JP2018070714A - 自己分散顔料の製造方法、自己分散顔料、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 - Google Patents

自己分散顔料の製造方法、自己分散顔料、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法 Download PDF

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隆司 東
大輝 渡部
Hiroteru Watabe
大輝 渡部
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Hiroshi Tanabe
浩 田邊
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Yuka Nakasora
由香 中空
鈴木 幸一
Koichi Suzuki
幸一 鈴木
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Abstract

【課題】インクなどの色材として有用な自己分散顔料の高反応効率な製造方法を提供する。
【解決手段】自己分散顔料を製造する方法である。カーボンブラックなどの顔料をプラズマ処理する工程と、プラズマ処理された顔料の粒子表面に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を有する処理剤を反応させて、親水性基を含む官能基を顔料の粒子表面に結合させる工程と、を有する。
【選択図】なし

Description

本発明は、自己分散顔料の製造方法、自己分散顔料、インク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法に関する。
自己分散顔料は、主に化学的な顔料改質技術により製造される。例えば、特許文献1には、顔料とジアゾニウム塩を反応させて自己分散顔料を得る方法が記載されている。また、特許文献2には、顔料とジアゾ化合物を反応させて自己分散顔料を得る方法が記載されている。
特表平10−510861号公報 特開平11−323229号公報
しかし、従来の顔料改質技術は、反応効率が高い製造方法であることを満足するものではなかった。すなわち、特許文献1及び2に記載の製造方法は反応効率が低いという課題があった。
したがって、本発明の目的は、インクなどの色材として有用な自己分散顔料の高反応効率な製造方法を提供することにある。また、本発明の別の目的は、前記自己分散顔料の製造方法によって製造される自己分散顔料、この自己分散顔料を用いたインク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することにある。
上記の目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明によれば、自己分散顔料を製造する方法であって、顔料をプラズマ処理する工程と、プラズマ処理された前記顔料の粒子表面に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を有する処理剤を反応させて、前記親水性基を含む官能基を前記顔料の粒子表面に結合させる工程と、を有することを特徴とする自己分散顔料の製造方法が提供される。
本発明によれば、インクなどの色材として有用な自己分散顔料の高反応効率な製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、この自己分散顔料の製造方法によって製造される自己分散顔料、この自己分散顔料を用いたインク、インクカートリッジ、及びインクジェット記録方法を提供することができる。
プラズマ発生装置の構成例を示す模式図である。 本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。 本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、さらに本発明を詳細に説明する。なお、本発明においては、化合物が塩である場合は、インク中では塩はイオンに解離して存在しているが、便宜上、「塩を含有する」と表現する。また、インクジェット用のインクのことを、単に「インク」と記載することがある。また、物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値とする。
<自己分散顔料の製造方法>
本発明の自己分散顔料の製造方法は、顔料をプラズマ処理する工程と、プラズマ処理された顔料の粒子表面に所定の処理剤を反応させて、親水性基を含む官能基を顔料の粒子表面に結合させる工程とを有する。以下、顔料をプラズマ処理する工程を「工程(1)」とも記す。また、プラズマ処理された顔料の粒子表面に所定の処理剤を反応させて、親水性基を含む官能基を顔料の粒子表面に結合させる工程を「工程(2)」とも記す。
本発明の自己分散顔料の製造方法(以下、単に「製造方法」とも記す)によれば、顔料をプラズマ処理することで、顔料が本来有する特性を損なうことなく、反応性を高めることができるため、高い反応効率で自己分散顔料を製造することができる。特に、反応効率が高いため、反応性の低い顔料や処理剤であっても使用することができる。したがって、自己分散顔料の製造に使用する原材料の選択範囲が広くなるというメリットがある。顔料のプラズマ処理により反応性が向上するのは、プラズマ処理による顔料の粒子表面の物理的変化又は化学的変化などによるものと推測される。但し、その詳細については不明である。
本発明における反応効率は、例えば、以下の手順にしたがって算出することができる。自己分散顔料の製造する際に、顔料1.0g当たりに使用した処理剤のモル数から「処理剤の親水性基のモル数」を算出する。この「処理剤の親水性基のモル数」は、顔料1.0g当たりに使用した処理剤の親水性基のモル数である。例えば、処理剤として1分子当たりに2つのカルボン酸基を有する化合物を用いる場合は、この処理剤の分子量を利用して求められるモル数の2倍として計算する。また、製造した自己分散顔料について、顔料の粒子表面の官能基に含まれる親水性基量(「顔料の親水性基のモル数」、顔料1.0g当たりの値)を求める。無水物などの形態である親水性基を有する処理剤を用いる場合、製造した自己分散顔料においてこれらの親水性基はアニオン性基となるため、処理剤及び顔料の「親水性基のモル数」はアニオン性基のモル数として計算する。そして、上記で得られた「顔料の親水性基のモル数」及び「処理剤の親水性基のモル数」から、下記式(A)に基づき反応効率(%)を算出することができる。
反応効率(%)
=(「顔料の親水性基のモル数」/「処理剤の親水性基のモル数」)×100
・・・(A)
反応効率が高いほど、より少ない使用量の処理剤で顔料を自己分散化させることができることを意味する。このため、反応効率が高ければ、コスト面でのメリットがあるだけでなく、反応による不純物の発生を低減することもできるとともに、自己分散顔料を含む水分散液の精製効率を向上することもできる。また、製造した自己分散顔料を色材として含有するインクを、例えばインクジェット記録方法に適用すると、不純物に起因する吐出特性の低下を抑制することができる。このため、反応効率をできるだけ高めることが好ましい。具体的には、反応効率は10%以上であることが好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、30%以上であることが特に好ましい。理論上の反応効率の上限は100%である。
(工程(1))
図1は、プラズマ発生装置の構成例を示す模式図である。図1に示すような構成を有するプラズマ発生装置100を使用すれば、顔料をプラズマ処理することができる。具体的には、プラズマ発生装置100の真空チャンバー1内に置かれたガラス製のシャーレ2に顔料を入れ、メインバルブ3及びリークバブル4を介して連結された真空ポンプ5によって、装置内を所定の圧力に調整する。
装置内の雰囲気は、流量調整バルブ6を介して連結されたガスボンベ7から供給される各種ガス雰囲気下とする。ガスボンベ7に充填されるガス(プラズマガス)としては、空気、水素、アルゴン、酸素、及びハロゲン化炭素などの含ハロゲン化合物などを挙げることができる。プラズマガスとして、水素を用いると水素プラズマが発生し、アルゴンを用いるとアルゴンプラズマが発生し、含ハロゲン化合物を用いるとフッ素プラズマなどのハロゲンプラズマを発生させることができる。プラズマガスとしては、反応効率の観点から、水素、アルゴン、及びハロゲン化炭素が好ましい。特に、ハロゲン化炭素のなかでも4フッ化炭素をプラズマガスとして用いると、インクの保存安定性が向上するために好ましい。
