以下、本発明における好ましい加熱調理器の実施形態について、添付図面を参照して説明する。なお、これらの全図面にわたり、共通する部分には共通する符号を付すものとする。
図1〜図17は、本発明の加熱調理器をオーブンレンジに適用した一実施形態を示している。先ず図1〜図4に基いて、オーブンレンジの全体構成を説明すると、1は略矩形箱状に構成される本体で、この本体1は、製品となるオーブンレンジの外郭を覆う部材として、金属製のキャビネット2を備えている。また3は、本体1の前面に設けられる開閉自在な扉である。
扉3の上部には、縦開きの扉3を開閉するときに手をかける開閉操作用のハンドル4を備えており、扉3の下部には、表示や報知や操作のための操作パネル部5を備えている。操作パネル部5は、調理の設定内容や進行状況などを表示する表示手段6の他に、加熱調理に関する各種の操作入力を可能にする操作手段7が配設される。扉3の内部で操作パネル部5の後側には、図示しないが、表示手段6や操作手段7などの制御を行なうために、操作パネルPC(印刷回路)板が配置される。
本体1の下部には、本体1の前面より着脱が可能な給水カセット8と水受け9が各々配設される。給水カセット8は、蒸気発生装置(図示せず)から発生する蒸気の供給源として、液体となる水を入れる有底状の容器である。また水受け9は、本体1からの食品カスや水滴、蒸気などを受ける有底状の容器である。
本体1の左右側面と上面を形成するキャビネット2は、本体1ひいてはオーブンレンジの底面を形成するオーブン底板11を覆うように、本体1の前面を形成するオーブン前板12と、本体1の後面を形成するオーブン後板13との間に設けられる。また本体1には、加熱調理すべき被調理物Sを内部に収容する調理室14と、調理室14の温度を検出する温度検出素子たるサーミスタ15が設けられる。調理室14の前面はオーブン前板12に達していて、被調理物Sを出し入れするために開口しており、この開口を扉3で開閉する構成となっている。
調理室14の内面を形成する周壁は、天井壁14aと、底壁14bと、左側壁14cと、右側壁14dと、奥壁14eとからなる。調理室14の奥壁14eは、その中央に吸込み口16を備えており、吸込み口16の周囲には複数の吹出し口17を備えている。また、調理室14の上壁面となるドーム状の天井壁14aに対向して、本体1の上部には、調理室14の上方から被調理物Sを輻射加熱するグリル用の上ヒータ18が設けられ、本体1の底部には、調理室14内に電波であるマイクロ波を供給するために、マグネトロンを含むマイクロ波発生装置19が設けられる。これにより、上ヒータ18への通電に伴う熱放射によって、調理室14内に収容した被調理物Sを上方向からグリル加熱し、またマイクロ波発生装置19への通電動作により、調理室14内に収容した被調理物Sにマイクロ波を放射して、被調理物Sをレンジ加熱する構成となっている。
調理室14の左側壁14cと右側壁14dには、調理室14の内部に金属製の角皿21を吊設状態で収納保持するために、左右一対の棚支え22を上下二段に備えている。ここで使用する角皿21は、上面を開口した有底凹状で、その他は無孔に形成される収容部21Aと、収容部21Aの上端より外側水平方向に延設するフランジ部21Bとにより構成される。またフランジ部21Bには、角皿21を通して熱風の流通を可能にする通気孔21Cが開口形成される。図2では、調理室14の内部で下段の棚支え22に角皿21のフランジ部21Bを載せて、収容部21Aに被調理物Sを載せた状態を示しているが、調理に応じて角皿21を上段の棚支え22にだけ載せたり、2枚の角皿21を上段と下段の棚支え22に各々載せたりしてもよく、角皿21に代えて別な焼き網(図示せず)などの付属品の皿を収納保持することもできる。
