JP2018075346A - セボフルラン貯蔵容器の洗浄方法およびセボフルランの貯蔵方法 - Google Patents

セボフルラン貯蔵容器の洗浄方法およびセボフルランの貯蔵方法 Download PDF

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孝明 吉村
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Abstract

【課題】高価なセボフルランを洗浄液とせずに、使用済みの「セボフルラン貯蔵容器」を効果的に洗浄することのできる手段を提供する。【解決手段】セボフルラン貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程(第A工程)と、その後、セボフルランの蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で、「水を主成分とする液体」を、セボフルラン貯蔵容器の内壁に接触させ、液体を、液状にて貯蔵容器外に排出させる工程(第B工程)と、第B工程を実施した後、貯蔵容器内に乾燥気体を流通させ、貯蔵容器内壁に残った液体を、乾燥気体と共に、貯蔵容器外に排出させる工程(第C工程)とを含む、洗浄方法。【選択図】図1

Description

本発明は、医薬,特に吸入麻酔薬として広く利用されているフルオロメチル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルエーテル(セボフルラン)の貯蔵容器の洗浄方法、および貯蔵方法に関する。
フルオロメチル−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルエーテル(セボフルラン)は、使用上安全な吸入麻酔薬として広く利用されている。その合成は、特許文献1に開示されている通り、濃硫酸、フッ化水素をパラホルムアルデヒドに添加し、この反応混合物を加熱した上で、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)を滴下することによって達せられる。当該反応系から発生するガスを捕集すると、目的物セボフルランが、未反応のHFIPなどと共に回収できる。
上述のセボフルラン合成反応においては、種々の副生物が副生するが、これらは、「濃硫酸などのブレンステッド酸、ルイス酸、または樹脂等に固定化された酸」との接触(特許文献2)、「水酸化ナトリウムなどの塩基性水溶液との接触」(特許文献3)、「リン酸水素ナトリウムなどの分解抑制剤の存在下における蒸留精製」(特許文献4)等の工程を経ることによって、未反応のHFIPと共に分離・除去でき、純度の高いセボフルランを得ることができる。また、そのようにして精製した高純度のセボフルランに、少量の水(206ppm〜1400ppm)を加えると、セボフルランの長期に渡る保存安定性が格段に向上することも知られている(特許文献5)。
一方、セボフルランの貯蔵容器としては、特許文献6に、ガラス、プラスチック、スチール製の貯蔵容器を利用できる旨が記載され、特許文献7には、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルペンテン、ポリプロピレン、ポリスチレン等、特定のプラスチック部材が、貯蔵容器として好ましい旨が記載され、さらに特許文献8には、ラッカーまたはエナメルで不活性ライニングしたアルミニウム容器が、貯蔵容器として好適に使用できる旨が記載されている。
米国特許4250334号公報 特許第2786106号公報 特許第4087488号公報 特許第2786108号公報 特許第3664648号公報 特許第3183520号公報 特許第3524060号公報 特許第5801024号公報
セボフルランはエーテルであり、揮発性液体であることから、その貯蔵容器としては、密閉容器が用いられる。
特に、セボフルランを「医薬原体」として出荷、輸送するためには、貯蔵容器として大型密閉容器(例えば内容量500dmの容器)を用いるのが通常である。このような大型密閉容器は大変高価なものであるから、ロット間に渡って何度も繰り返し使用する必要がある。すなわち、セボフルランは医薬原体として製造された後、該大型密閉容器の中に充填して出荷される。消費元においてはセボフルランの消費工程(医薬としての品質評価の後、医薬としてガラス製アンプル等に小分けする工程をいう)を実施し、それが終わった後、残量が僅かとなった貯蔵容器を製造元に返送する。製造元は、該容器に対し、新たに合成した新ロットのセボフルラン充填し、再び出荷することとなる。
ここでセボフルランを医薬原体として出荷する場合は、密閉容器内には、その大部分を占めるセボフルランが充填され、好ましくは、気相部分(容器の空隙部分)には不活性ガス(窒素ガスなど)が満たされた状態にある。さらに好ましくは、上記特許文献5の知見に基づき、セボフルランは、少量の水(206〜1400ppm)が安定化剤として加えられ、安定性を一段と増した状態に置かれている。このような厳密に管理された条件である限り、セボフルランはきわめて安定であり、簡単に分解する物質ではない。
しかし、セボフルランが消費工程に付された後、セボフルラン貯蔵容器が製造元に返却されるまでの間は、セボフルラン貯蔵容器中には、少量のセボフルランが液体ないし気体として残存し、これが、比較的大容量の気相部分(不活性ガスや空気で満たされている)と共存した状態となっている。セボフルランは、このような状態に長く置かれると、通常の「密閉容器に充填された状態」とは異なる挙動を示すことがある。とりわけ、液相のセボフルランが、大量の乾燥気体に接触された状態に長く置かれると、セボフルラン中の水分が優先して揮発し、この結果、液体セボフルラン中の水分量が次第に減少するという特
異な挙動を、本発明者らは見出している(後述の「参考例1」を参照)。
一方、前記特許文献5に開示され、また後述の実施例にも示す通り、セボフルランは、水分の量が極端に少ない状態のまま過酷な条件にさらすと、その一部が「ポリエーテル」と呼ばれる類縁体化合物(その主なものは、次の「ポリエーテル1」と「ポリエーテル2」)等に変換することがある。
セボフルランは医薬(麻酔薬)であるから、このような変換生成物を、次ロットのセボフルランの中に、微量であっても混入させてはならない。なお、第17改正日本薬局方『医薬品各条 セボフルラン』 996ページによると、「セボフルラン製品中におけるセボフルランとヘキサフルオロイソプロピル メチル エーテル以外の不純物」は、ガスクロマトグラフの面積に換算して、1化合物あたり25ppmまでしか許容されず、かつそれらを合計した値は50ppmまでしか許容されない」旨が記載されている。なおかつ、こうした「不純物」は、セボフルランの合成工程、精製工程における副生物を主として想定しており、貯蔵容器の中で前回ロットのセボフルラン由来で、発生する化合物を想定しているものではない。
さらに、「消費工程」が終わってから、貯蔵容器が製造元に返却されるまでには、輸送の都合上、6ヶ月という、比較的長い時間がかかることもある。
セボフルランは、本来十分に安定な化合物であるが、以上の事情から、「消費工程」が終わった後、容器が返却されるまでの環境下では、望まれない副反応が全く生じないとは言い切れない。このような理由から、セボフルランの品質を確実に保証するため、製造元にて新ロットのセボフルランを充填し直す際には、容器内部を十分洗浄し、前回ロットで充填されていたセボフルランを、系外に確実に洗い流す操作が必要不可欠である。
ところで、液体(液体化合物や液体組成物)を収容する容器の内部を洗浄する方法としては、「その液体と全く同一種類の液体」を用いた洗浄を行うことが多い。そのような洗浄操作は一般に「共洗い」と呼ばれ、特に溶液分析を行う折の、容器の洗浄方法として広く用いられている。セボフルランの場合は特に、前述の類縁体化合物(ポリエーテル1,2)が、その基本骨格がセボフルランと共通することからも推察されるように、セボフルランへの親和性が高いため、「精製セボフルラン」を用いた「共洗い(これを「セボフルラン・リンス」とも呼ぶ)」が特にふさわしいものと、本発明者らは従来考えていた。製造現場でもその洗浄方法を長年に渡り、採用していた。
しかし、不純物を完全に除去し、それを確実に保証し得る程度に「セボフルラン・リンス」を行うためには、原則として何回にも渡って「セボフルラン・リンス」を繰り返す必要があり、必然的に「セボフルラン」の消費量は多くなる。「セボフルラン」は高価な製品であるから、「セボフルラン・リンス」は資源の無駄につながり、経済的にも不利な要因となっていた。すなわち、それにとって代わる洗浄方法の開発が求められていた。
なお、容器を洗浄する方法としては、一般に、「有機溶媒を洗浄液とする方法」が、よく知られている。しかしながらセボフルランは「吸入麻酔薬」であり、たとえ僅かな量であっても、有機溶媒が製品中に混入することは許されない。セボフルランやその類縁体と比較的親和性の高い溶媒としては、例えばメタノール、アセトン、ジエチルエーテルが挙げられる。ここに挙げたものは比較的沸点の低い溶媒であり、乾燥手段を施せば簡単に除去できるように思われるかもしれない。ところが、実際にこれらの溶媒を用いてセボフルラン貯蔵容器の洗浄を行うことは案外に難しい。すなわち、これらの有機溶媒で貯蔵容器の洗浄を行った後、貯蔵容器に加熱空気を流通させたり、貯蔵容器を真空引きにしたりすれば、確かに大部分の溶媒は除去できるが、そのような乾燥手段を施した容器に、新ロットのセボフルランを充填した後になって、セボフルラン中に溶媒のガスクロマトグラフのピークが、微量検出される場合がある(これについては後述の「比較例1」に記した)。
新たなロットのセボフルラン中に有機溶媒が検出された場合、その製品は使用不可となる。
つまり、ppmレベルの混入も許容されない「医薬品セボフルラン」の洗浄液として、これらの有機溶媒を用いることは、却って品質管理上の負荷となり、けして好適な方法とは言いがたかった。
このような諸状況に鑑み、本発明は、セボフルラン貯蔵容器を洗浄するための新規な方法を見出すことを課題とする。
上記課題を達成するために、本発明者らは鋭意検討を行った。その結果、「水を主成分とする液体」によって、使用済みの「セボフルラン貯蔵容器」を洗浄することができる、優れた方法を見出した。
すなわち、本発明は、使用済みの「セボフルラン貯蔵容器」の洗浄方法であって、該方法は、
該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程(第A工程)と、
第A工程の後、セボフルランの蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で「水を主成分とする液体」を、前記セボフルラン貯蔵容器の内壁に接触させ、該液体を、液状で該貯蔵容器外に排出させる工程(第B工程)と、
第B工程の後、該貯蔵容器内に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させる工程(第C工程)と
を含む、前記洗浄方法である。
本発明において、洗浄対象である「セボフルラン貯蔵容器」(すなわち、上述の使用済みの「セボフルラン貯蔵容器」)とは、ロット間に渡って繰り返し使用されるセボフルラン貯蔵容器であって、前回ロットで充填されたセボフルランの少なくとも一部(典型的には、充填されていたセボフルランのほとんど全て、或いは全部)が消費された後の該貯蔵容器を言う。
本発明の1つの特徴は、前記「第A工程」、すなわち、該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程にある。この「第A工程」を行うことによって、セボフルラン貯蔵容器の内壁が常にセボフルラン分子と接触する状態が維持され、続く第B工程の「水を主成分とする液体」による洗浄が効果的に行えるようになる。
