリュー押出機、二軸スクリュー押出機、コニーダ、多軸スクリュー押出機等を用いる方法により行うことができる。溶融混練に際しての加熱温度は、通常220〜320℃程度の範囲で適宜選定される。
得られた溶融混練物は、必要に応じて、周知の方法に基づき単離した後、例えば、周知のストランド方式のコールドカット法、空気中ホットカット方式のホットカット法、水中ホットカット方式のホットカット法等によって、樹脂ペレットとして得ることができる。尚、得られた樹脂ペレットは、必要に応じて、熱風乾燥炉、真空乾燥炉、脱湿乾燥炉を用いた乾燥といった方法に基づき、適宜、乾燥させることが好ましい。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、上記の溶融混練物、あるいは、得られた樹脂ペレットを原料として、公知の成形方法、例えば中空成形法、射出成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、真空成形法、ブロー成形法、プレス成形法、圧空成形法、発泡成形法、熱曲げ成形法、圧縮成形法、カレンダー成形法及び回転成形法等の成形法を適用することができる。なお、一般に、シート又はフィルムは、長さ及び幅に比較して厚さが極めて薄い平板状の成形品をいい、シートの薄いものをフィルムと称する例もある。そのような例では、厚さが0.2mm以上のものを「シート」と称し、厚さが0.2mm未満のものを「フィルム」と称する。しかしながら、本明細書において用語「シート」又は「フィルム」は、実質的に互換可能に使用される。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、耐熱不足を改善したものであり、320℃を超える高温での成形にも耐え得ることから、押出成形法などの滞留時間が長い成形法においても、透明性が高く、黄変のない高い光学特性のシート又はフィルム等の製品を得ることができる。このようなシート又はフィルムの例としては、拡散シート又はフィルム、プリズムシート又はフィルム、偏光シート又はフィルム、反射シート又はフィルム、導光シート又はフィルム、あるいは透明スクリーン用シート又はフィルム等が挙げられる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、特に押出成形法により、光透過性に優れたシート又はフィルムを得ることができ、光学シート又はフィルム、特に、導光シート又はフィルムとして有用である。導光シート又はフィルムは、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の中で、LED等の光源の光を導光するためのものであり、側面又は裏面等から入れた光を、通常表面に設けられた凹凸により拡散させ、均一の光を出す。その形状は、通常平板状であり、表面には凹凸を有していても有していなくてもよい。
導光板の成形は、通常、熱履歴の少ない、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形等の射出成形により行われているが、射出成形により得られる成形品の薄肉化には限界がある。本発明の樹脂シート又はフィルム原料は、高温での成形にも耐え得ると共に、強度及び加工性に優れており、熱滞留時の着色が少ないため、押出成形法による芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム、特に光学シート又はフィルム、具体的には導光シート又はフィルム成形に適している。また押出成形では、成形品の肉厚は、目的に応じて適宜設定することができ、射出成形では困難な、均一で、かつ薄い肉厚の成形品を得ることができる。例えば、厚さ1mm未満、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.5mm以下、さらに好ましくは0.4mm以下、特には0.3mm以下のシート又はフィルム、特に光学シート又はフィルム、具体的には導光シート又はフィルムを得ることができる。
本発明の樹脂シート又はフィルム原料を用いて押出成形した導光シート又はフィルムは、樹脂シート又はフィルム原料が高温での成形や熱滞留にも耐え得るため、押出成形品であっても、極めて良好な透過率と色相を示すと共に、強度及び加工性に優れる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の各種携帯端末、カメラ、時計、ノートパソコン、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。
以下、実施例を示して本発明について更に具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
実施例及び比較例で使用した原料は次の通りである。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量Mvは、ウベローデ粘度計を用いてジクロロメタン中20℃の極限粘度[η]を測定し、以下の式より求めた。
[原料]
・芳香族ポリカーボネート樹脂(A)
A1:ビスフェノールAを出発原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂(ユーピロンH−4000F、三菱ガス化学(株)製、Mv 16,000)
A2:ビスフェノールAを出発原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂(三菱ガス化学(株)製、Mv 20,000)
A3:ビスフェノールAを出発原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂(ユーピロンS−3000F、三菱ガス化学(株)製、Mv 22,000)
A4:ビスフェノールAを出発原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂(ユーピロンE−2000F、三菱ガス化学(株)製、Mv 28,000)
A5:ビスフェノールAを出発原料とする芳香族ポリカーボネート樹脂(ユーピロンK−4000F、三菱ガス化学(株)製、Mv 40,000)
・ポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)
B1:ポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコール(日油(株)製、Mn 1,000、下記式(1)中、m:n=6:4)

B2:ポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコール(日油(株)製、Mn 1,500、下記式(1)中、m:n=6:4)

