複数の側面及び実施形態が、バルク弾性波共振器を使用して形成されたラダー型回路を含むフィルタに関する。
図1及び2A〜Bに示されるFBARから構成された従来のラダー型フィルタにおいては、フィルタの通過帯域における損失を低減して当該フィルタの阻止帯域内の減衰特性を改善するべく、直列接続FBAR111、113、115、117と並列接続FBAR112、114、116との間で設計パラメータが最適化される。しかしながら、一般に、フィルタの通過特性と減衰特性との間にはトレードオフの関係があり、通過帯域の近傍の減衰特性が、所望の性能を得るのに不十分となる。
上述した実情に鑑み、本発明の側面及び実施形態は、阻止帯域における通過帯域近傍の減衰量を改善するための、FBARのようなBAW共振器により形成されたラダー型回路を使用した帯域通過フィルタを与える。
一実施形態によれば、フィルタは、複数のバルク弾性波(BAW)共振器により形成されたラダー型回路と、当該ラダー型回路の入力部から出力部へと延びる信号経路の異なる2点間に接続されて当該異なる2点において信号の位相をキャンセルするループ回路とを含む。
異なる2点は、ラダー型回路の入力部及び出力部としてよい。異なる2点は、ラダー型回路の入力部と、信号経路に沿って当該ラダー型回路の出力部から一つのBAW共振器だけ離れた位置にあるノードとでよく、当該一つのBAW共振器は、当該ノードと当該ラダー型回路の出力部との間に直列に接続される。
ループ回路は、弾性表面波(SAW)共振器又はBAW共振器を含んでよい。ループ回路のSAW共振器は、縦結合型フィルタを形成してよい。
ラダー型回路を形成するBAW共振器と、ループ回路を形成するSAW共振器又はBAW共振器とは、共通の基板に配置されてよい。BAW共振器は、圧電薄膜共振器(FBAR)又は音響多層膜共振器(SMR)としてよい。
所定の実施形態によれば、通過特性を確保することができ、阻止帯域における通過帯域近傍の減衰量を改善することができる。したがって、フィルタデバイスの分離特性及びアイソレーション特性を改善することができる。
一実施形態によれば、フィルタ回路が、入力部及び出力部を有するラダー型フィルタと、入力部及び出力部間に当該ラダー型フィルタと並列に接続されたループ回路とを含み、当該ラダー型フィルタは、入力部及び出力部間の信号経路に沿って直列に接続された複数の直列腕弾性波素子と、当該信号経路及びグランド間に接続された複数の並列腕弾性波素子とを含む。ループ回路は、弾性波フィルタ、第1キャパシタ、及び第2キャパシタを含み、第1キャパシタは入力部に接続され、第2キャパシタは出力部に接続され、弾性波フィルタは、第1及び第2キャパシタ間に直列に接続され、第1弾性波素子及び第2弾性波素子を含む。第1及び第2弾性波素子はそれぞれが信号電極及びグランド電極を有するとともに、当該信号電極から当該グランド電極への方向が、第1及び第2弾性波素子それぞれにおいて同じ向きとなるように配列される。
フィルタ回路の一例において、弾性波フィルタはさらに第3弾性波素子及び第4弾性波素子を含み、ループ回路はさらに、第3弾性波素子と入力部との間に接続された第3キャパシタと、第4弾性波素子と出力部との間に接続された第4キャパシタとを含む。第3及び第4弾性波素子はそれぞれが、信号電極及びグランド電極を有し得る。第1、第2及び第3弾性波素子は、信号電極からグランド電極への方向が第1方向となるように配列され、第4弾性波素子は、信号電極からグランド電極への方向が、第1方向とは反対の第2方向に向けられる。
一例において、弾性波フィルタは縦結合型弾性表面波フィルタであり、ループ回路の第1及び第2弾性波素子はそれぞれが弾性表面波素子である。
他例において、ループ回路の第1及び第2弾性波素子はそれぞれが、例えば圧電薄膜共振器又は音響多層膜共振器のようなバルク弾性波素子である。
他例において、各直列腕弾性波素子及び各並列腕弾性波素子は、例えば圧電薄膜共振器又は音響多層膜共振器のようなバルク弾性波素子である。
他実施形態が、フィルタ回路であって、入力部及び出力部間の信号経路に沿って直列に接続された複数の直列腕弾性波素子を含むラダー型フィルタと、第1キャパシタ、第2キャパシタ、並びに第1キャパシタ及び第2キャパシタ間に直列に接続された弾性波フィルタを含むループ回路とを含むフィルタ回路に向けられ、ラダー型フィルタはさらに、信号経路及びグランド間に接続された複数の並列腕弾性波素子を含み、第1キャパシタは入力部に接続され、第2キャパシタは信号経路に沿ってノードに接続され、複数の並列腕弾性波素子の第1並列腕弾性波素子が当該ノード及びグランド間に接続され、複数の直列腕弾性波素子の一つの直列腕弾性波素子が当該ノード及び出力部間に接続される。弾性波フィルタは第1弾性波素子及び第2弾性波素子を含み、第1及び第2弾性波素子はそれぞれが信号電極及びグランド電極を有するとともに、当該信号電極から当該グランド電極への方向が、第1及び第2弾性波素子それぞれにおいて同じ向きとなるように配列される。
