図1は、本発明の実施形態に係るロボットシステム200の物理的な構成を示す概略図である。ロボットシステム200は、ロボット3の動作指令を生成する動作指令生成装置1を含む。また、ロボットシステム200は、動作指令生成装置1により生成された動作指令に基づいて、ロボット3を制御するロボット制御部2を含む。動作指令生成装置1自体は、専用の機器であってもよいが、ここでは一般的なコンピュータを使用して実現されている。すなわち、市販のコンピュータにおいて、当該コンピュータを動作指令生成装置1として動作させるコンピュータプログラムを実行することによりかかるコンピュータを動作指令生成装置1として使用する。かかるコンピュータプログラムは、一般にアプリケーションソフトウェアの形で提供され、コンピュータにインストールされて使用される。当該アプリケーションソフトウェアは、CD−ROMやDVD−ROMその他のコンピュータ読み取り可能な適宜の情報記録媒体に記録されて提供されてよく、また、インターネット等の各種の情報通信ネットワークを通じて提供されてもよい。あるいは、情報通信ネットワークを通じて遠隔地にあるサーバによりその機能が提供される、いわゆるクラウドコンピューティングにより実現されてもよい。
ロボットシステム200は、1又は複数のハンドを有するロボット3を含む。ロボット3は、多関節ロボットであり、本実施形態では第1アーム(ロボット3の右腕に相当するアーム)及び第2アーム(ロボット3の左腕に相当するアーム)を有する双腕ロボットであり、それぞれのアームにハンドを備え、それぞれのアーム単独で又は両アームを協働させ、処理対象に対する処理を行う。第1アーム及び第2アームは、具体的には、7軸以上の関節を有し、複数の異なる姿勢で処理対象に対する処理を行うことのできるアームである。また、本実施形態においては、処理対象は、生化学、生物及び生命工学の分野における一連の検査や培養、増幅といった処理を行う対象であり、例えば培養した細胞や薬剤を指している。もっとも、処理対象はそれ以外のものであってもよく、ロボット3による溶接やボルトの締め付け等の対象となる加工・組立分解部品や、搬送やパレタイジング等の搬送対象となる荷物であってもよい。
各アームの操作対象は特に限定されないが、本実施形態に係るロボット3では、主として第1アームの先端に備えられたハンドによりピペットラック10に収容されたピペット4を把持し操作する等、図示しあるいは図示しない実験器具を操作する。また、ロボット3は、第2アームの先端に備えられたハンドによりメインラック5に格納されたマイクロチューブ6を把持し、マイクロチューブ6をメインラック5からボルテックスミキサー11や遠心機12等へ移動させるなど、図示しあるいは図示しない各種容器を移動させる。
図1に示す例では、ロボットシステム200は、ピペット4、メインラック5、マイクロチューブ6、チップラック7、チップ8、インキュベータ9、ピペットラック10、ボルテックスミキサー11、遠心機12、ダストボックス13を含む。これらは実験を行う場合に用いられる器具の一例であり、これらの器具に加えて又は替えて、他の器具が含まれてもよい。例えば、ロボットシステム200には、ペトリ皿を保管するラックや、マグネットラック等が含まれてもよい。また、本実施形態に係るロボット3は双腕ロボットであるが、ロボットシステム200に含まれる1又は複数のハンドは、例えば、複数のアームに別個独立に備えられて、ロボット制御部2により協調して動作するように制御されるものであってもよい。
図2は、本発明の実施形態に係る動作指令生成装置1の物理的な構成を示すブロック図である。図2に示した構成は、動作指令生成装置1として用いられる一般的なコンピュータを示しており、CPU(Central Processing Unit)1a、RAM(Random Access Memory)1b、外部記憶装置1c、GC(Graphics Controller)1d、入力デバイス1e及びI/O(Input/Output)1fがデータバス1gにより相互に電気信号のやり取りができるよう接続されている。ここで、外部記憶装置1cはHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)等の静的に情報を記録できる装置である。またGC1dからの信号はフラットパネルディスプレイ等の、使用者が視覚的に画像を認識するモニタ1hに出力され、画像として表示される。入力デバイス1eはキーボードやマウス、タッチパネル等の、ユーザが情報を入力するための機器であり、I/O1fは動作指令生成装置1が外部の機器と情報をやり取りするためのインタフェースである。