すなわち、該「第A工程」によって、該セボフルラン貯蔵容器(特にその内壁面)をセボフルランの分子に親和させた状態とした後に、「第B工程」として、セボフルランの蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で「水を主成分とする液体」を前記貯蔵容器の内壁に接触させ、次いで該液体を前記貯蔵容器外に排出させる工程を試みたところ、洗浄後の容器の内部に、セボフルランと、疎水性の高い前記の「ポリエーテル1,2」が実質的に残留しない状態(1ppm未満)にまで、洗浄できることが判明した。そして、その後、前記貯蔵容器を何度再利用しても、これら(セボフルランや、ポリエーテル1,2)が貯蔵容器内に蓄積されることは、全く認められなかった(後述の「実施例」を参照)。
さらに、本発明者らは、セボフルランを該貯蔵容器中で意図的に過酷な環境下に置いて、一部を「ポリエーテル1,2」に強制的に変換し、得られた「比較的高い濃度の該ポリエーテルの溶け込んだセボフルラン」を貯蔵容器内に溜め置いて、「第B工程」に対応する洗浄工程を試みた。その結果、「水を主成分とする液体」によって、セボフルランのみならず、副生した「ポリエーテル1,2」を、セボフルラン貯蔵容器から、FIDガスクロの検出限界である1ppmを下回る量にまで、洗い流せることを見出した。とりわけ該「水を主成分とする液体」として、「実質的に水のみからなる液体」を特に好ましく使用できることが分かった。すなわち、「実質的に水のみからなる液体」を用いて「ポリエーテル1,2の溶け込んだセボフルラン」の入った貯蔵容器を数回に渡って洗浄したところ、後の実施例に示す通り、セボフルランと「ポリエーテル1,2」のどちらも、全く検出できないほど(1ppmを下回るレベルにまで)に、系外に排出できることを確認した。
セボフルランは含フッ素の鎖状エーテルであり、低極性物質であるから、水との親和性は低い。特許文献5に開示されたように、水はごく少量であればセボフルランと混ざり合い、セボフルランの安定性を向上させるという特異効果が知られているが、水がセボフルランに対して混ざり合うのは概ね1400ppmまでであり、それを超えると、水とセボフルランは、互いを強く排除し合う。
さらに、前記の「ポリエーテル1,2」となると、セボフルランに比べ炭素数が多く、疎水的な性質はさらに強く、セボフルランよりもさらに極性の低い(疎水性の大きい)物質である。
「水」は極性のごく高い液体(真空の誘電率は約80)であり、一般に有機化合物(特に炭素が多く、低極性の化合物)との親和性は低い。それゆえ、これまで、セボフルランやその類縁体を洗浄する洗浄液として「水」はきわめて不適格なものと、当初予想されていた。つまり、水を洗浄液として使用した場合、セボフルランや、とりわけ、極性がさらに低い「ポリエーテル1,2」は、貯蔵容器の内壁に残存してしまうものと考えられていた。
ところが、本発明者らは、そのような「水」によって、容器内壁の「セボフルラン類縁体(ポリエーテル1,2)」を、強力に(すなわち医薬としての品質管理にふさわしいレベルにまで高度に)洗い流せる、という知見を得た。これは当業者であっても、全く予想し得ない結果であった。その理由は定かではないが、セボフルランは少量の水であれば溶解することから、容器内に蒸気として残存する「セボフルラン」が「水」と何らかの相互作用を呈し、水と一緒になって、容器内壁の「ポリエーテル」を効果的に押し流し得たことが、1つの理由と推測される(なお、本発明を見出した後、本発明者らがあらためて文献を調べたところ、特許第3612590号公報には「ポリエーテル1」が、ブタノールと混ざり合って共沸混合物を形成する、という知見が開示されている。また、特許第5244109号公報には、「ポリエーテル1」を含む有機化合物組成物を水洗している実験例(実施例3)があるが、水洗の前後で「ポリエーテル1」の含有量は全く変わっていない。何れも「ポリエーテル1」が水とはごく親和性の低い物質であることを裏付けているに留まる技術情報である。)。
なお、念のため述べると、実際のセボフルランの流通過程においては、使用済みの「セボフルラン貯蔵容器」(消費工程の後のセボフルラン貯蔵容器)は、通常、「過酷な環境」にさらされるわけではない。それゆえ、「使用済み容器」中のセボフルランは、前述の「ポリエーテル1,2」等の類縁体に変換されることは、殆どないと考えられる。しかし、セボフルランは医薬であるから、常にワーストケースを想定して、品質管理をしなければならない。すなわち、セボフルランが万一、何らかの原因でポリエーテル1,2に変換されたとしても、次ロットのセボフルランの充填時までには、それを貯蔵容器外に確実に排出することが必須である。つまり、製品のリスクを完全に排除し、セボフルランの確実な品質を保証するために、洗浄手段は欠かせない。
その洗浄手段として、本発明者らは「水を主成分とする液体」、とりわけ「実質的に水のみからなる液体」を好ましく利用できるという知見を得、医薬製品に要求される品質保証に十分耐える、しかも、何回にも渡って安定的な容器洗浄が可能となったのである。これにより、これまでセボフルラン貯蔵容器の洗浄にかかっていた経済的負荷を、顕著に低減することができた。
本発明において「水を主成分とする液体」とは、「水を50質量%超含む一相の液体」であればよい。具体的には、「水と、水以外の液体とが混ざり合って一相をなす液体」および「実質的に水のみからなる液体」の何れかが好ましい。中でも好ましいのは「実質的に水のみからなる液体」である。すなわち、本発明者らは「実質的に水のみからなる液体」であっても、容器の洗浄を、「セボフルランによる共洗い」に比べて遜色ないレベルで行えることを見出した。
なお、洗浄操作は、特に限定はされないが、「水を主成分とする液体」を、スプレーノズルを用いて貯蔵容器の内壁に直接噴射する方式によるのが特に好ましく、中でも60℃〜90℃の、やや高めの温度の該液体を用いるのが、特に好ましい。
また、本発明は、上述の第B工程を行った後、さらに、前記貯蔵容器内に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させる工程(第C工程)を行うことを特徴とする。
この第C工程を行うことによって、セボフルラン貯蔵容器を洗浄するのに用いた「水を主成分とする液体」のうち、容器内壁に付着(残留)していた該液体を、乾燥気体と共に、容器外に排出し、乾いた状態の容器内壁にすることができる。また、第B工程を行っただけでは、貯蔵容器の気相部分にセボフルラン蒸気がなお残存することがあるが、第C工程を行うことによって、当該セボフルラン蒸気も、完全に容器外に排出され、新たなロットのセボフルランを再充填するのに適した貯蔵容器とすることができる。
上記の第A〜C工程を含む「セボフルラン貯蔵容器の洗浄工程(第1工程)」が終わったセボフルラン貯蔵容器に対して、新ロットのセボフルランを充填する工程(第2工程)を行うことにより、「容器中にセボフルランが充填された医薬製品」を製造することができる。
さらに、製造後の該「医薬製品」を、その後の「保存工程」(第3工程)によって、安定的に貯蔵することができる。
本発明によれば、次のような利点も享受できる。すなわち、「水を主成分とする液体」による洗浄を行わずに「セボフルラン・リンス」を実施する場合、「セボフルラン・リンス」の後、できるだけ早く(通常1ヶ月以内)、新ロットのセボフルランの充填を行うことが、工程管理上は必要となる。なぜなら、前述の通り、「大容量の貯蔵容器の中に、比較的少量のセボフルランが残っている」という状態は、製品が出荷される折の「貯蔵容器の中にセボフルランが所定量充填されている」状態とは、少なからず環境が異なり、そのような状態は、必要以上に長く存置させない方が好ましいからである。
すなわち、仮に「セボフルラン・リンス」を実施した場合には、それが完了した後、できるだけ早く、新ロットのセボフルランを充填する工程を完了しないと、品質管理上、最善とは言えない。
他方、本発明の「水を主成分とする液体」による洗浄を行う場合、容器内には実質的にセボフルランも副生物も存在しない状態になるため、洗浄工程が終了してから長時間(例えば、6ヶ月)放置した後、新ロットのセボフルランを充填しても、何ら差し支えがない。つまり、「容器洗浄」と「新ロットのセボフルランの充填」とを、時期的に全く切り離して行うこともでき、工程の自由度が格段に増した。
このように本発明者らは、セボフルラン貯蔵容器を「水を主成分とする液体」を使用して洗浄することができる、という、予想外かつ有用な知見を得、その知見に基づいて本願各発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の各発明を含む。
[発明1]
セボフルラン貯蔵容器の洗浄方法であって、
該貯蔵容器は、ロット間に渡って繰り返し使用されるセボフルラン貯蔵容器であって、前回ロットで充填されたセボフルランの少なくとも一部が消費された後の容器であり、
該方法は、
該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程(第A工程)と、
その後、セボフルランの蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で、水を主成分とする液体を、前記セボフルラン貯蔵容器の内壁に接触させ、該液体を、液状にて該貯蔵容器外に排出させる工程(第B工程)と、
第B工程を実施した後、該貯蔵容器内に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させる工程(第C工程)と
を含む、前記洗浄方法。
[発明2]
第A工程における、該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態が、前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、充填された液体セボフルランを実質的に全部消費した後、該貯蔵容器の気相中にセボフルラン蒸気の少なくとも一部を残存させたまま、該貯蔵容器を密閉することによって確保される状態である、発明1に記載の洗浄方法。
[発明3]
第A工程における、該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態が、前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、充填された液体セボフルランの一部を消費した後、該貯蔵容器を密閉することによって確保される状態である、発明1に記載の洗浄方法。
[発明4]
前記水を主成分とする液体が、実質的に水のみからなる液体である、発明1〜3の何れか1つに記載の洗浄方法。
[発明5]
第B工程における、水を主成分とする液体を、前記貯蔵容器の内壁に接触させることが、該液体を、液体噴射手段を用いて、該貯蔵容器の内壁に直接噴射することによって行われる、発明1〜4の何れか1つに記載の洗浄方法。
[発明6]
前記噴射するときの前記水を主成分とする液体の温度が、60〜90℃である、発明5に記載の洗浄方法。
[発明7]
前記貯蔵容器の内壁の一部又は全部の材質が、ステンレス鋼、樹脂ライニング、及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種である、発明1〜6の何れか1つに記載の洗浄方法。
[発明8]
前記貯蔵容器の内壁の一部又は全部の材質が、ステンレス鋼である、発明7に記載の洗浄方法。
[発明9]
第C工程における乾燥気体が、30〜150℃の乾燥空気である、発明1〜8の何れか1つに記載の洗浄方法。
[発明10]
第C工程が、該貯蔵容器から排出される乾燥気体の露点が所定の温度以下であることを確認することを含む、発明1〜9の何れか1つに記載の洗浄方法。
[発明11]