装置内の圧力を圧力計8で測定し、所定の圧力に達した段階で、高周波発生装置9及びマッチングユニット10を含む高周波電源を用いて、有効電力25〜150W、時間10〜60分間の条件で発振フィル11よりプラズマを照射する。プラズマ照射時には、撹拌棒12を用いて顔料を撹拌するとよい。
(工程(2))
反応系のpHや温度は、処理剤の種類に応じて適宜設定すればよい。具体的には、反応系のpHは1〜13であることが好ましく、1〜10であることがさらに好ましい。なかでも、1.5〜7であることがより好ましく、2〜7であることが特に好ましい。pH13超の高pH域においては、処理剤が分解しやすくなる場合がある。一方、pH1未満の低pH域にするためには、酸性の化合物を多く使用する必要があるため、自己分散顔料の精製などの処理が困難になる場合がある。また、反応速度を制御するために、温度を常温(25℃)以外に設定してもよい。具体的には、5〜80℃であることが好ましく、10〜70℃であることがさらに好ましく、10〜40℃であることが特に好ましい。温度を高くすると反応速度は上がるが、副反応が生じやすくなり、反応効率が下がる場合がある。一方、温度を低くすると副反応は生じにくくなるが、反応速度が下がり、反応時間が長くなる場合がある。
本発明の製造方法は、通常、液媒体中で行う。液媒体中の顔料の含有量(質量%)は、液媒体全質量を基準として、1.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましく、5.0質量%以上40.0質量%以下であることがさらに好ましい。顔料の含有量が高すぎると、顔料がカーボンブラックなどであるときに特に顕著となるが、反応系の粘度が高くなり、撹拌が難しくなることで反応効率がやや低下する場合がある。一方、顔料の含有量が低すぎると、反応系内での処理剤と顔料の接触頻度が下がり、反応効率がやや低下する場合や、反応系の粘度が低くなりすぎて、撹拌により乱流が生じ、撹拌の効率が低くなりやすくなる場合がある。
製造した自己分散顔料は、好適には精製などの一般的な顔料の後処理方法を行った後、種々の用途に用いることができる。具体的には、液媒体が存在しない粉末状やペレット状などの自己分散顔料とすることができる。この場合、エバポレーターなどを利用して減圧や加熱によって液媒体を除去してもよいし、また、フリーズドドライ法やオーブンなどを利用して、乾燥により液媒体を除去してもよい。
また、液媒体中に自己分散顔料が分散した状態で含まれる分散液の形態とすることができる。この場合、液媒体として有機溶剤を使用せず水のみを利用した場合には、得られた自己分散顔料を含む分散液をそのまま種々の用途に利用することもできるし、水での洗浄や自己分散顔料の含有量の調整を行ったものを最終的な分散液とすることもできる。有機溶剤を含む液媒体を利用した場合には、有機溶剤を除去することができる。有機溶剤を除去する方法としては、例えば、エバポレーターなどを利用して減圧や加熱によって有機溶剤を除去した後に水を加える方法などがある。さらに、限外ろ過などにより有機溶剤を除去した後、水を加える操作を繰り返す方法などもある。特に、水性の液媒体中に自己分散顔料が分散した状態の分散液とする場合には、自己分散顔料の官能基に含まれる親水性基をイオン解離させることで分散状態をより安定に保つことができる。官能基に含まれる親水性基はアニオン性であるので、分散液をアルカリ性にすることが好ましい。
製造した自己分散顔料は、インク、塗料、プラスチック、ゴム、紙、及び炭素繊維などの様々な組成物及び物品の色材として好適である。
(顔料種と物性値)
自己分散顔料を構成する顔料(顔料種)としては、例えば、カーボンブラック、炭酸カルシウム、酸化チタンなどの無機顔料;アゾ、フタロシアニン、キナクリドンなどの有機顔料などを用いることができる。なかでも、カーボンブラックや有機顔料を用いることが好ましく、特には、他の顔料と比して粒子表面の反応活性点がより多く、官能基の導入量を高めやすいため、カーボンブラックを顔料として用いることが好ましい。カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラックなどいずれのカーボンブラックも使用することができる。
カーボンブラックのDBP吸油量は、50mL/100g以上200mL/100g以下であることが好ましい。なかでも、120mL/100g以上170mL/100g以下であることがさらに好ましく、120mL/100g以上150mL/100g以下であることが特に好ましい。DBP吸油量は、JIS K6221やASTM D 2414に準拠した方法により測定することができる。これらの方法は、100gのカーボンブラックに撹拌下でフタル酸ジブチルを滴下し、トルクが最大となった時点でのフタル酸ジブチルの添加量を測定する方法である。
BET法によるカーボンブラックの比表面積は、100m2/g以上600m2/g以下であることが好ましい。BET法による比表面積は、JIS K6217やASTM D6556などに準拠した方法により測定することができる。これらの方法は、脱気したカーボンブラックを液体窒素に浸漬し、平衡に至った際のカーボンブラックの粒子表面に吸着している窒素量を測定する方法である。
カーボンブラックの一次粒子径は、10nm以上40nm以下であることが好ましい。カーボンブラックは、通常、複数の一次粒子がブドウの房のように立体的に連なった状態で存在する。一次粒子径とは、1つの顔料粒子を形成する最小単位のカーボンブラック(一次粒子)の粒子径を意味する。カーボンブラックの一次粒子径は、透過型又は走査型の電子顕微鏡により、顔料粒子を形成する最小単位のカーボンブラックの粒子径を100点程度観察して測定し、その算術平均値として求めることができる。
カーボンブラックの平均粒子径は、50nm以上200nm以下であることが好ましい。平均粒子径とは、通常存在する形態としてのカーボンブラックの粒子径を意味する。本発明においては、体積基準の粒子径分布の50%累積値[D50(nm)]として、動的光散乱方式の粒度分布測定装置などを用いて測定することができる。
また、有機顔料の一次粒子径は、50nm以上150nm以下であることが好ましい。さらに、有機顔料の平均粒子径は、50nm以上250nm以下であることが好ましい。有機顔料の一次粒子径及び平均粒子径の定義は、いずれもカーボンブラックの一次粒子径及び平均粒子径の定義と同様である。
(処理剤)
プラズマ処理された顔料の粒子表面に反応させる処理剤は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を有する。このような処理剤によって、プラズマ処理された顔料を処理することで、親水性基を含む官能基を顔料の粒子表面に結合させることができる。処理剤は、上記の親水性基を有し、顔料の粒子表面に上記の親水性基を含む官能基を結合させることができるものであれば特に限定されない。処理剤としては、例えば、下記一般式(1)〜(6)で表される化合物を用いることができる。
Figure 2018070714
(前記一般式(1)中、R1、R2、及びR3は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基、カルボン酸エステル基、又は−S(=O)2−R4を表し、R1、R2、及びR3が同時に水素原子となることはない。R4は、ヒドロキシ基、又は脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基を表す。A1は、カルボン酸基;スルホン酸基;リン酸基;ホスホン酸基;又は脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が置換した基を表す)
Figure 2018070714
