JP2022144172A - ポリカーボネート樹脂組成物および成形品 - Google Patents

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Abstract

【課題】高い流動性および良好な色相を有し、さらに透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供すること。【解決手段】本発明の一態様であるポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、ポリエーテルとカーボネート結合とを有するポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を0.01~5質量部含有する。前記ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、クロロホルムを溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で1000以上8000未満である。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリカーボネート樹脂組成物および成形品に関する。
パーソナルコンピュータ、携帯電話等に使用される液晶表示装置には、その薄型化、軽量化、省力化、高精細化の要求に対応するために、面状光源装置が組み込まれている。そして、この面状光源装置には、入光する光を液晶表示側に均一かつ効率的に導く役割を果たす目的で、一面が一様な傾斜面を有する楔型断面の導光板や平板形状の導光板が備えられている。また、導光板には、その表面に凹凸パターンを形成して光散乱機能が付与されたものもある。
このような導光板は、熱可塑性樹脂の射出成形によって得られ、上記の凹凸パターンは入れ子金型の表面に形成された凹凸部の転写によって付与される。従来、導光板はポリメチルメタクリレート(PMMA:Polymethyl methacrylate)等の樹脂材料から成形されてきたが、最近では、より鮮明な画像を映し出す表示装置が求められ、これに伴い、光源近傍で発生する熱によって表示装置内が高温化する傾向にある。このため、導光板の樹脂材料は、より耐熱性の高いポリカーボネート樹脂材料に置き換えられつつある。
一般に、ポリカーボネート樹脂は、機械的性質、熱的性質、電気的性質、耐候性に優れた樹脂である。しかし、ポリカーボネート樹脂に対する光線の透過率は、PMMA等、従来の導光板に用いられてきた樹脂に比べて低い。それ故、ポリカーボネート樹脂製の導光板と光源とから面光源体を構成した場合、輝度が低いという問題がある。また、最近では、導光板の入光部と当該入光部から離れた部位との色度差を少なくすることが求められているが、ポリカーボネート樹脂はPMMAと比べて黄変しやすいという問題がある。
例えば、特許文献1には、ポリカーボネート樹脂にアクリル樹脂および脂環式エポキシ化合物を添加することにより、光線の透過率および輝度を向上させる方法が提案されている。特許文献2には、ポリカーボネート樹脂末端を変性し、導光板への凹凸部の転写性を上げることにより、輝度を向上させる方法が提案されている。特許文献3には、脂肪族セグメントを有するコポリエステルカーボネートを導入して上記の転写性を向上させることにより、輝度を向上させる方法が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、アクリル樹脂の添加によって色相は良好になるが、白濁するために光線の透過率および輝度を上げることが困難である。脂環式エポキシ化合物を添加することにより、透過率が向上する可能性はあるが、色相の改善効果は認められない。特許文献2および特許文献3に記載の方法では、導光板を構成する樹脂の流動性や転写性の改善効果は期待できるものの、耐熱性が低下するという欠点がある。
一方、ポリエチレングリコールまたはポリ(2-メチル)エチレングリコール等の化合物をポリカーボネート樹脂等の熱可塑性樹脂に配合することが知られている。例えば、特許文献4には、この化合物を含有する耐γ線照射性のポリカーボネート樹脂が記載されている。特許文献5には、この化合物をPMMA等の樹脂に配合してなり、帯電防止性および表面外観に優れた熱可塑性樹脂組成物が記載されている。
また、特許文献6では、直鎖アルキル基で構成されるポリアルキレングリコールをポリカーボネート樹脂に配合することにより、透過率および色相を改良することが提案されている。例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコールをポリカーボネート樹脂に配合することにより、透過率や黄色度(イエローインデックス:YI)に改善が見られる。
さらに、特許文献7には、ポリアルキレングリコールをジエステル化したジオールを原料(コモノマー)として用いたポリカーボネート共重合体の製造方法が記載されている。特許文献7に記載のポリカーボネート共重合体は、ポリアルキレングリコールのジエステルジオールが不安定であり、色相や耐熱変色性も悪くなる。
特開平11-158364号公報 特開2001-208917号公報 特開2001-215336号公報 特開平1-22959号公報 特開平9-227785号公報 特許第5699188号公報 特開2006-016497号公報
近年、スマートフォンやタブレット型端末、或いは車載表示装置等の各種情報端末の分野においては、導光板等の光学部品の薄肉化および大型化が著しいスピードで進行している。このような光学部品の成形には、高いバレル温度および高速射出が求められている。これに伴い、光学部品の成形に用いられる樹脂組成物には、良好な色相および透明性等の優れた光学特性のみならず、射出成形に適した高い流動性が要望されている。
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであり、その目的は、高い流動性および良好な色相を有し、さらに透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、特定範囲の分子量を有するポリエーテルポリカーボネート樹脂を、ポリカーボネート樹脂に対して特定の割合で配合することにより、高い流動性および良好な色相を有し、さらに透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、ポリエーテルとカーボネート結合とを有するポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を0.01~5質量部含有し、前記ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、クロロホルムを溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で1000以上8000未満である、ことを特徴とする。
また、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、上記の発明において、前記ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)は、下記一般式(1)で表される共重合体である、ことを特徴とする。
Figure 2022144172000001
(一般式(1)中、RZおよびRXは、各々独立に、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示す。RZおよびRXは各々複数存在し、複数のRZおよびRXは、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。iは2~10の整数を示し、pは1~600の整数を示し、nは1~3000の整数を示す。)
また、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、上記の発明において、前記一般式(1)中のiは、3または4である、ことを特徴とする。
また、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、上記の発明において、前記ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、さらに、リン系安定剤(C)を0.005~0.5質量部含有する、ことを特徴とする。
また、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、上記の発明において、当該ポリカーボネート樹脂組成物の300mm光路長における初期YI値は、25.0以下であり、95℃で250時間保持後の当該ポリカーボネート樹脂組成物の300mm光路長におけるYI値と前記初期YI値との差ΔYIは、6.0以下である、ことを特徴とする。
また、本発明に係る成形品は、上記の発明のいずれか一つに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる、ことを特徴とする。
また、本発明に係る成形品は、上記の発明において、光学部品である、ことを特徴とする。
本発明によれば、高い流動性および良好な色相を有し、さらに透明性に優れたポリカーボネート樹脂組成物および成形品を提供することができるという効果を奏する。
以下、本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物および成形品の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下に示す実施形態によって限定されるものではない。また、本明細書において、「~」という表記は、特に断りがない場合、その前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。
本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を0.01~5質量部含有するものである。このポリカーボネート樹脂組成物において、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、クロロホルムを溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で1000以上8000未満である。以下、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物を構成する各成分、このポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品等について詳細に説明する。
[ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)]
まず、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物を構成する一成分であるポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)について詳細に説明する。本発明において使用するポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)は、ポリエーテルとカーボネート結合とを有する樹脂である。
詳細には、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)のポリエーテルは、例えば、ポリアルキレングリコールである。このポリアルキレングリコールは、置換基を有していてもよいし、置換基を有していなくてもよい。ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)は、このようなポリエーテルとカーボネート結合とによって構成される。本発明において、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)は、ポリアルキレングリコールをカーボネート結合することによって構成される共重合体、すなわち、下記一般式(1)で表される共重合体であることが好ましい。
Figure 2022144172000002