一例において、各直列腕弾性波素子及び各並列腕弾性波素子は、例えば圧電薄膜共振器又は音響多層膜共振器のようなバルク弾性波素子である。
一例において、弾性波フィルタは縦結合型弾性表面波フィルタであり、ループフィルタの第1及び第2弾性波素子はそれぞれが弾性表面波素子である。
他例において、ループ回路の第1及び第2弾性波素子はそれぞれがバルク弾性波素子である。各バルク弾性波素子は、例えば圧電薄膜共振器又は音響多層膜共振器としてよい。
他実施形態によれば、フィルタ回路が一次フィルタ及びループ回路を含む。一次フィルタは、一次フィルタに通過帯域及び阻止帯域を与えるように構成及び配列された複数の一次弾性波素子であって、フィルタ回路の入力部と当該フィルタ回路の出力部との間の信号経路に沿って直列に接続された複数の直列腕弾性波素子を含む複数の一次弾性波素子と、当該信号経路及びグランド間に接続された複数の並列腕弾性波素子とを含む。ループ回路は、第1キャパシタ、第2キャパシタ、並びに第1キャパシタ及び第2キャパシタ間に直列に接続された弾性波フィルタを含み、第1キャパシタは一次フィルタの第1ノードに接続され、第2キャパシタは、一次フィルタの、第1ノードとは異なる第2ノードに接続される。弾性波フィルタは、第1及び第2の二次弾性波素子を含み、これらはそれぞれが、信号電極及びグランド電極を含み、信号電極からグランド電極への方向が第1及び第2の二次弾性波素子それぞれにおいて同じ向きとなるように配列される。ループ回路は、一次フィルタの阻止帯域における信号の一部分を、信号位相のキャンセルによって減衰させるように構成される。
一例において、ループ回路の弾性波フィルタは縦結合型弾性表面波フィルタであり、第1及び第2弾性波素子はそれぞれが弾性表面波素子である。
一例において、第1ノードは一次フィルタの入力部であり、第2ノードは一次フィルタの出力部である。
他例において、第1ノードは一次フィルタの入力部であり、複数の並列腕弾性波素子の第1並列腕弾性波素子は第2ノード及びグランド間に接続され、複数の直列腕弾性波素子の少なくとも一つの直列腕弾性波素子は、第2ノードと一次フィルタの出力部との間に接続される。
一例において、各一次弾性波素子は、圧電薄膜共振器及び音響多層膜共振器の一方である。
他実施形態によれば、フィルタアセンブリが、圧電基板と、当該圧電基板の表面に配置された第1及び第2信号接点と、当該圧電基板の表面に配置された一次弾性波フィルタとを含み、一次弾性波フィルタは、第1信号接点及び第2信号接点間の第1導電信号トラックを介して直列に接続された複数の一次直列腕弾性波素子と、導電信号トラック及びグランド間に接続された複数の一次並列腕弾性波素子とを含み、複数の一次直列腕弾性波素子及び複数の一次並列腕弾性波素子は一緒になって通過帯域及び阻止帯域を備えた一次フィルタを与え、導電信号トラックは第1ノード及び第2ノードを含む。フィルタアセンブリはさらに、圧電基板の表面に配置されて第1ノードに接続された第1キャパシタと、当該圧電基板の表面に配置されて第2ノードに接続された第2キャパシタと、当該圧電基板の表面に配置された二次弾性波フィルタとを含み、二次弾性波フィルタは、第1ノード及び第2ノード間に直列に構成及び配列された複数の二次弾性波素子を含み、二次弾性波フィルタは、一次弾性波フィルタの阻止帯域における信号の一部分を、位相のキャンセルによって減衰させるように構成される。
一例において、二次弾性波フィルタは、第1キャパシタに接続された第1二次弾性波素子と、第2キャパシタに接続された第2二次弾性波素子とを含む。
一例において、第1ノードは第1信号接点を含み、第2ノードは第2信号接点を含む。
他例において、複数の一次直列腕弾性波素子の少なくとも一つは、第1ノード及び第2ノード間の導電トラックに沿って接続される。
フィルタアセンブリはさらに、圧電基板の表面の外周縁に沿って設けられた側壁を含む。一例において、フィルタアセンブリはさらに、圧電基板の表面と、当該側壁の内面と、当該封止基板の表面との間にキャビティを形成するように側壁に配置された封止基板を含む。フィルタアセンブリはさらに第1及び第2外部電極を含む。これらはそれぞれが、封止基板に配置され、対応する第1及び第2信号接点に各導電ビアを介して接続される。
