以下、図面を適宜参照しながら、本発明を実施するための形態(本実施形態)を説明する。なお、同じ符号や同じステップ番号を付したものについは、同じ装置や部材、制御内容を表すものとして、説明の簡略化のために重複する説明は省略する。
図1は、第一実施形態の空気調和機100の構成を示す図である。空気調和機100を構成する室内機7は、例えば、情報通信機器(サーバ等)が設置される部屋(一年を通じて温暖で、かつ、ある程度一定の温度の部屋、例えばサーバルーム等)に設置される。そして、第一実施形態の空気調和機100では、常時冷房運転が行われており、これにより、熱を発する情報通信機器の冷却が行われる。
また、空気調和機100では、室内温度と外気温度とに応じて、運転モードが切替えられるようになっている。具体的には、外気温度が室内温度以上のとき(例えば夏場の昼間等)には、圧縮機1を用いた「冷凍サイクル」による空調が行われる。一方で、外気温度が室内温度よりも低いとき(例えば冬場等のほか、夏場の夜間等)には、前記の「冷凍サイクル」を利用した空調から、圧縮機1に代えてポンプ3を使用した「ポンプサイクル」を利用した空調に切替えられる。このポンプサイクルにより、外気の冷熱が室内に放出され、室内の空気調和が行われる。なお、空気調和機100において、「冷凍サイクル」及び「ポンプサイクル」のそれぞれを構成する具体的な装置等については後記する。また、冷凍サイクルとポンプサイクルとの切替は、図示しない室内温度計及び室外温度計により測定された温度に基づいて、後記する中央演算制御装置50によって行われる。
空気調和機100は、前記のように例えばサーバルームに設置される室内機7と、屋外に設置される室外機6とを備えている。また、空気調和機100では、内径が同じ冷媒配管が使用されている。室内機7は、圧縮機1と、室内熱交換器5(蒸発器)と、プロペラファン18と、膨張弁4と、アキュムレータ16と、とを備えている。また、室内機7は、室外機6(後記する)に備えられたポンプ3によるポンプサイクルを利用するときに使用されるバイパス弁13(逆止弁)と、圧縮機1を用いた冷凍サイクルの利用時に使用される逆止弁22と、サイレンサ12とを備えている。
また、室内機7は、室内熱交換器5の出口側冷媒温度を測定する温度センサ14と、冷凍サイクル利用時のアキュムレータ16の出口側冷媒温度を測定する温度センサ23とを備えている。さらに、室内機7は、冷凍サイクル利用時の圧縮機1の吐出側冷媒圧力を測定する圧力センサ17と、ポンプサイクル利用時の室内熱交換器5の出口側冷媒圧力を測定する圧力センサ15とを備えている。そして、アキュムレータ16には、内部に滞留した液冷媒の液面の高さ、即ち液位を検出する液位センサ24が接続されている。
これらのセンサにより取得された温度や圧力、液位は、図示しない電気信号線を介して接続されたインターフェース(I/F)51を経由して、中央演算制御装置50に入力される。この中央演算制御装置50には、クラウドや遠隔地にあるサーバ(いずれも図示しない)に対して、ネットワーク80を介して接続される出力装置70が接続されている。従って、中央演算制御装置50において算出されて得られた各情報(詳細は後記する)は、出力装置70及びネットワーク80を介して、外部のサーバやクラウドに出力される。
中央演算制御装置50は、いずれも図示はしないが、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、I/F(インターフェイス)等を備えて構成される。そして、中央演算制御装置50は、ROMに格納されている所定の制御プログラムがCPUによって実行されることにより具現化される。
一方で、室外機6は、室外熱交換器2(凝縮器)と、余剰冷媒調整装置9(レシーバタンク)と、プロペラファン8と、インバータ制御されるポンプ3と、を備えている。また、室外機6は、室外熱交換器2から排出された冷媒に対して液冷媒を供給するための、液冷媒を貯留した冷媒貯留装置26を備えている。冷媒貯留装置26は、電磁弁27,28を介してポンプサイクル及び冷凍サイクルに接続されている。
また、電磁弁27,28と、冷凍サイクル及びポンプサイクルとの間には、それぞれ、一組の逆止弁及びポンプ(いずれも図示しない)が備えられている。そして、電磁弁27,28を開弁した時に、ポンプの駆動も開始されるようになっている。これにより、液冷媒の通流方向が一方向となるように冷媒の通流方向が制御されつつ、液冷媒の供給及び回収が行われる。
