A.第1実施例:
図1は、一実施例としての複合機200を示す説明図である。複合機200は、制御装置202と、スキャナ部280と、印刷部290と、を有している。制御装置202は、プロセッサ210と、揮発性記憶装置220と、不揮発性記憶装置230と、画像を表示する表示部240と、ユーザによる操作を受け入れる操作部250と、通信インタフェース270と、を有している。これらの要素は、バスを介して互いに接続されている。
プロセッサ210は、データ処理を行う装置であり、例えば、CPUである。揮発性記憶装置220は、例えば、DRAMであり、不揮発性記憶装置230は、例えば、フラッシュメモリである。不揮発性記憶装置230は、プログラム232を格納している。プロセッサ210は、プログラム232を実行することによって、スキャナ部280によって光学的に読み取られた画像を、印刷部290に印刷させるコピー処理を実行する(詳細は、後述)。プロセッサ210は、プログラム232の実行に利用される種々の中間データを、記憶装置(例えば、揮発性記憶装置220、不揮発性記憶装置230のいずれか)に、一時的に格納する。本実施例では、プログラム232は、例えば、複合機200の製造者によって、ファームウェアとして、不揮発性記憶装置230に予め格納されている。ただし、プログラム232の少なくとも一部が、外部の装置(例えば、サーバ)から取得されて不揮発性記憶装置230に格納されるように、複合機200が構成されていてもよい。
表示部240は、画像を表示する装置であり、例えば、液晶ディスプレイである。操作部250は、ユーザによる操作を受け取る装置であり、例えば、表示部240上に重ねて配置されたタッチパネルである。ユーザは、操作部250を操作することによって、種々の指示を複合機200に入力可能である。
インタフェース270は、他の装置と通信するためのインタフェースである(例えば、USBインタフェース、有線LANインタフェース、IEEE802.11の無線インタフェース)。
スキャナ部280は、CCDやCMOSなどの光電変換素子を用いて光学的に文書等の対象物を読み取ることによって、読み取った画像(「スキャン画像」と呼ぶ)を表すスキャンデータを生成する。スキャンデータのデータ形式は、任意の形式であってよい。本実施例では、スキャンデータのデータ形式は、RGB色空間で表されたビットマップ形式である。以下、RGBの各色成分は、ゼロから255までの256階調で表されることとする。
印刷部290は、印刷を実行する印刷実行部の例である。印刷部290は、所定の方式(例えば、レーザ方式や、インクジェット方式)で、用紙(被記録媒体の一例)上に画像を印刷する装置である。本実施例では、印刷部290は、シアンC、マゼンタM、イエロY、ブラックKの4種類のインクを用いてカラー画像を印刷可能なインクジェット方式の印刷装置である。印刷部290は、印刷ヘッド291と、搬送機構293と、走査機構294と、制御部295と、を有している。印刷ヘッド291は、色材(ここでは、インク滴)を吐出して用紙上にドットを形成するための複数のノズル292を有している。搬送機構293は、用紙を所定の搬送方向に搬送する装置である。走査機構294は、印刷ヘッド291を搬送方向に交差する所定の走査方向に移動させる装置である。印刷ヘッド291は、色材毎に、搬送方向の位置が互いに異なる複数のノズル292を有している。制御部295は、印刷ヘッド291と搬送機構293と走査機構294とを制御する装置である。制御部295は、例えば、専用の電気回路(例えば、ASIC(Application Specific Integrated Circuit))で構成されている。制御部295による制御の詳細については、後述する。
図2は、コピー処理の例を示すフローチャートである。このコピー処理は、例えば、ユーザが操作部250を操作することによってコピー指示を入力したことに応じて、プロセッサ210によって開始される。
本実施例では、複合機200は、コピー処理として、通常のコピー処理と、識別カードをコピーするためのコピー処理(IDコピーとも呼ぶ)と、を含む複数種類のコピー処理を実行可能である。S100では、ユーザは、操作部250を操作することによって、IDコピーを選択する。以下、IDコピーについて説明し、通常のコピー処理については、説明を省略する。
S110では、プロセッサ210は、スキャナ部280を制御することによって、識別カードの一方の面を光学的に読み取ることによって生成される第1スキャンデータと、識別カードの他方の面を光学的に読み取ることによって生成される第2スキャンデータと、を取得する。そして、プロセッサ210は、これらのスキャンデータを用いて、識別カードの一方の面を表す画像と他方の面を表す画像とを含む合成画像を表す合成データを生成する(詳細は、後述)。S120では、プロセッサ210は、印刷部290を制御することによって、合成画像を印刷する(詳細は、後述)。そして、図2の処理が終了する。
図3、図4は、図2のS110の読み取り処理の例を示すフローチャートである。図4は、図3の続きの処理を示している。図3のS200では、原稿の例である識別カードの一方の面が、スキャナ部280によって読み取られる。例えば、ユーザは、スキャナ部280の図示しない原稿台上に識別カードを載せ、そして、操作部250を操作して読み取り開始の指示を入力する。プロセッサ210は、指示に応じて、スキャナ部280を制御し、スキャナ部280に識別カードを読み取らせる。スキャナ部280は、読み取った識別カードを表す第1原稿画像を含む第1スキャン画像を表す第1スキャンデータを生成する。プロセッサ210は、スキャナ部280から、第1スキャンデータを取得する。
図5(A)、図5(B)は、識別カード300の例を示す説明図である。図5(A)は、識別カード300の表面310を示し、図5(B)は、識別カード300の裏面320を示している。識別カード300の形状は、略矩形状である(識別カード300の角は、丸められてもよく、また、切り落とされてもよい)。図5(A)に示すように、表面310は、顔の写真311と、文字列312、313と、を表している。また、図5(B)に示すように、裏面320は、文字列321、322を表している。このように、通常は、顔の画像は、識別カード300の一方の面のみに、含まれる。なお、各図中の上方向U1、U2は、各面310、320における上方向を示している。
図5(C)は、第1スキャン画像の例を示す説明図である。図5(C)の例では、第1スキャン画像410は、識別カード300を表す第1原稿画像415と、第1原稿画像415の周囲の余白部分418と、を含んでいる。本実施例では、スキャン画像は、第1方向Daに平行な2辺と、第1方向Daに垂直な第2方向Dbに平行な2辺と、によって囲まれる矩形状の画像である。また、本実施例では、スキャナ部280は、予め決められたサイズ(例えば、A4サイズ)の原稿を読み取ることが可能である。識別カード300は、このサイズよりも小さい。従って、第1原稿画像415の周囲に余白が生じる。余白部分418は、例えば、スキャナ部280の原稿台のカバーの原稿側の部分の色(例えば、白色)で表される。以下、余白部分418を、第1原稿外画像418とも呼ぶ。第1原稿画像415は、識別カード300の表面310と裏面320とのうちのいずれかの面を表している。以下、第1原稿画像415が、表面310を表すこととして、説明を行う。