図3は、本発明の実施形態に係る動作指令生成装置1及びロボット制御部2の機能ブロック図である。なお、ここで示した機能ブロックは、動作指令生成装置1等が有する機能に着目して示したものであり、必ずしも各機能ブロックに1対1に対応する物理的構成が存在するとは限らない。いくつかの機能ブロックは動作指令生成装置1のCPU1a等の情報処理装置が特定のソフトウェアを実行することにより実現され、またいくつかの機能ブロックは動作指令生成装置1のRAM1b等の情報記憶装置に特定の記憶領域が割り当てられることにより実現されてよい。
動作指令生成装置1は、ユーザからの各種の入力を受け付ける入力部20を有する。また、動作指令生成装置1は、実験のプロトコルを記述したプロトコルチャートを取得するプロトコルチャート取得部21と、入力部20により受けつけられた入力に基づいてロボット3の動作を制御する指令である動作指令を生成する動作指令生成部22と、を有する。さらに、動作指令生成装置1は、生成中及び生成された動作指令の電子データを記憶する動作指令記憶部30と、生成された動作指令をロボット3が読み取り可能な形式の電子ファイルとして出力する動作指令出力部31と、動作指令記憶部30に記憶された動作指令の電子データを成形しモニタ1hに表示する動作指令表示部32と、を有する。
入力部20は、通常は図2に示した入力デバイス1eにより構成されるが、動作指令生成装置1がクラウドコンピューティングに用いられるアプリケーションサーバである場合には、遠隔地にある端末上でのユーザの操作情報が入力されるI/O1fが該当することになる。プロトコルチャート取得部21は、ユーザにより入力されたプロトコルチャートや、外部記憶装置1cに記憶されたプロトコルチャートを読み込む。
本明細書において、プロトコルチャートとは、プロトコルを視覚的に理解し得る態様で図示したものをいい、プロトコルとは生化学、生物及び生命工学等の分野において処理対象に対しなされる処理の作業手順及び条件を指すものである。プロトコルチャートは、処理対象又は処理対象を収容した容器に対する処理を表す処理シンボル103を少なくとも含む。また、処理対象とは、同分野において実験の対象となる材料をさす。一般には、細胞やDNA等の生体組織の一部であることが多い。また、処理対象は一般に実験に特に適した器具、例えば、マイクロチューブ6、ペトリ皿やマイクロプレート(マイクロタイタープレート)に収容されて実験に供されるが、本明細書で単に容器と言えば、実験における処理対象の収容に適したこれらの器具を指すものとする。なお、本実施形態では、生化学、生物及び生命工学等の分野を対象とした動作指令を生成する場合を例示するが、動作指令生成装置1は、それ以外の分野、例えば荷物の搬送や製品の組み立て等の処理をロボット3に行わせる動作指令を生成してもよい。
動作指令生成部22には、単位ジョブ取得部24と、要素ジョブ組合せ部25と、つなぎジョブ生成部26と、が含まれる。動作指令生成部22は、複数の処理シンボル103の配置に基づいて、単位ジョブ及びつなぎジョブを直列に接続してロボット3の動作指令を生成する。単位ジョブ取得部24は、1の処理を示す処理シンボル103に応じて、単位ジョブ記憶部1caに記憶された単位ジョブを取得する。要素ジョブ組合せ部25は、単位ジョブ記憶部1caに記憶された複数の要素ジョブを組み合わせて単位ジョブを構成する。つなぎジョブ生成部26は、1又は複数のハンドを、第1の単位ジョブの終了位置から、第1の単位ジョブの後に連続して行なわれる第2の単位ジョブの開始位置へ移動させる命令である、つなぎジョブを生成する。動作指令生成部22は、処理シンボルに示された処理条件に応じて、処理シンボルに対応する複数の要素ジョブ及びつなぎジョブを直列に接続して動作指令を生成する。