これらの典型的な側面及び実施形態の、さらに他の側面、実施形態及び利点が以下に詳述される。ここに開示される複数の実施形態は、ここに開示の複数の原理の少なくとも一つに整合する任意の態様で他の実施形態と組み合わせることができる。「一実施形態」、「いくつかの実施形態」、「代替実施形態」、「様々な実施形態」、「一つの実施形態」等の言及は、必ずしも互いに排他的というわけではなく、記載される特定の特徴、構造又は特性が少なくとも一つの実施形態に含まれ得ることを示すことが意図される。ここでのそのような用語の登場は、からなずしもすべてが同じ実施形態を言及するわけではない。
本発明の実施形態に係るフィルタの様々な側面及び例が、図面を参照して以下に詳述される。
図3は、一実施形態に係るフィルタを示す回路図である。この実施形態において、フィルタを形成するバルク弾性波(BAW)共振器として、圧電薄膜共振器(FBAR)が使用される。図3に示されるように、一実施形態に係るフィルタ200は、FBARにより形成されて入力部(IN)202及び出力部(OUT)204間に配置されたラダー型フィルタ回路210を含む。さらに、ループ回路220が、入力部202及び出力部204間に配置され、ラダー型フィルタ回路210に並列に接続される。
ラダー型フィルタ回路210において、直列接続FBAR211、213、215、217が、入力部202から出力部204へと延びる信号経路に沿って直列に接続される。さらに、直列接続FBAR211、213、215、217を結ぶ各ノードとグランドとの間に、並列接続FBAR212、214、216が並列に接続される。この例において、並列接続FBAR212、214はそれぞれの一端が、図3に示されるように、共通ノードを介してグランドに接続される。
ループ回路220は縦結合型SAWフィルタ230を含む。一例において、SAWフィルタ230は、入力部202に接続された第1SAW共振器232と、出力部204に接続された第2SAW共振器234とを含む。第1SAW共振器232及び第2SAW共振器234は、SAW共振器232、234の信号電極から各グランド電極への方向が互いに同じ向きとなるように隣接して配列されて縦結合型フィルタ230を形成する。
さらに、ループ回路220は、入力部202と縦結合型SAWフィルタ230との間に配置された第1キャパシタ222を含む。なおもさらに、ループ回路220は、SAWフィルタ230と出力部204との間に配置された第2キャパシタ224を含む。
図4Aは、図3のフィルタの一例の平面図である。このフィルタの端面図は、図2Bに示される従来の電子回路と同様である。フィルタ200の対応する構成要素には、図3に示される回路図と同じ参照番号が付される。
フィルタ200は、窒化アルミニウム(AlN)及び酸化亜鉛(ZnO)のような圧電体から作られた圧電基板251を含む。ラダー型フィルタ回路210及びループ回路220は、圧電基板251の平坦な上面251aに形成される。圧電基板251は、FBAR211〜217の圧電薄膜を形成するのに適切な厚さを有する。さらに、圧電基板251の上面251aの外周縁に沿ってフィルタ200の電子回路を封止するべく、側壁254が形成される。ラダー型フィルタ回路210の直列接続FBAR211、213、215、217は、圧電基板251の上面251aにおいて、入力部202の信号接点241から出力部204の信号接点243へと延びる信号経路に対応する導電信号トラック261に沿って配置される。さらに、並列接続FBAR212、214、216が、グランドトラック262に沿って形成される。並列接続FBAR212、214、216により、直列接続FBAR211、213、215、217を結ぶ複数のノードが、グランドトラック262を介して各グランド接点242、244、246に接続される。この例において、グランドトラック262は、グランド接点242及び244を介して並列接続FBAR212及び214間に接続される。
SAWフィルタ230を含むループ回路220が、信号接点241から信号接点243へと延びるループ信号トラック263に沿って形成される。SAWフィルタ230は、信号接点241に接続された第1SAW共振器232と、信号接点243に接続された第2SAW共振器234とを含む。上述したように、第1SAW共振器232及び第2SAW共振器234は、信号電極から各グランド電極への方向が互いに同じ向きとなるように隣接して配置されて縦結合型フィルタを形成する。これらのグランド電極は双方ともが、グランドトラック262を介してグランド接点248に接続される。