図3のS205では、プロセッサ210は、第1スキャンデータを解析することによって、第1スキャン画像410(図5(C))中の第1原稿画像415を表す第1矩形領域500を特定する。第1矩形領域500を特定する方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、プロセッサ210は、第1スキャン画像410から、余白部分418の色を表す予め決められた色範囲(例えば、白を含む一部の色の範囲)とは異なる色で表された連続な領域を、特定する(以下、特定された1以上の領域のそれぞれを、候補領域と呼ぶ)。そして、プロセッサ210は、特定された1以上の候補領域のうち、最大面積(すなわち、最大画素数)の候補領域を、第1矩形領域500として採用する。最大の候補領域は、識別カード300を表す領域であり、略矩形状の領域である。この略矩形状の候補領域の縁のうち角部分を除いた残りの四辺の部分が、第1矩形領域500の縁の四辺として用いられる。このように、第1矩形領域500は、識別カード300を表す候補領域を包含する最小の矩形領域である。
なお、識別カード300を表す候補領域は、第1スキャン画像410に対して傾いている場合がある。この場合、特定される第1矩形領域500も、第1スキャン画像410に対して傾いている。プロセッサ210は、後述する処理で第1矩形領域500の傾いていない画像(すなわち、識別カード300の傾いていない画像)を利用するために、第1矩形領域500の傾き補正を行う。傾き補正の方法としては、種々の方法を採用可能である。例えば、プロセッサ210は、第1矩形領域500の4辺のうち、平行な2辺が、第1スキャン画像410の第1方向Daに平行であり、残りの平行な2辺が、第2方向Dbに平行となるように、第1矩形領域500の画像を回転させる。
図3のS210では、プロセッサ210は、第1矩形領域500の顔認識処理を実行する。顔認識処理は、画像中の顔を認識する処理である。S210では、第1スキャンデータに傾き補正を行って得られる画像データが、用いられる。このような顔認識処理は、第1スキャンデータを用いて行われている、と言うことができる。顔認識処理としては、公知の種々の処理を採用可能である。例えば、所定の器官画像(例えば、目や口を表す画像)を用いたパターンマッチングによって、顔を表す領域を検出する処理を採用可能である。
S215では、プロセッサ210は、S210の顔認識処理によって顔が検出されたか否かを判断する。第1矩形領域500から顔が検出されるか否かを判断することは、第1矩形領域500に顔が含まれるか否かを判断することと、同じである。
第1矩形領域500に顔が含まれると判断された場合(S215:Yes)、S220で、プロセッサ210は、顔認識処理の結果に応じて、第1矩形領域500の画像の向きを特定する。顔認識処理では、顔の目や口などの器官の配置、すなわち、顔の向きが特定される。プロセッサ210は、顔の上方向を、第1矩形領域500の画像の上方向501(図5(C))として、特定する。特定された上方向501は、第1矩形領域500によって表される識別カード300の上方向(例えば、表面310(図5(A))の上方向U1)と、同じである。
S225では、プロセッサ210は、顔を含むと判断された第1矩形領域500の画像の向きが、印刷用の合成画像の後述する第1基準方向になるように、第1矩形領域500の画像を回転させる。
図6は、合成画像の説明図である。図6(A)には、用紙700と、画像が印刷され得る領域である印刷領域800と、が示されている。用紙700としては、識別カード300と比べて十分に大きい、予め決められたサイズ(例えば、A4サイズ)の用紙が用いられることとする。
本実施例では、印刷部290は、いわゆる縁無し印刷を実行可能である。縁無し印刷は、用紙700の全体に画像を印刷可能である。そして、IDコピーでは、縁無し印刷によって、合成画像が印刷される。図示するように、印刷領域800の形状と大きさとは、用紙700の形状と大きさと同じである。図中には、印刷領域800(すなわち、用紙700)の上方向DUと右方向DRと下方向DDと左方向DLとが示されている。印刷領域800と用紙700との形状は、右方向DRに平行な2辺と、下方向DDに平行な2辺と、によって囲まれる矩形状である。
図6(A)に示すように、印刷領域800の内には、主割付領域810と、副割付領域820と、が配置されている。主割付領域810は、識別カード300のうちの顔を含む面の画像が割り付けられる領域であり、副割付領域820は、識別カード300の反対側の面の画像が割り付けられる領域である。これらの割付領域810、820の形状と大きさとは、図3のS205で特定された第1矩形領域500の形状と大きさに、調整される。
主割付領域810は、右方向DRに平行な2辺と、上方向DUに平行な2辺とで囲まれた矩形状の領域である。主割付領域810に示された上方向810uは、主割付領域810に割り付けられる画像の上方向を示している(第1基準方向810uとも呼ぶ)。主割付領域810の上方向810uは、印刷領域800の上方向DUと同じである。主割付領域810は、主割付領域810の上方向810uを基準とする左上の角811が、印刷領域800の左上の角805に位置されるように、配置されている。印刷領域800の左上の角805は、用紙700の左上の角705に対応付けられた角であり、具体的には、用紙700の左上の角705に最も近い角である。以下、主割付領域810を、角領域810とも呼ぶ。
副割付領域820は、右方向DRに平行な2辺と、上方向DUに平行な2辺とで囲まれた矩形状の領域である。副割付領域820は、主割付領域810の下方向DD側(すなわち、主割付領域810よりも用紙700の内側)に配置されている。以下、副割付領域820を、内領域820とも呼ぶ。副割付領域820に示された上方向820uは、副割付領域820に割り付けられる画像の上方向を示している(第2基準方向820uとも呼ぶ)。副割付領域820の上方向820uは、主割付領域810の上方向810uとは反対の方向である。副割付領域820の上方向820uを基準とする下辺827は、主割付領域810の上方向810uを基準とする下辺817に、接している。割付領域810、820の配置と方向810u、820uとは、予め決められている。
図3のS225では、プロセッサ210は、顔を含むと判断された第1矩形領域500(図5(C))の画像を、第1矩形領域500の上向きが第1基準方向810u(図6(A))になるように、回転させる。S230では、プロセッサ210は、回転済の第1矩形領域500の画像を、主割付領域810に割り付ける。そして、処理は、図4のS300へ移行する。