なお、本明細書において、動作指令とは、単位ジョブ及びつなぎジョブが組み合わされたジョブの集合体であって、処理対象又は処理対象が収容される容器に対する一単位のものとして認識される処理を指示する指令をいうものとする。また、1の処理とは、当業者に一単位のものとして扱われる処理であり、本実施形態においては例えば、ピペット4を用いた薬液の注入、容器の移送等である。単位ジョブとは、1の処理をロボット3に行わせる命令である。異なる実施態様として例えば本発明を加工・組立分解部品の用途に適用した場合であれば、1の処理とは、その分野の当業者に一単位のものとして扱われうる処理であり、例えば、所望のボルトによる締め付け動作やギアなどの嵌合部品の嵌合操作が1の処理となりうる。
外部記憶装置1cは、単位ジョブ記憶部1caと、単位ジョブ所要時間記憶部1cbと、つなぎジョブ所要時間記憶部1ccと、を含む。単位ジョブ記憶部1caは、1の処理を示す処理シンボル103に基づいて、ロボット3に1の処理を行わせる命令である単位ジョブを記憶する。また、単位ジョブ記憶部1caは、単位ジョブを構成する複数の要素ジョブを記憶する。単位ジョブ所要時間記憶部1cbは、単位ジョブの所要時間を記憶する。また、単位ジョブ所要時間記憶部1cbは、単位ジョブの所要時間を、単位ジョブを構成する要素ジョブ毎に記憶する。つなぎジョブ所要時間記憶部1ccは、つなぎジョブの所要時間を記憶する。
動作指令生成装置1は、シミュレーション部35、単位ジョブ所要時間算出部36、所要時間算出部40、単位ジョブ実績記録部41、つなぎジョブ実績記録部42、単位ジョブ所要時間更新部43及びつなぎジョブ所要時間更新部44を含む。シミュレーション部35は、ロボット3により単位ジョブを実行するシミュレーションを行う。本実施形態に係るロボットシステム200では、動作指令生成装置1がシミュレーション部35を有し、動作指令生成装置1の有するCPU1aやRAM1b等のハードウェア資源を用いて、ロボットシステム200を仮想的に再現したモデルを動作させることにより行なわれる。しかしながら、シミュレーション部35は、必ずしも動作指令生成装置1に含まれなくてもよく、動作指令生成装置1と別体のコンピュータに含まれるものであってもよい。単位ジョブ所要時間算出部36は、ロボット3により単位ジョブを実行するシミュレーションに基づき、単位ジョブを実行した場合の所要時間を算出する。
所要時間算出部40は、単位ジョブの所要時間及びつなぎジョブの所要時間を加算して、動作指令の所要時間を算出する。動作指令は、単位ジョブ及びつなぎジョブを直列に接続して生成されているため、その所要時間は、単位ジョブの所要時間及びつなぎジョブの所要時間を単純に加算すれば算出することができる。本実施形態に係るロボットシステム200によれば、単位ジョブとつなぎジョブを直列に接続して動作指令を生成することで、単純な加算により動作指令全体の所要時間が算出される。ユーザは、動作指令の所要時間を知ることで、待機時間を把握することができ、適切な行動計画を立てることができる。
単位ジョブ実績記録部41は、ロボット3により単位ジョブが実行された場合における所要時間の実績を記録する。また、つなぎジョブ実績記録部42は、ロボット3によりつなぎジョブが実行された場合における所要時間の実績を記録する。単位ジョブ所要時間更新部43は、単位ジョブが実行された場合における所要時間の実績に基づいて、単位ジョブ所要時間記憶部1cbに記憶された単位ジョブの所要時間を更新する。つなぎジョブ所要時間更新部44は、つなぎジョブが実行された場合における所要時間の実績に基づいて、つなぎジョブ所要時間記憶部1ccに記憶されたつなぎジョブの所要時間を更新する。
ロボット制御部2は、動作指令に直列的に含まれる単位ジョブ及びつなぎジョブのうち、少なくとも直近で実行完了している単位ジョブ又はつなぎジョブを特定するジョブ完了情報を生成するジョブ完了情報生成部2aを含む。単位ジョブ実績記録部41及びつなぎジョブ実績記録部42は、ジョブ完了情報が生成される時刻に基づいて、単位ジョブ又はつなぎジョブの所要時間の実績を記録してよい。
