JP2018087461A - 既存外壁の支持構造 - Google Patents

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Abstract

【課題】既存外壁に加わる外力を小さくして既存外壁を支持することができる既存外壁の支持構造を提供する。【解決手段】既存外壁の支持構造は、上下方向に縁切りされて分割された既存外壁10と、分割された既存外壁10の裏面を支持する複数の補強柱20と、既存外壁10の裏側に新設された建物躯体30と複数の補強柱20とをそれぞれ連結する連結部材36と、を備える。【選択図】図1

Description

本発明は、既存外壁の支持構造に関する。
既存外壁を残したまま新設構造物を構築する構築方法として、例えば特許文献1には、既存外壁を鉄骨の補強フレームで支持し、補強フレームと新設構造物の床とをピンローラーで連結する方法が開示されている。
また、既存外壁の支持方法として、例えば特許文献2には、既存の大型壁体の上端部及び下端部にそれぞれファスナーを取付け、ファスナーによって既存の大型壁体を新設高層建物の変形に追随させる方法が開示されている。
特開2004−162473号公報 特開平6−307101号公報
特許文献1及び特許文献2では、既存外壁(既存の大型壁体)全体を補強フレームやピンローラー、ファスナーで支持している。このため、地震時等に大きな外力が既存外壁に加わった場合に、補強フレームやピンローラー、ファスナーのみで既存外壁を支持することが難しかった。
本発明は上記事実に鑑み、既存外壁に加わる外力を小さくして既存外壁を支持することができる既存外壁の支持構造を提供することを目的とする。
請求項1に記載の既存外壁の支持構造は、上下方向に縁切りされて分割された既存外壁と、分割された前記既存外壁の裏面を支持する複数の補強柱と、前記既存外壁の裏側に新設された建物躯体と複数の前記補強柱とをそれぞれ連結する連結部材と、を備える。
上記構成によれば、既存外壁を上下方向に縁切りして分割することで、各既存外壁に加わる外力を小さくすることができる。また、分割された既存外壁の裏面を支持する補強柱と新設された建物躯体とをそれぞれ連結部材によって連結することで、既存外壁に加わる外力をそれぞれ補強柱及び連結部材を介して建物躯体へと流すことができる。これにより、既存外壁を撤去することなく新設の建物躯体の外壁として利用することができる。
請求項2に記載の既存外壁の支持構造は、請求項1に記載の既存外壁の支持構造であって、前記補強柱は、滑り材を介して上下方向に配置され、分割された前記既存外壁をそれぞれ支持している。
上記構成によれば、補強柱同士が滑り材を介して上下方向に配置されることにより、補強柱間で鉛直力を伝えつつ、地震時等に加わる水平力は伝えない構造とすることができる。
請求項3に記載の既存外壁の支持構造は、請求項1又は2に記載の既存外壁の支持構造であって、前記既存外壁は、平面視でコの字形状とされている。
上記構成によれば、既存外壁は、例えば主面及び2側面の3面が残されたコの字形状とされている。このため、既存外壁の主面の面外変形を、2側面で支持することで抑制することができる。
本発明によれば、既存外壁に加わる外力を小さくして既存外壁を支持することができる。
(A)は本発明の実施形態の一例における既存外壁の支持構造を示す平面図であり、(B)はその正面図である。 図1(A)におけるA−A線断面図である。 (A)図2の拡大図であり、(B)は(A)におけるB−B線断面図である。
以下、本発明の実施形態に係る既存外壁の支持構造の一例について、図1〜図3に従って説明する。
(構成)
図1(A)に示すように、本実施形態における支持対象である既存外壁10は、高層又は大規模な既存建物12の外壁であり、既存外壁10の裏面は、図示しない鉄筋が内部に配筋されたRC(鉄筋コンクリート)造の複数の既存柱14によって支持されている。
なお、図1(A)において、既存建物12は既存外壁10部分を残して解体及び撤去されており、既存外壁10も主面10A、及び主面10Aの両側の2つの側面10Bの一部を残して解体及び撤去されている。つまり、既存外壁10は、平面視でコの字形状とされた状態で残されている。
また、図1(B)に示すように、既存外壁10には、互いに間隔をあけてそれぞれ水平方向に延びる2本のスリット16が全面にわたって形成されており、スリット16によって既存外壁10が上下方向に縁切りされている。これにより、既存外壁10が上層外壁部18A、中層外壁部18B、下層外壁部18Cの3つに分割(等分)されている。なお、図2に示すように、既存柱14も既存外壁10とともに、スリット16によって上層既存柱14A、中層既存柱14B、下層既存柱14Cの3つに分割されている。
また、既存柱14の既存外壁10に固定された面とは反対の面(裏面)は、補強柱20によって支持されている。補強柱20は、上層既存柱14A(上層外壁部18A)を支持する上層補強柱20A、中層既存柱14B(中層外壁部18B)を支持する中層補強柱20B、及び下層既存柱14C(下層外壁部18C)を支持する下層補強柱20Cで構成されている。
図3(A)、図3(B)に示すように、中層補強柱20Bは、複数のスタッド22Aが接合され、互いに並列に配置された一対のH型鋼22で構成されている。中層既存柱14Bには一対の切欠き24が形成されており、一方の切欠き24に一方のH型鋼22に接合されたスタッド22Aを、他方の切欠き24に他方のH型鋼22に接合されたスタッド22Aをそれぞれ挿入し、切欠き24にグラウトを充填することにより、中層既存柱14BにH型鋼22が固定されている。