B3:ポリオキシテトラメチレンポリオキシエチレングリコール(ユニオールDC−1100、日油(株)製、Mn 1,000)
B4:ポリオキシテトラメチレンポリオキシプロピレングリコール(ユニオールDCB−1000、日油(株)製、Mn 1,000)
・酸化防止剤(C)
C:ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(アデカスタブPEP−36、ADEKA(株)製)
・エポキシ化合物(D)
D:3,4−エポキシシクロヘキシルメチル3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(セロキサイド2021P、ダイセル(株)製)
・その他の添加剤(E)
E:ポリオキシテトラメチレングリコール(PTMG1000、三菱化学(株)製、Mn 1,000)
(実施例1〜14、比較例1〜5)
[樹脂ペレットの製造]
上記した各成分(A)〜(E)を、表1乃至表3に記した割合(質量部)で配合し、タンブラーにて20分混合した後、スクリュー径26mmのベント付二軸押出機(東芝機械(株)製「TEM26SS」)により、シリンダー温度280℃で溶融混練し、ストランドカットによりペレットを得た。比較例4は、粘度平均分子量が大きいために、装置の負荷が大きく、上記の条件でのペレット製造は困難であった。このペレットからのフィルムの成形及び得られたフィルムの評価方法は以下のとおりである。
[ロール汚れ性の評価]
得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、スクリュー径26mmのTダイリップの付いた二軸フィルム押出機(東芝機械(株)製「TEM26DS」)により、シリンダー温度270℃、ロール温度110℃で、片面タッチ方式で、厚み0.3mmフィルムを成形した。製造開始から1時間後のロール鏡面への揮発成分の付着度合い、及びロール付着物によるフィルムの外観不良を観察し、次の基準で評価した。
◎:ロールへの揮発成分の付着が少なく、フィルムの外観不良が発生しない
△:ロールへの揮発成分の付着があり、フィルムの外観不良が発生する
×:ロールへの揮発成分の付着多くがあり、フィルムの外観不良が多数発生する
ロールへの揮発成分の付着の判定基準を図1(a)〜(c)に示す。
[フィルムの溶液YI測定]
得られたペレットを120℃で5時間乾燥後、スクリュー径26mmのTダイリップの付いた二軸フィルム押出機(東芝機械(株)製「TEM26DS」)により、ロール温度130℃で厚み0.10mm、0.40mmフィルムを成形した。得られた0.4mm厚みのポリカーボネート樹脂フィルムの15重量%ジクロロメタン溶液を透明容器に入れ、JIS Z 8722に準拠するdi:0°後分光方式にて、50mmのジクロロメタン溶液層を透過させて受光部で受光し、算出される溶液YI値を測定した。溶液YI値の測定には、日本電色工業(株)製分光透過色計「SD−6000」を用いた。なお、合格基準は、粘度平均分子量が22,000以下のときは、YIが1.0以下、粘度平均分子量が22,000よりも大きいときは、YIが1.2以下である。
[フィルムのインパクト強度測定]
得られた0.1mm厚みのポリカーボネート樹脂フィルムを、(株)安田精機製作所フィルムインパクトテスター「No.181」を用いて、フィルムのインパクト強度を測定した。実施例1及び2は、1.5Jの重りを使用し、その他は3Jの重りを使用した。また、3Jの重りを使用してもフィルムが破壊しない場合は、NBと表記した。なお、好ましいインパクト強度は2.0以上である。
[フィルムの打ち抜き加工性]
得られた0.4mm厚みのポリカーボネート樹脂フィルムを共和工業(株)製のスーパーカッターを用いて裁断した。裁断面を光学顕微鏡で観察し、次の基準で評価した。
◎:裁断面が全く荒れていない
○:裁断面がほぼ荒れていない
△:裁断面がやや荒れている
×:裁断面が荒れている
裁断面の判定基準を図2(a)〜(d)に示す。
表1及び表2から明らかなように、実施例の樹脂シート又はフィルムは、フィルムの溶液YI値が比較例と比べて小さく、色相が良好である。また、押出成形時のロール汚れが少ないため、シート・フィルム押出成形に好適である。さらにインパクト強度及びフィルム打ち抜き加工性の結果より、強度及び加工性にも優れる傾向を示した。
一方表3より、比較例1及び3は、成分(B)の添加量が少なく、色相が極めて悪く、比較例2は成分(B)の添加量が過剰でインパクト強度及びフィルム打ち抜き加工性の低下が見られる。比較例4は、成分(B)の粘度平均分子量(Mv)が大きく、成分(A)との相溶性が悪く、成形困難であった。比較例5については、成分(B)に替えて、ポリオキシテトラメチレングリコールを添加したものであり、色相とインパクト強度、フィルム打ち抜き加工性に優れるものの、成形時にロール汚れが発生する。
したがって、本発明の押出成形時に、光線透過率低下及び黄変の少なく、強度及び加工性に優れた芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムを提供するという目的は、本発明の要件を全て満たして、はじめて達成されるということが分かる。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルムは、光線透過率及び色相に優れ、高温での成形にも耐え得ると共に、強度及び加工性に優れた樹脂シート又はフィルムであり、熱滞留時の着色が少ないため、押出成形法で極めて好適に使用でき、その押出成形品は各種用途におけるフィルムとして、例えば、光学シート又はフィルム、特に、導光シート又はフィルムとして有用であり、産業上の利便性は非常に高い。

Claims (7)

  1. 粘度平均分子量(Mv)が15,000〜39,000である芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、下記一般式(1)で表されるポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)を0.01〜1.5質量部含有することを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。

    (式中、Rは、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であり、m及びnは、それぞれ独立に、2〜60の整数を示し、m+nは、4〜120の整数である。)
  2. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、さらに酸化防止剤(C)を0.005〜0.4質量部含有することを特徴とする、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
  3. 酸化防止剤(C)がリン系の酸化防止剤である、請求項2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
  4. 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100質量部に対して、さらにエポキシ化合物(D)を0.0005〜0.2質量部含有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
  5. ポリオキシテトラメチレングリコール誘導体(B)が、下記式(2)で表されるポリオキシテトラメチレンポリオキシブチレングリコールである、請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。

    (式中、m及びnは、それぞれ独立に、2〜60の整数を示し、m+nは、4〜120の整数である。)
  6. 光学シート又はフィルムである、請求項1〜5のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
  7. 光学シート又はフィルムが、導光シート又はフィルムである、請求項6に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂シート又はフィルム。
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