第1キャパシタ222は、信号接点241をSAWフィルタ230に接続するループ信号トラック263に配置される。さらに、第2キャパシタ224は、SAWフィルタ230を信号接点243に接続するループ信号トラック263に配置される。
図4Bは、図4Aに示されるフィルタの部分断面図である。図4Bの断面図は、図4AにおけるIV−IV’線に沿った断面を示す。SAWフィルタ230の一部を形成するインターディジタルトランスデューサ(IDT)電極が、支持基板252により支持された圧電基板251の上面251に配置される。さらに、ループ信号トラック263が、圧電基板51の上面251aに配置される。
FBAR215が、圧電基板251の一部分に形成される。FBAR215において、圧電基板251及び支持基板252間にキャビティ272が形成され、圧電薄膜274が、圧電基板251の対応部分により形成される。圧電薄膜274には、上部電極276及び下部電極278が振動できるように形成される。
図5は、一実施形態に係るフィルタ200の周波数特性を示すグラフである。実線「A」で示すこの実施形態の周波数特性は、通過帯域における損失が抑制され、阻止帯域内の通過帯域の近傍においても減衰量が確保されている。比較のために、ループ回路220がフィルタから取り除かれたときの周波数特性を破線「B」で示す。この場合、阻止帯域の低周波数側における通過帯域の近傍で、減衰特性が大きく劣化する。
所定の実施形態に係るフィルタ200は、入力部202及び出力部204間に接続され、かつ、ラダー型フィルタ回路210に並列に接続されて当該入力部及び出力部間で信号の位相をキャンセルすることを可能にするループ回路220を含む。これらの実施形態に係るフィルタ200によれば、ループ回路220の設計パラメータを最適化することができる。図5に示されるように、通過帯域における損失を最小限とするとともに、阻止帯域内のかつ通過帯域近傍の減衰特性を改善することができる。
さらに、所定の実施形態によれば、FBAR211〜217を含むラダー型フィルタ回路210と、SAWフィルタ230を含むループ回路220とが、図4Aに示されるように、共通圧電基板251に配置される。したがって、フィルタ200を小型化することができる。
図6は、所定の実施形態に係るフィルタ200の他例を示す回路図である。フィルタ200のこの例において、ループ回路220は、フィルタの入力部202と、ラダー型フィルタ回路10の2つのFBAR間に位置するノードとの間に接続される。特に、図6に示される例において、ループ回路220は、出力部204の最も近くに配置された直列接続FBAR217と、信号経路に沿って先行する直列接続FBAR215との間に位置するノード206に接続される。すなわち、直列接続FBAR217は、ループ回路220に接続されたノード206と、信号経路に沿った出力部204との間に位置する。これは、ループ回路220が入力部202及び出力部204間に接続される図3に示される配列と異なる。
図6に示される例において、FBARにより形成されたラダー型フィルタ回路210は、入力部202と出力部204との間に配置される。上述したように、直列接続FBAR211、213、215、217は、ラダー型フィルタ回路210における信号経路に沿って直列に接続される。さらに、並列接続FBAR212、214、216は、直列接続FBAR211、213、215、217を結ぶ各ノードとグランドTPMP間に並列に接続される。図6に示される例において、FBAR212及び214はそれぞれが、共通ノードを介してグランドの一端に接続される。
上述したように、図6に示される例において、ループ回路220は、入力部202と、直列接続FBAR215、217を並列接続FBAR216に結ぶノード206との間に接続される。すなわち、ループ回路220は、ラダー型フィルタ回路210の入力部と、入力部202及び出力部204間の信号経路に沿って出力部から一つのFBARだけ離れるように位置決めされたノードとの間に接続される。
