JP2018083993A - 抗菌性繊維、その製造方法及び抗菌性繊維を用いた製品 - Google Patents
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Description
本発明は前記従来の問題を解決するため、抗菌性が高く、耐洗濯性も高い抗菌性繊維、その製造方法及び抗菌性繊維を用いた製品を提供する。
本発明の抗菌性繊維の別の製造方法は、繊維シートに希土類硝酸塩水溶液をパッド−ドライ−キュア法により、繊維内に希土類硝酸塩を吸尽させ、抗菌性を付与することを特徴とする。
JIS L1902による菌液吸収法において、接触直後の生菌数の常用対数値(P)と、18時間培養後の生菌数の常用対数値(Q)で比較した。この試験は、一般社団法人カケンテストセンター、及び一般社団法人ボーケン品質評価機構に依頼した。
<抗菌活性値(A値)>
同、「標準布18時間後の菌数の常用対数値」−「抗菌加工布の18時間後の菌数の常用対数値」で算出した。
<増殖値(F値)>
同、「標準布18時間後の菌数の常用対数値」−「標準布接種直後の菌数の常用対数値」で算出した。
<殺菌活性値>
同、「標準布接種直後の菌数の常用対数値」−「抗菌加工布の18時間後の菌数の常用対数値」で算出した。なお、JISの改定により2015年7月より「殺菌活性値」という表記はなくなったが、従来品と比較するのに都合がよいため使用した。「殺菌活性値」は接種直後よりも菌数が減っている(殺菌されている)ことを示す。
<生地pH>
JIS L1096に従って測定した。すなわち、ガラスフラスコに50mlの蒸留水を入れて2分間沸騰した後、細かく切った生地の試験片5.0gを投入し、栓をして30分間放置した。30分後、抽出液を25℃±2℃に調整し、pHメーターで抽出液のpHを測定した。この試験は硝酸セリウムが強酸性なので、生地が酸性になってその原因で抗菌効果が出ているのではないかという推定をされないためである。加えて、人体に対する安全性も考慮に入れたものである。
<洗濯方法>
実施例中で条件を記載していない洗濯は、JIS L1096に規定されている103法の温度40℃、強洗いの条件で実施した。
防縮加工していないウール織物生地100%品を60g採取し、硝酸セリウム(III)水溶液5%o.w.f(pH調整なし)の中に浸漬し、大気圧下、温度98℃で40分間吸尽処理した。使用した硝酸セリウム(III)水溶液の濃度は酸化セリウム換算で239g/Lである。希土類塩類を使用する場合、酸化セリウムに濃度換算にするのが慣例であるのでその慣例に従った。以下の実施例及び比較例に使用した硝酸セリウム(III)水溶液の濃度は実施例1と同じものである。吸尽処理は、染色機中で浴比1:20の条件で実施した。その後水洗し、風乾した。得られた生地試料の条件と結果は表1〜2にまとめて示す。図1は実施例1の硝酸セリウム処理ウール表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真(倍率3000)である。表面に粒子などは見られず、繊維内に吸着されていることがわかる。
硝酸セリウム(III)を添加しない以外は実施例1と同様に実験した。図2は比較例1のウール表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真(倍率3000)である。
硝酸セリウム(III)水溶液5%o.w.fに替えて酸化セリウムゾル10%o.w.fを使用した以外は実施例1と同様に実験した。使用した酸化セリウムゾルの濃度は9.11%である。
クロイ加工による防縮加工したウール織物生地100%品を60g採取し、酢酸と酢酸ソーダでpH=5.0に調整した緩衝液に、硝酸セリウム(III)水溶液5%o.w.f(pH調整なし)を添加し、pHを4.3に調整した中に浸漬し、大気圧下、温度65℃で40分間吸尽処理した。その後水洗し、風乾した。前記クロイ加工は、塩素ガス又は塩素化合物をウールに付与するもので、ウールの防縮加工として一般的に行われている方法である。
硝酸セリウム(III)の吸尽条件を温度98℃、40分間とした以外は実施例2と同様に実験した。
クロイ加工による防縮加工したウール織物生地100%品を60g採取し、硝酸セリウム(IV)水溶液5%o.w.f(pH調整なし)の中に浸漬し、大気圧下、温度98℃で40分間吸尽処理した。その後水洗し、風乾した。使用した硝酸セリウム(IV)水溶液の濃度は酸化セリウム換算で200g/Lである。
硝酸セリウムを添加しない以外は実施例2と同様に実験した。
硝酸セリウムに替えて酸化セリウムゾル10%o.w.fを使用し、温度98℃、40分間とした以外は実施例4と同様に実験した。