(前記一般式(2)中、R5及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アシル基、カルボン酸エステル基、アリールオキシ基、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、又はホスホン酸基を表し、R5及びR6が同時に水素原子となることはない。R7は、水素原子、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基、又はカルボン酸エステル基を表す。A2は、カルボン酸基;スルホン酸基;リン酸基;ホスホン酸基;又は脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が置換した基を表す)
Figure 2018070714
(前記一般式(3)中、R8は、シアノ基;又はエステル基、エーテル基、チオエーテル基、ケトン基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基と、が結合した原子団を表し、R9は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が置換した基を表す)
Figure 2018070714
(前記一般式(4)中、R10は、シアノ基;又はエステル基、エーテル基、チオエーテル基、ケトン基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基と、が結合した原子団を表し、R11は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が置換した基を表す)
一般式(4)で表される化合物は、下記一般式(4’)で表される状態も取りうる。本発明においては、この一般式(4’)で表される化合物も一般式(4)で表される化合物に含まれるものとする。一般式(4’)中のR10及びR11は、一般式(4)中のR10及びR11と同義である。
Figure 2018070714
Figure 2018070714
(前記一般式(5)中、R12は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が置換した基を表す)
Figure 2018070714
(前記一般式(6)中、R13は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基が置換した基を表す)
一般式(1)及び(2)で表される化合物は、いずれも親水性基を有する化合物である。これらの化合物は、酸化的ラジカル付加反応によって、顔料の粒子表面に親水性基を含む官能基(A1及びA2で表される基)を結合させて、顔料を自己分散化させることが可能な化合物である。一般式(3)〜(5)で表される化合物は、いずれも親水性基を有するアゾ化合物である。このアゾ化合物は、酸化的ラジカル付加反応によって、顔料の粒子表面に親水性基を含む官能基(R9、R11及びR12で表される基)を結合させて、顔料を自己分散化させることが可能な化合物である。また、一般式(6)で表される化合物は、ヒドラジノ基(−NH−NH2)及び親水性基を有する化合物であり、ヒドラジン硫酸塩やヒドラジン塩酸塩などのヒドラジンの酸付加塩;水和物も含まれる。一般式(2)で表される化合物からの逐次的な水素原子の引き抜きによって、顔料の粒子表面にR13で表される基を結合させることができる。
脂肪族基としては、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基を挙げることができる。アルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、直鎖、分岐鎖、及び環状のいずれであってもよい。直鎖及び分岐鎖のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基の炭素数は1乃至12程度であることが好ましい。また、環状のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は、単環及び複合環のいずれであってもよく、環を構成する元素数は3乃至8程度であることが好ましい。脂肪族基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基などの直鎖飽和アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、2−エチルへキシル基などの分岐鎖飽和アルキル基;エテニル基、プロペニル基、ブテニル基などのアルケニル基;エチニル基、プロピニル基、ブチニル基などのアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などの環状脂肪族基;などを挙げることができる。脂肪族基は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子;ヒドロキシ基;などの置換基を有していてもよい。
芳香族基としては、アリール基、ヘテロアリール基を挙げることができる。アリール基やヘテロアリール基は、単環及び複合環のいずれであってもよく、環を構成する元素数は3乃至8程度であることが好ましい。アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基などを挙げることができる。また、ヘテロアリール基としては、ピリジル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、ピリジニル基、チエニル基、チアゾリル基などを挙げることができる。これらのなかでも、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基、ビフェニル基、ピリジニル基などが好ましく、フェニル基、ナフチル基などがさらに好ましい。
脂肪族基及び芳香族基を有する基としては、上記で挙げたような各基が直接、又は、−O−、−NH−、−CO−、−COO−、−CONH−、−N=N−、−SO−、−SO2−などの一般的なリンカー構造を介して結合した基を挙げることができる。官能基の親水性を高めるためには、脂肪族基及び芳香族基を有する基に、リンカー構造を持たせることがさらに好ましい。
脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基は、顔料の粒子表面と親水性基との連結基となる。このため、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基は、親水性基との関係で顔料を自己分散化させることができるものであればよい。すなわち、連結基の構造が大きいにもかかわらず、置換する親水性基が少ないと、顔料の粒子表面に結合している官能基の親水性が高くならず、顔料を自己分散化させることが難しくなる。したがって、連結基の構造を大きくする場合には、置換する親水性基を多くしたり、顔料の粒子表面における官能基の導入量を増やしたりすることが好ましい。
脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に置換する親水性基は、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種である。これらの親水性基は、化学的に可能な限りにおいて、塩、無水物などの形態であってもよい。
カルボン酸エステル基は、カルボン酸のエステル結合−C(=O)−O−に、上記で挙げたような脂肪族基が結合した基である。カルボン酸エステル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロポキシカルボニル基、i−プロポキシカルボニル基、n−ブトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基などを挙げることができる。カルボン酸エステル基は、反応の過程でエステルが加水分解し、対応する親水性基(塩や無水物となることもある)の形態となることがある。エステルの加水分解は、酸やアルカリの存在下で加熱や撹拌を行うと生じやすい。
「−S(=O)2−R4」は、スルホニル基(−S(=O)2−)に、R4で表される、ヒドロキシ基又は脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基が結合した基である。脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基としては、上記で挙げた具体例から選択することができる。
一般式(1)中のR1、R2、及びR3は、同時に水素原子となることはない。