セボフルラン貯蔵容器の洗浄方法であって、
該貯蔵容器は、ロット間に渡って繰り返し使用されるセボフルラン貯蔵容器であって、前回ロットで充填されたセボフルランの少なくとも一部が消費された後の容器であり、
該洗浄方法は、
前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、充填された液体セボフルランを消費した後、該貯蔵容器の気相中に、セボフルラン蒸気の少なくとも一部を残存させたまま、該貯蔵容器を密閉することによって、該容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程(第a工程)と、
その後、セボフルランの蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で、前記貯蔵容器の内壁に対して、実質的に水のみからなる液体を、スプレーノズルを用いて直接噴射させることで接触させ、次いで該液体を、液状にて該貯蔵容器外に排出させる工程(第b工程)と、
第b工程を実施した後、該貯蔵容器に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させると共に、該貯蔵容器から排出される乾燥気体の露点が所定の温度以下であることを確認する工程(第c工程)と
を含み、
第a〜c工程の実施によって、該貯蔵容器中において、セボフルラン、及びその類縁体である次式で表される化合物(ポリエーテル1、及びポリエーテル2):
が、いずれも実質的に検出されない状態となることを特徴とする、
前記洗浄方法。
[発明12]
前記貯蔵容器の内壁の一部又は全部の材質が、ステンレス鋼製であり、
前記実質的に水のみからなる液体の温度が、60〜90℃である、
発明11に記載の洗浄方法。
[発明13]
第B工程又は第b工程が、精製セボフルランを用いた前記貯蔵容器の洗浄工程を含む、発明1〜12の何れか1つに記載の洗浄方法。
[発明14]
発明1〜13の何れか1つに記載の方法で洗浄された貯蔵容器の中に、新ロットのセボフルランを充填することを含む、貯蔵容器中にセボフルランが充填された医薬製品の製造方法。
[発明15]
前記充填後の新ロットのセボフルランの液組成を、ガスクロマトグラフィーによって測定することを含む、発明14に記載の製造方法。
[発明16]
発明14又は15に記載の方法によって製造される、貯蔵容器中にセボフルランが充填された医薬製品。
[発明17]
次の第1〜第3工程を含む、セボフルランの貯蔵方法。
第1工程:発明1〜13の何れか1つに記載の方法でセボフルラン貯蔵容器を洗浄する工程;
第2工程:前記洗浄後の貯蔵容器の中に、新ロットのセボフルランを充填する工程;及び
第3工程:前記充填後のセボフルラン貯蔵容器を貯蔵する工程。
本発明によれば、安価な水を主成分とする液体によって、使用済みの「セボフルラン貯蔵容器」を効果的に洗浄できるという効果を奏する。すなわち、貯蔵容器の内部に、セボフルランや、類縁体であるポリエーテル1,2が実質的に全く検出されない状態にまで、洗浄することが可能になるという効果を奏する。
また、本発明によれば、該貯蔵容器の洗浄工程と、その後のセボフルランの充填工程を切り離して実施することも可能であり、工程の自由度が増大する。
「使用済みセボフルランを含む貯蔵容器の洗浄方法」、「貯蔵容器中にセボフルランが充填された医薬製品の製造方法」ならびに「セボフルランの貯蔵方法」の関係を図式化したものである。 第1工程「第B工程」の、好ましい実施態様の例を示したものである。 第1工程「第B工程」に用いる「ノズル<a>」の概略を示したものである。 第1工程「第C工程」の、好ましい実施態様の例を示したものである。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる特願2016-215676号明細書の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての刊行物、例えば先行技術文献、及び公開公報、特許公報その他の特許文献は、参照として本明細書に組み込まれる。
本願各発明には、次の第1〜第3工程が関係している(発明17を参照)。
第1工程:「セボフルラン貯蔵容器」を「水を主成分とする液体」によって洗浄する工程。
第2工程:前記第1工程が終了した後の該貯蔵容器の中に、新ロットのセボフルランを充填する工程。
第3工程:前記第2工程に引き続き、該セボフルランを充填したセボフルラン貯蔵容器を貯蔵する工程。
本願発明のうち「洗浄方法の発明」は、上記の「第1工程」を構成要素とする。該「第1工程」は、具体的に「第A工程」〜「第C工程」を備える。
また、「製造方法の発明」は、上記「第1工程」及び「第2工程」を構成要素とする。
また、「貯蔵方法の発明」は、上記「第1工程」「第2工程」及び「第3工程」を構成要素とする。
以下、「第1工程」から順に、詳述を行う。なお、以下の実施形態における各構成およびそれらの組み合わせなどは一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換およびその他の変更が可能である。また、本発明は実施形態によって限定されることはない。
[1]第1工程について
第1工程は、「セボフルラン貯蔵容器」を「水を主成分とする液体」によって洗浄する工程である。
[セボフルランについて]
本発明で使用するセボフルランは、全身麻酔薬として広く用いられているものを使用できる。セボフルランの合成方法は特に限定されないが、前記特許文献1〜5に開示された方法によって製造したセボフルランを、好ましく使用することができる。
[「セボフルラン貯蔵容器」について]
本発明において、洗浄対象となる「セボフルラン貯蔵容器」(いわゆる、使用済みのセボフルラン貯蔵容器)とは、ロット間に渡って繰り返し使用されるセボフルラン貯蔵容器であって、前回のロットで充填されていたセボフルランの少なくとも一部が消費された後の、該貯蔵容器を言う。
セボフルランはエーテルであり、揮発性が高いことから、貯蔵容器としては、セボフルランを密閉貯蔵できる構造が求められる。形状や材質に特別の制限があるわけではないが、容器全体はステンレス鋼などの金属製のものが好ましい。また、該貯蔵容器の内壁の一部又は全部が、ステンレス鋼(鉄−クロム−ニッケルを含む合金)、樹脂ライニング、及びガラスからなる群より選ばれた、少なくとも1種の材質であることが好ましい。特に内壁がステンレス鋼、樹脂ライニングの貯蔵容器は、物理的強度、化学的な耐久性(耐食性)が高く、セボフルランを密閉条件下で貯蔵するのに適している。この中でも内壁がステンレス鋼のものは構造上も単純で、耐久性が特に高いことから、特に好ましい。ステンレス鋼としては、SUS304、SUS316、SUS316Lなどとして知られるオーステナイト系ステンレス鋼が特に好ましい。
なお、セボフルランは揮発性液体であって、例えば25℃において約0.026MPa、35℃において約0.041MPa、45℃において約0.061MPaという蒸気圧を有する。あらかじめ不活性ガス(窒素等)で満たしておいた貯蔵容器内に、セボフルランの液体を導入する場合、該液体を容器内に導入、封入した後に、その液体の一部が、貯蔵容器中の気相部分にゆっくり気化していくのが通常である。このことから、貯蔵容器内は、その後温度に変わりがなければ、通常、微加圧状態になる。また、充填を行った後、外気温が大幅に低下した場合には、貯蔵容器内が負圧(1気圧未満)となることもある。したがって、セボフルランの貯蔵容器としては、内圧の変動(増減)には耐えられる構造のものが好ましい。具体的には、セボフルランをこのような条件で貯蔵容器に充填した場合、内圧は概ね0.08MPa〜0.13MPaの範囲内で変動する。したがって「内圧(絶対圧)で0.17MPaに耐えられる容器」であれば、このような圧力変動を十分にカバーしているといえ、好ましい。容器の耐圧性能に特に上限はないが、「0.3MPa以上の絶対圧に耐える容器」になると、設計、保守が煩雑になることがある。しかもセボフルラン貯蔵容器の場合、通常0.3MPa以上に内圧が上がることはないので、通常0.3MPa以上の絶対圧に耐える貯蔵容器は必要でない。
本発明でいう、セボフルランの「消費工程」とは、具体的には、例えば、該貯蔵容器に充填されているセボフルランを品質評価した後、該貯蔵容器から採取し、医薬としてガラス製アンプル等に小分けする工程等を指す。この「消費工程」においては、採取用ディップ管を、貯蔵容器外から貯蔵容器内のセボフルランの液相部分に挿入した上で、別の加圧用の孔から、該貯蔵容器の気相部分に、不活性ガス(例えば窒素など)を導入して、微加圧をかければよく、そうすることでセボフルランの液体をディップ管から採取することができる。
「消費工程」においては、特に限定はされないが、前回のロットで該貯蔵容器に充填されていたセボフルランの液体部分のほとんどが「消費」され、ほぼ空になった状態で、セボフルラン製造元に返却されることが一般的である。
セボフルラン貯蔵容器の内容積には、特段の制限はない。セボフルランをまとまった規模で輸送するのに適した大きさであれば良く、例えば100dm〜10000dmという幅広い範囲の内容積の貯蔵容器を用いることができる。勿論、これより大きい容器を用いても良いし、この範囲より小さな容器を用いても良い。中でも、内容積が300dm〜1000dmの場合は、本発明における「セボフルラン貯蔵容器」としては好ましいものである。
[「水を主成分とする液体」について]
本発明における洗浄剤である「水を主成分とする液体」とは、「水を50質量%超含む一相の液体」であればよい。具体的には、「水と、水以外の液体とが混ざり合って一相をなす液体」および「実質的に水のみからなる液体」の何れかが好ましい。中でも好ましくは、「実質的に水のみからなる液体」である。
ここで「水以外の液体」とは、例えば、アルコールやアセトンなど、水と混ざって一相の液体を形成できる液体が挙げられる。さらに、水との親和性は低くとも、ごく少量であれば水と混ざり合って一相の液体を形成できる液体であれば、水と混ざって一相の液体を形成する組成範囲内において、本発明でいう「水以外の液体」に該当する。
前記「水以外の液体」としては、特に限定はされないが、例えば、親水性溶媒として知られるメタノール、エタノール、2−プロパノール、アセトン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、エチレングリコール、トリメチルアミン、トリエチルアミンなどを挙げることができる。仮にそのような「水と水以外の液体」からなる混合液体を用いる場合、水の質量は液体全体の質量に対して50質量%超であればよいが、80質量%超であることが好ましく、90質量%超がさらに好ましい。但し、「水以外の液体」としてセボフルラン以外のものを水に混ぜて、洗浄溶媒として使用した場合、後述の第C工程を、当該「水以外の液体」が全く検出されなくなるまで行う必要があり、当該「水以外の液体」の含量も検査項目にしなくてはならない分、負荷となることがある。
ここで、本発明者は、前記「水を主成分とする液体」として、「実質的に水のみからなる液体」が好適に使用できることを見出した。このため、本発明の第1工程に用いる「水を主成分とする液体」としては、「実質的に水のみからなる液体」を用いることが特に好ましい。
使用する水の種類に、技術上は特別な制限はない。通常の水道水、イオン交換水、蒸留水、逆浸透水(RO水)などを適宜使用することが可能である。但し、セボフルランは医薬品として用いることのできる物質であるから、不純物の少ない水を用いることが好ましく、イオン交換水、蒸留水を使用することが特に好ましい。イオン交換樹脂を通過させ、電気伝導率が所定値1μS/cm以下となるイオン交換水を用いることは、特に好ましい態様の1つである。
[第A工程について]