なお、上層補強柱20Aも、中層補強柱20Bと同様に、上層既存柱14Aに固定された一対のH型鋼26で構成されている。一方、下層補強柱20Cは、図示しない鉄筋が内部に配筋されたRC(鉄筋コンクリート)造とされている。図2に示すように、下層補強柱20Cは、上層補強柱20A及び中層補強柱20B(H型鋼22、26)の幅Pより幅Qが大きくされており、下端部が地中に建込まれている。
さらに、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cは、互いに滑り材28を介して上下方向に配置されている。滑り材28は、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の滑り支承板であり、表面の摩擦係数が0.10程度とされている。
既存外壁10の裏面側には、新設の建物躯体30の複数の新設柱32が建込まれている。新設柱32は、中空の角型鋼管で構成されており、複数の補強柱20(既存柱14)にそれぞれ対応する位置に配置されている。なお、新設柱32間には、建物躯体30の図示しない新設梁が架渡されているとともに、建物躯体30の新設スラブ34が打設されている。
また、複数の新設柱32と複数の補強柱20とは、それぞれ連結部材36によって連結されている。具体的には、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20C
の上下方向における中央部が、それぞれ連結部材36によって新設柱32に片持ち状に支持されて連結されている。
図3(A)、図3(B)に示すように、連結部材36は、補強柱側H型鋼38と、新設柱側H型鋼40と、補強柱側H型鋼38と新設柱側H型鋼40との間に架渡された一対のプレート42とで構成されている。
補強柱側H型鋼38は、補強柱20(中層補強柱20B)に接合された一対のダイヤフラム44に上フランジ38Aと下フランジ38Bがそれぞれ接合されている。同様に、新設柱側H型鋼40は、新設柱32に接合された一対のダイヤフラム46に上フランジ40Aと下フランジ40Bがそれぞれ接合されている。
補強柱側H型鋼38のウェブ38C及び新設柱側H型鋼40のウェブ40Cには、それぞれ上下方向が長軸方向とされた複数の楕円形の貫通孔48が形成されている。また、一対のプレート42の貫通孔48に対応する位置にも、上下方向が長軸方向とされた複数の楕円形の貫通孔50が形成されている。
この貫通孔48、及び貫通孔50にボルト52が挿通されることにより、補強柱側H型鋼38と新設柱側H型鋼40、すなわち補強柱20(中層補強柱20B)と新設柱32とが固定(ピン接合)されている。
(建替え方法)
既存建物12の既存外壁10を残したまま新設の建物躯体30を構築する場合、まず、図1(A)に示すように、既存外壁10の主面10Aと、2つの側面10Bの一部、及び既存外壁10を支持する既存柱14を残して既存建物12を解体及び撤去する。
また、既存建物12を解体及び撤去しながら、新設の建物躯体30の新設柱32を既存外壁10の裏面側に建込むとともに、下層補強柱20Cを建込んで既存柱14の下層部分の裏面に固定する。
そして、下層補強柱20Cの上部に滑り材28を介して中層補強柱20Bを配置し、中層補強柱20Bを既存柱14の中層部分の裏面に固定する。同様に、中層補強柱20Bの上部に滑り材28を介して上層補強柱20Aを配置し、上層補強柱20Aを既存柱14の上層部分の裏面に固定する。
次に、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cをそれぞれ連結部材36によって新設柱32に連結した後、既存外壁10及び既存柱14にスリット16を形成することで、既存外壁10及び既存柱14を上下方向に分割にする。分割した既存外壁10及び既存柱14を新設柱32で支持しつつ、新設の建物躯体30を構築する。
なお、建物躯体30の構築後は、スリット16に図示しないシーリング材を充填することでスリット16を塞ぐ。また、連結部材36の補強柱側H型鋼38、新設柱側H型鋼40、及びプレート42を互いに溶接することで補強柱20(既存外壁10)と新設柱32とを強固に固定(剛接合)し、既存外壁10を建物躯体30の外壁として利用する。なお、上記の工程手順は一例であり、順序が前後しても構わない。
(作用、効果)
本実施形態によれば、既存外壁10は、上下方向に縁切りされて上層外壁部18A、中層外壁部18B、及び下層外壁部18Cの3つに分割された状態で、それぞれ上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cによって支持されている。
このため、既存外壁10全体を補強柱20で支持する構成と比較して、各外壁部18A、18B、18Cに加わる外力、すなわち各補強柱20A、20B、20Cに加わる外力を小さくすることができる。このため、既存建物12が高層又は大規模であったり、地震時等に大きな外力が既存外壁10に加わったりした場合であっても、既存外壁10を支持することができる。
また、本実施形態によれば、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cと新設柱32とをそれぞれ連結部材36によって連結している。このため、各外壁部18A、18B、18Cに加わる外力を、それぞれ各補強柱20A、20B、20C及び連結部材36を介して建物躯体30へと流すことができる。これにより、既存外壁10を撤去することなく新設の建物躯体30の外壁として利用することができる。
