JP2018085962A - L−リシンα−オキシダーゼの製造方法 - Google Patents

L−リシンα−オキシダーゼの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】L-リシンα-オキシダーゼの効率的且つ大量生産が可能となる核酸、該核酸を含むベクター、該核酸が導入された形質転換体、及び該形質転換体を用いたL-リシンα-オキシダーゼの製造方法を提供する。【解決手段】以下の(a)又は(b)の核酸:(a) 配列番号1に記載される塩基配列からなる核酸 (b) 配列番号1に記載される塩基配列と80%以上の同一性を有し、且つL-リシンα-オキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸、該核酸を含むベクター、該核酸が導入された形質転換体、及び以下の工程を含む、L-リシンα-オキシダーゼの製造方法:(1) 該形質転換体を液体培地で培養し、培養物からL-リシンα-オキシダーゼを回収する工程。【選択図】なし

Description

本発明は、L-リシンα-オキシダーゼをコードする核酸、該核酸を含むベクター、該核酸が導入された形質転換体、及び該形質転換体を用いたL-リシンα-オキシダーゼの製造方法に関する。さらに、本発明は、抗腫瘍剤に関する。
L-リシンα-オキシダーゼ(LysOX)は、L-リシンの酸化的脱アミノ化反応を触媒するフラビン酵素であり、L-リシンを基質としてα-ケト酸であるα-ケト-ε-アミノカプロン酸、過酸化水素及びアンモニアを生成する(非特許文献1)。LysOXは1980年糸状菌トリコデルマ・ビリデ(Trichoderma viride) Y244-2株から抗腫瘍性及び抗菌性を持つ酵素として発見され(非特許文献1-3)、その後いくつかの海洋生物からも見出されている。しかし、それらの酵素化学的性質と安定性は大きく異なり、トリコデルマ・ビリデY244-2由来のLysOXだけがL-リシンに対して高い基質特異性を有し幅広いpH及び温度で安定であるので、バイオセンサー好適酵素として実用化され、L-リシンの醗酵生産と品質の管理に使用されている。
LysOXの他の応用例としては、血中L-リシン濃度を測定することで高リシン血症を始めとする様々な病気の予兆の検出、LysOXは抗腫瘍性を有するが正常細胞には細胞毒性が比較的低いので悪性腫瘍に対する新規医薬品、LysOXのL-リシン酸化反応で生じるα-ケト-ε-アミノカプロン酸の農薬、医薬品及び化粧品の合成中間体であるピペコリン酸合成への応用などが考えられる。
このようにバイオセンサーに実用的なトリコデルマ・ビリデY244-2由来のLysOXは、従来、小麦フスマを培地とした固体培養物の水抽出液から精製されており(非特許文献4)、その大量製造には特殊な固体培養設備及び抽出設備が必要である。
トリコデルマ・ビリデY244-2の固体培養の水抽出液には、多量の色素と粘度の高い多糖類が含まれている。それらを除去するために、通常の酵素精製に使われているイオン交換樹脂カラム及びゲル濾過カラムの他にも、限外濾過膜処理、アルコール添加による沈殿化工程又は脱色樹脂カラムによる脱色工程が必要となり、精製工程が複雑となり、バイオセンサー用の高純度LysOXを収率良く大量に得ることは非常に困難である。すなわち、糸状菌の固体培養による高純度LysOXの安価大量製造は不可能と言っても良い状況にある。
さらに、糸状菌の固体培養では、コンタミネーションの防止措置が難しく、発酵タンクによる液体培養に比べて、酵素生産の培養管理が難しい。世界的にみても、糸状菌(カビ)の固体培養による酵素製造は、非常に稀な製法になっている。
本発明者らは、最近、トリコデルマ・ビリデY244-2由来のLysOX遺伝子を取得し、放線菌宿主(ストレプトマイセス・リビダンス(Streptomyces lividans) TK24)での発現と酵素生産とに成功している(非特許文献5)。しかしながら、培養期間が18日と長期であり、簡便には酵素を調製することはできない。
J. Biol. Chem. 255, 976-981(1980) Agric. Biol. Chem. 43, 337-343(1979) Agric. Biol. Chem. 44, 387-392(1980) Agric. Biol. Chem. 43, 2531-2535(1979) J. Biochem. 157, 549-559(2015)
本発明は、L-リシンα-オキシダーゼの効率的且つ大量生産が可能となる核酸、該核酸を含むベクター、該核酸が導入された形質転換体、及び該形質転換体を用いたL-リシンα-オキシダーゼの製造方法を提供することを目的とする。さらに、本発明は、L-リシンα-オキシダーゼを利用した新たな抗腫瘍剤を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、トリコデルマ・ビリデY244-2由来のLysOXのプレ配列を含む完全長cDNAを大腸菌発現用にコドンを最適化した後に大腸菌に組み入れて発現させ、得られたLysOX前駆体をタンパク質分解酵素によってプレ配列に相当するペプチドを除去したところ、酵素活性が約600倍に増強されるとともに、熱に対する安定性も飛躍的に上昇し、酵素化学的性質も元の酵素と同等となるという知見を得た。
本発明は、これら知見に基づき、更に検討を重ねて完成されたものであり、次の核酸、ベクター、形質転換体、L-リシンα-オキシダーゼの製造方法、及び抗腫瘍剤を提供するものである。