以上の条件と結果を表1〜2にまとめて示す。
コットン紡績糸100%使いの生地を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
シルク100%使いの生地を使用した以外は実施例1と同様に実施した。
ポリエステル(PET)紡績糸100%使いの生地を使用し、硝酸セリウム(III)溶液10 %sol.をパドードライーキュア法で生地に接触させた以外は実施例1と同様に実施した。"%sol."は溶液濃度のsolutionの略である。
以上の条件と結果を表3〜4にまとめて示す。
硝酸ランタンを使用した以外は実施例1と同様に実施した。結果を表5〜6に示す。
硝酸ガドリニウムを使用した以外は実施例1と同様に実施した。結果を表5〜6に示す。
実施例2で得られた硝酸セリウム(III)を吸尽したウール生地を圧縮成形して抗菌試験をした。この圧縮成形物は、ウール生地を金型に入れ、温度150℃、圧力32MPaで3分間圧縮して圧縮成形物としたものである。この圧縮成形物は、図3に示すように長さ40mm、幅25mm、厚さ2mmの板状であり、見かけ上は透明であった。この圧縮成形物を破壊したところ、ウールに起因する繊維状フィブリルが観察された。またこの成形物の見掛け密度は1.30g/mm3であった。ウール繊維の密度は1.32g/mm3(文献値)であることから、この成形物の見掛け密度はウール繊維の密度の0.98倍であり、高密度に圧縮成形されていた。抗菌試験は、プラスチックの抗菌方法であるJIS Z 2801による抗菌試験方法をカケンテストセンターで実施した。抗菌試験の結果を表7に示す。なお、ウール生地を圧縮成形物したものについては繊維製品ではないため、一般社団法人抗菌製品技術協議会(SIAA:Society of Industrial technology for Antimicrobial Articles)に規定された方法に従い評価を行った。SIAAでは、抗菌活性値2.0以上あることが抗菌性能ありの規定となっている。
比較として無処理のポリエチレンフィルムを用いた。抗菌試験の結果を表7に示す。
Claims (11)
- 抗菌性繊維であって、
繊維に希土類硝酸塩が吸尽されており、抗菌性を有することを特徴とする抗菌性繊維。 - 前記抗菌性は、JIS L1902による菌液吸収法において、洗濯10回以上後の抗菌活性値が2.2以上、かつ標準布接触直後の菌数以下の抗菌性である請求項1に記載の抗菌性繊維。
- 前記希土類硝酸塩は、硝酸セリウム(III)、硝酸セリウム(IV)、硝酸ランタン及び硝酸ガドリニウムから選ばれる少なくとも一つである請求項1又は2に記載の抗菌性繊維。
- 前記抗菌性は、JIS L1902による菌液吸収法において、接触直後の生菌数の常用対数値に比べて18時間培養後の生菌数の常用対数値が1.5倍以下である請求項1〜3のいずれかに記載の抗菌性繊維。
- 前記抗菌性繊維を含む生地は、洗濯50回後においても抗菌性を有する請求項1〜4のいずれかに記載の抗菌性繊維。
- 前記抗菌性繊維は、ウール、シルク、コットン、ポリエステル、ナイロン、アクリル、レーヨン、キュプラ及びアセテートから選ばれる少なくとも一つの繊維である請求項1〜5のいずれかに記載の抗菌性繊維。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌性繊維の製造方法であって、
希土類硝酸塩水溶液に繊維を含浸又は接触させ、60〜130℃の温度で繊維内に希土類硝酸塩を吸尽させ、抗菌性を付与することを特徴とする抗菌性繊維の製造方法。 - 請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌性繊維の製造方法であって、
繊維シートに希土類硝酸塩水溶液をパッド−ドライ−キュア法により、繊維内に希土類硝酸塩を吸尽させ、抗菌性を付与することを特徴とする抗菌性繊維の製造方法。 - 前記吸尽処理における希土類硝酸塩濃度は1〜10%o.w.f(on the weight of fiber)であり、前記パッド−ドライ−キュア法における希土類硝酸塩濃度は1〜10%sol.である請求項7又は8に記載の抗菌性繊維の製造方法。
- 前記希土類硝酸塩水溶液に繊維を含浸又は接触させるときのpHは、4.5以下の酸性条件である請求項7〜9のいずれかに記載の抗菌性繊維の製造方法。
- 請求項1〜6のいずれかに記載の抗菌性繊維を用いた製品であって、
前記製品は、綿、糸、組紐、織物、編物、不織布及び成形物から選ばれる少なくとも一つであることを特徴とする抗菌性繊維を用いた製品。
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