JP2018090613A - ハチの巣表面処理剤 - Google Patents
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Abstract
Description
従来から、ハチの駆除に際しては、速効性を有する薬剤が求められ、例えば、特開平1−299202号公報(特許文献1)において、2−メチル−4−オキソ−3−(2−プロピニル)シクロペンタ−2−エニル クリサンマートを有効成分とするハチ駆除剤が提案された。また、特開2009−173608号公報(特許文献2)は、一層速効性に優れたハチ防除用組成物として、メトフルトリンとテトラメトリンを有効成分とした組成物を開示するが、いずれも、そのハチに対する防除効果は満足のいくものではない。
ところで、ハチの巣の撤去作業においては、多数のハチの駆除が必要な場合や、スズメバチのような攻撃性の強いハチと対峙せざるを得ないといった、危険性を伴う作業場面も想定されうる。従って、それらの危険性を回避するためにも、ハチの巣内、もしくはハチの営巣が想定される場所にあらかじめ処理可能な、ハチの営巣防除用製剤の開発が切望されていた。
(1)ハチ防除成分と、23〜27mN/m(20℃)の範囲の表面張力を有する飽和炭化水素と、脂肪酸エステル系溶剤および/またはグリコールエーテル系溶剤を含有するハチの巣表面処理剤であって、前記飽和炭化水素を該表面処理剤中に50w/v%以上配合するハチの巣表面処理剤。
(2)前記飽和炭化水素が、パラフィン系炭化水素である(1)に記載のハチの巣表面処理剤。
(3)前記パラフィン系炭化水素が、ノルマルパラフィンである(2)に記載のハチの巣表面処理剤。
(4)前記ハチの巣表面処理剤をエアゾール原液とし、これに噴射剤を加えてエアゾール形態となした(1)ないし(3)のいずれか1に記載のハチの巣表面処理剤。
(5)前記ハチの巣表面処理剤が、前記ハチ防除成分として少なくとも1種のピレスロイド系殺虫成分を含有する(1)ないし(4)のいずれか1に記載のハチの巣表面処理剤。
ここで、ピレスロイド系殺虫成分としては、シフルトリン、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、レスメトリン、フタルスリン、トラロメトリン、ビフェントリン、イミプロトリン、シペルメトリン、エトフェンプロックス、エムペントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、モンフルオロトリン、テラレスリン、アレスリン、プラレトリン、ピレトリン等を例示できる。
ハチやハチの巣に対する処理剤としては、長期間にわたる防除効果に加え、速効性を必要とする点を考慮すると、シフルトリンとフタルスリンの混合物が好ましい。
これらピレスロイド系殺虫成分の少なくとも1種を含むハチ防除成分の配合量は、ハチの巣表面処理剤中に0.01〜3.0w/v%、好ましくは0.1〜1.0w/v%が適当である。0.01w/v%未満では十分な防除効果が得られないし、一方、3.0w/v%を超えても格別メリットは得られない。尚、ピレスロイド系化合物の酸成分やアルコール部分において、不斉炭素に基づく光学異性体や幾何異性体が存在する場合、これらの各々や任意の混合物も本発明に包含されることは勿論である。
ところで、ハチの巣の表面構造は、主に木材等の素材をハチが分泌する唾液と混ぜ、薄く引き延ばしたものから形成され、唾液は乾燥重量あたりハチの巣重量の50%以上を占める。唾液の組成はカイコの繭の成分であるセリシンに類似し、プロリン、セリン等の極性アミノ酸が主体であることが知られている。
本発明者らは、木質成分及び極性アミノ酸の双方との親和性を考慮しつつ、実際にハチの巣を用いて最適なハチの巣浸透補助剤の検討を鋭意進め、本発明を完成するに至ったものである。
飽和炭化水素の表面張力が23mN/m(20℃)未満であると、ハチの巣表面が滑らかな部分では当該表面処理剤が表面を展がりすぎたり、あるいは当該表面処理剤を構成する飽和炭化水素のみがハチの巣の表面から内部に過度に浸透しやすくなる傾向を有する。一方、飽和炭化水素の表面張力が27mN/m(20℃)を超えると、当該表面処理剤としての浸透性が悪くなるうえ、ハチの巣の素材成分との親和性が劣り効率的な防除効果を奏し難い。
また、ナフテン系炭化水素としては、ジャパンエナジー社製のナフテゾール160[24mN/m(20℃)]及びナフテゾール200[27mN/m(20℃)]等が代表的である。
このような有機溶剤の好ましいものとしては、脂肪酸エステル系溶剤及びグリコールエーテル系溶剤から選ばれる1種又は2種以上が挙げられ、具体的には、ミリスチン酸イソプロピル[6.6mPa・s(20℃)]、パルミチン酸イソプロピル[10mPa・s(20℃)]、ステアリン酸ブチル[7.7mPa・s(30℃)]、オレイン酸メチル[5.5mPa・s(25℃)]、オレイン酸イソブチル[9.0mPa・s(20℃)]、ラウリン酸ヘキシル、イソステアリン酸イソプロピル、イソノナン酸イソノニル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル[7.5mPa・s(20℃)]、ジエチレングリコールモノブチルエーテル[6.5mPa・s(20℃)]、トリエチレングリコールモノブチルエーテル[8.1mPa・s(20℃)]、エチレングリコールモノベンジルエーテル[12.0mPa・s(20℃)]、ブチルプロピレンジグリコール[7.4mPa・s(20℃)]、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル[8.2mPa・s(20℃)]等があげられるが、これらに限定されない。なかでも、炭素数の総数が15〜22の範囲のミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸イソブチル等の高級脂肪酸エステルが適している。