第1工程における第A工程は、セボフルラン貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程である。洗浄対象となる該貯蔵容器については、先に詳述したとおりである。この第A工程が行われた結果、貯蔵容器内は常にセボフルランの分子と接触した状態が維持され、続く第B工程における「水を主成分とする液体」による洗浄の効果を確実に得られる。仮にこの第A工程が行われず、容器内壁が乾いた状態になると、続く、第B工程で「水を主成分とする液体」による洗浄を行っても、確実な洗浄効果を期待することは難しくなる。つまり、第A工程は、本発明において重要な役割を有する。
ここで第A工程の、「セボフルラン貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態」を確保する手段に、特別の制限があるわけではない。該手段としては「第1態様」〜「第3態様」までが挙げられる。以下、説明する。
(1)第1態様
第A工程の「第1態様」は、「前回ロットで充填されたセボフルランの「消費工程」で、液体セボフルランの実質的に全てを採取した後、該貯蔵容器の気相中に、セボフルラン蒸気を残存させたまま、該貯蔵容器を密閉する」という手法である。すなわち、該セボフルランの「消費工程」において、充填されたセボフルランの液体部分の実質的に全部を消費(採取)した場合、容器内の気相中には、なお多量のセボフルラン蒸気が残存している。例えば25℃、大気圧において、セボフルランの蒸気圧は約0.026MPaであることから、500dm容器の場合でかつ25℃で、液相のセボフルランを実質的に全て採取した場合、気相部からのセボフルランの損失がなければ、気相部にはおよそ1kgのセボフルランが残存するものと推定される。
そして、本発明者らが見出したところによれば、第A工程における「気相部のセボフルラン蒸気」として、飽和蒸気圧に相当するほどの量は必須ではない。具体的には、25℃に換算して0.0026MPa(25℃における飽和蒸気圧に比べると10%)以上のセボフルランが気相中に存在していればよく、0.010MPa(25℃における飽和蒸気圧に比べると40%)以上のセボフルランが気相中に存在していることが好ましく、0.020MPa(80%)以上のセボフルランが気相中に存在していれば、さらに好ましい。
通常、セボフルランの充填された貯蔵容器からのセボフルランの採取は、セボフルランの液相部にディップ管を挿入し、別の加圧用の孔から窒素などで容器内を微加圧にし、その加圧の力によって当該ディップ管からセボフルランの液体を取り出すことで、効率的に実施できる。この方法でセボフルランを取り出す場合、仮にセボフルランの液体が実質的に全て採取されたとしても、容器内部には、ほぼ飽和に近いセボフルラン蒸気が残ることになる。
セボフルラン蒸気は、空気や窒素に比べて、比重は相当に大きく、原則として貯蔵容器の下部(ボトム)に留まるからである。したがって、セボフルランの消費工程が終わった後、容器の下部を開けたり、或いは不活性ガスを流通したりせずに、すぐに(例えば5分以内、好ましくは1分以内に)ディップ管の栓を閉止すれば、「飽和蒸気圧にほとんど等しい量のセボフルラン蒸気」を、そのまま容器内に残すことができる(もしくは、ディップ管を取り除いた後、直ちに貯蔵容器を密栓してもよい)。上述した「25℃換算で0.0026MPa(セボフルランの蒸気圧の10%)に相当する量のセボフルラン蒸気が存在する状態」は、このような操作によって、十分に確保できる。
(2)第2態様
第A工程の別の手法(第2態様)は、「前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、セボフルランの一部を消費(採取)し(言いかえれば、一部を敢えて液体として該貯蔵容器に残しておき)、この状態で該貯蔵容器を密閉する」という手法である。この手法の場合、貯蔵容器内に「液体のセボフルラン」が残ることになるので、気液平衡が成立し、貯蔵容器内をセボフルランの飽和蒸気圧で満たすことができる。
この態様の具体的方法としては、「セボフルランの消費工程において、液体のセボフルランに挿入するディップ管の位置を調整して、セボフルランの液相の一部が消費(採取)されないようにする」、「セボフルランの消費工程において、液体セボフルランがなくなったのを確認した時点で、意図的に、所定量のセボフルランを容器内に注入する」などの手法を挙げることができる。
「第2態様」によれば、セボフルラン貯蔵容器が「セボフルランの消費工程(採取工程)」と同一の温度(或いはセボフルランの消費工程時よりも低い温度)に置かれる限り、液相セボフルランが容器内に安定的に存在する(つまり気液平衡が成立する)こととなり、容器内壁はセボフルランの「飽和蒸気」に接触されている状態を保つことが出来る。
(3)第3態様
第A工程の別の方法(第3態様)としては、「前回ロットの消費工程の後、何らかの理由で、貯蔵容器内にあったセボフルランの蒸気を全てパージしたのち、セボフルランを外部から別途、容器内に補給する」という実施態様も採用することができる。しかし、「一旦パージしてから、あらためて外部からセボフルランを供給する」ということは実益に乏しい。既に説明した通り、大容量の貯蔵容器の場合、気相部に所定量のセボフルラン蒸気を存在させるには、多量のセボフルランを必要とし、セボフルランの無駄につながるから、「第3態様」は、本発明の最上の手法とは言えない。
残る「第1態様」と「第2態様」のどちらを実施するかは、当業者が適宜選択することができる。「第2態様」の方は、貯蔵容器内に余剰のセボフルランを存在させる必要があるが、容器内にセボフルランの飽和蒸気を安定的に存在させられる手法である。他方、「第1態様」の方では、液体のセボフルランが実質的に全部採取されているため、容器内のセボフルランの蒸気圧は「飽和蒸気圧には及ばない(わずかに低い値となる)」になるのが普通である。
しかし既に述べた様に、本発明者らは、「第1態様」であっても、貯蔵容器の内壁をセボフルランに親和させる状況を作り出すことは十分可能であることを見出した。セボフルランの浪費をできるだけ防止するという観点からは、「第1態様」の方が好ましいものと考えられる。
第A工程を第1〜第3態様の何れの手法で行う場合であっても、第A工程によって、容器内の気相部分にセボフルランの蒸気が存在する状態を確保した後は、例えば、少なくともその状態を60分間維持することが、容器内壁をセボフルランの蒸気に馴染ませるためには、好ましい。さらには、24時間(一日間)維持することが一層好ましい。尤もこれまでの説明からも明らかなように、通常は、セボフルランの「消費工程」が終了し、容器が密閉された時点で、本発明の「第A工程」も完了していることになる。この状態のまま、使用済みのセボフルラン貯蔵容器は製造元に返送(輸送)される。したがって、通常は、セボフルランの消費工程が終わった後、直ちに容器を密閉する限り、特別な操作をしなくとも、「容器内の気相部分にセボフルランの蒸気が存在する状態を確保した後、その状態を1時間(好ましくは24時間)維持する」という条件は、満たされることになる。
[第B工程について]
第B工程は、第A工程が終了した後、セボフルラン蒸気が貯蔵容器に存在する状態で、「水を主成分とする液体」を、該セボフルラン貯蔵容器の内壁に接触させ、次いで該液体を、液状で該貯蔵容器外に排出させる工程である。第B工程を実施すれば、該貯蔵容器内のセボフルランが前記液体によって該貯蔵容器外に洗い流され、万一「ポリエーテル1,2」が存在していた場合には、該類縁体も、セボフルランと一緒に貯蔵容器外に、確実に排出することができるという、驚くべき効果を奏する。
本発明においては、予め第A工程によって該貯蔵容器内にセボフルラン蒸気が存在する状態にしておき、その状態を保ったまま(つまり内壁がセボフルラン蒸気と接触した状態を保ったまま)、第B工程を開始するのがよい。そうすることで、本発明の第B工程の高い洗浄力を発揮させることができる。尤も、そのための特別な操作は通常必要でなく、第A工程が終了した該貯蔵容器に、「水を主成分とする液体」を導入する小さな孔(導入孔)を設け、別途圧抜きの措置を講じた上で、すぐに該液体の導入を始めればよい。そうすることで、第A工程で達成された「セボフルラン蒸気と内壁との接触状態」を、第B工程における「水を主成分とする液体と内壁との接触状態」へと、間断無く置き換えることができる。
本発明の第B工程における「セボフルラン蒸気が貯蔵容器に存在する状態で、「水を主成分とする液体」を、該セボフルラン貯蔵容器の内壁に接触させる」とは、該液体の貯蔵容器内壁への接触開始時点において、セボフルラン蒸気が貯蔵容器内に残存していることをいう。その後、該液体による洗浄を続行する際にも、セボフルランの蒸気は容器内に存在していることが好ましい。とりわけ、後述の「第2態様」の場合には、該液体の使用量が抑制できるので、セボフルランが系外に排出される速度が遅く、該液体の内壁へ接触を行う間に渡り、セボフルランの蒸気が容器内に残りやすく、好ましい。
前述の第A工程が完了した時点で、貯蔵容器内に液体のセボフルランが残っている場合(すなわち、前述の「(第A工程の)第2態様」の場合)、第B工程を開始する前に、該液体のセボフルランを下部の液体排出孔(ドレイン)から、排出させても良い。特に、残存する液体セボフルランの量が多いときには、一旦液体セボフルランを排出させ、それが済んだ後に、第B工程を開始する方が、セボフルランが無駄になりにくいため、好ましい。
なお、貯蔵容器を完全に密閉したまま、第B工程の「水を主成分とする液体の導入」を行うことは、(内圧が高まるため)通常困難である。したがって、該貯蔵容器には、圧抜きの措置を講ずることが好ましい。
既に述べたように、本発明において「水を主成分とする液体」とは「水を50質量%超含む一相の液体」であればよく、中でも好ましくは、「実質的に水のみからなる液体」である。上記の通り、「実質的に水のみからなる液体」であっても、セボフルラン貯蔵容器の洗浄を効果的に行うことができるということが本発明において見い出された大きな特徴の一つであり、それによって、「水以外の溶媒」の容器中への残留を制御・管理するという煩雑さを逃れることができる。
「実質的に水のみからなる液体」とは、例えば、液体を構成する物質のうち99.9質量%以上が水分子である液体が挙げられる。既に述べたように、イオン交換水、蒸留水が特に好ましいが、そのような水であれば、「液体を構成する物質のうち99.9質量%以上が水分子である」という条件は十分満たされている。
第B工程において用いる「水を主成分とする液体」の温度には特段の制限はないが、60℃〜90℃という、温水もしくは熱水の温度領域の液体を使用することが特に好ましい。この温度があまり低いと、洗浄効果が十分に発揮できず、洗浄に必要な液体の量が増えることがあり、逆に90℃を超えると、温度が高すぎて取扱いが煩雑になることがある。
第B工程においては、「水を主成分とする液体」を、セボフルラン貯蔵容器の内壁の全面に接触させることが、容器の内壁に残存する化学種を確実に洗い流すという観点から、望ましい。そのための方法に制限はないが、代表的な手法として、次の「第1態様」と「第2態様」を挙げることができる。
(1)第1態様
第B工程の「第1態様」は、「水を主成分とする液体」を貯蔵容器内一杯に注ぎ入れ、次いで好ましくは所定時間攪拌した後、ドレインから該液体を排出する、という手法である。この手法であれば、煩雑な操作を要せず、貯蔵容器の内壁全面に「水を主成分とする液体」を、確実に接触させることができる。すなわち、この態様の場合、洗浄を簡便な操作で確実に行うことができる。尤も「水を主成分とする液体」を貯蔵容器内に一杯に加えて、所定時間攪拌した後、排出する、という操作を、少なくとも3回繰り返すことが好ましく、5回以上行うとさらに好ましい。
この手法では、一旦、貯蔵容器内に「水を主成分とする液体」を一杯に入れる必要があるので、排気口は、通常、貯蔵容器の最上部に設けることになる。