一般式(1)中、RZおよびRXは、各々独立に、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示す。RZおよびRXは各々複数存在し、これら複数のRZおよびRXは、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。iは、2~10の整数を示す。pは、1~600の整数を示す。nは、1~3000の整数を示す。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)は、界面重合法または溶融重合法等の慣用の製造方法によって製造することができる。例えば、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)は、ポリアルキレングリコールとホスゲンとを反応させる方法、或いはポリアルキレングリコールとエチレンカーボネートまたはジフェニルカーボネート等のカーボネート前駆体とを反応させる方法により、製造することができる。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)において、置換基を有してもよい上記ポリアルキレングリコールとしては、各種のポリアルキレングリコールを使用することができる。例えば、上記ポリアルキレングリコールの好ましいものとしては、下記一般式(2)で表される分岐型ポリアルキレングリコールが挙げられる。
Figure 2022144172000003
一般式(2)において、Rは、炭素数1~3のアルキル基を示す。qは、2~400の整数を示す。一般式(2)で表される分岐型ポリアルキレングリコールは、1種類のRを有する単独重合体であってもよいし、2種類以上のRを有する共重合体であってもよい。
一般式(2)で表される分岐型ポリアルキレングリコールの好ましい具体例としては、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール等が挙げられる。上記ポリプロピレングリコールは、一般式(2)においてR=CH3(メチル基)の分岐型ポリアルキレングリコールであり、一般式(1)においてi=2、RZ=CH3、RX=Hのポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)である。また、上記ポリブチレングリコールは、一般式(2)においてR=CH3CH2(エチル基)の分岐型ポリアルキレングリコールであり、一般式(1)においてi=2、RZ=CH3CH2、RX=Hのポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)である。このような分岐型ポリアルキレングリコールの市販品としては、例えば、日油社製の商品名「ユニオールD-1000」、「ユニオールPB-1000」等が挙げられる。
また、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)において、置換基を有してもよい上記ポリアルキレングリコールは、直鎖型ポリアルキレングリコールであってもよい。この直鎖型ポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール(一般式(1)中のi=2、RZ=RX=H)、ポリトリメチレングリコール(一般式(1)中のi=3、RZ=RX=H)、ポリテトラメチレングリコール(一般式(1)中のi=4、RZ=RX=H)、ポリペンタメチレングリコール(一般式(1)中のi=5、RZ=RX=H)、ポリヘキサメチレングリコール(一般式(1)中のi=6、RZ=RX=H)等が好ましい。中でも、上記ポリアルキレングリコールとしては、ポリトリメチレングリコールまたはポリテトラメチレングリコールが特に好ましい。すなわち、一般式(1)中のiは、3または4であることが特に好ましい。また、上記ポリアルキレングリコールの置換基(一般式(1)中のRZ、RX)は、水素原子であることが好ましい。
ポリトリメチレングリコールの市販品としては、一般式(1)中のRZおよびRXが水素原子であるポリトリメチレングリコールの市販品が挙げられる。このポリトリメチレングリコールの市販品としては、例えば、Allessa社製の商品名「Velvetol」等が挙げられる。また、ポリテトラメチレングリコールの市販品としては、一般式(1)中のRZおよびRXが水素原子であるポリテトラメチレングリコールの市販品が挙げられる。このポリテトラメチレングリコールの市販品としては、例えば、三菱ケミカル社製の商品名「PTMG」等が挙げられる。
また、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)において、置換基を有してもよい上記ポリアルキレングリコールは、下記一般式(3)で表される直鎖アルキレンエーテル単位と、下記一般式(4-1)~(4-4)のいずれかで表される単位から選ばれる分岐アルキレンエーテル単位と、を有するポリアルキレングリコール共重合体であってもよい。
Figure 2022144172000004
一般式(3)において、pは2~6の整数を示す。一般式(3)で表される直鎖アルキレンエーテル単位は、所定の整数pを取る単独の単位であってもよいし、互いに異なる整数pを取る複数の単位が混合したものであってもよい。
Figure 2022144172000005
一般式(4-1)~(4-4)において、R1~R10は、各々独立に水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示す。一般式(4-1)~(4-4)の各々において、R1~R10の少なくとも1つは、炭素数1~3のアルキル基である。
上記ポリアルキレングリコール共重合体が有する分岐アルキレンエーテル単位は、一般式(4-1)~(4-4)のいずれか一つで表される構造の分岐アルキレンエーテル単位によって構成される単独重合体であってもよい。或いは、当該分岐アルキレンエーテル単位は、一般式(4-1)で表される構造、一般式(4-2)で表される構造、一般式(4-3)で表される構造、および一般式(4-4)で表される構造の中から選ばれる複数の構造の分岐アルキレンエーテル単位によって構成される共重合体であってもよい。
一般式(3)で表される直鎖アルキレンエーテル単位としては、グリコールで例示すると、一般式(3)中のpが2であるエチレングリコール、一般式(3)中のpが3であるトリメチレングリコール、一般式(3)中のpが4であるテトラメチレングリコール、一般式(3)中のpが5であるペンタメチレングリコール、一般式(3)中のpが6であるヘキサメチレングリコールが挙げられる。当該直鎖アルキレンエーテル単位は、これらが混合したものであってもよい。中でも、当該直鎖アルキレンエーテル単位としては、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコールが好ましく、テトラメチレングリコールが特に好ましい。
トリメチレングリコールは、工業的には、エチレンオキシドのヒドロホルミル化によって3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドを得て、これを水添する方法、またはアクロレインを水和して得た3-ヒドロキシプロピオンアルデヒドをNi触媒で水素化する方法によって製造される。また、最近では、バイオ法により、グリセリン、グルコース、澱粉等を微生物に還元させてトリメチレングリコールを製造することも行われている。
一般式(4-1)で表される分岐アルキレンエーテル単位としては、グリコールで例示すると、(2-メチル)エチレングリコール、(2-エチル)エチレングリコール、(2,2-ジメチル)エチレングリコール等が挙げられる。一般式(4-1)で表される分岐アルキレンエーテル単位は、これらのうち2種類以上が混合したものであってもよい。一般式(4-1)で表される分岐アルキレンエーテル単位としては、(2-メチル)エチレングリコール、(2-エチル)エチレングリコールが好ましい。
一般式(4-2)で表される分岐アルキレンエーテル単位としては、グリコールで例示すると、(2-メチル)トリメチレングリコール、(3-メチル)トリメチレングリコール、(2-エチル)トリメチレングリコール、(3-エチル)トリエチレングリコール、(2,2-ジメチル)トリメチレングリコール、(2,2-メチルエチル)トリメチレングリコール、(2,2-ジエチル)トリメチレングリコール(即ち、ネオペンチルグリコール)、(3,3-ジメチル)トリメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)トリメチレングリコール、(3,3-ジエチル)トリメチレングリコール等が挙げられる。一般式(4-2)で表される分岐アルキレンエーテル単位は、これらのうち2種類以上が混合したものであってもよい。
一般式(4-3)で表される分岐アルキレンエーテル単位として、グリコールで例示すると、(3-メチル)テトラメチレングリコール、(4-メチル)テトラメチレングリコール、(3-エチル)テトラメチレングリコール、(4-エチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジメチル)テトラメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(3,3-ジエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジメチル)テトラメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)テトラメチレングリコール、(4,4-ジエチル)テトラメチレングリコール等が挙げられる。一般式(4-3)で表される分岐アルキレンエーテル単位は、これらのうち2種類以上が混合したものであってもよい。中でも、一般式(4-3)で表される分岐アルキレンエーテル単位としては、(3-メチル)テトラメチレングリコールが好ましい。
一般式(4-4)で表される分岐アルキレンエーテル単位としては、グリコールで例示すると、(3-メチル)ペンタメチレングリコール、(4-メチル)ペンタメチレングリコール、(5-メチル)ペンタメチレングリコール、(3-エチル)ペンタメチレングリコール、(4-エチル)ペンタメチレングリコール、(5-エチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(3,3-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(4,4-ジエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジメチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-メチルエチル)ペンタメチレングリコール、(5,5-ジエチル)ペンタメチレングリコール等が挙げられる。一般式(4-4)で表される分岐アルキレンエーテル単位は、これらのうち2種類以上が混合したものであってもよい。
以上では、一般式(4-1)~(4-4)の各々で表される分岐アルキレンエーテル単位を便宜的にグリコールで例示したが、当該分岐アルキレンエーテル単位は、上述したグリコールに限らず、これらのアルキレンオキシドや、これらのポリエーテル形成性誘導体であってもよい。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を構成するポリアルキレングリコール共重合体としては、テトラメチレンエーテル単位と一般式(4-3)で表される分岐アルキレンエーテル単位とからなる共重合体が好ましく、特に、テトラメチレンエーテル単位と3-メチルテトラメチレンエーテル単位とからなる共重合体がより好ましい。また、当該ポリアルキレングリコール共重合体としては、テトラメチレンエーテル単位と一般式(4-1)で表される分岐アルキレンエーテル単位とからなる共重合体も好ましく、特に、テトラメチレンエーテル単位と2-メチルエチレンエーテル単位とからなる共重合体、及びテトラメチレンエーテル単位と2-エチルエチレンエーテル単位とからなる共重合体がより好ましい。さらに、当該ポリアルキレングリコール共重合体としては、テトラメチレンエーテル単位と一般式(4-2)で表される分岐アルキレンエーテル単位とからなる共重合体も好ましく、2,2-ジメチルトリメチレンエーテル単位、即ちネオペンチルグリコールエーテル単位からなる共重合体も好ましい。