具体的には、電磁弁27を開弁しつつポンプを駆動させることで、冷媒貯留装置26の内部の液冷媒がポンプサイクルに供給される(ポンプサイクルからは逆流しない)。また、電磁弁28を開弁しつつポンプを駆動させることで、ポンプサイクルの液冷媒が冷媒貯留装置26の内部に回収される(ポンプサイクルへは逆流しない)。なお、以下の説明では、このポンプの駆動についての説明は省略し、電磁弁27を単に開弁することで液冷媒がポンプサイクルに供給されるものとし、また、電磁弁28を単に開弁することで液冷媒がポンプサイクルから回収されるものとする。
さらに、室外機6は、冷凍サイクルとポンプサイクルとを切替えるための切替弁20a,20bと、バイパス弁21(逆止弁)とを備えている。
また、室外機6は、ポンプサイクル利用時に、ポンプ3に流入する冷媒の圧力及び温度を測定する圧力センサ10及び温度センサ11を備えている。さらに、室外機6に備えられる余剰冷媒調整装置9には、その内部に滞留した液冷媒の液面の高さ、即ち液位を検出する液位センサ25が接続されている。また、冷媒貯留装置26には、その内部に貯留した液冷媒の液面の高さ、即ち液位を検出する液位センサ29が接続されている。これらのセンサにより取得された温度や圧力、液位は、図示しない電気信号線を介して接続されたインターフェース(I/F)52を経由して、中央演算制御装置50に入力される。
なお、電磁弁28,29の開閉制御は、図示しない電気信号線を介して接続されたインターフェース(I/F)52を経由して、中央演算制御装置50により行われる。電磁弁27,28が開閉されることで、詳細は後記するが、ポンプサイクルへの液冷媒の供給、及び、ポンプサイクルからの液冷媒の回収が行われる。
室外機6と室内機7とは、冷媒が通流する冷媒配管によって接続されている。そして、室内機7に収容された圧縮機1、膨張弁4及び室内熱交換器5と、室外機6に収容された室外熱交換器2とが、この冷媒配管により接続されることで、冷凍サイクルが形成されている。また、空気調和機1では、冷凍サイクルを構成する圧縮機1への冷媒の通流をバイパスさせることができるように、冷媒流路が形成されている。そのため、圧縮機1ではなく、室内機7に収容された膨張弁4及び室内熱交換器5と、室外機6に収容されたポンプ3及び室外熱交換器2とが冷媒配管により接続されることで、ポンプサイクルが形成されている。このポンプサイクルでは、ポンプ3によって冷媒が強制的に循環されることで、室内熱交換器5と室外熱交換器2との間で冷媒が循環するようになっている。
また、空気調和機100には、空気調和機100の運転に関する各情報を表示可能な表示装置60が備えられる。この表示装置60は、例えば、室内機7や室外機6の設置場所から離れた場所に設置される。具体的には、例えば、室内機7や室外機6の設置場所からは離れているものの室内機7や室外機6にある程度近い場所のほか、例えばデータセンタのような遠隔地に設置された建物内等に設置される。そのため、空気調和機100には、外部に設置された表示装置60に情報を出力するために、インターフェース(I/F)51等が備えられている。
表示装置60に表示される情報としては、例えば、冷媒貯留装置26からポンプサイクルへの液冷媒の供給量及びポンプサイクルから冷媒貯留装置26への液冷媒の回収量、ポンプ3の吸込側での冷媒中のキャビテーション(後記する)の有無、キャビテーション発生時の時刻、圧力センサ10,15,17により測定された圧力(冷凍サイクル及びポンプサイクルを循環する液冷媒の圧力)、温度センサ11,14,23の値(冷凍サイクル及びポンプサイクルを循環する液冷媒の温度)、アキュムレータ16、余剰冷媒調整装置9及び冷媒貯留装置26内の冷媒量(液位センサ24,25,29により測定された液位、即ち、ポンプサイクルにおいて滞留した液冷媒の量)等であり、これらのうちの少なくとも一種である。また、これらに加えて、電磁弁27,28の開閉状態が表示されるようにしてもよい。
次に、例えば夏場に行われる冷凍サイクルを利用した運転と、例えば冬場に行われるポンプサイクルを利用した運転とにおける冷媒の流れについて説明する。はじめに、冷凍サイクルを利用した運転時の冷媒の流れについて説明する。なお、冷凍サイクル運転時には、ポンプ3の駆動は停止し、かつ、切替弁20a,20b及び電磁弁27,28は閉弁している。
空気調和機100では、前記のように、圧縮機1、室外熱交換器2、膨張弁4及び室内熱交換器5をこの順で冷媒が通流することで、冷凍サイクルが形成されている。そして、室内機7の圧縮機1から吐出されたガス冷媒は、サイレンサ12及び逆止弁22を通流し、室外機6の室外熱交換器2に供給される。そして、ガス冷媒は、室外熱交換器2において外気によって凝縮して液冷媒となり、余剰冷媒調整装置9に供給される。そして、余剰冷媒調整装置9の液冷媒は、バイパス弁21を通流し、膨張弁4で膨張して低温低圧の液冷媒となり、室内熱交換器5に供給される。室内熱交換器5では、冷媒は蒸発することでガス冷媒となるとともに、冷熱が部屋に放出され、部屋の冷房が行われる。そして、室内熱交換器5から排出されたガス冷媒は、アキュムレータ16を経て、圧縮機1に戻される。
次に、ポンプサイクルを利用した運転時の冷媒の流れについて説明する。なお、空気調和機100でのポンプサイクル運転時には、圧縮機1の駆動は停止し、かつ、切替弁20a,20bは開弁している。また、詳細は図2や図3を参照しながら後記するが、ポンプサイクルを利用した運転中、必要に応じて電磁弁27,28の開閉が行われ、これにより、冷媒貯留装置26からポンプサイクルへの冷媒の供給及び回収が行われる。ただし、ここでは説明の簡略化のために、電磁弁27,28は閉弁状態のまま維持され、冷媒の供給及び回収は行われないものとする。
空気調和機100では、前記のように、室外熱交換器2、ポンプ3、膨張弁4及び室内熱交換器5をこの順で冷媒が通流することで、ポンプサイクルが形成されている。なお、圧縮機1の駆動は前記のように停止されているから、冷媒の通流はポンプ3の駆動によって行われることになる。室内熱交換器5で室内の熱を受け取って高温となった冷媒は、バイパス弁13を通流し、室外熱交換器2に供給される。ポンプサイクルは、前記のように例えば冬場に行われるため、外気温度が低い。そのため、室外熱交換器2に供給された高温の冷媒は、外気に放熱し、低温の冷媒に変化する。そして、この低温の冷媒は、余剰冷媒調整装置9、切替弁20a、ポンプ3、切替弁20b及び膨張弁4を経て室内熱交換器5に戻され、室内に冷熱を放出することになる。
ところで、ポンプサイクルを利用した運転時、サーバからの発熱量が少なく、室内の負荷が低い(比較的室温が低い)とき等、室内熱交換器5出口での過熱度が低いと、液冷媒がアキュムレータ16に溜まり込み易くなる。即ち、室内熱交換器5で蒸発しきれずに残存することとなった液冷媒は、バイパス弁13を経て室外機6に向かわずに、アキュムレータ16に溜まり込み易くなる。そして、アキュムレータ16に液冷媒が溜まれば、ポンプサイクルを循環する冷媒の量が減少する。
そうすると、ポンプ3の吸込側に十分な液冷媒が存在せず、ポンプ3の吸込側で所謂キャビテーションが発生し易くなる。このようなキャビテーションの発生は、ポンプ3の信頼性の低下につながる。そこで、空気調和機100では、このようなキャビテーションを防止するため、キャビテーションの発生の予測が行われる。そして、液冷媒が不足してキャビテーションが発生しそうな場合には、冷媒貯留装置26からポンプサイクルへの液冷媒の供給が行われるようになっている。
図2は、第一実施形態の空気調和機100において、ポンプサイクルを循環する液冷媒が不足したときに液冷媒を供給するときのフローである。このフローは、前記の図1を参照しながら説明した中央演算制御装置50によって行われる。冷凍サイクルを利用した運転中、外気温度が低くなり、ポンプサイクルを利用した運転の方が省エネルギ効果が高いと判断された場合、圧縮機1の運転が停止され、ポンプ3によるポンプ運転が開始される(ステップS101)。これにより、ポンプサイクルが形成され、ポンプサイク内での冷媒の循環が開始される。なお、このとき、電磁弁27,28は閉弁している。
そして、中央演算制御装置50は、液位センサ24,25により測定された液位に基づき、アキュムレータ16及び余剰冷媒調整装置9のそれぞれの内部の液冷媒の量を算出する(ステップS102)。ここで算出された液冷媒の量の和が、ポンプサイクルにおいて滞留している液冷媒の量に相当する。
ここで、中央演算制御装置50には、液位センサ24により測定された液位と、アキュムレータ16の内部の液冷媒量とを対応づけた対応関係が予め記憶されている。また、中央演算制御装置50には、液位センサ25により測定された液位と、余剰冷媒調整装置9の内部の液冷媒量とを対応づけた対応関係が予め記憶されている。そこで、中央演算制御装置50は、これらの対応関係を用いて、液位センサ24,25により測定された液位から、アキュムレータ16及び余剰冷媒調整装置9のそれぞれの内部の液冷媒の量を算出することになる。なお、これらの対応関係は、例えばキュムレータ16及び余剰冷媒調整装置9の設計条件や試運転、実験等により決定可能である。
次いで、中央演算制御装置50は、現在のポンプ3の運転周波数に基づいて、ポンプサイクルを循環する冷媒流量を算出する(ステップS103)。即ち、ポンプ3を駆動させるインバータ(図示しない)の回転速度により、循環する液冷媒の流量(流速に配管の断面積を乗じて得られた値)が算出される。そして、中央演算制御装置50は、前記のステップS102で算出された液冷媒の量(滞留している液冷媒の量)と、前記のステップS103で算出された液冷媒の流量(循環している液冷媒の流量)とに基づいて、ポンプサイクルでのキャビテーションの発生可能性を予測する(ステップS104)。
具体的には、まず、中央演算制御装置50は、前記のステップS102で算出された液冷媒の量(滞留している液冷媒の量)と、空気調和機100に当初封入された冷媒の量とから、ポンプサイクルを循環している冷媒の量(絶対量)を算出する。そして、算出された絶対量の冷媒が、前記のステップS103で算出された液冷媒の流量でポンプサイクルを通流する場合に、キャビテーションが発生する可能性が高いか否かを判断する。
より具体的には、ポンプサイクルに存在する絶対量が大きければキャビテーションは発生しにくいが、ポンプサイクルに存在する絶対量が少なければキャビテーションは発生し易い。また、同じ絶対量であっても、流量が少なければ(流れがゆっくりしていれば)キャビテーションは発生しにくいが、流量が多ければ(流れが早ければ)キャビテーションは発生し易い。そこで、キャビテーションの発生可能性を数値化した一例である「冷媒の絶対量を冷媒の流量で除して得られた値(絶対量/流量)」が、予め定められた値(閾値)以下であれば、キャビテーションが発生し易いと考えることができる。一方で、冷媒の絶対量を冷媒の流量で除して得られた値(絶対量/流量)が、予め定められた値(閾値)を超えていれば、キャビテーションが発生しにくいと考えることができる。
そこで、このようにして判断した結果(ステップS105)、キャビテーションの発生可能性が低い(キャビテーションが発生しにくいため、液冷媒を供給してキャビテーションの発生可能性をさらに低くする必要が無い)と判断された場合(No方向)、中央演算制御装置50は、圧力センサ10により測定された圧力、及び、温度センサ11により測定された温度に基づき、キャビテーションの発生可能性を予測する(ステップS106)。即ち、ポンプ3の吸込側の冷媒の状態(温度及び圧力)に基づいて、直接的にキャビテーションの発生のし易さを判断する。
より具体的には、冷媒の温度が低ければキャビテーションは発生しにくいが、冷媒の温度が高ければキャビテーションが発生し易くなる。また、冷媒の圧力が高ければキャビテーションは発生しにくいが、冷媒の圧力が低ければキャビテーションが発生し易くなる。そこで、キャビテーションの発生可能性を数値化した一例として、冷媒の圧力を冷媒の温度で除して得られた値(圧力/温度)が、予め定められた値(閾値)以下であれば、キャビテーションが発生し易いと考えることができる。一方で、冷媒の圧力を冷媒の温度で除して得られた値(圧力/温度)が、予め定められた値(閾値)を超えていれば、キャビテーションが発生しにくいと考えることができる。
そこで、このようにして判断した結果(ステップS107)、キャビテーションの発生可能性が低い(キャビテーションが発生しにくいため、液冷媒を供給してキャビテーションの発生可能性をさらに低くする必要が無い)と判断された場合(No方向)、中央演算制御装置50は、予め定めた所定時間待機し(ステップS110)、所定時間経過後に再度前記のステップS102以降のフローが行われる。
一方で、前記のステップS105又は前記のステップS107のいずれかでキャビテーションの発生可能性が高いと判断された場合(Yes方向)、中央演算制御装置50は、不足している液冷媒の量を算出する(ステップS108)。具体的には、例えば、前記のステップS105においてキャビテーションの発生可能性が高いと判断された場合には、冷媒の絶対量を冷媒の流量で除して得られた値(絶対量/流量)が予め定められた値(閾値)を超えるように、即ち、その閾値を超えるために必要な冷媒の不足分が算出される。
また、例えば、前記のステップS107においてキャビテーションの発生可能性が高いと判断された場合には、冷媒の圧力を冷媒の温度で除して得られた値(圧力/温度)が、予め定められた値(閾値)を超えるように、即ち、その閾値を超える圧力にまで圧力を高めるために必要な冷媒の不足分が算出される。特に、この場合では、冷媒の絶対量を増やす(冷媒を供給する)ことで、冷媒の圧力を高めることができる。
そして、中央演算制御装置50は、電磁弁27を開弁し、前記のステップS108で算出された量の液冷媒を冷媒貯留装置26からポンプサイクルに供給する(ステップS1009)。なお、電磁弁27の開弁中、中央演算制御装置50は液位センサ29により測定される液位を監視している。そして、液位センサ29により測定される液位が、前記ステップS108で算出された不足分に対応する液位になった時に、中央演算制御装置50は電磁弁27を閉弁する。これらの一連の制御により、液冷媒の不足が補われ、キャビテーションの発生が抑制される。
この図2に示すフローは、液冷媒の供給を行うときのものである。そして、液冷媒の供給後、例えば外気温度や室内機7が設置された部屋の温度の変化等により、キャビテーションの発生可能性(前記のステップS105やステップS107で判断したもの)が変化することがある。そして、キャビテーションの発生可能性が低くなれば、図2のフローに従って、冷媒貯留装置26からポンプサイクルに供給された液冷媒は余剰となる。そのため、このようなときには、余剰となった冷媒は冷媒貯留装置26に回収されることが好ましい。そこで、次に、液冷媒の供給後、供給された液冷媒の回収を行うときのフローについて説明する。
図3は、第一実施形態の空気調和機100において、ポンプサイクルを循環する液冷媒が余剰になったときに液冷媒を回収するときのフローである。即ち、前記の図2に示すフローが行われた後に、この図3に示すフローが行われる。この図3に示すフローも、中央演算制御装置50によって行われる。まず、冷媒貯留装置26から液冷媒が供給された後、予め定められた所定時間、待機が行われる(ステップS201)。そして、所定時間待機後、前記の図2を参照しながらステップS102〜ステップS105が行われる。そして、ステップS105において、キャビテーションの発生可能性が高いと判断された場合には、液冷媒がさらに供給される(ステップS202)。供給量や供給方法については、前記の図2を参照しながら説明した内容と同様である。液冷媒の更なる供給後には、再度ステップS201以降が行われる。
一方で、ステップS105において、キャビテーションの発生可能性が低いと判断された場合でも(No方向)、前記のステップS106を経て、ステップS107でキャビテーションの発生可能性が大きいと判断された場合には、前記のステップS202と同様にして、液冷媒のさらなる供給が行われる。一方で、ステップS107でキャビテーションの発生可能性は小さいと判断された場合には(No方向)、中央演算制御装置50は余剰な液冷媒の量を算出する(ステップS203)。余剰な液冷媒の量は、例えば、このステップS203に至るまでに冷媒貯留装置26からポンプサイクルに供給された液冷媒の総量(合計量)とすることができる。
そして、中央演算制御装置50は、電磁弁28を開けて、算出された量の液冷媒をポンプサイクルから冷媒貯留装置26に回収する(ステップS204)。回収量の調整は、前記の図2を参照しながら説明した供給のときと同様にして行われる。これらの一連の制御により、液冷媒の供給を行うことでキャビテーションの発生を抑制しつつ、キャビテーションの発生可能性が低いと予測される場合には、液冷媒の回収が行われる。
以上の図2及び図3は、第一実施形態の空気調和機100において行われる液冷媒の供給及び回収に関する基本フローである。そして、液冷媒の供給及び回収は、前記のように電磁弁27,28の開閉により行われる。ただ、電磁弁27,28を単に開けると、ポンプサイクルを通流する液冷媒の圧力が局所的に大きく変化する可能性があり、これにより、キャビテーションが発生し易くなる可能性がある。そこで、以下の第二実施形態では、前記の図1に示した空気調和機100と同じ装置構成を有する空気調和機を使用して、キャビテーションの発生のより確実な防止を図るため、以下のような制御が行われる。
図4は、第二実施形態の空気調和機において、ポンプサイクルを循環する液冷媒が不足したときに液冷媒を断続的に供給するときのフローである。圧縮機1を停止し、代わりにポンプ3によるポンプ運転開始後(ステップS101)、中央演算制御装置50は圧力センサ10,15により、ポンプ3の吸込側の冷媒の圧力、及び、室内熱交換機5から排出され、室外熱交換器2に供給される冷媒の圧力をそれぞれ測定する(ステップS301)。そして、中央演算制御装置50は、測定された二つの圧力が全て基準圧力以下であるか否かを判断する(ステップS302)。ここでいう「基準圧力」とは、仮に電磁弁27を全開にして液冷媒の全部を供給したとしても、キャビテーションの発生可能性を低く抑えることができる圧力の閾値である。
判断の結果、測定された二つの圧力の双方が基準圧力以下であれば(Yes方向)、中央演算制御装置50は、電磁弁27を全開にし、液冷媒を冷媒貯留装置26からポンプサイクルに供給する(ステップS303)。一方で、測定された二つの圧力のうち、少なくとも一方が基準圧力を超えていた場合(No方向)、この状態で液冷媒を供給すると、ポンプサイクル内の液冷媒の圧力が高くなり過ぎて、局所的な圧力変動が生じる可能性がある。特に、局所的に圧力の低下が生じると、その圧力低下が生じた部分でキャビテーションが発生し易くなる。
そこで、中央演算制御装置50は、圧力センサ10,15により測定される圧力を監視しつつ、各圧力が各基準圧力を超えないように断続的に電磁弁27を開弁する(ステップS304)。これにより、ポンプサイクル内の液冷媒の過度の圧力変化が防止される。そのため、局所的な圧力変動が防止され、これにより、局所的な圧力低下に伴って生じうるキャビテーションの発生が防止される。
以上の第一実施形態及び第二実施形態では、空気調和機100のポンプサイクルを循環する冷媒の圧力や温度について注目し、電磁弁27,28の制御が行われていた。ただ、ポンプサイクルの利用時、室外熱交換器2で受け取った室外の冷熱は、循環する冷媒を介して、そのまま室内熱交換器5で室内に放出される。従って、例えば昼夜等、室外の温度が変化すれば、室外熱交換器2で受け取る冷熱の量も変化することになる。そうすると、冷媒の温度が変化することで冷媒の挙動も変化するため、例えば、通常の運転時にはキャビテーションが起きにくかったにもかかわらず、急に外気温度が上がって冷媒の温度も上がった場合、キャビテーションの発生のし易さが急激に上昇することになる。そこで、以下に示す第三実施形態では、前記の図1に示した空気調和機100と同じ装置構成を有する空気調和機を使用して、このような急激な外気温度の変化が生じた場合でも、キャビテーションを防止し、安定した空気調和が可能になっている。
図5は、第三実施形態の空気調和機において、ポンプサイクルを循環する液冷媒が不足したときに液冷媒を供給するときのフローである。圧縮機1を停止し、代わりにポンプ3によるポンプ運転開始後(ステップS101)、中央演算制御装置50は、液位センサ25により、余剰冷媒調整装置9の液位についての時間変化を測定する(ステップS401)。具体的には、中央演算制御装置50は、単位時間あたりの液位センサ25により測定される液冷媒の液位を測定することで、余剰冷媒調整装置9の液位についての時間変化を測定する。なお、ポンプサイクルを直接的に構成していないアキュムレータ16の内部の液冷媒の液位は、変化しにくい。そこで、ここでは、制御の簡略化のために、液位センサ24より測定されるアキュムレータ16の液位は考慮していない。
そして、中央演算制御装置50は、余剰冷媒調整装置9の液位について測定された時間変化が、予め定められた基準時間変化以上であるか否かを判断する(ステップS402)。この「基準時間変化」について、図6を参照しながら説明する。
図6は、第三実施形態の空気調和機において液冷媒の供給を開始する時の指標となる基準時間変化を示すグラフである。図6に示すグラフにおいて、横軸は時間、縦軸は液位センサ25により測定される、余剰冷媒調整装置9の内部の液冷媒の液位である。中央演算制御装置50には、図6において実線で示す基準時間変化に関するグラフが記憶されている。そして、ここでいう「基準時間変化」とは、このグラフの傾きを表している。
液位センサ25により測定される液位が低下する、即ち、余剰冷媒調整装置9の内部の液冷媒の量が減少すれば、ポンプサイクルを循環する液冷媒の量が多くなるため、キャビテーションの発生可能性は低くなる(図6において一点鎖線で示すグラフ)。しかし、例えば外気温度が大きく変化すると、冷媒の挙動も大きく変化する。そのため、余剰冷媒調整装置9の内部の液冷媒の量が急激に変化することがある。そして、このような急激な変化は、その変化が液冷媒の減少であったとしても局所的な圧力変動を招き、その結果、キャビテーションの発生可能性を高めることになる。そこで、第三実施形態の空気調和機では、単位時間あたりの液位の変化、即ち、液冷媒の単位時間あたりの変化量(減少量)を測定し、その時間変化が予め定められた基準時間変化以上となったとき(図6において破線で示すグラフ)、冷媒貯留装置26からの液冷媒の供給が行われるようになっている。
具体的には、図5でのステップS402において、測定された減少量の時間変化が基準時間変化以上、即ち時間変化である傾きが基準時間変化のグラフの傾きよりも大きいとき(グラフの傾きが、図6において破線で示すように急であるとき;Yes方向)、中央演算制御装置50は電磁弁27を全開にする(ステップS403)。これにより、冷媒貯留装置26の内部の液冷媒の全量がポンプサイクルに供給される。一方で、前記のステップS402において、測定された減少量の時間変化が基準時間変化未満、即ち時間変化である傾きが基準時間変化のグラフの傾き未満のとき(グラフの傾きが、図6において一点鎖線で示すように緩やかであるとき;Yes方向)、所定時間待機し(ステップS110)、その後、前記のステップS401が再度行われる。
前記のステップS403において電磁弁27が全開にされた後、中央演算制御装置50は、液位センサ25により余剰冷媒調整装置9の液位についての減少量の時間変化を測定しながら、さらに所定時間待機する(ステップS404)。即ち、中央演算制御装置50は、所定時間待機しながら、前記の図6に示すようなグラフを作成する。そして、作成されたグラフに基づいて、前記のステップS402と同様に、測定された減少量の時間変化が基準時間変化以上であるか否かを判断する(ステップS405)。
この判断の結果、測定された減少量の時間変化が依然として基準時間変化以上である場合(即ち、前記のステップ402でのYes方向と同じである場合)、中央演算制御装置50はポンプ3の運転を停止して、圧縮機1の運転を開始する(ステップS406)。即ち、前記のステップS403での制御によって冷媒貯留装置26の内部の液冷媒は全てポンプサイクルに供給されており、これ以上の液冷媒をポンプサイクルに供給することができない。そこで、このような場合には、ポンプ3に代えて圧縮機1を使用した冷凍サイクルを利用することで、キャビテーションの発生が抑制される。
一方で、前記のステップS405において、測定された時間変化が基準時間変化未満であるとき(即ち、前記のステップ402でのNo方向と同じである場合)、所定時間待機される(ステップS110)。そして、中央演算制御装置50は、所定時間待機後に再度液位センサ25により液位を測定し、液位が回復したか否かを判断する(ステップS407)。この結果、液位が回復していなければ(No方向)、余剰冷媒調整装置9の内部には余剰の冷媒が増加しておらず、循環する液冷媒の量が増加したことになる。そこで、そのままポンプサイクルを利用した運転が行われ、所定時間待機後(ステップS110)、再度前記のステップS401が行われる。
一方で、このステップS407において、液位が回復した場合(Yes方向)、余剰冷媒調整装置9の内部に余剰の液冷媒が新たに生成したことになる。そこで、このような場合には、例えば前記の図3に示すフローに従い、冷媒貯留装置26への液冷媒の回収が行われる(ステップS408)。
このような第三実施形態の空気調和機によれば、余剰冷媒の量が減少したものの、循環する液冷媒の量が急激に変化した結果キャビテーションの発生可能性が高くなったとしても、ポンプサイクルから冷凍サイクルに切り替えることで、安定した空気調和運転を行うことができる。