24は、本体1の内部において、調理室14の室外後方から下方にかけて具備されるオーブン加熱用の熱風ユニットである。この熱風ユニット24は、奥壁14eに取付けられる凸状のケーシング26と、空気を加熱する熱風ヒータ27と、調理室14内に加熱した空気を送り込んで循環させる熱風ファン28と、熱風ファン28を所定方向に回転させる電動の熱風モータ29と、熱風モータ29からの駆動力を熱風ファン28に伝達する伝達機構30と、により概ね構成される。奥壁14eとケーシング26との間の内部空間として、調理室14の室外後方に形成された加熱室31には、熱風ヒータ27と熱風ファン28がそれぞれ配設される一方で、本体1の内部に形成された調理室14とオーブン底板11との間の下部空間32には、熱風モータ29が配設される。そして、熱風ユニット24全体を後側外方から覆うように、本体1の後部にオーブン後板13が配設される。
本実施形態の熱風ファン28は、軸方向に取り入れた空気を、回転時の遠心力によって、軸方向と直角な放射方向に吐き出すいわゆる遠心ファンとして設けられており、管状の熱風ヒータ27は熱風ファン28の放射方向を取り囲んで配置される。発熱部でもある熱風ヒータ27は、例えばシーズヒータ、マイカヒータ、石英管ヒータやハロゲンヒータなどを用いる。前述した熱風の吸込み口16や吹出し口17は、調理室14と加熱室31との間を連通する通風部として機能するものである。
そして本実施形態では、熱風モータ29への通電に伴い熱風ファン28が回転駆動すると、調理室14の内部から吸込み口16を通して吸引された空気が、熱風ファン28の放射方向に吹出して、通電した熱風ヒータ27により加熱され、熱風吹出し口17を通過して、調理室14内に熱風が供給される。これにより、調理室14の内外で熱風を循環させる経路が形成され、調理室14内の被調理物Sを熱風コンベクション加熱する。また、角皿21の周囲にスリット状の通気孔21Cを設けることで、例えば上下2段の棚支え22に角皿21を各々載せて、熱風ユニット24を利用したオーブン加熱調理を行なった場合でも、各角皿21の通気孔21Cを通して調理室14内で熱風が上下に循環するため、被調理物Sとなる食品を前後左右から包み込んで焼き上げることが可能になる。
調理室14の左側壁14cには、蒸気発生装置に連通する蒸気噴出孔33が設けられる。図示しないが、本体1の内部に設けられる蒸気発生装置は、金属製で中空の蒸発容器や、蒸発容器に装着されるシーズヒータなどの蒸発用ヒータや、給水カセット8からの水を蒸発容器内に導く給水ポンプなどを備え、蒸発容器内に連通して複数の蒸気噴出孔33を有している。これにより蒸気発生装置の動作中には、給水カセット8からの水を蒸発容器内に送り込んで所定の温度にまで加熱することで、蒸気噴出口33から調理室14の内部に飽和蒸気や過熱蒸気が供給され、調理室14内に入れられた被調理物Sのスチーム加熱を行なう構成となっている。
図5〜図13は、本体1の内部に配設される温度分布検出手段41とその周辺の構成を示したものである。これらの各図において、調理室14の右側壁14dには、四角錐台状の隆起部材42が調理室14内に向かう内方に膨出して設けられる。隆起部材42は、上段の棚支え22より上方にあって、右側壁14dの上部で前後の中央に設けられており、その傾斜した下面部に窓43が開口形成される。また、上下の棚支え22の間に位置して、右側壁14dの上下前後の中央には、窓43とは別の窓44が開口形成される。
図5に示すように、調理室14と本体1との間には、窓43を含む隆起部材42の外方に臨んで、第1センサ45やセンサモータ46が配設され、窓44に臨んで第2センサ48が配設される。また、センサモータ46や第2センサ48は、本体1の内部に取付け固定される一方で、第1センサ45はセンサモータ46の回動自在な回転軸49に取付けられる。
第1センサ45の駆動装置となるセンサモータ46は、ステッピングモータなどで構成され、本体1の内部で第1センサ45を前後方向に揺動させる回転軸49を備えている。第1センサ45は、回転軸49に取付け固定される中空状のセンサケース51と、センサケース51の内部に収納されるセンサ基板52と、センサ基板52の表面に搭載される複数個(例えば8個)の赤外線検出素子53と、この赤外線検出素子53に臨んでセンサケース51に取付け固定されるレンズ54と、を主な構成要素としている。