また、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を構成するポリアルキレングリコール共重合体は、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。
上記ポリアルキレングリコール共重合体において、一般式(3)で表される直鎖アルキレンエーテル単位と一般式(4-1)~(4-4)の各々で表される分岐アルキレンエーテル単位との共重合比率は、(直鎖アルキレンエーテル単位)/(分岐アルキレンエーテル単位)のモル比で、95/5~5/95であることが好ましい。当該共重合比率は、93/7~40/60であることがより好ましく、90/10~65/35であることが更に好ましく、直鎖アルキレンエーテル単位がリッチであることが特に好ましい。なお、上記モル分率は、1H-NMR測定装置を用い、重水素化クロロホルムを溶媒として測定される。
上述した中でも、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を構成するポリアルキレングリコールとして特に好ましい単独重合体は、ポリトリメチレングリコール、ポリ(2-メチル)エチレングリコール、ポリ(2-エチル)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等である。また、当該ポリアルキレングリコールとして特に好ましい共重合体は、ポリテトラメチレングリコール-ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール-ポリトリメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(3-メチル)テトラメチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-エチル)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール-ポリネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール-ポリトリメチレングリコール、ポリエチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコール等である。
また、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を構成するポリアルキレングリコールは、構造中に1,4-ブタンジオール、グリセロール、ソルビトール、ベンゼンジオール、ビスフェノールA、水素化ビスフェノールA、シクロヘキサンジオール、スピログリコールなどのポリオール由来の構造を含むものであってもよい。当該ポリアルキレングリコールの重合時にこれらのポリオールを加えることにより、これらの有機基を主鎖中に付与することができる。中でも、特に好ましくは、グリセロール、ソルビトール、ビスフェノールA等である。
構造中に有機基を含有するポリアルキレングリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコールグリセリルエーテル、ポリ(2-メチル)エチレングリコールグリセリルエーテル、ポリ(2-エチル)エチレングリコールグリセリルエーテル、ポリテトラメチレングリコールグリセリルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールグリセリルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールグリセリルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-エチル)ポリエチレングリコールグリセリルエーテル、ポリエチレングリコールソルビチルエーテル、ポリ(2-メチル)エチレングリコールソルビチルエーテル、ポリ(2-エチル)エチレングリコールソルビチルエーテル、ポリテトラメチレングリコールソルビチルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールソルビチルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールソルビチルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-エチル)エチレングリコールソルビチルエーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリエチレングリコール)エーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリ(2-メチル)エチレングリコール)エーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリ(2-エチル)エチレングリコール)エーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリテトラメチレングリコール)エーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリエチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコール)エーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコール)エーテル、ビスフェノールA-ビス(ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-エチル)ポリエチレングリコール)エーテル等が好ましいものとして挙げられる。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を構成するポリエーテル(例えばポリアルキレングリコール)の重量平均分子量(Mw)は、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)自体のMwを下回る範囲において、100以上8000未満であることが好ましい。当該ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)の下限値は、200以上であることがより好ましい。当該ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)の上限値は、6000以下であることがより好ましく、5000以下であることが更に好ましく、4000以下であることが特に好ましい。当該ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)が8000以上である場合、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)との相溶性が低下する傾向がある。当該ポリアルキレングリコールの重量平均分子量(Mw)が100を下回る場合、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を含有するポリカーボネート樹脂組成物の色相改善効果が低下する。
なお、本発明において、重量平均分子量(Mw)は、クロロホルムを溶媒(展開溶媒)としたゲル浸透クロマトグラフィー(GPC:Gel Permeation Chromatography)により、ポリスチレン換算で測定される分子量である。具体的には、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8320」を用い、カラムを東ソー社製のHZ-M(4.6mm×150mm)×3本直列とし、溶離液をクロロホルムとし、測定温度を25℃としてGPCを行い、これによって求めたポリスチレン換算分子量の値が、本発明における重量平均分子量(Mw)である。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が挙げられる。なお、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の原料としては、1種類のカーボネート前駆体を用いてもよいし、2種類以上のカーボネート前駆体を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
上記カーボネート前駆体のうち、カルボニルハライドとしては、例えば、ホスゲンとジヒドロキシ化合物との反応によるビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、例えば、ジアリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類、ジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。ジアリールカーボネート類としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。ジアルキルカーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。ジヒドロキシ化合物のカーボネート体としては、例えば、ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等が挙げられる。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の任意の方法を採用できる。例えば、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の製造方法として、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中でも、溶融エステル交換法、界面重合法が好ましく、より好ましくは溶融エステル交換法である。また、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の原料となるポリアルキレングリコール自体の種類は、1種類であってもよいし、2種類以上であってもよい。また、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の原料となるポリアルキレングリコールは、単独共重合体を複数含むものであってもよいし、共重合体を複数含むものであってもよいし、これら単独共重合体および共重合体の混合物であってもよい。例えば、当該ポリアルキレングリコールは、上記分岐型ポリアルキレングリコールを複数含むものであってもよいし、上記直鎖型ポリアルキレングリコールを複数含むものであってもよいし、これら分岐型ポリアルキレングリコールおよび直鎖型ポリアルキレングリコールの混合物を含むものであってもよい。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、1000以上8000未満である。このポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の下限値は、1500以上であることが好ましい。このポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の上限値は、7000以下であることが好ましい。ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が8000以上である場合、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)との相溶性が低下する傾向がある。ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)が1000を下回る場合、ポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の成形時に、当該ポリカーボネート樹脂組成物からガスが発生し易くなる(すなわち発生ガス量が増加する)傾向がある。
ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)の調整は、コモノマージオール原料の1つであるポリアルキレングリコールのMwを選択することや、カーボネート前駆体の比率を調整すること、停止剤を添加すること、重合時の温度や圧力を調整すること等によって行うことが可能である。例えば、溶融エステル交換法において、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)のMwを増大するには、カーボネート前駆体モノマーであるジフェニルカーボネートと、ジオールモノマーとの反応比が1に近くなるように、モノマー原料比を調整し、副生フェノールを重合系中から除去し易いように重合温度を高く保ち、且つ圧力をできる限り低くし、攪拌による界面更新を積極的に行うこと等により、実現可能である。また、原料であるポリテトラメチレングリコールおよびエチレンカーボネートの混合物を加熱撹拌した後、触媒としてマグネシウム(II)アセチルアセトナート等のエステル交換触媒を用いてエステル交換反応を開始し、加熱撹拌する際に所定の原料比になるように調整することによっても、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)のMwを調整することが可能である。
なお、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、上述したポリエーテルの重量平均分子量(Mw)の場合と同様の手法によって測定することができる。具体的には、東ソー社製の高速GPC装置「HLC-8320」を用い、カラムを東ソー社製のHZ-M(4.6mm×150mm)×3本直列とし、溶離液をクロロホルムとし、測定温度を25℃としてGPCを行い、これによって求めたポリスチレン換算分子量の値が、本実施形態におけるポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)である。
本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物において、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して0.01~5質量部である。当該ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の含有量の下限値は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して、0.05質量部以上であることが好ましく、0.1質量部以上であることがより好ましい。当該ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の含有量の上限値は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して、4質量部以下であることが好ましく、3質量部以下であることがより好ましく、2質量部以下であることが特に好ましい。ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の含有量が0.01質量部未満である場合、当該ポリカーボネート樹脂組成物の色相および耐熱変色性を向上させるという効果が得られなくなる。ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の含有量が5質量部を超える場合、当該ポリカーボネート樹脂組成物が白濁して透明性を失う。
[ポリカーボネート樹脂(A)]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物を構成する一成分であるポリカーボネート樹脂(A)について詳細に説明する。本発明において使用するポリカーボネート樹脂(A)は、上記ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)以外のものであれば特に限定されず、種々のものが用いられる。
詳細には、ポリカーボネート樹脂は、炭酸結合に直接結合する炭素がそれぞれ芳香族炭素である芳香族ポリカーボネート樹脂と、当該炭素がそれぞれ脂肪族炭素である脂肪族ポリカーボネート樹脂とに分類できるが、本発明のポリカーボネート樹脂(A)は、これらの樹脂のいずれであってもよい。中でも、ポリカーボネート樹脂(A)としては、耐熱性、機械的物性、電気的特性等の観点から、芳香族ポリカーボネート樹脂が好ましい。
芳香族ポリカーボネート樹脂の原料となるモノマーのうち、芳香族ジヒドロキシ化合物としては、例えば、ジヒドロキシベンゼン類、ジヒドロキシビフェニル類、ジヒドロキシナフタレン類、ジヒドロキシジアリールエーテル類、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、カルド構造含有ビスフェノール類、ジヒドロキシジアリールスルフィド類、ジヒドロキシジアリールスルホキシド類、ジヒドロキシジアリールスルホン類等が挙げられる。
ジヒドロキシベンゼン類としては、例えば、1,2-ジヒドロキシベンゼン、1,3-ジヒドロキシベンゼン(即ち、レゾルシノール)、1,4-ジヒドロキシベンゼン等が挙げられる。ジヒドロキシビフェニル類としては、例えば、2,5-ジヒドロキシビフェニル、2,2’-ジヒドロキシビフェニル、4,4’-ジヒドロキシビフェニル等が挙げられる。
ジヒドロキシナフタレン類としては、例えば、2,2’-ジヒドロキシ-1,1’-ビナフチル、1,2-ジヒドロキシナフタレン、1,3-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、1,7-ジヒドロキシナフタレン、2,7-ジヒドロキシナフタレン等が挙げられる。
ジヒドロキシジアリールエーテル類としては、例えば、2,2’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、3,3’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルエーテル、1,4-ビス(3-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-ヒドロキシフェノキシ)ベンゼン等が挙げられる。
ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類としては、例えば、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(即ち、ビスフェノールA)、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-メトキシ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-(3-シクロヘキシル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、α,α’-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,4-ジイソプロピルベンゼン、1,3-ビス[2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)(4-プロペニルフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ナフチルメタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-ナフチルエタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ドデカン等が挙げられる。
ビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類としては、例えば、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,4-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,5-ジメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-プロピル-5-メチルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-tert-ブチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-tert-ブチル-シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-フェニルシクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-フェニルシクロヘキサン等が挙げられる。
カルド構造含有ビスフェノール類としては、例えば、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
ジヒドロキシジアリールスルフィド類としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルフィド等が挙げられる。
ジヒドロキシジアリールスルホキシド類としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホキシド等が挙げられる。
ジヒドロキシジアリールスルホン類としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’-ジヒドロキシ-3,3’-ジメチルジフェニルスルホン等が挙げられる。
これらの中では、ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類が好ましい。ビス(ヒドロキシアリール)アルカン類の中でも、ビス(4-ヒドロキシフェニル)アルカン類が好ましく、特に、耐熱性の観点から、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(すなわちビスフェノールA)が好ましい。
なお、芳香族ポリカーボネート樹脂の原料としては、例えば、1種類の芳香族ジヒドロキシ化合物を用いてもよいし、2種類以上の芳香族ジヒドロキシ化合物を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
ポリカーボネート樹脂(A)の原料となるモノマーのうち、カーボネート前駆体としては、例えば、カルボニルハライド、カーボネートエステル等が挙げられる。なお、ポリカーボネート樹脂(A)の原料としては、1種類のカーボネート前駆体を用いてもよいし、2種類以上のカーボネート前駆体を任意の組み合わせおよび比率で併用してもよい。
上記カーボネート前駆体のうち、カルボニルハライドとしては、例えば、ホスゲンとジヒドロキシ化合物との反応によるビスクロロホルメート体、ジヒドロキシ化合物のモノクロロホルメート体等のハロホルメート等が挙げられる。
カーボネートエステルとしては、例えば、ジアリールカーボネート類、ジアルキルカーボネート類、ジヒドロキシ化合物のカーボネート体等が挙げられる。ジアリールカーボネート類としては、例えば、ジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート等が挙げられる。ジアルキルカーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられる。ジヒドロキシ化合物のカーボネート体としては、例えば、ジヒドロキシ化合物のビスカーボネート体、ジヒドロキシ化合物のモノカーボネート体、環状カーボネート等が挙げられる。
ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法は、特に限定されるものではなく、任意の方法を採用できる。例えば、ポリカーボネート樹脂(A)の製造方法として、界面重合法、溶融エステル交換法、ピリジン法、環状カーボネート化合物の開環重合法、プレポリマーの固相エステル交換法等を挙げることができる。これらの中では、界面重合法が特に好ましい。