図6(B)は、合成画像490の例を示している。合成画像490は、主割付領域810に割り付けられた画像と、副割付領域820に割り付けられた画像と、を含んでいる。図6(B)の例では、主割付領域810に、第1矩形領域500(図5(C))の画像(第1原稿画像415を含む)が割り付けられている。第1矩形領域500の左上の角511が、主割付領域810の左上の角811に、配置されている。本実施例では、主割付領域810の左上の角811は、印刷領域800(図6(A))の左上の角805(ここでは、用紙700(図6(A))の左上の角705と同じ)に、配置されている。
図4のS300では、識別カードの他方の面が、スキャナ部280によって読み取られる。この処理は、図3のS200と同様に、行われる。ここで、ユーザは、原稿台上に識別カードの反対側の面を載せ、そして、操作部250を操作して読み取り開始の指示を入力する。スキャナ部280は、読み取った識別カードを表す第2原稿画像を含む第2スキャン画像を表す第2スキャンデータを生成する。プロセッサ210は、スキャナ部280から、第2スキャンデータを取得する。
図5(D)は、第2スキャンデータによって表される第2スキャン画像420の例を示す説明図である。第2スキャン画像420も、第1スキャン画像410(図5(C))と同様に、識別カード300を表す第2原稿画像425と、第2原稿画像425の周囲の余白部分428と、を含んでいる(以下、余白部分428を、第2原稿外画像428とも呼ぶ)。第2原稿画像425は、識別カード300の表面310と裏面320とのうち、第1原稿画像415(図3(C))によって表される面とは反対側の面を表している。
図4のS305では、プロセッサ210は、第2スキャンデータを解析することによって、第2スキャン画像420(図5(D))中の第2原稿画像425を表す第2矩形領域600を特定する。第2矩形領域600の特定方法は、第1矩形領域500の特定方法と同じである。また、プロセッサ210は、第2矩形領域600の傾き補正を行う。
図4のS310では、プロセッサ210は、第2矩形領域600の文字認識処理を実行する。文字認識処理は、画像中の文字を認識する処理である。S310では、第2スキャンデータに傾き補正を行って得られる画像データが、用いられる。このような文字認識処理は、第2スキャンデータを用いて行われている、と言うことができる。文字認識処理としては、公知の種々の処理を採用可能である。例えば、所定の文字画像を用いたパターンマッチングによって、文字を検出する処理を採用可能である。
S315では、プロセッサ210は、文字認識処理の結果に応じて、第2矩形領域600の向きを特定する。プロセッサ210は、文字認識処理によって特定された文字の上方向を、第2矩形領域600の上方向601(図5(D))として、特定する。例えば、プロセッサ210は、第1方向Da(図5(D))と、第2方向Dbと、第1方向Daに反対の方向と、第2方向Dbに反対の方向と、の4つの方向のそれぞれに関して、その方向を上方向と仮定して文字認識処理を実行する。そして、プロセッサ210は、認識された文字数の最も多い方向を、文字の上方向として採用する。第2矩形領域600から特定される上方向601は、第2矩形領域600によって表される識別カード300の上方向(例えば、裏面320(図5(B))の上方向U2)と、同じである。
図4のS320では、プロセッサ210は、図3のS210で第1矩形領域500から顔が検出されたか否かを判断する。本実施例では、プロセッサ210は、第1矩形領域500から顔が検出されなかった場合、第2矩形領域600が顔を含むと判断する。以下、第1矩形領域500と第2矩形領域600とのうち、顔を含むと判断された矩形領域を、主矩形領域と呼ぶ。そして、矩形領域500、600のうち、主矩形領域とは異なる矩形領域を、副矩形領域と呼ぶ。図5(C)、図5(D)の例では、第1矩形領域500が、主矩形領域であり、第2矩形領域600が、副矩形領域である。
第1矩形領域500から顔が検出された場合(S320:Yes)、S345で、プロセッサ210は、第2矩形領域600の画像の向きが、副割付領域820(図6(A))の第2基準方向820uになるように、第2矩形領域600の画像を回転させる。S350では、プロセッサ210は、回転済の第2矩形領域600の画像を、副割付領域820に割り付ける。そして、図3、図4の処理が終了する。図6(B)に示すように、第2矩形領域600の画像は、第1矩形領域500の画像とは反対の方向を向いている。第2矩形領域600の下辺620が、第1矩形領域500の下辺520と接するように、第1矩形領域500の画像と第2矩形領域600の画像とが合成される。なお、第1矩形領域500の下辺520は、上方向501とは反対の方向側の辺である。第2矩形領域600の下辺620は、上方向601とは反対の方向側の辺である。
このように、第1矩形領域500が顔を含むと判断される場合には、図3のS230と、図4のS350とによって、第1矩形領域500の画像と第2矩形領域600の画像とが合成される。プロセッサ210は、S230、S350によって、合成画像490(図6(B))を表す合成データを生成する。本実施例では、合成データのデータ形式は、スキャンデータのデータ形式と同じである(例えば、RGBのビットマップ形式)。
第1矩形領域500が識別カード300の裏面320を表し、第2矩形領域600が表面310を表す場合には、図3、図4の処理は、以下のように進行する。図3のS210では、第1矩形領域500から顔が検出されないので、S215の判断結果は、Noである。続くS235、S240、S245、S250は、図4のS310、S315、S345、S350の処理対象の領域を第2矩形領域600から第1矩形領域500に変更して得られる処理と、それぞれ同じである。これにより、第1矩形領域500によって表される裏面320の画像は、図6(A)、図6(B)に示すように、副割付領域820に割り付けられる。また、図4のS320の判断結果は、Noである。続くS325、S330は、図3のS225、S230の処理対象の領域を第1矩形領域500から第2矩形領域600に変更して得られる処理と、それぞれ同じである。これにより、第2矩形領域600によって表される表面310の画像は、図6(A)、図6(B)に示すように、主割付領域810に割り付けられる。このように、本実施例では、第1矩形領域500が顔を含むと判断されない場合には、第2矩形領域600が顔を含むと判断されている。そして、プロセッサ210は、S250、S330によって、合成画像490(図6(B))を表す合成データを生成する。
このように、識別カード300の表面310と裏面320との読み取り順に拘わらずに、顔を含む表面310の画像は、主割付領域810に割り付けられ、裏面320の画像は、副割付領域820に割り付けられる。そして、プロセッサ210は、合成画像490を表す合成データを生成する(S230、S250、S330、S350)。以上により、図3、図4の処理、すなわち、図2のS110が終了する。
図2のS120では、プロセッサ210は、合成データを用いて印刷部290に合成画像を印刷させる。本実施例では、プロセッサ210は、以下の処理を実行する。
S1)合成データによって表される画素値の色変換処理
S2)色変換済のデータを用いるハーフトーン処理
S3)ハーフトーン処理済のデータを用いる印刷データの生成処理
S4)印刷データを印刷部290に供給する処理
以下、順に説明する。