この「第1態様」の場合、洗浄を簡便な操作で確実に行えるという利点はある。しかし、「水を主成分とする液体」が、第B工程の操作を1回行うためには、該貯蔵容器の内容積に等しい量、必要になってしまうという欠点がある。とりわけ、500dmというような大容量の貯蔵容器を洗浄するときには、大量の「水を主成分とする液体」を必要とするため、経済的に不利になることがある。
(2)第2態様
第B工程の「第2態様」は、「水を主成分とする液体」を、前記貯蔵容器の内壁の全面に液体噴射手段によって、直接噴射させるという手法である。液体噴射手段としては、スプレーノズルやシャワーといった慣用の手段が挙げられる。この手法は、一定の操作が必要であるが、水の使用量が上記第1態様より有意に少なくても、満足のいく洗浄が行えるという点で、優れた手法である。また、先に述べたとおり、この方法では、水の使用量を抑制できるため、セボフルラン蒸気を長く気相部に残存させやすく、仮に「ポリエーテル1,2」が存在していた場合に、これらの物質をより強力に洗い流せる、という点でもメリットがある。
この「第2態様」の特に好ましい態様は、該液体をスプレーノズルから噴射して、容器の内壁に、ノズルから出た該液体の液滴を直接衝突させるという操作を、ノズルの向きを徐々に変えていき、容器の内壁全面に、液滴の直接衝突が行われるまでの間、続けるというものである。
「水」という溶媒は、その強い分子間水素結合によって、塊を作りやすい性質がある。よって、ノズルから「水を主成分とする液体」を特定の個所(例えば貯蔵容器内部の最上部)のみに噴射すると、その後、容器内を落下する該液体は、特定の個所にスジを作って落下してしまいやすく、内壁全面にうまく接触しないことがある。該液体をノズルから噴射させて、容器の内壁の全面に直接衝突させれば、そのような事態を防ぐことができ、貯蔵容器内壁の全面に確実に、「水を主成分とする液体」接触させることができる。
洗浄液の噴射法に、特別な制限があるわけではなく、手動・自動を問わず、幅広い方法を採用できる。しかし、セボフルランの貯蔵容器としては前述の通り、ステンレス鋼等の不透明な材質のものを採用するのが一般的であり、その場合「内部の様子を目視で観察しながら、内面の全体に水を噴射する」ということは、通常容易ではない。
こうしたことから、第B工程の「第2態様」は、図2に示すような、「水平方向に回転可能なスプレーノズル」を用いて実施することが、特に好ましい。図2−1は、セボフルラン貯蔵容器を、水平方向の一方向から眺めた立面断面図である。図2−2は同じ状態を貯蔵容器の上面から観察した平面断面図である。
この貯蔵容器の内部の中央(水平方向に対しても、垂直方向に見ても、中央となる位置)付近に、「水平方向に回転可能なスプレーノズル<a>」が置かれている。該<a>は、外部のタンクと接続しており、ここから「水を主成分とする液体」が<a>に供給される。<a>は、供給された水の流れを「<a>からみて右斜め上の90°」と「左斜め下の90°」の方向に、同時に噴射させる機能が備わっている。「<a>からみて右斜め上の90°」の方向に水が噴射される結果、水の流れは「平面領域1」を形成する。「左斜め下の90°」の方向に水が噴射される結果、水の流れは「平面領域2」を形成する。「平面領域1」と「平面領域2」は<a>を介して接続しており、なおかつ、これらは、図2−1の観察者と<a>とを結ぶ直線と直交する平面上(単一の平面上)に乗っている。
<b>は液体を排出するための排出孔(ドレイン)であり、「第2態様」では圧抜きの役割も果たすので、液体の噴射中は、開いておけばよい。
<c>と<d>は、図2−1の「平面領域1」が容器内壁と交差する曲線の上端と下端を指している。このうち、<c>は貯蔵容器の中央最上点と重なる。一方、<e>と<f>は、図2−1の「平面領域2」が容器内壁と交差する曲線の下端と上端を指している。このうち、<e>は貯蔵容器の中央最下点と重なる。
図2−1においては、ノズル<a>から噴射された洗浄液が「平面領域1」と「平面領域2」を通過して、c〜dにかけての曲線、及びe〜fにかけての曲線に、直接衝突している様子を示している。
次に、図2−1に示される、水が「<a>からみて右斜め上の90°」と「左斜め下の90°」の方向に同時に噴射するという状態はそのまま保ちつつ、<a>を水平方向に一定の回転速度で360°回転させる。その結果、上述のc〜dにかけての曲線、及びe〜fにかけての曲線に相当する曲線が、貯蔵容器の内壁360°に渡って連続的に生じることになる。すなわち、容器の内壁の全ての個所に、噴出する「水を主成分とする液体」が直接衝突する結果となる。それによって、上記「第1態様」よりも有意に少ない「水を主成分とする液体」でも容器内をまんべんなく洗浄することができる。
ノズル<a>から噴出される水圧は、確実に容器内壁の全面に「液体」を直接衝突させる必要があることから、常圧を上回っていることが好ましく、500dmのような大型の貯蔵容器の場合、0.2〜1MPa(絶対圧)が好ましい。<a>の水平方向の回転速度に、特に制限はないが、0.1秒〜10秒で1周するというのは、好ましい態様の1つである。尤も<a>の回転速度は必ずしも臨界的(critical)なものではなく、容器の内壁の全体に「液体」が行き渡るのであれば、特段の制限はない。(なお、このノズル<a>の回転は、「液体の噴出圧」を原動力とすることができる)。
このような液体噴射を行う機能のあるノズル<a>としては、特段の制限はない。しかし、例えば「CERJET(登録商標)(株式会社いけうち)」として入手可能なノズルを用いることが好ましい。このようなノズル<a>の概略図を図3に示す。このように、ノズルの片方の面と、その正反対の面に、それぞれスリットが入っており、水の供給と共に、それぞれのスリットから水が噴射される。一方のスリットからは「平面領域1」を形成するように水が噴射され、もう一方のスリットからは「平面領域2」を形成するように水が噴射される。(この例では、ノズル<a>は「液体の噴出圧」を原動力として水平方向に回転する。)水が外部貯蔵庫から供給される点と、スリットの位置関係、スリットの長さや幅は、液体が所望の方向に噴射されるものを選択する。ノズル<a>としてこのような構造のものを用いる場合、スリットの幅は0.4mm〜1mm(特に好ましくは0.5〜0.7mm)であることが好ましい例である。
なお、該スプレーノズルを作製した直後は、フランジ付近にアクリル等の透明な材質のものを用いて外から状況を把握できるようにするか、容器内部に監視カメラを設けるなどし、上記「第2態様」の手法によって、容器内壁に液体が満遍なく衝突していることを確認することが好ましい。そうすることで、最適な該液体の噴出のさせ方、或いはノズルの回転の仕方を微調整することができ、一たび、最適な操作条件が見出されたら、その操作条件をバリデートし、以後再現実施することで、内部の様子を逐一確認しなくとも、有効な洗浄が行えるようになる。
この「第2態様」を採用する場合、「液体噴射手段を用いた該液体の噴射」を、休み無く行っても良い。しかし所定時間(例えば15秒間)該液体の噴射を行った後、所定時間(例えば30秒)待機し、内壁に存在していた液体の相当部分が、ドレインから排出されるタイミングを見計らって再度噴射を始める、という操作を繰り返す方法も採用できる。
洗浄液を節約する観点からは後者の方が好ましい。この方法で例えば10回に分けて「液体噴射手段を用いた該液体の噴射」を行う場合には、500dmの容器に換算して、総量30dm〜500dm、特に好ましくは、50dm〜200dmの水であっても、十分な洗浄を行うことができる。
第B工程の「第2態様」を「実質的に水のみからなる液体」を用いて行う場合も、該液体の必要量は、500dm容器に換算して、通常30dm〜500dmであり、好ましくは50dm〜200dmである。ただ、既に述べた様に、一度に全液体を噴射させるよりも、複数回に渡って少量ずつ該液体の噴射を行う方が、より少ない洗浄液体で、優れた洗浄効果を発揮できるから、「水の量」それ自体は、発明を構成する臨界的な要素とはならない。つまり、「実質的に水のみからならなる液体」の量や、洗浄回数をどのように設定するかについては、貯蔵容器の材質や形状によっても異なり、最適な条件は必ずしも一通りでない。このような条件は当業者の技術常識によって最適化することができる。最適化した場合、その条件をバリデートして、以後その条件を守るように実施すれば良い。
このバリデートの方法としては、第B工程「第2態様」を、所定の方法で実施した後、例えば所定量のメタノール(注:セボフルランやその類縁体ポリエーテルは、メタノールには非常によく溶ける)をメタノールが貯蔵容器の内壁に完全に接触するように、注意深く該容器内に注ぎ、所定時間の経過後に貯蔵容器下部のドレインから当該メタノール洗液を収集し、それをガスクロマトグラフ分析する、という方法が考えられる。より具体的には貯蔵容器の内容積を100としたとき、注ぎ込むメタノールの容量は0.1〜0.5(特に0.2〜0.4)とすることが好ましい。メタノール投入後、例えば1時間経過後、ドレインから回収できるだけのメタノール洗液(通常、投入したメタノールに比べて50%程度の量となる)を回収し、それをガスクロマトグラフィーで測定すれば良い。本発明者らが見出したところによると、ひとたび最適条件をバリデートした場合、その条件を忠実に守って第B工程を行う限り、それ以降、メタノール洗液を捕集して分析を行っても、セボフルランや類縁体であるポリエーテル1,2が、検出下限である1ppmに達する量、検出されることはなかった。
第B工程を「第1態様」で行うか、「第2態様」で行うかに依らず、「洗浄液の排出」は通常、該貯蔵容器の下部に液体排出用の孔(ドレイン)を設け、ここから行うことができる。「第1態様」の場合には、「水を主成分とする液体」を注入する間、ドレインは全閉止する必要があり、その代わりに、貯蔵容器の上部に、開口を設け、ここから圧抜きをする。一方「第2態様」の場合は、洗浄液の噴射を行っている間、ドレイン(第2態様では、図2−1の<b>がこれに相当する)は開いておくことができる。そうすれば、貯蔵容器の内壁に接触した洗液は、そのままドレインから排出され、なおかつこのドレインが圧抜きの役割も兼ねる。なお、セボフルラン蒸気の排出をできるだけ避け、長い時間、セボフルラン蒸気を貯蔵容器中に存在させるという観点からは、圧抜きの孔を貯蔵容器の上部に設け、洗浄液の噴射を行っている間は、ドレインを閉止し、上部の圧抜き孔を開ける、という方法もあり、当業者が適宜採用できる。
なお、第B工程は「水を主成分とする液体」を洗浄溶媒として、セボフルラン貯蔵容器を洗浄するという工程であるが、「水を主成分とする液体」と併せて、「精製セボフルランを洗浄液体とする洗浄(セボフルラン・リンス)」を適宜、組み合わせて行うこともでき、本発明の範疇に含まれる。しかし、これまでに述べた様に、第B工程を、専ら「水を主成分とする液体」(特に好ましくは「実質的に水のみからなる液体」)を用いて実施しても、貯蔵容器の洗浄自体は問題なく行え、それを複数回の出荷分(ロット)、繰り返しても、「ポリエーテル1,2」は、貯蔵容器内に濃縮されることはないというのが、本発明の重要な知見の1つである。したがって、「セボフルラン・リンス」を組み合わせることは通常、必要ではない。
敢えて、「セボフルラン・リンス」を第B工程の中で行う場合、「セボフルラン・リンス」を第B工程中のどのような順序で行うかについて、特別な制限はない。但し、「水を主成分とする液体」による洗浄を行った後、最後に「セボフルラン・リンス」を行う場合、洗浄の後、貯蔵容器中に少量のセボフルラン液体が残存することになるので、「セボフルラン・リンス」を実施した後、できるだけ早く(例えば室温であれば、1ヶ月以内に)、充填工程(第2工程)を行うことが好ましい。