本実施形態では図5や図6に示すように、調理室14の上下方向に沿って、複数個の赤外線検出素子53が一直線上に並べて配置されており、図8や図10に示すように、各赤外線検出素子53の視野V1が、調理室14の右側壁14dの上部中央から窓43を通して、略矩形状をなす底壁14bの左右方向に並ぶようにしている。また、本実施形態では図9に示すように、後述する制御手段81(図14を参照)からのモータ駆動信号を受けて、センサモータ46がその回転軸49を正方向と逆方向に所定角度だけ往復回動すると、第1センサ45が揺動するのに伴い、調理室14の底壁14bに達する複数個の赤外線検出素子53の視野V1が、各赤外線検出素子53を中心として移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングするように、図5の一点鎖線で示す複数個の赤外線検出素子53を結ぶ直線と、回転軸49の回転中心軸線とを略一致させている。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓43を塞いでもよい。
一方、図5や図7に示すように、第2センサ48は、本体1の内部に取付け固定される中空状のセンサケース56と、センサケース56の内部に収納されるセンサ基板57と、センサ基板57の表面に搭載される1個の赤外線検出素子58と、この赤外線検出素子58に臨んでセンサケース56に取付け固定されるレンズ59と、を主な構成要素としている。そして図10に示すように、赤外線検出素子58の視野V2が、右側壁14dの上下前後の中央から窓44を通して、常に底壁14bの前後左右の中心に達するように、第2センサ48が本体1の内部に取付け固定される。なお、本体1内部への熱影響を低減するために、図示しない赤外線透過部材で窓44を塞いでもよい。
第1センサ45と第2センサ48は何れも赤外線センサで、本実施形態の温度分布検出手段41を構成する。ここでの温度分布検出手段41は、スイングする第1センサ45と、固定した第2センサ48とにより、調理室14内全体の温度分布を検出することで、そこに収容された被調理物Sが放射する赤外線の量から、被調理物Sの表面温度を短時間で検出するものである。
図11は、本実施形態における光報知手段71の概要を図示したものである。同図において、光報知手段71は、前述した第1センサ45の温度検出ポイントとなる視野V1に可視光Lを照射するものである。ここでは光報知手段71として、指向性に優れた可視光Lを出力するレーザーポインタ72を第1センサ45の近傍に配設するが、コスト削減のためにレーザーポインタ72よりも安価なLED装置を代わりに用いてもよい。
図11の(A)は、第1センサ45が上述した8個の赤外線検出素子53を備えたいわゆる「8眼センサ」の場合に、第1センサ45から調理室14内に向けての温度検出が可能な視野V1を示し、また図11の(B)は、第1センサ45が1個の赤外線検出素子53だけを備えたいわゆる「単眼センサ」場合に、第1センサ45から調理室14内に向けた温度検出が可能な視野V1を示している。またここでは、レンジ加熱の際に被調理物Sの置き位置の目安となるリング状の置き位置表示部74が、調理室14の底壁14bに印刷形成される。そして何れの場合も、レーザーポインタ72からの可視光(レーザー光)Lは、放射状に広がる視野V1の範囲内に照射される。
図12は、別な方向から第1センサ45と光報知手段71との位置関係を示したもので、光報知手段71としてのレーザーポインタ72は、調理室14外において第1センサ45の隣に配置される。レーザーポインタ72からの可視光Lは、調理室14の右側壁14dの上部中央から窓43を通して照射され、被加熱物Sを温度検出ポイントに置くための位置を可視光Lでお知らせするように、レーザーポインタ72が本体1の内部に取付け固定される。なお、レーザーポインタ72の使用温度は35℃以下のため、レーザーポインタ72への熱影響を低減するための構造を、本体1の内部に組み込むことが望ましい。
図13は、実際に容器となるご飯茶碗に食品となるご飯を入れた被調理物Sを、調理室14内で置き位置表示部74の略中心に置いた場合に、可視光Lがどのように照射されるのかを示したものである。ここでは、可視光Lの先端がご飯茶碗にではなく、ごはん茶碗に盛ったご飯の上表面に当たっていることがわかる。