噴射剤としては、液化石油ガス(LPG)、ジメチルエーテル(DME)、圧縮ガス(窒素ガス、炭酸ガス、亜酸化窒素、圧縮空気等)、あるいはこれらの混合ガスが用いられる。なお、LPG主体の噴射剤を使用する場合のLPGの内圧は、後記する噴射塗布した時の好ましい噴射力[20gf(25℃)以上]や噴霧粒子の好ましい粒子径[体積積算10%粒子径:20〜70μm]等を考慮すると、0.15〜0.71MPa(20℃)の範囲が一般的であるが、例えば、窒素ガスを加えて内圧を調整するような場合は0.15〜0.39MPa(20℃)の範囲のものが適している。
なお、エアゾール剤が充填される容器は、その使用場面、使用目的等に応じて、適宜バルブ、噴口、ノズル等の形状を選択すればよい。
また、ハチの巣表面処理剤に配合されるピレスロイド系殺虫成分に基づき、各種の蚊類、ユスリカ類、イエバエ、チョウバエ、ショウジョウバエ等のコバエ類などの飛翔害虫、ゴキブリ類、アリ類等の匍匐害虫にも優れた殺虫効果を示し、広範囲な適用が可能である。
このエアゾール原液350mLをエアゾール容器に入れ、噴射剤として液化石油ガス主体で内圧調整用に少量の窒素ガスを加えた150mL(エアゾール原液/噴射剤比率:70/30)を加圧充填して本発明で用いるエアゾール剤を得た。
このエアゾール剤は、20cm離れた対象面に噴射塗布した時の噴射力が46gf(25℃)で、噴霧粒子の体積積算10%粒子径は41μm(25℃)であった。
(浸透性ならびに親和性試験方法)
幅1cm、長さ15cmのセルロース濾紙を用意し、その下端から5cm〜6cmの位置に幅1cm、長さ1cmのコガタスズメバチのハチの巣断片を積層させ、その上下端をホッチキスで固定した。しかる後、巣表面と重なる濾紙部分を切除し、濾紙−巣断片−濾紙の順に繋がる試験片を作製した。
直径2.5cmの試験管に各ハチの巣浸透補助剤10mL(高さ約2cm)を入れ、この液中に前記試験片を挿しいれた。試験片の下端4cmを始点とし、液面がこの位置から下端7cmの位置に達するまでの時間を計測して、浸透性ならびに親和性の指標とした。また、ハチの巣断片を固定しないセルロース濾紙のみの試験片についても試験を行った。試験結果を表1に示す。
これに対し、表面張力が23mN/m未満のn−オクタンの場合は、n−オクタンのみがハチの巣の表面から内部に過度に浸透し、一方、27mN/m(20℃)を超えるIPソルベント2835や、23〜27mN/mの範囲内であっても飽和炭化水素に該当しないイソノナン酸イソノニルやブチルプロピレンジグリコールは、ハチの巣表面処理剤としての浸透性が悪いうえ、ハチの巣の素材成分との親和性が劣り、単独では効率的な防除効果を奏し難いことを示唆した。
(ハチの巣表面処理方法)
コガタスズメバチが営巣行動を始めた初期段階の巣に各種供試エアゾール剤を処理し、所定期間経過後にハチの駆除状況及び営巣の進行状況を観察した。試験結果は、以下の基準に基づき表3に示した。
・1週間後の駆除状況:巣内の成虫、蛹及び幼虫の殆どを駆除;○、巣内の一部を駆除;△、噴射液が付着した巣外の成虫のみ駆除;×。
・1ケ月後の営巣の進行状況:営巣が殆ど進んでいないもの;○、僅かに進んだもの;△、大きく進んだもの;×。
これに対し、表面張力が23〜27mN/m(20℃)の範囲から外れる飽和炭化水素や23〜27mN/m(20℃)の範囲内であってもエステル系あるいはグリコールエーテル系溶剤を使用した比較1〜比較3は、浸透性や親和性が適さないことに起因して特に駆除効果の点で劣ることが認められた。また、比較4から明らかなように、ハチの巣浸透補助剤は、本発明のハチの巣表面処理剤に50w/v%以上配合されることが必要であった。
Claims (5)
- ハチ防除成分と、
23〜27mN/m(20℃)の範囲の表面張力を有する飽和炭化水素と、
脂肪酸エステル系溶剤および/またはグリコールエーテル系溶剤を含有するハチの巣表面処理剤であって、
前記飽和炭化水素を該表面処理剤中に50w/v%以上配合することを特徴とするハチの巣表面処理剤。
- 前記飽和炭化水素が、パラフィン系炭化水素であることを特徴とする請求項1に記載のハチの巣表面処理剤。
- 前記パラフィン系炭化水素が、ノルマルパラフィンであることを特徴とする請求項2に記載のハチの巣表面処理剤。
- 前記ハチの巣表面処理剤をエアゾール原液とし、これに噴射剤を加えてエアゾール形態となしたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のハチの巣表面処理剤。
- 前記ハチの巣表面処理剤が、前記ハチ防除成分として少なくとも1種のピレスロイド系殺虫成分を含有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のハチの巣表面処理剤。
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