第B工程は、次の第C工程(乾燥気体の流通)と交互に、複数回実施してもよい。但し、2つの工程を交互に複数回実施することは、工程を複雑にするものであるし、本発明者らが見出したところによると、第B工程と第C工程は、この順に1回ずつ行えば、十分な効果を生じるので、複数回の実施は通常必要ではない。
[第C工程について]
第C工程は、前記第B工程を行った後、該貯蔵容器内に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させる工程である。この第C工程を行うことによって、第B工程で使用した「水を主成分とする液体」のうち、容器内壁に付着(残留)していた該液体を、乾燥気体と共に、容器外に円滑に排出することができる。この操作によって、「貯蔵容器内壁に残った液体」の一部は気化されて容器外に排出され、一部は液体のままで、容器外に排出される。また仮に、第B工程が完了した時点で、容器の気相部分にセボフルランの蒸気が微量残存することがあったとしても(但し、実際には、第B工程完了時に、セボフルランの蒸気はほぼ完全に外部に排出されていることが多い)、第C工程によって、乾燥気体の流れと共に容器外に排出される。
すなわち、第C工程によって、次回ロットのセボフルランの充填に適したセボフルラン貯蔵容器を再生することができる。
なお、前記した通り、第B工程と第C工程を交互に組み合わせて複数回行うことも可能であるが、通常、第B工程と第C工程は1回ずつで十分である。なお、第C工程を実施した後で、再度第B工程を実施する場合には、必ずその後第C工程を実施し、容器内壁に残った液体成分を容器外に排出すべきことは言うまでもない。
これまで述べてきたように、セボフルランには少量の水が安定剤として添加され、製品として出荷されることが多い。しかし、「安定剤としての水」はあくまで、次回ロットで合成され、精製されたセボフルランに対して、その量を厳密に管理した上で、加えられなくてはならない。そのため、当該第C工程によって、「セボフルランの貯蔵容器の洗浄に用いた水」を確実に貯蔵器から排出することは、セボフルランの医薬品としての品質保証上、きわめて重要である。
第C工程に用いる乾燥気体の種類に特別な制限はないが、乾燥空気が好ましく採用される。化学的により不活性な乾燥窒素や乾燥アルゴンも使用できるが、本発明では第B工程までで、内壁に液体状態で存在するセボフルランやセボフルラン類縁体は全て貯蔵容器外に排出されているため、安価な乾燥空気でも十分であり、それが特に好ましい。
乾燥空気の調達方法に制限はないが、例えばコンプレッサーで圧縮して水分を液化させ、残った気相部分を取り出し、「ゼオライト、酸化アルミニウム等の乾燥剤を有効成分とする除湿装置」を通過させ、さらに除湿する方法が簡便で好ましい。乾燥気体の乾燥度に特別な制限はないが、乾燥度の高い乾燥気体ほど、第C工程を短時間で完了させることができる。このため通常、乾燥気体の露点は−30℃以下であることが好ましく、−40℃以下であることがさらに好ましい。
乾燥気体は常温で流通させることもできるが、時間短縮のため加熱状態にして流通させることが好ましく、例えば30〜150℃で流通させることが好ましく、40〜100℃で流通させることがより好ましい。
第C工程における乾燥気体の流通方法に特別な制限はない。但し、セボフルラン蒸気の比重は1より大きいので、第C工程では、乾燥気体を貯蔵容器の上部から導入し、下部から排出させることが好ましい。例えば、第B工程における洗浄液体の導入を貯蔵容器の上部から行った場合、その導入部を第C工程における乾燥気体の導入部として使えばよい。
また第B工程において液体の排出孔(ドレイン)として用いたものを、第C工程における乾燥気体の排出孔として使うこともできる。
第C工程における乾燥気体の流量にも特別な制限はないが、500dmの容器に換算して、100dm/分〜200dm/分が好ましく、150dm/分〜200dm/分が一層好ましい。
流通時間は条件によって変動するが、前記第B工程に「実質的に水のみからなる液体」を用い、かつ第C工程で30〜150℃という温風を流通させる場合の典型的な流通時間は60分〜300分である。
これら第C工程の条件も、第B工程と同様、最適な条件は、容器の材質や形状によっても左右され得るので、当業者の技術常識で最適化を図り、バリデーションを行うことが望ましい。一たび最適条件が確立されたら、その条件を忠実に守れば、以後は第C工程を良好に実施することができる。
第C工程においては、上述した工程内容の後、該貯蔵容器から排出される乾燥気体の露点を測定し、露点が所定の温度(例えば露点が−30℃以下の乾燥気体を用いた場合は−20℃、露点が−40℃以下の乾燥気体を用いた場合には−30℃)以下であることを確認する工程も含んでいてもよい。この場合、乾燥気体の流通を行いながら、該貯蔵容器から排出される乾燥気体の露点を直接測ってもよい。より好ましい方法として、一旦、連続的な乾燥気体の流通を止めた後、容器を密閉して、乾燥圧縮気体を容器に圧入し、加圧状態所定時間待機し、かかる後に、該乾燥気体をパージし、そのパージされる乾燥気体の露点を測ってもよい。後者の方が、内壁の奥深い部分にも水分がないことを、より確実に確認できる。なお、第C工程の条件をバリデーションした後であっても、第C工程を終えるにあたっての露点測定は、全バッチで行うことが好ましい。これは第C工程が、新たなロットのセボフルランを充填する「第2工程」の直前の工程に当たるためである。
第C工程の好ましい実施態様の一例を、図4に示す。
[特に好ましい第1工程の実施態様の例]
本発明の第1工程は、以下の第a工程〜第c工程を組み合わせる方法によって、特に好適に実施可能である。すなわち、
前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、充填された液体セボフルランを消費した後、該貯蔵容器の気相中に、セボフルラン蒸気の少なくとも一部を残存させたまま、該貯蔵容器を密閉することによって、該容器内(その気相部分)に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程(第a工程)と、
第a工程の後、セボフルラン蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で、前記貯蔵容器の内壁全面に対して「実質的に水のみからなる液体」を、スプレーノズルを用いて接触させ、次いで、該液体を液状にて該貯蔵容器外に排出させる工程(第b工程)と、
第b工程の後、該貯蔵容器に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った該液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させると共に、該貯蔵容器から排出される乾燥気体の露点が所定の温度以下であることを確認する工程(第c工程)と
を含む方法である。
これら第a工程〜第c工程の実施によって、該貯蔵容器中において、セボフルランと、その類縁体である「ポリエーテル1,2」とがいずれも実質的に検出されない状態となる。
また、この実施態様において、前記貯蔵容器の内壁の一部又は全部の材質が、ステンレス鋼製であり、前記「実質的に水のみからなる液体」の温度が60〜90℃であることが特に好ましい。
本発明で、「該貯蔵容器中にセボフルランや類縁体ポリエーテル1,2が実質的に検出されない状態」とは、本発明の洗浄方法により洗浄されたセボフルラン貯蔵容器に対して、新ロットのセボフルランを充填し(第2工程)、医薬製品としたときに、貯蔵容器に由来するポリエーテル1,2の製品への実質的な混入がなく、セボフルラン貯蔵容器を何ロット繰り返して使用しても、ポリエーテル1,2の実質的な増加が生じず、安定的に、セボフルランの製品規格を満足することをいう。
より具体的には、新ロットのセボフルランを貯蔵容器に充填する直前の該セボフルラン中のポリエーテル1,2の含有量をそれぞれα1(ppm)、α2(ppm)とし、貯蔵容器に充填した直後の該セボフルラン中のポリエーテル1,2の含有量をそれぞれβ1(ppm)、β2(ppm)としたとき、(β1−α1)と(β2−α2)がともに、1ppm未満であることをいう。尤も、セボフルランの製造過程では、通常、α1(ppm)、α2(ppm)自体が「1ppm未満」となることが多く、この場合は、β1(ppm)、β2(ppm)も「1ppm未満」となる。
しかし、これとは別に、ポリエーテル1,2が除去できているかどうかを確かめる簡便な試験として、貯蔵容器の内部を、セボフルランを溶解できる有機溶媒(例えばメタノール、ジエチルエーテルなど)の所定量(例えば内容積100の容器あたり、容積0.1〜0.5の該有機溶媒)で洗い流し、その洗液の中にFIDガスクロマトグラフの検出限界である1ppmのポリエーテル1,2が検出されるか否かで、判断する方法もある。経験的に、この方法でポリエーテル1,2が検出されなければ、洗浄操作は良好に行われたと判断してよい(後述の実施例参照)。
この他に、後述の実施例で採用しているように、第B工程や第b工程における各洗浄操作で捕集された洗液を、所定量のジエチルエーテルで抽出して、ポリエーテル1,2を定量する、という手法もあり、この方法によれば、「各洗浄操作における洗浄効果」を確かめることができる(後述の実施例参照)。
[2]第2工程について
第2工程は、前述の第1工程によって、セボフルランや類縁体である「ポリエーテル1,2」が実質的に検出されない状態となったセボフルラン貯蔵容器に対して、新たなセボフルランを充填する工程である。前述の第1工程に加えて、この第2工程を行うことによって、貯蔵容器中にセボフルランが充填された医薬製品を製造することができる。
セボフルランは沸点58.6℃の液体であり、通常の液体物質と同様に容器内に充填を行えば良い。なお、当該セボフルランは特許文献5に開示されるように、206ppm〜1400ppmの水を含有しているものが、セボフルランの安定性が一段と高められることから、好ましい。
第2工程は、例えば、予め貯蔵容器を、大気圧の不活性ガス(乾燥窒素等)で置換しておいたところへ、新ロットのセボフルランを所定量充填することによって行うのが好ましい。この操作によって、予め容器内に存在していた不活性ガスは、圧抜き孔から排気することが好ましい。なお、こうして充填したセボフルランは、通常、充填した後になって、徐々に気相部に蒸気を発生させるので、容器内は微加圧を呈することは、上述した通りである。
他に、貯蔵容器を予め真空にしておき、そこにセボフルランを投入する、という方法も、本発明の範囲から排除されるものではない。
このようにして製造された医薬製品に対しては、その容器内に充填されたセボフルランを少量採取してガスクロマトグラフ分析を行うことができる(いわゆる「製品分析」)。前述の第1工程(第A〜第C工程や、第a〜c工程)までで、セボフルラン貯蔵容器中は、望まれない不純物が実質的に存在しない状態になっているが、第2工程が完了した後、内部に充填されたセボフルランに対して当該分析をあらためて行うことによって、洗浄が行えていることをバッチごとに確認でき、品質の一層確実な保証をすることができる。
現実に、本発明の「実質的に水のみからなる溶媒」を用いた容器洗浄を行うことで、何ロット容器の使用を繰り返しても、類縁体であるポリエーテル1,2が、この「製品分析」で有意に検出されることはなく、本発明の有効性が実証された。
[3]第3工程について
第3工程は、前記第2工程に引き続き、該セボフルランを充填したセボフルラン貯蔵容器を貯蔵する工程である。前述の第1工程、第2工程に引き続き、この第3工程を実施することにより、新ロットのセボフルランを良好に貯蔵することができる。
前記第1工程、第2工程を経て貯蔵容器内に充填されたセボフルランであれば安定性は高いので、貯蔵温度に特段の制限はないが、医薬であることを考慮すると低い温度の方が良く、沸点である58.6℃を超えないことが好ましい。0〜35℃で貯蔵することがより好ましく、10〜30℃といった室温付近の温度で貯蔵することがさらに好ましい。