ループ回路220は縦結合型SAWフィルタ230を含む。SAWフィルタ230は、ラダー型フィルタ回路210の入力部202に接続された第1SAW共振器232と、直列接続FBAR215、217を並列接続FBAR216に結ぶノード206に接続された第2SAW共振器234とを含む。第1SAW共振器232及び第2SAW共振器234は、信号電極から各グランド電極への方向が互いに同じ向きとなるように隣接して配置されて縦結合型フィルタを形成する。
さらに、ループ回路220は、入力部202と縦結合型SAWフィルタ230との間に接続された第1キャパシタ222を含む。なおもさらに、ループ回路220は、SAWフィルタ230及びノード206間に接続された第2キャパシタ224を含む。
上述したように、図6に示されるフィルタ200の例において、ループ回路220は、ラダー型フィルタ回路210の入力部202と、直列接続FBAR215、217を並列接続FBAR216に結ぶノード206との間に接続される。この配列によれば、出力インピーダンスの変動を抑制し、阻止帯域内の減衰特性を改善することができる。
わかることだが、図6に示されるフィルタ200の例が、ループ回路220が入力部202と、信号経路に沿って出力部204から一つの共振器だけ離れた位置にあるノード206との間に接続される構成を有するにもかかわらず、フィルタ200の他の実施形態は、この構成に限られない。例えば、ループ回路220は、ラダー型フィルタ回路210の入力部202から信号経路に沿って一つの共振器だけ離れた位置にあるノードと、ラダー型フィルタ回路210の出力部204との間に接続してよい。さらに、ループ回路220は、ラダー型フィルタ回路210の入力部202及び出力部204、並びにラダー型フィルタ回路210の信号経路に沿った直列接続FBAR211、213、215、217を結ぶ各ノードから選択された異なる2点間に接続してよい。
図7は、一実施形態に係るフィルタ200の他例の構成を示す回路図である。このフィルタ200の例において、ループ回路220の縦結合型SAWフィルタ230は、4つのSAW共振器232、234、236、238を含む。これは、SAWフィルタ230が2つのSAW共振器232、234を含む図3に示されるフィルタ200の例とは異なる。
図7に示されるフィルタ200の例は、FBARにより形成されて入力部202及び出力部204間に配置されたラダー型フィルタ回路210を含む。さらに、ループ回路220は、ラダー型フィルタ回路210の入力部202及び出力部204間に、ラダー型フィルタ回路210と並列に接続される。
上述したように、直列接続FBAR211、213、215、217は、ラダー型フィルタ回路210における信号経路に沿って直列に接続される。さらに、3つの並列接続FBAR212、214、216は、直列接続FBAR211、213、215、217を結ぶ各ノードとグランドとの間に接続される。この例において、FBAR212、214はそれぞれが、図7に示されるように、一端が共通ノードを介してグランドに接続される。
ループ回路220は縦結合型SAWフィルタ230を含む。SAWフィルタ230は、ラダー型フィルタ回路210の入力部202に接続された第1及び第2SAW共振器232及び234と、ラダー型フィルタ回路210の出力部204に接続された第3及び第4SAW共振器236及び238とを含む。これら4つのSAW共振器は、縦結合型SAWフィルタ230を形成するべく、第1SAW共振器232、第3SAW共振器236、第2SAW共振器234及び第4SAW共振器238の順序で互いに隣接して配列される。これら4つのSAW共振器のうち、第1SAW共振器232、第3SAW共振器236及び第2SAW共振器234が、信号電極から各グランド電極への方向が同じ向きとなるように配列される一方、第4SAW共振器238は、信号電極からグランド電極への方向が他のSAW共振器とは逆向きになるように配列される。
さらに、ループ回路220は、ラダー型フィルタ回路210の入力部202と第1SAW共振器232との間に接続された第1キャパシタ222と、ラダー型フィルタ回路210の入力部202と第2SAW共振器234との間に接続された第2キャパシタ224とを含む。なおもさらに、第3SAW共振器236とラダー型フィルタ回路210の出力部204との間に第3キャパシタ226が接続され、第4SAW共振器238とラダー型フィルタ回路210の出力部204との間に第4キャパシタ228が接続される。
図7に示されるフィルタ200の例において、SAWフィルタ230は、ループ回路220の接続を二重化させるべく、4つのSAW共振器232、234、236、238を含む。このように、ループ回路220の二重化により、減衰特性が得られる周波数帯域を拡大し、又は減衰特性が得られる周波数帯域を追加することができる。