色変換処理は、合成データによって表される画素値(ここでは、RGBの階調値)を、印刷に利用可能な色材の種類に対応する色空間で表された画素値(ここでは、CMYKの階調値)に変換する処理である。色変換処理は、変換前の階調値と変換後の階調値との対応関係を予め定めるルックアップテーブルを用いて行われる。このようなルックアップテーブルは、複合機200(図1)の製造者によって、プログラム232と共に提供される(図示省略)。
ハーフトーン処理は、色変換済のデータを用いて、画素ごと、かつ、インクの種類ごとに、ドットの形成状態を表すドットデータを生成する処理である。本実施例では、ハーフトーン処理は、誤差マトリクスを利用した誤差拡散処理を用いて実行される。これに代えて、ディザマトリクスを用いるハーフトーン処理が採用されてもよい。ドットの形成状態は、例えば、ドットの有無を含む。また、ドットの形成状態は、ドットの有無と、ドットのサイズと、を含んでも良い。
印刷データの生成処理は、ドットデータを用いて、印刷部290の制御部295によって解釈可能なデータ形式で表された印刷データを生成する処理である。プロセッサ210は、例えば、印刷に用いられる順にドットデータを並べるとともに、各種のプリンタ制御コードや、データ識別コードを付加して印刷データを生成する。
プロセッサ210は、生成した印刷データを、印刷部290に供給する。印刷部290の制御部295は、受信した印刷データに従って、印刷ヘッド291と搬送機構293と走査機構294とを制御することによって、合成画像を印刷する。そして、プロセッサ210は、図2の処理を終了する。このように、プロセッサ210は、印刷データを生成し、生成した印刷データを印刷部290に供給することによって、印刷部290に画像を印刷させる。なお、図2のS120の処理としては、上記の処理に限らず、公知の種々の処理を採用可能である。
以上の処理により、用紙700(図6(A))には、図6(B)に示す合成画像490が印刷される。ユーザは、用紙700から合成画像490が印刷された部分を切り取ることによって、容易に、識別カード300のコピーを取得できる。
また、図6(A)、図6(B)で説明したように、プロセッサ210は、合成画像490の角(ここでは、主割付領域810の角811であり、具体的には、主矩形領域の角511)が、印刷領域800のうちの角805に配置されるように、合成画像490を表す合成データを生成する。通常は、印刷領域の角は、用紙700の角に近い位置に配置される。例えば、本実施例では、印刷領域800の角805は、用紙700の角705に配置されている。従って、合成画像490(図6(B))の角811から延びる2つの辺495、498は、用紙700(図6(A))の角705から延びる2個の縁725、728の近傍に、それぞれ配置される。この結果、用紙700のうち、合成画像490の2つの辺495、498の部分を切らずに、残りの2つの辺496、497(図6(B))の部分を切ることによって、容易に、用紙700から合成画像490が印刷された部分(すなわち、識別カード300のコピー)を切り取ることができる。
また、印刷領域800のうちの角805には、顔を含む主矩形領域(ここでは、第1矩形領域500)の角511が、配置される。従って、用紙700の2個の縁725、728には、顔を含む主矩形領域の2つの辺が、配置される。この結果、顔を含む主矩形領域の2つの辺を切らずに済むので、顔を含む面の縁がきれいな状態で、合成画像490が印刷された部分を切り取ることができる。
また、図3のS210、S215、図4のS320で説明したように、プロセッサ210は、顔認識処理を行って、第1矩形領域500と第2矩形領域600とのいずれが顔を含むかを判断する。従って、矩形領域が顔を含むか否かを、適切に判断できる。
また、第1矩形領域500が顔を含むと判断された場合(図3:S215:Yes)には、プロセッサ210は、図3のS220で、第1スキャンデータに基づく顔認識処理の結果に応じて第1矩形領域500(すなわち、顔を含む主矩形領域)の向きを特定し、図4のS315で、第2スキャンデータに基づく文字認識処理の結果に応じて第2矩形領域600(すなわち、副矩形領域)の向きを特定する。また、第1矩形領域500が顔を含むと判断されなかった場合(図3:S215:No)には、プロセッサ210は、図3のS240で、第1スキャンデータに基づく文字認識処理の結果に応じて第1矩形領域500(すなわち、副矩形領域)の向きを特定し、図4のS315で、第2スキャンデータに基づく文字認識処理の結果に応じて第2矩形領域600(すなわち、顔を含む主矩形領域)の向きを特定する。このように、顔を含むと判断された主矩形領域の向きと、主矩形領域とは異なる副矩形領域の向きとは、顔認識処理の結果と文字認識処理の結果との少なくとも一方に応じて、特定される。従って、主矩形領域の向きと副矩形領域の向きとを、適切に特定できる。また、第2矩形領域600の向きは、顔認識処理を含まない文字認識処理の結果に応じて特定される。従って、顔認識処理に起因する処理の負担を軽減できる。
さらに、図6(A)、図6(B)で説明したように、第1矩形領域500の画像と第2矩形領域600の画像とは、顔を含む主矩形領域(ここでは、第1矩形領域500)の縁の下辺520と副矩形領域(ここでは、第2矩形領域600)の縁の下辺620とが接するように、合成される。従って、合成画像490が印刷された用紙700を主矩形領域と副矩形領域との境界で折り曲げることによって主矩形領域と副矩形領域とを重ねる場合に、副矩形領域の向きを、主矩形領域の向きと同じ向きにできる。
B.第2実施例:
図7は、第2実施例の印刷処理(図2:S120)のフローチャートである。上記の第1実施例の印刷処理との差異は、主矩形領域と副矩形領域との間で異なる画像処理が実行される点だけである。図2のS100、S110の処理は、第1実施例のS100、S110の処理と、それぞれ同じである。
図8は、第2実施例の印刷の概略図である。図8中には、用紙700と、印刷領域800と、合成画像490と、が示されている。用紙700の右側には、用紙700に対する印刷ヘッド291の相対的な上方向DUの位置が示されている。本実施例では、印刷部290(図1)の走査機構294は、印刷ヘッド291を、用紙700に対して右方向DRに平行な方向(走査方向とも呼ぶ)に移動させる。搬送機構293は、用紙700を上方向DUに向かって搬送する。制御部295は、印刷ヘッド291を用紙700に対して走査方向に移動させる走査の最中に印刷ヘッド291を駆動して用紙700上にドットを形成するパス処理と、用紙700を搬送と、を繰り返すことにより、用紙700上に画像を印刷する。
本実施例では、合成画像が複数のバンド領域(ここでは、8個のバンド領域B1〜B8)に区分される。複数のバンド領域B1〜B8は、それぞれ、右方向DRに延びる帯状の領域である。主割付領域810は、上方向DU側の4個のバンド領域B1〜B4で表され、副割付領域820は、下方向DD側の4個のバンド領域B5〜B8で表される。なお、本実施例では、印刷ヘッド291は、1回のパス処理によって、隣合う2個のバンド領域上に、画像を印刷できる。