項1.以下の(a)又は(b)の核酸:
(a) 配列番号1に記載される塩基配列からなる核酸
(b) 配列番号1に記載される塩基配列と80%以上の同一性を有し、且つL-リシンα-オキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸。
項2.項1に記載の核酸を含む発現ベクター。
項3.項1に記載の核酸が導入された形質転換体。
項4.宿主が大腸菌である、項3に記載の形質転換体。
項5.以下の工程を含む、L-リシンα-オキシダーゼの製造方法:
(1) 項3又は4に記載の形質転換体を液体培地で培養し、培養物からL-リシンα-オキシダーゼを回収する工程。
項6.以下の工程を含む、L-リシンα-オキシダーゼの製造方法:
(1) 配列番号2に記載される塩基配列をコドン最適化したコドン最適化核酸が導入された形質転換体を液体培地で培養し、培養物からL-リシンα-オキシダーゼを回収する工程であって、該形質転換体はL-リシンα-オキシダーゼのプレ配列を切断するペプチダーゼを有しない、工程。
項7.更に以下の工程を含む、項5又は6に記載の製造方法:
(2) 工程(1)で得られたL-リシンα-オキシダーゼをペプチダーゼ処理する工程。
項8.以下の(c)又は(d)のタンパク質を含む抗腫瘍剤:
(c) 配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d) 配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1〜50個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つL-リシンα-オキシダーゼ活性を有するタンパク質。
本発明によれば、トリコデルマ・ビリデY244-2由来LysOXを効率良く大量生産することが可能となる。本発明の製造方法で酵素を製造することで、従来はLysOXが高価であったためコスト的に実現できなかったL-リシン比色測定キット、抗腫瘍剤、L-リシンセンサーなどの製品化が可能となることが期待される。
LysOX前駆体を各種ペプチダーゼで処理したサンプルのSDS-PAGEの結果を示す写真である。M.マーカー 1.LysOX前駆体 2.トリプシン処理 3.キモトリプシン処理 4.SGP処理 試験例3のSDS-PAGEの結果を示す写真である。1.マーカー 2.LysOX前駆体原液 3.SGP無添加 4.SGP添加 5.T.virideから精製したLysOX 6.マーカー 試験例4の熱安定性試験の結果を示すグラフである。30℃を100%とした時の各温度での比活性(%)を示している。 試験例5のA431細胞株(上段)及びMDA-MB-231細胞株(下段)に対するLysOX前駆体(左列)及びLysOX成熟体(右列)の細胞毒性評価の結果を示すグラフである。それぞれのグラフは、LysOXを0, 1.0, 2.5, 5.0, 10.0 mU/ml添加した際の細胞生存割合(%)を示している。
以下、本発明について詳細に説明する。
なお、本明細書において「含む(comprise)」とは、「本質的にからなる(essentially consist of)」という意味と、「からなる(consist of)」という意味をも包含する。
本発明において「遺伝子」とは、特に言及しない限り、2本鎖DNA、1本鎖DNA(センス鎖又はアンチセンス鎖)、及びそれらの断片が含まれる。また、本発明において「遺伝子」とは、特に言及しない限り、調節領域、コード領域、エクソン、及びイントロンを区別することなく示すものとする。
また、本発明において、「核酸」、「ヌクレオチド」及び「ポリヌクレオチド」は同義であって、これらはDNA及びRNAの両方を含み、2本鎖であっても1本鎖であってもよい。
本明細書において、「L-リシンα-オキシダーゼ」は特に明示が無い限りタンパク質を意味するものとするが、遺伝子として解釈することが適切な場合は遺伝子を意味するものとする。また、本明細書において、「L-リシンα-オキシダーゼ」は、特に明示が無い限り、プレ配列を有する前駆体、及びプレ配列が削除された状態の成熟体のいずれも包含する意味である。
本発明の核酸は、以下の(a)又は(b)であることを特徴とする。
(a) 配列番号1に記載される塩基配列からなる核酸
(b) 配列番号1に記載される塩基配列と80%以上の同一性を有し、且つL-リシンα-オキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸。
配列番号1に記載される塩基配列は、L-リシンα-オキシダーゼ(L-lysine α-oxidase)をコードする。配列番号1に記載される塩基配列にコードされるL-リシンα-オキシダーゼは、N末端にプレ配列を有する前駆体であり、該プレ配列が切断されることで成熟体となる。配列番号1に記載される塩基配列のオープンリーディングフレームにはアミノ酸617残基がコードされ、その内N末端の77残基がプレ配列と推測される。配列番号1に記載される塩基配列にコードされるアミノ酸配列は、配列番号3に記載されるものである。
L-リシンαオキシダーゼ (EC 1.4.3.14)はL-アミノ酸オキシダーゼの一種であり、L-リシンの酸化的脱アミノ化反応により、α-ケト-ε-アミノカプロン酸、アミノ酸及び過酸化水素を生成する(下記式)。
L-リシン + O2 + H2O→α-ケト-ε-アミノカプロン酸+ NH3 + H2O2