一般式(2)中のR5及びR6のうち、ハロゲン原子、アルコキシ基、チオアルコキシ基、アシル基、及びアリールオキシ基について説明する。ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子などを挙げることができる。アルコキシ基は、エーテル結合(−O−)に上記で挙げたような脂肪族基が結合した基である。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基などを挙げることができる。チオアルコキシ基は、チオエーテル結合(−S−)に上記で挙げたような脂肪族基が結合した基である。チオアルコキシ基としては、チオメトキシ基、チオエトキシ基、チオn−プロポキシ基、チオi−プロポキシ基、チオn−ブトキシ基、チオt−ブトキシ基などを挙げることができる。アシル基は、カルボニル結合(−C(=O)−)に上記で挙げたような脂肪族基が結合した基である。アシル基としては、ホルミル基、アセチル基、n−プロピオニル基、i−プロピオニル基などを挙げることができる。アリールオキシ基は、エーテル結合(−O−)に上記で挙げたような芳香族基が結合した基である。アリールオキシ基としては、フェノキシ基、ナフトキシ基などを挙げることができる。
一般式(2)中のR5及びR6のうち、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基は親水性基である。一般式(2)中のR5及びR6は、同時に水素原子となることはない。
親水性基である、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基について説明する。カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基が塩を形成している場合、これらの各基のプロトンの少なくとも1つがカチオンに置換されている。カチオンとしては、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、及び有機アンモニウムイオンなどを挙げることができる。アルカリ金属イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのイオンを挙げることができる。有機アンモニウムイオンとしては、モノ乃至トリアルキルアミンなどの脂肪族アミン;モノ乃至トリアルカノールアミンなどの脂肪族アルコールアミンのカチオンやその塩を挙げることができる。水性の液体中では塩はイオンに解離して存在しうるが、便宜上、「塩」と表現する。
親水性基の置換数は、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基に存在する水素原子の数と理論上は等しい。例えば、親水性基の置換数は、メチル基では1〜3、エチル基では1〜5、フェニル基では1〜5、ナフチル基では1〜7、アントラセニル基では1〜9、ピリジル基では1〜4である。構造にもよるが、実際には、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基の1つ当たりに1〜2個の親水性基を置換させれば、顔料を自己分散化することができる。
一般式(1)中のR1、R2、及びR3、並びに一般式(2)中のR7は、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、イソブチル基、t−ブチル基、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、又はt−ブトキシカルボニル基であることが好ましい。これにより、反応効率をより高めることができる。
一般式(1)で表される化合物は、反応効率を高めやすいとともに入手も容易であるために好ましい。なかでも、一般式(1)中、R1、R2、及びR3の1つ又は2つがメチル基であるとともに、R1、R2、及びR3の炭素数の合計が2以下である場合や、R1、R2、及びR3の少なくともいずれかがt−ブトキシカルボニル基である場合が好ましい。
また、反応効率を高めやすいため、一般式(1)中、R1及びR2の少なくとも一方が水素原子以外の基であることが好ましく、加えてR3が水素原子であることが好ましい。強い反応性活性点であるアミン部分が保護されることによって処理剤の安定性が高まるとともに、処理剤の副次的な反応が抑制されるために、反応効率が高まると考えられる。さらに、顔料の粒子表面とアミン部分の水素原子との反応(J. Phys. Chem. C2010, 114, 832-842参照)を抑制できるために、反応効率がより高まると考えられる。
さらに、一般式(1)中、R1、R2、及びR3の少なくともいずれかが、−S(=O)2−R4であり、かつ、R4が、メチル基、2−ヒドロキシエチル基、フェニル基、又はトリル基であることが好ましい。また、一般式(1)中のA1及び一般式(2)中のA2は、アリーレン基及び複数のカルボン酸基を含む構造、並びにアミド結合及びホスホン酸基を含む構造の少なくとも一方を有することが好ましい。
一般式(2)中のR5及びR6の、置換基の電子供与性の程度を示すcσp値は、0.00以下であることが好ましい。また、反応効率を高めやすいため、R5及びR6のcσp値は、−0.50以下であることがさらに好ましい。他の構造にも依存するので一概には言えないが、脂肪族基、アミノ基、及びアルコキシ基などの基を有する原子団は、電子供与性が高くなりやすい。このため、これらの基を有する場合のcσp値は、0.00以下であることを満たしやすい。cσp値は、例えば、Chem. Rev. 1991. 97, 165-195に詳しく記載されている。
一般式(3)中のR9、一般式(4)中のR11、及び一般式(5)中のR12は、アリーレン基及び複数のカルボン酸基を含む構造、並びにアミド結合及びホスホン酸基を含む構造の少なくとも一方を有することが好ましい。
一般式(3)及び(4)で表される化合物のなかでも、以下に示す処理剤を用いることが好ましい。すなわち、一般式(3)中のR8及び一般式(4)中のR10が、シアノ基;又はエステル基、エーテル基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基と、脂肪族基及び芳香族基の少なくとも一方を有する基とが結合した原子団;を有することが好ましい。上記のシアノ基や原子団は電子吸引性を有する。このため、シアノ基や原子団を構成する炭素原子と、アゾ基(−N=N−)やアゾキシ基(−N(=O)=N−)の窒素原子との間の結合の電子密度が低くなってラジカル化しやすくなり、反応効率がより高くなると考えられる。
一般式(3)中のR8及び一般式(4)中のR10の、置換基の電子吸引性の程度を示すcσp値は、0.25以上であることが好ましい。他の構造にも依存するので一概には言えないが、シアノ基や、エステル基、エーテル基、及びスルホニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基を有する原子団は、電子吸引性が高くなりやすい。このため、上記のシアノ基や原子団を有する場合のcσp値は、0.25以上であることを満たしやすい。
一般式(3)〜(5)で表される化合物のなかでは、一般式(3)で表される化合物及び一般式(4)で表される化合物の少なくとも一方を用いることが、反応効率を高める上で好ましい。一般式(5)で表される化合物は、その分子構造中の5員環の部分が電荷を帯びてベタイン型となるため、親水性が特に高くなりやすい。この場合、一般式(5)で表される化合物は、疎水性である顔料の粒子表面に接近しにくくなるため、他の処理剤と比較して反応性が若干低くなる場合がある。また、一般式(3)で表される化合物を用いることがさらに好ましい。一般式(4)で表される化合物は、所望のラジカル化以外の副反応を生じさせやすい場合がある。このため、一般式(3)で表される化合物と比較して反応性が若干低くなる場合がある。上記の副反応としては、例えば、J. Org. Chem. 1986, 51, 88-92で示唆されるような反応があると考えられる。
一般式(6)中のR13は、顔料の粒子表面に結合する官能基となる。1つの官能基の分子量は、1,000以下であることが好ましく、500以下であることがさらに好ましい。したがって、R13の部分の分子量も1,000以下であることが好ましく、500以下であることがさらに好ましい。また、R13は、アリーレン基及び複数のカルボン酸基を含む構造、並びにアミド結合及びホスホン酸基を含む構造の少なくとも一方を有することが好ましい。
