JP2018089693A - 鋼帯の冷間圧延方法及び冷間圧延設備 - Google Patents
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Abstract
Description
鋼板の冷間圧延は、生産性の向上や歩留改善を図るために複数の圧延機を直列に配置したタンデム式冷間圧延機を用いる場合が多い。タンデム式冷間圧延機では、連続して圧延を行うために先行鋼帯と後行鋼帯を溶接で接合するが、このとき鋼帯接合部(溶接部を含む両鋼帯端)の板幅両端部は、金型によるせん断加工によって、図1に示すようなノッチャー部と呼ばれる円弧形状に切断除去される。このように鋼帯接合部の板幅両端部を切断加工するのは、異なる板幅の鋼帯を接合した場合に生じる切欠き形状(板幅の違いによる段付きの平面形状)を除去することによって応力集中を緩和し、圧延時に接合端部からの破断が生じるのを防止するためである。
また、特許文献2の方法は、対象となる鋼が合金添加量の少ない炭素鋼であり、炭素鋼では一定の効果はあるものの、添加合金元素量が多く、加工誘起マルテンサイト変態が問題となる高張力鋼やステンレス鋼では、十分な破断抑制効果を得ることができない。
また、従来法では、先行鋼帯と後行鋼帯の板幅差に関わりなく一定形状の金型(せん断刃)を用いてせん断加工が行われるが、先行鋼帯と後行鋼帯の板幅差が大きくなると、設置された形状の金型では適正な円弧形状にせん断加工できない場合がある。このため、接合する先行鋼帯と後行鋼帯の板幅に制約が生じることがある。
また、従来の切断加工手段である金型(せん断刃)は、形状が一定であり且つ簡単に交換できるものではないため、事実上、鋼帯接合部の板幅などに応じて切断形状を変えることができない。これに対して、高圧水切断装置は、高圧水噴射ノズルの位置制御が容易であるため切断形状を任意に変えることができる。このため、先行鋼帯と後行鋼帯の板幅などに応じて、耳割れや板破断が生じにくい最適な円弧形状に切断加工することができる。具体的な加工形態として、板幅が異なる鋼帯を接合した場合、板幅が大きい鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径が、板幅が小さい鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径よりも大きくなるようにすることにより、圧延長手方向の単位長さあたりの板幅変化量が小さくなり、圧延中の急激な荷重変動を抑制することが可能となる結果、特に耳割れや板破断が生じにくくなることが判った。高圧水切断装置を用いることにより、このような切断加工を容易に行うことができる。
[1]連続ライン内で先行鋼帯と後行鋼帯を接合し、接合された鋼帯を連続的に圧延する鋼帯の冷間圧延方法において、
先行鋼帯と後行鋼帯を接合した後、その鋼帯接合部の板幅両端部を、高圧水切断装置を用いて円弧形状に切断加工することを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。
[2]上記[1]の冷間圧延方法において、先行鋼帯と後行鋼帯の板幅に応じて、切断加工する円弧形状を選択して、鋼帯接合部の板幅両端部を切断加工することを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。
[4]上記[2]又は[3]の冷間圧延方法において、板幅が異なる先行鋼帯と後行鋼帯を接合した後、その鋼帯接合部の板幅両端部を円弧形状に切断加工するにあたり、接合された先行鋼帯と後行鋼帯の板幅をそれぞれw1、w2、板幅両端部を円弧形状に切断加工した後の鋼帯接合部の溶接線位置での板幅をwAとした場合、w1−wAがw1の5%以上で、かつw2−wAがw2の5%以上となるように、切断加工する円弧形状を選択することを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。
冷間圧延による鋼帯接合部の板幅両端部の切断加工部における耳割れ又は/及び板破断の生じやすさの基準として、少なくとも鋼帯のせん断加工部の硬度又は鋼帯の残留オーステナイト量(体積率)に基づく基準を設け、該基準を満たす耳割れ又は/及び板破断の生じやすい鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(A)で板幅両端部の切断加工を行い、前記基準を満たさない鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(B)で板幅両端部の切断加工を行うことを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。