配列番号1に記載される塩基配列がコードするL-リシンα-オキシダーゼは、トリコデルマ・ビリデY244-2株由来のものであり、塩基配列は大腸菌用にコドン最適化されている。
上記(b)における配列番号1に記載される塩基配列との同一性としては、好ましくは85%以上、より好ましくは90%以上、更に好ましくは95%以上、更により好ましくは97%以上、特に好ましくは99%以上である。塩基配列の同一性(%)は、当該分野で慣用のプログラム(例えば、BLAST、FASTA等)を初期設定で用いて決定することができる。
本発明の核酸は、cDNAライブラリーを鋳型としたPCR法、化学合成、生化学的切断/再結合などの常法で作製することができる。また、改変された核酸の作製も常法に従って行うことができる。
本発明の発現ベクターは、上記核酸を含むことを特徴とする。当該発現ベクターとしては、特に制限されず、公知の発現ベクターを広く使用することができる。上記核酸を導入する宿主の種類等を考慮し、適切な発現ベクターを適宜選択すればよい。発現ベクターは、上記核酸以外にも、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリアデニル化シグナル、選択マーカー、複製起点などを含有し得る。発現ベクターは、自立的に複製するベクター、及び宿主細胞に導入された際に宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体と共に複製されるもののいずれも使用することができる。
発現ベクターの構築、及び当該発現ベクターの細胞への導入法は周知であり、例えば、Sambrook and Russell, Molecular Cloning, A Laboratory Manual 3rd edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press (2001)等の記載を参考にして実施することができる。
本発明の形質転換体は、上記核酸が導入されていることを特徴とする。核酸の導入は上記のように当該核酸を含む発現ベクターを利用すること等の公知の方法により行うことができる。宿主細胞への発現ベクターの導入は、コンピテントセル法、プロトプラスト法、エレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法、リポソーム法、マイクロインジェクション法、酢酸リチウム法等の周知の方法により行うことができる。上記核酸を導入する宿主としては、例えば、細菌(例えば、大腸菌(Escherichia coli)、ストレプトマイセス属、ロドコッカス(Rhodococcus)属、ストレプトコッカス(Streptococcus)属、スタフィロコッカス(Staphylococcus)属)、真菌(例えば、酵母(サッカロマイセス(Saccharomyces)属、シゾサッカロマイセス(Schizosaccharomyces)属など)、アスペルギルス(Aspergillus)属)、昆虫細胞(例えば、ドロソフィラ(Drosophila)S2、スポドプテラ(Spodoptera)SF)などが挙げられる。宿主としては、L-リシンα-オキシダーゼのプレ配列を切断するペプチダーゼを有しないものが望ましい。宿主としては、大腸菌が好ましい。
上記核酸以外であっても、L-リシンα-オキシダーゼをコードするトリコデルマ・ビリデY244-2株由来の配列番号2に記載される塩基配列をコドン最適化したコドン最適化核酸を、宿主に導入する核酸として使用することもできる。この場合、宿主としてはL-リシンα-オキシダーゼのプレ配列を切断するペプチダーゼを有しないものが使用される。ここでのコドン最適化とは、元の塩基配列におけるコドンを宿主細胞で使用頻度の高いコドンに変更することをいう。
本発明のL-リシンα-オキシダーゼの製造方法は、以下の工程を含むことを特徴とする。
(1) 上記形質転換体を液体培地で培養し、培養物からL-リシンα-オキシダーゼを回収する工程。
本発明の製造方法に使用する液体培地としては、上記形質転換体が生育できL-リシンα-オキシダーゼを産生できる培地であれば特に制限されず、炭素源、窒素源、無機塩などの栄養源を含有する合成培地又は天然培地を使用することができる。例えば、培地の炭素源としては、グルコース、スクロース、フラクトース、マルトース、グリセリン、デキストリン、デンプン、オリゴ糖、糖蜜、麦芽エキス、有機酸等が挙げられる。また、窒素源としては、各種ペプトン、酵母エキス、コーンスティープリカー、大豆粉、フスマエキス、肉エキス、カゼイン、アミノ酸、尿素等の有機窒素源、硝酸塩、アンモニウム塩等の無機窒素源等が挙げられる。無機塩類としては、ナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、鉄塩、その他の金属塩等が挙げられる。さらに、その他の栄養源としては、ビタミン類、アミノ酸類、核酸類等が挙げられる。
培養は、液体培養であって、一般的な微生物の培養方法等に従って行うことができる。培養は、通気攪拌培養、振盪培養等によって行うことができる。また、培養方式については、回分培養、流加培養及び連続培養の何れの方式によっても行うことができる。培養条件(温度、pH、培養時間等)は、培養する形質転換体の生育特性に応じて適宜設定することができ、培養温度としては、通常10〜40℃、好ましくは30〜37℃であり、pHとしては、通常pH4〜8、好ましくはpH5〜7である。培養時間としては、通常10〜30時間、好ましくは16〜20時間である。
