JP2018085441A - ドープされた繊維状半導体材料と充填材とを有する複合体 - Google Patents

ドープされた繊維状半導体材料と充填材とを有する複合体 Download PDF

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利信 小笠原
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泰幸 河津
仁人 井上
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Abstract

【課題】長時間の加熱環境下においても所期の導電特性を維持することが可能な、ドープされた繊維状半導体材料を含む複合体を提供すること。【解決手段】少なくとも表面を有し、表面から深さ方向に配列する複数の繊維状半導体材料(A)1と、繊維状半導体材料(A)1の外周を被覆するバリア層(B)2と、バリア層(B)2に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)1の間に形成される隙間を埋める充填材(C)3とを有する複合体であって、繊維状半導体材料(A)1は、ドープされた半導体材料から構成され、平均断面積が7.0×10−5μm2以上8.0×10−1μm2以下であり、長さが100μm以上であり、そしてバリア層(B)2中のドーパント濃度が繊維状半導体材料(A)1中のドーパント濃度の5倍以上1,000倍以下であることを特徴とする、前記複合体。【選択図】図1

Description

本発明は、ドープされた複数の繊維状半導体材料と充填材とを有する複合体に関する。
電子デバイスに利用される半導体の微細化が発展するに伴い、より安価に微細構造を作製する技術が開発されている。微細構造を作製するための従来法としては、半導体基板上に形成されたフォトレジストをフォトリソグラフィ―により露光・現像する工程を経る手法が代表的である。フォトリソグラフィ―によって基板上にパターニングされたフォトレジストを形成し、該パターニングされたフォトレジストをマスクとして、基板をエッチングすることにより、半導体基板に微細構造を形成することができる。
マスクをより安価に作製する方法としては、例えば、干渉露光法、電子線描画法等により作製したパターンを有する金型を用いて半導体基板上に形成したポリマーパターンを利用する方法が知られている。このポリマ―パターンをマスクとして用い、半導体基板をドライエッチング法、陽極酸化法等の適宜に方法によって処理することにより、該基板上に凹凸パターンを形成することができる。
マスクを更に安価に作製する別の方法として、例えば、自己組織化膜、LB膜等を用いて、半導体基板上に形成した、ナノ周期構造をもつ構造体(自己組織化膜)を利用する方法が知られている。この自己組織化膜をマスクとして用い、半導体基板をドライエッチング法、陽極酸化法等の適宜の方法によって処理することにより、該基板上に凹凸パターンを形成することができる。
これらの手法によって基板上に安価に形成された凹凸パターン(ナノ構造体)は、多くの応用が期待できる。特に、高アスペクト比を持つナノ構造体を有する材料は、光反射防止機能、回折による光取り出し向上効果等が期待でき、例えば太陽電池の高効率化のために有効な手段となる。
特許文献1には、高アスペクト比でナノ化された構造を有する半導体基板を、熱電素子として応用できることが開示されている。これは、繊維状半導体材料の熱伝導度が、バルクの基板材料の伝導度よりも、はるかに低いとの原理を利用したものである。
特表2014−505998号公報 特表2014−510396号公報 国際公開第2013/187349号
上記のようなナノ構造の繊維状半導体を用いたデバイスの開発において、デバイスの導電性を高めるために、半導体材料をドープして用いたいとの要請がある。
一般に、半導体として使用される元素によって構成される、純粋な半導体結晶(真性半導体)は電気伝導しない。常温域における、熱励起によるキャリアの濃度が低いためである。この真性半導体に不純物(ドーパント)を少量添加することによって、導電性を付与することができる。
従来の半導体材料においては、イオン注入等の適宜の方法によってドーパント元素を半導体結晶中に添加する際に、注入時に破壊された結晶構造を回復する目的で、熱処理を行う手法が知られている。
しかしながら本発明者らの検討によると、繊維状半導体材料のドーピングにおいて、上記のような熱処理を伴う手法を用いると、半導体内部のドーパントが外部に拡散・漏出し、初期の導電特性が失われる現象が起こるという問題があることが分かった。
本発明は、かかる点を鑑みてなされたものである。従って本発明の目的は、長時間の加熱環境下においても所期の導電特性を維持することが可能な、ドープされた繊維状半導体材料を含む複合体を提供することである。
本発明者らは、繊維状半導体材料と充填材とを有する複合体における、複数の繊維状半導体材料それぞれの外周部に、ドーパント元素の拡散を抑制するためのバリア層を設け、該バリア層中のドーパント濃度を特定の範囲に制御することにより、加熱された場合のドーパント元素の拡散・漏出を抑制できることを見出し、この知見に基づいて本発明に到達した。
即ち、本発明は以下のとおりである。
[1] 少なくとも表面を有し、
前記表面から深さ方向に配列する複数の繊維状半導体材料(A)と、
前記繊維状半導体材料(A)の外周を被覆するバリア層(B)と、
前記バリア層(B)に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)の間に形成される隙間を埋める充填材(C)とを有する複合体であって、
前記繊維状半導体材料(A)は、ドープされた半導体材料から構成され、平均断面積が7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下であり、長さが100μm以上であり、そして
前記バリア層(B)中のドーパント濃度が前記繊維状半導体材料(A)中のドーパント濃度の5倍以上1,000倍以下であることを特徴とする、前記複合体。
[2] 前記バリア層(B)が、前記繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物を含有する、[1]に記載の複合体。
[3] 前記バリア層(B)の厚さが5nm以上50nm以下である、[1]又は[2]に記載の複合体。
[4] 基体の表面から深さ方向に配列し、平均断面積が7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下であり、長さが100μm以上である、複数の繊維状半導体材料(A)を形成する、繊維状半導体材料形成工程、
前記複数の繊維状半導体材料(A)にドープを行う、ドープ工程、
前記複数の繊維状半導体材料(A)の外周に、これを被覆するバリア層(B)を形成する、バリア層形成工程、及び
前記バリア層(B)に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)の間に形成される隙間を埋める充填材(C)を形成する、充填材形成工程
を含み、
前記ドープ工程と前記バリア層形成工程とを、この順に又は同時に行う、[1]に記載の複合体を製造するための方法。
[5] 前記ドープ工程及び前記バリア層形成工程が、以下のステップ:
拡散源を高温下で酸素及び希釈ガスとともに繊維状半導体材料(A)と接触させ、繊維状半導体材料(A)外周表面上にドーパント元素の酸化物を堆積させるステップ、及び
外周表面にドーパント元素の酸化物が堆積した繊維状半導体材料(A)を酸素又は酸素と希釈ガスとの混合ガス中で加熱して、繊維状半導体材料(A)の外周表面を酸化するとともに、堆積酸化物中のドーパント元素を繊維状半導体材料(A)に熱拡散させるステップ
を含む方法によって同時に行われる、[4]に記載の方法。
本発明によれば、ドーパントをドープされた繊維状半導体材料本来の機能を保持し、なおかつ長時間使用が可能な繊維状半導体材料を含む複合体が提供される。
図1は、本発明の複合体における各成分の分布状態の一例を示す概略断面図である。 図2は、実施例におけるゾルゲル反応液の塗布方法を説明するための概略図である。
以下、必要に応じて図面を参照しつつ、本発明を実施するための形態(以下、単に「本実施形態」という。)について詳細に説明する。以下に記載された実施形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明を以下の内容に限定する趣旨ではない。本発明は、その要旨の範囲内で適宜に変形して実施できる。
<<複合体>>