一般式(1)〜(6)で表される化合物の好適例を遊離酸型で表すと、表1〜6に示す各化合物を挙げることができる。表中の「Ph」はフェニレン基又はフェニル基を意味し、「To」はトリル基を意味する。勿論、本発明においては、一般式(1)〜(6)の構造及びその定義に包含されるものであれば、一般式(1)〜(6)で表される化合物は、以下の表に示す各化合物に限定されない。
Figure 2018070714
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一般式(1)〜(6)で表される化合物としては、市販の試薬を用いることができる。また、試薬として市販されていない場合には、合成したものを用いることもできる。処理剤のうち、一般式(6)で表される化合物の合成法について、一例を挙げて以下に説明する。この合成法は、アミン化合物からヒドラジン化合物を得る方法である。具体的に、4−アミノ安息香酸から4−ヒドラジノ安息香酸を合成する場合を例に挙げて説明する。アミン化合物に窒素を付加する際の窒素源として、ヒドロキシアミン−o−スルホン酸を用いる。アルカリ条件下でアミン化合物とヒドロキシアミン−o−スルホン酸を反応させることで、ヒドラジン化合物が生成する。酸の添加によりヒドラジン化合物の塩(塩酸塩など)として析出させれば、ろ過することなどによりヒドラジン化合物を効率よく分取することができる。
Figure 2018070714
例えば、以下に示す非特許文献1には、ヒドロキシアミン−o−スルホン酸を用いて、2−アミノ−1−プロパノールから2−ヒドラジノ−1−プロパノールを得る方法が記載されている。
非特許文献1:Journal of the American Chemical Society,76,1283-1285(1954)
(酸化剤)
本発明においては、上述の工程(2)を酸化剤の存在下で行って自己分散顔料を製造することもできる。酸化剤は反応速度の向上のために使用しうるものである。処理剤の種類にもよるが、アゾ基やヒドラジノ基を有する処理剤を用いる場合、酸化剤の存在下で工程(2)を行うことで、反応効率が向上しやすい。酸化剤としては、酸素;価数が変化しやすい金属(2以上の酸化状態をとることができる金属元素)を有する化合物などを挙げることができる。価数が変化しやすい金属としては、Fe、Co、Ni、Cu、Mg、Mn、Cr、Moなどを挙げることができる。なかでも、Feが好ましい。これらの金属のハロゲン化金属化合物、金属ポルフィリン化合物、及びヘキサシアノ金属酸化合物などが触媒作用を有する。好適な酸化剤の具体例としては、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、フタロシアニン鉄(II)、フェリシアン化カリウム、フェロシアン化カリウムなどを挙げることができる。
(液媒体)
本発明の製造方法は、通常、水系の液媒体中で行う。水系の液媒体としては、水のみ、又は、水を主溶媒としてプロトン性や非プロトン性の有機溶剤を併用した水性媒体を使用することができる。水性媒体は、水及び有機溶剤の混合溶媒である。有機溶媒としては、水と任意の割合で混和又は溶解するものを用いることが好ましい。なかでも、水を50質量%以上含有する均一な混合溶媒を水性媒体として用いることが好ましい。水としては、イオン交換水や純水を用いることが好ましい。
プロトン性の有機溶剤は、酸素や窒素に結合した水素原子(酸性水素原子)を有する有機溶剤である。また、非プロトン性の有機溶剤は、酸性水素原子を有しない有機溶剤である。有機溶剤としては、例えば、アルコール類;アルキレングリコール類;ポリアルキレングリコール類;グリコールエーテル類;グリコールエーテルエステル類;カルボン酸アミド類;ケトン類;ケトアルコール類;環状エーテル類;含窒素化合物類;含硫黄化合物などを挙げることができる。
本発明の製造方法において好適に用いることができる液媒体としては、例えば、水、水/メタノール混合溶媒、水/エタノール混合溶媒、水/エチレングリコール混合溶媒、水/N−メチルピロリドン混合溶媒、水/テトラヒドロフラン混合溶媒、水/アセトン混合溶媒などを挙げることができる。
<インク>
(自己分散顔料)
本発明のインクは、色材として自己分散顔料を含有する。そして、この自己分散顔料が、前述の本発明の製造方法により製造された自己分散顔料である。自己分散顔料を色材として用いることにより、顔料をインク中に分散させるための分散剤の添加が不要となる、又は分散剤の添加量を少量とすることができる。インク中の自己分散顔料の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上15.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上10.0質量%以下であることがさらに好ましい。本発明のインクには、調色などのために、顔料とともに染料などを含有させてもよい。
本発明のインクに色材として用いる自己分散顔料は、その官能基に親水性基が含まれる。そして、本発明のインクが水性のインクである場合、顔料への官能基の導入量は、0.10mmol/g以上であることが好ましい。顔料への官能基の導入量が0.10mmol/g未満であると、保存安定性がやや低下する場合がある。また、顔料への官能基の導入量は、1.00mmol/g以下であることが好ましく、0.80mmol/g以下であることがさらに好ましい。
官能基の導入量は、顔料の粒子表面に直接又は他の原子団を介して結合した官能基の量を表す指標であり、自己分散顔料1g当たりの官能基の量(mmol)で表される。本発明において、官能基の導入量は以下のようにして求める。先ず、同時示差熱天秤質量分析(TG−MS)や固体NMRなどにより、官能基の構造を特定する。そして、コロイド滴定法により親水性基の導入量を求める。コロイド滴定法による親水性基の分析にはメチルグリコールキトサンや塩酸を用いることができる。その後、1の官能基に複数の親水性基が含まれる場合は、親水性基の導入量を親水性基の数で除したうえで、自己分散顔料1g当たりの官能基の導入量(mmol)に換算する。
(水性媒体)
本発明のインクには、水、又は水及び水溶性有機溶剤の混合溶媒である水性媒体を用いることができる。本発明においては、水性媒体として少なくとも水を含有する、水性のインクとすることが好ましい。水は、脱イオン水(イオン交換水)を用いることが好ましい。インク中の水の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、10.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましく、50.0質量%以上90.0質量%以下であることが好ましい。
水溶性有機溶剤は、水溶性であれば特に制限はなく、アルコール、多価アルコール、ポリグリコール、グリコールエーテル、含窒素極性溶媒、含硫黄極性溶媒などを用いることができる。なかでも、25℃における蒸気圧が水よりも低い水溶性有機溶剤を用いることが好ましい。インク中の水溶性有機溶剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、5.0質量%以上90.0質量%以下、さらには10.0質量%以上50.0質量%以下であることが好ましい。
(その他の添加剤)
本発明のインクは、上記した成分以外にも必要に応じて、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンなどの多価アルコール類;尿素、エチレン尿素、ヒダントイン類などの尿素誘導体;糖類などの、常温で固体の水溶性有機化合物を含有してもよい。さらに、本発明のインクは、必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤、及び水溶性樹脂など、種々の添加剤を含有してもよい。
界面活性剤としては、アニオン性、カチオン性、ノニオン性などの界面活性剤が挙げられる。インク中の界面活性剤の含有量(質量%)は、インク全質量を基準として、0.1質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上2.0質量%以下であることがさらに好ましい。