培養により得られた培養物(例えば、菌体、培養上清など)には、L-リシンα-オキシダーゼが蓄積されている。菌体内に蓄積したL-リシンα-オキシダーゼの菌体からの溶出は、常法に従って行うことができる。具体的には、菌体を超音波、フレンチプレス、高圧ホモジナイザー等の機械的破砕処理、シクロヘキサン、トルエン、酢酸エチル等による処理、リゾチームによる溶菌処理などの方法が挙げられる。このようにして得られたL-リシンα-オキシダーゼ溶出液及びL-リシンα-オキシダーゼ含有培養上清は必要に応じて更に精製工程に供することもできる。精製方法としては、例えば、溶媒抽出、クロマトグラフィー(例えば、アフィニティークロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトカラムクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲルろ過クロマトグラフィー等)、膜処理(例えば、メンブレンフィルター、限外濾過、精密濾過、逆浸透等)、活性炭処理、超臨界流体抽出処理、蒸留処理、晶析などを挙げることができ、これらを単独で又は2種以上を任意の順序で適宜組み合わせて行うことができる。
工程(1)で得られたL-リシンα-オキシダーゼは、プレ配列を有する前駆体であることが望ましい。このようにプレ配列を有する前駆体の状態で産生させることで、L-リシンα-オキシダーゼの生産量を増加させることができる。
本発明のL-リシンα-オキシダーゼの製造方法は、更に以下の工程を含み得る。
(2) 工程(1)で得られたL-リシンα-オキシダーゼをペプチダーゼ処理する工程。
工程(1)で得られたL-リシンα-オキシダーゼは、プレ配列を有するものである場合は、ペプチダーゼ処理を行うことにより、天然の酵素と同様の活性、基質特異性及び熱安定性を有するL-リシンα-オキシダーゼ成熟体を得ることができる。
ペプチダーゼとしては、L-リシンα-オキシダーゼのプレ配列を切断できるものであれば特に制限なく使用できる。ペプチダーゼとしては、エンドペプチダーゼ及びエキソペプチダーゼが挙げられ、前者としてはアミノペプチダーゼ、ジペプチダーゼ、ジペプチジルペプチダーゼ、トリペプチジルペプチダーゼ及びカルボキシペプチダーゼが挙げられ、後者としてはセリンプロテアーゼ、システインプロテアーゼ、アスパラギン酸プロテアーゼ及びメタロプロテアーゼが挙げられる。これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
具体的なペプチダーゼとしては、ペプシン、トリプシン、キモトリプシン、ズブチリシン、サーモライシン、パパイン、キモパパイン、ブロメライン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
ペプチダーゼの使用量は、処理するL-リシンα-オキシダーゼの量、反応温度及び反応時間に応じて、適切な使用量を適宜設定することができる。ペプチダーゼ処理の時間は、L-リシンα-オキシダーゼのプレ配列の切断が完了するまでの時間であれば特に制限されず、例えば、1〜48時間の範囲から選択される。
ペプチダーゼ処理のpHは、使用酵素の至適pHに対応して適宜設定することができ、例えば、pH2〜12、好ましくはpH6〜10、より好ましくはpH7〜9の範囲である。pHは、酸、アルカリ剤、又は緩衝剤の添加により調整することができる。ペプチダーゼ処理の温度は、使用酵素の至適温度に対応して適宜設定することができ、例えば、30〜70℃の範囲から選択される。
ペプチダーゼ処理の停止は、ペプチダーゼを失活又は除去することにより行う。失活操作は加熱処理、フェニルメチルスルフォニルフルオライド(PMSF)、エチレンジアミン4酢酸(EDTA)等の添加などにより行うことができる。
バイオセンサーにおいて、L-リシンα-オキシダーゼを使用する場合の固定化方法としては、物理吸着法、イオン結合法、包括法、共有結合法などタンパク質の固定化方法として公知の方法を利用できる。
バイオセンサーでは、L-リシンの検出のために、L-リシンα-オキシダーゼ固定化体の近傍に該酵素の触媒する反応により減少する酸素、増加する過酸化水素及びアンモニウムイオンのいずれか1つを検知する電気化学的検出手段が備えられていることが望ましい。中でも、生成する過酸化水素を検知することが望ましく、過酸化水素の高感度計測には、アンペロメトリー等の電気化学的な手法を使用することができる。
固定化された酵素に試料を接触させて反応させる方式としては、バッチ方式、フロー方式等が挙げられる。
本発明の抗腫瘍剤は、以下の(c)又は(d)のタンパク質を含むことを特徴とする。
(c) 配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質
(d) 配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1〜50個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つL-リシンα-オキシダーゼ活性を有するタンパク質。
配列番号3に記載されるアミノ酸配列は、トリコデルマ・ビリデY244-2株由来のL-リシンα-オキシダーゼのプレ配列を有する前駆体のアミノ酸配列である。このようなL-リシンα-オキシダーゼのプレ配列を有する前駆体が抗腫瘍活性を有することは今まで知られていなかった。