図4は、本発明の実施形態に係るロボットシステム200に取得されるプロトコルチャートの一例を示す図である。本例のプロトコルチャートは、処理対象を収容する容器の初期状態を示す初期シンボル100と、その容器の最終状態を示す最終シンボル101を図4の上下方向に並べ、両者を初期シンボル100から最終シンボル101に向かう順序線102で接続し、順序線102に沿って容器に対し行う個別の処理を示す処理シンボル103を配置したものである。図4に示す例では、「Tube」と記載された初期シンボル100、最終シンボル101及び両者を接続する順序線102からなる組が記載されている。ここで、順序線102は、処理が行われる順序を矢線で表している。すなわち、本例のプロトコルチャートは、はじめに「Tube」と記載された初期シンボル100が表すジョブを行い、その後順序線102に対して追加線104で接続された「ADD」と記載された処理シンボル103が表すジョブを行い、次に「CENTRIFUGE」と記載された処理シンボル103が表すジョブを行い、最後に「Tube」と記載された最終シンボル101が表すジョブを行うことを意味する。また、本例のプロトコルチャートは、「×2」と表示された容器数シンボル105を含む。容器数シンボル105は、初期シンボル100で指定される容器を2つ用意し、以降の処理を2つの容器それぞれについて行うことを表す。
初期シンボル100は、「Tube」すなわちマイクロチューブ6を、「Tube Rack」すなわちチューブラック(マイクロチューブ6の収納場所)から作業場所であるメインラック5に移送する処理を表す。「ADD」と記載された処理シンボル103は、マイクロチューブ6に対して、「solution A」すなわち液剤Aを「100[μl]」加える処理を表す。「CENTRIFUGE」と記載された処理シンボル103は、マイクロチューブ6を遠心機12にセットして、「3[min]」(3分間)の遠心処理を行うことを表す。また、最終シンボル101は、マイクロチューブ6を、メインラック5からチューブラックに移送する処理を表す。
図5は、本発明の実施形態に係るロボットシステム200により実行される動作指令の一例を示す第1のフローチャートである。また、図6は、本発明の実施形態に係るロボットシステム200により実行される動作指令の一例を示す第2のフローチャートである。第1のフローチャート及び第2のフローチャートは、図4に示すプロトコルチャートに基づいて動作指令生成装置1により生成され、ロボットシステム200により実行される動作指令の一例を示している。また、図6に示す第2のフローチャートは、図5に示す第1のフローチャートに続いて実行される処理を示している。図5及び図6では、図中左側に各要素ジョブ及びつなぎジョブの所要時間を示している。
はじめに、初期シンボル100及び容器数シンボル105に基づいて、2本のマイクロチューブ6をチューブラックからメインラック5に移送する単位ジョブが実行される。単位ジョブは、第1マイクロチューブ6aを移送する要素ジョブと、第2マイクロチューブ6bを移送する要素ジョブと、から構成される。具体的には、第1マイクロチューブ6aをロボット3のハンドで把持してチューブラックからメインラック5に移送し(S101)、第2マイクロチューブ6bを同様にチューブラックからメインラック5に移送するジョブが行なわれる(S102)。
単位ジョブ所要時間記憶部1cbには、2本のマイクロチューブ6をチューブラックからメインラック5に移送する単位ジョブの所要時間t1が記憶されている。また、単位ジョブ所要時間記憶部1cbには、第1マイクロチューブ6aをチューブラックからメインラック5に移送する要素ジョブの所要時間t1aと、第2マイクロチューブ6bをチューブラックからメインラック5に移送する要素ジョブの所要時間t1bと、が記憶されている。