[6]上記[5]の冷間圧延方法において、残留オーステナイト量(体積率)が10%以上の鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(A)で板幅両端部の切断加工を行い、残留オーステナイト量(体積率)が10%未満の鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(B)で板幅両端部の切断加工を行うことを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。
前記切断加工装置が高圧水切断装置からなることを特徴とする鋼帯の冷間圧延設備。
[8]上記[7]の冷間圧延設備において、切断加工装置は、高圧水噴射ノズルと、該高圧水噴射ノズルを保持する多軸制御可能なロボットアームを備え、該ロボットアームによる前記高圧水噴射ノズルの位置制御により、鋼帯接合部の板幅両端部を任意の円弧形状に切断加工可能としたことを特徴とする鋼帯の冷間圧延設備。
[9]上記[7]又は[8]の冷間圧延設備において、冷間圧延設備の連続ライン内に、溶接機で接合された鋼帯接合部の板幅両端部を円弧形状に切断加工する切断加工装置として、高圧水切断装置からなる切断加工装置(A)とともに金型によるせん断加工を行う切断加工装置(B)が併設され、切断加工される鋼帯に応じて切断加工装置(A)と切断加工装置(B)を選択的に使用できるように構成したことを特徴とする鋼帯の冷間圧延設備。
高圧水切断装置は、通常、高圧水噴射ノズルからガーネット粉末などの研磨剤を含む高圧水を鋼帯に噴射し、鋼帯接合部の板幅両端部を切断加工する。通常、使用する高圧水噴射ノズルのノズル径は、0.5〜5.0mm程度、高圧水の噴射圧力は100〜300MPa程度である。
この実施形態では、5スタンドから構成される冷間タンデム圧延機6で鋼帯が圧延される。ペイオフリール1から払い出された鋼帯2は、溶接機3で先行材の尾端と後行材の先端が接合される。溶接機3の下流側には切断加工装置4が配置されており、この切断加工装置4で鋼帯接合部の板幅両端部が円弧形状に切断加工される。この切断加工が施された鋼帯2は連続的に冷間タンデム圧延機6に送られて冷間圧延されるが、切断加工装置4と冷間タンデム圧延機6との間にはルーパー5が設置されており、圧延速度の加減速が生じた場合においても材料を安定的に供給することができるようにしている。冷間タンデム圧延機6の各圧延スタンドによって所定の板厚に圧延された鋼帯2はテンションリール7に巻き取られる。
高圧水噴射ノズル8は、配管によってポンプ10と水タンク11に接続されており、高圧水の噴射圧力を変更することができる。高圧水噴射ノズル8から噴射する高圧水には、切断能力を向上させるためにガーネット粉末などの研磨剤(砥粒)を混合する。このため高圧水噴射ノズル8には、研磨剤供給ユニット12が付設され、この研磨剤供給ユニット12から定量フィーダーで研磨剤を高圧水に混入させる。
また、噴射された高圧水は下方に設置された排水ピット13で回収され、フィルター14で切屑や研磨剤が除去された後、ポンプ15によりタンク11に戻されて循環使用される。
上記の方法で切断加工したサンプルを、ロール径200mmの圧延機を用いて無張力の切板圧延で冷間圧延(圧下率30%)し、切断加工したエッジ部の状態を調べた。図5は、図4に示した従来法を適用して切断加工を行った鋼帯の冷間圧延後のエッジ部板面(切断加工部のエッジ部板面)の拡大写真であり、図6は、図4に示した本発明法を適用して切断加工を行った鋼帯の冷間圧延後のエッジ部板面(切断加工部のエッジ部板面)の拡大写真である。これらによると、従来法により金型(せん断刃)によるせん断加工を行ったものは、エッジ部に割れが生じているのに対して、本発明法により高圧水切断装置で切断加工を行ったものは、エッジ部に割れは全く発生しておらず、本発明の有効性が確認できる。
切断加工部をこのような形状とすることにより、鋼帯2a側の切断加工部20aの圧延長手方向の単位長さあたりの板幅変化量が小さくなり、圧延中の急激な荷重変動を抑制することが可能となり、特に耳割れや板破断が生じにくくなる。高圧水切断装置を用いることにより、このような切断加工を容易に行うことができる。