界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロック共重合体、アセチレングリコール系化合物などのノニオン性界面活性剤を用いることが好ましい。界面活性剤はその疎水性基が自己分散顔料の粒子表面に吸着し易い。このため、インク中における自己分散顔料の分散状態をより安定に保つことができる。界面活性剤の中でも、ノニオン性界面活性剤はイオン性基を有さないため、自己分散顔料の官能基との相互作用を起こしにくい一方で顔料の粒子表面には吸着しやすいからである。
(インクの物性)
本発明のインクをインクジェット方式に適用する場合、その物性値を適切に制御することが好ましい。具体的には、25℃におけるインクの表面張力は、10mN/m以上60mN/m以下であることが好ましく、20mN/m以上60mN/m以下であることがさらに好ましい。なかでも、30mN/m以上50mN/m以下であることが好ましく、30mN/m以上40mN/m以下であることが特に好ましい。また、25℃におけるインクの粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることが好ましく、1.0mPa・s以上5.0mPa・s以下であることがさらに好ましく、1.0mPa・s以上3.0mPa・s以下であることが特に好ましい。25℃におけるインクのpHは、5.0以上9.0以下であることが好ましい。
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、インクと、このインクを収容するインク収容部とを備える。そして、このインク収容部に収容されているインクが、上記で説明した本発明のインクである。図2は、本発明のインクカートリッジの一実施形態を模式的に示す断面図である。図2に示すように、インクカートリッジの底面には、記録ヘッドにインクを供給するためのインク供給口12が設けられている。インクカートリッジの内部はインクを収容するためのインク収容部となっている。インク収容部は、インク収容室14と、吸収体収容室16とで構成されており、これらは連通口18を介して連通している。また、吸収体収容室16はインク供給口12に連通している。インク収容室14には液体のインク20が収容されており、吸収体収容室16には、インクを含浸状態で保持する吸収体22及び24が収容されている。インク収容部は、液体のインクを収容するインク収容室を持たず、収容されるインク全量を吸収体により保持する形態であってもよい。また、インク収容部は、吸収体を持たず、インクの全量を液体の状態で収容する形態であってもよい。さらには、インク収容部と記録ヘッドとを有するように構成された形態のインクカートリッジとしてもよい。
<インクジェット記録方法>
本発明のインクジェット記録方法は、上記で説明した本発明のインクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録する方法である。インクを吐出する方式としては、インクに力学的エネルギーを付与する方式や、インクに熱エネルギーを付与する方式が挙げられる。本発明においては、インクに熱エネルギーを付与してインクを吐出する方式を採用することが特に好ましい。本発明のインクを用いること以外、インクジェット記録方法の工程は公知のものとすればよい。
図3は、本発明のインクジェット記録方法に用いられるインクジェット記録装置の一例を模式的に示す図であり、(a)はインクジェット記録装置の主要部の斜視図、(b)はヘッドカートリッジの斜視図である。インクジェット記録装置には、記録媒体32を搬送する搬送手段(不図示)、及びキャリッジシャフト34が設けられている。キャリッジシャフト34にはヘッドカートリッジ36が搭載可能となっている。ヘッドカートリッジ36は記録ヘッド38及び40を具備しており、インクカートリッジ42がセットされるように構成されている。ヘッドカートリッジ36がキャリッジシャフト34に沿って主走査方向に搬送される間に、記録ヘッド38及び40から記録媒体32に向かってインク(不図示)が吐出される。そして、記録媒体32が搬送手段(不図示)により副走査方向に搬送されることによって、記録媒体32に画像が記録される。
以下、実施例及び参考例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
<自己分散顔料の製造>
以下の製造方法に関する記載における「mmol/g」は、顔料1.0g当たりのミリモル数(mmol)を意味する。また、処理剤は住化テクノサービスから入手したものを用いた。
(実施例1)
図1に示す構成を有するプラズマ発生装置100のシャーレ2に顔料18.0gを入れ、真空チャンバー1内の圧力が1.33×10-4Pa以下となるまで排気して真空状態とした。顔料としては、カーボンブラック(商品名「NIPEX170IQ」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)を用いた。真空チャンバー1内に圧力1.1mTorrで水素ガスを導入し、放電出力75Wで水素プラズマを発生させ、撹拌棒12で撹拌しながら30分間顔料をプラズマ処理した。
プラズマ処理した顔料18.0g、イオン交換水180mL、処理剤1.0mmol/g、及び酸化剤(過マンガン酸カリウム)0.5mmol/gを容量400mLのベッセル(アイメックス製)に入れて混合した。処理剤としては、化合物6−1を用いた。1mol/Lの塩酸を入れて液体のpHを3に調整し、温度25℃、回転数2,000rpmで48時間撹拌した。その後、8mol/Lの水酸化カリウム水溶液を入れて液体のpHを10に調整して分散液を得た。限外ろ過装置(商品名「RP−2100」、アイラ製、フィルター:ペンシル型モジュール「SAP−0013」、旭化成ケミカルズ製)を用いて分散液から不純物を除去して精製した。精製は、限外ろ過装置で分散液を20mLまで濃縮(ろ液180mLを分取)した後、イオン交換水180mLを添加して分散液を希釈する操作を4回繰り返し、ろ液の電気伝導度が50μS/cm以下となったのを確認することにより行った。限外ろ過して自己分散顔料の含有量を調整した後、回転数5,000rpmで30分間遠心分離して粗大粒子を除去し、自己分散顔料1の含有量が10.0%である、自己分散顔料1の水分散液を得た。
(実施例2)
プラズマ処理の時間を60分に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料2の水分散液を得た。
(実施例3)
処理剤を化合物6−2に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料3の水分散液を得た。
(実施例4)
米国特許公開第2007/100024号明細書の記載に準じて、化合物6−3を合成した。処理剤を合成した化合物6−3に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料4の水分散液を得た。
(実施例5)
処理剤を化合物6−4に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料5の水分散液を得た。
(実施例6)
処理剤を化合物1−1に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料6の水分散液を得た。
(実施例7)
処理剤を化合物1−2に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料7の水分散液を得た。
(実施例8)
処理剤を化合物1−13に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料8の水分散液を得た。
(実施例9)
処理剤を化合物1−15に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料9の水分散液を得た。
(実施例10)
処理剤を化合物1−24に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料10の水分散液を得た。
(実施例11)
処理剤を化合物1−25に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料11の水分散液を得た。
(実施例12)
処理剤を化合物1−30に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料12の水分散液を得た。
(実施例13)
処理剤を化合物1−32に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料13の水分散液を得た。
(実施例14)
処理剤を化合物1−36に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料14の水分散液を得た。
(実施例15)
処理剤を化合物1−54に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料15の水分散液を得た。
(実施例16)
処理剤を化合物1−61に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料16の水分散液を得た。
(実施例17)
処理剤を化合物1−67に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料17の水分散液を得た。
(実施例18)
処理剤を化合物2−1に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料18の水分散液を得た。
(実施例19)
処理剤を化合物2−20に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料19の水分散液を得た。
(実施例20)
処理剤を化合物2−27に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料20の水分散液を得た。
(実施例21)
処理剤を化合物2−40に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料21の水分散液を得た。
(実施例22)
処理剤を化合物2−72に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料22の水分散液を得た。
(実施例23)
処理剤を化合物3−1に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料23の水分散液を得た。
(実施例24)
処理剤を化合物3−4に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料24の水分散液を得た。
(実施例25)
処理剤を化合物3−9に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料25の水分散液を得た。
(実施例26)
処理剤を化合物3−10に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料26の水分散液を得た。
(実施例27)
処理剤を化合物3−12に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料27の水分散液を得た。
(実施例28)
処理剤を化合物3−13に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料28の水分散液を得た。
(実施例29)
処理剤を化合物3−14に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料29の水分散液を得た。
(実施例30)
処理剤を化合物3−15に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料30の水分散液を得た。
(実施例31)
処理剤を化合物3−25に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料31の水分散液を得た。
(実施例32)
処理剤を化合物3−27に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料32の水分散液を得た。
(実施例33)
処理剤を化合物3−28に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料33の水分散液を得た。
(実施例34)
処理剤を化合物3−40に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料34の水分散液を得た。
(実施例35)
処理剤を化合物3−42に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料35の水分散液を得た。
(実施例36)
処理剤を化合物3−55に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料36の水分散液を得た。
(実施例37)
処理剤を化合物3−57に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料37の水分散液を得た。
(実施例38)
処理剤を化合物4−12に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料38の水分散液を得た。
(実施例39)
処理剤を化合物4−27に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料39の水分散液を得た。
(実施例40)
処理剤を化合物5−5に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料40の水分散液を得た。
(実施例41)
処理剤を化合物5−6に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料41の水分散液を得た。
(実施例42)
処理剤を化合物5−8に変更したこと、及び1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料42の水分散液を得た。
(実施例43)
水素ガスをアルゴンガスに変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料43の水分散液を得た。
(実施例44)
水素ガスをアルゴンガスに変更し、プラズマ処理の時間を60分に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料44の水分散液を得た。
(実施例45)
水素ガスを塩素ガスに変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料45の水分散液を得た。
(実施例46)
水素ガスを塩素ガスに変更し、プラズマ処理の時間を60分に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料46の水分散液を得た。
(実施例47)
水素ガスを4フッ化炭素ガスに変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料47の水分散液を得た。
(実施例48)
水素ガスを4フッ化炭素ガスに変更し、プラズマ処理の時間を60分に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料48の水分散液を得た。
(実施例49)
水素ガスを酸素ガスに変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料49の水分散液を得た。
(実施例50)
水素ガスを酸素ガスに変更し、プラズマ処理の時間を60分に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料50の水分散液を得た。
(実施例51)
顔料をカーボンブラック(商品名「HIBLACK890」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料51の水分散液を得た。
(実施例52)
顔料をカーボンブラック(商品名「PRINTEX85」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料52の水分散液を得た。
(実施例53)
顔料をカーボンブラック(商品名「PRINTEX L」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料53の水分散液を得た。
(実施例54)