本実施形態で注目すべきは、レーザーポインタ72からの可視光Lが置き位置表示部74の中心にではなく、その中心よりも上方に向けて照射される、ということである。つまり、図19の取扱説明書Mの下段に記載されるように、被調理物Sとして有底状の容器の内部に食品を入れた場合には、容器の高さに対して食品の量が少ないと、第1センサ45が食品の温度を正しく検知できず、レンジ加熱で上手にあたためることができない。そこで、レーザーポインタ72からの可視光Lを、あえて位置表示部74の中心よりも上方に向けて照射すれば、図中下段中央の「×」で示したように、容器の高さに対して食品の量が少ない場合は、レーザーポインタ72からの可視光Lが食品の表面に届かなくなる一方で、図中下段左側の「○」で示したように、容器の高さに対して食品の量が十分な場合は、レーザーポインタ72からの可視光Lが食品の表面に届いて、食品を明るく照らすことができる。これにより、容器に対する食品の高さを含めた被調理物Sの正しい置き位置を、光報知手段71となるレーザーポインタ72からの可視光Lでお知らせすることができ、食品に可視光Lが当たっていれば、レンジ加熱できちんと被調理物Sをあたためることが可能となる。
図14は、本実施形態のオーブンレンジの主な電気的構成を図示したものである。同図において、81はマイクロコンピュータにより構成される制御手段であり、この制御手段81は周知のように、演算処理手段としてのCPUや、記憶手段としてのメモリや、計時手段としてのタイマや、入出力デバイスなどを備えている。
制御手段81の入力ポートには、前述したキーやタッチパネルによる操作手段7や、温度分布検出手段41の他に、調理室14内の温度を検出するサーミスタ15を含んだ温度検出手段82と、熱風ファン28の回転速度を検出する熱風モータ回転検出手段83と、扉3の開閉状態を検出する扉開閉検出手段84と、前述した蒸気容器内の温度を検出するサーミスタなどの蒸気容器検出手段86が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段81の出力ポートには、前述した表示手段6や、被調理物Sの置く位置を可視光Lでお知らせする光報知手段71の他に、マグネトロンやその駆動手段を含むマイクロ波加熱手段88と、グリル加熱用の上ヒータ18や、オーブン加熱用の熱風ヒータ27や、スチーム加熱用の蒸発用ヒータをそれぞれ通断電させるリレーなどのヒータ駆動手段89と、熱風モータ29を回転駆動させるための熱風モータ駆動手段91と、センサモータ46を正逆回転駆動させるためのセンサモータ駆動手段92と、蒸気発生装置の給水ポンプを動作させるためのポンプ駆動手段93が、それぞれ電気的に接続される。
制御手段81は、操作手段7からの操作信号と、温度分布検出手段41や、温度検出手段82や、熱風モータ回転検出手段83や、扉開閉検出手段84や、蒸気容器検出手段86からの各検出信号を受けて、計時手段からの計時に基づく所定のタイミングで、光報知手段71と、マイクロ波加熱手段88と、ヒータ駆動手段89と、熱風モータ駆動手段91と、センサモータ駆動手段92と、ポンプ駆動手段93に駆動用の制御信号を出力し、また表示手段6に表示用の制御信号を出力する機能を有する。こうした機能は、記憶媒体としての前記メモリに記録したプログラムを、制御手段81が読み取ることで実現するが、特に本実施形態では、制御手段41を加熱調理制御部95と、表示報知制御部96として機能させるプログラムを備えている。
加熱調理制御部95は、主に被調理物Sの加熱調理に係る各部の動作を制御するもので、操作手段7の操作に伴う操作信号を受け取ると、扉開閉検出手段84からの検出信号により、扉3が閉じていると判断した場合に、その操作信号に応じて、マイクロ波加熱手段88や、ヒータ駆動手段89や、熱風モータ駆動手段91や、センサモータ駆動手段92や、ポンプ駆動手段93に制御信号を送出して、被調理物Sに対する種々の加熱調理を制御する。本実施形態では、加熱調理を実行するための被加熱物Sの材料および加熱条件を含む調理情報として、予め複数のメニューが前記メモリに記憶保持されており、加熱調理制御部95はその中から選択された一つのメニューについて、操作手段7から加熱調理を実行する操作が行われると、その選択されたメニューに従う所定の手順で、被調理物Sを自動的に加熱する自動調理機能を備えている。