鋼帯のせん断加工部の硬度(例えば、図4に示すような切断加工端面近傍の位置でのビッカース硬度)や鋼帯の残留オーステナイト量は、鋼種ごとに事前に測定しておき、例えば、鋼帯のせん断加工部の所定の硬度又は鋼帯の所定の残留オーステナイト量(体積率)を基準値とし、この基準値以上のせん断加工部の硬度又は残留オーステナイト量の鋼帯については切断加工装置(A)で切断加工を行い、基準値未満のせん断加工部の硬度又は残留オーステナイト量の鋼帯については切断加工装置(B)で切断加工を行う。
なお、残留オーステナイトの体積率は、例えば、鋼板を板厚方向の1/4面まで研磨し、この板厚1/4面の回折X線強度により求める。入射X線にはMoKα線を使用し、残留オーステナイト相の{111}、{200}、{220}、{311}面とフェライト相の{110}、{200}、{211}面のピークの積分強度の全ての組み合わせについて強度比を求め、これらの平均値を残留オーステナイトの体積率とする。
図2に示すような冷間タンデム圧延機を備えた冷間圧延設備において、TRIP鋼の圧延を行った。TRIP鋼の成分は、質量%でC:0.15%、Si:0.5%、Mn:3.0%である。熱間圧延で板厚2.4mmとし、酸洗でスケールを除去した後、無酸化雰囲気の箱型焼鈍炉にて650℃で2時間の熱処理を行った熱延鋼帯を素材とし、圧下率33.3%で仕上げ板厚1.6mmまで冷間圧延を行った。連続ライン内での先行鋼帯と後行鋼帯の接合はレーザー溶接で行った。本実施例において、耳割れや板破断の有無を調査した先行鋼帯と後行鋼帯の鋼帯接合部は、先行鋼帯の板幅が950mm、後行鋼帯の板幅が1100mmであった。
本発明例では、高圧水噴射ノズルを保持したロボットアームをNC制御して、高圧水噴射ノズルによる切断加工を行った。本発明例1では、切断加工の円弧形状を上述した従来例と同じとした。一方、本発明例2では、板幅が小さい先行鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径を780mm、板幅が大きい後行鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径を2000mmとした。また、本発明例1、2ともに、板幅が狭い先行鋼帯の板端部から60mmの深さ(ノッチ深さ)に切断加工を行った。
各条件でそれぞれ10回の冷間圧延を実施し、圧延後における鋼帯接合部の板幅両端部の切断加工部(ノッチャー部)の耳割れ発生と板破断発生の有無及び回数を調べた。その結果を表1に示す。
図2に示すような冷間タンデム圧延機を備えた冷間圧延設備において、TRIP鋼の圧延を行った。TRIP鋼の成分は、質量%でC:0.15%、Si:0.5%をベースに、Mn量を0.5〜10%の範囲で変更した。熱間圧延で板厚2.4mmとし、酸洗でスケールを除去した後、無酸化雰囲気の箱型焼鈍炉にて650℃で2時間の熱処理を行った熱延鋼帯を素材とし、圧下率33.3%で仕上げ板厚1.6mmまで冷間圧延を行った。箱型焼鈍炉での熱処理終了後の各熱延鋼帯の残留オーステナイト量(体積率)をさきに述べたX線回折法(回折X線強度)によって定量した。連続ライン内での先行鋼帯と後行鋼帯の接合はレーザー溶接で行った。本実施例において、耳割れや板破断の有無を調査した先行鋼帯と後行鋼帯の板幅は、先行鋼帯の板幅が950mm、後行鋼帯の板幅が1100mmであった。
本発明例では、高圧水噴射ノズルを保持したロボットアームをNC制御して、高圧水噴射ノズルによる切断加工を行った。本発明例における高圧水切断装置の高圧水の噴射条件は、噴射ノズル径1mm、噴射圧力300MPaとし、高圧水に研磨剤として平均粒径80μmのガーネット粉末を混合した。
本発明例では、板幅が小さい先行鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径を780mm、板幅が大きい後行鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径を2000mmとした。板幅が狭い先行鋼帯の板端部から60mmの深さ(ノッチ深さ)に切断加工を行った。
各条件でそれぞれ10回の冷間圧延を実施し、圧延後における鋼帯接合部の板幅両端部の切断加工部(ノッチャー部)の耳割れ発生と板破断発生の有無及び回数を調べた。その結果を、鋼帯のMn含有量及び残留オーステナイト量、鋼帯接合部の板幅両端部の切断加工条件、切断加工時間とともに表2に示す。