顔料をカーボンブラック(商品名「Color Black FW200」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)に変更したこと以外は、前述の実施例1と同様にして自己分散顔料54の水分散液を得た。
(参考例1)
顔料18.0g、イオン交換水180mL、及び処理剤1.0mmol/gを容量400mLのベッセル(アイメックス製)に入れて混合した。顔料としては、カーボンブラック(商品名「NIPEX170IQ」、オリオンエンジニアドカーボンズ製)を用いた。また、処理剤としては、化合物6−1を用いた。1mol/Lの塩酸を入れて液体のpHを3に調整し、温度25℃、回転数2,000rpmで48時間撹拌した。その後、8mol/Lの水酸化カリウム水溶液を入れて液体のpHを10に調整して分散液を得た。限外ろ過装置(商品名「RP−2100」、アイラ製、フィルター:ペンシル型モジュール「SAP−0013」、旭化成ケミカルズ製)を用いて分散液から不純物を除去して精製した。精製は、限外ろ過装置で分散液を20mLまで濃縮(ろ液180mLを分取)した後、イオン交換水180mLを添加して分散液を希釈する操作を4回繰り返し、ろ液の電気伝導度が50μS/cm以下となったのを確認することにより行った。限外ろ過して自己分散顔料の含有量を調整した後、回転数5,000rpmで30分間遠心分離して粗大粒子を除去し、参考自己分散顔料1の含有量が10.0%である、参考自己分散顔料1の水分散液を得た。
(参考例2)
処理剤を化合物1−1に変更し、反応の際の温度を60℃に変更したこと以外は、前述の参考例1と同様にして参考自己分散顔料2の水分散液を得た。
(参考例3)
処理剤を化合物2−1に変更したこと以外は、前述の参考例1と同様にして参考自己分散顔料3の水分散液を得た。
(参考例4)
処理剤を化合物3−1に変更し、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の参考例1と同様にして参考自己分散顔料4の水分散液を得た。
(参考例5)
処理剤を化合物4−12に変更し、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の参考例1と同様にして参考自己分散顔料5の水分散液を得た。
(参考例6)
処理剤を化合物5−5に変更し、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液を用いて反応の際のpHを7に調整したこと以外は、前述の参考例1と同様にして参考自己分散顔料6の水分散液を得た。
<自己分散顔料の製造条件>
自己分散顔料の製造条件を表7−1及び7−2に示す。表7−1及び7−2中の略号の意味(顔料の種類)は以下に示す通りである。
・CB1:NIPEX170IQ(オリオンエンジニアドカーボンズ製)
・CB2:HIBLACK890(オリオンエンジニアドカーボンズ製)
・CB3:PRINTEX85(オリオンエンジニアドカーボンズ製)
・CB4:PRINTEX L(オリオンエンジニアドカーボンズ製)
・CB5:Color Black FW200(オリオンエンジニアドカーボンズ製)
Figure 2018070714
Figure 2018070714
<評価>
実施例及び参考例の各製造方法について以下に示す評価を行った。評価結果を表8−1及び8−2に示す。表8−1及び8−2には、自己分散顔料の粒子表面に結合している官能基の構造も示した。表8−1及び8−2中の「Ph」はフェニレン基を意味する。
(反応効率の評価)
自己分散顔料の水分散液20.0gに0.1mol/Lの塩酸80.0gを添加して自己分散顔料を沈殿させた後、回転数5,000rpmで30分間遠心分離して上澄みの液体を除去する操作を2回繰り返して試料を得た。得られた試料を温度60℃のオーブン中に載置し、18時間乾燥させて乾固物を得た。得られた乾固物をメノウ乳鉢ですりつぶし、固形物0.5gを秤量した。この固形物に0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液30.0gを添加して1日撹拌した後、遠心分離機(ベックマンコールター製)を用いて、回転数80,000rpmで60分間遠心分離を行い、上澄みの液体を採取した。採取した液体について逆滴定を行い、顔料の粒子表面の官能基に含まれる親水性基量(「顔料の親水性基のモル数」、顔料1.0g当たりの値とする)を求めた。逆滴定には、電位差滴定装置(商品名「AT−510」、京都電子工業製)を用い、滴下量及び時間は自動制御とした。また、0.1mol/L塩酸(和光純薬工業製)を滴定液として用いた。
自己分散顔料を製造する際に、顔料1.0g当たりに使用した処理剤のモル数から「処理剤の親水性基のモル数」を算出した。この「処理剤の親水性基のモル数」は、顔料1.0g当たりに使用した処理剤の親水性基のモル数である。例えば、処理剤として2つのカルボン酸基を有する化合物を用いた場合は、処理剤の分子量を利用して求められるモル数の2倍として計算する。
上記で得られた「顔料の親水性基のモル数」及び「処理剤の親水性基のモル数」から、下記式(A)に基づき反応効率(%)を算出した。反応効率の値は、便宜上、小数点以下第一位を四捨五入した整数値として示した。
反応効率(%)
=(「顔料の親水性基のモル数」/「処理剤の親水性基のモル数」)×100
・・・(A)
算出した反応効率の値から、以下に示す評価基準にしたがって反応効率を評価した。本発明においては、以下に示す評価基準で、「C」を許容できないレベル、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベルとした。
AA:反応効率が30%以上であった。
A:反応効率が20%以上30%未満であった。
B:反応効率が10%以上20%未満であった。
C:反応効率が10%未満であった。
(保存安定性の評価)
自己分散顔料の水分散液75.0gを容量100mLのサンプル瓶に入れ密栓した。このサンプル瓶を温度60℃のオーブンに入れ、所定期間ごとに顔料の状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって保存安定性を評価した。本発明においては、以下に示す評価基準で、「C」を許容できないレベル、「AA」、「A」及び「B」を許容できるレベルとした。
AA:1ヶ月経過した時点で顔料が沈降していなかった。
A:2週間経過した時点で顔料が沈降していなかったが、1ヶ月経過した時点で顔料が沈降していた。
B:1週間経過した時点で顔料が沈降していなかったが、2週間経過した時点で顔料が沈降していた。
C:1週間経過した時点で顔料が沈降していた。
Figure 2018070714
Figure 2018070714

Claims (8)

  1. 自己分散顔料を製造する方法であって、
    顔料をプラズマ処理する工程と、
    プラズマ処理された前記顔料の粒子表面に、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基、及びホスホン酸基からなる群より選ばれる少なくとも1種の親水性基を有する処理剤を反応させて、前記親水性基を含む官能基を前記顔料の粒子表面に結合させる工程と、を有することを特徴とする自己分散顔料の製造方法。
  2. 前記プラズマ処理が、水素プラズマ、ハロゲンプラズマ、又はアルゴンプラズマによる処理である請求項1に記載の自己分散顔料の製造方法。
  3. 前記ハロゲンプラズマが、フッ素プラズマである請求項2に記載の自己分散顔料の製造方法。
  4. 前記顔料が、カーボンブラックである請求項1乃至3のいずれか1項に記載の自己分散顔料の製造方法。
  5. 請求項1乃至4のいずれか1項に記載の製造方法により製造されたことを特徴とする自己分散顔料。
  6. 自己分散顔料を含有するインクであって、
    前記自己分散顔料が、請求項5に記載の自己分散顔料であることを特徴とするインク。
  7. インクと、前記インクを収容するインク収容部とを備えたインクカートリッジであって、
    前記インクが、請求項6に記載のインクであることを特徴とするインクカートリッジ。
  8. インクをインクジェット方式の記録ヘッドから吐出して記録媒体に画像を記録するインクジェット記録方法であって、
    前記インクが、請求項6に記載のインクであることを特徴とするインクジェット記録方法。
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