以下に実施例に基づき本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下の実施例、比較例、参考例では、洗浄剤として用いたのは全て「実質的に水のみからなる液体」(たんに「水」とも呼ぶ)であり、より具体的には、「電気伝導率が1μS/cm以下となるイオン交換水」である。
[実施例1]
実施例1では、現実のセボフルランの貯蔵条件よりもはるかに過酷な条件をセボフルランに与え、「ポリエーテル」を強制的に生成させた。具体的には特許文献5の知見に従い、セボフルランの含水量を、製品セボフルランよりも著しく低い状態(6ppm)にし、さらにルイス酸(特許文献5において、セボフルランの分解の触媒になるとされている物質)として酸化アルミニウム(アルミナ)を共存させ、この状態で、50℃に加熱した。その結果、セボフルランの一部がポリエーテルに分解し、「ポリエーテルを含んだセボフルラン」が系内に生成した。この「ポリエーテルを含んだセボフルラン」に対して、水での洗浄を試みた。
(1−1)セボフルランの乾燥(含水量の低減)
セボフルラン(医薬製品)を三角フラスコ中に100cm入れ、冷蔵庫に入れて10℃に冷却した。次いで、合成ゼオライトを、合成ゼオライト:セボフルラン = 1:4 の重量比になるよう該三角フラスコ中に投入した。次いで、10℃の冷蔵庫内に2時間30分静置し、セボフルランの乾燥(含水量の低減)を行った。その後、セボフルランの水分をカールフィッシャー水分計で測定したところ、6ppmであった。
(1−2)セボフルランの分解(過酷試験)
50 cm細口褐色瓶にアルミナ 50 mgを入れ、そこに(1−1)で調製した、水分が6ppmのセボフルランを 20cm (29.9 g)、投入した。
次いで、該細口褐色瓶のフタを閉め、50 ℃の恒温槽内で64時間に渡り、加熱した。64時間経過後、冷蔵庫内(10℃)で1時間に渡り、冷却した。
(1−3)フッ化水素の除去
前記(1−2)にて調製した、過酷試験実施後のセボフルランは、フッ化水素(HF)を含むため、取扱いの都合上、水洗(HFの水相への逆抽出)を行った。具体的には、当該過酷試験実施後のセボフルランと水 15 cmを、テトラフルオロエチレン製の分液漏斗に投入し、1分間撹拌し、次いで1分間静置した後に分液した。次いで水相を採取し、pHを試験紙で確認した。
ここまでの操作を3回繰り返したところ、水相は1回目にpH=1、2回目にpH=4、3回目にpH=6となった。3回目の洗浄でフッ化水素は有機相から除去できたものと判断した。
一方、3回目の水洗が終わった時点での有機相のガスクロマトグラフ組成は、セボフルランが約87%、「ポリエーテル」としては、「ポリエーテル1」が8.4%(84000ppm)、「ポリエーテル2」が4.0%(40000ppm)検出された。他に、ヘキサフルオロイソプロピルアルコール(HFIP)が190ppm検出された。
ここで、セボフルランが「ポリエーテル1」「ポリエーテル2」に変換される反応は、詳しいメカニズムは不明であるものの、特許文献5のカラム4に開示されているような、ルイス酸が関与した一連の反応が、一つの可能性として考えられる。
この特許文献5には、当該分解反応を通じて、他にHFIP(ヘキサフルオロイソプロピルアルコール)が生成することが開示されている。ところで、このHFIPは、水溶性物質であると同時に、親油性も備えた「両親媒性物質」である。その結果、上述の3回に渡る水洗(逆抽出)によって、かなりの部分が水相に除去され、その結果、一部だけが有機相中に残存し、上記のような「190ppm」という含有量になったものと考えられる。
一方、HFIPの量に比べると、ポリエーテル1,2の有機相中の量は、100倍以上となっている。このことは、本文中に述べた通り、ポリエーテル1,2は、親油性が非常に高く、水との親和性がごく低い(水では全く逆抽出できない)ことを示唆する結果である。
(1−4 水による容器洗浄)
(a)上記(1−3)において作製した「ポリエーテル1,2を含むセボフルラン」を5cm(約10g)採取し、ステンレス鋼(SUS304)製のオートクレーブ(内容積500cm)中に投入した。密閉後、オートクレーブの内壁全面に、当該液が十分付着するように、オートクレーブを10分間に渡り、振とうした。次いで24時間室温で静置した
(この操作が「第A工程」に対応する)。なお、このオートクレーブとしては、最上部に洗浄液を導入するための孔と、空気抜きの孔があり、最下部には排水用の孔が備わっているものを用いた。
(b)該オートクレーブの排水用の孔を開けて、内部にある液体を排出した。その後、さらに1分間、排出用の孔を開け続けて、液切りを行った。
(c)排水用の孔を閉止した後、12.5cmの80℃に温めた水を加えた。その後、貯蔵容器を密閉し、オートクレーブを10分間に渡って振とうし、加えた水がオートクレーブの内壁の全面に接触するようにした(「第1回目の水洗」)。
次いで該オートクレーブの排水用の孔を開けて内部にある液体を排出した。その後、さらに1分間、排出用の孔を開け続けて、液切りを行った。
このようにして排出された液体の全量を採取し、これを氷冷したのち、0.5cmのジエチルエーテルと混ぜてよく振り、親油性成分を抽出した。そして、該ジエチルエーテル液を、FIDのガスクロマトグラフィーで分析した(これを「水洗第1回目の洗液の組成」と言う)ところ、ジエチルエーテルも含めた総ピーク面積に対して、「ポリエーテル1」が65ppm、「ポリエーテル2」が76ppmであった(なお、セボフルランのピークも検出されたが、前記80℃の水による洗浄の過程で大部分が蒸発したため、定量性はない)。
(d)前記(c)の終わったオートクレーブに対して、さらに12.5cmの水(80℃)を用いて、「第2回目の水洗」を、(c)と全く同じ手順で行った。ジエチルエーテルに抽出してFIDのガスクロマトグラフ組成を図ったところ、「水洗第2回目の洗液の組成」は、「ポリエーテル1」が8ppm、「ポリエーテル2」が13ppmであった。
(e)前記(d)の終わったさらに12.5cmの水(80℃)を用いて、「第3回目の水洗」を、(d)と全く同じ手順で行った。ジエチルエーテルに抽出してFIDのガスクロマトグラフ組成を図ったところ、「水洗第3回目の洗液の組成」は、「ポリエーテル1」が1ppm、「ポリエーテル2」が2ppmであった。
その後、全く同一の手順で「第4回目の水洗(80℃)」「第5回目の水洗(80℃)」「第6回目の水洗(80℃)」を実施した。それぞれの洗液の組成を測定したところ、「ポリエーテル1」「ポリエーテル2」とも全て非検出(ともに1ppm未満)であった。つまり、水洗を繰り返すことによって、「ポリエーテル1,2」は貯蔵容器の内部表面に付着することはなく、水の流れと共に、有効に系内に排出されることが見出された。
(1−5 メタノールによる容器洗浄)
前記(1−4)が終了したオートクレーブに対して、念のため、氷冷メタノールを2.5cm投入し、同様に洗浄を行った。ドレインからメタノール洗液を排出し、該メタノールをガスクロマトグラフ分析に付したところ、「セボフルラン」、「ポリエーテル1」「ポリエーテル2」とも全て非検出であった。
すなわち、ここでの「メタノール洗浄」を行うまでもなく、前記(1−4)の「水洗」のみによって、セボフルラン貯蔵容器の洗浄は十分満足の行くレベルに達するということが、裏付けられた。
このように、実施例1では、セボフルランを、現実よりも過酷な条件に付して、強制的にポリエーテル1,2を生成させ、得られた「ポリエーテル1,2含有セボフルラン」に対して水洗を試みた。その結果、「水洗第3回目の洗液」までは、「ポリエーテル1,2」が検出されたものの、「ポリエーテル1,2」の含量は回を追う毎に減少し、「第4回目以降」は、「ポリエーテル1,2」は検出されなくなった。すなわち、意外にも「実質的に水のみからなる液体」によって、本来、水との親和性が不良な「ポリエーテル1,2」が(仮に生成したとしても)、医薬として全く問題ないレベルにまで低減できることが、裏付けられた。
[実施例2]
(第A工程)
ステンレス鋼(SUS304)製貯蔵容器(内容積500dm)に所定量(500dm)充填されていた製品セボフルラン(前回ロットで充填された製品セボフルラン)を、乾燥窒素で加圧して、ディップ管を通じて採取した。そして、これ以上液体が採取されなくなった時点で、速やかに、窒素ガス導入孔、ディップ管挿入口ともに閉止した。
それによって、該貯蔵容器の内部には、セボフルラン蒸気が、飽和蒸気圧にほぼ近い量、存在する状態が確保された。この状態を室温にて1週間に渡って、保持した。
(第B工程)
第A工程に付された「少なくともセボフルラン蒸気が存在する貯蔵容器」に対して、「水平方向に回転可能なスプレーノズル<a>」を取りつけ、図2に示されるのと同じ状態にし、水の噴射を行った。スプレーノズル<a>の水噴射スリット(図3を参照)の幅は約0.6mmとした。スプレーノズルから噴出される水の水圧は0.4MPa(絶対圧)に、水の流量は13.6dm3/分に、各々設定した。スプレーノズル<a>は、水圧によって、水平方向に回転するようになっており、これらの条件においては、30〜40rpm(0.50〜0.67回転/秒)の回転速度であった。水温(スプレーノズル<a>に接続している隣接位置にある水貯蔵器の水温)は80℃に設定した。
貯蔵容器下部のドレイン<b>は第B工程開始時から常に開とし、水の噴射を行うと同時に、ここから排水がなされるようにした。最初に、水の噴射を3分間行い、次いで60秒静置した。次いで「15秒洗浄して、30秒静置する」操作を10回繰り返した。これらの操作の結果として、水の噴射は合計330秒間行われたことになるが、その330秒間にかけて噴射された水の容積の総量は75dmであった。
(第C工程)
前記第B工程を行った後の貯蔵容器に対して、図3に示されるのと同じ態様で、第C工程を実施した。すなわち、乾燥気体は上部から導入し、下部のドレインから排出する方式を採った。
乾燥気体としては、「露点−40℃以下(−40℃〜−50℃)の乾燥空気」を用いた。当該乾燥気体はヒーターで加熱し、貯蔵容器に導入される直前の温度が60〜80℃となるように設定した。導入される乾燥気体の流量は170dm/分とした。そして2時間40分に渡って、当該乾燥気体の導入/排出を続けた。
2時間40分経過後、乾燥気体の導入を止め、導入口、ドレインともに閉止した。その上で、乾燥空気を導入して0.07MPaにまで加圧した。この加圧された内部の気体を排出(パージ)するときに、該気体の露点を測定したところ、−30℃であり、洗浄液として用いた水は完全に除去されていることが確認できた。
(再充填と分析)
露点測定を終えた貯蔵容器に対して、新ロットのセボフルランを充填し、充填後の貯蔵容器からセボフルランを採取して、分析を行ったが、そのセボフルランは全ての試験規格を満足していた。
[実施例3]
実施例2の実験のうち、「再充填と分析」に記載された操作を除く全ての操作を、全く同一の機器(500dmのセボフルラン貯蔵容器(SUS304製)、回転可能なスプレーノズル、他)を用いて繰り返した。
第A〜第C工程に相当する操作を全て終え、容器が室温まで冷却された後、実施例2の最後に記した「再充填と分析」を行わず、その代わりに、メタノール1.5dm(室温)を、容器のフタを開けて、容器内壁全面に直接振りかけた。そしてドレインから排出されるメタノール洗液を採取し、これを分析した。
その結果、「ポリエーテル1,2」は、検出限界の1ppm未満であった。つまり、第A〜第C工程の操作を行った後、念のためメタノールで追加洗浄を行った場合に、「ポリエーテル1,2」の検出はなく、前記第A〜第C工程の洗浄の有効性が、なお一層確認できた。
[実施例4]