ポリカーボネート樹脂(A)の分子量は、溶媒としてメチレンクロライドを用い、温度25℃で測定された溶液粘度より換算した粘度平均分子量(Mv)で、10000~26000であることが好ましい。このポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)の下限値は、10500以上であることがより好ましく、11000以上であることが更に好ましく、11500以上であることが特に好ましく、12000以上であることが最も好ましい。このポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)の上限値は、24000以下であることがより好ましく、20000以下であることが更に好ましい。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)を10000以上とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の機械的強度をより向上させることができる。ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量(Mv)を26000以下とすることにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の流動性低下を抑制して、当該ポリカーボネート樹脂組成物の流動性を改善する(高流動性を確保する)ことができる。この結果、当該ポリカーボネート樹脂組成物の成形加工性を高めて薄肉成形加工を容易に行えるようになる。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)は、粘度平均分子量の異なる2種類以上のポリカーボネート樹脂が混合されたものでもよい。この場合、ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量が10000~26000の範囲内であれば、当該ポリカーボネート樹脂(A)の成分として、粘度平均分子量が10000~26000の範囲外であるポリカーボネート樹脂が含まれていてもよい。
なお、本発明において、粘度平均分子量(Mv)は、溶媒としてメチレンクロライドを使用し、ウベローデ粘度計を用いて温度25℃での極限粘度[η](単位dl/g)を求め、Schnellの粘度式、すなわち、η=1.23×10-4Mv0.83から算出される値を意味する。また、極限粘度[η]は、各溶液濃度[c](g/dl)での比粘度[ηsp]を測定し、下記式により求めた値である。
Figure 2022144172000006
ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度は、任意であり、適宜選択して決定すればよい。例えば、ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度は、1000ppm以下であり、800ppm以下であることが好ましく、600ppm以下であることがより好ましい。このように当該末端水酸基濃度の上限値を設定することにより、ポリカーボネート樹脂(A)の滞留熱安定性および色調をより向上させることができる。また、ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度の下限値は、特にポリカーボネート樹脂(A)が溶融エステル交換法で製造されたものである場合に10ppm以上であり、30ppm以上であることが好ましく、40ppm以上であることがより好ましい。このように当該末端水酸基濃度の下限値を設定することにより、ポリカーボネート樹脂(A)の分子量の低下を抑制し、当該ポリカーボネート樹脂(A)を含有するポリカーボネート樹脂組成物の機械的特性をより向上させることができる。
なお、ポリカーボネート樹脂(A)の末端水酸基濃度の単位は、当該ポリカーボネート樹脂(A)の質量に対する、末端水酸基の質量をppmで表示したものである。このような末端水酸基濃度の測定方法は、四塩化チタン/酢酸法による比色定量(Macromol.Chem.88 215(1965)に記載の方法)である。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品の外観の向上や当該ポリカーボネート樹脂組成物の流動性の向上を図るため、ポリカーボネート樹脂(A)は、ポリカーボネートオリゴマーを含有していてもよい。このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)は、例えば、1500以上であり、2000以上であることが好ましい。また、このポリカーボネートオリゴマーの粘度平均分子量(Mv)の上限値は、例えば、9500以下であり、9000以下であることが好ましい。さらに、このポリカーボネートオリゴマーの含有量は、当該ポリカーボネートオリゴマーを含むポリカーボネート樹脂(A)の30質量%以下であることが好ましい。
さらに、ポリカーボネート樹脂(A)は、バージン原料だけでなく、使用済みの製品から再生されたポリカーボネート樹脂(いわゆるマテリアルリサイクルされたポリカーボネート樹脂)を一原料成分として含有していてもよい。ただし、再生されたポリカーボネート樹脂の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)のうち、80質量%以下であることが好ましく、特に50質量%以下であることが好ましい。何故ならば、再生されたポリカーボネート樹脂は、熱劣化や経年劣化等の劣化を受けている可能性が高いため、このような再生されたポリカーボネート樹脂の含有量を80質量%よりも多くした場合、ポリカーボネート樹脂(A)を含有するポリカーボネート樹脂組成物の色相や機械的物性を低下させる可能性があるからである。
[リン系安定剤(C)]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物に適用されるリン系安定剤(C)について詳細に説明する。当該ポリカーボネート樹脂組成物は、上述したポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)に加え、さらに、リン系安定剤(C)を含有していてもよい。このリン系安定剤(C)の含有により、当該ポリカーボネート樹脂組成物は、より良好な色相を有するとともに、より優れた耐熱変色性を有するものとなる。
リン系安定剤(C)としては、公知の任意なものを使用することができる。例えば、リン系安定剤(C)としては、リンのオキソ酸、酸性ピロリン酸金属塩、第1族または第2B族金属のリン酸塩、ホスフェート化合物、ホスファイト化合物、ホスホナイト化合物等が挙げられる。これらの中でも、リン系安定剤(C)としては、ホスファイト化合物が特に好ましい。リン系安定剤(C)としてホスファイト化合物を選択することで、より高い耐熱変色性および連続生産性を有するポリカーボネート樹脂組成物が得られる。
リンのオキソ酸としては、例えば、リン酸、ホスホン酸、亜燐酸、ホスフィン酸、ポリリン酸等が挙げられる。酸性ピロリン酸金属塩としては、例えば、酸性ピロリン酸ナトリウム、酸性ピロリン酸カリウム、酸性ピロリン酸カルシウム等が挙げられる。第1族または第2B族金属のリン酸塩としては、例えば、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム、リン酸セシウム、リン酸亜鉛等が挙げられる。
ここで、ホスファイト化合物は、一般式:P(OR)3で表される3価のリン化合物である。この一般式において、Rは、1価または2価の有機基を表す。このようなホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(モノノニル/ジノニル・フェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリステアリルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2-メチレンビス(4,6-ジ-tert-ブチルフェニル)オクチルホスファイト、テトラキス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)-4,4’-ビフェニレン-ジホスファイト、6-[3-(3-tert-ブチル-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロポキシ]-2,4,8,10-テトラ-tert-ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]-ジオキサホスフェピン等が挙げられる。
上述したホスファイト化合物の中でも、下記の一般式(5)または一般式(6)で表される芳香族ホスファイト化合物は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性を向上させるという観点から特に有効であるため、より好ましい。
Figure 2022144172000007
一般式(5)中、R1、R2およびR3は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。
Figure 2022144172000008
一般式(6)中、R4およびR5は、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、炭素数6以上30以下のアリール基を表す。
上記一般式(5)で表される芳香族ホスファイト化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(モノノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト等が好ましく、これらの中でも、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイトがより好ましい。このような芳香族ホスファイト化合物の具体例としては、ADEKA社製「アデカスタブ1178」、住友化学社製「スミライザーTNP」、城北化学工業社製「JP-351」、ADEKA社製「アデカスタブ2112」、BASF社製「イルガフォス168」、城北化学工業社製「JP-650」等が挙げられる。
上記一般式(6)で表される芳香族ホスファイト化合物としては、例えば、ビス(2,4-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト等、ペンタエリスリトールジホスファイト構造を有するものが特に好ましい。このような芳香族ホスファイト化合物の好ましい具体例としては、ADEKA社製「アデカスタブPEP-24G」、「アデカスタブPEP-36」、Doverchemical社製「Doverphos S-9228」等が挙げられる。
上述したホスファイト化合物の中でも、一般式(6)で表される芳香族ホスファイト化合物が、リン系安定剤(C)として特に好ましい。何故ならば、当該芳香族ホスファイト化合物の含有によって、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相がより優れるからである。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、1種類のリン系安定剤(C)が含有されていてもよいし、2種類以上のリン系安定剤(C)が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物がリン系安定剤(C)を含有する場合、このリン系安定剤(C)の含有量は、当該ポリカーボネート樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して、0.005~0.5質量部である。このリン系安定剤(C)の含有量の下限値は、0.007質量部以上であることが好ましく、0.008質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることが特に好ましい。また、このリン系安定剤(C)の含有量の上限値は、0.4質量部以下であることが好ましく、0.3質量部以下であることがより好ましく、0.2質量部以下であることが更に好ましく、0.1質量部以下であることが特に好ましい。