わかることだが、図7に示されるフィルタ200の例では、ループ回路220の接続が二重化された構成であるにもかかわらず、フィルタ200の他の実施形態はこの構成に限られない。例えば、三重化のようなさらなる多重化がループ回路220に適用されてよい。かかる場合において、減衰特性が得られる周波数帯域をさらに広げることができ、複数の周波数帯域にわたって減衰特性を得ることができる。
図8は、所定の実施形態に係るフィルタ200の他例を示す回路図である。このフィルタ200の例において、ループ回路220はFBARにより形成される。これは、ループ回路220がSAW共振器により形成された上述のフィルタ200の他例とは異なる。図8に示されたフィルタ200の例は、FBARにより形成されて入力部202及び出力部204間に配置されたラダー型フィルタ回路210を含む。さらに、ループ回路220は、入力部202と出力部204との間に、ラダー型フィルタ回路210と並列に接続される。
上述したように、直列接続FBAR211、213、215、217が、ラダー型フィルタ回路210における信号経路に沿って直列に接続される。さらに、3つの並列接続FBAR212、214、216が、直列接続FBAR211、213、215、217を結ぶ各ノードとグランドとの間に接続される。この例において、並列接続FBAR212、214はそれぞれの一端が、図8に示されるように、共通ノードを介してグランドに接続される。
図8において、ループ回路220を模式的にボックスとして表したが、上述したように、ループ回路220は、例えばラダー型回路として配列可能な、FBARにより形成されたフィルタとしてよい。加えて、図8に示されるように、ループ回路220は二重化され、又はさらに多重化され得る。
ループ回路220がFBARにより形成されるフィルタ200の実施形態は、SAW共振器により形成されるループ回路220の例と同様の技術的効果を奏し得る。一例において、FBARにより形成されたループ回路220と、同様にFBARにより形成されたラダー型フィルタ回路210とが共通の基板に配置される。したがって、ラダー型フィルタ回路210及びループ回路220を形成するべく共通プロセスを使用することができるので、フィルタ200を形成する製造工程数を低減することができる。
わかることだが、ここに開示される様々な実施形態においてBAW共振器がFBARとして記載されているにもかかわらず、フィルタ200の他の実施形態はこれに限られない。例えば、音響多層膜共振器(SMR)のような他のBAW共振器も、様々な実施形態に係るフィルタ200のラダー型フィルタ回路210及び/又はループ回路220を形成するBAW共振器として使用することができる。
フィルタ200の実施形態は、多様な電子機器及び構成要素において使用することができる。例えば、フィルタ200の実施形態は、ダイプレクサ、トライプレクサ又はアンテナデュプレクサにおいて使用することができる。フィルタ200がアンテナデュプレクサにおいて送信フィルタ又は受信フィルタのいずれかとして使用される場合、ループ回路220は、当該デュプレクサのアイソレーション特性を改善するべく使用することができる。
図9を参照すると、例えば無線通信機器(例えば携帯電話機)のような電子機器において使用することができてアンテナデュプレクサ300を含むフロントエンドモジュール400の一例のブロック図が例示される。アンテナデュプレクサ300は、共通端子302、入力端子304及び出力端子306を有する。共通端子302にはアンテナ510が接続される。所定の例において、インダクタのような位相整合構成要素410を共通端子302に接続することができる。フロントエンドモジュール400はさらに、デュプレクサ300の入力端子304に接続された送信器回路422と、デュプレクサ300の出力端子306に接続された受信器回路424とを含む。送信器回路422は、アンテナ510を介して送信される信号を生成し、受信器回路424は、アンテナ510を介して信号を受信して処理することができる。いくつかの実施形態において、そのような受信及び送信の機能を、図9に例示されるような別個の構成要素に、又は以下にさらに述べる共通送受信器回路/モジュールに、実装することができる。当業者にわかることだが、本開示の利益を前提として、フロントエンドモジュール400は、スイッチ、電磁カプラ、増幅器、プロセッサ等を含むがこれらに限られない他の構成要素も含み得る。