上記(d)のペプチドにおいて、欠失、置換、挿入及び/又は付加されるアミノ酸の個数は、好ましくは1〜30個、より好ましくは1〜15個、更に好ましくは1〜10個、特に好ましくは1〜5個である。特定のアミノ酸配列において、1個若しくは2個以上のアミノ酸を欠失、置換、挿入及び/又は付加させる技術は公知である。
上記の(c)又は(d)のタンパク質には、その塩や誘導体も含まれる。
本発明における「抗腫瘍剤」は、抗癌剤、抗腫瘍薬剤、抗腫瘍医薬組成物等と表現される場合もある。
抗腫瘍剤として調製する場合、上記のタンパク質をそのまま使用するか、又は医薬品において許容される無毒性の担体、希釈剤若しくは賦形剤とともに、タブレット(素錠、糖衣錠、発泡錠、フィルムコート錠、チュアブル錠、トローチ剤などを含む)、カプセル剤、丸剤、粉末剤(散剤)、細粒剤、顆粒剤、液剤、懸濁液、乳濁液、シロップ、ペースト、注射剤(使用時に、蒸留水又はアミノ酸輸液や電解質輸液等の輸液に配合して液剤として調製する場合を含む)などの形態に調製して、医薬用の製剤にすることが可能である。
本発明の抗腫瘍剤における上記のタンパク質の含量は、抗腫瘍剤全量中0.0001〜100質量%、好ましくは0.001〜99.9質量%、より好ましくは0.01〜99質量%の範囲から適宜選択することが可能である。
本発明の抗腫瘍剤の投与方法は特に限定されず、例えば、動脈内投与、静脈内投与、口腔内投与、直腸投与、経腸投与、経皮投与、経口投与などにより行うことができる。
本発明の抗腫瘍剤は、ヒトを含む哺乳動物に対して投与される。
本発明の抗腫瘍剤の投与量は、患者の体重、年齢、性別、症状などの種々の条件に応じて適宜決定することができる。
本発明の抗腫瘍剤により治療できる癌の種類は、特に制限されず、例えば、胃癌、直腸癌、結腸癌、小腸癌、食道癌、肝臓癌、膵臓癌、肺癌、咽頭癌、腎癌、胆のう及び胆管癌、頭頸部癌、前立腺癌、膀胱癌、乳癌、子宮癌、卵巣癌、皮膚癌、悪性黒色腫、脳腫瘍、白血病、悪性リンパ腫等が挙げられる。
本発明の製造方法により、トリコデルマ・ビリデY244-2由来LysOXを効率良く大量生産することができる。さらに、本発明の製造方法により生産されたLysOX前駆体をペプチダーゼ処理することで得られるLysOXは、元の酵素と同等の酵素化学的性質(活性、基質特異性及び熱安定性)を有している。
LysOXは、L-リシンを検出するためのバイオセンサー、農薬、医薬品及び化粧品の合成中間体であるピペコリン酸の合成、悪性腫瘍に対する新規医薬品の有効成分などに産業上応用される可能性がある。以前はLysOXが高価であったため実現できなかったが、本発明の製造方法によりLysOXのコストが低下することでL-リシン比色測定キット、抗腫瘍剤、L-リシンセンサーなどの製品化が可能となることが期待される。
以下、本発明を更に詳しく説明するため実施例を挙げる。しかし、本発明はこれら実施例等になんら限定されるものではない。
試験例1:大腸菌を用いた発現系構築
[使用菌株及びベクター]
プラスミド構築などの形質転換体の宿主菌には大腸菌Escherichia coli TOP10及びEscherichia coli BL21(DE3)を使用した。発現用ベクターにはpCold IVを用いた。
[使用培地]
組換え大腸菌の培養には、以下の培地を使用した。
・2×YT培地[1.6%ポリペプトン、1%酵母エキス、0.5% NaCl (1.5%寒天粉末)]
・SOC培地[2%ペプトン、0.5%酵母エキス、0.05%塩化ナトリウム/100 mlに対し、オートクレーブ済み1 Mグルコースを2 ml添加し、使用直前に1 M塩化マグネシウム1 ml、1 M硫酸マグネシウム1 mlを加えた]
組換えプラスミドを保有するE. coliを培養する際は、50 mg/mlアンピシリン(Amp)を終濃度50μg/mlとなるように添加した。E. coli BL21を培養するときは50 mg/ml カナマイシン(Kan)を終濃度50μg/mlとなるように添加した。
[実験操作]
・核酸の定量法
スペクトラムの測定にはUV-1200を使用し、2本鎖DNAの濃度はOD260=1.0のとき50μg/mlとして求めた。RNAの濃度はOD260=1.0のとき40μg/mlとして求めた。また、純度はOD260/OD280=1.7から2.0が好ましいとした。
(1) PCR反応
LysOXの配列の増幅には大腸菌用にコドンの最適化を行った配列においてはKOD-Plus-(東洋紡社)を使用した。
(2) プラスミドの構築
プラスミド構築はGeneArt(登録商標) Seamless Cloning and Assembly (サーモフィッシャー サイエンティフィック社)を使用し、相同組換えによるインサート導入を行った。
(3) 大腸菌の形質転換
コンピテントセルを氷上で解凍し、コンピテントセルの液量の10分の1容量までのライゲーション反応液を添加し、軽く懸濁した後、氷上で30分静置した。これに、SOC培地を500μl添加し、37℃で1時間インキュベートした後、遠心(14,000 rpm,1分間)した。100μl程度残るように上清を除去し、菌体をピペッティングにより懸濁をし、LBプレート(抗生物質含有)にスプレッドして、37℃で一晩培養した。
(4) コロニーダイレクトPCR
組換え体のインサートの確認にはコロニーからのプラスミドDNA精製が不要で、形質転換後、生えてきたコロニーから直接PCRを行うコロニーダイレクトPCR法を用いた。
(5) プラスミド抽出
プラスミド抽出はバイオラッド社のQuantum Prep Plasmid Mini Prep Kitを使用した。培養液を集菌後、上清を廃棄した。200μlのResuspension Solutionに再懸濁し、250μlのLysis Solutionを加えてゆるやかに懸濁後、250μlのNeutralization Solutionを添加し、ゆるやかに懸濁後、12,000×gで5分間遠心を行った。上清をスピンフィルターへと回収し、200μlのQuantum Matrixを加えて懸濁し、12,000×gで30秒間遠心を行い、流出液を廃棄した。洗浄として、500μlのWater Bufferを加え、12,000×gで30秒間遠心し流出液を廃棄、これを2回繰り返した。スピンフィルターを1.5 mlチューブへと移し、100μlの滅菌水を添加し、12,000×gで1分遠心後、溶出液を精製プラスミド溶液とした。
(6) タンパク質定量法
タンパク質定量はブラッドフォードの方法に基づくバイオラッド社のプロテインアッセイキットを使用した。1.6 mlの酵素溶液に対して0.4 mlのアッセイ試薬を添加し、10〜15分室温で反応後、595 nmの吸収をUV 1200 (島津製作所社)で測定した。BSAを用いて作製した検量線よりタンパク質濃度を算出した。
(7) LysOX活性測定(MBTH法(α-ケト酸の定量))
酵素反応は70 mMカリウムリン酸バッファー(pH7.4)中、50 mM L-リシン及び300 U/mlカタラーゼの存在下で行った。酵素溶液(0.01〜0.3 U/ml) 0.1 ml,0.1 Mカリウムリン酸バッファー(pH7.4) 0.7 ml及び300 U/mlカタラーゼ0.1 mlを混合し30℃で5分間プレインキュベートした。酵素反応開始は0.5 M L-リシンを0.1 ml添加することで行い、30℃で10分間反応を行った。酵素反応停止は、25%TCAを0.1 ml添加することで行い、反応停止後に1 M酢酸バッファー(pH5.0)を2 ml及び0.1%MBTHを0.8 ml添加し、50℃で30分間インキュベートした。反応液を冷却後316 nmの吸光度を測定した。
1 Uは、カタラーゼの存在下、30℃で1分間に1μmolのα-ケトアミノカプロン酸を生成する酵素量とした。
(8) LysOXの濃縮(硫酸アンモニウム濃縮)
本培養を終えた培地を遠心分離し、菌体を回収し、3倍量の破砕緩衝液(pH7.4)に懸濁し、破砕機によって菌体破砕を行った。これを20-65%飽和になるように硫酸アンモニウムを添加し、氷中で30分間撹拌後、沈殿を回収した。沈殿をできるだけ少量の20 mMリン酸カリウム緩衝液(pH 7.4)に懸濁し、透析した。
[結果]
(1) コドンの最適化
LysOXの塩基配列は大腸菌では見られないレアコドンを多く含むため、発現量が抑えられていることが推測された。このため、LysOXのコドンの最適化を図った。大腸菌用にコドンの最適化を行ったDNA配列を配列番号1に示す。また、前駆体配列と成熟体配列との2種類を調製した。
(2) 発現用プラスミドの作製
pCold IVプラスミドベクターのNdeI-EcoRIサイトへの挿入を行うため、前もってTAクローニングされたpET24a-LysOX(full3)を鋳型にしてインサート[LysOX(full3),(mature3)]の増幅を行った。使用したプライマーを以下の表1に示す。
pCold IVプラスミドベクターの制限酵素処理(NdeI、EcoRI)を行い、DNA cleanup kitを使用し、精製した。これをGene-Art(登録商標) Seamless Cloning and Assembly (サーモフィッシャー サイエンティフィック社)の相同組換え法によりインサート導入を行い、反応液をE. coli BL21(DE3)に導入し、形質転換させた。
生えてきたコロニーを培養し、プラスミド抽出後、制限酵素処理を行い、アガロースゲル電気泳動法及びDNAシーケンスでインサートが導入されているかを確認した。
LysOX (full3):大腸菌用にコドンを最適化したプレ配列を含む前駆体の塩基配列
LysOX (mature3):大腸菌用にコドンを最適化したプレ配列が除かれた成熟体の塩基配列
(3) LysOXの発現と活性の確認
pCold IV-LysOX(full3,mature3)を用いてE. coli BL21(DE3)を形質転換させた物を5 mlの2YT(Amp)培地で37℃,16時間,230 rpmで前培養した後、5 mlの2×YT培地(Amp)で本培養を2時間,180 rpmで行った。15℃,30分間静置(コールドショック)し、終濃度1 mMの イソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を添加し、15℃で24時間,180 rpmで誘導を行った。培養終了後、菌体を集菌し、超音波菌体破砕を行い、粗酵素溶液とし遠心分離により可溶性画分に分けた。可溶性画分について活性測定を行った。活性測定の結果を表2に示す。
表2の結果から、プレ配列を含むLysOX前駆体の方が高い活性を有しており、大腸菌においてLysOX成熟体と比べて発現量が高いことが分かった。
試験例2:LysOX前駆体からLysOX成熟体の調製
[使用菌株及び使用培地]
・使用菌株:E. coli BL21/pCold IV-LysOX(full3)
・使用培地:2×YT培地(Amp final 50μg/ml)[1.6%ポリペプトン、1%酵母エキス、0.5% NaCl]
[使用試薬]
・ペプチダーゼである、ストレプトマイセス・グリセウス(Streptomyces griseus) 由来ペプチダーゼ(SGP)、トリプシン及びキモトリプシンはシグマ-アルドリッチ社の製品を使用した。