また、本実施例では、顔を含む主割付領域810の少なくとも一部を表すバンド領域B1〜B4は、マルチパス印刷によって印刷される。主割付領域810を表さずに副割付領域820を表すバンド領域B5〜B8は、シングルパス印刷によって印刷される。シングルパス印刷は、バンド領域の画像の全体を、1回のパス処理で印刷する処理である。マルチパス印刷は、バンド領域の画像を、複数回のパス処理に分けて印刷する処理である。マルチパス印刷では、1個のバンド領域内の複数の画素位置のドットの形成が、複数回のパス処理に分散される。このようなマルチパス印刷の方法としては、公知の種々の方法を採用可能である。図8の例では、主割付領域810を表す4個のバンド領域B1〜B4のそれぞれは、2回のパス処理で印刷される。
図8には、合成画像490を印刷するための7回のパス処理P1〜P7が示されている。各パス処理P1〜P7に対応付けられた印刷ヘッド291は、上方向DU側の半分の部分291u(上部分291uと呼ぶ)と下方向DD側の半分の部分291d(下部分291dと呼ぶ)とに区分されており、印刷に利用される部分には、ハッチングが付されている。
第1パス処理P1では、下部分291dが、第1バンド領域B1の画像の一部(具体的には、第1バンド領域B1の複数の画素位置のうちの一部の複数の画素位置)を印刷する。第1パス処理P1の後、用紙700が、1個のバンド領域の幅の長さ(すなわち、印刷ヘッド291の複数のノズルの分布幅の半分の長さ)だけ、上方向DUに搬送され、そして、第2パス処理P2が行われる。第2パス処理P2では、上部分291uが、第1バンド領域B1の画像の残りの部分を印刷し、下部分291dが、第2バンド領域B2の画像の一部を印刷する。このように、バンド領域の一部の複数の画素位置を印刷するパス処理P1〜P5と、1個のバンド領域の幅の長さの搬送と、が交互に繰り返されることによって、主割付領域810(バンド領域B1〜B5)の画像の全体が印刷される。
第6パス処理P6では、印刷ヘッド291は、2個のバンド領域B5、B6の画像の全体を印刷する。第6パス処理P6の後、用紙700が、2個のバンド領域の幅の長さ(すなわち、印刷ヘッド291の複数のノズルの分布幅の長さ)だけ、上方向DUに搬送され、そして、第7パス処理P7が行われる。第7パス処理P7では、印刷ヘッド291は、2個のバンド領域B7、B8の画像の全体を印刷する。以上により、合成画像490が印刷される。
図7のS400では、プロセッサ210は、合成画像を表す未処理の複数のバンド領域のうち、最も上方向DU側のバンド領域を、処理対象のバンド領域として選択する(以下、対象バンド領域と呼ぶ)。S410では、プロセッサ210は、対象バンド領域が、主割付領域810を表すか否かを判断する。対象バンド領域が主割付領域810を表す場合(S410:Yes)、S420で、プロセッサ210は、第1画像処理を実行する。第1画像処理は、以下の処理を含んでいる。
SA1)合成データによって表される対象バンド領域の画素値のトーンカーブ調整処理
SA2)トーンカーブ調整済の画素値の色変換処理
SA3)色変換済のデータを用いるハーフトーン処理
SA4)ハーフトーン処理済のデータを用いる、マルチパス印刷用のデータの生成処理
以下、順に説明する。
S420のトーンカーブ調整処理は、合成データによって表される画素値(ここでは、RGBの階調値)を、トーンカーブを用いて調整する処理である。図9は、調整に用いられるトーンカーブの例を示すグラフである。横軸は、調整前の階調値Vi(入力階調値Viと呼ぶ)を示し、縦軸は、調整後の階調値Vo(出力階調値Vo)を示している。図中には、2個のトーンカーブC1、C2が示されている。このようなトーンカーブを用いる階調値の調整は、ガンマ調整とも呼ばれる。本実施例では、RGBのそれぞれの階調値が、調整される。
第1トーンカーブC1は、最も暗い階調値(ここでは、ゼロ)と最も明るい階調値(ここでは、255)との間の中間の階調範囲において、出力階調値Voが、入力階調値Viよりも大きくなるように、構成されている。この第1トーンカーブC1を用いる場合には、有彩色の領域において、彩度が高くなる。図7のS420では、プロセッサ210は、この第1トーンカーブC1を用いて、階調値を調整する。すなわち、顔を含む主割付領域810の色は、第1トーンカーブC1によって、調整される。これにより、顔の画像の色は、鮮やかな色に、調整される。
第2トーンカーブC2は、後述するように、副割付領域820の色を調整するために、利用される。第2トーンカーブC2は、第1トーンカーブC1とは異なる入力階調値Viと出力階調値Voとの対応関係を示している。第2トーンカーブC2は、ゼロを含む一部の範囲(第1値V1以下の範囲)では、出力階調値Voがゼロに設定され、最大値(255)を含む一部の範囲(第2値V2以上の範囲)では、出力階調値Voが最大値に設定されるように、構成されている。また、第1値V1以上、第2値V2以下の範囲では、出力階調値Voは、入力階調値Viに比例して、ゼロから最大値まで変化する。第2トーンカーブC2を用いる場合には、淡部の色が白色に、濃部の色が黒色に、それぞれ調整される。これにより、白色の背景上に黒色の文字を表す領域のコントラストが高くなり、文字は読みやすくなる。
S420の色変換処理は、トーンカーブ調整済の画素値(ここでは、RGBの階調値)を、印刷に利用可能な色材の種類に対応する色空間で表された画素値(ここでは、CMYKの階調値)に変換する処理である。この色変換処理は、第1実施例のS120(図2)で説明した色変換処理と同じである。また、S420のハーフトーン処理は、第1実施例のS120(図2)で説明したハーフトーン処理と同じである。
S420のマルチパス印刷用のデータの生成処理は、以下の通りである。図8で説明したように、対象バンド領域をマルチパス印刷で印刷する場合、対象バンド領域の複数の画素のドットの形成は、複数回のパス処理に分散される。そこで、プロセッサ210は、対象バンド領域のドットデータを、パス処理毎に分割して、パス処理毎のドットデータを生成する。例えば、図7の第1バンド領域B1が対象バンド領域である場合、第1パス処理P1用のドットデータと、第2パス処理P2用のドットデータとが、生成される。ここで、プロセッサ210は、ドットデータに含まれる複数の画素のデータを、印刷に用いられる順に並べる。例えば、複数の画素のそれぞれのドット形成状態を表すデータは、パス処理での印刷ヘッド291の移動方向に合わせて、並べ替えられる。
図7のS420では、以上の処理により、対象バンド領域を印刷するためのドットデータが生成される。S440では、プロセッサ210は、ドットデータを用いて、印刷データを生成する。S450では、プロセッサ210は、生成した印刷データを、印刷部290に供給する。S460では、印刷部290の制御部295は、受信した印刷データに従って、印刷ヘッド291と搬送機構293と走査機構294とを制御することによって、対象バンド領域の画像を印刷する。このように、プロセッサ210は、S440、S450の処理によって、印刷部290に画像を印刷させる。