アンテナデュプレクサ300は、入力端子304及び共通端子302間に接続された一以上の送信フィルタ310と、共通端子302及び出力端子306間に接続された一以上の受信フィルタ320とを含み得る。デュプレクサ300のアイソレーション特性とは、入力端子304から出力端子306への通過特性をいう。入力端子304及び出力端子306間を通る信号のレベルを低減することにより、フィルタ310及び320の通過帯域において、改善されたアイソレーション特性を得ることができる。上述したように、これを達成することができる一つの態様は、フィルタ310又は320の少なくとも一方の阻止帯域における信号減衰を改善することである。所定の実施形態によれば、この改善されたアイソレーション特性の達成を補助するべく、送信フィルタ310、受信フィルタ320又はこれらの組み合わせのいずれか一以上を、上述した位相ループ回路220を含むフィルタ200の実施形態を使用して実装することができる。特に、帯域通過フィルタとなる送信フィルタ310との組み合わせでループ回路220が使用される(したがって一を超える阻止帯域を有し得る)場合、ループ回路は、一以上の受信フィルタ320の通過帯域と周波数が重複する送信フィルタ310の阻止帯域における減衰を改善するように構成することができる。同様に、帯域通過フィルタとなる受信フィルタ320との組み合わせでループ回路220が使用される場合、ループ回路は、一以上の送信フィルタ310の通過帯域と周波数が重複する受信フィルタ310の阻止帯域における減衰を改善するように構成することができる。
図10は、送信フィルタ310を実装するように構成されたフィルタ200の一実施形態を含むアンテナデュプレクサ300の一例の図である。すなわち、ループ回路220の一例が、入力端子304及び共通端子302間で送信フィルタ310と並列に接続される。一例において、送信フィルタ310は、図3及び6〜8に示されるラダー型フィルタ回路210の構成を有する。図10に示される例において、送信フィルタ310は、フィルタ200れるが、他例においては、受信フィルタ320も、フィルタ200の一実施形態を使用して実装され得る。かかる例において、ループ回路220は、共通端子302及び出力端子306間で受信フィルタ320と並列に接続することができる。他例において、送信フィルタ310及び受信フィルタ320の双方を、フィルタ200の実施形態を使用して実装することができる。
上述したフィルタ200の実施形態を含むアンテナデュプレクサ300又はフロントエンドモジュール400の実施形態は、有利なことに、様々な電子機器において使用することができる。電子機器の例は、消費者電子製品、消費者電子製品の一部、電子試験機器、基地局のようなセルラー通信インフラストラクチャを含み得るが、これらに限られない。電子機器の例は、スマートフォンのような携帯電話機、電話機、テレビ、コンピュータモニタ、コンピュータ、モデム、ハンドヘルドコンピュータ、ラップトップコンピュータ、タブレットコンピュータ、電子ブックリーダー、スマートウォッチのようなウェアラブルコンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、家電製品、自動車、ステレオシステム、DVDプレーヤー、CDプレーヤー、MP3プレーヤーのようなデジタル音楽プレーヤー、ラジオ、カムコーダー、カメラ、デジタルカメラ、携帯メモリチップ、ヘルスケアモニタリング機器、自動車エレクトロニクスシステム又はアビオニクス電子システムのような車両エレクトロニクスシステム、周辺機器、腕時計、置き時計等を含み得るが、これらに限られない。さらに、電子機器は、未完成の製品を含んでよい。
図11は、上述したようにループ回路220を含むフィルタ200の一以上の実施形態を使用して実装され得るアンテナデュプレクサ300を含む無線機器500の一例のブロック図である。無線機器500は、音声又はデータ通信のために構成されたセルラー電話機、スマートフォン、タブレット、モデム、通信ネットワーク、又は任意の他のポータブル若しくは非ポータブルデバイスであってよい。無線機器500は、アンテナ510から信号を送受信することができる。無線機器500は、上述したようなデュプレクサ300を含むフロントエンドモジュール400を含む。フロントエンドモジュール400はさらに、例えば送信モード及び受信モードのような異なる周波数帯域又はモード間で切り替わるように構成することができるアンテナスイッチ430を含む。図11に示される例において、アンテナスイッチ430は、デュプレクサ300とアンテナ510との間に位置決めされるが、他例においては、デュプレクサ300は、アンテナスイッチ430とアンテナ510との間に位置決めし、又はアンテナスイッチ430及びデュプレクサ300を一つのモジュールに統合することもできる。