・DEAE-トヨパール 650 M、Butyl-トヨパール 650 Mの各担体は東洋紡社から購入した。
[操作]
前培養:2×YT培地(Amp, final 50 μg/mL) 5 mL, 37℃, 18時間, 230 rpm
本培養:2×YT培地(Amp, final 50 μg/mL) 120 mL + 前培養液 1.2 mL, 220 rpm, 30℃, O.D.600=0.4以上になるまで培養。
コールドショック:振盪培養停止後、30分間,15℃で冷却。その後、IPTG(終濃度1 mM)を添加。
低温誘導:15℃, 48時間, 180 rpm
集菌:遠心分離(4℃, 6000 rpm, 25分間)
洗浄:集菌菌体を、20 mM KPB (pH 7.4)で懸濁し、その後遠心(7000 rpm, 20分間)。
菌体破砕:洗浄後、洗浄バッファーを捨て、新たに破砕バッファーを添加して懸濁し、ソニケーターを用いて懸濁液を破砕(40分間)。破砕後、7000 rpm, 30分, 4℃で遠心し、上清を回収。
硫安分画:菌体破砕液上清に硫安を65%飽和になるように添加。30分間静置後、7800 rpm, 20分, 4℃で遠心。
透析:沈殿を20 mM KPB (pH 7.4)で溶かし、外液に20%飽和硫安・20 mM KPB (pH 7.4)を用いて透析。
精製:透析後のサンプルをButyl-トヨパール 650 M、DEAE-トヨパール 650 M及びゲル濾過セファデックス S300を用いて精製
[酵素分解]
精製酵素を処理する各種ペプチダアーゼ(1.トリプシン、2.キモトリプシン、3.SGP)の1 mg/ml溶液を作製した。精製酵素(LysOX前駆体)をタンパク質濃度が2.0 mg/mlになるよう希釈し、希釈した精製酵素に1/50量の各種ペプチダアーゼを添加した。また、コントロールとしてペプチダーゼを添加しない物も作製した。30℃, 4時間インキュベートした後、終濃度1 mMになるようにEDTA及びPMSF(ジメチルスルホキシドで溶解させた物)を添加し、酵素反応を停止させた。
[タンパク質定量法、LysOX活性測定]
試験例1と同様に行った。
[結果]
酵素分解を行ったサンプルについて、タンパク質濃度測定、LysOX活性測定(MBTH法)、及びSDS-PAGEを行った。その結果を表3及び図1に示す。
表3の結果から、精製されたLysOX前駆体を各種ペプチダーゼで処理することでその比活性は大幅に上昇した。未処理の時と比べてその比活性は最大で60〜70倍近く上昇することが確認された。また、図1のSDS-PAGEによるバンド位置の確認から、LysOX前駆体とはバンドの位置が変化し、約56 kDaのところにバンドが現れることが分かった。LysOX成熟体の分子量は56 kDaであり、これに合致していた。
また、ペプチダーゼ処理後の精製酵素サンプルとペプチダーゼ未処理の精製酵素サンプルのN末端アミノ酸配列を解析すると次のようになった。
1.ペプチダーゼ未処理 MDNVD
2.トリプシン処理 AE
3.キモトリプシン処理 AE
4.SGP処理 AEE
ペプチダーゼ処理サンプルの方からはLysOX前駆体からプレ配列部分を除いたLysOX成熟体のN末端アミノ酸配列と同じアミノ酸残基が検出されており、ペプチダーゼ処理によってLysOX前駆体のプレ配列が除去されることが示唆される結果となった。一方で、ペプチダーゼ未処理サンプルのN末端アミノ酸配列は、LysOX前駆体のプレ配列のN末端アミノ酸配列と同じ配列が検出されており、ペプチダーゼ未処理の酵素はLysOX成熟体にプレ配列がついたままの物が多いことがわかった。
試験例3:L-リシンに対する活性及び基質特異性の検討
次のサンプル(1)〜(3)を以下の試験で使用した。
(1) LysOX前駆体原液(上記で調製及び精製した物)
(2) SGP処理LysOX(30℃,3時間)
(3) T.virideフスマ培養LysOX
<サンプル(2)及び(3)の調製>
(2) SGP処理したLysOX成熟体
LysOX前駆体原液を1.5倍希釈し、以下の処理を行った。処理液は更に2倍希釈されるので、最終的に前駆体タンパク質濃度は3 mg/ml程度に調整したことになった。
100μL LysOX前駆体原液の1.5倍希釈液
100μL 0.02M KPB, pH7.4
10μL 10 mg/mL SGP
上記の混合液を30℃、3時間インキュベーションした後、7倍希釈し、アミノ酸23種類について活性測定した(サンプルは原液の22.05倍希釈)。
(3) 元菌から培養・精製したLysOX
トリコデルマ・ビリデY244-2株をフスマ培養した培養物から精製したLysOX 100 U/mlを4倍希釈し、アミノ酸23種類について活性を測定した。
<方法>
1.電極法による活性測定
ハンザテック社製酸素電極(酸素電極がセルの底に密着)のジャケットに恒温水を循環させて電極チャンバー全体を30℃に保ち、電極セルに1 mlの10 mMアミノ酸基質溶液(0.1 M KPB, pH7.4)を入れて密閉した。酸素濃度を示す電極からの信号が安定した後、チャンバーセルの蓋の細い穴から10μlのLysOX被験酸素液をインジェクションして、密閉セル内の10 mMアミノ酸基質溶液(0.1 M KPB, pH7.4)中に含まれている酸素(30℃で0.23μmol/ml)の減少速度を測定した。
2.SDS-PAGE
各サンプルとDTT+Ez溶液(アトー社)を1:1の割合で混合し(計20μL)、 100℃、5分間加熱、冷却・遠心後、全量(20μL)をアプライした。希釈バッファーは0.02 M KPB, pH7.4を使用した。