次に、初期シンボル100により表される単位ジョブの終了位置から、「ADD」と記載された処理シンボル103の開始位置へロボット3のハンドを移動させるつなぎジョブが実行される。具体的には、ロボット3のハンドを、メインラック5からピペットラック10へ移動させるジョブが実行される(S201)。つなぎジョブ所要時間記憶部1ccには、ロボット3のハンドを、メインラック5からピペットラック10へ移動させるつなぎジョブの所要時間t2が記憶されている。
その後、「ADD」と記載された処理シンボル103及び容器数シンボル105に基づいて、2本のマイクロチューブ6それぞれに液剤Aを100μlずつ加える単位ジョブが行なわれる。当該単位ジョブは、12の要素ジョブから構成される。すなわち、ロボット3のハンドによりピペット4を把持するジョブ(S301)、ピペットラック10からチップラック7にハンドを移動させるジョブ(S302)、ピペット4の先端にチップ8を装着するジョブ(S303)、チップラック7から液剤瓶にハンドを移動させるジョブ(S304)、ピペット4をハンドで操作して、液剤瓶から液剤Aを吸引するジョブ(S305)、液剤瓶からメインラック5にハンドを移動させるジョブ(S306)、メインラック5に収納された第1マイクロチューブ6aに液剤Aを100μl吐出するジョブ(S307)、メインラック5に収納された第2マイクロチューブ6bに液剤Aを100μl吐出するジョブ(S308)、メインラック5からダストボックス13にハンドを移動させるジョブ(S309)、ピペット4に装着されたチップ8をダストボックス13に廃棄するジョブ(S310)、ダストボックス13からピペットラック10にハンドを移動させるジョブ(S311)、ハンドに把持されたピペット4をピペットラック10に返却するジョブ(S312)である。
「ADD」と記載された処理シンボル103及び容器数シンボル105に対応する単位ジョブの所要時間t3と、当該単位ジョブを構成する要素ジョブの所要時間t3a〜t3lは、単位ジョブ所要時間記憶部1cbに記憶されている。
本実施形態に係る動作指令生成装置1の動作指令生成部22は、処理シンボル103に示された処理条件に応じて、処理シンボル103に対応する複数の要素ジョブ及びつなぎジョブを直列に接続して動作指令を生成する。ここで、処理条件とは、処理シンボル103の引数や手技の指定であり、プロトコルチャート上で確認出来ないものも含む。本例の「ADD」と記載された処理シンボル103の場合、処理条件は、液剤Aを100μl加えることである。所要時間算出部40は、複数の要素ジョブの所要時間及びつなぎジョブの所要時間を加算して、動作指令の所要時間を算出する。処理シンボル103に示された処理条件が異なると、当該処理シンボル103に対応する単位ジョブを構成する要素ジョブが変化し、単位ジョブの所要時間が変化することになる。本実施形態に係るロボットシステム200によれば、処理条件に応じて単位ジョブを構成する要素ジョブが変化する場合であっても、動作指令の所要時間が正確に予測される。
続いて、「ADD」と記載された処理シンボル103により表される単位ジョブの終了位置から、「CENTRIFUGE」と記載された処理シンボル103の開始位置へロボット3のハンドを移動させるつなぎジョブが実行される。具体的には、ロボット3のハンドを、ピペットラック10からメインラック5へ移動させるジョブが実行される(S401)。つなぎジョブ所要時間記憶部1ccには、ロボット3のハンドを、ピペットラック10からメインラック5へ移動させるつなぎジョブの所要時間t4が記憶されている。
次に、「CENTRIFUGE」と記載された処理シンボル103及び容器数シンボル105に基づいて、2本のマイクロチューブ6それぞれについて遠心処理を行う単位ジョブが実行される。当該単位ジョブは、第1マイクロチューブ6aをハンドで把持してメインラック5から遠心機12に移送するジョブと(S501)、第2マイクロチューブ6bをハンドで把持してメインラック5から遠心機12に移送するジョブと(S502)、遠心機12を作動させて3分間の遠心処理を行うジョブ(S503)と、により構成される。
「CENTRIFUGE」と記載された処理シンボル103及び容器数シンボル105に対応する単位ジョブの所要時間t5と、当該単位ジョブを構成する要素ジョブの所要時間t5a、t5b及びt5cは、単位ジョブ所要時間記憶部1cbに記憶されている。
図4に示すプロトコルチャートの例の場合、「CENTRIFUGE」と記載された処理シンボル103には、処理条件が示されており、処理条件は処理時間の指定を含む。指定された処理時間は3分間である。所要時間算出部40は、処理時間、単位ジョブの所要時間及びつなぎジョブの所要時間を加算して、動作指令の所要時間を算出する。本例の場合、遠心機12を作動させて遠心処理を行うジョブ(S503)の処理時間は、「CENTRIFUGE」と記載された処理シンボル103に示された処理条件に依存して変化する。本実施形態に係るロボットシステム200によれば、処理時間が比較的長時間であり、ロボット3に待ち時間が生じる場合であっても、動作指令の所要時間が正確に予測される。
最後に、最終シンボル101及び容器数シンボル105に基づいて、2本のマイクロチューブ6を遠心機12からチューブラックに移送する単位ジョブが実行される。単位ジョブは、第1マイクロチューブ6aを移送する要素ジョブと、第2マイクロチューブ6bを移送する要素ジョブと、から構成される。具体的には、第1マイクロチューブ6aをロボット3のハンドで把持して遠心機12からチューブラックに移送し(S601)、第2マイクロチューブ6bを同様に遠心機12からチューブラックに移送するジョブが行なわれる(S602)。単位ジョブ所要時間記憶部1cbには、2本のマイクロチューブ6を遠心機12からチューブラックに移送する単位ジョブの所要時間t6が記憶されている。また、単位ジョブ所要時間記憶部1cbには、第1マイクロチューブ6aを遠心機12からチューブラックに移送する要素ジョブの所要時間t6aと、第2マイクロチューブ6bを遠心機12からチューブラックに移送する要素ジョブの所要時間t6bと、が記憶されている。以上で動作指令の実行が終了する。
ロボット制御部2のジョブ完了情報生成部2aは、動作指令に直列的に含まれる単位ジョブ及びつなぎジョブのうち、少なくとも直近で実行完了している単位ジョブ又はつなぎジョブを特定するジョブ完了情報を生成する。本例の場合、例えば第1マイクロチューブ6a及び第2マイクロチューブ6bをチューブラックからメインラック5に移送する単位ジョブの実行が完了した場合に、ジョブ完了情報生成部2aは、第1マイクロチューブ6a及び第2マイクロチューブ6bをチューブラックからメインラック5に移送する単位ジョブを特定するジョブ完了情報を生成する。所要時間算出部40は、ジョブ完了情報に基づいて、未完了の単位ジョブの所要時間及びつなぎジョブの所要時間を加算して、動作指令の残りの所要時間を算出する。上記の例の場合、所要時間算出部40は、第1マイクロチューブ6a及び第2マイクロチューブ6bをチューブラックからメインラック5に移送する単位ジョブを特定するジョブ完了情報に基づいて、未完了の単位ジョブの所要時間及びつなぎジョブの所要時間であるt2〜t6を加算して、動作指令の残りの所要時間をt2+t3+t4+t5+t6と算出する。
本実施形態に係るロボットシステム200によれば、ロボット制御部2から所要時間算出部40へ、ロボット3の現状が伝えられることで、動作指令の残りの所要時間が算出される。ユーザは、残りの待機時間を把握することができ、適切な行動計画を立てることができる。
図7は、本発明の実施形態に係るロボットシステム200により実行される単位ジョブ所要時間算出の一例を示すフローチャートである。プロトコルチャートに基づいて、動作指令生成部22により動作指令が生成されると、シミュレーション部35は、ロボット3に単位ジョブを行わせるシミュレーションを実行する(S11)。ここで、シミュレーション部35は、必ずしもつなぎジョブのシミュレーションを行う必要はなく、少なくとも動作指令に含まれる単位ジョブについてシミュレーションを行えばよい。後述するように、つなぎジョブは、つなぎジョブ生成部26により生成され、アームの軌道や所要時間が求められているからである。
単位ジョブ所要時間算出部36は、ロボット3により単位ジョブを実行するシミュレーションに基づき、単位ジョブを実行した場合の所要時間を算出する(S12)。単位ジョブ所要時間算出部36は、単位ジョブの所要時間を単位ジョブを構成する要素ジョブ毎に算出する。単位ジョブ所要時間記憶部1cbは、単位ジョブ所要時間算出部36により算出された単位ジョブの所要時間を記憶する。単位ジョブ所要時間記憶部1cbは、単位ジョブの所要時間を、単位ジョブを構成する要素ジョブ毎に記憶する。
本実施形態に係るロボットシステム200によれば、単位ジョブを実際に実行せずとも単位ジョブの所要時間を把握することができ、動作指令全体の所要時間を把握することができる。
図8は、本発明の実施形態に係るロボットシステム200により実行されるつなぎジョブ所要時間算出の一例を示すフローチャートである。つなぎジョブ生成部26は、連続する2つの単位ジョブの終了位置から開始位置にハンドを移動させるつなぎジョブを生成する(S21)。また、つなぎジョブ生成部26は、つなぎジョブの生成に伴って、つなぎジョブの所要時間を算出する(S22)。つなぎジョブ生成部26によるつなぎジョブの生成は、ハンドと周辺機器との干渉が起こらないように計算された自動パス生成により行なわれてよく、つなぎジョブの所要時間は、生成されたつなぎジョブにおけるハンドの軌道や移動速度から算出される。つなぎジョブ所要時間記憶部1ccは、つなぎジョブ生成部26により算出されたつなぎジョブの所要時間を記憶する(S23)。
本実施形態に係るロボットシステム200によれば、つなぎジョブを実際に実行せずともつなぎジョブの所要時間を把握することができ、動作指令全体の所要時間を把握することができる。
図9は、本発明の実施形態に係るロボットシステム200により実行される所要時間更新の一例を示すフローチャートである。単位ジョブ実績記録部41は、ロボット3により単位ジョブが実行された場合における所要時間の実績を記録する(S31)。また、つなぎジョブ実績記録部42は、ロボット3によりつなぎジョブが実行された場合における所要時間の実績を記録する(S31)。所要時間の実績は、ロボット制御部2により生成されるジョブ完了情報の発行間隔に基づいて定めてよい。
単位ジョブ所要時間更新部43は、単位ジョブが実行された場合における所要時間の実績に基づいて、単位ジョブ所要時間記憶部1cbに記憶された単位ジョブの所要時間を更新する(S32)。また、つなぎジョブ所要時間更新部44は、つなぎジョブが実行された場合における所要時間の実績に基づいて、つなぎジョブ所要時間記憶部1ccに記憶されたつなぎジョブの所要時間を更新する(S32)。
本実施形態に係るロボットシステム200によれば、単位ジョブの所要時間を実績に応じて補正することができ、動作指令の所要時間の予測をより正確に行うことができる。また、つなぎジョブの所要時間を実績に応じて補正することができ、動作指令の所要時間の予測をより正確に行うことができる。
なお、以上説明した動作指令の例では、ロボット3が2以上の処理を並行して行うことがなく、ロボット3が処理を1つずつ実行していく場合を示した。動作指令は、例えばロボット3の第1アームにより第1の単位ジョブを行なわせ、第2アームにより第2の単位ジョブを行なわせる等、ロボット3に2以上の処理を並行して行わせるものであってもよい。動作指令がロボット3に2以上の処理を並行して行わせるものである場合、所要時間算出部40は、並行して実行される2以上の単位ジョブの所要時間を比較し、最も長い所要時間を、並行して実行される2以上の単位ジョブの所要時間として採用してよい。
以上説明した実施形態の構成は具体例として示したものであり、本明細書にて開示される発明をこれら具体例の構成そのものに限定することは意図されていない。詳述した実施形態は生化学、生物及び生命工学等の分野において処理対象に対しなされる処理に本発明を適用した一例については説明しているが、上述の通りロボットによって処理実行させられる作業はこれに限らず、当業者はこれら開示された実施形態に種々の変形、例えば、機能や操作方法の変更や追加等を加えてもよく、また、フローチャートに示した制御は、同等の機能を奏する他の制御に置き換えてもよい。本明細書にて開示される発明の技術的範囲は、そのようになされた変形をも含むものと理解すべきである。