フロントエンドモジュール400は、送信用の信号を生成し、又は受信された信号を処理するように構成された送受信器420を含む。送受信器420は、図9に示されるように、デュプレクサ300の入力端子304に接続可能な送信器回路422と、デュプレクサ300の出力端子306に接続可能な受信器回路424とを含み得る。送信器回路422による送信のために生成された信号が、送受信器420からの生成信号を増幅する電力増幅器(PA)モジュール440によって受信される。当業者にわかることだが、電力増幅器モジュール440は一以上の電力増幅器を含み得る。電力増幅器モジュール440は、多様なRF又は他の周波数帯域の送信信号を増幅するべく使用することができる。例えば、電力増幅器モジュール440は、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)信号又は任意の他の適切なパルス信号を送信する補助となるように、電力増幅器の出力をパルス化するべく使用可能なイネーブル信号を受信することができる。電力増幅器モジュール440は、例えば、GSM(Global System for Mobile)(登録商標)信号、符号分割多元接続(CDMA)信号、W−CDMA信号、ロングタームエボリューション(LTE)信号又はEDGE信号を含む様々なタイプの信号のいずれかを増幅するように構成することができる。所定の実施形態において、スイッチ等を含む電力増幅器モジュール440及び関連構成要素は、例えば、pHEMT若しくはBiFETトランジスタを使用してGaAs基板上に、又はCMOSトランジスタを使用してシリコン基板上に作製することができる。フロントエンドモジュール400はさらに、アンテナ510からの受信信号を増幅して当該増幅信号を送受信器420の受信回路424に与える低雑音増幅器モジュール450を含む。
図11の無線機器500はさらに、送受信器420に接続されて無線機器の動作のための電力を管理する電力管理帯域サブシステム520を含む。電力管理システム520はまた、ベース帯域サブシステム530、及び無線機器500の他の構成要素の動作を制御することができる。電力管理システム520はまた、無線機器500の様々な構成要素のために電力を供給する電池(図示せず)を含み又は当該電池に接続されてよい。電力管理システム520はさらに、例えば信号の送信を制御することができる一以上のプロセッサ又はコントローラを含み得る。
一実施形態において、ベース帯域サブシステム530は、ユーザとの間でやりとりされる音声又はデータの様々な入力及び出力を容易にするべくユーザインタフェイス540に接続される。ベース帯域サブシステム530はまた、無線機器の動作を容易にし、又はユーザのための情報を格納するべく、データ又は命令を格納するように構成されたメモリ550に接続することができる。
少なくとも一つの実施形態のいくつかの側面を上述したが、様々な改変、修正及び改善が当業者にとって容易に想起されることを理解されたい。かかる改変、修正及び改善は、本開示の一部となることが意図され、かつ、本発明の範囲内にあることが意図される。理解するべきことだが、ここで述べられた方法及び装置の実施形態は、本明細書に記載され又は添付図面に例示された構成要素の構造及び配列の詳細への適用に限られない。方法及び装置は、他の実施形態で実装し、様々な態様で実施又は実行することができる。特定の実装例は、例示のみを目的としてここに与えられ、限定されることを意図しない。また、ここで使用される表現及び用語は、説明目的であって、限定としてみなすべきではない。ここでの「含む」、「備える」、「有する」、「包含する」及びこれらの変形の使用は、以降に列挙される項目及びその均等物並びに付加項目の包括を意味する。「又は(若しくは)」の言及は、「又は(若しくは)」を使用して記載される任意の用語が、当該記載の用語の一つの、一つを超える、及びすべてのものを示すように解釈され得る。したがって、上記説明及び図面は例示にすぎず、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の適切な構造及びその均等物から決定されるべきである。