2 鋼帯
3 溶接機
4 切断加工装置
5 ルーパー
6 冷間タンデム圧延機
7 切断加工用ユニット
8 高圧水噴射ノズル
9 ロボットアーム
10 ポンプ
11 タンク
12 研磨剤供給ユニット
13 排水ピット
14 フィルター
15 ポンプ
20a,20b 切断加工部
A,B 切断加工装置
Claims (9)
- 連続ライン内で先行鋼帯と後行鋼帯を接合し、接合された鋼帯を連続的に圧延する鋼帯の冷間圧延方法において、
先行鋼帯と後行鋼帯を接合した後、その鋼帯接合部の板幅両端部を、高圧水切断装置を用いて円弧形状に切断加工することを特徴とする鋼帯の冷間圧延方法。 - 先行鋼帯と後行鋼帯の板幅に応じて、切断加工する円弧形状を選択して、鋼帯接合部の板幅両端部を切断加工することを特徴とする請求項1に記載の鋼帯の冷間圧延方法。
- 板幅が異なる先行鋼帯と後行鋼帯を接合した後、その鋼帯接合部の板幅両端部を円弧形状に切断加工するにあたり、
接合された先行鋼帯と後行鋼帯のうち、板幅が大きい鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径Raと、板幅が小さい鋼帯側の切断加工部の円弧形状の曲率半径Rbを、Ra>Rbとすることを特徴とする請求項2に記載の鋼帯の冷間圧延方法。 - 板幅が異なる先行鋼帯と後行鋼帯を接合した後、その鋼帯接合部の板幅両端部を円弧形状に切断加工するにあたり、
接合された先行鋼帯と後行鋼帯の板幅をそれぞれw1、w2、板幅両端部を円弧形状に切断加工した後の鋼帯接合部の溶接線位置での板幅をwAとした場合、w1−wAがw1の5%以上で、かつw2−wAがw2の5%以上となるように、切断加工する円弧形状を選択することを特徴とする請求項2又は3に記載の鋼帯の冷間圧延方法。 - 冷間圧延設備の連続ライン内に、鋼帯接合部の板幅両端部を円弧形状に切断加工する切断加工装置として、高圧水切断装置からなる切断加工装置(A)とともに金型によるせん断加工を行う切断加工装置(B)が併設され、
冷間圧延による鋼帯接合部の板幅両端部の切断加工部における耳割れ又は/及び板破断の生じやすさの基準として、少なくとも鋼帯のせん断加工部の硬度又は鋼帯の残留オーステナイト量(体積率)に基づく基準を設け、該基準を満たす耳割れ又は/及び板破断の生じやすい鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(A)で板幅両端部の切断加工を行い、前記基準を満たさない鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(B)で板幅両端部の切断加工を行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の鋼帯の冷間圧延方法。 - 残留オーステナイト量(体積率)が10%以上の鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(A)で板幅両端部の切断加工を行い、残留オーステナイト量(体積率)が10%未満の鋼帯の鋼帯接合部については切断加工装置(B)で板幅両端部の切断加工を行うことを特徴とする請求項5に記載の鋼帯の冷間圧延方法。
- 連続ライン内で先行鋼帯と後行鋼帯を接合し、接合された鋼帯を連続的に圧延する冷間圧延設備であって、先行鋼帯と後行鋼帯を接合する溶接機と、該溶接機で接合された鋼帯接合部の板幅両端部を円弧形状に切断加工する切断加工装置を備えた鋼帯の冷間圧延設備において、
前記切断加工装置が高圧水切断装置からなることを特徴とする鋼帯の冷間圧延設備。 - 切断加工装置は、高圧水噴射ノズルと、該高圧水噴射ノズルを保持する多軸制御可能なロボットアームを備え、該ロボットアームによる前記高圧水噴射ノズルの位置制御により、鋼帯接合部の板幅両端部を任意の円弧形状に切断加工可能としたことを特徴とする請求項7に記載の鋼帯の冷間圧延設備。
- 冷間圧延設備の連続ライン内に、溶接機で接合された鋼帯接合部の板幅両端部を円弧形状に切断加工する切断加工装置として、高圧水切断装置からなる切断加工装置(A)とともに金型によるせん断加工を行う切断加工装置(B)が併設され、切断加工される鋼帯に応じて切断加工装置(A)と切断加工装置(B)を選択的に使用できるように構成したことを特徴とする請求項7又は8に記載の鋼帯の冷間圧延設備。
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