上記、実施例2の洗浄操作(第A〜第C工程)を行ったセボフルラン貯蔵容器に対して、新ロットのセボフルランの充填(500dm)を行い、セボフルランの消費工程(採取)が終わった貯蔵容器に対して、実施例2と全く同じ手段で第A〜第C工程を行った。
この一連の操作を、同一容器に対して20ロット繰り返した。
その間、洗浄工程が終了した貯蔵容器に新ロットのセボフルランを充填しても、充填後の製品分析の結果、類縁体である「ポリエーテル1,2」が検出されることは一度もなく、セボフルランの品質規格を全て満足していた。すなわち、本発明の洗浄方法によって、セボフルランの確実な品質保証が行えることが実証された。
[参考例1]
1dmのオートクレーブ(SUS304製)をセボフルラン貯蔵容器として用い、そこに乾燥窒素を満たし、その中に30gのセボフルラン(水を400ppm含む製品セボフルラン)の液体を投入した。オートクレーブを密栓し、1ヶ月間、常温で保存した後、カールフィッシャー水分計で再び水分を測定したところ、水分量は360ppmであった。さらに1ヶ月間、オートクレーブ内で同様に保管し、再び水分を測定したところ、350ppmであった。
このように、原因は定かでないが、少量のセボフルランが、大容量の貯蔵容器の中に、大量の乾燥気体と共に存置されると、液相中の水分含量が経時的に低下することがある。実際には、上述の「実施例1」のように極端に含水量が低減することはないが、セボフルランの消費工程(採取)が終わった後の、少量が貯蔵容器の底に残った状態は、通常の「充填されたセボフルラン」とは異なる挙動を示すことがあり、それだけに、セボフルランの確実な品質を保証するためには、貯蔵容器の洗浄を確実に行う必要が高いことが、このデータから理解できる。
[参考例2]
上述の「実施例1」の(1−1)〜(1−3)と全く同一の手順、量で「ポリエーテル1,2含有のセボフルラン」を調製した。次いで(1−4)を行う代わりに、「セボフルランを使った共洗い(セボフルラン・リンス)」を実施した。
具体的には、「実施例1」の(1−4)の(a)(b)については、全く同一の手順で行い、(c)で12.5cmの水を用いる代わりに、12.5cmの「製品セボフルラン(室温)」を用いて洗浄を3回行った。ドレインからセボフルラン洗液を排出し、該セボフルラン洗液をガスクロマトグラフ分析に付した。その結果、1回目にドレインから排出されたセボフルラン中の「ポリエーテル1」は4ppm、「ポリエーテル2」は5ppmであった。2回目に排出されたセボフルラン中には「ポリエーテル1」が非検出、「ポリエー
テル2」が1ppmであった。3回目に排出されたセボフルラン中には「ポリエーテル1」「ポリエーテル2」ともに非検出であった。
このように、洗浄液として高価なセボフルランを用いる場合、セボフルランの親油性に基づき、「ポリエーテル1,2」洗浄が良好に行えることは確認された。
[参考例3]
実施例1と同一の操作を、(1−4)の(a)(b)部分のみ次のように相違させて、それ以外は全て実施例1を踏襲して、実施した。
すなわち、「ポリエーテルを含むセボフルラン」を500cmオートクレーブに投入し、内壁に十分接触させた後、(1−4)の(a)に書かれている「24時間の静置」(第A工程)を行わず、すぐに該オートクレーブの排水用の孔を開けて、内部にある液体を排出した。そして、その後、オートクレーブの蓋を開けたまま、3日間、室温にて放置した。その結果、試料中のセボフルランは蒸発し、容器内壁は乾いた状態となった。
その後、第1回目の水洗浄を同様に行い、氷冷後、ジエチルエーテルに抽出したところ、「ポリエーテル1」は7ppm、「ポリエーテル2」は12ppmであった。第2回目の水洗浄を行ったところ、「ポリエーテル1」は5ppm、「ポリエーテル2」は9ppmであった。第3回目の水洗浄を行ったところ、「ポリエーテル1」は3ppm、「ポリエーテル2」は7ppmであった。
このように、第A工程を行わず、貯蔵容器内を乾いた状態にしてしまうと、水を用いた洗浄を行っても、ポリエーテルの除去は必ずしも容易ではないという結果となった。
[比較例1]
上述の「実施例1」の(1−1)〜(1−3)と全く同一の手順、量で「ポリエーテル1,2含有のセボフルラン」を調製した。次いで(1−4)に対応する操作で、「ポリエーテル1,2含有のセボフルラン」を容器内壁に十分接触させたのち、「水洗」を行う代わりに、「アセトンを使った容器洗浄」を実施した。
具体的には、「実施例1」の(1−4)の(a)(b)については、全く同一の手順で行い、(c)で12.5cmの水を用いる代わりに、12.5cmのアセトン(室温)を用いて、洗浄を3回行った。ドレインからアセトン洗液を排出し、該アセトン洗液をガスクロマトグラフ分析に付した。その結果、2回目にドレインから排出されたアセトン中の「ポリエーテル1」は3ppm、「ポリエーテル2」は2ppmであった。3回目に排出されたアセトン中には「ポリエーテル1」も「ポリエーテル2」も検出されなかった。
その後、貯蔵容器に60〜80℃の乾燥空気を60分間流通した。かかる後に、貯蔵容器に対して再度製品セボフルランを3cm投入し、よく内面に接触させた上で、かかるセボフルランをガスクロマトグラフ分析に付した。
その結果、「ポリエーテル1,2」は検出されなかったが、微量のアセトンのピークが検出された。
このように、洗浄液としてアセトンを用いる場合、「ポリエーテル1,2」の除去は行えるものの、アセトンの除去が意外にも容易でなく、必ずしも効率的な洗浄手段になり得ないことが示唆された。
本発明によれば、安価な水を主成分とする液体によって、使用済みの「セボフルラン貯蔵容器」を効果的に洗浄することができる。すなわち、貯蔵容器の内部に、セボフルランや、類縁体であるポリエーテル1,2が実質的に全く検出されない状態にまで、洗浄することができる。
また、本発明によれば、該貯蔵容器の洗浄工程と、その後のセボフルランの充填工程を切り離して実施することも可能であり、工程の自由度が増大する。

Claims (17)

  1. セボフルラン貯蔵容器の洗浄方法であって、
    該貯蔵容器は、ロット間に渡って繰り返し使用されるセボフルラン貯蔵容器であって、前回ロットで充填されたセボフルランの少なくとも一部が消費された後の容器であり、
    該方法は、
    該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程(第A工程)と、
    第A工程の後、セボフルランの蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で、水を主成分とする液体を、前記セボフルラン貯蔵容器の内壁に接触させ、該液体を、液状にて該貯蔵容器外に排出させる工程(第B工程)と、
    第B工程の後、該貯蔵容器内に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させる工程(第C工程)と
    を含む、前記洗浄方法。
  2. 第A工程における、該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態が、前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、充填された液体セボフルランを実質的に全部消費した後、該貯蔵容器の気相中にセボフルラン蒸気の少なくとも一部を残存させたまま、該貯蔵容器を密閉することによって確保される状態である、請求項1に記載の洗浄方法。
  3. 第A工程における、該貯蔵容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態が、前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、充填された液体セボフルランの一部を消費した後、該貯蔵容器を密閉することによって確保される状態である、請求項1に記載の洗浄方法。
  4. 前記水を主成分とする液体が、実質的に水のみからなる液体である、請求項1〜3の何れか1項に記載の洗浄方法。
  5. 第B工程における、水を主成分とする液体を、前記貯蔵容器の内壁に接触させることが、該液体を、液体噴射手段を用いて、該貯蔵容器の内壁に直接噴射することによって行われる、請求項1〜4の何れか1項に記載の洗浄方法。
  6. 前記噴射するときの前記水を主成分とする液体の温度が、60〜90℃である、請求項5に記載の洗浄方法。
  7. 前記貯蔵容器の内壁の一部又は全部の材質が、ステンレス鋼、樹脂ライニング、及びガラスからなる群より選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜6の何れか1項に記載の洗浄方法。
  8. 前記貯蔵容器の内壁の一部又は全部の材質が、ステンレス鋼である、請求項7に記載の洗浄方法。
  9. 第C工程における乾燥気体が、30〜150℃の乾燥空気である、請求項1〜8の何れか1項に記載の洗浄方法。
  10. 第C工程が、該貯蔵容器から排出される乾燥気体の露点が所定の温度以下であることを確認することを含む、請求項1〜9の何れか1項に記載の洗浄方法。
  11. セボフルラン貯蔵容器の洗浄方法であって、
    該貯蔵容器は、ロット間に渡って繰り返し使用されるセボフルラン貯蔵容器であって、前回ロットで充填されたセボフルランの少なくとも一部が消費された後の容器であり、
    該洗浄方法は、
    前回ロットで充填されたセボフルランを消費する工程において、充填された液体セボフルランを消費した後、該貯蔵容器の気相中に、セボフルラン蒸気の少なくとも一部を残存させたまま、該貯蔵容器を密閉することによって、該容器内に、少なくともセボフルランの蒸気が存在する状態を確保する工程(第a工程)と、
    第a工程の後、セボフルランの蒸気が貯蔵容器内に存在する状態で、前記貯蔵容器の内壁に対して、実質的に水のみからなる液体を、スプレーノズルを用いて直接噴射させることで接触させ、次いで該液体を、液状にて該貯蔵容器外に排出させる工程(第b工程)と、
    第b工程の後、該貯蔵容器に乾燥気体を流通させ、該貯蔵容器内壁に残った液体を、該乾燥気体と共に、該貯蔵容器外に排出させると共に、該貯蔵容器から排出される乾燥気体の露点が所定の温度以下であることを確認する工程(第c工程)と
    を含み、
    第a〜c工程の実施によって、該貯蔵容器中において、セボフルラン、及びその類縁体である次式で表される化合物(ポリエーテル1、及びポリエーテル2):
    が、いずれも実質的に検出されない状態となることを特徴とする、
    前記洗浄方法。
  12. 前記貯蔵容器の内壁の一部又は全部の材質が、ステンレス鋼製であり、
    前記実質的に水のみからなる液体の温度が、60〜90℃である、
    請求項11に記載の洗浄方法。
  13. 第B工程又は第b工程が、精製セボフルランを用いた前記貯蔵容器の洗浄工程を含む、請求項1〜12の何れか1項に記載の洗浄方法。
  14. 請求項1〜13の何れか1項に記載の方法で洗浄された貯蔵容器の中に、新ロットのセボフルランを充填することを含む、貯蔵容器中にセボフルランが充填された医薬製品の製造方法。
  15. 前記充填後の新ロットのセボフルランの液組成を、ガスクロマトグラフィーによって測定することを含む、請求項14に記載の製造方法。
  16. 請求項14又は15に記載の方法によって製造される、貯蔵容器中にセボフルランが充填された医薬製品。
  17. 次の第1〜第3工程を含む、セボフルランの貯蔵方法。
    第1工程:請求項1〜13の何れか1項に記載の方法でセボフルラン貯蔵容器を洗浄する工程;
    第2工程:前記洗浄後の貯蔵容器の中に、新ロットのセボフルランを充填する工程;及び
    第3工程:前記充填後のセボフルラン貯蔵容器を貯蔵する工程。
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