JP2018076502A - 炭素繊維強化プラスチックの製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
項1.高分子化合物が溶解又は分散している電着液中で、炭素繊維材料を作用極として電圧を印加する電着工程
を備える、炭素繊維強化プラスチックの製造方法。
項2.前記電着液がカチオン型電着液であり、前記作用極が負極である、項1に記載の製造方法。
項3.前記電着液がアニオン型電着液であり、前記作用極が正極である、項1に記載の製造方法。
項4.前記電着工程における印加電圧が90V以上である、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
項5.前記電着工程における電圧印加時間が1〜300分である、項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
項6.項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた炭素繊維強化プラスチックの表面に、機能性材料を含有する分散液を塗布する塗布工程
を備える、炭素繊維強化プラスチック複合材料の製造方法。
項7.項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面に、プラスチックシートを積層する工程
を備える、炭素繊維強化プラスチック複合材料の製造方法。
項8.項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面に、金属及び/又はセラミックスを圧着する工程
を備える、炭素繊維強化プラスチック複合材料の製造方法。
項9.炭素繊維及び高分子化合物を含有する炭素繊維強化プラスチックであって、
各々の炭素繊維が高分子重合体で被覆されており、且つ、炭素繊維同士が接触していない、炭素繊維強化プラスチック。
項10.前記炭素繊維と前記高分子化合物の合計量を100質量%として、炭素繊維の含有率が20〜70質量%である、項8に記載の炭素繊維強化プラスチック。
項11.項9又は10に記載の炭素繊維強化プラスチックの表面に機能性材料含有層が配置されている、炭素繊維強化プラスチック複合材料。
項12.項9又は10に記載の炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面にプラスチックシートが配置されている、炭素繊維強化プラスチック複合材料。
項13.項9又は10に記載の炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面に金属及び/又はセラミックスが接合している、炭素繊維強化プラスチック複合材料。
項14.前記炭素繊維強化プラスチックと前記金属及び/又は前記セラミックスとの界面に接着剤が存在しない、項13に記載の炭素繊維強化プラスチック複合材料。
本発明の炭素繊維強化プラスチックの製造方法は、高分子化合物が溶解又は分散している電着液中で、炭素繊維材料を作用極として電圧を印加する電着工程を備える。本発明で採用している電着は、めっき、燃料電池等と同様に、電気化学反応を利用し、オートクレーブのような大量に熱エネルギーを消費する機器を使用しないため製造コストを低減することができる。また、このような本発明の製造方法は、前駆体として、炭素繊維材料を所望の形状に成形しさえすれば、容易に3次元形成することができるし、電圧印加後にも溶液を除去する前であれば所望の形状に加工できるため、炭素繊維強化プラスチック同士を積層させることが不要であり、繊維の配置も乱れないため層間剥離の心配もない。さらに、本発明では真空圧で樹脂を流し込まないため、樹脂の粘性流動の影響がなく、繊維同士の接触がなくなり界面強度を高くすることができる。
本発明において使用する電着液は、高分子化合物が溶解又は分散している。
炭素繊維材料としては、炭素繊維からなる構造体(特に導電性炭素瀬にからなる構造体)であれば特に制限されない。例えば、平面状炭素繊維シート、パイプ状炭素繊維シート、翼形状炭素繊維シート、L字型炭素繊維シート、H型炭素繊維シート等が挙げられる。特に、炭素繊維を直線状に配置した炭素繊維材料のみならず、炭素繊維を曲線状に配置した炭素繊維材料を用いた場合にも、繊維の状態(配置)を維持したまま各々の繊維を高分子化合物で被覆することができる。このため、複雑な立体形状の炭素繊維材料も使用することができる。このような炭素繊維材料を構成する炭素繊維1本の繊維径は、より十分に高分子化合物を析出させる観点から、平均で0.001〜50μmが好ましい。このような炭素繊維材料としては、公知又は市販品を使用することができる。
本発明では、上記電着液中で、上記炭素繊維材料を作用極として電圧を印加する。具体的には、プラス(+)に帯電する高分子化合物を含むカチオン型電着液を使用する場合は炭素繊維材料を負極とすることが好ましく、マイナス(−)に帯電する高分子化合物を含むアニオン型電着液を使用する場合は炭素繊維材料を正極とすることが好ましい。
上記のようにして、本発明の炭素繊維強化プラスチックを得ることができる。このようにして得られる本発明の炭素繊維強化プラスチックは、各々の炭素繊維が高分子重合体で被覆されており、且つ、炭素繊維同士が接触していない。このように、本発明の炭素繊維強化プラスチックは、炭素繊維同士が接触していないため、従来よりも強度を高くすることができる。また、本発明の炭素繊維強化プラスチックは、複雑な立体形状であっても、各々の炭素繊維の表面に高分子化合物を析出させることができるため、所望の形状の炭素繊維材料を使用することで製造することができる。また、溶液が乾燥し、固化する前であれば所望の形状に容易に加工できる。このため、複数の炭素繊維強化プラスチックを積層する必要がないため層間剥離の心配もない。さらに、本発明では真空圧で樹脂を流し込まないため、樹脂の粘性流動の影響がなく、繊維同士の接触がなくなり界面強度を高くすることができる。なお、電着は、従来から自動車塗装法として用いられてきたため、自動車塗装のラインを基礎とした量産手法も適用可能である。
本発明の炭素繊維強化プラスチック複合材料は、本発明の炭素繊維強化プラスチックの表面に、機能性材料を含有する分散液を塗布することにより得ることができる。このように、本発明の炭素繊維強化プラスチックの表面に、機能性材料含有層を配置することで強度をさらに向上させることができる。なお、機能性材料を炭素繊維強化プラスチック中に含浸させた場合には強度を向上させることができない。