ここで、連結部材36は、ピン接合構造とされており、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cの上下方向の中央部を片持ち状に支持している。このため、補強柱20、すなわち既存外壁10が新設柱32に剛接合されている構成と比較して、既存外壁10に生じるモーメントを小さくすることができる。
また、ボルト52が挿通される連結部材36の貫通孔48、50は、上下方向が長軸方向とされた楕円形形状とされている。このため、補強柱20と新設柱32とを連結部材36で連結した後、例えば新設スラブ34を打設することで新設柱32が僅かに縮んだ場合には、ボルト52が貫通孔48、50内を上下方向に移動することで、補強柱側H型鋼38と新設柱側H型鋼40との相対位置、すなわち補強柱20と新設柱32との相対位置を調整することができる。
また、本実施形態によれば、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cは、滑り材28を介して上下方向に配置されている。このため、例えば上層補強柱20Aに水平力が加わった場合であっても、上層補強柱20Aは滑り材28上を水平方向に移動するため、下方の中層補強柱20Bに水平力は伝わらない。すなわち、各補強柱20A、20B、20C間で鉛直力を伝えつつ、地震時等に加わる水平力は伝えない構造とすることができる。
特に、下層補強柱20CはRC造とされており、上層補強柱20A及び中層補強柱20Bの幅Pより幅Qが大きくされている。このため、下層補強柱20Cによって上層補強柱20A及び中層補強柱20Bから伝わる鉛直力を受けるとともに、下層外壁部18Cを強固に支持することができる。
また、本実施形態によれば、既存外壁10は、主面10A、及び2つの側面10Bを有する平面視でコの字形状とされている。このため、既存外壁10を自立させることができるとともに、既存外壁10の主面10Aの裏面側への面外変形を、2つの側面10Bで支持することで抑制することができる。
(その他の実施形態)
以上、本発明について実施形態の一例を説明したが、本発明はかかる実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内にて他の種々の実施形態が可能である。
例えば、上記実施形態では、2本のスリット16により既存外壁10が3つに分割されていたが、既存外壁10の分割する位置や数は上記実施形態には限られない。既存外壁10の面積や重量に基づいて、スリット16の位置や数を適宜定めることができる。
また、上記実施形態では、既存外壁を支持する既存柱14を補強柱20で支持していたが、既存外壁10の裏面を補強柱20で直接支持する構成としてもよい。なお、上層補強柱20A同士、中層補強柱20B同士、及び下層補強柱20C同士は、図示しない梁によって互いに連結されていてもよい。
また、上記実施形態では、補強柱20が連結部材36によって建物躯体30の新設柱32に連結されていたが、例えば新設柱32間に建込まれた間柱等に連結されていてもよい。さらに、補強柱20を連結部材36によって既存建物12の他の既存柱に連結しておき、建物躯体30の構築途中で他の既存柱から新設柱32に連結部材36を盛り替えてもよい。
また、上記実施形態では、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cが滑り材28を介して上下方向に配置されていたが、互いに間隔をあけて上下方向に配置されていてもよい。さらに、上層補強柱20A、中層補強柱20B、及び下層補強柱20Cが、それぞれ地中に建て込まれていてもよい。
また、滑り材28の構成も上記実施形態には限られず、各補強柱20A、20B,20C同士が水平方向に相対移動可能な構成とされていれば、補強柱20自体を摩擦係数の小さい材料で構成する、補強柱20間に潤滑油を塗布する、免震支承を設置する等、様々な構成を適用することができる。
また、上記実施形態では、上層補強柱20A及び中層補強柱20Bが一対のH型鋼22、26で構成されていたが、上層補強柱20A及び中層補強柱20BはRC造やSRC(鉄筋鉄骨コンクリート)造とされていてもよい。同様に、上記実施形態では、下層補強柱20CがRC造とされていたが、H型鋼で構成されていてもよく、SRC造とされていてもよい。
さらに、既存外壁10の支持構造は、新設の建物躯体30の構築時に既存外壁10を支持する場合だけでは無く、既存建物12の改修時に既存外壁10を支持する場合にも適用することができる。
10 既存外壁
20 補強柱
28 滑り材
30 建物躯体
36 連結部材

Claims (3)

  1. 上下方向に縁切りされて分割された既存外壁と、
    分割された前記既存外壁の裏面を支持する複数の補強柱と、
    前記既存外壁の裏側に新設された建物躯体と複数の前記補強柱とをそれぞれ連結する連結部材と、
    を備える既存外壁の支持構造。
  2. 前記補強柱は、滑り材を介して上下方向に配置され、分割された前記既存外壁をそれぞれ支持している、請求項1に記載の既存外壁の支持構造。
  3. 前記既存外壁は、平面視でコの字形状とされている、請求項1又は2に記載の既存外壁の支持構造。
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