<結果>
サンプル(1)〜(3)の活性測定の結果を以下の表に示す。
LysOX前駆体で、L-Lysへの活性は0.45 U/mLであるが、これを30℃、3時間SGP処理すると276.0 U/mLとなり、613倍の活性上昇を示した。また、前駆体をSGP処理したサンプルは、T.virideから精製したLysOXとほぼ同様の基質特異性を示した。
SDS-PAGEの結果を図2に示す。図2から、LysOX前駆体をSGP処理すると、T.virideから精製したLysOXと同等のサブユニットとなっていた。
試験例4:熱安定性試験
次のサンプル(i)〜(ii)を以下の試験で使用した。
(i) LysOX前駆体原液
(ii) SGP添加(30℃, 3時間, SGP処理)
<方法>
SGP添加
700μL LysOX前駆体原液の10倍希釈液
700μL 0.02M KPB, pH7.4
70μL 1 mg/mL SGP
上記の混合液を30℃、3時間インキュベーションし、続いて40〜90℃で100μLずつ30分間インキュベーション後に、急冷した。各サンプル10μLを10 mM L-Lys溶液(0.1 M KPB, pH7.4) 1 mLにインジェクションし、活性測定を行った(サンプルは原液の21倍希釈)。
LysOX前駆体原液は、30、50、60℃で30分間インキュベーションした後、20μLを10 mM L-Lys溶液(0.1 M KPB, pH7.4) 1 mLにインジェクションし、活性測定を行った。
活性の測定は試験例3と同様に行った。
<結果>
各サンプルの活性測定の結果を表5及び図3に示す。
SGP処理したLysOXの熱安定性を検討した結果、30分間の処理で30℃から60℃まで活性はほぼ維持され、65℃で90.7%、70℃で37.4%となり、75℃で失活した。したがって、SGP処理したLysOXは、60℃,30分間の処理で安定と言える。
LysOX前駆体では、50℃で34.4%、60℃でゼロとなり、加熱に対して不安定であった。
試験例5:LysOXのがん細胞に対する細胞毒性の検討
<方法>
・MTSアッセイ法による細胞生存率の測定
大腸菌形質転換体由来LysOX前駆体及びペプチダーゼ処理して作製したLysOX成熟体の抗腫瘍性を調べるため、ヒト腫瘍細胞株としてA431(ヒト扁平上皮がん細胞株)及びMDA-MB-231(ヒト乳線癌細胞株)の2種類を用い、ウォータージャケット型CO2/マルチガスインキュベータ(アステック社)で培養した。
1×105個/mlの濃度のA431及びMDA-MB-231細胞株を96穴プレートの各ウェルに100μlずつ播種し、37℃で24時間、CO2/マルチガスインキュベータで5%CO2・20%O2条件下で培養した。1, 2.5, 5, 10 mU/mlの濃度になるようにLysOX前駆体或いはLysOX成熟体を各細胞株に添加し、3日間培養した。培養3日後に、MTSアッセイを行った。各ウェルに20μlのMTSアッセイ試薬(CellTiter 96 AQueous One Solution Cell Proliferation Assay,プロメガ社)を添加し、37℃, 1時間インキュベートした後に490 nmの吸光度を測定した。細胞生存率はコントロール(無添加)に対する吸光度の割合として算した。各細胞株に対するアッセイは4連で行った。
<結果>
がん細胞A431細胞株及びMDA-MB-231細胞株に対するLysOX前駆体及びLysOX成熟体の細胞毒性を調べた結果を図4に示す。LysOX前駆体及びLysOX成熟体ともに10.0 mU/mlの濃度で添加した際に、両がん細胞に対して顕著な細胞毒性を示した。

Claims (8)

  1. 以下の(a)又は(b)の核酸:
    (a) 配列番号1に記載される塩基配列からなる核酸
    (b) 配列番号1に記載される塩基配列と80%以上の同一性を有し、且つL-リシンα-オキシダーゼ活性を有するタンパク質をコードする核酸。
  2. 請求項1に記載の核酸を含む発現ベクター。
  3. 請求項1に記載の核酸が導入された形質転換体。
  4. 宿主が大腸菌である、請求項3に記載の形質転換体。
  5. 以下の工程を含む、L-リシンα-オキシダーゼの製造方法:
    (1) 請求項3又は4に記載の形質転換体を液体培地で培養し、培養物からL-リシンα-オキシダーゼを回収する工程。
  6. 以下の工程を含む、L-リシンα-オキシダーゼの製造方法:
    (1) 配列番号2に記載される塩基配列をコドン最適化したコドン最適化核酸が導入された形質転換体を液体培地で培養し、培養物からL-リシンα-オキシダーゼを回収する工程であって、該形質転換体はL-リシンα-オキシダーゼのプレ配列を切断するペプチダーゼを有しない、工程。
  7. 更に以下の工程を含む、請求項5又は6に記載の製造方法:
    (2) 工程(1)で得られたL-リシンα-オキシダーゼをペプチダーゼ処理する工程。
  8. 以下の(c)又は(d)のタンパク質を含む抗腫瘍剤:
    (c) 配列番号3に記載されるアミノ酸配列からなるタンパク質
    (d) 配列番号3に記載されるアミノ酸配列において、1〜50個のアミノ酸が欠失、置換、挿入及び/又は付加されたアミノ酸配列からなり、且つL-リシンα-オキシダーゼ活性を有するタンパク質。
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