リン系安定剤(C)の含有量が0.005質量部未満である場合、リン系安定剤(C)の含有によるポリカーボネート樹脂組成物の色相および耐熱変色性の向上という効果が得られない恐れがある。リン系安定剤(C)の含有量が0.5質量部を超える場合、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性がかえって悪化する恐れがある。さらには、当該ポリカーボネート樹脂組成物の湿熱安定性が低下する恐れもある。
[エポキシ化合物(D)]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物に適用されるエポキシ化合物(D)について詳細に説明する。当該ポリカーボネート樹脂組成物は、上述したポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)等に加え、さらに、エポキシ化合物(D)を含有してもよい。このエポキシ化合物(D)をポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)と併せて含有することで、当該ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性をより向上させることができる。
エポキシ化合物(D)としては、例えば、1分子中にエポキシ基を1個以上有する化合物が用いられる。このようなエポキシ化合物(D)の好ましい具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、t-ブチルフェニルグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシ-6’-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4-(3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシル)ブチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルエチレンオキシド、シクロヘキシルメチル3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4-エポキシ-6-メチルシクロヘキシルメチル-6’-メチルシロヘキシルカルボキシレート、ビスフェノール-Aジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノール-Aグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、ヘキサヒドロフタル酸のジグリシジルエステル、ビス-エポキシジシクロペンタジエニルエーテル、ビス-エポキシエチレングリコール、ビス-エポキシシクロヘキシルアジペート、ブタジエンジエポキシド、テトラフェニルエチレンエポキシド、オクチルエポキシタレート、エポキシ化ポリブタジエン、3,4-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3,5-ジメチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、3-メチル-5-t-ブチル-1,2-エポキシシクロヘキサン、オクタデシル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2,2-ジメチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル-2-メチル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、N-ブチル-2-イソプロピル-3,4-エポキシ-5-メチルシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル-3,4-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2-エチルヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,6-ジメチル-2,3-エポキシシクロヘキシル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3-t-ブチル-4,5-エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、ジエチル4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、ジ-n-ブチル-3-t-ブチル-4,5-エポキシ-シス-1,2-シクロヘキシルジカルボキシレート、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等が挙げられる。
これらのエポキシ化合物(D)のうち、脂環族エポキシ化合物が好ましく用いられる。特に、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3’,4’-エポキシシクロヘキシルカルボキシレートが好ましい。
また、エポキシ化合物(D)としては、片末端もしくは両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコール誘導体も好ましく使用することができる。特に、両末端にエポキシ基を有するポリアルキレングリコールが好ましい。
上記ポリアルキレングリコール誘導体の好ましい具体例としては、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリ(2-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-メチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリテトラメチレングリコール-ポリ(2-エチル)エチレングリコールジグリシジルエーテル等、構造中にエポキシ基を含有するポリアルキレングリコール誘導体が挙げられる。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、1種類のエポキシ化合物(D)が含有されてもよいし、2種類以上のエポキシ化合物(D)が任意の組み合わせおよび比率で含有されてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物がエポキシ化合物(D)を含有する場合、このエポキシ化合物(D)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して、0.0005~0.2質量部である。このエポキシ化合物(D)の含有量の下限値は、0.001質量部以上であることが好ましく、0.003質量部以上であることがより好ましく、0.005質量部以上であることが特に好ましい。また、このエポキシ化合物(D)の含有量の上限値は、0.15質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以下であることがより好ましく、0.05質量部以下であることが特に好ましい。
エポキシ化合物(D)の含有量が0.0005質量部未満である場合、エポキシ化合物(D)の含有によるポリカーボネート樹脂組成物の色相および耐熱変色性の向上という効果が得られない恐れがある。エポキシ化合物(D)の含有量が0.2質量部を超える場合、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性がかえって悪化する恐れがある。さらには、当該ポリカーボネート樹脂組成物の色相および湿熱安定性が低下する恐れもある。
[オキセタン化合物(E)]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物に適用されるオキセタン化合物(E)について詳細に説明する。当該ポリカーボネート樹脂組成物は、上述したポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)等に加え、さらに、オキセタン化合物(E)を含有してもよい。このオキセタン化合物(E)をポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)と併せて含有することで、当該ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性をより向上させることができる。
オキセタン化合物(E)としては、例えば、分子中に1個以上のオキセタン基を有する化合物であれば、いずれの化合物も使用することができる。すなわち、分子中にオキセタン基を1個有するモノオキセタン化合物と、分子中にオキセタン基を2個以上有する2官能以上のポリオキセタン化合物とのいずれも、オキセタン化合物(E)として使用することができる。オキセタン化合物(E)の含有によって、本発明のポリカーボネート樹脂組成物の色相をより良好なものにし且つ耐熱変色性を一層向上させることができる。
モノオキセタン化合物の好ましい具体例としては、下記の一般式(III-a)で表される化合物、一般式(III-b)で表される化合物または一般式(IV)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2022144172000009
Figure 2022144172000010
一般式(III-a)、一般式(III-b)および一般式(IV)中、R1は、アルキル基を示す。一般式(III-b)中のR2は、アルキル基またはフェニル基を示す。一般式(IV)中のR3は、2価の有機基を示す。このR3で示される2価の有機基は、芳香環を有していてもよいし、芳香環を有していなくてもよい。一般式(IV)中のnは、0または1である。
また、一般式(III-a)、一般式(III-b)および一般式(IV)において、R1は、上記のようにアルキル基であるが、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましく、メチル基またはエチル基であることがより好ましく、エチル基であることが特に好ましい。
また、一般式(III-b)において、R2は、上記のようにアルキル基またはフェニル基であるが、炭素数2~10のアルキル基であることが好ましい。当該炭素数2~10のアルキル基は、鎖状のアルキル基、分岐したアルキル基または脂環式アルキル基のいずれであってもよいし、アルキル鎖の途中にエーテル結合(エーテル系酸素原子)を有する鎖状または分岐状のアルキル基であってもよい。R2の具体例としては、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、3-オキシペンチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等を挙げることができる。これらの中でも、R2は、2-エチルヘキシル基、フェニル基またはシクロヘキシル基であることが好ましい。
一般式(III-a)で表される化合物の好ましい具体例としては、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-ノルマルブチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-プロピルオキセタン等を挙げることができる。これらの中でも、3-ヒドロキシメチル-3-メチルオキセタン、3-ヒドロキシメチル-3-エチルオキセタン等が特に好ましい。また、一般式(III-b)で表される化合物の具体例としては、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン等が特に好ましい。
一般式(IV)において、R3は、上記のように、芳香環を有していても有していなくてもよい2価の有機基である。このR3の具体例としては、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ネオペンチレン基、n-ペンタメチレン基、n-ヘキサメチレン基等の炭素数1~12の直鎖状または分岐状のアルキレン基、フェニレン基、式:-CH2-Ph-CH2-または-CH2-Ph-Ph-CH2-(当該式中のPhはフェニル基を示す)で表される2価の基、水素添加ビスフェノールA残基、水素添加ビスフェノールF残基、水素添加ビスフェノールZ残基、シクロヘキサンジメタノール残基、トリシクロデカンジメタノール残基等を挙げることができる。