まず、1枚の炭素繊維シートを電着液に浸漬し、電着条件を検討した。電流を0.1A一定として通電を開始し、生じる電圧と抵抗の時間変化を測定した。電圧が110Vに達した時点でその電圧に保持し、通電時間は合計30分とした。通電終了後、電着液から炭素繊維シートを引き上げ、余分な電着液を洗い流した。そして、ハンドプレスをかけ、電気オーブンで170℃で8時間乾燥した。結果を表1に示す。比較例として、通電しない場合の結果も表1に示す。なお、炭素繊維の含有率は、浸漬する前の炭素繊維シートの質量と電着後の質量とから算出した。
炭素繊維シートを厚くした場合の樹脂含浸性について検討した。炭素繊維シートを2枚、4枚又は8枚重ね、実施例1と同様に通電を行った場合についての電着試験を行い、炭素繊維の含有率を測定した。なお、8枚重ねた場合のみ、電流が0.03A以下となるまで75分通電した。通電後の手順は実施例1と同様とした。結果を表2に示す。
炭素繊維シート2枚を用いて、実施例1と同様に通電を行って作製したCFRP試験片の引張強度を確認した。なお、通電時間は合計10分、15分又は20分とした。通電終了後の手順は実施例1と同様としたが、ハンドプレスの代わりにローラーを使用した場合についても検討した。得られたCFRP試験片は、ロータリーカッターで40mm×10mmに切断し、各条件2枚の引張試験片とした。引張試験は、INSTRON社製デジタル万能試験機5565により行い、負荷速度は0.3mm/sの一定とした。結果を表3に示す。
まず、2枚の炭素繊維シートを電着液に浸漬し、電着条件を検討した。電流を0.1A、0.2A又は0.4A一定として通電を開始した。電圧が110V(0.1Aの場合)又は220V(0.2A及び0.4Aの場合)に達した時点でその電圧に保持し、通電時間は合計30分とした。通電終了後、電着液から炭素繊維シートを引き上げ、余分な電着液を洗い流した。そして、油圧プレス又はローリングをかけ、電気オーブンで170℃で3時間乾燥した。結果を表4に示す。引張試験は、INSTRON社製デジタル万能試験機5565により行い、負荷速度は0.3mm/sの一定とした。また、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法により測定した。
炭素繊維シートを実施例1と同様に通電を行った。通電後の手順は実施例1と同様とした。電着直後(溶液が乾燥し、固化する前)にパイプ形状又は翼形状にした結果を図12に示す。この結果、均一に高分子化合物を析出させ、炭素繊維材料の形状に応じた炭素繊維強化プラスチックを作製できた。また、炭素繊維シートを複雑な形状にして電着した場合も同様に成形できた。
炭素繊維シートを2枚重ね、0.4Aの電流を通電し、電圧が165Vに達した時点でその電圧に保持し、通電時間は合計10分とした。通電終了後、電着液から炭素繊維シートを引き上げ、余分な電着液を洗い流した。そして、ローリングをかけた。次に、得られたCFRP試験片(厚み0.7mm)の表面に、アルミニウム板(60mm×15mm×2mm)又はSUS板(60mm×15mm×0.5mm)とを貼り付け、3MPaで240℃で3時間加熱することで圧着させつつ高分子化合物を硬化させることで、炭素繊維強化プラスチックと金属とが接合した炭素繊維強化プラスチック複合材料を得た。一方、アルミニウム板の代わりに、セラミックス(純度99.5%、見かけ密度3.959g/cm3のアルミナ(Al2O3))を使用した場合も、炭素繊維強化プラスチックとセラミックスとが接合した炭素繊維強化プラスチック複合材料が得られた。
Claims (14)
- 高分子化合物が溶解又は分散している電着液中で、炭素繊維材料を作用極として電圧を印加する電着工程
を備える、炭素繊維強化プラスチックの製造方法。 - 前記電着液がカチオン型電着液であり、前記作用極が負極である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記電着液がアニオン型電着液であり、前記作用極が正極である、請求項1に記載の製造方法。
- 前記電着工程における印加電圧が90V以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 前記電着工程における電圧印加時間が1〜300分である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた炭素繊維強化プラスチックの表面に、機能性材料を含有する分散液を塗布する塗布工程
を備える、炭素繊維強化プラスチック複合材料の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面に、プラスチックシートを積層する工程
を備える、炭素繊維強化プラスチック複合材料の製造方法。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られた炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面に、金属及び/又はセラミックスを圧着する工程
を備える、炭素繊維強化プラスチック複合材料の製造方法。 - 炭素繊維及び高分子化合物を含有する炭素繊維強化プラスチックであって、
各々の炭素繊維が高分子重合体で被覆されており、且つ、炭素繊維同士が接触していない、炭素繊維強化プラスチック。 - 前記炭素繊維と前記高分子化合物の合計量を100質量%として、炭素繊維の含有率が20〜70質量%である、請求項8に記載の炭素繊維強化プラスチック。
- 請求項9又は10に記載の炭素繊維強化プラスチックの表面に機能性材料含有層が配置されている、炭素繊維強化プラスチック複合材料。
- 請求項9又は10に記載の炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面にプラスチックシートが配置されている、炭素繊維強化プラスチック複合材料。
- 請求項9又は10に記載の炭素繊維強化プラスチックの片面又は両面に金属及び/又はセラミックスが接合している、炭素繊維強化プラスチック複合材料。
- 前記炭素繊維強化プラスチックと前記金属及び/又は前記セラミックスとの界面に接着剤が存在しない、請求項13に記載の炭素繊維強化プラスチック複合材料。
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