こうした自動調理機能の中で、本実施形態では、例えば被調理物Sを温めたり、解凍したりする自動レンジのメニューを選択した場合に、マイクロ波発生装置19からのマイクロ波を調理室14の内部に放射しながら、調理時間やレンジ出力などを操作手段7からの操作入力無しに自動的に設定して、マイクロ波発生装置19を設定時間に達するまで設定出力で駆動制御し、調理室14に入れられた被調理物Sをレンジ加熱する自動レンジ調理制御部98を、加熱調理制御部95の中の一機能として備えている。特に本実施形態の自動レンジ調理制御部98は、被調理物をレンジ加熱する途中で、そのレンジ加熱を停止、もしくはレンジ加熱の出力をそれまでよりも低下させ、そこから被調理物の検出温度の変化を検知して、その検知結果によりレンジ加熱を再開、もしくはレンジ加熱の出力を上げるか否かを判定する判定手段としての機能を備えている。
表示報知制御部96は、加熱調理制御部95と連携して、表示手段6の表示に係る動作や光報知手段71の可視光Lによる報知に係る動作を制御するものである。表示報知制御部96の制御対象となる表示手段6は、液晶パネルや照明灯により構成されるが、それ以外の表示器を用いてもよい。
次に、上記構成のオーブンレンジについてその作用を説明すると、ハンドル4を手で握りながら扉3を開けると、扉開閉検出手段84からの検出信号を制御手段81が受けて、表示報知制御部96が調理室14内への可視光Lの照射を開始するように、光報知手段71に適切な制御信号を送出する。これにより、光報知手段71となるレーザーポインタ72が通電し、可視光Lを照射して被調理物Sの置き位置をお知らせする。
温度検出ポイントを示す可視光Lが被調理物S内の食品の位置に照射されるように、置き位置表示部74を目安として調理室14の底壁14bに被調理物Sを載置した後、ハンドル4を手で握りながら扉3を閉め、操作手段7により調理メニューを選択操作した後に調理開始を指示すると、制御手段81の記憶部に組み込まれた制御プログラムに従って、選択した調理メニューに対応して生成された制御信号が所定のタイミングで出力され、調理室14内の被調理物Sが加熱調理される。
ここで、上述した自動レンジを含むレンジ加熱の調理メニューを選択した場合、制御手段81は温度分布検出手段41や温度検出手段82からの各検出信号を受けて、被調理物Sが設定した温度に加熱されるように、マイクロ波加熱手段88とセンサモータ駆動手段92に適切な制御信号をそれぞれ送出する。これにより、マイクロ波発生装置19が通電動作して調理室14内にマイクロ波が供給放射され、底壁14bに置かれた被加熱物Sがレンジ加熱される。
このレンジ加熱調理時において、センサモータ46の回転軸49は、回転角度が0°の位置(図8に示すように、8個の赤外線検出素子53の視野V1が、調理室14の底壁14bの前後方向の中央に一列に並ぶ状態のとき。)から、時計回り方向(正方向)と反時計回り方向(逆方向)への回転を繰り返し行なう。その結果、本体1の内部で第1センサ45は揺動し、各赤外線検出素子54の視野V1は、図9に示すような移動方向X1に沿って扇状に繰り返しスイングする。このときセンサモータ46の回転軸49は所定の角度で間欠的に回転しており、制御手段81は回転軸49を所定の角度で回転させる毎に、各赤外線検出素子53からの検出信号を取り込んで、調理室14内に置かれた被調理物Sの温度を監視する。こうして各赤外線検出素子53は、実質的に調理室14の底壁14bのほぼ全域から赤外線を受光して、調理室14内に入れられた被調理物Sの温度を検出することが可能になる。