本実施形態によれば、繊維状半導体材料(A)は、平均断面積が7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下であり、且つ長さが100μm以上であり、その外周表面に、ドーパント濃度が繊維状半導体材料(A)中のドーパント濃度の5倍以上1,000倍以下であるバリア層を有する。
<繊維状半導体材料(A)>
本実施形態の複合体における複数の繊維状半導体材料(A)を構成する材料については、例えば、シリコン、ゲルマニウム、ガリウムナイトライド等の半導体材料を用いることができる。この半導体材料は、導電性を付与する目的で、不純物(ドーパント)を含んでいる。
ドーパント元素としては、例えば、B、P、As、Sb等を挙げることができる。
繊維状半導体材料(A)中のドーパント濃度は、適切な電気伝導性を付与する観点から、1.0×1017atom/cm以上6.0×1021atom/cm以下とすることが好ましく、1.0×1019atom/cm以上1.0×1021atom/cm以下とすることがより好ましく、更に、5.0×1019atom/cm以上5.0×1020atom/cm以下とすることが好ましい。
本実施形態に係る繊維状半導体材料(A)の平均断面積は、7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下である。
繊維状半導体材料(A)の平均断面積をこの範囲とすることにより、本実施形態の複合体を、例えば、太陽電池材料として用いる場合に、エネルギー的な寄与率の高い、近赤外及び可視光領域に効果を発揮する光電変換材料を得ることができる。
繊維状半導体材料(A)の平均断面積を上記の範囲とすることにより、本実施形態の複合体を、例えば、熱電材料等に用いる場合に、フォノン散乱による熱伝導度を効果的に抑制することができ、好ましい。この場合における繊維状半導体材料(A)の平均断面積は、4.0×10−1μm以下とすることが好ましく、更に好ましくは2.0×10−1μm以下である。これらの平均断面積は、円換算径として、概ね10nm以上1,000nm以下、又は10nm以上500nm以下に相当する。
繊維状半導体材料(A)の断面形状は、例えば、円形、楕円形、多角形(例えば、3角形、4角形、6角形、8角形、12角形等)、星型多角形(例えば、五芒星形、六芒星形等)、扇形、ルーローの多角形、不定形、及びこれらの組み合わせ等の、任意の形状であってよい。最も好ましくは円形である。
本実施形態に係る繊維状半導体材料(A)の長さは、100μm以上である。長さ100μm以上の繊維状半導体材料(A)の複数を配列させて用いることにより、良好な熱電特性を得ることができる。しかしながら、繊維状半導体材料(A)の長さがあまり長くなりすぎると、たとえその間隙を後述充填材(C)で充填しても、自立させることが難しくなる。そのため、繊維状半導体材料(A)の長さは100μm以上10,000μm以下とすることが好ましく、より好ましくは100μm以上5,000μm以下、更に好ましくは150μm以上1,000μm以下の範囲である。
本実施形態の複合体は、上記のような繊維状半導体材料(A)を複数有し、これら複数の繊維状半導体材料(A)は、複合体の表面から深さ方向に配列する。複数の繊維状半導体材料(A)は、その外周表面を後述のバリア層(B)に被覆された状態で、好ましくは隣接する繊維状半導体材料との間に有意の空隙を有し、該空隙は充填材(C)によって充填されている。複数の繊維状半導体材料(A)が配列する方向は、複合体の電気抵抗を下げ、好適な熱電特性を示すとの観点から、本実施形態の複合体の表面に対して略垂直であることが好ましい。
本実施形態の複合体において、繊維状半導体材料(A)の平均断面積及び長さに加え、該繊維状半導体材料(A)の断面積の合計が複合体の断面積に占める占有率を適切な範囲に設計することが、複合体の機械強度を発現する上で重要となる。
図1に、本実施形態の複合体の一例を、該複合体の表面に平行な方向で切断した場合の段面図を示した。
図1の複合体は、外周表面をバリア層(B)2に被覆された断面形状が円形の繊維状半導体材料(A)1の複数が、間隙を空けて紙面に垂直な方向に配列し、該バリア層(B)2に被覆された繊維状半導体材料(A)1の間隙には充填材(C)3が充填されている。ここで、上記断面における繊維状半導体材料(A)1の面積の合計をSAとし、同じ断面におけるバリア層(B)2及び充填材(C)3の面積の合計をSBとするとき、下記数式(1):
で算出される繊維状半導体材料(A)1の占有率ORは、隣接する繊維状半導体材料(A)が有するバリア層(B)同士が充填材(C)を介して固着(バンチング)し、これが原因で起こるクラック等を回避するために、必要最低限の量の充填材(C)を介在させるためのスペースを確保する観点から、70%以下であることが望ましい。このORの下限は15%である。即ち、好ましい占有率ORは15%以上70%以下である。より好ましくは15%以上60%以下、更に好ましくは15%以上50%以下である。
<バリア層(B)>
本実施形態の複合体において、繊維状半導体材料(A)の外周表面を被覆するバリア層(B)は、繊維状半導体材料(A)中のドーパント濃度の5倍以上1,000倍以下のドーパント濃度を有することを特徴とする。本実施形態におけるバリア層(B)中のドーパント濃度がこのような範囲にあると、高温時に発生する熱拡散現象において、半導体とバリア層の界面のドーパント濃度の偏析比率が理論的に算出される値に近くなる。そのため、高温条件下において長期間使用した後においても、繊維状半導体材料(A)内部のドーパント濃度を好適に維持することができる。
バリア層(B)中のドーパント濃度のより好ましい範囲は、繊維状半導体材料(A)中のドーパント濃度の5〜100倍である。この範囲においては、そーパントの拡散が問題となる温度領域である650℃〜950℃の温度範囲において、バリア層(B)と繊維状半導体材料(A)とのドーパント濃度比が、理論的な濃度偏析比率に近くなるために、更に好ましい。
バリア層(B)は、繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物を含有することが望ましい。繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物を含有するバリア層(B)は、繊維状半導体材料(A)との密着性が高く、繊維状半導体材料(A)中のドーパント成分が繊維状半導体材料(A)とバリア層(B)との界面に入り込むことがないので、良いバリア層として機能する。
バリア層(B)中に占める繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物の含有割合は、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは80質量%以上であり、更に好ましくは90質量%以上又は95質量%以上であり、ドーパントを除くバリア層(B)のすべてが繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物で構成されていてもよい。
<繊維状半導体材料(A)の分布と、バリア層(B)の厚み>
前出図1の複合体は、厚みtのバリア層(B)2によって外周表面を被覆された、円換算径がDである繊維状半導体材料(A)が、ピッチPにて三角格子状に配置されて成る。
本実施形態の複合体における繊維状半導体材料(A)のピッチPは、円換算径Dの1.2倍を超える長さであることが好ましい。このピッチPがこのような範囲であると、ドープ工程時に供給されるドーパントが該繊維状半導体材料(A)の内部まで拡散浸透し易くなり、所望のドーパント濃度を均一に得られることとなり、好ましい。
繊維状半導体材料(A)のピッチPは、円換算径Dの1.2倍超2.2倍以下であることが好ましく、1.4倍超1.8倍以下であることがより好ましい。
バリア層(B)の厚みは、5nm以上であって、繊維状半導体材料(A)のピッチPから円換算径Dを減じた値の1/2未満(=5nm〜(P−D/2))であることが望ましい。バリア層(B)の厚みは10nm以上であれば、バリア層として十分に機能する。
<充填材(C)>
本実施形態の充填材(C)は、バリア層(B)に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)を所望の自立状態に保持させ、且つ実用評価において十分な機械強度を与え得るものであることが好ましい。
充填材(C)は、繊維状半導体材料(A)の性能を長期間維持し得るという観点から、不活性ガス雰囲気下又は真空雰囲気下において、400℃以上の耐熱性があることが望ましく、500℃以上の耐熱性があることが好ましく、650℃以上の耐熱性を有することがより好ましい。ここで述べる耐熱性とは、充填材(B)を、不活性ガス雰囲気下、又は真空雰囲気下において加熱した際に生じる重量減少が、加熱前と比較して5%以下であることをいう。加熱後の重量減少がこの範囲であると、本実施形態の複合体を長期間使用した場合でも、充填材(C)から揮発成分が抜けて収縮する程度が少ない。従って、繊維状半導体材料(A)が充填材(C)の収縮によって受ける応力が抑制されるから、繊維状半導体材料(A)の変形、破損等が生じ難くなり、好ましい。
充填材(C)の導電性は、低い方が得られる複合体の熱電特性を向上する観点から好ましい。充填材(C)は、典型的には絶縁体から成り、その抵抗率)は、1.0×10〜1.0×1019Ωm(単位)であることが好ましく、1.0×10〜1.0×1018Ωmであることがより好ましい。
充填材(C)は、例えば、Al、Si、P、Ti、Zr、Ta、Nb、In、Sn、B、及びAsから成る群から選択される元素を少なくとも1種類含む材料から構成されることが好ましい。より好ましくは、一般式{−E−O−}(Eは、Al、Si、P、Ti、Zr、Ta、Nb、In、Sn、B、及びAsから成る群から選択される元素である。)で表される構成単位を有する種である。この場合、Eとしては、Si、Ti、Zr、及びTaから成る群から選択される元素であることが好ましい。
充填材(C)を構成する材料として特に好ましくは、ポリシロキサン、ポリチタノキサン、ポリジルコノキサン、又はポリタンタロキサンである。
<<複合体の製造方法>>
本実施形態における複合体の製造方法は、特に限定されるものではない。例えば、
基体の表面から深さ方向に配列し、平均断面積が7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下であり、長さが100μm以上である、複数の繊維状半導体材料(A)を形成する、繊維状半導体材料形成工程、
前記複数の繊維状半導体材料(A)にドープを行う、ドープ工程、
前記複数の繊維状半導体材料(A)の外周に、これを被覆するバリア層(B)を形成する、バリア層形成工程、及び
前記バリア層(B)に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)の間に形成される隙間を埋める充填材(C)を形成する、充填材形成工程
を含み、
前記ドープ工程と前記バリア層形成工程とを、この順に又は同時に行う方法によって製造することができる。
この後、繊維状半導体材料(A)及びその外周のバリア層(B)が、形成された充填材(C)中に埋没している場合には、余剰の充填材(C)を除去して繊維状半導体材料(A)及びその外周のバリア層(B)を複合体の表面に露出されるための研削工程を、更に行ってもよい。
<繊維状半導体材料形成工程>
繊維状半導体材料形成工程は、基体の表面から深さ方向に配列し、平均断面積が7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下であり、長さが100μm以上である、複数の繊維状半導体材料(A)を形成する工程である。
使用される基体は、形成すべき繊維状半導体材料(A)と同じ材質の基板を使用することができる。例えば、適当なドーパントによってドープされた、又はドープされていないシリコンウエハ等であってよい。しかしながら、本実施形態においては、次工程にドープ工程を有するので、原料の基板としてドープされた基板を用いる実益は希薄である。
該基板の片面上に、繊維状半導体材料(A)の所望の断面パターンに相当する部分をマスクするレジストパターンを形成し、該レジストパターンの非形成部をエッチングすることにより、複数の繊維状半導体材料(A)から成るナノ構造体を得ることができる。
上記レジストパターンを構成する材料は、採用するエッチング方法によって適宜に設定されるべきである。
エッチングは、ドライエッチング及びウェットエッチングのいずれでもよい。
例えば、ドライエッチングを採用する場合のレジストとしては、例えば、Si、Ti等の金属又は半金属元素を含むハードマスクを使用することができ;
例えば、ウェットエッチングを採用する場合のレジストとしては、例えば、ArF等の有機ポリマー系レジストから成るマスクを使用することができる。
レジストパターンの形成は、公知の適宜の方法によってよく、例えば、フォトリソグラフィー、転写法等であってよい。転写法を採用する場合、転写用パターンの形成は、例えナノインプリント法によることができる。
上記のようにして形成された複数の繊維状半導体材料(A)から成るナノ構造体は、必要に応じて洗浄、乾燥等を施した後、次工程に供される。
<ドープ工程及びバリア層形成工程>
繊維状半導体材料(A)にドーパントをドープする方法としては、例えば、熱拡散法、イオン注入法等を挙げることができる。
熱拡散法は、拡散源(ドーパント源)を高温下で酸素及び希釈ガス(例えば窒素)とともに繊維状半導体材料(A)と接触させ、繊維状半導体材料(A)外周表面上にドーパント元素の酸化物を堆積させる。次に、これを酸素又は酸素と希釈ガスとの混合ガス中で加熱して、繊維状半導体材料(A)の外周表面を酸化するとともに、堆積酸化物中のドーパント元素を繊維状半導体材料(A)に熱拡散させた後、形成された半導体酸化物膜を含む余分の酸化物膜を除去する方法である。
イオン注入法は、ドーパントをイオン化して、繊維状半導体材料(A)中に直接注入する方法である。
バリア層(B)は、例えば、上記のようにしてドーパントをドープした後の繊維状半導体材料(A)に、ドーパント濃度、処理温度、及び処理時間のうちの少なくとも1つを変更したうえで、上記のドープ操作を繰り返し、繊維状半導体材料(A)の外周表面近傍に内部よりもドーパント濃度の高い層を形成することにより、得ることができる。
しかしながら本実施形態においては、バリア層(B)が、繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物から構成されることが好ましいことから、以下のようにして、ドープ工程とバリア層形成工程とを同時に行うことが便利である。
即ち、繊維状半導体材料(A)へのドープ方法として熱拡散法を採用し、以下のステップ:
拡散源を高温下で酸素及び希釈ガスとともに繊維状半導体材料(A)と接触させ、繊維状半導体材料(A)外周表面上にドーパント元素の酸化物を堆積させるステップ、及び
外周表面にドーパント元素の酸化物が堆積した繊維状半導体材料(A)を酸素又は酸素と希釈ガスとの混合ガス中で加熱して、繊維状半導体材料(A)の外周表面を酸化するとともに、堆積酸化物中のドーパント元素を繊維状半導体材料(A)に熱拡散させるステップ
を含む、ドープ工程及びバリア層形成工程を同時に実施する方法である。
この後、任意的に、余分のドーパント元素酸化物体積物を除去する工程を行ってもよい。
しかしながら、上記によって形成される繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物層は、ドーパントを高濃度で含有し、本実施形態におけるバリア層(B)としてそのまま利用できるから、その完全除去は行わないことが好ましい。ただし、バリア層(B)の厚みを調整するための、該層の一部除去が禁止されるものではない。
上記熱拡散法における拡散源としては気体状の拡散源、液体状の拡散源、又は固体状の拡散源を使用することができる。
気体状の拡散源としては、
B(ホウ素)源として、例えば、BF、BCl、B等を;
P(リン)源として、例えば、PH、PF、POCl等を;
As(ヒ素)源として、例えば、AsH、AsF等を;
それぞれ挙げることができる。この場合、これらのガスを、希釈ガス(例えば窒素)で希釈して、酸素とともに又は酸素とは別々に、繊維状半導体材料(A)の外周表面に供給する。
液体状の拡散源としては、例えば、BBr(B源)、POCl(P源)、SbCl(Sb源)等を用いることができる。これら液状の拡散源は、例えばバブラーを用いて加熱気化したうえで、上記気体状の拡散源と同様に処理することができる。
固体状の拡散源としては、B源として例えば、ポリボロンフィルムを使用することができる。ポリボロンフィルムは、例えば、適当な溶媒に溶解した溶液として繊維状半導体材料(A)外周表面に塗布し、酸化性雰囲気下で加熱して用いられる。
上記の方法における加熱温度としては、例えば、600℃以上1,200℃以下とすることができ、好ましくは700℃以上1,100℃以下、より好ましくは800℃以上1,000℃以下である。加熱時間は、例えば5分以上120分以下とすることができ、好ましくは10分以上90分以下であり、より好ましくは20分以上60分以下である。
任意的に行われる余分のドーパント元素酸化物体積物の除去は、例えば、フッ化水素酸、フッ化水素酸とフッ化アンモニウム等との混合物であるバッファードフッ酸等によって、好ましくは水溶液中で行うことができる。
繊維状半導体材料(A)中及びバリア層(B)中のドーパント濃度は、処理時のドーパント濃度、処理温度、処理時間等をコントロールすることにより、任意に調整することができる。
<充填材形成工程>
充填材形成工程は、上記のようにして形成された、外周をバリア層(B)で被覆された複数の繊維状半導体材料(A)の間の隙間を、充填材(C)で埋める工程である。
この充填材形成工程は、例えば、複数の繊維状半導体材料(A)が形成成された基体上にゾルゲル反応液を塗布し、次いでこれを加熱して加水分解及び縮合反応を行うゾルゲル法によって実施することができる。このような縮合反応を用いることは、繊維状半導体材料(A)の隙間が例えば10μm以下と狭い空間である場合でも、均一に充填材(B)を形成できるという観点から好ましい。
[ゾルゲル反応液]
ゾルゲル反応液としては、例えば、充填材(B)の前駆体である加水分解性化合物の加水分解・縮合物を適当な溶媒で希釈した液状組成物であることができる。ゾルゲル反応液には、これらの化合物に加えてEの酸化物粒子を配合してもよい。
上記のとおり、充填材(B)は、式{−E−O−}(Eは、Al、Si、P、Ti、Zr、Ta、Nb、In、Sn、B、及びAsから成る群から選択される元素である。)で表される構成単位を有する種から成ることが好ましい。
以下においては、充填材(B)が、上記式におけるEがSiであるポリシロキサンから構成される場合を例として説明する。この場合、ゾルゲル反応液は、加水分解性シラン化合物の加水分解・縮合物であるシロキサン化合物を適当な溶媒で希釈した液状組成物であることができる。シロキサン化合物にシリカ粒子を配合したうえで、充填材形成工程に供してもよい。
(加水分解性シラン化合物)
上記加水分解性シラン化合物としては、例えば、下記一般式(1):
SiX14−n (1)
{式(1)中、nは0〜3の整数であり、Rは水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基であり、X1はハロゲン原子、炭素数1〜6のアルコキシ基、又はアセトキシ基である。}で表される化合物を挙げることができる。
上記Rの具体例としては、水素原子の他;
メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、ネオペンチル基、シクロペンチル基、n−ヘキシル基、iso−ヘキシル基、シクロヘキシル基、n−ヘプチル基、iso−ヘプチル基、n−オクチル基、iso−オクチ基ル、t―オクチル基、n−ノニル基、iso−ノニル基、n−デシル基、iso−デシル基等の、非環式又は環式の脂肪族炭化水素基;
ビニル基、プロペニル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘキセニルエチル基、ノルボルネニルエチル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、スチレニル基等の、非環式及び環式のアルケニル基;
ベンジル基、フェネチル基、2−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、4−メチルベンジル等の、アラルキル基;
PhCH=CH−基等の、アラアルケニル基;
フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;
等が挙げられる。これらのうち、ポリシロキサンンへの変換の際に質量減少が少なく、且つ、収縮率が小さいことから、Rとして好ましくは水素原子、メチル基又はエチル基であり、より好ましくはメチル基である。
4官能の加水分解性シラン化合物として、特に好ましくは、例えば、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、及びテトラプロポキシシランから成る群より選択される1種以上であり;
3官能の加水分解性シラン化合物として、特に好ましくは、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、
メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、
メチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、エチルトリメトキシシラン、
エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、
エチルトリブトキシシラン、エチル−トリス(2−メトキシエトキシ)シラン、
ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、
ヘキシルトリプロポキシシラン、ヘキシルトリブトキシシラン、
デシルトリメトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、
デシルトリプロポキシシラン、及びデシルトリブトキシシランから成る群より選択される1種以上である。
上記加水分解性シラン化合物が、上記一般式(1)中のnが0である4官能シラン化合物を含むことにより、複合体のクラック耐性が損なわれることなく、充填材(C)の、バリア層(B)に被覆された繊維状半導体材料(A)の隙間への充填性、及び半導体材料(A)を被覆するバリア層(B)との密着性が良好になる。
上記加水分解性シラン化合物が、上記一般式(1)中のnが1である3官能シラン化合物を含むことにより、充填材(C)と、繊維状半導体材料(A)を被覆するバリア層(B)との密着性が損なわれることなく、繊維状半導体材料(A)の隙間への充填性及び得られる複合体におけるクラック耐性が良好になる。
従って本実施形態においては、4官能の加水分解性シラン化合物及び3官能の加水分解性シラン化合物を、それぞれ特定量用いることにより、上記の利点を併せ持った複合体とすることができ、好ましい。
加水分解性シラン化合物の全量に対する4官能のシラン化化合物の割合が5モル%以上である場合、ゾルゲル反応液の充填性、及び繊維状半導体材料(A)を被覆するバリア層(B)と充填材(C)との密着性が良好となるため好ましい。加水分解性シラン化合物の全量に対する4官能のシラン化化合物の割合は、更に好ましくは10モル%以上100モル%以下である。
加水分解性シラン化合物の全量に対する3官能のシラン化化合物の割合が5モル%以上である場合、得られる複合体のクラック耐性が良好になるとともに、ゾルゲル反応液の埋め込み性が良好であるため好ましい。加水分解性シラン化合物の全量に対する3官能のシラン化化合物の割合は、より好ましくは10モル%以上80モル%以下であり、更に好ましくは15モル%以上70モル%以下である。
加水分解性シラン化合物(及び存在する場合には他の加水分解性化合物)の加水分解及び縮合反応は、酸によって触媒される。ここで、上記一般式(1)中のX1及び上記一般式(2)中のX2として、それぞれ、ハロゲン原子又はアセトキシ基を含有する場合は、加水分解及び縮合反応のために水を加えることによって、反応系が酸性を示す。そのため、この場合には酸触媒を用いても用いなくても、いずれでも構わない。一方、上記一般式(1)中のX1及び上記一般式(2)中のX2が、それぞれ、アルコキシ基である場合は、酸触媒を加えることが好ましい。
酸触媒としては、無機酸及び有機酸が挙げられる。上記無機酸としては、例えば塩酸、硝酸、硫酸、フッ酸、リン酸、ホウ酸等が挙げられる。上記有機酸としては、例えば酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、シュウ酸、マレイン酸、メチルマロン酸、安息香酸、p−アミノ安息香酸、p−トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、ギ酸、マロン酸、スルホン酸、フタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、シトラコン酸、リンゴ酸、グルタル酸等が挙げられる。
上記の無機酸及び有機酸は、1種又は2種以上を混合して用いることができる。
触媒の使用割合は、加水分解性シラン化合物(及び存在する場合には他の加水分解性化合物)中のSi元素1モルに対して、0.5モル以下とすることが好ましく、より好ましくは0.01モル以上0.3モル以下である。
(加水分解及び縮合反応時の溶媒)
ゾルゲル反応液に含有されるポリシロキサン化合物は、上記の加水分解性シラン化合物、並びに任意的に他の加水分解性化合物及び触媒を、有機溶媒中又は水と有機溶媒との混合溶媒中に溶解し、水を加えることにより、製造することができる。
上記有機溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素化合物、アミド化合物等が挙げられる。
上記アルコールとしては、例えば、
メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の一価アルコール;
エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール等の多価アルコール;
エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等の多価アルコールのモノエーテル;
等が挙げられる。
上記エステルとしては、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等が挙げられる。
上記ケトンとしては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソアミルケトン等が挙げられる。
上記エーテルとしては、上記の多価アルコールのモノエーテル以外のエーテル化合物であり、例えば、
エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジプロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル等の多価アルコールの水酸基のすべてをアルキルエーテル化した多価アルコールエーテル;
テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、アニソール等;
が挙げられる。
上記脂肪族炭化水素としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等が挙げられる。
上記芳香族炭化水素としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
上記アミド化合物としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
以上の溶媒の中でも、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール等のアルコール;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン;エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル;及びジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド化合物が、水と混合し易い点で好ましい。
これらの溶媒は、単独で使用してもよいし、複数種の溶媒を組み合わせて使用しても構わない。また上記溶媒を用いずにバルク中で反応を行ってもよい。
(水の使用割合)
水の使用割合は、加水分解性シラン化合物、及び存在する場合には他の加水分解性化合物の合計1モルに対して、0.1モル以上5.0モル以下とすることが好ましく、0.5モル以上2.0モル以下とすることがより好ましい。
加水分解及び縮合反応を行う際の反応温度には、特に制限はないが、好ましくは−50℃以上200℃以下、より好ましくは0℃以上150℃以下の範囲である。上記の温度範囲で反応を行うことにより、得られるポリシロキサン化合物の分子量を容易に制御することができる。
なお、反応溶媒が水と有機溶媒との混合溶媒である場合、上記の水の使用割合は、溶媒としての水も含むものとして理解されるべきである。
(ポリシロキサン化合物)
好ましくは上記のようにして得られるポリシロキサン化合物の重量平均分子量は、1,000以上20,000以下であることが好ましく、更に好ましくは1,000以上10,000以下である。該縮合反応物の重量平均分子量が1,000以上である場合、充填材(C)の成膜性、及び得られる複合体のクラック耐性が良好となり、重量平均分子量が20,000以下である場合、充填材(C)の充填性が良好となり、且つ得られるゾルゲル反応液のポットライフが長くなり、好ましい。
上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーを用いて測定され、標準ポリメチルメタクリレート換算で算出される値である。分子量の測定は、例えば東ソー製の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置{形式「HLC−8220」}及びカラム(品名「TSKgel GMHHR−M」)を使用し、アセトン溶媒中、ポリシロキサン化合物を1質量%溶液に調整して測定でき、示差屈折率計(RI)により標準ポリメチルメタクリレート換算の重量平均分子量(Mw)を求めることができる。
(シリカ粒子)
上記のようにして得られる加水分解及び縮合反応の反応混合物(ポリシロキサン化合物を含有する反応液)は、これをそのまま本実施形態におけるゾルゲル反応液として用いてもよいし、該反応混合物にシリカ粒子を加えたうえでゾルゲル反応液として用いてもよい。
本実施形態におけるゾルゲル反応液に架橋密度の高いシリカ粒子を配合することにより、機械強度に優れた充填材(C)を得ることができる。
本実施形態において使用されるシリカ粒子としては、例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ等が挙げられる。
上記ヒュームドシリカは、ケイ素原子を含む化合物を気相中で酸素及び水素と反応させることによって得ることができる。原料となるケイ素化合物としては、例えばハロゲン化ケイ素(例えば塩化ケイ素等)等が挙げられる。
上記コロイダルシリカは、原料化合物を加水分解・縮合するゾルゲル法により合成することができる。コロイダルシリカの原料化合物としては、例えば、アルコキシケイ素(例えばテトラエトキシシラン等)、ハロゲン化シラン化合物(例えばジフェニルジクロロシラン等)等が挙げられる。中でも、金属、ハロゲン等の不純物が少ないことから、アルコキシケイ素から得られたコロイダルシリカがより好ましい。
シリカ粒子の形状は、球状、棒状、板状、若しくは繊維状、又はこれらの2種類以上が合体した形状であることができる。好ましくは球状である。ここでいう球状とは、真球状の他、回転楕円体、卵形等の略球状である場合も含むものである。
シリカ粒子の粒子径は、
これを含有するゾルゲル反応液が、複数の繊維状半導体材料(A)が形成する隙間へ充填されるための流動性を有すること;及び
得られる複合体の強度を高くすること
等の観点から、重要である。
シリカ粒子の平均一次粒子径は、1nm以上120nm以下であることが好ましく、より好ましくは40nm以下、更に好ましくは20nm以下、最も好ましくは15nm以下である。上記平均一次粒子径が1nm以上である場合、クラック耐性が良好であり好ましく、120nm以下である場合、複数のナノワイヤ間の隙前への充填性が良好であり好ましい。
シリカ粒子の平均二次粒子径は、2nm以上250nm以下であることが好ましく、より好ましくは80nm以下、更に好ましくは40nm以下、最も好ましくは30nm以下である。上記平均二次粒子径が2nm以上である場合、得られる複合体のクラック耐性が良好となり好ましく;250nm以下である場合、ゾルゲル反応液における、複数の繊維状半導体材料(A)間の隙間への充填性が良好となり好ましい。
シリカ粒子の平均二次粒子径は、上記の範囲内で、基板に形成された、バリア層(B)被覆繊維状半導体材料(A)の間隙のうちの最小の開口幅の0.1〜3倍であることが、隙間への充填性が良好となる点で好ましく、上記最小の開口幅の0.1〜2倍であることが更に好ましい。
上記平均一次粒子径は、BETの比表面積(下記)から計算で求められる値であり、上記平均二次粒子径は、動的光散乱光度計で測定される値である。
シリカ粒子の比表面積は、HF耐性が良好である点で、BET比表面積として、25m/g以上であることが好ましく、より好ましくは70m/g以上、更に好ましくは140m/g以上、最も好ましくは180m/g以上である。シリカ粒子の比表面積は、1,000m/g以下であってよい。
上記BET比表面積は、N分子の圧力とガス吸着量とから計算される方法で測定される値である。
シリカ粒子としては、上記の要件に適合する限りで、制限はなく、市販品を使用してもよい。
市販品としては、
コロイダルシリカとして、例えば、LEVASILシリーズ(H.C.Starck(株)製)、メタノールシリカゾル、IPA−ST、MEK−ST、NBA−ST、XBA−ST、DMAC−ST、ST−UP、ST−OUP、ST−20、ST−40、ST−C、ST−N、ST−O、ST−50、ST−OL(以上、日産化学工業(株)製)、クオートロンP Lシリーズ(扶桑化学(株)製)、OSCALシリーズ(触媒化成工業(株)製)等を;
粉体状のシリカ粒子として、例えば、アエロジル130、同300、同380、同TT600、同OX50(以上、日本アロジル(株)製)、シルデックスH31、同H32、同H51、同H52、同H121、同H122(以上、旭硝子(株)製)、E220A、E220(以上、日本シリカ工業(株)製)、SYLYSIA470(富士シリシア(株)製)、SGフレーク(日本板硝子(株)製)等を;
それぞれ挙げることができる。
(ゾルゲル反応液の溶媒)
本実施形態におけるゾルゲル反応物溶液は溶媒を含有する。
ゾルゲル反応液における溶媒としては、例えば、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、及び炭化水素系溶媒から選ばれる少なくとも1種類の溶媒が挙げられ、エステル、エーテル、及び炭化水素系溶媒から選ばれる少なくとも1種類が好ましい。溶媒の沸点は、100℃以上200℃以下であることが好ましい。
本実施形態におけるゾルゲル反応液中の溶媒の含有量は、ポリシロキサン化合物100質量部に対して、好ましくは100質量部以上1,900質量部以下、より好ましくは150質量部以上900質量部以下である。溶媒の上記含有量が100質量部以上である場合、ゾルゲル反応液のポットライフが長くなり、1,900質量部以下である場合、ゾルゲル反応液の充填性が良好となるため好ましい。
上記の溶媒の具体例としては、加水分解性シラン化合物、並びに任意的に他の加水分解性化合物を加水分解及び縮合する際に使用される有機溶媒として上記に例示したアルコール、エステル、ケトン、エーテル、脂肪族炭化水素、及び芳香族炭化水素化合物の各具体例と同様である。
本実施形態におけるゾルゲル反応液の溶媒としては、
ポリシロキサン合成時の溶媒をそのまま使用してもよいし;
ポリシロキサン合成時の溶媒に、同種又は異種の溶媒を追加して使用してもよいし;或いは、
ポリシロキサン合成時の溶媒を、同種又は異種の溶媒によって溶媒置換したうえで使用してもよい。
[ゾルゲル反応液の充填及び硬化方法]
本実施形態の複合体における充填材(C)は、繊維状半導体材料(A)を形成した基体上に上記のようなゾルゲル反応液を塗布し、次いでゾルゲル反応により該ゾルゲル反応液中のポリシロキサン化合物(及び存在する場合にはシリカ粒子)を縮合させることにより、得ることができる。このようなゾルゲル反応液を用いることは、開口部が10μm以下の空間に均一に充填材(C)を形成できるという観点から好ましい。
先ず、上記のゾルゲル反応液を基体上に形成された複数の繊維状半導体材料(A)の隙間に充填する。
この場合の充填方法としては、例えば塗布法によることができ、具体的な充填方法として、例えば、滴下法、スピンコート法、ディップコート法、ローラーブレード塗布法、スプレー塗布法等が挙げられる。滴下法によってゾルゲル反応液を塗布する場合、1段階の滴下でも、複数回滴下でも構わない。特に、少なくとも1段階目は少量滴下し、2段階目以降において必要量に達するように、徐々に滴下することが好ましい。これは、1段階目で先ず全面に液が広がり充填性が良好になるためである。
塗布量は、硬化後に得られる充填材(C)の体積が、バリア層(B)に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)の間隙の体積よりも大きくなる量とすることが好ましい。この場合、繊維状半導体材料(A)は、形成された充填材(C)中に埋没することになる。余剰の充填材(C)は、ゾルゲル反応液の硬化後に好ましく行われる研削工程によって除去することができる。
次いで、上記のゾルゲル反応液塗布後の基体を加熱して、ゾルゲル反応液中の加水分解性シラン化合物(及び存在する場合には他の加水分解性化合物)を硬化させる。この加熱は、一段階で行ってもよいし、塗布後の反応液から残留溶媒を除くために、予備加熱を行ってもよく、この予備加熱を行うことが好ましい。
予備加熱は、50℃〜200℃の範囲の温度において、0.1分〜60分の範囲で行うことができる。このとき、段階的に温度を上げても、連続的に温度を上げてもよい。予備過熱の際の雰囲気としては、酸化性雰囲気であっても非酸化性雰囲気であっても構わない。
上記の任意的な予備加熱後の基体を、次いで加熱焼成することによって、塗布されたゾルゲル反応液を完全に硬化し、繊維状半導体材料(A)とバリア層(B)と、充填材(C)との複合体を得ることができる。
上記の加熱焼成の方法としては、ホットプレート、オーブン、ファーネス等の一般的な加熱手段を適用することができる。
加熱温度は、好ましくは200℃超過850℃以下であり、より好ましくは300℃超過800℃以下であり、更に好ましくは350℃超過750℃以下である。加熱温度が200℃超過である場合、得られる充填材(C)の膜質が良好となるため好ましく、850℃以下である場合、得られる複合体における耐クラック性が良好となるため好ましい。加熱時間は、1分〜24時間とすることが好ましく、10分〜6時間とすることがより好ましい。
加熱焼成は非酸化性雰囲気で行うことが好ましい。非酸化性雰囲気とは、真空下、又はN2、Ar、Xe等の不活性雰囲気である。これらの不活性雰囲気中の酸素、水蒸気等の酸化性ガスの濃度は、1,000ppm以下であることが好ましく、より好ましくは100ppm以下、更に好ましくは10ppm以下である。非酸化性雰囲気の全圧力に特に制限はなく、加圧、常圧、及び減圧のいずれでもよい。
一般式{−E−O−}におけるEがSi以外の元素である材料から構成される充填材(C)は、上記において、加水分解性シラン化合物及びシリカ粒子の化合物の代わりに、対応する加水分解性化合物及び金属酸化物粒子をそれぞれ使用する他は、上記に準じて、又はこれに当業者による適宜の変更を加えて実施することができる。ここで使用される加水分解性化合物は、例えば、チタンテトライソプロポキシド、ジルコニウムテトライソプロポキシド、タンタルペンタエトキシド等であり、金属酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化タンタル等である。
[研削工程]
更に任意的に、基体の表面及び裏面のうちの少なくとも1面を研削する研削工程を行ってもよい。
基体の表面を研削することにより、形成された充填材(C)中に埋没した繊維状半導体材料(A)及びバリア層(B)の端部を基体表面に露出さることができる。
基体の裏面を研削することにより、形成された複数の繊維状半導体材料(A)の基体裏面側の端部を露出させることができる。
これらの研削工程は、市販の研削機、例えば、日本エンギス社製、型式名「EVG−200」等により行うことができる。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態をより詳細に説明する。本実施形態はこれらに限定されるものではない。
実施例及び比較例における複合体の製造及び評価は、特記した以外は、それぞれ、以下に示す方法に従って実施した。
<複合体の製造>
(1)繊維状半導体材料形成工程
(1−1)円筒状マスターモールドの作製
特許文献3に開示されている手法を用いて、PET基板上にナノ構造パターンを有するシート状樹脂モールドを作製した。具体的には以下のとおりである。
石英ガラスの表面を十分に洗浄した。この石英ガラス表面上に、ターゲット(レジスト層)としてφ3インチのCuO(8atm%Si含有)を用い、RF100Wの電力にてスパッタリングを行い、厚み20nmのレジスト層を成膜した。続いて、石英ガラスを回転させながら、波長405nmnの半導体レーザを用いて一度露光を行った。
上記の一度露光されたレジスト層に対して、波長405nmnの半導体レーザを用いて、所定のナノ構造パターンにて露光を行った後、0.03質量%のグリシン水溶液を現像液として240秒間の現像を行い、レジストパターンを得た。
得られたレジストパターンをマスクとし、エッチングガスとしてSFを用い、処理ガス圧1Pa、及び処理電力300Wの条件下で石英ガラスのドライエッチングを行った。その後、石英ガラス表面の残渣をpH1の塩酸による処理を6分間行うことにより、表面にナノ構造パターンを有する円筒状マスターモールドを得た。
得られた円筒状マスターモールドのナノ構造形成面(側面)に、窒素雰囲気下にてフッ素系表面処理剤(品名「デュラサーフHD−1101Z」、ダイキン化学工業社製)を塗布し、60℃で1時間加熱後、室温で24時間静置し、固定化した後、洗浄剤(品名「デュラサーフHD−ZV」、ダイキン化学工業社製)で3回洗浄して離型処理を施した。
(1−2)キャリアの作製
上記で得た円筒状マスターモールドを鋳型とし、光ナノインプリント法によってキャリアを作製した。キャリアを構成する原料としては、以下の各成分の混合物を使用した。
[キャリア構成原料]
フッ素含有ウレタン(メタ)アクリレート(品名「OPTOOL DAC HP」、ダイキン工業社製):17.5質量部、
トリメチロールプロパン(EO変性)トリアクリレート(品名「M350」、東亞合成社製):100質量部、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(品名「Irgacure(登録商標)184」、BASF社製):5.5質量部、及び
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(品名「Irgacure 369」、BASF社製):2.0質量部
の混合物。
マイクログラビアコーター(廉井精機社製)を用いて、上記のキャリア構成原料をPETフィルム「A−4100」(品名、東洋紡社製、長さ200m、幅300mm、厚み100μm)の易接着面に、塗布膜厚が6μmになるように塗布した。
このキャリア構成原料が塗布されたPETフィルムを、ニップロール(0.1MPa)を用いて円筒状マスターモールドに押し付け、塗布されたPETフィルム上のキャリア構成原料に円筒状マスターモールドのナノ構造パターンを転写した。
次いで、フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製のUV露光装置(品名「Hバルブ」)を用い、大気下、温度25℃、相対湿度60%の条件下で、PETフィルム上のキャリア構成原料の全面に、ランプ中心下の積算露光量が1,500mJ/cmとなるように紫外線を照射して光硬化を行うことにより、表面にナノ構造パターンが転写されたシート状樹脂モールド(300×220mm)を得た。このシート状樹脂モールドが有するナノ構造パターンは、直径(D):250nm及び深さ500nmの円筒状凹部が、ピッチ(P):350nmの六方格子状に配置されたパターンであった。
(1−3)ナノ加工用フィルムの作製
上記で得たシート状樹脂モールドのナノ構造面に対して、下記材料1の希釈液及び下記材料2の希釈液を順次に塗工して、ナノ加工用フィルムを得た。
[材料1]
チタニウム(IV)テトラブトキシドモノマー(和光純薬工業社製):65.2質量部
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(品名「KBM5103」、信越シリコーン社製):34.8質量部、
フェニル変性シリコーン(東レ・ダウコーニング社製):5.0質量部、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(品名「Irgacure(登録商標)184」、BASF社製:1.9質量部、及び
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(品名「Irgacure(登録商標)369」、BASF社製):0.7質量部
の混合物、並びに
希釈媒体:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
[材料2]
バインディングポリマー:ベンジルメタクリレート80質量%、メタクリル酸20質量%の2元共重合体(重量平均分子量56,000、酸当量430、分散度2.7)のメチルエチルケトン溶液(固形分50質量%):77.1質量部、
トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(品名「SR833」、SARTOMER社製):11.5質量部、
トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート(品名「SR368」、SARTOMER社製):11.5質量部、
1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(品名「Irgacure(登録商標)184」、BASF社製):1.47質量部、及び
2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(品名「Irgacure(登録商標)369」、BASF社製):0.53質量部
の混合物、並びに
希釈媒体:プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)及びアセトン(ACTN)の混合媒体(PGME:ACTN=60:40(質量比))。
先ず、シート状樹脂モールドのナノ構造面に、材料1の希釈液を直接塗工した後、80℃の送風乾燥炉内に5分間静置して通風乾燥し、溶媒を除去した。材料1の希釈倍率は、送風乾燥後の塗膜が、ナノ構造パターンの円筒状凹部の高さの約80%まで充填し、上側の約20%相当分が空隙となるように調整した。
上記材料1を塗布及び通風乾燥後のシート状樹脂モールドのナノ構造面に、材料2の希釈液を直接塗工した後、80℃の送風乾燥炉内に5分間静置して通風乾燥し、溶媒を除去した。材料2の希釈濃度は、送風乾燥後に、シート状樹脂モールドのナノ構造内部に配置された材料1と塗工された材料2との界面と、材料2の表面と、の間の距離が500nmになるように調整した。
(1−4)ウエハー上への熱転写
6インチシリコンウエハーを紫外線オゾンで表面洗浄した後、120℃に加熱したホットプレート上に設置した。このウエハー上に、上記で得たナノ加工用フィルムを、ナノ構造形成面がウエハー面と相対するように、ハンドローラーで1分間押し付けた。
次いで、フィルムを付けたままのウエハーをホットプレートから外し、該ウエハー上に波長254nmの輝線を含む紫外線を1分間照射した後、120℃に調温したホットプレート上における1分間の加熱を行った。
その後、ウエハーからカバーフィルムを剥離することにより、ウエハー上にナノ加工用フィルムが有していたナノ構造パターンを熱転写した。得られたウエハーは、該ウエハー上に材料1及び材料2がこの順に積層されたナノ構造パターンを有していた。
(1−5)ドライエッチング処理
上記で得た、材料1及び材料2から成る構造パターンを有するウエハーに対して、Oドライエッチング処理を施すことにより、材料2を除去し、材料1から成る、直径(D):232nmの円形ドットが、ピッチ(P):350nmの六方格子状に配置されたパターンを有するウエハーを得た。
(1−6)銀層の形成
真空加熱蒸着装置を用いて、常温下、真空度2.0×10−3Pa、蒸着速度0.5nm/sの条件で、上記で得た材料1のパターンを有するウエハー上に銀(Ag)を100nm成膜した。
Agの厚みを測定するために、表面が平滑なガラス基板をウエハーと同時に装置に挿入し、平滑ガラス基板上のAg厚みをウエハー上のAg膜の平均厚みとした。
(1−7)無電解エッチング(繊維状半導体材料(A)の形成)
700mlのイオン交換水に、47質量%HF水溶液202g、及び30質量%の過酸化水素水30mlを順次に加えた後、全量が1,000mlになるようにイオン交換水を加えて、エッチング液を調製した。
上記のエッチング液に、上記Ag膜形成後のウエハーを浸漬し、無電解エッチングにより、繊維状半導体材料(A)を形成した。このときの繊維状半導体材料(A)の形成速度は0.5〜1μm/minであった。
得られた繊維状半導体材料(A)を光学顕微鏡により測定したところ、直径:232nm、長さ:200μmの円柱状の繊維の複数が、平均ピッチ:350nmの六方格子パターン状に形成されていることが確認された。
(1−8)繊維状半導体材料(A)の乾燥
上記の操作によって繊維状半導体材料(A)が形成されたウエハーと2−メチル−2−プロパノールとを容器に入れ、2−メチル−2−プロパノールが完全に凍結するまで冷却した。その後、容器を20Paの真空下に置き、2−メチル−2−プロパノールが完全に昇華するまで真空を維持することにより、繊維状半導体材料(A)の乾燥を行った。
(2)ドープ工程及びバリア層形成工程(同時実施)
(2−1)
上記のようにしてウエハー上に形成された繊維状半導体材料(A)に対して、ドープ工程及びバリア層形成工程を同時に行った。
具体的には、装置として東京エレクトロン社製の横型拡散炉:型式「TEL XL−7」を使用し、以下の手順によった。
繊維状半導体材料(A)が形成されたウエハーを装置のチャンバー内に設置し、半導体材料表面の自然酸化膜の除去処理を行った後、下記組成のガスを流しながら加熱処理を行なって、繊維状半導体材料(A)にB(ボロン)をドープするとともに、バリア層(B)を形成した。
BCl:20sccm
:100sccm
:200sccm
:5,000sccm
その後、ウエハーを10質量%濃度のHF水溶液中に30分間浸漬することにより、ボロン酸化物層を除去した。
繊維状半導体材料(A)中のB濃度、並びにバリア層(B)の厚み及び該バリア層(B)中のB濃度は、上記加熱処理時の処理温度及び処理時間を変量することにより、調整した。
(2−2)バリア層(B)の厚みの測定
上記の操作によって形成されたバリア層(B)の厚みを、STEM/EDX観察によって測定した。STEM装置としては、(株)日立ハイテクノロジーズ社製、型式「HD−2300」を使用した。
(2−3)ドーパント濃度の測定
上記で得た繊維状半導体材料(A)とバリア層(B)とを分け、それぞれ別個に、アルカリ溶融して塩酸に溶解した後、純水で定容し、各測定試料を調製した。
サーモフィッシャーサイエンティフィック社製のICP発光分光分析装置、型式「iCAP6300 Duo」を用いて、上記の測定試料中のBの分析を行った。得られた測定結果を検量線に当てはめ、試料中のB濃度を定量し、繊維状半導体材料(A)及びバリア層(B)中のB濃度に換算した。検量線は、上記試料の調製に使用したアルカリ溶融剤にBの標準液を添加して得た標準試料を用いて作成した。
(3)充填材(C)形成工程
(3−1)充填材形成用塗布液の調製
[製造例1] ナスフラスコに、メチルトリメトキシシラン(MTMS)11.6g、テトラエトキシシラン(TEOS)4.4g、及びエタノール20gを入れて攪拌し、ここへ水11.5gとpH調整のための適切量の濃硝酸との混合水溶液を室温で滴下して、pHを6〜7に調整した。滴下終了後、30分間攪拌し、24時間静置して、ポリシロキサン化合物を得た。
蒸留塔及び滴下ロートを有する4つ口の500mLフラスコに、PL−06L(扶桑化学工業製の平均一次粒子径6nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子)47.6g及びエタノール80gを入れ、5分間攪拌した。ここへ、上記のポリシロキサン化合物を室温で滴下した。滴下終了後、30分間攪拌し、4時間還流した後、プロピレングリコールメチルエチルアセテート(PGMEA)を150g添加した。
次いで、オイルバスを昇温させて、蒸留ラインよりメタノール、エタノール、水、及び硝酸を留去した後、減圧蒸留装置を用いて濃縮することにより、固形分濃度20質量%の充填材形成用塗布液(1)を得た。
[製造例2]
200mLナスフラスコに、PL−06L(扶桑化学工業製の平均1次粒子径6nm、6.3質量%濃度の水分散シリカ粒子)20.41g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)(沸点:120℃)50gを入れ、加熱減圧蒸留を行って、PGMEに溶媒置換されたシリカ分散液(PGME/シリカ分散液)20.41gを得た。GC測定により、PGME/シリカ分散液中に、水は、約3質量%含まれていた。
300mLナスフラスコに、テトラエトキシシラン(TEOS)10.40g、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル20.63gを入れて攪拌し、ついで0.7質量%硝酸水溶液1.53g及び水0.28gの混合硝酸水溶液を室温で滴下した。滴下終了後、50℃で1時間加熱攪拌した。加熱攪拌後、上記のPGME/シリカ分散液を20.41g滴下した。滴下終了後、50℃で1時間加熱攪拌し、更に加熱減圧蒸留によって溶媒を留去することにより、固形分濃度15質量%の充填材形成用塗布液(2)を21.43g得た。
(3−2)充填材形成用塗布液の塗布(フィリング)
以下、図2を参照する。
上記「(1)繊維状半導体材料(A)の形成」によって繊維状半導体材料(A)のパターンが形成された、繊維状半導体材料(A)の形成領域1bを有するウエハー4の外周端部に、付加硬化型シリコーン(旭化成(株)製、「ワッカーシリコーンELASTOSIL」、A液:B液=9:1(質量比))熱硬化性樹脂を用いて、土手5を形成した。
上記「(3−1)充填材形成用塗布液の調製」の製造例1又は製造例2で得られた充填材形成用塗布液13.14mlと、626μlずつ21回に分けて、土手5内の繊維状半導体座寺領(A)の形成領域1b上に滴下した。
滴下後、25℃の大気中にて24時間静置して乾燥させた。
(3−3)焼成工程
上記の乾燥後、140℃に設定したオーブン(大気中)内で5分間プレキュア焼成した後、酸素濃度0.1体積%以下の窒素雰囲気下、以下の温度プロファイルにて焼成を行い、充填材形成用塗布液を硬化して、充填材(C)を形成した。
室温から、20℃/分の速度で400℃まで昇温し、400℃になったところで昇温を止め、その後1時間かけて100℃以下に冷却した。
(4)研削工程
上記焼成後のウエハーを、研削用プレートにWAXにて固定し、塗布時に形成した土手、表面の不要な充填材、及び材料1のパターンを研削機(日本エンギス社、型式名「EVG−200」)を使用して研削した後、ウエハーをWAXから取り出した。
(5)加熱試験
上記研削工程後のウエハーを、図2の繊維状半導体座寺領(A)の形成領域1b面の大きさが50mm×50mmとなるようにカットし、これを試験片とした。
上記試験片を、ランプアニール炉(アドバンス理工(株)製、型式「MILA5050」)中に設置し、各温度条件において、窒素雰囲気下で1,500分間の加熱処理を行った。
加熱処理後の試験片の繊維状半導体材料(A)の部分を測定試料とし、上記「(2−3)ドーパント濃度の測定」と同様にして、加熱処理後の繊維状半導体材料(A)中のドーパント濃度を測定した。
[実施例1〜7]
「(2)ドープ工程及びバリア層形成工程」において形成したバリア層の厚み、「(3−2)充填材形成用塗布液の塗布」において使用した充填材形成用塗布液の種類、及び「(5)加熱試験」における加熱温度を、それぞれ、表1に記載のとおりとして、上記のとおりの操作により、各種の評価を行った。
評価結果は表1に示した。
[比較例1〜3]
上記「(1)繊維状半導体材料形成工程」及び「(2)ドープ工程及びバリア層形成工程」により、ウエハー上に、ドープされ、バリア層(B)を有する繊維状半導体材料(A)を形成した後、フッ酸を用いてバリア層(B)を除去した。
その後、「(3−2)充填材形成用塗布液の塗布」において使用した充填材形成用塗布液の種類、及び「(5)加熱試験」における加熱温度を、それぞれ、表1に記載のとおりとして、充填材(C)を形成して加熱試験を行い、評価した。
評価結果は表1に示した。
表1中、各「ドーパント濃度」欄の「E+18」、「E+19」及び「E+21」は、それぞれ、「×10+18」、「×10+19」、「×10+21」の意味である。
本発明の複合体は、熱電変換素子、発光素子、ナノワイヤ太陽電池等の高機能デバイスとして利用することができる。上記熱電変換素子は、例えば、水素センサー等に好適に使用される。
1 繊維状半導体材料(A)
1b 繊維状半導体材料(A)の形成領域
2 バリア層(B)
3 充填材(C)
4 ウエハー
5 土手
10 複合体
D 繊維状半導体材料(A)の円換算径
P 繊維状半導体材料(A)のピッチ
t バリア層(B)の厚み

Claims (5)

  1. 少なくとも表面を有し、
    前記表面から深さ方向に配列する複数の繊維状半導体材料(A)と、
    前記繊維状半導体材料(A)の外周を被覆するバリア層(B)と、
    前記バリア層(B)に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)の間に形成される隙間を埋める充填材(C)とを有する複合体であって、
    前記繊維状半導体材料(A)は、ドープされた半導体材料から構成され、平均断面積が7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下であり、長さが100μm以上であり、そして
    前記バリア層(B)中のドーパント濃度が前記繊維状半導体材料(A)中のドーパント濃度の5倍以上1,000倍以下であることを特徴とする、前記複合体。
  2. 前記バリア層(B)が、前記繊維状半導体材料(A)を構成する半導体材料の酸化物を含有する、請求項1に記載の複合体。
  3. 前記バリア層(B)の厚さが5nm以上50nm以下である、請求項1又は2に記載の複合体。
  4. 基体の表面から深さ方向に配列し、平均断面積が7.0×10−5μm以上8.0×10−1μm以下であり、長さが100μm以上である、複数の繊維状半導体材料(A)を形成する、繊維状半導体材料形成工程、
    前記複数の繊維状半導体材料(A)にドープを行う、ドープ工程、
    前記複数の繊維状半導体材料(A)の外周に、これを被覆するバリア層(B)を形成する、バリア層形成工程、及び
    前記バリア層(B)に被覆された複数の繊維状半導体材料(A)の間に形成される隙間を埋める充填材(C)を形成する、充填材形成工程
    を含み、
    前記ドープ工程と前記バリア層形成工程とを、この順に又は同時に行う、請求項1に記載の複合体を製造するための方法。
  5. 前記ドープ工程及び前記バリア層形成工程が、以下のステップ:
    拡散源を高温下で酸素及び希釈ガスとともに繊維状半導体材料(A)と接触させ、繊維状半導体材料(A)外周表面上にドーパント元素の酸化物を堆積させるステップ、及び
    外周表面にドーパント元素の酸化物が堆積した繊維状半導体材料(A)を酸素又は酸素と希釈ガスとの混合ガス中で加熱して、繊維状半導体材料(A)の外周表面を酸化するとともに、堆積酸化物中のドーパント元素を繊維状半導体材料(A)に熱拡散させるステップ
    を含む方法によって同時に行われる、請求項4に記載の方法。
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