なお、印刷部290の制御部295は、図7のS450で、1回のパス処理で用いられる印刷データのうちの一部のみを受信する場合がある。例えば、制御部295は、第2パス処理P2で印刷される第1バンド領域B1と第2バンド領域B2とのうち、第1バンド領域B1の印刷データを先に受信し、その後に、第2バンド領域B2の印刷データを受信する場合がある。このような場合、制御部295は、1回のパス処理で用いられる印刷データの全てを受信したことに応じて、パス処理を開始すればよい。
S470では、プロセッサ210は、全てのバンド領域が印刷されたか否かを判断する。未処理のバンド領域が残っている場合(S470:No)、プロセッサ210は、S400に移行して、未処理のバンド領域の処理を行う。
対象バンド領域が主割付領域810を表さない場合(S410:No)、すなわち、対象バンド領域が副割付領域820を表す場合、S430で、プロセッサ210は、第2画像処理を実行する。第2画像処理は、以下の処理を含んでいる。
SB1)合成データによって表される対象バンド領域の画素値のトーンカーブ調整処理
SB2)トーンカーブ調整済の画素値の色変換処理
SB3)色変換済のデータを用いるハーフトーン処理
SB4)ハーフトーン処理済のデータを用いる、シングルパス印刷用のデータの生成処理
以下、順に説明する。
トーンカーブ調整処理では、図9の第2トーンカーブC2が用いられる。これにより、副割付領域820の色は、黒色の文字を読みやすい色に、調整される。色変換処理とハーフトーン処理とは、S420の色変換処理とハーフトーン処理と、それぞれ同じである。シングルパス印刷用のデータの生成処理では、プロセッサ210は、ハーフトーン処理によって生成されたドットデータに含まれる複数の画素のデータを、印刷に用いられる順に並べることによって、シングルパス印刷用のドットデータを生成する。例えば、図7の第5バンド領域B5が対象バンド領域である場合、第6パス処理P6での印刷ヘッド291の移動方向に合わせて、複数の画素のそれぞれのドット形成状態を表すデータが、並べ替えられる。そして、S440では、プロセッサ210は、S430で生成したドットデータを用いて、印刷データを生成する。
全てのバンド領域が印刷された場合(S470:Yes)、プロセッサ210は、図7の処理、すなわち、図2のS120を終了する。これにより、図2の処理が終了する。このように、プロセッサ210は、S440では、画像処理(S420、S430)が施された画像データを用いて得られる合成画像を表す印刷データを生成し、S450では、生成した印刷データを印刷部290に供給する。従って、画像処理が施された適切な合成画像を印刷できる。
以上の処理により、第2実施例においても、用紙700(図6(A))には、図6(B)に示す合成画像490が印刷される。ユーザは、用紙700から合成画像490が印刷された部分を切り取ることによって、容易に、識別カード300のコピーを取得できる。
また、図7のS420、S430で説明したように、顔を含むと判断された主矩形領域を表す画像データには、第1画像処理が実行され、副矩形領域を表す画像データには、第1画像処理とは異なる第2画像処理が実行される。従って、主矩形領域と副矩形領域とが接するように合成された画像が印刷される場合に、主矩形領域と副矩形領域とに適切な画像処理を実行できる。
具体的には、S420の第1画像処理は、印刷部290にマルチパス印刷で画像を印刷させるためのドットデータを生成する処理を含み、S430の第2画像処理は、印刷部290にシングルパス印刷で画像を印刷させるためのドットデータを生成する処理を含む。従って、主矩形領域によって表される顔の印刷画質を高めつつ、副矩形領域の印刷に要する時間を短くできる。
また、S420の第1画像処理は、第1トーンカーブC1に従って色を調整する処理を含み、S430の第2画像処理は、第2トーンカーブC2に従って色を調整する処理を含む。ここで、第2トーンカーブC2は、少なくとも一部の色範囲の色を、第1トーンカーブC1による調整済の色とは異なる色に調整する。従って、主矩形領域によって表される顔と、副矩形領域のオブジェクト(例えば、文字)とを、それぞれに適した色で印刷できる。
特に、図9に示すように、少なくとも一部の入力階調値Viの範囲において、第1トーンカーブC1の出力階調値Voは、第2トーンカーブC2の出力階調値Voよりも大きい。従って、少なくとも一部の色範囲において、第1トーンカーブC1を用いる場合には、第2トーンカーブC2を用いる場合と比べて、印刷される有彩色の彩度を高めることができる。この結果、主割付領域810の顔を、鮮やかな色で印刷できる。
また、第1トーンカーブC1が用いられる場合、白を含む薄い色範囲の色は、白に調整され、黒を含む濃い色範囲の色は、黒に調整される。従って、副割付領域820の黒色の文字を表す部分を、高いコントラストで印刷できる。
C.矩形領域の配置の別の実施例:
図10、図11は、主割付領域810と副割付領域820との配置の別の実施例の概略図である。図10(A)の例では、主割付領域810の配置と向きとは、図6(A)の主割付領域810の配置と向きと、それぞれ同じである。副割付領域820は、主割付領域810の右方向DR側に配置されている。副割付領域820の上方向820uは、主割付領域810の上方向810uと同じ方向である。副割付領域820の上方向820uを基準とする左辺828は、主割付領域810の上方向810uを基準とする右辺816に、接している。図10(A)の下部に示すように、副割付領域820に割り付けられた副矩形領域(ここでは、第2矩形領域600)の左辺640は、主割付領域810に割り付けられた主矩形領域(ここでは、第1矩形領域500)の右辺530に、接している。
図10(B)の例では、主割付領域810の上方向810uは、印刷領域800の左方向DLと同じである。主割付領域810は、主割付領域810の上方向810uを基準とする右上の角812が、印刷領域800の左上の角805に位置されるように、配置されている。副割付領域820は、主割付領域810の右方向DR側に配置されている。副割付領域820の上方向820uは、主割付領域810の上方向810uとは反対の方向(すなわち、右方向DR)である。副割付領域820の上方向820uを基準とする下辺827は、主割付領域810の上方向810uを基準とする下辺817に、接している。図10(B)の下部に示すように、副割付領域820に割り付けられた副矩形領域(ここでは、第2矩形領域600)の下辺620は、主割付領域810に割り付けられた主矩形領域(ここでは、第1矩形領域500)の下辺520に、接している。
図10(C)の例では、主割付領域810の配置と向きとは、図10(B)の主割付領域810の配置と向きと、それぞれ同じである。副割付領域820は、主割付領域810の下方向DD側に配置されている。副割付領域820の上方向820uは、主割付領域810の上方向810uと同じ方向である。副割付領域820の上方向820uを基準とする右辺826は、主割付領域810の上方向810uを基準とする左辺818に、接している。図10(C)の下部に示すように、副割付領域820に割り付けられた副矩形領域(ここでは、第2矩形領域600)の右辺630は、主割付領域810に割り付けられた主矩形領域(ここでは、第1矩形領域500)の左辺540に、接している。