一般式(IV)で表される化合物の特に好ましい具体例としては、ビス(3-メチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-プロピル-3-オキセタニルメチル)エーテル、ビス(3-ブチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、3-エチル-3{[(3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ]メチル}オキセタン、4,4’-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ビフェニル、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン等を挙げることができる。
なお、本発明のポリカーボネート樹脂組成物には、1種類のオキセタン化合物(E)が含有されていてもよいし、2種類以上のオキセタン化合物(E)が任意の組み合わせおよび比率で含有されていてもよい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物がオキセタン化合物(E)を含有する場合、このオキセタン化合物(E)の好ましい含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して、0.0005~0.2質量部である。このオキセタン化合物(E)の含有量の下限値は、0.001質量部以上であることがより好ましく、0.003質量部以上であることが更に好ましく、0.005質量部以上であることが特に好ましい。また、このオキセタン化合物(E)の含有量の上限値は、0.15質量部以下であることがより好ましく、0.1質量部以下であることが更に好ましく、0.05質量部以下であることが特に好ましい。
オキセタン化合物(E)の含有量が0.0005質量部未満である場合、オキセタン化合物(E)の含有によるポリカーボネート樹脂組成物の色相および耐熱変色性の向上という効果が得られない恐れがある。オキセタン化合物(E)の含有量が0.2質量部を超える場合、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性がかえって悪化する恐れがある。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、上述したエポキシ化合物(D)およびオキセタン化合物(E)の両者を併せて含有することも好ましい。この場合、エポキシ化合物(D)およびオキセタン化合物(E)の合計の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であることが好ましい。
[添加剤等]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物に適用される添加剤等について詳細に説明する。当該ポリカーボネート樹脂組成物は、上述したポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)等の成分以外に、その他の添加剤を含有してもよい。この添加剤としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、顔料、染料、ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマー、難燃剤、耐衝撃改良剤、帯電防止剤、可塑剤、相溶化剤等が挙げられる。上記ポリカーボネート樹脂以外の他のポリマーとしては、例えば、ポリアルキレングリコール等が挙げられる。当該ポリカーボネート樹脂組成物が含有してもよいポリアルキレングリコールは、例えば、上述したポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を構成するポリアルキレングリコールと同様の構造を有する。当該ポリカーボネート樹脂組成物は、これらの添加剤のうち、1種類の添加剤を含有してもよいし、2種類以上を配合した添加剤を含有してもよい。
ただし、本発明のポリカーボネート樹脂組成物がポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)以外の他のポリマーを含有する場合、当該他のポリマーの含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の合計100質量部に対し、20質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることが更に好ましく、3質量部以下であることが特に好ましい。
[ポリカーボネート樹脂組成物の黄色度および黄変度]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物の黄色度および黄変度について説明する。黄色度(YI)は、ポリカーボネート樹脂組成物の色相の程度を表す一指標である。例えば、ポリカーボネート樹脂組成物の色相は、黄色度の初期値(以下、初期YI値という)によって表される。初期YI値は、熱等の負荷による劣化または経時劣化が生じる前の初期状態におけるポリカーボネート樹脂組成物のYI値である。黄変度ΔYIは、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性を表す一指標である。黄変度ΔYIは、所定の温度および時間の条件下で保持された後のポリカーボネート樹脂組成物のYI値と上記初期YI値との差によって表される。
上記の初期YI値および黄変度ΔYIは、各々、予め設定された閾値以下の値を取る。例えば、光源からの光がポリカーボネート樹脂組成物の中で300mmの光路を通過する場合、初期YI値の閾値は25.0に設定され、黄変度ΔYIの閾値は6.0に設定される。本発明のポリカーボネート樹脂組成物の300mm光路長における初期YI値は、25.0以下であることが好ましい。さらに、所定の加速劣化試験後の当該ポリカーボネート樹脂組成物の300mm光路長におけるYI値と上記初期YI値との差、すなわち黄変度ΔYIは、6.0以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましい。当該加速劣化試験としては、例えば、温度95℃で250時間、ポリカーボネート樹脂組成物を保持するものが挙げられる。
上記初期YI値が25.0を超える場合、上記初期状態のポリカーボネート樹脂組成物の中で300mmの光路を通過した後の光(透過光)は、光源から発せられた光に比べて、当該ポリカーボネート樹脂組成物に許容される色相変化を超える程(例えば目視検査で確認し得る程度)に黄変している。また、上記黄変度ΔYIが6.0を超える場合、上記加速劣化試験後のポリカーボネート樹脂組成物の中で300mmの光路を通過した光は、上記初期YI値によって表される色相を有する透過光に比べて、当該ポリカーボネート樹脂組成物に許容される色相変化を超える程に黄変している。
[ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物の製造方法について詳細に説明する。当該ポリカーボネート樹脂組成物の製造方法は、特に制限されず、公知のポリカーボネート樹脂組成物の製造方法を広く採用することができる。当該製造方法の一例では、ポリカーボネート樹脂(A)およびポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)と、必要に応じて配合されるその他の成分とが、例えば、タンブラーやヘンシェルミキサー等の各種混合機を用いて予め混合される。上記その他の成分としては、上述したリン系安定剤(C)、エポキシ化合物(D)、オキセタン化合物(E)、添加剤等が挙げられる。このように各成分を混合した後、得られた混合物を、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダー、単軸混練押出機、二軸混練押出機、ニーダー等の混合機で溶融混練することにより、本発明のポリカーボネート樹脂組成物が得られる。なお、上記混合物の溶融混練の温度は、特に制限されないが、例えば240~320℃の範囲内である。
[成形品]
つぎに、本発明の実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物の成形品について詳細に説明する。本発明の成形品は、上述した実施形態に係るポリカーボネート樹脂組成物からなる成形品であり、例えば、当該ポリカーボネート樹脂組成物をペレタイズして得られるペレットを各種の成形法で成形することにより、製造することができる。また、本発明の成形品は、上記ペレットを経由せずに、押出機で溶融混練された当該ポリカーボネート樹脂組成物を直接、成形することによって製造してもよい。
上記の成形法によって製造された成形品は、本発明のポリカーボネート樹脂組成物からなるため、良好な色相と優れた耐熱変色性とを有し、さらに透明性に優れている。このような成形品として、例えば、導光板等の光学部品が挙げられる。当該成形品の色相および耐熱変色性は、上述したポリカーボネート樹脂組成物と同様に、初期YI値および黄変度ΔYIによって各々表される。すなわち、当該成形品の300mm光路長における初期YI値は25.0以下であることが好ましく、且つ、当該成形品の300mm光路長における黄変度ΔYIは6.0以下であることが好ましく、5.5以下であることがより好ましい。
以上、説明したように、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、高い流動性および良好な色相を有するとともに、優れた透明性を有することが可能である。このため、射出成形法等の所望の成形法により、当該ポリカーボネート樹脂組成物の効果を享受する光学部品等の成形品を容易に得ることができる。特に、本発明のポリカーボネート樹脂組成物は、薄肉且つ大型の光学部品の成形に好適に用いられる。
また、射出成形の際の樹脂温度は、特に大型の薄肉成形品を製造する場合、一般にポリカーボネート樹脂の射出成形に適用される温度である260~300℃よりも高温であることが好ましく、例えば305~400℃であることが好ましい。この樹脂温度の下限値は、310℃以上であることがより好ましく、315℃以上であることが更に好ましく、320℃以上であることが特に好ましい。この樹脂温度の上限値は、390℃以下であることがより好ましい。従来のポリカーボネート樹脂組成物を用いた場合には、大型の薄肉成形品を成形するために成形時の樹脂温度を高めると、得られる成形品の黄変が生じ易くなるという問題があった。これに対し、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を使用することにより、上記の温度範囲であっても、良好な色相と優れた透明性とを有する成形品、特に、大型且つ薄肉の光学部品を製造することが可能となる。なお、上記樹脂温度を直接測定することが困難な場合、上記樹脂温度として、成形時のバレル設定温度が用いられる。
ここで、大型の薄肉成形品とは、例えば、肉厚が1mm以下、好ましくは0.8mm以下、より好ましくは0.6mm以下であり、且つ光路長に相当する縦または横の長さ或いは直径等の寸法が100mm以上の板状部を有する成形品をいう。当該板状部は、平板状であってもよいし、曲板状であってもよい。当該板状部の表面は、平坦面であってもよいし、凹凸等を有する面であってもよい。また、当該板状部の断面は、傾斜面を有するものでもよいし、楔型断面等であってもよい。
本発明の光学部品としては、LED(Light Emitting Diode)、有機EL(Electro Luminescence)、白熱電球、蛍光ランプ、陰極管等の光源を直接または間接に利用する機器や器具の部品が挙げられる。このような光学部品の代表例として、導光板や面発光体用部材等が例示される。導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の中で、LED等の光源の光を導光するためのものである。例えば、導光板は、側面または裏面等から受け入れた光を、通常、表面に設けられた凹凸によって拡散させ、均一の光を出す。一般に、導光板の形状は平板状である。導光板の表面には、凹凸が形成されていてもよいし形成されていなくてもよい。また、導光板の成形は、射出成形法、超高速射出成形法、射出圧縮成形法、溶融押出成形法(例えばTダイ成形法)等の成形法によって行われることが好ましい。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形した導光板は、白濁や透過率の低下がなく、良好な色相と優れた透明性とを有する。当該導光板は、液晶バックライトユニットや各種の表示装置、照明装置の分野で好適に使用できる。このような導光板が適用される装置の例としては、携帯電話、モバイルノート、ネットブック、スレートPC(パーソナルコンピュータ)、タブレットPC、スマートフォン、タブレット型端末等の各種携帯端末、カメラ、時計、デスクトップ型またはラップトップ型(ノート型)のPC、各種ディスプレイ、照明機器等が挙げられる。
また、本発明のポリカーボネート樹脂組成物を用いて成形した光学部品の形状は、フィルム状またはシート状のいずれであってもよい。この光学部品の具体例としては、例えば、導光フィルム等が挙げられる。
また、本発明の光学部品は、上述した用途の導光板以外にも、自動車やオートバイの前照灯(ヘッドランプ)、リアランプまたはフォグランプ等の車両用の照明機器においてLED等の光源からの光を導光するライトガイドやレンズ等としても、好適に使用することができる。
以下、実施例を示して、本発明について更に具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
(実施例1~14、比較例1~3)
[ポリカーボネート樹脂組成物の成分]
実施例1~14および比較例1~3の各々におけるポリカーボネート樹脂組成物の各成分は、表1に示す通りである。実施例1~14および比較例1~3の各々では、表1に示すポリカーボネート樹脂(A)、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)、ポリアルキレングリコール(X)、リン系安定剤(C)、エポキシ化合物(D)が必要に応じて使用される。
ポリカーボネート樹脂(A)としては、ポリカーボネート樹脂(A1)が用いられる。ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)としては、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B1)、ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B2)またはポリエーテルポリカーボネート樹脂(B3)が用いられる。ポリアルキレングリコール(X)としては、ポリアルキレングリコール(X1)が用いられる。リン系安定剤(C)としては、リン系安定剤(C1)が用いられる。エポキシ化合物(D)としてはエポキシ化合物(D1)が用いられる。
Figure 2022144172000011
[ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの製造方法]
実施例1~14および比較例1~3の各々では、上記表1に示した各成分を、後述の表2-1~2-3に示した割合(質量部)で配合してタンブラー内で20分混合した。続いて、スクリュー径40mmのベント付単軸押出機(田辺プラスチック機械社製「VS-40」)を用い、シリンダー温度を240℃にして、上記各成分の混合物を溶融混練し、これにより、ポリカーボネート樹脂組成物を作製した。その後、このポリカーボネート樹脂組成物のストランドを押し出し、押し出したストランドをカット(ペレッタイズ)することにより、このポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。
[ストランド透明性評価]
実施例1~14および比較例1~3の各々では、ポリカーボネート樹脂組成物のペレット製造時に得られるストランドについて、ストランド透明性評価を行った。詳細には、上述したポリカーボネート樹脂組成物のペレットの製造工程において、押出機から押し出されたストランドの透明性を、以下の評価基準に基づき、目視によって判定した。
<評価基準>
A:押し出されたストランドは極めて透明性が高く、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)やポリアルキレングリコールとの相溶性は極めて良好である。
B:押し出されたストランドは透明性が高く、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)やポリアルキレングリコールとの相溶性は良好である。
C:押し出されたストランドは白濁しており、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)やポリアルキレングリコールとの相溶性は不良である。
D:押し出されたストランドは著しく白濁しており、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)やポリアルキレングリコールとの相溶性は極めて不良である。
[色相および耐熱変色性の評価]
実施例1~14および比較例1~3の各々では、ポリカーボネート樹脂組成物からなる光路について、色相および耐熱変色性の評価を行った。詳細には、上記の製造方法によって得られたペレットを、120℃で5~7時間、熱風循環式乾燥機によって乾燥させた後、射出成形機(Sodick社製「HSP100A」)に供給し、この射出成形機により、ポリカーボネート樹脂組成物を射出成形して長光路成形品を成形した。この射出成型時の条件として、樹脂温度(シリンダー温度)は340℃とし、金型温度は80℃とした。また、得られた長光路成形品は、ポリカーボネート樹脂組成物からなり且つ300mmの光路長を有する成形品である。この長光路成形品のサイズは、縦×横×厚み=300mm×7mm×4mmである。
色相の評価では、ポリカーボネート樹脂組成物の色相の良否を判定し得る一指標となる初期YI値を測定した。具体的には、上記の長光路成形品について、300mmの光路長における初期YI値を測定した。初期YI値の測定は、長光路成形品の光路(光路長:300mm)に光を透過させ、この透過後の光を、JIS Z 8722に準拠する受光の幾何条件e(0°:0°)において受光部で受光し、ASTM D 1925に準拠して算出されるYIを測定することにより、行うことができる。この初期YI値の測定には、長光路分光透過色計(日本電色工業社製「ASA 1」、C光源、2°視野)を使用した。
耐熱変色性の評価では、ポリカーボネート樹脂組成物の耐熱変色性の良否を判定し得る一指標である黄変度ΔYIを導出した。具体的には、上記初期YI値を測定した長光路成形品を95℃の高温環境下で250時間保持し、その後、当該長光路成形品の300mmの光路長におけるYI値を測定し、この得られたYI値と上記初期YI値との差である黄変度ΔYIを求めた。なお、耐熱変色性の評価におけるYI値は、測定対象が高温環境下に保持後の長光路成形品になること以外、上述した初期YI値と同様の方法によって測定することができる。
実施例1~14および比較例1~3の各々におけるポリカーボネート樹脂組成物の各成分の含有割合(質量部)および上記各評価の結果を、表2-1~2-3に示す。表2-1~2-3において、「YI(300mm)」は300mmの光路長における初期YI値を意味し、「ΔYI(300mm)」は300mmの光路長における黄変度ΔYIを意味する。
表2-1、2-2に示すように、全ての実施例1~14では、ストランド透明性評価の結果が「A」であった。すなわち、実施例1~14のいずれにおいても、ポリカーボネート樹脂(A)とポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)との相溶性は極めて良好であった。
また、実施例1~14では、ポリカーボネート樹脂組成物の300mm光路長における初期YI値および黄変度ΔYIが、表2-1、2-2に示す値となった。詳細には、実施例1~14のいずれにおいても、初期YI値は、対象とする光路長が300mmである場合の初期YI値の閾値(=25.0)以下の値であり、且つ、黄変度ΔYIは、対象とする光路長が300mmである場合の黄変度ΔYIの閾値(=6.0)以下の値であった。この結果から、実施例1~14のいずれのポリカーボネート樹脂組成物においても、初期の色相が良好であり且つ耐熱変色性も優れていることが確認できた。
一方、表2-3に示すように、比較例1ではストランド透明性評価の結果が良好であったものの、比較例2、3ではストランド透明性評価の結果が不良であった。また、比較例1では、300mm光路長における初期YI値は閾値を超えるものであり、初期の色相が不良であった。比較例2では、300mm光路長における初期YI値は閾値以下であったが、300mm光路長における黄変度ΔYIは閾値を超えるものであり、耐熱変色性が不良であった。比較例3では、ポリカーボネート樹脂組成物からなる光路自体が白濁してしまい、初期YI値および黄変度ΔYIを得ることができなかった。
Figure 2022144172000012
Figure 2022144172000013
Figure 2022144172000014
なお、本発明は、上述した実施形態および実施例によって限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。
本発明に係るポリカーボネート樹脂組成物は、高い流動性および良好な色相を有し、さらに透明性に優れているので、各種の成形品、特に、導光板等の光学部品に極めて好適に利用することができる。

Claims (7)

  1. ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、ポリエーテルとカーボネート結合とを有するポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)を0.01~5質量部含有し、
    前記ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、クロロホルムを溶媒としたゲル浸透クロマトグラフィーによるポリスチレン換算で1000以上8000未満である、
    ことを特徴とするポリカーボネート樹脂組成物。
  2. 前記ポリエーテルポリカーボネート樹脂(B)は、下記一般式(1)で表される共重合体である、
    ことを特徴とする請求項1に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
    Figure 2022144172000015
    (一般式(1)中、RZおよびRXは、各々独立に、水素原子または炭素数1~3のアルキル基を示す。RZおよびRXは各々複数存在し、複数のRZおよびRXは、各々同じであってもよいし異なっていてもよい。iは2~10の整数を示し、pは1~600の整数を示し、nは1~3000の整数を示す。)
  3. 前記一般式(1)中のiは、3または4である、
    ことを特徴とする請求項2に記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  4. 前記ポリカーボネート樹脂(A)の100質量部に対し、さらに、リン系安定剤(C)を0.005~0.5質量部含有する、
    ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  5. 当該ポリカーボネート樹脂組成物の300mm光路長における初期YI値は、25.0以下であり、
    95℃で250時間保持後の当該ポリカーボネート樹脂組成物の300mm光路長におけるYI値と前記初期YI値との差ΔYIは、6.0以下である、
    ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一つに記載のポリカーボネート樹脂組成物。
  6. 請求項1~5のいずれか一つに記載のポリカーボネート樹脂組成物からなる、
    ことを特徴とする成形品。
  7. 光学部品である、
    ことを特徴とする請求項6に記載の成形品。
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