図7は、第四実施形態の空気調和機200の構成を示す図である。前記の各実施形態では、室外機8の内部に冷媒貯留装置26が備えられていたが、空気調和機200では、冷媒貯留装置26は、室外機8と室内機7とを接続する冷媒配管の途中に備えられている。この冷媒貯留装置26は、空気調和機200に対して脱着可能になっている。即ち、空気調和機200では、冷媒貯留装置26は所謂「後付け」可能な構成になっている。そして、冷媒貯留装置26を後付け可能にするため、室外機8と室内機7とを接続する冷媒配管の途中であって室外機8の側には、冷媒流路を閉塞する阻止弁19aが備えられている。また、室外機8と室内機7とを接続する冷媒配管の途中であって室内機7の側には、冷媒流路を閉塞する阻止弁19bが備えられている。
冷媒貯留装置26を空気調和機200に取り付ける際、まず、阻止弁19a,19bの双方が閉弁される。そして、冷媒配管に形成された取り付け口(図示しない)に対して、冷媒貯留装置26が取り付けられる。このとき、冷媒流れの上流側に電磁弁28が、また、下流側に電磁弁27が配置されるように、冷媒貯留装置26が取り付けられる。そして、冷媒貯留装置26が取り付けた後、阻止弁19a,19bが開弁され、図示しない真空装置を使用して真空引きが行われる。真空引きにより冷媒配管の内部の空気が除去され、使用準備が完了する。そして、その後、圧縮機1を使用した冷凍サイクルを利用した運転、又は、ポンプ3を使用したポンプサイクルを利用した運転のいずれかが行われる。
このような第四実施形態の空気調和機200によれば、その設置場所に応じて、冷媒貯留装置26を適宜脱着することができる。即ち、設置場所の地域や環境、気候等に応じて外気から冷媒に与えられる冷熱量の範囲が変化する。従って、液冷媒でのキャビテーションの可能性の高さも、空気調和機200の設置場所によって変化することになる。また、例えば、一年を通じて暑い場所等に設置された場合、外気温が常に高いことから、ポンプサイクルを利用することができない。そこで、このような場合には、冷媒貯留装置26は取り外されて、冷凍サイクルを利用した運転のみが行われる。
以上、四つの実施形態について、図面を適宜参照しながら説明したが、本発明はこれらの例に何ら限られるものではない。特に、各実施形態は必ずしも単独で行われる必要は無く、任意のステップを適宜組み合わせたり入れ替えたり、また、任意の実施形態を適宜組み合わせたり入れ替えたりして、本発明を実施することができる。
また、例えば、前記の例では、液冷媒をポンプサイクルに供給及び回収の際には、二つの電磁弁27,28の何れか一方のみが開弁されることで、液冷媒の供給及び回収が行われたが、例えば、供給及び回収で流路を切り替える等、他の方法によって液冷媒がポンプサイクルに供給及び回収にされるようにしてもよい。
さらに、例えば、前記の図5を参照しながら説明した第三実施形態では、制御の簡略化のためにアキュムレータ16の内部の液冷媒については考慮していないが、この第三実施形態でも、液位センサ24を使用して、アキュムレータ16の内部の液冷媒についても考慮することができる。これにより、ポンプサイクルでの液冷媒のより正確な滞留量を見積もることができる。
また、例えば、前記の各フローにおいて、キャビテーションの発生可能性を予測する際の方法は、前記の例に限定されない。例えば図2のステップS104では、冷媒の絶対量を冷媒の流量で除して得られた値(絶対量/流量)を指標としてキャビテーションの発生可能性を予測しているが、例えば実験や試運転等で算出される任意の計算式を使用して、当該予測を行ってもよい。図2でのステップS106等、他のステップや実施形態においても同様である。また、図6に示すグラフも一例であり、異なる形状のグラフや算出式等、任意の方法で評価することができる。
さらに、液位センサ24,25,29の具体的な種類としては、内部の液冷媒の液面によって接点のオンオフが切り替えられる方式のもののほか、液面の上下変化に追従して液面の位置を検出可能な方式のもの等、任意のセンサを使用することができる。
また、表示装置60には、前記のように液冷媒の供給量等が表示されるようにしたが、例えばキャビテーションが所定時間内に所定回数発生したことを中央演算制御装置50が検出した場合には、冷媒漏れや空気調和機の故障が生じていると判断して、その内容を表示装置60に表示するようにしてもよい。
さらに、前記の例では、出力装置70はネットワーク80に接続されていたが、出力装置70は例えば持ち運び可能な外部記録媒体等であってもよい。