図10(D)の例では、主割付領域810の上方向810uは、下方向DDと同じである。主割付領域810は、主割付領域810の上方向810uを基準とする右下の角813が、印刷領域800の左上の角805に位置されるように、配置されている。副割付領域820は、主割付領域810の下方向DD側に配置されている。副割付領域820の上方向820uは、主割付領域810の上方向810uとは反対の方向(すなわち、上方向DU)である。副割付領域820の上方向820uを基準とする上辺825は、主割付領域810の上方向810uを基準とする上辺815に、接している。図10(D)の下部に示すように、副割付領域820に割り付けられた副矩形領域(ここでは、第2矩形領域600)の上辺610は、主割付領域810に割り付けられた主矩形領域(ここでは、第1矩形領域500)の上辺510に、接している。
以上説明した図10(A)〜図10(D)のいずれにおいても、合成画像490a〜の490dの角(ここでは、主矩形領域の角)が、印刷領域800のうちの角805に配置される。従って、図6の実施例と同様に、用紙700のうち、図10(A)〜図10(D)の合成画像490a〜490dの2つの辺(ここでは、上方向DU側の辺の左方向DL側の辺)の部分を切らずに、残りの2辺の部分を切ることによって、容易に、用紙700から合成画像490a〜490dが印刷された部分(すなわち、識別カード300のコピー)を切り取ることができる。
また、印刷領域800のうちの角805には、顔を含む主矩形領域(ここでは、第1矩形領域500)の角が、配置される。従って、顔を含む主矩形領域の2つの辺を切らずに済むので、顔を含む面の縁がきれいなコピーを取得できる。
また、図10(A)〜図10(D)のいずれの実施例においても、合成画像490a〜490dが印刷された用紙700を主矩形領域と副矩形領域との境界で折り曲げることによって主矩形領域と副矩形領域とを重ねる場合に、副矩形領域の向きを、主矩形領域の向きと同じ向きにできる。
図11(A)〜図11(D)の例は、図10(A)〜図10(B)の例の主割付領域810と副割付領域820との間に(すなわち、主矩形領域と副矩形領域との間に)、小さい隙間900が挿入された配置を、それぞれ示している。隙間900の大きさ(すなわち、主割付領域810と副割付領域820との間の距離)は、用紙700の厚さと同程度である。このように、副矩形領域は、主矩形領域の縁の辺の近傍に、その辺から離れて、副矩形領域の縁の辺が並ぶ様に、配置される。例えば、図11(A)の例では、第1矩形領域500の右辺530の近傍に、右辺530から離れて、第2矩形領域600の左辺640が並ぶように、第2矩形領域600が配置される。ここで、互いに近傍に配置される主矩形領域の辺と副矩形領域の辺は、平行である(例えば、図11(A)の右辺530と左辺640は、平行である)。以上により、厚い用紙700に合成画像490e〜490hが印刷され、そして、合成画像490e〜490hが印刷された用紙700を主矩形領域と副矩形領域との境界で折り曲げる場合に、主矩形領域の縁の近傍の画像、または、副矩形領域の縁の近傍の画像が、折り目と重なることを抑制できる。なお、図6(A)の主割付領域810と副割付領域820との間に隙間900が設けられてもよい。
いずれの場合も、隙間900の大きさは、用紙700の厚さと同程度であることが好ましい。プロセッサ210は、印刷に用いられる用紙700の種類に応じて、隙間900の大きさを決定してもよい。例えば、用紙700が普通紙である場合、隙間900の大きさがゼロに設定され、用紙700が光沢紙である場合、隙間900の大きさが1mmに設定されてもよい。いずれの場合も、隙間900は、小さいことが好ましく、3mm以下が好ましく、2mm以下が特に好ましく、1mm以下が最も好ましい。なお、用紙700の種類に拘わらずに、隙間900の大きさが、予め決められていてもよい。
また、第1矩形領域500の画像と第2矩形領域600の画像とのそれぞれの配置としては、予め決められた配置が用いられる(例えば、図6、図10、図11の合成画像490、490a〜490hのうちいずれかの合成画像の配置)。これに代えて、プロセッサ210は、配置の複数の候補からユーザによって選択された配置を採用してもよい。配置の複数の候補としては、例えば、図6、図10、図11に示す複数の配置から任意に選択された複数の配置を採用してよい。
D.変形例:
(1)マルチパス印刷のパス数(すなわち、共通の部分領域の印刷に用いられるパスの総数)は、2に限らず、2以上の任意の数であってよい。また、副矩形領域は、シングルパス印刷ではなく、マルチパス印刷で印刷されてもよい。ここで、顔を含む主矩形領域のマルチパス印刷のパス数が、副矩形領域のマルチパス印刷のパス数よりも、多いことが好ましい。この構成によれば、主矩形領域によって表される顔の印刷画質を高めつつ、副矩形領域の印刷に要する時間を短くできる。なお、この場合、図7のS430でも、副矩形領域のマルチパス印刷用のデータ生成処理が、行われる。なお、主矩形領域と副矩形領域との間でパス数が異なる場合、マルチパス印刷用のデータ生成処理は、S420とS430との間で異なっている。例えば、ドットデータをパス処理毎に分割する際の分割数が、S420とS430との間で異なっている。また、主矩形領域と副矩形領域との間でパス数が同じであってもよい。ここで、パス数は、1であってもよく(すなわち、シングルパス印刷)、2以上であってもよい(すなわち、マルチパス印刷)。なお、印刷実行部が、パス処理を実行せずに画像を印刷する装置(例えば、レーザ方式の印刷装置)である場合、シングルパス印刷またはマルチパス印刷のための処理は、省略される。
(2)色調整処理としては、図9で説明した処理に代えて、他の任意の処理を採用可能である。例えば、色材の種類に対応する色空間で表された画素値が調整されてもよい。また、一部の色成分(例えば、彩度)のみを、トーンカーブを用いて調整してもよい。また、トーンカーブを用いる処理に代えて他の処理を採用してもよい。例えば、特定の色範囲内の色を、ルックアップテーブルを用いて調整する処理を採用してよい。いずれの場合も、副矩形領域に対する第2色調整処理は、少なくとも一部の色範囲の色を、主矩形領域に対する第1色調整処理が行われる場合の調整済の色とは異なる色に調整する処理であってよい。この構成によれば、主矩形領域によって表される顔と、副矩形領域のオブジェクト(例えば、文字)とを、それぞれに適した色で印刷できる。なお、主矩形領域と副矩形領域とに、同じ色調整処理が実行されてもよい。すなわち、図7のS420とS430との間で、色調整処理が同じであってもよい。また、S420とS430との少なくとも一方から、色調整処理を省略してもよい。
(3)主矩形領域と副矩形領域とに対する画像処理は、上記の画像処理に代えて、他の種々の処理であってよい。例えば、主矩形領域と副矩形領域との間で、パス数が異なり、色調整処理が同じであってもよい。また、主矩形領域と副矩形領域との間で、パス数が同じで、色調整処理が異なっていてもよい。また、主矩形領域と副矩形領域との間で、画像処理が同じであってもよい。この場合、図7のS410、S420、S430で構成されるS405として、共通の画像処理が実行される。このようなフローチャートは、第1実施例の図2のS120のフローチャートとして、利用できる。