本実施形態では、調理室14の右側壁14dの上部において、第1センサ45が前後方向の後方にではなく中央に設けられており、被調理物Sを底壁14bの前後方向の中央付近、すなわち可視光Lにより示された温度検出ポイントに置いたときに、第1センサ45から被調理物Sまでの距離が近づいて、被調理物Sの温度をより正しく検出できる。特に本実施形態においては被加熱物Sを温度検出ポイントに置くための位置を可視光Lでお知らせするので、本実施形態のような位置に第1センサ45を設けるだけで、自ずと被調理物Sの温度検出精度を向上させることができる。
また本実施形態のセンサモータ46は、所定時間となる例えば5秒間を1周期として第1センサ45を揺動させ、その間に第1センサ45は、1つの赤外線検出素子53につき片道で64か所、往復で128か所の温度を検出する。つまり、8個の赤外線検出素子53を有する第1センサ45をスイングすることで、第1センサ45は1周期当り128×8=1024か所もの温度を測定でき、第1センサ45により広い調理室14の内部温度を広範囲に細かく隅々まで検出できる。
これとは別に、本実施形態では本体1に固定した第2センサ48により、図10に示すような赤外線検出素子58の視野V2に置かれた被調理物Sの温度を連続的に検出する。制御手段81は、少なくともモータ66の回転軸49が所定の角度で回転する毎に、若しくはそれよりも短い時間間隔で、単独の赤外線検出素子58からの検出信号を取り込んで、調理室14内の中央部付近における被調理物Sの温度を監視する。
こうして本実施形態では、8個の赤外線検出素子53を有する第1センサ45からの各検出信号により、調理室14内の温度を広範囲に細かく隅々まで検出すると共に、1個の赤外線検出素子58を有する第2センサ48からの検出信号により、調理室14内の中央部付近の温度を、連続的に検出することが可能になる。制御手段81はこれらの検出信号を受けて、被調理物Sに対して所望のレンジ加熱調理が行われるように、マイクロ波発生装置19の動作を制御する。また異常監視の機能として、被調理物Sの検出温度が通常の範囲を超えている場合は、機器に異常が発生したと判断して、マイクロ波発生装置19への通電を強制的に停止する。何れの場合も、第1センサ45と第2センサ48との併用で、被調理物Sの温度を瞬時に判断することで、結果的に加熱調理の制御や異常監視を正確に行なうことが可能になる。
次に、上述したレンジ加熱の中で、特に自動レンジ調理制御部98による自動レンジの調理メニューについて、その動作を詳しく説明する。操作手段7により被調理物Sをあたためる自動レンジの調理メニューを選択して、調理の開始を指示すると、自動レンジ調理制御部98は、調理室14に入れられた被加熱物Sのレンジ加熱中に、可動する第1センサ45と固定した第2センサ48からの各検出信号に加えて、温度センサ15からの検出信号を取り込んで、被調理物Sの温度となる食材温度を測定し、被調理物Sの種類や量に拘らず、その測定した食材温度が常温よりも高い適切な設定温度に加熱されるように、マイクロ波発生装置19の動作を制御する。
特に本実施形態では、操作手段7を1回押す自動レンジの調理メニューで、被調理物Sのあたため不足やあたため過ぎが生じたり、食材や量によってあたため具合が違ったりする潜在的なユーザの不満を解消するために、2種類の赤外線センサである第1センサ45および第2センサ48と、温度検出手段82を構成する温度センサ15とを併用している。第1センサ45および第2センサ48は被調理物Sの表面温度を検知しており、上述したように第1センサ45はスイングして広範囲を検知し、第2センサ48はある一点を連続して検知している。しかし赤外線センサは、70℃付近より蒸気による乱反射で精度が落ちてしまうという特徴がある。また、サーミスタ15である温度検出手段82は被調理物Sから発生する蒸気により、調理室14の庫内温度を検知している。そのため、蒸気が発生するまでは温度の立ち上がりが遅いという特徴がある。本実施形態では、これらのセンサ15,45,48を併用したトリプルセンサで、自動レンジ調理制御部98がマイクロ波発生装置19の動作を制御することで、被調理物Sを自動であたためるレンジ加熱性能の大幅な改善を図っている。これにより、食材や量に拘らず、操作手段7を1回押す自動レンジの調理メニューで、被調理物をばらつきなく適切な温度にあたためることが可能となる。
図15〜図17は、レンジ加熱中の各センサ15,45,48の温度計測結果をグラフで示したものである。これらの各図に共通して、実線は第1センサ45の各赤外線検出素子53による検出温度(「8眼赤外線」)を示し、一点鎖線は第2センサ48の各赤外線検出素子58による検出温度(「単眼赤外線」)を示し、破線は温度検出手段82のサーミスタ15における電圧値(「OVTH」)の経時変化を示している。
図15は、被調理物Sとして冷凍ハンバーグ4個を、自動レンジの調理メニューで加熱したときの温度計測結果を示している。ここでは上述したトリプルセンサで、自動レンジの加熱中に被調理物Sから蒸気が発生するまでは、第1センサ45と第2センサ48からの検出信号を取り込んで、そこから被調理物Sの温度を測定する一方で、被調理物Sから蒸気が発生したら、温度センサ15からの検出信号を取り込んで、そこから被調理物Sの温度を測定するように自動レンジ調理制御部98を構成しており、被調理物Sの温度をより正確に測定して、被調理物Sを所望の適切な温度にあたためることが可能となっている。
また、こうしたレンジ加熱中に第1センサ45からの検出信号を取り込んで、そこから被調理物Sの温度を測定し、被調理物Sの検出温度が設定した温度T1になったとき、自動レンジ調理制御部98がマイクロ波の出力を一旦停止するように、マイクロ波発生装置19の動作を制御するように構成されている。ここで、自動レンジ調理制御部98はマイクロ波の出力を一旦それまでよりも低下すなわち落とすようにマイクロ波発生装置19の動作を制御してもよい。
その後、第1センサ45からの検出信号を取り込んで被調理物Sの温度の変化を測定する。本実施形態では加熱を停止してから、第1の時間t1が経過した後も第1センサ45による被調理物Sの検出温度は第1の温度にまで低下しないので、自動レンジ調理制御部98は被加熱物Sが中まで温まっていると判断し、マイクロ波発生装置19の動作を再開させない。これにより、被調理物Sに対する不必要な加熱を回避して、あたため過ぎを防ぐことが可能になる。
図16は、被調理物Sとして冷蔵しゅうまい300グラムを、自動レンジの調理メニューで加熱したときの温度計測結果を示している。ここでも、上述したように第1センサ45からの検出信号を取り込んで、そこから被調理物Sの温度を測定し、被調理物Sの検出温度が第1の温度T1になったときに、自動レンジ調理制御部98がマイクロ波の出力を一旦停止するようにマイクロ波発生装置19の動作を制御する。
その後、第1センサ45からの検出信号を取り込んで被調理物Sの温度の変化を測定するが、ここでは加熱を停止してから第1の時間t1が経過した後に、第1センサ45による被調理物Sの検出温度が第1の温度以下に低下している。この場合、自動レンジ調理制御部98は被加熱物Sの表面が先に温まって、中はまだ冷たいと判断し、第1の時間t1が経過した時点でマイクロ波発生装置19の動作を再開させて、被調理物Sを適切な温度に加熱するように制御する。これにより、被調理物Sの内部が冷たい状態でレンジ加熱が終了する早切れを防止できる。
図17は、被調理物Sとして冷蔵塩鮭5切れを、自動レンジの調理メニューで加熱したときの温度計測結果を示している。ここでも、第1センサ45からの検出信号を取り込んで、そこから被調理物Sの温度を測定し、被調理物Sの検出温度が温度T1になったとき、自動レンジ調理制御部98がマイクロ波の出力を一旦停止するようにマイクロ波発生装置19の動作を制御する。
その後、第1センサ45からの検出信号を取り込んで被調理物Sの温度の変化を測定するが、ここでは加熱を停止してから第1の時間t1が経過する前に、被調理物Sの検出温度の最大値Tmaxを基準として、そこから被調理物Sの検出温度が第2の温度T2にまで極端に低下している。この場合、自動レンジ調理制御部98は被加熱物Sの表面が極端に先に温まって、中はまだ冷たいと判断し、被調理物Sの検出温度がその最大値Tmaxから所定の温度にまで低下した第2の温度T2になった時点で、マイクロ波発生装置19の動作を直ちに再開させて、被調理物Sを適切な温度に加熱するように制御する。これにより、前述の早切れを防止すると共に、被調理物Sの表面と内部の温度差が大きいほど、素早くレンジ加熱を再開させることが可能になる。
なお、上述した自動レンジ調理制御部98が被調理物Sをレンジ加熱の途中でレンジ加熱を停止、もしくはレンジ加熱の出力を落とす条件は、例えばサーミスタ15や第2センサ48からの検出信号を加味してもよく、また所定の温度勾配となった時点としてもよい。また、レンジ加熱を停止、もしくはレンジ加熱の出力を落した後、第1センサ45からの検出信号を取り込んで被調理物Sの温度の変化を測定する際に、サーミスタ15や第2センサ48からの検出信号を取り込んで参照してもよい。例えば、サーミスタ15による検出温度が所定温度に上昇しなければ、被調理物Sからの蒸気発生は殆どないと判断できる。
以上のように、本実施形態の加熱調理器としてのオーブンレンジは、マイクロ波発生手段としてのマイクロ波発生装置19からのマイクロ波を調理室14の内部に放射することで、調理室14に入れられた被調理物Sをレンジ加熱するものであって、ここでは特に、マイクロ波発生装置19を制御する制御手段81と、調理室14内の温度分布を検出する赤外線センサとしての第1センサ45や第2センサ48による温度分布検出手段41とを備え、制御手段81は、温度分布検出手段41からの検出信号に基づいて被調理物Sの温度となる検出温度を算出し、制御手段81はさらに、被調理物Sをレンジ加熱する途中で、検出温度が所定の第1の温度T1になったときに、レンジ加熱を停止、もしくはレンジ加熱の出力をそれまでよりも落とすようにマイクロ波発生装置19を制御し、そこから被調理物Sの検出温度の変化を検知して、その検知結果に応じてマイクロ波発生装置19によるレンジ加熱を再開、もしくはレンジ加熱の出力を上げるように制御する判定手段としての自動レンジ調理制御部98を備えている。
このように構成することにより、制御手段81が被調理物Sに対するレンジ加熱を行なう途中で、一旦そのレンジ加熱を停止またはレンジ加熱の出力を低下させ、そこから被調理物Sの検出温度がどのように変化するのかを、温度分布検出手段41からの検出信号により検知することで、被調理物Sの内部がまだ冷たいか否かを判定できる。これを利用して、被調理物Sの内部がまだ冷たいと判定した場合には、レンジ加熱を再開、もしくはレンジ加熱の出力を上げることで、どのような被調理物Sであっても、予めパラメータの入力を行なうことなく、被調理物Sの内部が温かい状態となるまで被調理物をレンジ加熱することが可能となり、自動レンジの調理メニューで、被調理物Sのあたため不足やあたため過ぎが生じたり、食材や量によってあたため具合が違ったりするということを防止できる。
また本実施形態では、マイクロ波発生装置19からのマイクロ波を調理室14の内部に放射することで、調理室14に入れられた被調理物Sをレンジ加熱する加熱調理器において、調理室14内の温度分布を検出する第1センサ45や第2センサ48による温度分布検出手段41と、第1センサ45や第2センサ48により調理室14内の温度分布を検出する温度検出ポイントに可視光Lを照射する光報知手段71とを備えた構成としている。
このように構成することにより、第1センサ45や第2センサ48による温度検出ポイントが、光報知手段71から調理室14内に照射される可視光Lで可視化されるので、その光を手掛かりとして、目に見えない温度検出ポイントに被調理物を確実に置くことが可能となり、第1センサ45や第2センサ48により確実に温度分布を検出することができる。
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更可能である。例えば本実施形態では、レーザーポインタ72を第1センサ45の隣に配設しているが、第1センサ45と一体に配設してもよく、第2センサ48の隣若しくは一体に配設してもよい。さらに、レーザーポインタ72などの光報知手段71は、本実施形態のものに限定されず、適宜変更が可能である。