いずれの場合も、プロセッサ210は、主矩形領域に対する第1画像処理の少なくとも一部(例えば、第1色調整処理)を、合成前の画像データ(例えば、スキャンデータ)を用いて実行してもよい。同様に、プロセッサ210は、副矩形領域に対する第2画像処理の少なくとも一部(例えば、第2色調整処理)を、合成前の画像データ(例えば、スキャンデータ)を用いて実行してもよい。
(4)縁無し印刷に代えて、縁有り印刷が行われてもよい。この場合、印刷領域800(図6(A)など)の縁は、用紙700の縁よりも内側に位置する。この場合も、合成画像の角が、印刷領域800のうちの予め決められた角(例えば、用紙700の予め決められた角に最も近い角)に配置されることが好ましい。この構成によれば、合成画像と用紙700の縁との間に余白が生じるものの、合成画像の縁のうち用紙700の縁に近い部分を切らずに、合成画像が印刷された部分を用紙700から切り取ることができる。いずれの場合も、顔を含むと判断された主矩形領域の角が、印刷領域800の角に配置されることが好ましい。この構成によれば、顔を含む主矩形領域の2つの辺を切らずに済むので、顔を含む面の縁がきれいな状態で、合成画像が印刷された部分を切り取ることができる。このような主矩形領域と副矩形領域とのそれぞれの配置としては、図6、図10、図11で説明した配置に代えて、他の種々の配置を採用可能である。例えば、主矩形領域の角は、印刷領域800の4個の角のうちの任意の角(例えば、右上の角)に配置されてもよい。さらに、縁無し印刷が行われることによって、主矩形領域の角は、用紙700の4個の角のうちの任意の角に配置されてよい。なお、副矩形領域の角が、印刷領域800の角に配置されてもよい。また、合成画像は、印刷領域800の角から離れた位置に配置されてもよく、印刷領域800の縁から離れた位置に配置されてもよい。なお、主矩形領域と副矩形領域とのそれぞれの配置と向きとは、主矩形領域と副矩形領域とのそれぞれの画像処理とは独立に、決定されてよい。いずれの場合も、主矩形領域と副矩形領域との間で、搬送方向の位置が異なることが好ましい。この構成によれば、主矩形領域と副矩形領域との間で、パス数の異なる印刷処理を実行できる。
(5)矩形領域が顔を含むか否かを判断する方法は、顔認識処理の結果を用いる方法に代えて、顔の有無を判断可能な他の任意の方法であってよい。例えば、第1矩形領域500と第2矩形領域600とのうち、予め決められた肌色範囲内の色を示す画素の割合が多い方を、顔を含む矩形領域として選択してもよい。また、第1矩形領域500と第2矩形領域600とのうち、色の総数が多い方を、顔を含む矩形領域として選択してもよい。
また、プロセッサ210は、第1スキャンデータではなく、第2スキャンデータを用いる顔認識処理を実行して、第2矩形領域600に顔が含まれるか否かを判断してもよい。また、顔を含むか否かに拘わらずに、第1矩形領域500を、主割付領域810と副割付領域820との予め決められた領域に割り付け、第2矩形領域600を、他の領域に割り付けることとしてもよい。
(6)画像の向きを特定する処理としては、上記の処理に代えて、他の種々の処理を採用可能である。例えば、プロセッサ210は、第2矩形領域600にも顔認識処理を実行し、顔認識処理の結果に応じて第2矩形領域600の画像の向きを特定してもよい。また、プロセッサ210は、第1矩形領域500に顔が含まれるか否かに拘わらずに、第1矩形領域500の文字認識処理を実行し、文字認識処理の結果に応じて第1矩形領域500の画像の向きを特定してもよい。また、プロセッサ210は、顔認識処理と文字認識処理とのいずれとも異なる処理によって、矩形領域の画像の向きを特定してもよい。例えば、プロセッサ210は、第1矩形領域500の画像の向きとして、ユーザによって指定された向きを採用してもよく、また、第2矩形領域600の画像の向きとして、ユーザによって指定された向きを採用してもよい。なお、第1矩形領域500の画像を解析せずに、第1スキャン画像410における予め決められた向き(例えば、第2方向Dbに反対の方向)が、第1矩形領域500の画像の向きとして用いられてもよい。第2矩形領域600の画像の向きについても、同様である。
(7)コピーのための処理としては、図2、図3、図4、図7で説明した処理に代えて、他の種々の処理を採用可能である。例えば、プロセッサ210は、合成画像を印刷部290に印刷させる前に、複合機200に無線通信で接続された端末(例えば、スマートフォン)に合成画像を表示させてもよい。
(8)識別カードをコピーするための処理を実行する画像処理装置は、複合機200の制御装置202とは異なる種々の装置(例えば、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットコンピュータ)であってもよい。また、画像処理装置は、外部の読み取り装置(例えば、スキャナ)から、原稿を光学的に読み取ることによって生成される画像データを取得し、取得した画像データを用いて合成画像を表す合成データを生成し、外部の印刷装置に合成画像を印刷させてもよい。また、ネットワークを介して互いに通信可能な複数の装置(例えば、コンピュータ)が、画像処理装置による画像処理の機能を一部ずつ分担して、全体として、画像処理の機能を提供してもよい(これらの装置を備えるシステムが画像処理装置に対応する)。
上記各実施例において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよく、逆に、ソフトウェアによって実現されていた構成の一部あるいは全部をハードウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、顔認識処理の機能を、専用のハードウェア回路によって実現してもよい。
また、本発明の機能の一部または全部がコンピュータプログラムで実現される場合には、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体(例えば、一時的ではない記録媒体)に格納された形で提供することができる。プログラムは、提供時と同一または異なる記録媒体(コンピュータ読み取り可能な記録媒体)に格納された状態で、使用され得る。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」は、メモリーカードやCD−ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種ROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスクドライブ等のコンピュータに接続されている外部記憶装置も含み得る。
以上、実施例、変形例に基づき本発明について説明してきたが、上記した発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨並びに特許請求の範囲を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれる。